説明

移動通信用チャネル再割当方法及び基地局装置

【目的】 チャネル再配置を行う具体的手法を提供する。
【構成】 基地局で呼設定要求が発生し、空きチャネルが見つからないと、受信機15のチャネルを制御し、自セル以外の使用チャネルを探し、その使用チャネル中のセル固有コード25からそのチャネルを使用しているセルを同定手段17で同定し、そのチャネルについての再割当要求を制御線18を通じて、その同定セルの基地局へ送出する。その基地局では制御線19からの再割当要求信号を検出手段21で検出すると、チャネル割当手段22を駆動し、空きチャネルを探し、その空きチャネルを前記使用中チャネルの通信に割り当てる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、移動通信において周波数を有効に利用するためのチャネル再割り当て方法及びそれに用いられる基地局装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】移動通信においては、限られた周波数資源を有効に利用するために様々な技術が開発されてきた。最も効果的な方法としてセルラ方式があげられる。この方式では、同一周波数を離れた場所で再利用している。この再利用の度合いは変調信号の耐干渉性に依存しており、繰り返し数Nで表されている。図3Aに3ゾーン(セル)繰り返し(N=3)の様子を示している。このとき、そのシステムのサービス領域を小さな領域に分割した各ゾーン(セル)には、そのシステムに割り当てられた周波数帯域を分割したチャネル群f1 ,f2 …fN が繰り返し割り当てられている。この図3Aでは隣接ゾーン(セル)同士は互いに干渉ゾーン(セル)として、同一チャネルは割り当てない。このような方法は、固定チャネル配置(FCA)といわれている。
【0003】FCAに対して、各ゾーン(セル)にはそのシステム周波数帯域のすべてのチャネルを割り当て、一定の規則によってチャネルをアサイン(割り当て)するダイナミックチャネルアサイン(DCA)が知られている。DCAとして、干渉レベルが一定以下となるチャネルを探索し、最初に見つけたチャネルをアサインするファーストアベイラブルがよく知られている。さらに、学習効果を導入したものとして、チャネル棲み分け方式が知られている。これらは干渉量の大小を測定し、空いているチャネルを利用しているものであり、すべてのチャネルがすでに使用されている場合には呼損となる。
【0004】このようにすべてのチャネルが使用中であっても、チャネルの再配置によって空きチャネルを作ることができる場合がある。セル(ゾーン)Zi で呼が発生したとき、各セルでのチャネルF1 ,F2 ,F3 の使用状況が例えば図3Bに示すようにあったとすると、つまりセルZi の隣接(干渉)セルZ1 でチャネルF1,2 を、セルZ2 でチャネルF2 ,セルZ3 ,Z4 ではそれぞれチャネルF2 ,F3 を使用中であったとすると、セルZi に対する干渉セルにすべてのチャネルF1 ,F2 ,F3 が割り当てられてあり、セルZi にチャネルを割り当てることはできない。しかし図3Cに示すように、セルZ1 にはチャネルF1 とF3 に、セルZ2 にはチャネルF3 に、セルZ5 ,Z6 ,Z7 にそれぞれチャネルF2 ,F3 ,F1 にそれぞれ再割り当てを行えば、セルZi の干渉セルZ1 ,Z2 ,Z3 ,Z4 はチャネルF1 ,F2 のいずれかしか使用していないことになり、セルZi でチャネルF3 を割り当てることができる。このような再配置をすれば呼損率が減るので、チャネルの時間的使用効率が向上し、周波数をさらに有効に利用できることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このチャネルの再配置をいかに実行するかの具体的な方法についてはあまり検討例がない。従来の検討は、再配置の効果について検討したものであり、具体的な再配置の手順は明確ではなかった。例えば、周辺セルで1局だけが使用しているチャネルを検索して再配置する方法が知られているが、そのようなチャネルをどのようにして検索するのかは具体的に論じられていない。基地局が管理しているチャネルマネジメントシステムをネットワーク上で管理して、使用中のチャネルを集中制御的にリアルタイムのデータベースにファイルしてあれば容易に検索できる。しかしながら、将来の移動通信システムではマイクロセル化が進み、それに伴って自律分散的な制御に移行すると考えられ、集中的なリアルタイムのデータベース管理とは整合性がよくないという欠点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するために、この発明によるチャネル再割当方法は、あるチャネルにおける干渉発生源が存在するセルを受信波から同定し、その同定したセルの基地局に再割当要求を出し、チャネル再割当要求を検知した基地局は当該チャネルの再割り当てを行う。
【0007】
【作 用】基地局において、呼の発生があり、その呼にチャネルを割り当てることができない場合などに、例えば基地局はあるチャネルの信号を受信して、その受信信号からそのチャネルが使われているセルを同定手段により同定し、次にその同定されたセルの基地局へチャネル再割当要求のための信号を発信する。発信された信号は前記同定されたセルの基地局の要求信号検出手段で検知され、さらにチャネル再割当手段により当該チャネルの再割り当て、つまりそのチャネルで使用中の通信に他の空きチャネルを割り当てることが行われる。
【0008】同定手段には作用と結果が異なるいくつかの構成法があり、各セルで固有のコードを送信信号に多重化して送信したものを受信波から検出して、当該チャネルを使用している基地局を同定する方法がある。また、複数セルのコードを干渉キャンセル機能のある受信手段で検出し、当該チャネルを使用している複数の基地局を同定する方法もある。
【0009】要求信号検出手段には、要求信号の種類によっていくつかの構成がある。まず他基地局へチャネル再割当要求を行うために当該チャネルに要求信号として特定変調波を送信する場合、要求されている基地局では、その特定変調波が受信されていることを検出する手段を用いる方法がある。また、同定されたセルの基地局に対して、当該基地局に当該チャネルの再割り当てを要求する信号を制御線(回線)を介して発信する場合にはその制御線の送受信装置を用いる。
【0010】この発明は従来の技術と以下の点が異なる。
(1)受信波から、信号を検出してそのチャネルが使用されているセルを同定する。
(2)同一チャネルを使用するセルが複数ある場合には、干渉キャンセル機能のある受信機で、複数の信号を分離して、それぞれの信号が使用されている各セルを同定する。
【0011】(3)同定されたセルに再割当要求信号を送出するために、当該チャネルに特定変調信号を送出することにより行う。
(4)同定されたセルに、再割当要求信号を制御線を介して送出する。
【0012】
【実施例】請求項9の発明の実施例を図1Aに示す。基地局において、入力端子11からの信号は送信機12で搬送波を変調し、送信機12の出力は送受共用分波器13とアンテナ14を介して送信される。一方、アンテナ14で受信された受信波は分波器13を介して受信機15に入力され、受信機15で増幅・復調されたのち出力端子16から出力される。
【0013】受信機15は同定手段17に受信レベル信号Eと復調信号の同相成分Iと直交成分Qを送出している。同定手段17は、その基地局、つまり当該セルでは使用していない通信チャネルの受信レベル信号から、その通信チャネルを干渉セルが使用していると判断すると、受信機15の復調信号I,Qから、その通信チャネルを用いているセルを同定する。呼を設定する必要があり、かつ同定手段17が空きチャネルを見つけられないときには、前記通信チャネルを用いていると同定されたセルにチャネル再割り当て要求信号を送出する。図1Aではその要求信号を制御線18を用いて行っており、その再割当要求信号には前記通信チャネルを示す信号も付加されている。
【0014】この例では、他の基地局からのチャネル再割当要求信号も制御線19を介して入力される場合を示している。この要求信号は要求信号検出手段21に入力され、要求信号検出手段21は要求信号を検出するとチャネル割当手段22にチャネル再割り当て処理を行わせる。つまり受信機15の受信通信チャネルをスキャニングしてその通信チャネルの受信レベルを測定する。その測定結果から同定手段17が空き通信チャネルと判定した通信チャネルに前記要求信号の通信チャネルから移行するよう、チャネル割当手段22は送信機12と受信機15を制御する。
【0015】前記再割当要求信号を送出した基地局は、前記チャネル再割り当てを行った基地局からの通知を受けて、または適当な時間後に、前記再割当要求チャネルに呼を設定できるかを調べた後に、可能であればその呼設定を行う。上述したように受信通信チャネルからその通信チャネルが利用されているセルを同定するためには、図1Bに示すように各セルに固有のコード25を送信データ26の前に配置して多重化して送信する。受信機15が復調した信号のうち、ゾーン固有コード25に相当する部分を同定手段17に送出する。このためには受信機15に他基地局からの信号に対する同期検波回路などが必要である。同定手段17は検波された固有コード25からセルを同定する。
【0016】受信チャネルが1波の場合には通常の復調処理によって、容易に固有コード25を抽出することができるが、同一通信チャネルが同時に複数波受信されているときには通常の復調器では固有コード25を復調することができない。したがって、周囲で1局のみが使用している通信チャネルを検索するのであればこの方法で十分である。固有コード25が抽出できないときには、周囲で2局以上が当該通信チャネルを利用していると判定する。
【0017】周囲2つ以上のセルで使用している通信チャネルの受信波から固有コード25を抽出できる方法の例を図2Aに示す。受信機15の復調信号I/Qには2つの受信波が重畳されているとする。この受信機15ではそれらの信号候補を最尤系列推定手段(MLSE)31からの符号候補をもとに変調器32,33で各2系列の符号候補により搬送波を変調し、これら変調出力をトランスバーサルフィルタ34,35でそれぞれの受信波伝送路に変動を与えて受信波レプリカを生成する。端子36からの受信波信号から差回路37,38でそれぞれ受信波レプリカを差し引き、その残差をもとに制御部39でトランスバーサルフィルタ34,35を制御してフェージング変動に追従させている。一方、前記残差の2乗値を用いて符号候補系列を最尤系列推定手段31で2つの受信波の復調符号S1 とS2を抽出して出力している。このようにして、2つの受信波の各固有コードを抽出することができる。同時受信波が2つ以上の場合も同様にして各受信波のセルを同定することができる。
【0018】このように同一通信チャネルを複数の基地局で使用しており、これらの各基地局の同定を行うことができた場合は、その同定されたすべての基地局に対して、当該チャネルの再割当要求信号を送出する。これら複数の基地局のうち受信レベルが所定値以上、または最も高いものについてのみ、チャネル再割当要求信号を出し、他の基地局は遠方にあり、通信に大きく影響する干渉とならない場合はチャネル再割当要求信号を出さない。
【0019】図1Aでは制御線19を介してチャネル再配置要求信号が入力されているが、このような制御線を使わない方法を図1Aの破線41と42で示してある。この場合、同定手段17は直接送信機12を用いて、チャネル再配置をして欲しい通信チャネルに特定変調波を送出する。特定変調波の具体例を図2Bに示す。この例ではバースト的な信号を3回繰り返して送信している。このとき当該通信チャネルを使用している移動機は、希望波以外にこの特定変調波を同時に受信し、伝送特性が劣化する。移動機の受信機では図2Cに示すように検波器45よりの検波出力を相関器46に入力して、3回のバースト信号を検出する。この検出信号をもとに判定器47が再配置要求信号の有無を判定する。要求信号があると判定されたときは、その移動機は基地局にチャネル再配置を例えば通信中制御信号伝送法により要求する。前記同定された基地局が移動機と同一チャネルをTDD(時分割デュープレックス)方式で通信している場合は、前記特定変調波の送信波は同定された基地局に直接受信され、特定変調波を検出することにより再割当要求を知ることができる。
【0020】以上、チャネル再配置でチャネル移行のための制御は基地局または移動局のどちらで行ってもよい。
【0021】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば受信された信号からセルを同定し、そのセルの基地局にチャネル再配置の要求を行うので、チャネル使用状況を集中制御システムで管理する必要がない。したがって、マイクロセル化した自律分散制御システムに特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Aは請求項9の発明の実施例を示すブロック図、Bは基地局(セル)の固有コードの多重化の例を示す図である。
【図2】Aは干渉キャンセラによる同一チャネルを使用している複数局の同定法の例を示すブロック図、Bは再割当要求信号に用いる特定変調波の例を示す図、Cは特定変調波の検出回路の例を示すブロック図である。
【図3】Aはセルラ方式のセルとチャネルとの配置例を示す図、Bはチャネル再配置前のセルとチャネルの例を示す図、Cはチャネル再配置後のセルとチャネルの例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 移動通信セルラ方式のチャネル再割当方法において、基地局で呼を設定する空き通信チャネルを見つけられないときに、他セルの使用通信チャネルを受信して、その受信波からその通信チャネルを使用している基地局を同定し、その同定された基地局に、その通信チャネルについての再割当要求信号を送出し、その再割当要求信号を検知した基地局は、その通信チャネルの通信に他の空き通信チャネルを再割当てすることを特徴とする移動通信用チャネル再割当方法。
【請求項2】 上記再割当要求を検出した基地局が上記通信チャネルの再割当てを行った後、上記再割当要求を行った基地局は空きとなった上記使用通信チャネルに呼設定を行うことを特徴とする請求項1記載の移動通信用チャネル再割当方法。
【請求項3】 上記使用通信チャネルにその基地局に固有のコードを多重化して送信し、上記基地局の同定を、受信波から固有コードを検出して行うことを特徴とする請求項1記載の移動通信用チャネル再割当方法。
【請求項4】 上記受信波から複数の固有コードが検出されて複数の基地局が同定されると、その同定された各基地局に対して上記通信チャネルの再割当要求信号を送出することを特徴とする請求項3記載の移動通信用チャネル再割当方法。
【請求項5】 上記受信波から複数の固有コードが検出されて複数の基地局が同定されると、その同定された基地局中の最も近い基地局に対してのみ上記通信チャネルの再割当要求信号を送出することを特徴とする請求項3記載の移動通信用チャネル再割当方法。
【請求項6】 上記基地局での上記再割当要求信号の送出は、上記受信した他セルの使用通信チャネルと同一チャネルで特定変調信号を送信し、その特定変調信号を、上記他セルの使用通信チャネルを時分割デュープレックス方式で使用している移動局または基地局で検出して、再割当要求信号を検出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の移動通信用チャネル再割当方法。
【請求項7】 上記基地局での上記再割当要求信号の送出は、上記受信した他セルの使用通信チャネルと同一チャネルで特定変調信号を送信し、上記特定変調信号を検出した移動局から再割当要求信号をその通信中の基地局へ送信して行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の移動通信用チャネル再割当方法。
【請求項8】 上記基地局での上記再割当要求信号の送出は制御線を通じて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の移動通信用チャネル再割当方法。
【請求項9】 移動通信セルラ方式に用いられ、呼設定要求ごとに空き通信チャネルを探し、空き通信チャネルが見つけられないとチャネル再割当要求を送出する基地局装置において、上記空き通信チャネルが見つからないと他セルの使用通信チャネルを受信して、その受信波からその通信チャネルを使用している基地局を同定し、その同定された基地局へその通信チャネルについての再割当要求信号を送出する同定手段と、他の基地局からの再割当要求信号を検出する要求信号検出手段と、上記再割当要求信号を検出すると、その通信チャネルの通信に他の空き通信チャネルを再割り当てするチャネル再割当手段と、を具備することを特徴とするチャネル再割当機能を有するセルラ方式移動通信の基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平8−214362
【公開日】平成8年(1996)8月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−15160
【出願日】平成7年(1995)2月1日
【出願人】(392026693)エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社 (5,876)