説明

移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法

【課題】EVMをスロットごとに表示することができる移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法を提供する。
【解決手段】移動通信端末試験装置1は、移動通信端末2からの無線周波数の送信信号を受信してベースバンド信号に変換し、ベースバンド信号をデジタル値の受信信号として出力する受信部12と、受信信号に含まれる各シンボルの変調精度を測定するEVM測定回路22と、複数のスロットのうちの少なくとも1つを選択するスロット選択部32と、スロット選択部32が選択したスロットに含まれる各シンボルのEVMを表示する表示部43と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話やモバイル端末等の移動通信端末を試験する移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の移動通信端末試験装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。この移動通信端末試験装置は、移動通信端末に信号を送信する送信回路と、移動通信端末からの信号を受信する受信回路とを有し、移動通信端末に対して信号を送受信する擬似基地局として動作することにより、移動通信端末の試験を行う構成となっている。特許文献1には、移動通信端末が用いる通信方式として、符号分割多元接続(CDMA:Code Division Multiple Access)方式や、広帯域符号分割多元接続(W−CDMA:Wideband-Code Division Multiple Access)方式の記載がある。
【0003】
このW−CDMAの次世代の通信規格として、3GPP(Third Generation Partnership Project)によるLTE(Long Term Evolution)と呼ばれる通信規格が検討され、現在、導入が開始されている。LTEでは、下りリンクについてはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)、上りリンクについてはSC−FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access:シングルキャリア−周波数分割多元接続)が採用されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
OFDMAは、周波数帯域を複数の狭い周波数帯域(サブキャリア)に分割し、各周波数帯上にデータを載せて伝送を行う方式であり、サブキャリアを周波数上に、一部重なりあいながらも互いに干渉することなく密に並べることで、高速伝送を実現し、周波数の利用効率を上げることができる。
【0005】
SC−FDMAは、周波数帯域を分割し、複数の端末間で互いに異なる周波数帯域を用いて伝送することにより、移動通信端末間の干渉を低減することができる伝送方式である。SC−FDMAでは、送信電力の変動が小さくなる特徴を持つことから、端末の低消費電力化及び広いカバレッジを実現できる。
【0006】
このSC−FDMAにおいてデジタル信号は、図12に示すようなフォーマットで伝送される。すなわち、時間軸方向において、7個のSC−FDMAシンボルによって構成された、時間幅が0.5ms(ミリ秒)のスロットが互いに隣接して形成されている。このスロット2個で1個のサブフレームが構成され、10個のサブフレームで1個のフレームが構成されている。
【0007】
また、各スロットは、周波数軸方向において、周波数帯域を割り当てるための複数のブロックに分割される。15kHz間隔のサブキャリア12個(180kHz)を周波数軸方向の単位として、1個のリソースブロック(以下「RB」と記す。)が構成される。SC−FDMAでは、RBが移動通信端末ごとに動的に割り当てられるようになっている。図12では、4つの移動通信端末UE1〜4に対してRBがそれぞれ割り当てられた例を示している。
【0008】
このSC−FDMAを利用した移動通信端末の試験規格としてEVM(Error Vector Magnitude:変調精度)に関する試験が定められている(例えば、非特許文献2参照)。この試験では、1フレーム中に8個のスロットの信号が定義されたテストパターンにより、2フレーム分測定して合計16スロット分のEVMの平均値を一括して求めることになっている。従来の移動通信端末試験装置では、この試験規格に基づいて移動通信端末のEVMを評価していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−46431号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】3GPP TR 25.814,"Physical layer aspects for evolved Universal Terrestrial Radio Access"
【非特許文献2】3GPP TS 36.521−1 6.5.2.1A,"PUSCH−EVM with exclusion period"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の移動通信端末試験装置では、16スロット分のEVMの平均値を一括して求める構成となっているので、スロットごとのEVMがどのような値であるかを試験者に示すことができないという課題があった。そのため、従来の移動通信端末試験装置では、移動通信端末の開発段階や製造ラインでの評価段階において詳細な解析や不具合の発見等が十分にできない場合があり、その改善が望まれていた。
【0012】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたものであり、EVMをスロットごとに表示することができる移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る移動通信端末試験装置は、所定の変調方式で変調された複数のシンボルを一定の時間間隔で区切られた複数のスロットに含めた無線周波数の信号を送受信する移動通信端末(2)を試験する移動通信端末試験装置(1)であって、前記無線周波数の送信信号を受信してベースバンド信号に変換し、前記ベースバンド信号をデジタル値の受信信号として出力する受信信号出力手段(12)と、前記受信信号に含まれる前記各シンボルの変調精度を測定する変調精度測定手段(22)と、前記複数のスロットのうちの少なくとも1つを選択するスロット選択手段(32)と、前記スロット選択手段が選択したスロットに含まれる各シンボルの変調精度を表示する表示手段(43)と、を備えた構成を有している。
【0014】
この構成により、本発明の請求項1に係る移動通信端末試験装置は、表示手段が、スロット選択手段が選択したスロットに含まれる各シンボルのEVMを表示するので、EVMをスロットごとに表示することができる。
【0015】
本発明の請求項2に係る移動通信端末試験装置は、前記表示手段は、前記スロット選択手段が選択したスロットに含まれる各シンボルの変調精度グラフ(51c、52a)を表示するものである構成を有している。
【0016】
この構成により、本発明の請求項2に係る移動通信端末試験装置は、各シンボルのEVMグラフをスロットごとに表示することができる。
【0017】
本発明の請求項3に係る移動通信端末試験装置は、前記変調精度測定手段は、前記スロットに含まれる前記複数のシンボルのうち、予め定められた測定対象シンボルを前記変調精度の測定対象とするものであり、前記表示手段は、前記測定対象シンボルが含まれる測定区間(73)と、前記測定対象シンボルが含まれない除外区間(71、72)とを識別表示する表示領域(51)を表示するものである構成を有している。
【0018】
この構成により、本発明の請求項3に係る移動通信端末試験装置は、EVMの測定区間と除外区間とを識別表示することができる。
【0019】
本発明の請求項4に係る移動通信端末試験装置は、前記移動通信端末は、前記所定の変調方式で変調された複数のシンボルが時間領域及び周波数領域の双方向の予め定められた領域に割り当てられた送信信号を送信するものであって、前記表示手段は、前記送信信号が割り当てられた割当領域(51a)と、前記割当領域とは異なる非割当領域(51b)とを識別表示する表示領域(51)を表示するものである構成を有している。
【0020】
この構成により、本発明の請求項4に係る移動通信端末試験装置は、送信信号の割当領域と非割当領域とを識別表示することができる。
【0021】
本発明の請求項5に係る移動通信端末試験装置は、前記表示手段は、前記送信信号が割り当てられた割当領域の割当数をスロットごとに示すグラフの表示領域(53c)を表示し、前記スロット選択手段に任意のスロットを選択させるものである構成を有している。
【0022】
この構成により、本発明の請求項5に係る移動通信端末試験装置は、各スロットに割り当てられる領域数が動的に変更されても、試験者がスロットを選択する際に、領域の割当状況を試験者に直感的に把握させることができる。
【0023】
本発明の請求項6に係る移動通信端末試験方法は、所定の変調方式で変調された複数のシンボルを一定の時間間隔で区切られた複数のスロットに含めた無線周波数の信号を送受信する移動通信端末(2)を試験する移動通信端末試験方法であって、前記無線周波数の送信信号を受信してベースバンド信号に変換し、前記ベースバンド信号をデジタル値の受信信号として入力する受信信号入力ステップ(S11)と、前記受信信号に含まれる前記各シンボルの変調精度を測定する変調精度測定ステップ(S14)と、前記複数のスロットのうちの少なくとも1つを選択するスロット選択ステップ(S16)と、前記スロット選択ステップで選択したスロットに含まれる各シンボルの変調精度を表示する表示ステップ(S19)と、を含む構成を有している。
【0024】
この構成により、本発明の請求項6に係る移動通信端末試験方法は、表示ステップにおいて、スロット選択ステップで選択したスロットに含まれる各シンボルのEVMを表示するので、EVMをスロットごとに表示することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、EVMをスロットごとに表示することができるという効果を有する移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態において、試験対象の移動通信端末が送信するEVMテストパターンの説明図である。
【図2】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態において、試験対象の移動通信端末が送信するEVMテストパターンの各スロットの説明図である。
【図3】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態における除外区間の説明図である。
【図4】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態におけるブロック構成図である。
【図5】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態において、表示部が表示する画面例を示す図である。
【図6】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態において、スロット5のEVM測定結果を表示部が表示した例を示す図である。
【図7】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態において、スロット7のEVM測定結果を表示部が表示した例を示す図である。
【図8】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態において、スロット4のEVM測定結果を表示部が表示した例を示す図である。
【図9】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態において、サブフレームごとのRBの割当状況をグラフで表示した例を示す図である。
【図10】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態におけるフローチャートである。
【図11】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態において、EVMの平均値の算出に関し、従来と比較した図である。
【図12】SC−FDMAにおけるデジタル信号の伝送フォーマットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず、本発明の実施形態を説明する前に、「3GPP TS 36.521−1 6.5.2.1A」に規定されている、LTEにおけるEVM測定用のテストパターン(以下「EVMテストパターン」という。)について説明する。
【0028】
図1に示すように、EVMテストパターンは、1フレームで定義されている。1フレームは、10個のサブフレーム(サブフレーム0から9まで)を含む。各サブフレームは、2つのスロットを含む。すなわち、1フレームは、スロット0から19までの20個のスロットで構成されている。
【0029】
20個のスロットは、例えばチャネルの周波数帯域幅が10MHzの場合、それぞれ、周波数軸方向に50個のRBが割当可能な領域を有する。これらのスロットのうち、斜線で示したスロット4〜7、14〜17には所定個数のRBが割り当てされている。したがって、EVMテストパターンにおいて、斜線で示した領域が割当領域であり、これ以外の領域が非割当領域である。
【0030】
スロット4〜7、14〜17には、それぞれ、図2に示す個数のRBが割り当てられている。スロット4、5、16、17には各12個、スロット6、7、14、15には各1個のRBが割り当てられている。また、RBが割り当てられた各スロットにおいて、サブキャリアのデータの先頭又は末尾に、EVMの測定対象外となる除外区間が定められている。この除外区間は、実時間で定められており、例えばスロット4は先頭に25μs(マイクロ秒)の除外区間を有する。
【0031】
EVMテストパターンは、前述のように構成されているので、EVMテストパターンを用いることにより、図2に示した条件でのEVM測定を行うことが可能となる。例えば、12個のRBが割り当てられたスロット4のデータでは、パワーオフからオンに変化する場合のEVMが測定できる。また、例えば、1個のRBが割り当てられたスロット6のデータでは、サブフレーム境界でRB数が12個から1個に変化する場合のEVMが測定できる。
【0032】
前述の除外区間については、「3GPP TS 36.521−1」の付録E.7に「EVM with exclusion period」と題して説明されている。ここでは、図3に基づき簡単に説明する。なお、EVMの測定は、シンボル長の先頭側の測定(Early EVM)と末尾側の測定(Late EVM)とを行い、いずれか値の悪い方を採用することとなっているが、これについては、以後、説明を省略する。
【0033】
無線伝送におけるマルチパスの影響を低減するため、時間領域において、データの末尾がコピーされてCP(Cyclic Prefix)として先頭に挿入される。図3(a)は、データの先頭に除外区間が設けられる場合を示しており、例えばスロット4ではデータの先頭に25μsの除外区間を有する。図3(b)は、FFT処理の対象となる除外区間を示している。さらに、IDFT処理により、データが周波数領域から擬似時間領域(Quasi Time domain)に変換されると、図3(c)に示すように、除外区間は先頭と末尾の2箇所に分割される。分割された除外区間はそれぞれシンボル数で表される。除外区間の分割については、「E.7.4 Formula」に計算式が示されている。例えば、前述のEarly EVMであれば、スロット4の場合、時間領域で先頭に設けられた25μsの除外区間は、擬似時間領域において先頭に43シンボル、末尾に10シンボルとなる。ただし、この値は、LTEの周波数帯域幅が10MHzでの値である。
【0034】
次に、本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態における構成について説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る移動通信端末試験装置が、LTEの通信規格に基づいて通信する移動通信端末を試験する例を挙げる。
【0035】
図4に示すように、本実施形態における移動通信端末試験装置1は、移動通信端末2を試験するものであって、擬似基地局10、測定部20、操作部30、測定データ処理部41、表示制御部42、表示部43を備える。
【0036】
擬似基地局10は、送信部11、受信部12、結合器13、制御部14を備える。
【0037】
送信部11は、制御部14によって指定された周波数の搬送波を所定の変調方式により変調し、基地局信号として結合器13に出力するようになっている。この送信部11の動作は制御部14によって制御されるようになっている。
【0038】
受信部12は、被試験端末である移動通信端末2からの信号を結合器13経由で受信するようになっている。また、受信部12は、受信信号を復調してベースバンド信号にし、このベースバンド信号をデジタル値に変換するようになっている。デジタル値に変換されたベースバンド信号は、測定部20に出力される。なお、受信部12の動作は制御部14によって制御されるようになっている。また、受信部12は、本発明に係る受信信号出力手段を構成する。
【0039】
結合器13は、送信部11に接続された端子13a、受信部12に接続された端子13b、移動通信端末2に接続された端子13cを有する。この構成により、結合器13は、送信部11からの送信信号を端子13aで受けて端子13cから移動通信端末2に出力し、移動通信端末2が送信した信号を端子13cで受けて端子13bから受信部12に出力するようになっている。
【0040】
制御部14は、後述する操作部30により設定された測定条件に基づいて、送信部11、受信部12、結合器13の動作を制御するようになっている。また、制御部14は、移動通信端末2にRBを割り当てる割当情報を把握しており、この割当情報を測定部20に出力するようになっている。以下、制御部14が、前述のEVMテストパターンの信号を移動通信端末2に送信させ、移動通信端末試験装置1が移動通信端末2を試験するものとして説明する。この場合、制御部14は、EVMテストパターンにおける除外区間(時間領域)の時間情報を把握しており、この除外区間(時間領域)の時間情報を測定部20に出力するようになっている。
【0041】
測定部20は、受信信号処理回路21、EVM測定回路22、割当情報取得部23、除外区間算出部24、測定データ記憶部25を備える。
【0042】
受信信号処理回路21は、受信部12からEVMテストパターンに関するデジタル値のベースバンド信号を入力し、EVMテストパターンにおけるEVMを測定するための所定の信号処理を行うようになっている。例えば、受信信号処理回路21は、時間領域のベースバンド信号を周波数領域の信号に変換するFFT回路、周波数領域の信号を擬似時間領域の信号に変換するIDFT回路等を備える。
【0043】
EVM測定回路22は、EVMテストパターンのスロット4〜7、14〜17において各スロットに含まれる各シンボルのEVMをスロットごとに測定するようになっている。このEVM測定回路22は、本発明に係る変調精度測定手段を構成する。
【0044】
割当情報取得部23は、制御部14から割当情報を取得するようになっている。
【0045】
除外区間算出部24は、除外区間(時間領域)の時間情報を制御部14から取得し、後述する操作部30により設定された測定条件と、前述の「E.7.4 Formula」に記載の計算式に基づいて、除外区間(擬似時間領域)のシンボル数を算出するようになっている。
【0046】
測定データ記憶部25は、EVM測定回路22が測定したEVMのデータ、除外区間のデータ、割当情報等を記憶するようになっている。
【0047】
操作部30は、試験者が操作するものであり、測定条件設定部31、スロット選択部32、マーカ操作部33を備える。具体的には、操作部30は、例えば、各種測定条件を設定するための設定画面を表示するディスプレイ、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、これらを制御する制御回路等で構成される。
【0048】
測定条件設定部31は、EVMテストパターンのデータを移動通信端末2に送信させるため、例えば、通信規格(ここではLTE)や変調方式(例えばQPSK)、周波数帯域幅、移動通信端末2に割り当てるRBの配置スロットやRB個数、1つのスロットに対するEVM測定回数等の設定を行うようになっている。また、測定条件設定部31は、後述する表示制御部42を介して表示部43における測定結果の表示形式、例えば各種測定値の数値表示やグラフ表示、所定項目の識別表示等を設定することもできるようになっている。
【0049】
スロット選択部32は、例えば、スロットの一覧を示した画面と、試験者が少なくとも1つのスロットを選択するスロット選択ボタンとで構成される。このスロット選択ボタンを試験者が押すことにより、所望のスロットのEVM測定データが、後述する表示部43に表示される構成である。なお、スロット選択部32は、本発明に係るスロット選択手段を構成する。
【0050】
マーカ操作部33は、例えば、1つのスロットにおいて、EVM測定対象のシンボルを指定するために試験者によって操作されるものである。
【0051】
測定データ処理部41は、測定データ記憶部25に記憶されたEVM測定データに対し、例えば、所定測定回数におけるスロットごとのEVMの平均値の算出や、マーカ操作部33によって指定されたシンボルのEVM測定データの読み出し等の処理を行うようになっている。
【0052】
表示制御部42は、測定データ処理部41からEVM測定データを入力し、測定条件設定部31で設定された表示形式で、スロット選択部32によって選択されたスロットのEVM測定データ等を表示部43に表示させるよう制御するようになっている。また、表示制御部42は、割当領域、非割当領域、除外区間等を表示領域51に識別表示させるようになっている。
【0053】
表示部43は、例えば、液晶ディスプレイで構成され、表示制御部42の制御に従って、EVMテストパターンによるEVM測定データ等を表示するようになっている。この表示部43は、本発明に係る表示手段を構成する。例えば、表示部43は、図5に示すような画面を表示するものである。
【0054】
図5において、表示部43が表示する画面は、擬似時間領域におけるEVMの表示領域51、時間領域におけるEVMの表示領域52、各種情報の表示領域53、解析条件を示す表示領域54を有している。
【0055】
表示領域51は、横軸を復調シンボル(demodulated symbol)、縦軸をEVM(%)として、所定のスロットにおけるマーカ位置に該当するシンボル(SC-FDMA symbol)の復調シンボルごとにEVMを表したグラフを表示できるものである。また、表示領域51には、割当領域、非割当領域、除外区間等も識別表示される。
【0056】
表示領域52は、横軸をSC−FDMAシンボル(SC-FDMA symbol)、縦軸をEVM(%)として、所定のスロットにおけるマーカ位置に該当するシンボル(demodulated symbol)の時間軸方向のシンボルごとにEVMを表したグラフを表示できるものである。
【0057】
表示領域53は、測定回数(Meas. Count)を表示する表示領域53a、EVMの平均値(Avg.)、最大値(Max.)、最小値(Min.)を表示する表示領域53b、RB数をスロットごとに示すグラフの表示領域53c、変調方式(Modulation)を表示する表示領域53d、表示領域51におけるマーカ位置に該当するシンボル(Demod. x symbol)と、表示領域52におけるマーカ位置に該当するシンボル(SC-FDMA x symbol)と、これらのマーカ位置でのEVM(%)値とを表示する表示領域53eを有する。
【0058】
表示領域54は、選択可能なスロット及び現在選択しているスロットを表示する領域54a、マーカの表示が現在オン状態かオフ状態かを表示する表示領域54bを有する。この表示領域54の内容は、右側に並んだ操作ボタン60を試験者が押すことによって変更できるようになっている。操作ボタン60は、スロットを選択する操作ボタン61、マーカの表示をオン又はオフにする操作ボタン62を含む。例えば、操作ボタン61を試験者が押すごとに、選択するスロットが4→5→6というように変化するようになっている。なお、操作ボタン60は前述の操作部30の一部を構成する。また、操作ボタン62は前述のマーカ操作部33の一部を構成し、マーカ操作部33は操作ボタン62以外にマーカの位置を設定するカーソルキー又はダイヤル(図示省略)も有する。
【0059】
次に、EVMテストパターンを用いてEVMを測定した場合の表示部43による表示例を具体的に説明する。
【0060】
図6は、スロット5のEVM測定結果を表示した例を示している。スロット5には、RBが12個割り当てられ、25μsの除外区間が末尾に設けられている(図2参照)。
【0061】
図6において、表示領域51には、割当領域51aと非割当領域51bとが、例えば色付けにより識別表示されている。ここで、表示領域51の横軸は、0から599までの600個(=50RB×12サブキャリア)の復調シンボル位置に対応している。スロット5には12RBが割り当てられているので(図2参照)、割当領域51aの横軸方向の幅は、復調シンボル数で表すと144個(12RB×12サブキャリア)である。一方、非割当領域51bの横軸方向の幅は、復調シンボル数で表すと456シンボル(38RB×12サブキャリア)である。
【0062】
割当領域51aには、0番目から143番目までの各復調シンボルのEVMの測定結果を示すEVMグラフ51cが描かれている。ここで、0番目の復調シンボルにはマーカ51dが当てられている。
【0063】
表示領域52には、SC−FDMAシンボル(0から6まで)のEVMの測定結果を示すEVMグラフ52aが描かれている。ここで、0番目のSC−FDMAシンボルにはマーカ52bが当てられている。
【0064】
表示領域53bには、EVMテストパターンのデータを2フレーム分測定した16個分のスロットの平均値、最大値、最小値が表示されている。
【0065】
表示領域53cは、サブフレームの番号0〜9とRBの割当状況がグラフにより示され、現在、カーソルが第2のサブフレーム(SF)のスロット(Slot)5にあることがグラフ及び文字で表示されている。なお、図示した例では、1つのカーソルで1つのスロットを指定する構成としているが、例えば、スロット選択部32により複数のカーソルを表示させて複数のスロットを選択させる構成とし、選択された複数のスロットのEVMを表示部43に同時に表示する構成としてもよい。
【0066】
表示領域53dは、試験対象信号の変調方式がQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)であることを示している。
【0067】
表示領域53eは、マーカ51d及び52bがそれぞれ0番目のシンボルにあることを表示している。また、マーカ51d及び52bで示されたシンボルのEVM測定値が1.88%であることを示している。
【0068】
次に、スロット7におけるEVM測定結果の表示例を図7に示す。スロット7には、RBが1個割り当てられ、5μsの除外区間が末尾に設けられている(図2参照)。
【0069】
図7において、表示領域51には、図6と同様に、割当領域51aと非割当領域51bとが、例えば色付けにより識別表示されている。ここで、割当領域51aの横軸方向の幅は、復調シンボル数で表すと12個(1RB×12サブキャリア)である。一方、非割当領域51bの横軸方向の幅は、復調シンボル数で表すと588シンボル(49RB×12サブキャリア)である。
【0070】
割当領域51aには、0番目から11番目までの各復調シンボルのEVMの測定結果を示すEVMグラフ51cが描かれている。ここで、0番目の復調シンボルにはマーカ51dが当てられている。
【0071】
表示領域52には、SC−FDMAシンボル(0から6まで)のEVMの測定結果を示すEVMグラフ52aが描かれている。ここで、0番目のSC−FDMAシンボルにはマーカ52bが当てられている。
【0072】
表示領域53cは、サブフレームの番号0〜9とRBの割当状況がグラフにより示され、現在、カーソルが第3のサブフレームのスロット7にあることがグラフ及び文字で表示されている。
【0073】
表示領域53eは、マーカ51d及び52bがそれぞれ0番目のシンボルにあることを表示している。また、マーカ51d及び52bで示されたシンボルのEVM測定値が3.41%であることを示している。
【0074】
次に、スロット4におけるEVM測定結果の表示例を図8に示す。スロット4には、RBが12個割り当てられ、25μsの除外区間が先頭に設けられている(図2参照)。
【0075】
図8において、表示領域51には、図6、図7と同様に、割当領域51aと非割当領域51bとが、例えば色付けにより識別表示されている。ここで、割当領域51aの横軸方向の幅は、復調シンボル数で表すと144個(12RB×12サブキャリア)である。一方、非割当領域51bの横軸方向の幅は、復調シンボル数で表すと456シンボル(38RB×12サブキャリア)である。
【0076】
割当領域51aには、0番目から143番目までの各復調シンボルのEVMの測定結果を示すEVMグラフ51cが描かれている。ここで、0番目の復調シンボルにはマーカ51dが当てられている。
【0077】
また、割当領域51aには、除外区間71及び72と、測定区間73とが表示されている。スロット4には時間領域で先頭に25μsの除外区間が設けられており(図2参照)、前述したように、LTEの周波数帯域幅を10MHzとすると、先頭側の除外区間71は43シンボル、末尾側の除外区間72は10シンボルである。なお、割当領域51aから除外区間71及び72を除いた区間が測定区間73である。
【0078】
表示領域52には、SC−FDMAシンボル(0から6まで)のEVMの測定結果を示すEVMグラフ52aが描かれている。ここで、0番目のSC−FDMAシンボルにはマーカ52bが当てられている。
【0079】
表示領域53cは、サブフレームの番号0〜9とRBの割当状況がグラフにより示され、現在、カーソルが第2のサブフレームのスロット4にあることがグラフ及び文字で表示されている。
【0080】
表示領域53eは、マーカ51d及び52bがそれぞれ0番目のシンボルにあることを表示している。また、マーカ51d及び52bで示されたシンボルのEVM測定値が2.83%であることを示している。
【0081】
以上の表示例で説明したように、本実施形態における表示部43は、スロットごとにEVMの測定結果(数値、グラフ)を表示でき、また、割当領域、非割当領域、除外区間、割当状況を示すグラフ等も表示することができる。
【0082】
また、本実施形態における表示部43は、前述した表示領域53cにおいてサブフレームごとのRBの割当状況をグラフで表示する構成となっているので、例えば、図9(a)及び(b)に示すように、各スロットに割り当てられるRBの個数が動的に変更されても、試験者はRBの割当状況を直感的に把握することができる。
【0083】
次に、本実施形態における移動通信端末試験装置1の動作について図10を用いて説明する。
【0084】
受信部12は、移動通信端末2が送信したEVMテストパターンの信号を結合器13経由で受信する。そして、受信部12は、受信した信号を復調してベースバンド信号にし、このベースバンド信号をデジタル値に変換する。測定部20の受信信号処理回路21は、デジタル値に変換されたEVMテストパターンの信号を入力する(ステップS11)。
【0085】
割当情報取得部23は、制御部14からEVMテストパターンの割当情報を取得する(ステップS12)。この割当情報より、EVM測定回路22は、EVMの測定対象がスロット4〜7、14〜17であることを知ることができる。
【0086】
受信信号処理回路21は、EVMテストパターンの信号に対し、FFT処理やIDFT処理等の信号処理を実行し、擬似時間領域のシンボルデータを出力する(ステップS13)。そして、EVM測定回路22は、受信信号処理回路21が出力する各シンボルに対し、EVMを測定する(ステップS14)。
【0087】
具体的には、EVM測定回路22は、移動通信端末2が送信したEVMテストパターンの変調方式の情報を制御部14から取得し、この変調方式に応じて、各シンボルデータをIQ座標上に示したコンスタレーションを求める。次に、EVM測定回路22は、求めたコンスタレーションにおける各シンボルデータ測定点と、論理的なコンスタレーションにおける各シンボルデータの論理点との間のEVMをスロットごとに測定し、測定したEVMのデータを測定データ記憶部25に記憶する。
【0088】
除外区間算出部24は、除外区間(時間領域)の時間情報を制御部14から取得し、後述する操作部30により設定された測定条件と、前述の「E.7.4 Formula」に記載の計算式に基づいて、除外区間のシンボル数を算出し(ステップS15)、算出した除外区間のシンボル数のデータを測定データ記憶部25に記憶する。
【0089】
スロット選択部32は、スロット4〜7、14〜17のうちの1つを操作ボタン61により試験者に選択させ(ステップS16)、試験者が選択したスロットの情報を測定データ処理部41及び表示制御部42に出力する。
【0090】
測定データ処理部41は、操作部30の操作に応じて、測定データ記憶部25に記憶されたデータを読み出して所定のデータ処理を実行する(ステップS17)。例えば、測定データ処理部41は、所定測定回数におけるスロットごとのEVMの平均値や、全体(後述する16スロット分)のEVMの平均値を算出する。
【0091】
表示制御部42は、操作部30の操作に応じて、測定データ処理部41が処理したデータを表示部43に表示させる表示制御を行う(ステップS18)。
【0092】
表示部43は、表示制御部42が出力するデータを表示する(ステップS19)。
【0093】
次に、EVMの平均値の算出に関し、本実施形態と従来とを比較説明する。まず、従来のものでは、図11の上段に示すように、スロット4〜7、14〜17の8個の信号を2フレーム分測定して合計16スロット分のEVMの平均値を一括して求めていた。しかしながら、この手法では、16スロット分のEVMの平均値を一括して求めるため個々のスロットのEVMがどのような値であるかを試験者に示すことができなかった。
【0094】
これに対し、本実施形態における移動通信端末試験装置1では、図11の下段に示すように、スロット4〜7、14〜17の8個の信号をスロットごとに2フレーム分測定してスロットごとにEVMの平均値を求め、その値を表示することができる。したがって、移動通信端末試験装置1は、スロットごとのEVMの測定値を表示することにより、移動通信端末の開発段階や製造ラインでの評価段階における詳細な解析や不具合の発見等の一助となる。
【0095】
以上のように、本実施形態における移動通信端末試験装置1によれば、表示部43が、スロット選択部32が選択したスロットに含まれる各シンボルのEVMを表示する構成としたので、EVMをスロットごとに表示することができる。
【0096】
また、本実施形態における移動通信端末試験装置1は、スロットごとに異なる、割当領域51a、非割当領域51b、除外区間71及び72、測定区間73をスロットごとに識別表示するので、これらの領域や区間を試験者に容易に把握させることができる。
【0097】
また、本実施形態における移動通信端末試験装置1は、EVMのグラフ画面をスロットごとに表示するので、スロットごとの各シンボルのEVM測定値を試験者に容易に把握させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、本発明に係る移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法は、EVMをスロットごとに表示することができるという効果を有し、携帯電話やモバイル端末等の移動通信端末を試験する移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法として有用である。
【符号の説明】
【0099】
1 移動通信端末試験装置
2 移動通信端末
10 擬似基地局
11 送信部
12 受信部(受信信号出力手段)
13 結合器
13a、13b、13c 端子
14 制御部
20 測定部
21 受信信号処理回路
22 EVM測定回路(変調精度測定手段)
23 割当情報取得部
24 除外区間算出部
25 測定データ記憶部
30 操作部
31 測定条件設定部
32 スロット選択部(スロット選択手段)
33 マーカ操作部
41 測定データ処理部
42 表示制御部
43 表示部(表示手段)
51、52、53(53a〜53e)、54(54a、54b) 表示領域
51a 割当領域
51b 非割当領域
51c、52a EVMグラフ
51d、52b マーカ
60(61、62) 操作ボタン
71、72 除外区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の変調方式で変調された複数のシンボルを一定の時間間隔で区切られた複数のスロットに含めた無線周波数の信号を送受信する移動通信端末(2)を試験する移動通信端末試験装置(1)であって、
前記無線周波数の送信信号を受信してベースバンド信号に変換し、前記ベースバンド信号をデジタル値の受信信号として出力する受信信号出力手段(12)と、
前記受信信号に含まれる前記各シンボルの変調精度を測定する変調精度測定手段(22)と、
前記複数のスロットのうちの少なくとも1つを選択するスロット選択手段(32)と、
前記スロット選択手段が選択したスロットに含まれる各シンボルの変調精度を表示する表示手段(43)と、を備えたことを特徴とする移動通信端末試験装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記スロット選択手段が選択したスロットに含まれる各シンボルの変調精度グラフ(51c、52a)を表示するものであることを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項3】
前記変調精度測定手段は、前記スロットに含まれる前記複数のシンボルのうち、予め定められた測定対象シンボルを前記変調精度の測定対象とするものであり、
前記表示手段は、前記測定対象シンボルが含まれる測定区間(73)と、前記測定対象シンボルが含まれない除外区間(71、72)とを識別表示する表示領域(51)を表示するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項4】
前記移動通信端末は、前記所定の変調方式で変調された複数のシンボルが時間領域及び周波数領域の双方向の予め定められた領域に割り当てられた送信信号を送信するものであって、
前記表示手段は、前記送信信号が割り当てられた割当領域(51a)と、前記割当領域とは異なる非割当領域(51b)とを識別表示する表示領域(51)を表示するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記送信信号が割り当てられた割当領域の割当数をスロットごとに示すグラフの表示領域(53c)を表示し、前記スロット選択手段に任意のスロットを選択させるものであることを特徴とする請求項4に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項6】
所定の変調方式で変調された複数のシンボルを一定の時間間隔で区切られた複数のスロットに含めた無線周波数の信号を送受信する移動通信端末(2)を試験する移動通信端末試験方法であって、
前記無線周波数の送信信号を受信してベースバンド信号に変換し、前記ベースバンド信号をデジタル値の受信信号として入力する受信信号入力ステップ(S11)と、
前記受信信号に含まれる前記各シンボルの変調精度を測定する変調精度測定ステップ(S14)と、
前記複数のスロットのうちの少なくとも1つを選択するスロット選択ステップ(S16)と、
前記スロット選択ステップで選択したスロットに含まれる各シンボルの変調精度を表示する表示ステップ(S19)と、を含むことを特徴とする移動通信端末試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−175167(P2012−175167A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32275(P2011−32275)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】