説明

移動通信端末およびプログラム

【課題】従来とは異なる方法を用いて電子バリューを利用する機能のロックを解除することを可能にする。
【解決手段】移動通信端末50は、制御部51と、ICチップ部56と、モーション検出部57とを備える。ICチップ部56は、電子バリュー等の情報を記憶している。モーション検出部57は、加速度センサ57aとジャイロセンサ57bとを備え、自機の動き(位置変動)を検出する。制御部51は、自機の位置変動のパターンを表すパターン情報をEEPROM51dに記憶する。制御部51は、自機の位置変動を検出し、これがEEPROM51dに記憶されたパターン情報が表す位置変動に相当するものである場合には、ICチップ部56における情報のやりとりを許可し、それ以外のときには、ICチップ部56における情報のやりとりを禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の移動通信端末で電子バリューを利用するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子マネー等の電子バリューを利用可能な携帯電話機が普及している。電子バリューを利用可能な携帯電話機においては、店頭のリーダに端末をかざすという簡単な動作だけで、商品やサービスに係る決済を行うことができる。
【0003】
ところで、電子バリューは金銭的価値を有するため、他人に無断で使用されたり、リーダ等により盗み取られたりしては当然不都合がある。そのため、このような携帯電話機には、電子バリューを利用する機能のロックおよびその解除を行う機能が備わっているのが一般的である。ロックを解除する方法としては、暗証番号等を入力するもののほか、指紋認証を行うもの(例えば、特許文献1参照)などもある。
【特許文献1】特開2001−309050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、文字を入力したり指紋認証を行ったりする動作は、携帯電話機をポケットや鞄から取り出し、リーダにかざすという一連の動作を分断するものであり、ユーザにとっては煩雑である。それゆえ、かかる従来の技術を用いた場合には、電子バリューを利用する機能のロック自体を行わずに、常に外部からのアクセスを許可するようにしておくユーザも少なくなかった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来とは異なる方法を用いて電子バリューを利用する機能のロックを解除することを可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明は、情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された情報を出力する出力手段と、自機の位置変動を検出する検出手段と、自機の位置変動のパターンを表すパターン情報を記憶するパターン記憶手段と、前記出力手段による出力を許可または禁止する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記出力手段による前記情報の出力が禁止されている場合において、前記検出手段により前記パターン記憶手段に記憶されたパターン情報に相当するパターンの位置変動が検出されたとき、当該出力を許可するように切り替えを行う移動通信端末を提供する。
【0007】
また、本発明において、前記パターン記憶手段は、それぞれが異なるパターンを表す複数のパターン情報を記憶し、前記出力手段による出力が行われたことを検知する出力検知手段と、前記検出手段により検出された位置変動のパターンであって、前記制御手段により前記出力が許可され、かつ、前記出力検知手段により前記出力が行われたことが検知された場合におけるパターンを履歴として記憶する履歴記憶手段と、前記履歴記憶手段に記憶された履歴に含まれるパターンに相当しないパターンを表すパターン情報を前記パターン記憶手段から削除する削除手段とを備える構成を採用してもよい。
【0008】
また、本発明において、前記パターン記憶手段は、それぞれが異なるパターンを表す複数のパターン情報を記憶し、前記出力手段による出力が行われたことを検知する出力検知手段と、前記制御手段により前記出力が許可され、かつ、前記出力検知手段により前記出力が行われたことが検知されなかった場合に、前記検出手段によりそのときに検出された位置変動のパターンを表すパターン情報を前記パターン記憶手段から削除する削除手段とを備える構成を採用してもよい。
【0009】
また、本発明において、前記パターン記憶手段は、それぞれが異なるパターンを表す複数のパターン情報を記憶し、前記出力手段による出力が行われたことを検知する出力検知手段と、前記検出手段により検出された位置変動のパターンであって、前記制御手段により前記出力が許可され、かつ、前記出力検知手段により前記出力が行われたことが検知されなかった場合におけるパターンを履歴として記憶する履歴記憶手段と、前記検出手段により検出された位置変動のパターンに相当するパターンが前記履歴記憶手段に記憶されていた場合に、当該パターンを表す前記パターン情報を前記パターン記憶手段から削除する削除手段とを備える構成を採用してもよい。
【0010】
また、本発明において、前記パターン記憶手段は、特定の位置変動のパターンを表す特定パターン情報と、当該パターンから許容し得る程度のずれを表す偏差情報とを前記パターン情報として記憶し、前記出力手段による出力が行われたことを検知する出力検知手段と、前記検出手段により検出された位置変動のパターンであって、前記制御手段により前記出力が許可され、かつ、前記出力検知手段により前記出力が行われたことが検知された場合におけるパターンを履歴として記憶する履歴記憶手段と、前記履歴記憶手段に記憶された履歴に基づき、前記パターン記憶手段に記憶された偏差情報が表すずれの程度が小さくなるように当該偏差情報を補正する補正手段とを備える構成を採用してもよい。
【0011】
また、本発明において、前記パターン記憶手段は、特定の位置変動のパターンを表す特定パターン情報と、当該パターンから許容し得る程度のずれを表す偏差情報とを前記パターン情報として記憶し、前記出力手段による出力が行われたことを検知する出力検知手段と、前記検出手段により検出された位置変動のパターンであって、前記制御手段により前記出力が許可され、かつ、前記出力検知手段により前記出力が行われたことが検知されなかった場合におけるパターンを履歴として記憶する履歴記憶手段と、前記履歴記憶手段に記憶された履歴に基づき、前記パターン記憶手段に記憶された偏差情報が表すずれの程度が小さくなるように当該偏差情報を補正する補正手段とを備える構成を採用してもよい。
【0012】
また、本発明において、前記検出手段により検出された位置変動のパターンを表す情報を前記パターン記憶手段に前記パターン情報として書き込む書込手段と、前記検出手段により検出された位置変動のパターンが所定のパターンに相当する場合に、前記書込手段による当該パターン情報の書き込みを禁止する書込制御手段とを備える構成を採用してもよい。
【0013】
また、本発明において、前記制御手段は、前記出力手段による出力が許可されてから所定の時間が経過した場合に、当該出力を禁止するように切り替える構成を採用してもよい。
【0014】
また、本発明は、上述の移動通信端末と異なる形態としても特定され得る。例えば、本発明は、上述した移動通信端末の機能を実現するためのプログラムや、このプログラムを記録した記録媒体としても特定され得る。例えば、本発明に係るプログラムは、情報を記憶する記憶手段と、自機の位置変動のパターンを表すパターン情報を記憶するパターン記憶手段とを有するコンピュータに、前記記憶手段に記憶された情報を出力する出力機能と、自機の位置変動を検出する検出機能と、前記出力機能による出力を許可または禁止する制御機能であって、前記検出機能により前記パターン記憶手段に記憶されたパターン情報に相当するパターンの位置変動が検出された場合において、前記出力機能により前記情報の出力が禁止されているとき、当該出力を許可するように切り替えを行う制御機能とを実現させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明において、「電子バリュー」とは、貨幣ないしそれに準ずる価値を有するデータを意味する。電子バリューには、上述した電子マネーのほか、電子チケットなどが含まれる。また、本発明において、「電子決済機能」とは、この電子バリューのやりとりによって決済を行う機能を意味する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る決済システム100の全体構成を概略的に示す図である。同図に示すように、決済システム100は、インターネット10と、移動パケット通信網20と、決済サーバ30と、読取端末40と、移動通信端末50とを備える。なお、図示を省略するが、読取端末40および移動通信端末50は、実際にはそれぞれ複数存在し得る。
【0017】
インターネット10は、図示せぬサーバ装置やルータ等を有するネットワークであり、決済サーバ30や読取端末40を相互に接続する。インターネット10は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)や、そのTCP/IP上で実現されるHTTP(HyperText Transfer Protocol)、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)などに準拠した手順でデータを伝送する。移動パケット通信網20は、移動通信端末50にパケット移動通信サービスを提供するためのネットワークであり、TCP/IPを簡素化したプロトコルや、そのプロトコル上で実現されるHTTPに相当するプロトコルなどに準拠した手順でデータを伝送する。移動パケット通信網20は、所定の通信事業者(いわゆるキャリア)によって管理される。また、移動パケット通信網20は、図示せぬ基地局や交換局の他、図示せぬゲートウェイサーバを有している。ゲートウェイサーバは、プロトコル変換などを行うサーバ装置であり、インターネット10と移動パケット通信網20の間での相互通信を実現する。決済サーバ30は、読取端末40と移動通信端末50との間で行われる決済を管理するサーバ装置であり、種々のデータを記憶する。なお、決済サーバ30の構成は、一般的なサーバ装置と同様である。
【0018】
読取端末40は、移動通信端末50と電子マネーのやりとりを行うためのデータの授受を行う端末装置である。読取端末40は、電子決済機能を利用可能な店舗に設置される。読取端末40は、図2に示すように、制御部41と、通信部42と、表示部43と、非接触通信部44とを備える。制御部41は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等を備え、読取端末40の各部の動作を制御する。通信部42は、インターネット10を介して通信を行うためのインタフェース装置である。表示部43は、図示せぬ液晶パネルや液晶駆動回路を備えた表示装置であり、制御部41により供給される画像データに応じた情報を表示する。非接触通信部44は、いわゆるリーダライタであり、図示せぬコイルアンテナを介して移動通信端末50と情報のやりとりを行う。制御部41は、非接触通信部44を介して移動通信端末50から取得した情報を、通信部42を介して決済サーバ30に送信する。
【0019】
移動通信端末50は、上述した通信事業者により提供されるパケット移動通信サービスを利用可能な通信端末である。移動通信端末50のユーザは、あらかじめ移動パケット通信網20の利用契約を上述の通信事業者と締結している。図3は、移動通信端末50の構成を示すブロック図である。同図に示すように、移動通信端末50は、制御部51と、無線通信部52と、操作部53と、表示部54と、情報通知部55と、IC(Integrated Circuit)チップ部56と、モーション検出部57とを備える。
【0020】
制御部51は、CPU51a、ROM51b、RAM51cおよびEEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)51dを備え、CPU51aがRAM51cをワークエリアとして用いてROM51bやEEPROM51dに記憶されたプログラムを実行し、これにより移動通信端末50の各部の動作を制御する。無線通信部52は、アンテナ52aを備え、移動パケット通信網20とのデータの送受信を無線で行う。操作部53は、ボタン等の操作子を備え、ユーザの操作に応じた操作信号を制御部51に供給する。表示部54は、液晶パネルや液晶駆動回路を備えた表示装置であり、制御部51からの指示に応じて各種の情報を表示する。情報通知部55は、ランプ55aおよびバイブレータ55bを備え、表示部54による表示とは異なる方法でユーザに情報を通知する。ランプ55aは、制御部51からの指示に応じて光源を点灯させ、バイブレータ55bは、制御部51からの指示に応じてモータにより振動を発生させる。
【0021】
ICチップ部56は、ICチップ56aおよびコイルアンテナ56bを備え、制御部51から供給された電力によって電子決済機能のために必要な処理を実行する。ICチップ56aは、情報を記憶可能な集積回路であり、CPUやROM、EEPROMなどを備える。コイルアンテナ56bは、読取端末40の非接触通信部44と情報のやりとりを行う。ICチップ56aは、ICチップ部56外部から入力される要求に応じて、ROMやEEPROMに記憶された情報を外部に供給する。ICチップ56aに記憶される情報は、電子決済機能において用いられる情報であり、例えば、会員番号やクレジットカード番号のような識別情報や、貨幣ないしそれに準ずる価値の大小を表す情報(すなわち電子バリュー)などである。以下では、これらの情報を総称して「決済情報」という。
【0022】
モーション検出部57は、加速度センサ57aおよびジャイロセンサ57bを備え、移動通信端末50の動きを検出する。加速度センサ57aは、互いに直交する3軸の各々の方向についての加速度の変化を検知する。この3軸のことを、以下ではそれぞれ「x軸」、「y軸」および「z軸」という。ジャイロセンサ57bは、このx軸、y軸およびz軸の方向についての角速度の変化を検知する。これらのセンサにより出力された信号は、移動通信端末50の動き(x軸、y軸およびz軸方向の移動および回転)を表すモーション信号として制御部51に供給される。
【0023】
ここで、移動通信端末50が記憶するデータの内容を説明する。ROM51bは、あらかじめいくつかのプログラムを記憶している。以下ではこれを「プリインストールプログラム」という。具体的には、プリインストールプログラムは、マルチタスクオペレーティングシステム(以下「マルチタスクOS」という。)、Java(登録商標)プラットフォームおよびネイティブアプリケーションの各プログラムである。これらのプログラムについて概説すると、まず、マルチタスクOSは、TSS(Time-Sharing System)による複数タスクの擬似的な並列実行を実現するために必要な仮想メモリ空間の割り当てなどの各種機能をサポートしたオペレーティングシステムである。Javaプラットフォームは、マルチタスクOSを搭載した携帯機器において後述するJava実行環境514を実現するためのコンフィギュレーションであるCDC(Connected Device Configuration)にしたがって記述されたプログラム群である。ネイティブアプリケーションは、通話やブラウジング、電子メールの送受信などといった移動通信端末50の基本的なサービスを実現するプログラムであり、電子メール送受信サービスの提供を受けるためのメーラアプリケーション、ブラウジングサービスの提供を受けるためのブラウザアプリケーションを含む。
【0024】
EEPROM51dは、Javaアプリケーションが記憶されるJavaアプリケーション格納領域を有する。Javaアプリケーションは、Java実行環境514の下における処理の手順自体を記述した実体プログラムとその実体プログラムの実行に伴って利用される画像ファイルや音声ファイルとを結合したJAR(Java Archive)ファイルと、そのJARファイルのインストールや起動、各種の属性を記述したADF(Application Descriptor File)とを有している。このJavaアプリケーションは、コンテンツプロバイダまたは通信事業者により作成されてインターネット10のサーバ装置などに格納され、移動通信端末50からの要求に応じてそれらのサーバ装置から適宜ダウンロードされるようになっている。
【0025】
図4は、ROM51bおよびEEPROM51dの各種プログラムの実行により移動通信端末50の制御部51に実現される各部の論理的構成を示す図である。同図に示すように、各種プログラムを実行する移動通信端末50には、ブラウザ512、メーラ513およびJava実行環境514がOS511上に実現され、また、EEPROM51dには第1ストレージ515と第2ストレージ516とが確保される。ブラウザ512およびメーラ513は、ROM51bのネイティブアプリケーションにより実現されるものであり、HTML(HyperText Markup Language)形式またはこれに準じた形式で記述されたデータの受信やその解釈、電子メールの送受信などの機能をそれぞれ実現する。
【0026】
Java実行環境514は、ROM51bのJavaプラットフォームにより実現される。Java実行環境514は、クラスライブラリ517、JVM(Java Virtual Machine)518およびJAM(Java Application Manager)519からなる。クラスライブラリ517は、特定の機能を有するプログラムモジュール(クラス)群を1つのファイルに結合したものである。JVM518は、上述のCDCのために最適化されたJava実行環境であり、Javaアプリケーションとして提供されるバイトコードを解釈して実行する機能を有する。JAM519は、Javaアプリケーションのダウンロードやインストール、起動・終了などを管理する機能を有する。
【0027】
第1ストレージ515は、JAM519の管理の下にダウンロードされるJavaアプリケーション(JarファイルとADF)を格納する領域である。第2ストレージ516は、Javaアプリケーションの実行の際に生成されたデータをその終了後に格納しておくための領域であり、インストールされたJavaアプリケーション毎に個別の格納領域が割り当てられるようになっている。そして、あるJavaアプリケーションに割り当てられた格納領域のデータは、そのJavaアプリケーションが実行されている間のみ書き換え可能となっており、別のJavaアプリケーションが書き換えを行い得ないようになっている。
【0028】
Javaアプリケーションには、電子決済機能のロックおよびその解除を管理するアプリケーションが含まれる。このアプリケーションのことを、以下では「管理アプリ」という。管理アプリのために割り当てられた格納領域には、パターンデータファイルと、履歴データファイルとが格納されている。これらのデータファイルの内容は、以下の通りである。
【0029】
図5は、パターンデータファイルを概念的に示す図である。パターンデータファイルには、移動通信端末50の動きの時間変化(すなわち位置変動)のパターンを加速度と角度とにより記述したパターン情報が複数含まれる。それぞれのパターン情報は、互いに異なる位置変動のパターンを表している。本実施形態においては、図5に示すように、5種類のパターン情報A、B、C、DおよびEがあるとする。パターンデータファイルとして記憶されるパターン情報は、ユーザが移動通信端末50を読取端末40にかざすときの代表的なパターンを表すものであり、あらかじめEEPROM51dに記憶されるものである。なお、同図においては、ある1方向の加速度の時間変化のみを示してパターン情報としているが、実際のパターン情報は、上述したx軸、y軸およびz軸方向についての加速度および角度の変動を表している。これは、以降にパターン情報として示す他の図についても同様である。
【0030】
また、それぞれのパターン情報は、特定の1つの位置変動を表すものではなく、特定の位置変動に類似した位置変動を類型化して表すものである。具体的には、図6に示すように、曲線Aにより示されるある特定の位置変動に対してその位置変動からのずれ(偏差)を設け、このずれの範囲内に含まれる位置変動の全てを1つのパターンとして表している。すなわち、パターン情報は、特定の位置変動を表す「位置変動情報」と、この位置変動情報が表す位置変動からの偏差を表す「偏差情報」とにより構成されている。
【0031】
履歴データファイルは、モーション検出部57により検出された位置変動の履歴を表すものである。履歴データファイルには、モーション検出部57により検出された位置変動が上述したパターンデータファイルとして記憶されたパターン情報が表すパターンに相当するものであった場合に、これが履歴として記憶される。また、履歴データファイルには、パターンデータファイルとして記憶されたパターン情報に対応する位置変動がモーション検出部57により検出された後に、ICチップ部56に記憶された決済情報に読み書きが行われたか否かが併せて記憶されるように構成されている。
【0032】
図7は、履歴データファイルを概念的に示す図であり、位置変動の履歴を複数のレコードからなるテーブルとして示している。例えば、同図に示す第1行のレコードは、検出された位置変動がパターン情報Aが表すパターンに相当するものであり、このときにICチップ部56に記憶された決済情報に読み書きが行われたことを表している。また、同図に示す第2行のレコードは、検出された位置変動がパターン情報Cが表すパターンに相当するものであり、このときにICチップ部56に記憶された決済情報に読み書きが行われなかったことを表している。
【0033】
決済システム100の構成は以上の通りである。続いて、この決済システム100を利用するために移動通信端末50が実行する処理について説明する。
移動通信端末50の制御部51は、起動時にOS511を実行する。OS511を実行した後、制御部51は、その他の必要なプログラムを実行するより所定のアプリケーションを起動する。このとき、制御部51は、上述した管理アプリを起動する。
【0034】
図8は、管理アプリを起動したときに移動通信端末50の制御部51が実行する処理を示すフローチャートである。同図に沿って説明すると、はじめに、移動通信端末50の制御部51は、電子決済機能のロックを行う(ステップSa1)。具体的には、制御部51は、ICチップ部56への電力供給を遮断するなどして、ICチップ部56と読取端末40との間で情報のやりとりが行われないようにする。
【0035】
電子決済機能のロックを行ったら、制御部51は、モーション検出部57が供給するモーション信号を取得し、自機の位置変動を検出する(ステップSa2)。続いて、制御部51は、この位置変動とパターンデータファイルとして記憶されたパターン情報とを比較し(ステップSa3)、検出した位置変動がパターン情報により表されるパターンに相当するものであるか否かを判断する(ステップSa4)。ここにおいて、制御部51は、検出した位置変動が複数のパターン情報のいずれかが表すパターンの範囲内に含まれる場合には、この位置変動がパターン情報により表されるパターンに相当すると判断する。
【0036】
検出した位置変動がパターン情報により表されるパターンに相当する場合(ステップSa4:YES)、制御部51は、電子決済機能のロックを解除する(ステップSa5)。すなわち、制御部51は、ICチップ部56に電力を供給し、読取端末40から問い合わせがあったときにはICチップ部56が応答できるような状態にする。一方、検出した位置変動がいずれのパターン情報が表すパターンにも相当しなければ(ステップSa4:NO)、制御部51は、引き続き自機の位置変動の検出を行い(ステップSa2)、以降の処理を繰り返す。
【0037】
続いて、制御部51は、電子決済機能を利用可能な状態にしつつ、ICチップ部56における通信を監視する。すなわち、制御部51は、ICチップ部56に記憶された情報に対して読み書きが行われたか否かを判断する(ステップSa6)。この判断は、ICチップ部56による読み書きが認識されるか、あるいは所定の期間(例えば5秒)が経過するまで繰り返される。すなわち、制御部51は、ICチップ部56に記憶された情報に対する読み書きを認識できない場合(ステップSa6:NO)、ロックを解除してから所定の時間が経過したか否かを判断し(ステップSa7)、未経過であれば再びステップSa6の処理を行う。
【0038】
ICチップ部56に記憶された情報に対して読み書きが行われた場合(ステップSa6:YES)、制御部51は、読取端末40がICチップ部56に記憶された情報にアクセスしたとみなし、電子決済機能を再びロックする(ステップSa8)。一方、ロックを解除してから所定の時間が経過してもICチップ部56による読み書きが認識されない場合(ステップSa7:YES)、制御部51は、このときには読取端末40によるアクセスがなかったとみなし、電子決済機能を再びロックする(ステップSa8)。
【0039】
電子決済機能のロックを行ったら、制御部51は、検出した位置変動を履歴として記憶する(ステップSa9)。すなわち、制御部51は、新たなレコードを追加することによって履歴データファイルを更新する。このとき、制御部51は、ICチップ部56による読み書きがあったか否かについても併せて記憶する。
【0040】
その後、制御部51は、不要なロックの解除が行われるのを抑制するために、パターンデータファイルを書き換える処理を行う。この処理は、削除処理(ステップSa11)と補正処理(ステップSa12)とに分けることができる。これらの処理は、履歴データファイルのレコードが所定の数に達するか、あるいはこれらの処理を行うべきタイミングとなった場合に実行される。すなわち、制御部51は、履歴データファイルのレコードが所定の数に達するか、あるいはこれらの処理を行うべきタイミングとなったか否かを判断し(ステップSa10)、いずれかの条件を満たしたときに削除処理(ステップSa11)と補正処理(ステップSa12)とを実行する。削除処理および補正処理を実行するタイミングは任意であるが、例えば、前に削除処理および補正処理を実行してから所定の時間(例えば、1時間)が経過したときとすればよい。
【0041】
ここで、削除処理の内容を説明する。図9は、削除処理の内容を示すフローチャートである。同図に沿って説明すると、はじめに制御部51は、パターンデータファイルとして記憶されたいずれかのパターン情報について、このパターン情報が表すパターンに相当する位置変動が履歴データファイルに記憶されているか否かを判断する(ステップSa111)。処理対象であるパターン情報が表すパターンに相当する位置変動が履歴データファイルに記憶されていない場合(ステップSa111:NO)、制御部51は、このパターン情報をパターンデータファイルから削除する(ステップSa112)。
【0042】
これに対して、処理対象であるパターン情報が表すパターンに相当する位置変動が履歴データファイルに記憶されていれば(ステップSa111:YES)制御部51は、履歴データファイルにその位置変動が記憶されたときに、ICチップ部56による読み書きがあったか否かを判断する(ステップSa113)。ICチップ部56による読み書きがあった場合(ステップSa113:YES)、制御部51は、処理対象であるパターン情報を削除せずに次の処理を行う(ステップSa114)。一方、履歴として記憶はされたものの、ICチップ部56による読み書きがなかった場合には(ステップSa113:NO)、制御部51は、処理対象であるパターン情報に対応する履歴の個数に応じた処理を行う。
【0043】
制御部51は、処理対象であるパターン情報に対応する履歴の個数を判断する(ステップSa115)。そして、処理対象であるパターン情報に対応する履歴の個数がn個以上である場合(ステップSa115:YES)、制御部51は、このパターン情報を削除する(ステップSa116)。一方、処理対象であるパターン情報に対応する履歴の個数がn個未満である場合(ステップSa115:NO)、制御部51は、処理対象であるパターン情報を削除せずに次の処理を行う(ステップSa117)。なお、このときのnの値は任意であり、適当な値を定めてよい。
【0044】
このようにして処理対象であるパターン情報の削除の可否を決定したら、制御部51は、パターンデータファイルとして記憶されたパターン情報の全てについて上述した処理を実行したか否かを判断する(ステップSa118)。そして、未処理のパターン情報があれば(ステップSa118:NO)、そのパターン情報を処理対象としてステップSa111以降の処理を実行する一方、全てのパターン情報について上述した処理を実行した場合には(ステップSa118:YES)、削除処理を終了させる。
【0045】
続いて、補正処理の内容を説明する。図10は、補正処理の内容を示すフローチャートである。同図に沿って説明すると、はじめに制御部51は、パターンデータファイルとして記憶されたいずれかのパターン情報について、このパターン情報が表すパターンに相当し、かつ、ICチップ部56による読み書きが認識されたときの位置変動の全てを履歴データファイルから抽出する(ステップSa121)。そして、制御部51は、抽出した位置変動の全てと処理対象であるパターン情報が表すパターンとを比較し、このパターン情報の偏差情報の補正を行う(ステップSa122)。
【0046】
図11は、ステップSa122の処理を説明するための図である。図11(a)に示すように、例えば、曲線Aにより示される位置変動情報と、その上下の破線D1、D2により示される偏差情報からなるパターン情報を想定する。そして、このパターン情報が表すパターンに相当し、かつ、ICチップ部56による読み書きが認識されたときの位置変動として、曲線aおよびbにより示される3種類の位置変動が履歴として記憶されているとする。この場合、制御部51は、偏差情報として含まれる範囲、すなわち図11(a)に示す破線D1、D2の内側の範囲のうち、曲線aおよびbのいずれとも異なり、かつ、曲線aおよびbと所定のレベル以上に異なる範囲を、偏差情報から除外する処理を行う。この処理が行われた後の偏差情報は、図11(b)に示す破線D3、D4のようになる。これはつまり、偏差情報が表すずれ(偏差)の程度を小さくすることを示している。このようにすることで、パターン情報が表すパターンをよりユーザの動作に近づけることができ、不必要にロックが解除されるのを抑制することが可能となる。
【0047】
図10の説明に戻る。制御部51は、パターンデータファイルとして記憶されたいずれかのパターン情報について、このパターン情報が表すパターンに相当し、かつ、ICチップ部56による読み書きが認識されなかったときの位置変動の全てを履歴データファイルから抽出する(ステップSa123)。そして、制御部51は、抽出した位置変動の全てと処理対象であるパターン情報が表すパターンとを比較し、このパターン情報の偏差情報の補正を行う(ステップSa124)。
【0048】
図12は、ステップSa124の処理を説明するための図である。図12(a)に示すように、例えば、曲線Aにより示される位置変動情報と、その上下の破線D1、D2により示される偏差情報からなるパターン情報を想定する。そして、このパターン情報が表すパターンに相当し、かつ、ICチップ部56による読み書きが認識されなかったときの位置変動として、曲線cにより示される位置変動が履歴として記憶されているとする。この場合、制御部51は、偏差情報として含まれる範囲、すなわち図11(a)に示す破線D1、D2の内側の範囲のうち、曲線cよりも外側(すなわち曲線Aからのずれが大きい側)を、偏差情報から除外する処理を行う。この処理が行われた後の偏差情報は、図12(b)に示す破線D3、D4のようになる。これはつまり、ステップSa122の処理と同様に、偏差情報が表すずれ(偏差)の程度を小さくすることを示している。よって、このようにすることで、不必要にロックが解除されるのを抑制することが可能となる。
【0049】
再び図10の説明に戻る。制御部51は、あるパターン情報について偏差情報の補正を行ったら、パターンデータファイルとして記憶されたパターン情報の全てについて上述した処理を実行したか否かを判断する(ステップSa125)。そして、未処理のパターン情報があれば(ステップSa125:NO)、そのパターン情報を処理対象としてステップSa121以降の処理を実行する一方、全てのパターン情報について上述した処理を実行した場合には(ステップSa125:YES)、削除処理を終了させる。
【0050】
図8に示した削除処理および補正処理は、以上の通りである。これらの処理の後、制御部51は、管理アプリを終了させる旨の事象(例えば、ユーザによる管理アプリの停止の指示や、OS511の終了など)が発生した場合を除き、ステップSa2以降の処理を繰り返す。すなわち、制御部51は、管理アプリを終了させる旨の事象が発生したか否かを判断し(ステップSa13)、このような事象が発生したら(ステップSa13:YES)、管理アプリを終了させる。
【0051】
以上の処理を行うことにより、本実施形態の移動通信端末50は、特定パターンの位置変動が生じた後の所定の期間のみに電子決済機能のロックが解除されるようになる。このロックが解除されるときの位置変動は、ユーザが移動通信端末50を読取端末40にかざすときに特有の位置変動である。そのため、この移動通信端末50によれば、ユーザが特別の操作を行わなくとも、電子決済機能のロックを必要なときにだけ解除することが可能となる。また、特定パターンの位置変動が生じたとき以外はロックされた状態が維持されるので、例えば、携帯可能な小型のリーダによってユーザの知らないうちに決済情報が盗み読まれるようなことを防止することも可能となる。
【0052】
また、本実施形態の移動通信端末50によれば、パターン情報に対応した位置変動を履歴として記憶し、上述した削除処理と補正処理とを実行することにより、不必要にロックが解除されるのを抑制することが可能となる。そのため、この移動通信端末50は、ユーザが移動通信端末50の利用を反復することによって、ユーザが移動通信端末50をかざすときの動きを学習し、ユーザが必要とするときのみに自然な動作でロックを解除することが可能となる。
【0053】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の構成は、管理アプリが実現する機能に相違があるものの、物理的な構成は上述した第1実施形態と同様である。そのため、本実施形態に係る決済システムの説明には、第1実施形態の決済システム100と同一の符号を用いることとする。
【0054】
本実施形態においては、移動通信端末50は、ユーザから位置変動の入力を受け付け、これをパターン情報として登録する機能を有する。すなわち、ユーザは、この機能によって、自身が決めた適当なパターンの位置変動を用いてロックの解除を行うことができる。この場合、ユーザが移動通信端末50を読取端末40にかざす動作は、かざす途中に移動通信端末50を数回揺動(シェイク)するような動作であってもよい。
【0055】
なお、パターン情報を登録する処理は、図8に示した電子決済機能のロックを解除する処理と同時には実行されない。つまり、移動通信端末50は、パターン情報を登録する処理を実行するモードと電子決済機能のロックを解除する処理を実行するモードとを有しており、これらのモードのいずれかにより動作する。モードの切り替えは、ユーザが操作部53の所定のボタン(以下「モード切替ボタン」という。)を押下することにより行われる。以下においては、電子決済機能のロックを解除する処理を実行するモードを「通常モード」といい、パターン情報を登録する処理を実行するモードを「登録モード」という。
【0056】
また、管理アプリのために割り当てられた格納領域には、パターンデータファイルおよび履歴データファイルに加えて、禁止パターンデータファイルが格納されている。禁止パターンデータファイルには、ユーザによる登録を禁止すべきパターンを表す情報が、上述したパターン情報と同様の形式で記述されている。禁止パターンデータファイルに記述されるのは、例えば、ユーザの歩行時に生じるような位置変動や、電車等の走行時の振動に相当するパターンである。
【0057】
図13は、ユーザがパターン情報を登録するときに移動通信端末50の制御部51が実行する処理を示すフローチャートである。同図に沿って説明すると、はじめに制御部51は、操作部53からモード切替ボタンに対応する操作信号が供給されたか否かを判断する(ステップSb1)。制御部51は、このモード切替ボタンに対応する操作信号を受信したら(ステップSb1:YES)、登録モードに対応した処理を実行する一方、モード切替ボタンに対応する操作信号を受信しないときには(ステップSb1:NO)、通常モードに対応した処理を実行する(ステップSb7)。通常モードに対応した処理は、第1実施形態において図8を参照して説明した処理と同様なので、ここではその説明を省略する。
【0058】
登録モードにおいては、制御部51は、モーション検出部57が供給するモーション信号を取得し、自機の位置変動を検出する(ステップSb2)。自機の位置変動が検出されたとき、制御部51は、禁止パターンデータファイルを参照することにより、検出した位置変動が禁止パターンデータファイルに記憶された情報により表されるパターンに相当するか否かを判断する(ステップSb3)。
【0059】
検出した位置変動が禁止パターンデータファイルに記憶された情報により表されるパターンに相当する場合、すなわち、検出した位置変動が登録を禁止すべきパターンに相当する場合(ステップSb3:YES)、制御部51は、検出した位置変動をパターン情報として登録することを禁止する旨の通知を行う(ステップSb4)。具体的には、例えば、情報通知部55のランプ55aを点灯させたり、バイブレータ55bを所定の振動パターンで振動させたりするなどである。
【0060】
一方、検出した位置変動が登録を禁止すべきパターンに相当しない場合(ステップSb3:NO)、制御部51は、検出した位置変動をパターン情報としてパターンデータファイルに記憶する(ステップSb5)。制御部51は、検出した位置変動に基づいて位置変動情報と偏差情報とを生成し、これをパターン情報として記憶する。そして、制御部51は、検出した位置変動をパターン情報として登録した旨の通知を行う(ステップSb6)。この場合、制御部51は、バイブレータ55bの振動パターンを異ならせるなどすることにより、上述したステップSb4とは異なる態様の通知を行う。
【0061】
ユーザにステップSb4またはSb5のいずれかの通知を行ったら、制御部51は、登録モードによる動作を終了させ、通常モードによる動作に切り替える。すなわち、制御部51は、通常モードに対応した処理を実行する(ステップSb7)。
【0062】
以上の処理を行うことにより、本実施形態の移動通信端末50は、ユーザが指定する所定の動作を行うことによって電子決済機能のロックを解除するとともに、頻繁に生じ得るありふれた位置変動はパターン情報として登録できないようにすることが可能となる。そのため、この移動通信端末50によれば、ユーザが意図しないタイミングで電子決済機能のロックが解除されるのを抑制することが可能となる。
【0063】
[第3実施形態]
続いて、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の構成も、上述した第1実施形態の決済システム100の構成と共通する部分を有する。そのため、かかる部分については、上述した第1実施形態と同一の符号を用いて示し、その説明を適宜省略することとする。
【0064】
図14は、本実施形態に係る決済システム200の全体構成を概略的に示す図である。同図に示すように、決済システム200は、インターネット10と、移動パケット通信網20と、決済サーバ60と、読取端末70と、移動通信端末80とを備える。
【0065】
図15は、決済サーバ60の構成を示すブロック図である。同図に示すように、決済サーバ60は、制御部61と、記憶部62と、通信部63とを備える。制御部61は、図示せぬCPU、ROMおよびRAM等を備え、決済サーバ60の各部の動作を制御する。記憶部62は、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置であり、各種データを記憶する。通信部63は、インターネット10を介して通信を行うためのインタフェース装置である。
【0066】
記憶部62は、移動通信端末80の動き(位置変動)を表すデータを複数記憶している。このデータは、読取端末70に送信され、表示部73に表示されるデータであり、移動通信端末80のユーザに移動通信端末80の動きを指示するためのデータである。このデータのことを、以下では「指示データ」という。
【0067】
続いて、図16は、読取端末70の構成を示すブロック図である。同図に示すように、読取端末70は、制御部71と、通信部72と、表示部73と、非接触通信部74と、赤外線通信部75と、モーション検出部76とを備える。なお、制御部71、通信部72、表示部73および非接触通信部74の構成は、それぞれ、読取端末40の制御部41、通信部42、表示部43および非接触通信部44の構成とほぼ同様である。赤外線通信部71は、赤外線により移動通信端末80と通信を行う。モーション検出部76は、移動通信端末80のモーション検出部87と同様の構成の加速度センサ76aおよびジャイロセンサ76bを備えており、読取端末70の動きを検出する。
【0068】
次に、図17は、移動通信端末80の構成を示すブロック図である。同図に示すように、移動通信端末80は、制御部81と、無線通信部82と、操作部83と、表示部84と、情報通知部85と、ICチップ部86と、モーション検出部87と、赤外線通信部88とを備える。なお、制御部81、無線通信部82、操作部83、表示部84、情報通知部85、ICチップ部86およびモーション検出部87の構成は、それぞれ、移動通信端末50の制御部51、無線通信部52、操作部53、表示部54、情報通知部55、ICチップ部56およびモーション検出部57の構成とほぼ同様である。赤外線通信部88は、赤外線により読取端末70と通信を行う。
【0069】
決済システム200の構成は、以上の通りである。続いて、この決済システム200における動作を説明する。図18は、決済システム200における決済サーバ60、読取端末70および移動通信端末80の動作を示すシーケンスチャートである。同図に沿って説明すると、まず、決済サーバ60の制御部61は、記憶部62に記憶された指示データのいずれかを読み出し、通信部63を介してこれを読取端末70に送信する(ステップSc1)。そして、読取端末70の制御部71は、指示データを受信すると、指示データが表す移動通信端末80の動きを表示部73に表示させる(ステップSc2)。
【0070】
図19は、このとき読取端末70の表示部73に表示される画面の一例を示す図である。同図に示すように、表示部73には、移動通信端末80の動きを表す所定の画像が表示される。同図に示す例は、移動通信端末80のユーザが、読取端末70にかざした移動通信端末80で円を描くような動きをすることを指示するものである。
【0071】
図18の説明に戻る。読取端末70が指示データに対応する表示を行っているときに、移動通信端末80の制御部81は、ユーザの操作に応じて電子決済機能のロックの解除を行う(ステップSc3)。すなわち、ユーザは、移動通信端末80を読取端末70にかざす前に電子決済機能のロックの解除を行う。なお、本実施形態においては、電子決済機能のロックを解除する方法を特に問わない。つまり、上述した第1および第2実施形態と異なる解除方法であってもよい。
【0072】
その後、移動通信端末80は、ユーザが移動通信端末80を読取端末70にかざすことにより、読取端末70と通信可能な状態となる。このような状態になったら、移動通信端末80のICチップ部86は、読取端末70に決済情報を送信する(ステップSc4)。また、移動通信端末80の制御部81は、ICチップ部86が決済情報を送信したことを検知すると、読取端末70にモーション信号を送信する(ステップSc5)。
【0073】
決済情報とモーション信号とを受信したら、読取端末70の制御部71は、自機のモーション検出部72により検出されたモーション信号に基づいて、受信したモーション信号の補正を行う(ステップSc6)。具体的には、制御部71は、受信したモーション信号とモーション検出部72により検出されたモーション信号とで共通する成分があれば、これを除去する。このようにして補正されたモーション信号のことを、以下では「補正モーション信号」という。モーション信号の補正を行ったら、読取端末70の制御部71は、通信部72を介して決済情報と補正モーション信号とを決済サーバ60に送信する(ステップSc7)。なお、このとき制御部71は、決済情報に自機に関する情報を付加してもよい。
【0074】
決済情報と補正モーション信号と受信したら、決済サーバ60の制御部61は、この補正モーション信号が自装置の送信した指示データが表す位置変動に相当するか否かを判断する(ステップSc8)。このとき、補正モーション信号と指示データが表す位置変動とが完全に一致する必要はなく、ある程度のずれを含んでいてもよい。
【0075】
補正モーション信号が自装置の送信した指示データが表す位置変動に相当する場合(ステップSc8:YES)、制御部61は、補正モーション信号と同時に受信した決済情報が正当なものであるとみなし、この決済情報を記憶部62に記憶する(ステップSc9)。一方、補正モーション信号が自装置の送信した指示データが表す位置変動に相当しない場合(ステップSc8:NO)、制御部61は、補正モーション信号と同時に受信した決済情報が正当でないものであるとみなし、この決済情報を記憶部62に記憶せずに削除する(ステップSc10)。
【0076】
以上の処理を行うことにより、本実施形態の決済サーバ60は、受信した決済情報が正当なユーザからのものであるか否かを判定することが可能となる。これにより、例えば、読取端末70が通信可能な範囲に複数の移動通信端末80が存在する場合であっても、意図したユーザの決済情報を有効とし、その他の意図しないユーザの決済情報を無効にすることが可能となる。
【0077】
また、本実施形態の読取端末70によれば、移動通信端末80から受信したモーション信号を、自機において取得したモーション信号に基づいて補正することが可能となる。これにより、例えば、移動中の電車内で電子決済機能を利用するような場合においても、誤った認識がされることを防止することが可能となる。
【0078】
[変形例]
以上においては、3種類の実施形態を例示して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他の種々の態様にて実施することが可能である。本発明においては、例えば、上述した実施形態に対して以下のような変形を適用することができる。
【0079】
上述した第1実施形態においては、移動通信端末にあらかじめいくつかのパターン情報が記憶されている場合を説明したが、パターン情報は当初から記憶されている必要はない。例えば、パターン情報が記憶されていない状態の移動通信端末を用いて、ユーザが読取端末にかざす動作を、いわば“素振り(すぶり)”のように何度か繰り返し、このときのモーション信号に基づいてパターン情報を生成するような構成としてもよい。
【0080】
また、上述の実施形態においては、ICチップ部は制御部から供給された電力によって動作する場合を説明した。これは、いわゆるアクティブタグに相当するものである。しかしながら、本発明は、いわゆるパッシブタグを用いた場合にも適用可能である。具体的には、例えば、ICチップとコイルアンテナの間に接続のオン・オフを切り替えるスイッチを設け、電子決済機能をロックした状態にあるときにはスイッチをオフにし、ロックを解除した状態にあるときにはスイッチをオンにすればよい。
【0081】
また、上述の実施形態においては、加速度センサおよびジャイロセンサにより位置変動を検出する場合を説明したが、これらの一方のみを用いるようにしてもよい。また、移動通信端末に搭載されたカメラ(ビデオカメラ)を、位置変動を検出する手段として用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態に係る決済システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図2】同実施形態の読取端末の構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態の移動通信端末の構成を示すブロック図である。
【図4】同実施形態の移動通信端末に実現される各部の論理的構成を示す図である。
【図5】同実施形態におけるパターン情報を概念的に示す図である。
【図6】同実施形態におけるパターン情報を概念的に示す図である。
【図7】同実施形態における履歴データファイルを概念的に示す図である。
【図8】同実施形態の移動通信端末が実行する処理を示すフローチャートである。
【図9】同実施形態における削除処理を示すフローチャートである。
【図10】同実施形態における補正処理を示すフローチャートである。
【図11】同実施形態の削除処理を説明するための図である。
【図12】同実施形態の補正処理を説明するための図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る移動通信端末が実行する処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第3実施形態に係る決済システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図15】同実施形態の決済サーバの構成を示すブロック図である。
【図16】同実施形態の読取端末の構成を示すブロック図である。
【図17】同実施形態の移動通信端末の構成を示すブロック図である。
【図18】同実施形態の決済システムにおける処理を示すシーケンスチャートである。
【図19】同実施形態において読取端末の表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
100、200…決済システム、10…インターネット、20…移動パケット通信網、30、60…決済サーバ、61…制御部、62…記憶部、63…通信部、40、70…読取端末、41、71…制御部、42、72…通信部、43、73…表示部、44、74…非接触通信部、75…赤外線通信部、76…モーション検出部、50、80…移動通信端末、51、81…制御部、51a…CPU、51b…ROM、51c…RAM、51d…EEPROM、52、82…無線通信部、53、83…操作部、54、84…表示部、55、85…情報通知部、56、86…ICチップ部、56a…ICチップ、56b…コイルアンテナ、57、87…モーション検出部、57a…加速度センサ、57b…ジャイロセンサ、88…赤外線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された情報を出力する出力手段と、
自機の位置変動を検出する検出手段と、
自機の位置変動のパターンを表すパターン情報を記憶するパターン記憶手段と、
前記出力手段による出力を許可または禁止する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記出力手段による前記情報の出力が禁止されている場合において、前記検出手段により前記パターン記憶手段に記憶されたパターン情報に相当するパターンの位置変動が検出されたとき、当該出力を許可するように切り替えを行う
ことを特徴とする移動通信端末。
【請求項2】
前記パターン記憶手段は、それぞれが異なるパターンを表す複数のパターン情報を記憶し、
前記出力手段による出力が行われたことを検知する出力検知手段と、
前記検出手段により検出された位置変動のパターンであって、前記制御手段により前記出力が許可され、かつ、前記出力検知手段により前記出力が行われたことが検知された場合におけるパターンを履歴として記憶する履歴記憶手段と、
前記履歴記憶手段に記憶された履歴に含まれるパターンに相当しないパターンを表すパターン情報を前記パターン記憶手段から削除する削除手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末。
【請求項3】
前記パターン記憶手段は、それぞれが異なるパターンを表す複数のパターン情報を記憶し、
前記出力手段による出力が行われたことを検知する出力検知手段と、
前記制御手段により前記出力が許可され、かつ、前記出力検知手段により前記出力が行われたことが検知されなかった場合に、前記検出手段によりそのときに検出された位置変動のパターンを表すパターン情報を前記パターン記憶手段から削除する削除手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末。
【請求項4】
前記パターン記憶手段は、それぞれが異なるパターンを表す複数のパターン情報を記憶し、
前記出力手段による出力が行われたことを検知する出力検知手段と、
前記検出手段により検出された位置変動のパターンであって、前記制御手段により前記出力が許可され、かつ、前記出力検知手段により前記出力が行われたことが検知されなかった場合におけるパターンを履歴として記憶する履歴記憶手段と、
前記検出手段により検出された位置変動のパターンに相当するパターンが前記履歴記憶手段に記憶されていた場合に、当該パターンを表す前記パターン情報を前記パターン記憶手段から削除する削除手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末。
【請求項5】
前記パターン記憶手段は、特定の位置変動のパターンを表す特定パターン情報と、当該パターンから許容し得る程度のずれを表す偏差情報とを前記パターン情報として記憶し、
前記出力手段による出力が行われたことを検知する出力検知手段と、
前記検出手段により検出された位置変動のパターンであって、前記制御手段により前記出力が許可され、かつ、前記出力検知手段により前記出力が行われたことが検知された場合におけるパターンを履歴として記憶する履歴記憶手段と、
前記履歴記憶手段に記憶された履歴に基づき、前記パターン記憶手段に記憶された偏差情報が表すずれの程度が小さくなるように当該偏差情報を補正する補正手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末。
【請求項6】
前記パターン記憶手段は、特定の位置変動のパターンを表す特定パターン情報と、当該パターンから許容し得る程度のずれを表す偏差情報とを前記パターン情報として記憶し、
前記出力手段による出力が行われたことを検知する出力検知手段と、
前記検出手段により検出された位置変動のパターンであって、前記制御手段により前記出力が許可され、かつ、前記出力検知手段により前記出力が行われたことが検知されなかった場合におけるパターンを履歴として記憶する履歴記憶手段と、
前記履歴記憶手段に記憶された履歴に基づき、前記パターン記憶手段に記憶された偏差情報が表すずれの程度が小さくなるように当該偏差情報を補正する補正手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末。
【請求項7】
前記検出手段により検出された位置変動のパターンを表す情報を前記パターン記憶手段に前記パターン情報として書き込む書込手段と、
前記検出手段により検出された位置変動のパターンが所定のパターンに相当する場合に、前記書込手段による当該パターン情報の書き込みを禁止する書込制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記出力手段による出力が許可されてから所定の時間が経過した場合に、当該出力を禁止するように切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末。
【請求項9】
情報を記憶する記憶手段と、自機の位置変動のパターンを表すパターン情報を記憶するパターン記憶手段とを有するコンピュータに、
前記記憶手段に記憶された情報を出力する出力機能と、
自機の位置変動を検出する検出機能と、
前記出力機能による出力を許可または禁止する制御機能であって、前記検出機能により前記パターン記憶手段に記憶されたパターン情報に相当するパターンの位置変動が検出された場合において、前記出力機能により前記情報の出力が禁止されているとき、当該出力を許可するように切り替えを行う制御機能と
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−252183(P2008−252183A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87300(P2007−87300)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】