移動通信端末用モジュール
【課題】小型で信頼性が高く且つ複数のバンドに対応可能な移動通信端末用モジュールを提供する。
【解決手段】チューナブルフィルタであるDPXと、受信信号に対して漏洩する送信回路からの送信信号とノイズをキャンセルするための妨害キャンセラを備える移動通信端末用モジュールであって、送信系からのキャリブレーション用信号と受信系の電力検出器RSSIを用いて妨害キャンセラやチューナブルフィルタの性能を最適値に合わせるキャリブレーションを行い、キャリブレーションデータを保持して実動作時にデータを読み出すことで良好な送受信特性を実現する。
【解決手段】チューナブルフィルタであるDPXと、受信信号に対して漏洩する送信回路からの送信信号とノイズをキャンセルするための妨害キャンセラを備える移動通信端末用モジュールであって、送信系からのキャリブレーション用信号と受信系の電力検出器RSSIを用いて妨害キャンセラやチューナブルフィルタの性能を最適値に合わせるキャリブレーションを行い、キャリブレーションデータを保持して実動作時にデータを読み出すことで良好な送受信特性を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信端末用モジュール及びそれを用いた移動通信端末に関する。特に、例えばWCDMA方式やLTE方式等のワイヤレス通信システムに対応した移動通信端末用モジュール及びそれを用いた移動通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話は既に実用化されているWCDMA(Wideband Code Division Multiplex Access)方式等のほか、LTE(Long term Evolution)方式等の新しい方式が検討されている。WCDMA方式やLTE方式は、送受信同時動作のため、送信周波数と受信周波数は異なる帯域を用いている。これらの方式においては、送受信帯域を分離するDPX(Duplexer)フィルタが用いられる。
【0003】
DPXの性能を改善する技術としては、非特許文献1にあるように、フィードフォワード技術を用いたものがある。非特許文献1には、フィードフォワード技術を用いた受信側における送信側からの受信帯域雑音の抑圧に関する方式が開示されている。WCDMA方式のBand5に対応した869〜894MHzの狭帯域の受信帯域雑音をキャンセルするため、フィードフォワードループは妨害キャンセラ(ノッチフィルタ、利得及び位相調整機能)より構成されている。また、通過周波数を可変とするチューナブルフィルタ(送信系、受信系フィルタを含めたDPX機能含む)については、特許文献1に記載されているように可変素子としてMEMS(Micro Electro Mechanical System)容量を用いた構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】United State Patent,US7446628B2“POLE−ZERO ELEMENTS AND RELATED SYSTEMA AND METHOD”
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“Adaptive Duplexer Implemented Using Single−Path and Multipath Feedforward Techniques with BST Phase Shifter”IEEE Transaction ON Microwave Theory and Techniques, Vol.53,No.1,January 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
携帯端末などにフィードフォワード技術を用いた妨害キャンセラやチューナブルフィルタを用いる場合、各ブロックのばらつきを補正するためのキャリブレーションが必要となる。しかしながら、上記特許文献1、非特許文献1とも制御方法やキャリブレーション技術に関する記載はない。
本発明の目的は、妨害キャンセラやチューナブルフィルタを端末に用いるときに好適なキャリブレーション技術や制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、端末の送信系からのキャリブレーション用信号と受信系の電力検出器(RSSI;Received Signal Strength Indicator)を用いて妨害キャンセラやチューナブルフィルタの通過帯域特性や阻止帯域特性などの性能を最適値に合わせるキャリブレーションを行い、キャリブレーションデータを保持して実動作時にデータを読み出すことで良好な送受信特性を実現する。チューナブルフィルタは、通過帯域特性と阻止帯域特性を個別にキャリブレーション実施することで最適化を図り、キャンセラは、阻止帯域周波数と阻止帯域の減衰量を個別にキャリブレーションすることで最適化を図る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型で信頼性が高く且つ複数のバンドに対応可能な移動通信端末用モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例における移動通信端末用モジュールの構成例を示すブロック図である。
【図2】WCDMA、LTE方式で用いる周波数バンドの模式図である。
【図3】実施例で用いるDPX2の実施例を示す図である。
【図4】実施例で用いるDPX2の特性模式図である。
【図5】実施例で用いる妨害キャンセラで用いるフィルタの回路図である。
【図6】実施例で用いるメモリの構成を説明する図である。
【図7】メモリのデータの保存と読み出しについて説明するフローチャートである。
【図8】実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するブロック図である。
【図9】実施例で用いる制御部動作を説明する図である。
【図10】実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するフローチャートである。
【図11】実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するブロック図である。
【図12】実施例で用いる制御部動作を説明する図である。
【図13】実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するフローチャートである。
【図14A】実施例で用いる制御部動作を説明する図である。
【図14B】実施例で用いる制御部動作を説明する図である。
【図15】実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するフローチャートである。
【図16】実施例で用いる実動作時制御動作を説明するブロック図である。
【図17】実施例で用いる実動作時制御動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明をする。
図1は、実施例における移動通信端末用モジュールの構成例を示すブロック図である。本実施例の構成は、例えばWCDMA方式等の移動通信端末用モジュールを対象とするが、これに限定されるものではない。
【0011】
はじめに信号の流れを説明する。ベースバンドブロック32から出力される送信信号31はTxVCO15、ローカル16からの信号により変調器17で周波数変換され、RFICブロック21より出力される。RFICブロック21からの信号はPA(Power Amplifier;パワーアンプ)14で増幅されてDPX2のTxフィルタ4に入力され、フィルタ処理により送信信号帯域を抜き出して、アンテナ1から端末の送信信号として出力される。
【0012】
一方、アンテナ1で受信された受信信号はチューナブルフィルタ2のRxフィルタ3に入力され、フィルタ処理により受信信号帯域を抜き出されて、LNA(Low Noise Amplifier;低雑音増幅器)13で増幅され、RFICブロック21に入力される。RFICブロック21に入力された信号は、RxVCO18、ローカル19からの信号によりミキサ20で周波数変換され、ベースバンドブロック32に受信信号30として入力される。DPX2は、複数バンドの送受信を可能とするため、Txフィルタ4とRxフィルタ3は周波数可変とし、制御信号25により周波数特性を制御される。
【0013】
図2は、WCDMA、LTE方式で用いる周波数バンドの模式図である。変化させる周波数帯域は、例えば図2に示すように3GPPの規格として決められているバンドに対応可能なものとする。
DPX2の周波数帯域を可変とすることで、従来の固定周波数方式に比べて妨害波の抑圧度が低下する。特にWCDMA方式などの端末では、アンテナ1で受信した受信信号に対する最も大きな妨害波は、端末自体から基地局に向かって送信する送信信号である。DPX2での妨害波の抑圧度が低下することにより、DPX2のTxフィルタ4とRxフィルタ3を通過した前記送信信号が、アンテナ1で受信した受信信号に与える妨害は、従来よりも大きくなる問題がある。
【0014】
図3は、実施例で用いるDPX2の実施例を示す図である。
図3の(a)にDPX2の構成例を示す。端子33はアンテナ1への接続端子、端子34はTx側への接続端子、端子35はRx側への接続端子である。移相器46,47を接続してRxフィルタ3とTxフィルタ4がそれぞれの影響を受けないようにする。Rxフィルタ3とTxフィルタ4は例えばL(インダクタンス)とC(容量)で構成されるLCフィルタであり、実施例ではTxフィルタ4はL38,44とC39,45、RxフィルタはL36,42とC37,43からなる。通過する周波数を可変とするため、C37,43,39,45はスイッチ等で容量値を切り替える機能を持つ。また、Rxフィルタ3はフィルタをスルーパスとするスイッチ40を、Txフィルタ4はフィルタをスルーパスとするスイッチ41をそれぞれ有する。
【0015】
図3の(c)は、可変周波数フィルタの特性例を示したものである。通過帯域は図3の(b)に示したBand1,Band2の帯域を例としている。フィルタを可変特性とすると、固定フィルタの場合に比べてフィルタのQが劣化して減衰特性が劣化するためノッチを入れて、図3の(c)に示すように、Txフィルタ4の性能としてRx帯雑音の抑圧度が20〜30dB程度、Rxフィルタ3の性能としてTx帯の抑圧度が20〜30dB程度を得る。
【0016】
図4は、実施例で用いるDPX2の特性模式図であり、図3の(a)で示したスイッチ40、スイッチ41を用いた場合の特性例を示す。図4の(a)はスイッチ40,41ともオープン状態の通常の動作特性であり、Txフィルタ4、Rxフィルタ3ともBand1の信号を通過させる設定となっている。図4の(b)はスイッチ41をショートした特性であり、Txフィルタ4出力は平坦な特性となる。図4の(c)はスイッチ40をショートした特性であり、Rxフィルタ3出力は平坦な特性が得られる。
【0017】
従来の固定周波数方式によるDPXの妨害抑圧度は、Rx帯、Tx帯とも50〜60dB程度あったのに対して、本実施例で用いる周波数帯域が可変なDPX2の妨害抑圧度は、Rx帯、Tx帯とも20〜30dB程度と小さい。このため、図1で示したように、送信信号の受信側への漏れこみをキャンセルする妨害波キャンセラブロック48を用いて、必要な妨害抑圧度を得るようにする。妨害キャンセラ48は、PA14出力の送信信号を分配して妨害波キャンセラに入力する分配器10、Txフィルタ5、振幅調整器7、位相調整器8及び遅延調整器9、Rxフィルタ6、妨害波キャンセラの出力をLNA入力に合成する合成器11のフィードフォワードループにより構成される。このフィードフォワードループでキャンセルされる妨害波は、DPX2を介して送信系から受信系に漏洩してきた送信信号、および同じくDPX2を介して送信系から受信系に漏洩してきた受信信号帯の雑音である。
【0018】
図5は、実施例で用いる妨害キャンセラで用いるフィルタの回路図である。
図5の(a)にTxフィルタ5、図5の(b)にRxフィルタ6の構成例を示す。Rxフィルタ6とTxフィルタ5は例えばL(インダクタンス)とC(容量)で構成されるLCフィルタであり、実施例ではTxフィルタ5はL57,60とC59,61、RxフィルタはL51,54とC53,55からなる。通過する周波数を可変とするため、C53,55,59,61はスイッチ等で容量値を切り替える機能を持つ。また、Rxフィルタ6はフィルタをスルーパスするスイッチ52を、Txフィルタ5はフィルタをスルーパスするスイッチ58をそれぞれ有する。
【0019】
DPX2に用いるRxフィルタ3、Txフィルタ4および妨害波キャンセラ48に用いる各ブロックは高精度の誤差制御が必要となるため、実際の携帯電話網で信号の送受信を行う実動作前のキャリブレーションと実動作時の誤差調整制御を行う。
キャリブレーションは各ブロックのばらつき補正を行うものであり、キャリブレーションで得たデータは、各ブロックの所要性能を得るための初期制御データとしてメモリ27に保持される。
【0020】
図6は、実施例で用いるメモリの構成を説明する図であり、メモリ27に保存する制御データの例を示す。各バンドに対してTxフィルタ4や振幅調整器7などの最適制御データを、初期値として例えば8ビットデータで保存する。一方、後記するように実動作時の誤差調整制御は、実動作時におけるSNをはじめとするパラメータの、各ブロックの所要性能からのずれを検出して補正をかけるものであり、同じく制御値データとしてメモリ27に例えば8ビットデータで保持する。
【0021】
図7は、メモリのデータの保存と読み出しについて説明するフローチャートである。図7の処理フローを用いて、メモリ27に対するデータの保存と読み出しについて、図中に付したステップ番号(S)を参照しながら説明する。工場などの出荷時に行う初期キャリブレーション後(S701)、メモリ27に各部データを保存格納する(S702)。フィールド等で端末を立ち上げたときに(S703)、例えばBand1を用いる場合に(S704)、メモリ27よりBand1の各部データを読み出す(S705)。この後、各ブロックの誤差調整制御を行い(S706)、Band1の新しいデータとしてメモリ27に保存する(S707)。その後、使用周波数が例えばBand2に変わった場合に(S708)、メモリ27よりBand2の各部データを読み出す(S709)。この後、各ブロックの誤差調整制御を行い(S710)、Band2の新しいデータとしてメモリ27に保存する(S711)。
【0022】
本実施例によれば、ステップS701で各可変ブロックの初期キャリブレーションを行うことで、各ブロックのばらつき補正を行うことができ、またステップS702でキャリブレーションデータをメモリに保存することで、ステップS703での端末立ち上げ時にステップS705で迅速に各ブロックの所要データを読み込むことができる。また、端末動作時に、ステップS706で各ブロックの制御データの誤差調整制御を行うことで、常に良好な端末特性を得ることが可能である。
【0023】
図3、図4と図8〜図10を用いて、第1の実施例のDPX2内Rxフィルタ3、Txフィルタ4のキャリブレーション動作について説明する。
図8は、実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するブロック図である。
図9は、実施例で用いる制御部動作を説明する図である。
図10は、実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するフローチャートであり、Txフィルタのキャリブレーションの場合を示しているが、Rxフィルタの場合でも図中のTxをRxと置換えれば他は同様であって良いので、Rxフィルタのキャリブレーションにおいても図10に基づき説明する。以下、図8のブロック図における動作を、図10のフローチャートに付したステップ番号(S)を参照しながら説明する。
【0024】
図8で示すように、キャリブレーションにはRFIC部21内のTxVCO15からの信号を用いる。DPX2のキャリブレーションとして、図2に示したBand1のキャリブレーションを行う場合の動作について説明する。
はじめにTxフィルタ4のキャリブレーションについて述べる。Txフィルタ4のキャリブレーションでは、通過帯域のキャリブレーションと阻止帯域のキャリブレーションを行う。
【0025】
はじめに通過帯域のキャリブレーション(S1001〜S1009)について説明する。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のTx信号周波数(例えば1950MHz)に設定する。Rxフィルタ3は図3で示したスイッチ40をONとしてショート状態とし、図4の(c)に示したようにフィルタ特性をもたず、平坦な特性とする。スイッチ40を用いない場合は、RxフィルタのTx帯通過損失が小さくなるようにRxフィルタを制御する(S1002)。このようにすることで、Rxフィルタ3の影響を受けずにTxフィルタ4の通過帯域設定を行うことが可能となる。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のTx信号周波数+1MHz(例えば1951MHz)に設定する(S1003)。キャリブレーション用信号はPA14を介してDPX2に入力される。
【0026】
制御回路23がTxフィルタ4の周波数特性を制御するための制御データの初期設定値はデフォルト設定(例えば制御ビットの中心値)である(S1004)。Txフィルタ4、スイッチ40を通った信号はLNA13を介して、ミキサ20で図9の(a)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。1MHzの信号はRSSI22でレベル検波され(S1005)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1006)。
【0027】
制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し(S1007)、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが高くなるようにTxフィルタ4を制御する(S1007→S1004)。図9の(b)に示すように、例えばRSSI22での検出レベルが最も高くなった制御データの値をBand1のTxフィルタの通過帯域のキャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以上であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1008)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1009→S1003)。
【0028】
次に阻止帯域のキャリブレーション(S1010〜S1017)について説明する。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のRx信号周波数(例えば2140MHz)に設定する。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のRx信号周波数+1MHz(例えば2141MHz)に設定する(S1011)。キャリブレーション用信号はPA14を介してDPX2に入力される。
【0029】
制御回路23がTxフィルタ4の周波数特性を制御するための制御データの初期設定値は、デフォルト設定(例えば制御ビットの中心値)である(S1012)。Txフィルタ4を通った信号はLNA13を介して、ミキサ20で図9の(a)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。1MHzの信号はRSSI(Received Signal Strength Indicator;受信電力検出器)22でレベル検波され(S1013)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1014)。
【0030】
制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが低くなるようにTxフィルタ4を制御する(S1015→S1012)。図9の(b)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も低くなった制御データの値をBand1のTxフィルタの阻止帯域のキャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以下であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1016)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1017)。
【0031】
次にRxフィルタ3のキャリブレーションについて説明する。Rxフィルタ3のキャリブレーションでも通過帯域のキャリブレーションと阻止帯域のキャリブレーションを行う。
はじめに通過帯域のキャリブレーション(S1001〜S1009)について説明する。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のRx信号周波数(例えば2140MHz)に設定する。Txフィルタ4は図3で示したスイッチ41をONとしてショート状態とし、図4(b)に示したようにフィルタ特性をもたず、平坦な特性とする(S1002)。このようにすることで、Txフィルタ4の影響を受けずにRxフィルタ3の設定を行うことが可能となる。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のRx信号周波数+1MHz(例えば2141MHz)に設定する(S1003)。キャリブレーション用信号はPA14を介してDPX2に入力される。
【0032】
制御回路23がRxフィルタ3の周波数特性を制御するための制御データの初期設定値はデフォルト設定(例えば制御ビットの中心値)である(S1004)。スイッチ41、Rxフィルタ3を通った信号はLNA13を介して、ミキサ20で図9(a)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。1MHzの信号はRSSI22でレベル検波され(S1005)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1006)。
【0033】
制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが高くなるようにRxフィルタ3を制御する(S1007→S1004)。図9(b)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も高くなった制御データの値をBand1のRxフィルタの通過帯域キャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以上であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1008)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1009→S1003)。
【0034】
次に阻止帯域のキャリブレーション(S1010→S1017)について説明する。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のTx信号周波数(例えば1950MHz)に設定する。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のTx信号周波数+1MHz(例えば1951MHz)に設定する(S1011)。キャリブレーション用信号はPA14を介してDPX2に入力される。
【0035】
制御回路23がRxフィルタ3の周波数特性を制御するための制御データの初期設定値はデフォルト設定(例えば制御ビットの中心値)である(S1012)。Rxフィルタ3を通った信号はLNA13を介して、ミキサ20で図9(a)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。1MHzの信号はRSSI22でレベル検波され(S1013)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1014)。
【0036】
制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが低くなるようにRxフィルタ3を制御する(S1015→S1012)。図9(b)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も低くなった制御データの値をBand1のRxフィルタの阻止帯域キャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以下であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1016)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1017)。
【0037】
本実施例では、スイッチを用いて、Txフィルタの通過帯域キャリブレーション時はRxフィルタをスルーモード、Rxフィルタの通過帯域キャリブレーション時はTxフィルタをスルーモードとする方式について記載したが、これに限るものではない。例えばTxフィルタキャリブレーション時はRxフィルタをTxフィルタとほぼ同特性に、Rxフィルタキャリブレーション時はTxフィルタをRxフィルタとほぼ同特性にする等、Txフィルタキャリブレーション時はRxフィルタが影響を及ぼさないように、Rxフィルタキャリブレーション時はTxフィルタが影響をおよぼさないように設定する方式であればどのような方式でも良い。
【0038】
本実施例によれば、Txフィルタ、Rxフィルタとも、キャリブレーションにより通過帯域と阻止帯域を個別に最適化することで、通過損失が小さく、妨害抑圧度が高いフィルタ特性が得られる効果がある。また、送信(Tx)系からの信号を用い、受信(Rx)系のRSSIを用いて信号レベルを検出してフィルタの設定値を決めることにより、フィルタにばらつきがあっても補正可能なキャリブレーション方式を、新たな構成要素を追加せずに既存の構成要素を用いて提供することが可能である。
【0039】
次に図11〜図15を用いて、第1の実施例の妨害波キャンセラ48内のTxフィルタ5、振幅調整器7、位相調整器8及び遅延調整器9、Rxフィルタ6のキャリブレーション動作について説明する。妨害波キャンセラ48のキャリブレーション時は妨害波キャンセラ48とともにDPX2も動作させる。DPX2動作時の設定データは先に述べたDPX2キャリブレーション実施後のデータを用いる。
【0040】
図11は、実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するブロック図である。図11で示すように、キャリブレーションにはRFIC部21内のTxVCO15からの信号を用いる。妨害波キャンセラ48のキャリブレーションとして、図2に示したBand1のキャリブレーションを行う場合の動作について説明する。
図12は、実施例で用いる制御部動作を説明する図である。図12の(a)に妨害波キャンセラ48のキャリブレーション前の、妨害キャンセラ48出力の周波数特性模式図を示す。Rx抑圧ノッチとTx抑圧ノッチの2つのノッチ特性が見られるが、ノッチ周波数がそれぞれRx信号周波数、Tx信号周波数からずれている。このずれを妨害波キャンセラ48内のTxフィルタ5とRxフィルタ6のキャリブレーションで調整する。
【0041】
図12の(b)に示すように、Txフィルタ5のキャリブレーションによりRx抑圧ノッチ周波数をRx周波数にほぼ一致させ、図12の(c)に示すように、Rxフィルタ6のキャリブレーションによりTx抑圧ノッチ周波数をほぼTx周波数に一致させる。Txフィルタ5のキャリブレーション時はRx周波数(Band1の場合は2.14GHz)を用い、Rxフィルタ6のキャリブレーション時はTx周波数(Band1の場合は1.95GHz)を用い、いずれも図12の(d)に示すように例えば1MHzの周波数信号に変換した後、RSSIレベルを検出して、図12の(e)と(f)で示すように、制御ビットによりRSSIレベルが小さくなるようにキャリブレーションを行う。
【0042】
図13は、実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するフローチャートであり、Txフィルタ、Rxフィルタのキャリブレーションのフローチャートを示す。以下、図11のブロック図における動作を、図13のフローチャートに付したステップ番号(S)を参照しながら説明する。
【0043】
はじめにTxフィルタ5のキャリブレーションを行う(S1301)。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のRx信号周波数(例えば2140MHz)に設定する。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のRx信号周波数+1MHz(例えば2141MHz)に設定する(S1302)。キャリブレーション用信号はPA14を介して妨害波キャンセラ48に入力される。
【0044】
Txフィルタ5の初期設定値はデフォルト設定(例えばDPX2のキャリブレーションで設定した制御ビット)である(S1303)。Txフィルタ5、振幅調整器7、位相調整器8及び遅延調整器9、Rxフィルタ6を通った信号は合成器11で合成され、LNA13を介してミキサ20で図12の(d)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。1MHzの信号はRSSI22でレベル検波され(S1304)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1305)。
【0045】
制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが低くなるようにTxフィルタ5を制御する(S1306→S1303)。図12の(e)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も低くなった制御データの値をBand1のTxフィルタのキャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以下であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1307)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1308→S1302)。
【0046】
次にRxフィルタ6のキャリブレーションを行う(S1309)。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のTx信号周波数(例えば1950MHz)に設定する。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のTx信号周波数+1MHz(例えば1951MHz)に設定する(S1310)。キャリブレーション用信号はPA14を介して妨害波キャンセラ48に入力される。Rxフィルタ6の初期設定値はデフォルト設定(例えばDPX2のキャリブレーションで設定した制御ビット)である(S1311)。Txフィルタ5、振幅調整器7、位相調整器8及び遅延調整器9、Rxフィルタ3を通った信号は、LNA13を介してミキサ20で、図12(d)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。
【0047】
1MHzの信号はRSSI22でレベル検波され(S1312)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1313)。制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが低くなるようにRxフィルタ6を制御する(S1314→S1311)。図12(f)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も低くなった制御データの値をBand1のRxフィルタのキャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以下であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1315)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1316→S1310)。
【0048】
次に、妨害抑圧度の改善を行う。
図14Aと図14Bは、実施例で用いる制御部動作を説明する図である。妨害抑圧度改善のため、図14Aと図14Bに示すようにノッチの深さを振幅調整器7、位相調整器8及び遅延調整器9のキャリブレーションで調整する。図14Aの(a)はTxフィルタ5、Rxフィルタ6でノッチの周波数をほぼ所望の周波数に一致させた図である。図14Aの(b)で示すように前記と同様な方法により、RSSI22で検出される1MHzの信号レベルに基づきキャリブレーションを行う。
【0049】
図14Aの(b)と(e)に示すように制御回路23が振幅調整器7に与える制御ビットを変化させて、RSSI22での検出レベルが最も低くなるよう振幅調整器7の利得を最適化する。同様にして、図14Bの(c)と(f)に示すように位相調整器8でシフトする位相を、図14Bの(g)と(h)に示すように遅延調整器9で与える遅延を、それぞれキャリブレーションで最適化してノッチの深さを深くする。
【0050】
図15は、実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するフローチャートであり、振幅調整器7、位相調整器8、遅延調整器9のキャリブレーションのフローチャートを示す。以下、図15に付したステップ番号(S)を参照しながら、キャリブレーション動作について説明する。
【0051】
はじめに振幅調整器7のキャリブレーションを行うため、妨害波キャンセラ48とDPX(チューナブルフィルタ)2を動作させる(S1501,S1502)。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のTx信号周波数(例えば1950MHz)に設定する。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のTx信号周波数+1MHz(例えば1951MHz)に設定する(S1503)。制御回路23がTxフィルタ4と5、Rxフィルタ3と6に与える制御データのキャリブレーション用信号は、PA14を介して分配器10で分配されて一方はDPX2に入力され、もう一方は妨害波キャンセラ48に入力される。ここでは、DPX2のTxフィルタ3、Rxフィルタ4、妨害キャンセラ48のTxフィルタ5、Rxフィルタ6は既にキャリブレーションした最適値で制御されているものとする。
【0052】
振幅調整器7の利得を定めるために供給される制御ビットの初期設定値は、デフォルト設定(例えば制御ビットの中心値)である(S1504)。Txフィルタ6、振幅調整器7、位相調整器8及び遅延調整器9、Rxフィルタ5を通った一方のキャリブレーション信号は、合成器11でDPX2を通ってきたもう一方のキャリブレーション用信号と合成される。さらに、LNA13を介してミキサ20で、図14Aの(d)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。1MHzの信号はRSSI22でレベル検波され(S1505)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1506)。制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが低くなるように振幅調整器7の利得を制御する(S1507→S1504)。図14Aの(e)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も低くなった制御データの値を、Band1の振幅調整器7のキャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以下であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1508)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1509→S1503)。
【0053】
同様な制御を位相調整器8及び遅延調整器9についても行い、図14Bの(f)と(h)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も低くなった制御データの値をBand1の位相調整器8、遅延調整器9のキャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以下であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1510〜S1516、及びS1517〜S1523)。本実施例では、キャリブレーションをTx信号周波数(例えば1950MHz)で行ったが、Rx信号周波数(例えばBand1では2140MHz)など行ってもよいし、Tx信号周波数とRx信号周波数の両方で行っても良い。
本実施例によれば、送信(Tx)系からの信号を用い、受信(Rx)系のRSSIを用いて信号レベルを検出して振幅調整器7、位相調整器8、遅延調整器9の設定値を決めることにより、ばらつきがあっても補正可能なキャリブレーション方式を提供することが可能である。
【0054】
図16は、実施例で用いる実動作時制御動作を説明するブロック図である。
ここまで実動作前のキャリブレーション方式について記載してきたが、実動作時はDPX2、妨害キャンセラ48の各調整機構は変復調信号処理ブロック15からの制御により、誤差を管理する方式とする。具体的には、例えば図16のブロック図で示すように、ベースバンドブロック32のSN検出部24で検出した受信信号のSNが最大となるように制御信号26により、調整を行う。
【0055】
図17は、実施例で用いる実動作時制御動作を説明するフローチャートである。はじめに受信するチャンネルを設定し(S1701)、各調整ブロックに対しキャリブレーションで設定した設定データをメモリより読み出し(S1702)、各ブロックのデフォルト値として、送受信を開始する(S1703)。まず、DPX2のTxフィルタ4の制御を行う。SN検出部24からのSNが基準値以上となるように、制御回路23が制御を行う(S1705→S1704)。基準値以上となった場合、Rxフィルタ3の制御も同様に行う(S1707→S1706)。
【0056】
次に妨害キャンセラ48のTxフィルタ5の制御を行う。SN検出部24からのSNが基準値以上となるように、制御回路23が制御を行う(S1709→S1708)。基準値以上となった場合、Rxフィルタ6の制御も同様に行う(S1711→S1710)。
引き続き妨害キャンセラ48の振幅調整器7の制御を行う。SN検出部24からのSNが基準値以上となるように、制御回路23が制御を行う(S1713→S1712)。基準値以上となった場合、位相調整器8、遅延調整器9の制御も同様に行う(S1715→S1714、及びS1717→S1716)。フィルタの周波数ずれは性能劣化に対する感度が低いため、DPX2のフィルタの制御と妨害キャンセラ48のフィルタの制御は例えば1フレーム間隔などの長い周期で行い(S1718→S1704)、一方、妨害キャンセラ48の各ブロックの性能のずれは性能劣化に対する感度が高いため制御は1/150 フレーム間隔などの短い周期で行う(S1719→S1712)。
【0057】
3GPPで規定されるWCDMAやLTE方式は周波数多重方式だけではなく、送受信を時分割で多重するTDSCDMA(Time Division Synchronous Code Division Multiple Access)方式やTDD(Time Division Duplex)方式も規定される(図2のBand33〜Band40など)。この場合、受信時に送信側から送信信号が受信側に漏洩することはないため、キャンセラ48は動作させず、OFFにすることができる。キャンセラ48をOFFにすることで、低消費電流化が可能である。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらは本発明を限定するものではない。例えば、図10で示したステップS1001〜S1009とステップS1010〜S1017を、図示とは逆の順序で行っても良い。図1において、妨害キャンセラ48の内部にあるTxフィルタ5、振幅調整器7、位相調整器8、遅延調整器9、Rxフィルタ6の接続順序は異なっていても良い。図13で示したステップS1301〜S1308とステップS1309〜S1316を、図示とは逆の順序で行っても良い。このように各実施形態に対して変更を与えた実施形態、或いは構成要素や動作ステップを追加した実施形態を考えることができるが、いずれも本発明の範疇にある。
【符号の説明】
【0059】
2:可変周波数DPX、3,6:Rxフィルタ、4,5:Txフィルタ、7:振幅調整器、8:位相調整器、9:遅延調整器、10:分配器、11:合成器、15:TxVCO、16:Txローカル、22:RSSI、23:制御回路、24:SN検出部、48:妨害キャンセラ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信端末用モジュール及びそれを用いた移動通信端末に関する。特に、例えばWCDMA方式やLTE方式等のワイヤレス通信システムに対応した移動通信端末用モジュール及びそれを用いた移動通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話は既に実用化されているWCDMA(Wideband Code Division Multiplex Access)方式等のほか、LTE(Long term Evolution)方式等の新しい方式が検討されている。WCDMA方式やLTE方式は、送受信同時動作のため、送信周波数と受信周波数は異なる帯域を用いている。これらの方式においては、送受信帯域を分離するDPX(Duplexer)フィルタが用いられる。
【0003】
DPXの性能を改善する技術としては、非特許文献1にあるように、フィードフォワード技術を用いたものがある。非特許文献1には、フィードフォワード技術を用いた受信側における送信側からの受信帯域雑音の抑圧に関する方式が開示されている。WCDMA方式のBand5に対応した869〜894MHzの狭帯域の受信帯域雑音をキャンセルするため、フィードフォワードループは妨害キャンセラ(ノッチフィルタ、利得及び位相調整機能)より構成されている。また、通過周波数を可変とするチューナブルフィルタ(送信系、受信系フィルタを含めたDPX機能含む)については、特許文献1に記載されているように可変素子としてMEMS(Micro Electro Mechanical System)容量を用いた構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】United State Patent,US7446628B2“POLE−ZERO ELEMENTS AND RELATED SYSTEMA AND METHOD”
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“Adaptive Duplexer Implemented Using Single−Path and Multipath Feedforward Techniques with BST Phase Shifter”IEEE Transaction ON Microwave Theory and Techniques, Vol.53,No.1,January 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
携帯端末などにフィードフォワード技術を用いた妨害キャンセラやチューナブルフィルタを用いる場合、各ブロックのばらつきを補正するためのキャリブレーションが必要となる。しかしながら、上記特許文献1、非特許文献1とも制御方法やキャリブレーション技術に関する記載はない。
本発明の目的は、妨害キャンセラやチューナブルフィルタを端末に用いるときに好適なキャリブレーション技術や制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、端末の送信系からのキャリブレーション用信号と受信系の電力検出器(RSSI;Received Signal Strength Indicator)を用いて妨害キャンセラやチューナブルフィルタの通過帯域特性や阻止帯域特性などの性能を最適値に合わせるキャリブレーションを行い、キャリブレーションデータを保持して実動作時にデータを読み出すことで良好な送受信特性を実現する。チューナブルフィルタは、通過帯域特性と阻止帯域特性を個別にキャリブレーション実施することで最適化を図り、キャンセラは、阻止帯域周波数と阻止帯域の減衰量を個別にキャリブレーションすることで最適化を図る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型で信頼性が高く且つ複数のバンドに対応可能な移動通信端末用モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例における移動通信端末用モジュールの構成例を示すブロック図である。
【図2】WCDMA、LTE方式で用いる周波数バンドの模式図である。
【図3】実施例で用いるDPX2の実施例を示す図である。
【図4】実施例で用いるDPX2の特性模式図である。
【図5】実施例で用いる妨害キャンセラで用いるフィルタの回路図である。
【図6】実施例で用いるメモリの構成を説明する図である。
【図7】メモリのデータの保存と読み出しについて説明するフローチャートである。
【図8】実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するブロック図である。
【図9】実施例で用いる制御部動作を説明する図である。
【図10】実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するフローチャートである。
【図11】実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するブロック図である。
【図12】実施例で用いる制御部動作を説明する図である。
【図13】実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するフローチャートである。
【図14A】実施例で用いる制御部動作を説明する図である。
【図14B】実施例で用いる制御部動作を説明する図である。
【図15】実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するフローチャートである。
【図16】実施例で用いる実動作時制御動作を説明するブロック図である。
【図17】実施例で用いる実動作時制御動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明をする。
図1は、実施例における移動通信端末用モジュールの構成例を示すブロック図である。本実施例の構成は、例えばWCDMA方式等の移動通信端末用モジュールを対象とするが、これに限定されるものではない。
【0011】
はじめに信号の流れを説明する。ベースバンドブロック32から出力される送信信号31はTxVCO15、ローカル16からの信号により変調器17で周波数変換され、RFICブロック21より出力される。RFICブロック21からの信号はPA(Power Amplifier;パワーアンプ)14で増幅されてDPX2のTxフィルタ4に入力され、フィルタ処理により送信信号帯域を抜き出して、アンテナ1から端末の送信信号として出力される。
【0012】
一方、アンテナ1で受信された受信信号はチューナブルフィルタ2のRxフィルタ3に入力され、フィルタ処理により受信信号帯域を抜き出されて、LNA(Low Noise Amplifier;低雑音増幅器)13で増幅され、RFICブロック21に入力される。RFICブロック21に入力された信号は、RxVCO18、ローカル19からの信号によりミキサ20で周波数変換され、ベースバンドブロック32に受信信号30として入力される。DPX2は、複数バンドの送受信を可能とするため、Txフィルタ4とRxフィルタ3は周波数可変とし、制御信号25により周波数特性を制御される。
【0013】
図2は、WCDMA、LTE方式で用いる周波数バンドの模式図である。変化させる周波数帯域は、例えば図2に示すように3GPPの規格として決められているバンドに対応可能なものとする。
DPX2の周波数帯域を可変とすることで、従来の固定周波数方式に比べて妨害波の抑圧度が低下する。特にWCDMA方式などの端末では、アンテナ1で受信した受信信号に対する最も大きな妨害波は、端末自体から基地局に向かって送信する送信信号である。DPX2での妨害波の抑圧度が低下することにより、DPX2のTxフィルタ4とRxフィルタ3を通過した前記送信信号が、アンテナ1で受信した受信信号に与える妨害は、従来よりも大きくなる問題がある。
【0014】
図3は、実施例で用いるDPX2の実施例を示す図である。
図3の(a)にDPX2の構成例を示す。端子33はアンテナ1への接続端子、端子34はTx側への接続端子、端子35はRx側への接続端子である。移相器46,47を接続してRxフィルタ3とTxフィルタ4がそれぞれの影響を受けないようにする。Rxフィルタ3とTxフィルタ4は例えばL(インダクタンス)とC(容量)で構成されるLCフィルタであり、実施例ではTxフィルタ4はL38,44とC39,45、RxフィルタはL36,42とC37,43からなる。通過する周波数を可変とするため、C37,43,39,45はスイッチ等で容量値を切り替える機能を持つ。また、Rxフィルタ3はフィルタをスルーパスとするスイッチ40を、Txフィルタ4はフィルタをスルーパスとするスイッチ41をそれぞれ有する。
【0015】
図3の(c)は、可変周波数フィルタの特性例を示したものである。通過帯域は図3の(b)に示したBand1,Band2の帯域を例としている。フィルタを可変特性とすると、固定フィルタの場合に比べてフィルタのQが劣化して減衰特性が劣化するためノッチを入れて、図3の(c)に示すように、Txフィルタ4の性能としてRx帯雑音の抑圧度が20〜30dB程度、Rxフィルタ3の性能としてTx帯の抑圧度が20〜30dB程度を得る。
【0016】
図4は、実施例で用いるDPX2の特性模式図であり、図3の(a)で示したスイッチ40、スイッチ41を用いた場合の特性例を示す。図4の(a)はスイッチ40,41ともオープン状態の通常の動作特性であり、Txフィルタ4、Rxフィルタ3ともBand1の信号を通過させる設定となっている。図4の(b)はスイッチ41をショートした特性であり、Txフィルタ4出力は平坦な特性となる。図4の(c)はスイッチ40をショートした特性であり、Rxフィルタ3出力は平坦な特性が得られる。
【0017】
従来の固定周波数方式によるDPXの妨害抑圧度は、Rx帯、Tx帯とも50〜60dB程度あったのに対して、本実施例で用いる周波数帯域が可変なDPX2の妨害抑圧度は、Rx帯、Tx帯とも20〜30dB程度と小さい。このため、図1で示したように、送信信号の受信側への漏れこみをキャンセルする妨害波キャンセラブロック48を用いて、必要な妨害抑圧度を得るようにする。妨害キャンセラ48は、PA14出力の送信信号を分配して妨害波キャンセラに入力する分配器10、Txフィルタ5、振幅調整器7、位相調整器8及び遅延調整器9、Rxフィルタ6、妨害波キャンセラの出力をLNA入力に合成する合成器11のフィードフォワードループにより構成される。このフィードフォワードループでキャンセルされる妨害波は、DPX2を介して送信系から受信系に漏洩してきた送信信号、および同じくDPX2を介して送信系から受信系に漏洩してきた受信信号帯の雑音である。
【0018】
図5は、実施例で用いる妨害キャンセラで用いるフィルタの回路図である。
図5の(a)にTxフィルタ5、図5の(b)にRxフィルタ6の構成例を示す。Rxフィルタ6とTxフィルタ5は例えばL(インダクタンス)とC(容量)で構成されるLCフィルタであり、実施例ではTxフィルタ5はL57,60とC59,61、RxフィルタはL51,54とC53,55からなる。通過する周波数を可変とするため、C53,55,59,61はスイッチ等で容量値を切り替える機能を持つ。また、Rxフィルタ6はフィルタをスルーパスするスイッチ52を、Txフィルタ5はフィルタをスルーパスするスイッチ58をそれぞれ有する。
【0019】
DPX2に用いるRxフィルタ3、Txフィルタ4および妨害波キャンセラ48に用いる各ブロックは高精度の誤差制御が必要となるため、実際の携帯電話網で信号の送受信を行う実動作前のキャリブレーションと実動作時の誤差調整制御を行う。
キャリブレーションは各ブロックのばらつき補正を行うものであり、キャリブレーションで得たデータは、各ブロックの所要性能を得るための初期制御データとしてメモリ27に保持される。
【0020】
図6は、実施例で用いるメモリの構成を説明する図であり、メモリ27に保存する制御データの例を示す。各バンドに対してTxフィルタ4や振幅調整器7などの最適制御データを、初期値として例えば8ビットデータで保存する。一方、後記するように実動作時の誤差調整制御は、実動作時におけるSNをはじめとするパラメータの、各ブロックの所要性能からのずれを検出して補正をかけるものであり、同じく制御値データとしてメモリ27に例えば8ビットデータで保持する。
【0021】
図7は、メモリのデータの保存と読み出しについて説明するフローチャートである。図7の処理フローを用いて、メモリ27に対するデータの保存と読み出しについて、図中に付したステップ番号(S)を参照しながら説明する。工場などの出荷時に行う初期キャリブレーション後(S701)、メモリ27に各部データを保存格納する(S702)。フィールド等で端末を立ち上げたときに(S703)、例えばBand1を用いる場合に(S704)、メモリ27よりBand1の各部データを読み出す(S705)。この後、各ブロックの誤差調整制御を行い(S706)、Band1の新しいデータとしてメモリ27に保存する(S707)。その後、使用周波数が例えばBand2に変わった場合に(S708)、メモリ27よりBand2の各部データを読み出す(S709)。この後、各ブロックの誤差調整制御を行い(S710)、Band2の新しいデータとしてメモリ27に保存する(S711)。
【0022】
本実施例によれば、ステップS701で各可変ブロックの初期キャリブレーションを行うことで、各ブロックのばらつき補正を行うことができ、またステップS702でキャリブレーションデータをメモリに保存することで、ステップS703での端末立ち上げ時にステップS705で迅速に各ブロックの所要データを読み込むことができる。また、端末動作時に、ステップS706で各ブロックの制御データの誤差調整制御を行うことで、常に良好な端末特性を得ることが可能である。
【0023】
図3、図4と図8〜図10を用いて、第1の実施例のDPX2内Rxフィルタ3、Txフィルタ4のキャリブレーション動作について説明する。
図8は、実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するブロック図である。
図9は、実施例で用いる制御部動作を説明する図である。
図10は、実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するフローチャートであり、Txフィルタのキャリブレーションの場合を示しているが、Rxフィルタの場合でも図中のTxをRxと置換えれば他は同様であって良いので、Rxフィルタのキャリブレーションにおいても図10に基づき説明する。以下、図8のブロック図における動作を、図10のフローチャートに付したステップ番号(S)を参照しながら説明する。
【0024】
図8で示すように、キャリブレーションにはRFIC部21内のTxVCO15からの信号を用いる。DPX2のキャリブレーションとして、図2に示したBand1のキャリブレーションを行う場合の動作について説明する。
はじめにTxフィルタ4のキャリブレーションについて述べる。Txフィルタ4のキャリブレーションでは、通過帯域のキャリブレーションと阻止帯域のキャリブレーションを行う。
【0025】
はじめに通過帯域のキャリブレーション(S1001〜S1009)について説明する。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のTx信号周波数(例えば1950MHz)に設定する。Rxフィルタ3は図3で示したスイッチ40をONとしてショート状態とし、図4の(c)に示したようにフィルタ特性をもたず、平坦な特性とする。スイッチ40を用いない場合は、RxフィルタのTx帯通過損失が小さくなるようにRxフィルタを制御する(S1002)。このようにすることで、Rxフィルタ3の影響を受けずにTxフィルタ4の通過帯域設定を行うことが可能となる。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のTx信号周波数+1MHz(例えば1951MHz)に設定する(S1003)。キャリブレーション用信号はPA14を介してDPX2に入力される。
【0026】
制御回路23がTxフィルタ4の周波数特性を制御するための制御データの初期設定値はデフォルト設定(例えば制御ビットの中心値)である(S1004)。Txフィルタ4、スイッチ40を通った信号はLNA13を介して、ミキサ20で図9の(a)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。1MHzの信号はRSSI22でレベル検波され(S1005)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1006)。
【0027】
制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し(S1007)、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが高くなるようにTxフィルタ4を制御する(S1007→S1004)。図9の(b)に示すように、例えばRSSI22での検出レベルが最も高くなった制御データの値をBand1のTxフィルタの通過帯域のキャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以上であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1008)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1009→S1003)。
【0028】
次に阻止帯域のキャリブレーション(S1010〜S1017)について説明する。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のRx信号周波数(例えば2140MHz)に設定する。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のRx信号周波数+1MHz(例えば2141MHz)に設定する(S1011)。キャリブレーション用信号はPA14を介してDPX2に入力される。
【0029】
制御回路23がTxフィルタ4の周波数特性を制御するための制御データの初期設定値は、デフォルト設定(例えば制御ビットの中心値)である(S1012)。Txフィルタ4を通った信号はLNA13を介して、ミキサ20で図9の(a)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。1MHzの信号はRSSI(Received Signal Strength Indicator;受信電力検出器)22でレベル検波され(S1013)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1014)。
【0030】
制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが低くなるようにTxフィルタ4を制御する(S1015→S1012)。図9の(b)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も低くなった制御データの値をBand1のTxフィルタの阻止帯域のキャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以下であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1016)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1017)。
【0031】
次にRxフィルタ3のキャリブレーションについて説明する。Rxフィルタ3のキャリブレーションでも通過帯域のキャリブレーションと阻止帯域のキャリブレーションを行う。
はじめに通過帯域のキャリブレーション(S1001〜S1009)について説明する。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のRx信号周波数(例えば2140MHz)に設定する。Txフィルタ4は図3で示したスイッチ41をONとしてショート状態とし、図4(b)に示したようにフィルタ特性をもたず、平坦な特性とする(S1002)。このようにすることで、Txフィルタ4の影響を受けずにRxフィルタ3の設定を行うことが可能となる。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のRx信号周波数+1MHz(例えば2141MHz)に設定する(S1003)。キャリブレーション用信号はPA14を介してDPX2に入力される。
【0032】
制御回路23がRxフィルタ3の周波数特性を制御するための制御データの初期設定値はデフォルト設定(例えば制御ビットの中心値)である(S1004)。スイッチ41、Rxフィルタ3を通った信号はLNA13を介して、ミキサ20で図9(a)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。1MHzの信号はRSSI22でレベル検波され(S1005)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1006)。
【0033】
制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが高くなるようにRxフィルタ3を制御する(S1007→S1004)。図9(b)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も高くなった制御データの値をBand1のRxフィルタの通過帯域キャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以上であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1008)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1009→S1003)。
【0034】
次に阻止帯域のキャリブレーション(S1010→S1017)について説明する。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のTx信号周波数(例えば1950MHz)に設定する。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のTx信号周波数+1MHz(例えば1951MHz)に設定する(S1011)。キャリブレーション用信号はPA14を介してDPX2に入力される。
【0035】
制御回路23がRxフィルタ3の周波数特性を制御するための制御データの初期設定値はデフォルト設定(例えば制御ビットの中心値)である(S1012)。Rxフィルタ3を通った信号はLNA13を介して、ミキサ20で図9(a)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。1MHzの信号はRSSI22でレベル検波され(S1013)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1014)。
【0036】
制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが低くなるようにRxフィルタ3を制御する(S1015→S1012)。図9(b)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も低くなった制御データの値をBand1のRxフィルタの阻止帯域キャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以下であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1016)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1017)。
【0037】
本実施例では、スイッチを用いて、Txフィルタの通過帯域キャリブレーション時はRxフィルタをスルーモード、Rxフィルタの通過帯域キャリブレーション時はTxフィルタをスルーモードとする方式について記載したが、これに限るものではない。例えばTxフィルタキャリブレーション時はRxフィルタをTxフィルタとほぼ同特性に、Rxフィルタキャリブレーション時はTxフィルタをRxフィルタとほぼ同特性にする等、Txフィルタキャリブレーション時はRxフィルタが影響を及ぼさないように、Rxフィルタキャリブレーション時はTxフィルタが影響をおよぼさないように設定する方式であればどのような方式でも良い。
【0038】
本実施例によれば、Txフィルタ、Rxフィルタとも、キャリブレーションにより通過帯域と阻止帯域を個別に最適化することで、通過損失が小さく、妨害抑圧度が高いフィルタ特性が得られる効果がある。また、送信(Tx)系からの信号を用い、受信(Rx)系のRSSIを用いて信号レベルを検出してフィルタの設定値を決めることにより、フィルタにばらつきがあっても補正可能なキャリブレーション方式を、新たな構成要素を追加せずに既存の構成要素を用いて提供することが可能である。
【0039】
次に図11〜図15を用いて、第1の実施例の妨害波キャンセラ48内のTxフィルタ5、振幅調整器7、位相調整器8及び遅延調整器9、Rxフィルタ6のキャリブレーション動作について説明する。妨害波キャンセラ48のキャリブレーション時は妨害波キャンセラ48とともにDPX2も動作させる。DPX2動作時の設定データは先に述べたDPX2キャリブレーション実施後のデータを用いる。
【0040】
図11は、実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するブロック図である。図11で示すように、キャリブレーションにはRFIC部21内のTxVCO15からの信号を用いる。妨害波キャンセラ48のキャリブレーションとして、図2に示したBand1のキャリブレーションを行う場合の動作について説明する。
図12は、実施例で用いる制御部動作を説明する図である。図12の(a)に妨害波キャンセラ48のキャリブレーション前の、妨害キャンセラ48出力の周波数特性模式図を示す。Rx抑圧ノッチとTx抑圧ノッチの2つのノッチ特性が見られるが、ノッチ周波数がそれぞれRx信号周波数、Tx信号周波数からずれている。このずれを妨害波キャンセラ48内のTxフィルタ5とRxフィルタ6のキャリブレーションで調整する。
【0041】
図12の(b)に示すように、Txフィルタ5のキャリブレーションによりRx抑圧ノッチ周波数をRx周波数にほぼ一致させ、図12の(c)に示すように、Rxフィルタ6のキャリブレーションによりTx抑圧ノッチ周波数をほぼTx周波数に一致させる。Txフィルタ5のキャリブレーション時はRx周波数(Band1の場合は2.14GHz)を用い、Rxフィルタ6のキャリブレーション時はTx周波数(Band1の場合は1.95GHz)を用い、いずれも図12の(d)に示すように例えば1MHzの周波数信号に変換した後、RSSIレベルを検出して、図12の(e)と(f)で示すように、制御ビットによりRSSIレベルが小さくなるようにキャリブレーションを行う。
【0042】
図13は、実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するフローチャートであり、Txフィルタ、Rxフィルタのキャリブレーションのフローチャートを示す。以下、図11のブロック図における動作を、図13のフローチャートに付したステップ番号(S)を参照しながら説明する。
【0043】
はじめにTxフィルタ5のキャリブレーションを行う(S1301)。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のRx信号周波数(例えば2140MHz)に設定する。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のRx信号周波数+1MHz(例えば2141MHz)に設定する(S1302)。キャリブレーション用信号はPA14を介して妨害波キャンセラ48に入力される。
【0044】
Txフィルタ5の初期設定値はデフォルト設定(例えばDPX2のキャリブレーションで設定した制御ビット)である(S1303)。Txフィルタ5、振幅調整器7、位相調整器8及び遅延調整器9、Rxフィルタ6を通った信号は合成器11で合成され、LNA13を介してミキサ20で図12の(d)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。1MHzの信号はRSSI22でレベル検波され(S1304)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1305)。
【0045】
制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが低くなるようにTxフィルタ5を制御する(S1306→S1303)。図12の(e)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も低くなった制御データの値をBand1のTxフィルタのキャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以下であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1307)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1308→S1302)。
【0046】
次にRxフィルタ6のキャリブレーションを行う(S1309)。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のTx信号周波数(例えば1950MHz)に設定する。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のTx信号周波数+1MHz(例えば1951MHz)に設定する(S1310)。キャリブレーション用信号はPA14を介して妨害波キャンセラ48に入力される。Rxフィルタ6の初期設定値はデフォルト設定(例えばDPX2のキャリブレーションで設定した制御ビット)である(S1311)。Txフィルタ5、振幅調整器7、位相調整器8及び遅延調整器9、Rxフィルタ3を通った信号は、LNA13を介してミキサ20で、図12(d)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。
【0047】
1MHzの信号はRSSI22でレベル検波され(S1312)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1313)。制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが低くなるようにRxフィルタ6を制御する(S1314→S1311)。図12(f)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も低くなった制御データの値をBand1のRxフィルタのキャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以下であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1315)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1316→S1310)。
【0048】
次に、妨害抑圧度の改善を行う。
図14Aと図14Bは、実施例で用いる制御部動作を説明する図である。妨害抑圧度改善のため、図14Aと図14Bに示すようにノッチの深さを振幅調整器7、位相調整器8及び遅延調整器9のキャリブレーションで調整する。図14Aの(a)はTxフィルタ5、Rxフィルタ6でノッチの周波数をほぼ所望の周波数に一致させた図である。図14Aの(b)で示すように前記と同様な方法により、RSSI22で検出される1MHzの信号レベルに基づきキャリブレーションを行う。
【0049】
図14Aの(b)と(e)に示すように制御回路23が振幅調整器7に与える制御ビットを変化させて、RSSI22での検出レベルが最も低くなるよう振幅調整器7の利得を最適化する。同様にして、図14Bの(c)と(f)に示すように位相調整器8でシフトする位相を、図14Bの(g)と(h)に示すように遅延調整器9で与える遅延を、それぞれキャリブレーションで最適化してノッチの深さを深くする。
【0050】
図15は、実施例で用いるキャリブレーション動作を説明するフローチャートであり、振幅調整器7、位相調整器8、遅延調整器9のキャリブレーションのフローチャートを示す。以下、図15に付したステップ番号(S)を参照しながら、キャリブレーション動作について説明する。
【0051】
はじめに振幅調整器7のキャリブレーションを行うため、妨害波キャンセラ48とDPX(チューナブルフィルタ)2を動作させる(S1501,S1502)。TxVCO15,Txローカル16からの出力キャリブレーション用信号をBand1のTx信号周波数(例えば1950MHz)に設定する。また、RxVCO18,Rxローカル19からのローカル信号をBand1のTx信号周波数+1MHz(例えば1951MHz)に設定する(S1503)。制御回路23がTxフィルタ4と5、Rxフィルタ3と6に与える制御データのキャリブレーション用信号は、PA14を介して分配器10で分配されて一方はDPX2に入力され、もう一方は妨害波キャンセラ48に入力される。ここでは、DPX2のTxフィルタ3、Rxフィルタ4、妨害キャンセラ48のTxフィルタ5、Rxフィルタ6は既にキャリブレーションした最適値で制御されているものとする。
【0052】
振幅調整器7の利得を定めるために供給される制御ビットの初期設定値は、デフォルト設定(例えば制御ビットの中心値)である(S1504)。Txフィルタ6、振幅調整器7、位相調整器8及び遅延調整器9、Rxフィルタ5を通った一方のキャリブレーション信号は、合成器11でDPX2を通ってきたもう一方のキャリブレーション用信号と合成される。さらに、LNA13を介してミキサ20で、図14Aの(d)に示すように1MHzの信号に周波数変換される。1MHzの信号はRSSI22でレベル検波され(S1505)、検出レベルは制御回路23に報告される(S1506)。制御回路23では、基準値と検出レベルを比較し、比較結果に応じて制御信号25で検出レベルが低くなるように振幅調整器7の利得を制御する(S1507→S1504)。図14Aの(e)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も低くなった制御データの値を、Band1の振幅調整器7のキャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以下であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1508)。同様のキャリブレーションを必要な全バンドについて実施する(S1509→S1503)。
【0053】
同様な制御を位相調整器8及び遅延調整器9についても行い、図14Bの(f)と(h)に示すように、例えばRSSI22の検出レベルが最も低くなった制御データの値をBand1の位相調整器8、遅延調整器9のキャリブレーション結果としてメモリ27に保存する。或いは、RSSI22での検出レベルが所定の基準値以下であれば、その制御データの値をメモリ27に保存しても良い(S1510〜S1516、及びS1517〜S1523)。本実施例では、キャリブレーションをTx信号周波数(例えば1950MHz)で行ったが、Rx信号周波数(例えばBand1では2140MHz)など行ってもよいし、Tx信号周波数とRx信号周波数の両方で行っても良い。
本実施例によれば、送信(Tx)系からの信号を用い、受信(Rx)系のRSSIを用いて信号レベルを検出して振幅調整器7、位相調整器8、遅延調整器9の設定値を決めることにより、ばらつきがあっても補正可能なキャリブレーション方式を提供することが可能である。
【0054】
図16は、実施例で用いる実動作時制御動作を説明するブロック図である。
ここまで実動作前のキャリブレーション方式について記載してきたが、実動作時はDPX2、妨害キャンセラ48の各調整機構は変復調信号処理ブロック15からの制御により、誤差を管理する方式とする。具体的には、例えば図16のブロック図で示すように、ベースバンドブロック32のSN検出部24で検出した受信信号のSNが最大となるように制御信号26により、調整を行う。
【0055】
図17は、実施例で用いる実動作時制御動作を説明するフローチャートである。はじめに受信するチャンネルを設定し(S1701)、各調整ブロックに対しキャリブレーションで設定した設定データをメモリより読み出し(S1702)、各ブロックのデフォルト値として、送受信を開始する(S1703)。まず、DPX2のTxフィルタ4の制御を行う。SN検出部24からのSNが基準値以上となるように、制御回路23が制御を行う(S1705→S1704)。基準値以上となった場合、Rxフィルタ3の制御も同様に行う(S1707→S1706)。
【0056】
次に妨害キャンセラ48のTxフィルタ5の制御を行う。SN検出部24からのSNが基準値以上となるように、制御回路23が制御を行う(S1709→S1708)。基準値以上となった場合、Rxフィルタ6の制御も同様に行う(S1711→S1710)。
引き続き妨害キャンセラ48の振幅調整器7の制御を行う。SN検出部24からのSNが基準値以上となるように、制御回路23が制御を行う(S1713→S1712)。基準値以上となった場合、位相調整器8、遅延調整器9の制御も同様に行う(S1715→S1714、及びS1717→S1716)。フィルタの周波数ずれは性能劣化に対する感度が低いため、DPX2のフィルタの制御と妨害キャンセラ48のフィルタの制御は例えば1フレーム間隔などの長い周期で行い(S1718→S1704)、一方、妨害キャンセラ48の各ブロックの性能のずれは性能劣化に対する感度が高いため制御は1/150 フレーム間隔などの短い周期で行う(S1719→S1712)。
【0057】
3GPPで規定されるWCDMAやLTE方式は周波数多重方式だけではなく、送受信を時分割で多重するTDSCDMA(Time Division Synchronous Code Division Multiple Access)方式やTDD(Time Division Duplex)方式も規定される(図2のBand33〜Band40など)。この場合、受信時に送信側から送信信号が受信側に漏洩することはないため、キャンセラ48は動作させず、OFFにすることができる。キャンセラ48をOFFにすることで、低消費電流化が可能である。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらは本発明を限定するものではない。例えば、図10で示したステップS1001〜S1009とステップS1010〜S1017を、図示とは逆の順序で行っても良い。図1において、妨害キャンセラ48の内部にあるTxフィルタ5、振幅調整器7、位相調整器8、遅延調整器9、Rxフィルタ6の接続順序は異なっていても良い。図13で示したステップS1301〜S1308とステップS1309〜S1316を、図示とは逆の順序で行っても良い。このように各実施形態に対して変更を与えた実施形態、或いは構成要素や動作ステップを追加した実施形態を考えることができるが、いずれも本発明の範疇にある。
【符号の説明】
【0059】
2:可変周波数DPX、3,6:Rxフィルタ、4,5:Txフィルタ、7:振幅調整器、8:位相調整器、9:遅延調整器、10:分配器、11:合成器、15:TxVCO、16:Txローカル、22:RSSI、23:制御回路、24:SN検出部、48:妨害キャンセラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナから送信する複数の周波数バンドを有する送信信号を生成し、前記アンテナが受信した複数の周波数バンドを有する受信信号を処理する移動通信端末用モジュールであって、
前記送信信号を生成する送信回路と、
前記受信信号を処理する受信回路と、
前記送信回路が生成した送信信号を前記アンテナに供給し前記アンテナが受信した受信信号を前記受信回路に供給するよう、前記送信信号と受信信号を通過させる周波数特性の可変なフィルタと、
前記送信回路から前記受信回路に漏れこむ前記送信信号と、前記送信回路が発生した前記受信信号の周波数帯域の雑音を、前記受信信号からキャンセルする妨害信号のキャンセル部と、
前記移動通信端末用モジュールの動作を制御する制御部を備え、
該制御部は、
送受信動作の開始前に、前記送信回路が発生した信号を用いて前記フィルタと前記キャンセル部の周波数特性を調整し、
前記フィルタ部の調整においては通過帯域と阻止帯域を個別に調整するように制御することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項2】
アンテナから送信する複数の周波数バンドを有する送信信号を生成し、前記アンテナが受信した複数の周波数バンドを有する受信信号を処理する移動通信端末用モジュールであって、
前記送信信号を生成する送信回路と、
前記受信信号を処理する受信回路と、
前記送信回路が生成した送信信号を前記アンテナに供給し前記アンテナが受信した受信信号を前記受信回路に供給するよう、前記送信信号と受信信号を通過させる周波数特性の可変なフィルタと、
前記送信回路から前記受信回路に漏れこむ前記送信信号と、前記送信回路が発生した前記受信信号の周波数帯域の雑音を、前記受信信号からキャンセルする妨害信号のキャンセル部と、
前記移動通信端末用モジュールの動作を制御する制御部を備え、
該制御部は、
送受信動作の開始前に、前記送信回路が発生した信号を用いて前記フィルタと前記キャンセル部の周波数特性を調整し、
前記キャンセル部の調整においては阻止帯域の周波数と減衰量を個別に調整するように制御することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の移動通信端末用モジュールであって、
前記フィルタは送信信号を通過させて受信信号を抑圧する送信フィルタと、受信信号を通過させて送信信号を抑圧する受信フィルタを備え、
前記制御部は、
前記送信フィルタの通過帯域を調整する際には前記受信フィルタの周波数特性を前記送信信号が通過する特性に切り替え、前記受信フィルタの通過帯域を調整する際には前記送信フィルタの周波数特性を前記受信信号が通過する特性に切り替えるように制御することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の移動通信端末用モジュールであって、
前記制御部は、前記フィルタと前記キャンセル部の周波数特性を調整する際には、
前記送信回路が発生した信号を前記受信回路で検波しレベル検出した結果に基づいて前記周波数特性を調整するように制御することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項5】
アンテナから送信する複数の周波数バンドを有する送信信号を生成し、前記アンテナが受信した複数の周波数バンドを有する受信信号を処理する移動通信端末用モジュールであって、
前記送信信号を生成する送信回路と、
前記受信信号を処理する受信回路と、
前記送信回路が生成した送信信号を前記アンテナに供給し前記アンテナが受信した受信信号を前記受信回路に供給するよう、前記送信信号と受信信号を通過させる周波数特性の可変なフィルタと、
前記送信回路から前記受信回路に漏れこむ前記送信信号と、前記送信回路が発生した前記受信信号の周波数帯域の雑音を、前記受信信号からキャンセルする妨害信号のキャンセル部と、
前記移動通信端末用モジュールの動作を制御する制御部を備え、
該制御部は、前記送信信号と受信信号が時分割多重される場合には、
前記キャンセル部の動作を停止するように制御することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の移動通信端末用モジュールであって、
前記キャンセル部は、
前記送信回路が生成した送信信号の一部を分配し所定の処理を行った後に、前記フィルタ部が前記受信回路に供給する受信信号と合成するフィードフォワード回路であることを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の移動通信端末用モジュールであって、
前記キャンセル部は、
前記送信回路が生成した送信信号の一部を分配する分配器と、
該分配器が分配した前記送信信号の振幅を調整する振幅調整器と、
前記分配器が分配した前記送信信号の位相を調整する位相調整器と、
前記分配器が分配した前記送信信号の遅延時間を調整する遅延調整器と、
前記フィルタが前記送信信号に与える周波数特性と略一致した周波数特性を有するTxフィルタと、
前記フィルタが前記受信信号に与える周波数特性と略一致した周波数特性を有するRxフィルタと、
前記分配器、振幅調整器、位相調整器、遅延調整器、Txフィルタ及びRxフィルタで処理された前記送信信号を前記受信信号と合成する合成器
を有することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の移動通信端末用モジュールであって、
前記制御部は、
送受信動作を開始した後においては、前記受信回路が受信した受信信号のSNに基づき前記フィルタと前記キャンセル部の周波数特性を調整するように制御することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項1】
アンテナから送信する複数の周波数バンドを有する送信信号を生成し、前記アンテナが受信した複数の周波数バンドを有する受信信号を処理する移動通信端末用モジュールであって、
前記送信信号を生成する送信回路と、
前記受信信号を処理する受信回路と、
前記送信回路が生成した送信信号を前記アンテナに供給し前記アンテナが受信した受信信号を前記受信回路に供給するよう、前記送信信号と受信信号を通過させる周波数特性の可変なフィルタと、
前記送信回路から前記受信回路に漏れこむ前記送信信号と、前記送信回路が発生した前記受信信号の周波数帯域の雑音を、前記受信信号からキャンセルする妨害信号のキャンセル部と、
前記移動通信端末用モジュールの動作を制御する制御部を備え、
該制御部は、
送受信動作の開始前に、前記送信回路が発生した信号を用いて前記フィルタと前記キャンセル部の周波数特性を調整し、
前記フィルタ部の調整においては通過帯域と阻止帯域を個別に調整するように制御することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項2】
アンテナから送信する複数の周波数バンドを有する送信信号を生成し、前記アンテナが受信した複数の周波数バンドを有する受信信号を処理する移動通信端末用モジュールであって、
前記送信信号を生成する送信回路と、
前記受信信号を処理する受信回路と、
前記送信回路が生成した送信信号を前記アンテナに供給し前記アンテナが受信した受信信号を前記受信回路に供給するよう、前記送信信号と受信信号を通過させる周波数特性の可変なフィルタと、
前記送信回路から前記受信回路に漏れこむ前記送信信号と、前記送信回路が発生した前記受信信号の周波数帯域の雑音を、前記受信信号からキャンセルする妨害信号のキャンセル部と、
前記移動通信端末用モジュールの動作を制御する制御部を備え、
該制御部は、
送受信動作の開始前に、前記送信回路が発生した信号を用いて前記フィルタと前記キャンセル部の周波数特性を調整し、
前記キャンセル部の調整においては阻止帯域の周波数と減衰量を個別に調整するように制御することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の移動通信端末用モジュールであって、
前記フィルタは送信信号を通過させて受信信号を抑圧する送信フィルタと、受信信号を通過させて送信信号を抑圧する受信フィルタを備え、
前記制御部は、
前記送信フィルタの通過帯域を調整する際には前記受信フィルタの周波数特性を前記送信信号が通過する特性に切り替え、前記受信フィルタの通過帯域を調整する際には前記送信フィルタの周波数特性を前記受信信号が通過する特性に切り替えるように制御することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の移動通信端末用モジュールであって、
前記制御部は、前記フィルタと前記キャンセル部の周波数特性を調整する際には、
前記送信回路が発生した信号を前記受信回路で検波しレベル検出した結果に基づいて前記周波数特性を調整するように制御することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項5】
アンテナから送信する複数の周波数バンドを有する送信信号を生成し、前記アンテナが受信した複数の周波数バンドを有する受信信号を処理する移動通信端末用モジュールであって、
前記送信信号を生成する送信回路と、
前記受信信号を処理する受信回路と、
前記送信回路が生成した送信信号を前記アンテナに供給し前記アンテナが受信した受信信号を前記受信回路に供給するよう、前記送信信号と受信信号を通過させる周波数特性の可変なフィルタと、
前記送信回路から前記受信回路に漏れこむ前記送信信号と、前記送信回路が発生した前記受信信号の周波数帯域の雑音を、前記受信信号からキャンセルする妨害信号のキャンセル部と、
前記移動通信端末用モジュールの動作を制御する制御部を備え、
該制御部は、前記送信信号と受信信号が時分割多重される場合には、
前記キャンセル部の動作を停止するように制御することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の移動通信端末用モジュールであって、
前記キャンセル部は、
前記送信回路が生成した送信信号の一部を分配し所定の処理を行った後に、前記フィルタ部が前記受信回路に供給する受信信号と合成するフィードフォワード回路であることを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の移動通信端末用モジュールであって、
前記キャンセル部は、
前記送信回路が生成した送信信号の一部を分配する分配器と、
該分配器が分配した前記送信信号の振幅を調整する振幅調整器と、
前記分配器が分配した前記送信信号の位相を調整する位相調整器と、
前記分配器が分配した前記送信信号の遅延時間を調整する遅延調整器と、
前記フィルタが前記送信信号に与える周波数特性と略一致した周波数特性を有するTxフィルタと、
前記フィルタが前記受信信号に与える周波数特性と略一致した周波数特性を有するRxフィルタと、
前記分配器、振幅調整器、位相調整器、遅延調整器、Txフィルタ及びRxフィルタで処理された前記送信信号を前記受信信号と合成する合成器
を有することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の移動通信端末用モジュールであって、
前記制御部は、
送受信動作を開始した後においては、前記受信回路が受信した受信信号のSNに基づき前記フィルタと前記キャンセル部の周波数特性を調整するように制御することを特徴とする移動通信端末用モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−253507(P2012−253507A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123541(P2011−123541)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
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