説明

移動通信装置および無線通信方法

【課題】利用可能な複数の無線アクセス網が存在する場合の通信制御を効率化する。
【解決手段】移動通信装置10は、無線アクセス網21,22を利用して通信が可能であり、記憶部11と無線デバイス12とプロセッサ13を有する。無線デバイス12は、無線アクセス網21の無線状態を検出し、検出した無線状態に応じたフラグ情報11aを記憶部11に書き込む。プロセッサ13は、サスペンド状態が解除されたとき、記憶部11に記憶されたフラグ情報11aに基づいて、無線アクセス網21との接続を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は移動通信装置および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話機や携帯情報端末装置などの移動通信装置が無線アクセス網を利用して通信を行う、移動通信システムが利用されている。無線アクセス網は、移動通信装置からアクセスできる1またはそれ以上の基地局を含む。無線アクセス網としては、CDMA(Code Division Multiple Access)2000の1xネットワークやEVDO(Evolution Data Only)ネットワーク、WiMAXネットワーク、無線LAN(Local Area Network)など、通信方式の異なる複数の種類の無線アクセス網が存在する。
【0003】
1xネットワークやEVDOネットワークは、多元接続方式として符号分割多元接続(CDMA)を用いる。WiMAXネットワークや一部の無線LANは、多元接続方式として直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)を用いる。移動通信装置の中には、例えば、複数の無線デバイスを搭載することによって、複数の種類の無線アクセス網を利用できるものもある。
【0004】
なお、広域無線ネットワークと狭域無線ネットワークとを利用可能な端末であって、狭域無線ネットワークの利用中に信号品質が基準値以下になったことを検出すると、広域無線ネットワークへの接続処理を開始する無線端末装置が提案されている。また、無線LANと移動通信網とを利用可能な端末であって、無線LANの圏外に移動したことを検出すると、ユーザに対して圏外を通知し、ユーザからの確認の応答を待って移動通信網を利用したデータ通信を開始する携帯端末が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−118721号公報
【特許文献2】特開2010−161657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、移動通信装置は、ある無線アクセス網の無線状態(例えば、圏内か圏外か)に応じて、他の無線アクセス網との接続を制御することが考えられる。例えば、移動通信装置は、ある無線アクセス網に接続し、その無線アクセス網の圏外に移動したことを検出すると、他の無線アクセス網との接続を確立することが考えられる。
【0007】
ところで、移動通信装置は、通信制御にCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを用いることがある。プロセッサは、データ通信などのイベントが一定時間発生しないと、低消費電力のサスペンド状態に移行することがある。プロセッサは、例えば、サスペンド状態ではアプリケーションプログラムやドライバプログラムの実行を停止してイベントを待ち、割り込み信号などによってイベントを検出するとアクティブ状態に復帰する。ただし、プロセッサがサスペンド状態である間も、無線デバイスは、サスペンド前のプロセッサからの指示に従って、無線同期などの信号処理を継続することができる。
【0008】
通信制御にプロセッサを使用する場合、ある無線アクセス網の無線状態は、サスペンド中でも無線デバイスによって検出され得る一方、他の無線アクセス網との接続制御は、サスペンド状態からアクティブ状態に復帰したプロセッサによって実行されることになる。ここで、アクティブ状態に復帰したプロセッサが、接続制御を行う上で、ある無線アクセス網の無線状態をどのようにして認識すればよいかが問題となる。
【0009】
1つの方法として、無線デバイスからプロセッサへの割り込み信号を利用する方法が考えられる。例えば、待ち受け中に無線デバイスから割り込み信号を受信した場合は、プロセッサが、ある無線アクセス網の無線状態が変化したものと解釈することが考えられる。しかし、この方法には、割り込み信号の伝達手段としての信頼性が高くないという問題がある。例えば、プロセッサは、タイミングによっては割り込み信号を受信し損なう可能性があり、また、短時間に無線状態が複数回変化した場合には最新の無線状態を認識することが難しい。よって、割り込み信号のみでは、無線状態を正確に認識することが難しい。
【0010】
他の方法として、アクティブ状態に復帰したプロセッサが、無線デバイスにコマンドを送信することで、ある無線アクセス網の現在の無線状態を確認する方法が考えられる。この方法により、プロセッサは、割り込み信号から無線状態を推定する方法よりも、信頼性の高い情報を得ることができる。しかし、この方法では、プロセッサがコマンドの応答を待つオーバヘッドが大きく、接続制御の遅延が大きくなるという問題がある。
【0011】
本件はこのような点に鑑みてなされたものであり、利用可能な複数の無線アクセス網が存在する場合の通信制御を効率化した移動通信装置および無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1および第2の無線アクセス網を利用して通信が可能な移動通信装置が提供される。移動通信装置は、記憶部と無線デバイスとプロセッサとを有する。無線デバイスは、第1の無線アクセス網の無線状態を検出し、検出した無線状態に応じたフラグ情報を記憶部に書き込む。プロセッサは、サスペンド状態が解除されたとき、記憶部に記憶されたフラグ情報に基づいて第2の無線アクセス網との接続を制御する。
【0013】
また、第1および第2の無線アクセス網を利用して通信が可能でありプロセッサおよび記憶部を備える移動通信装置が実行する無線通信方法が提供される。無線通信方法では、第1の無線アクセス網の無線状態に応じたフラグ情報を記憶部に書き込む。プロセッサのサスペンド状態が解除されたとき、プロセッサから、記憶部に記憶されたフラグ情報にアクセスする。フラグ情報に基づいて第2の無線アクセス網との接続を制御する。
【発明の効果】
【0014】
利用可能な複数の無線アクセス網が存在する場合の通信制御を効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態の移動通信装置を示す図である。
【図2】第2の実施の形態の移動通信システムを示す図である。
【図3】無線アクセス網のエリアの例を示す図である。
【図4】ページングの受信タイミングの例を示す図である。
【図5】移動局のハードウェア例を示すブロック図である。
【図6】第2の実施の形態のインタフェースを示すブロック図である。
【図7】圏外フラグの組み合わせを示す図である。
【図8】移動局を制御するソフトウェア例を示すブロック図である。
【図9】データ通信状態の遷移例を示す図である。
【図10】データ通信プロトコルの階層例を示す図である。
【図11】無線デバイスによる待ち受け処理を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施の形態の接続制御を示すフローチャートである。
【図13】無線デバイスによる圏外処理を示すフローチャートである。
【図14】無線アクセス網への接続例を示すシーケンス図である。
【図15】PPP接続の例を示すシーケンス図である。
【図16】ページングチャネルの受信例を示すシーケンス図である。
【図17】第3の実施の形態のインタフェースを示すブロック図である。
【図18】第3の実施の形態の接続制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の移動通信装置を示す図である。
【0017】
移動通信装置10は、携帯電話機や携帯情報端末装置などの無線端末装置である。移動通信装置10は、無線アクセス網21,22を利用して通信を行うことができ、3つ以上の無線アクセス網を利用可能であってもよい。移動通信装置10は、無線アクセス網21,22を含む複数の無線アクセス網を利用してデータ通信(例えば、パケット通信)を行える場合、データ通信に関してマルチモードで動作可能と言うことができる。データ通信は、例えば、何れか1つの無線アクセス網を選択して行われる。
【0018】
無線アクセス網21,22は、移動通信装置10からアクセス可能な1またはそれ以上の基地局を含む。無線アクセス網21,22は、無線通信方式が互いに異なっていてもよい。例えば、無線アクセス網21は、WiMAXネットワーク、LTE(Long Term Evolution)ネットワーク、LTE−A(Long Term Evolution Advanced)、無線LANなどのOFDMAを用いた無線アクセス網であってもよい。また、無線アクセス網22は、EVDOネットワークやW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)ネットワークなどのCDMAを用いた無線アクセス網でもよい。無線アクセス網21,22は、カバーされるエリアの広さが互いに異なってもよい。例えば、無線アクセス網21は、無線アクセス網22よりもエリアが狭くてもよい。
【0019】
移動通信装置10は、記憶部11、無線デバイス12およびプロセッサ13を有する。
記憶部11は、無線デバイス12およびプロセッサ13からアクセス可能であり、少なくとも、無線デバイス12から書き込み可能でプロセッサ13から読み出し可能な記憶領域を備える。記憶部11は、RAM(Random Access Memory)やレジスタ、キャッシュメモリなどの揮発性メモリでもよく、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリでもよい。
【0020】
無線デバイス12は、無線アクセス網21からの受信信号を処理する。無線デバイス12は、プロセッサ13がサスペンド状態である間も、サスペンド前のプロセッサ13からの指示に従って受信信号の処理を継続することができる。無線デバイス12は、無線アクセス網21の無線状態を検出する。例えば、無線デバイス12は、受信電力レベルに基づいて、無線アクセス網21の圏内か圏外かを検出する。そして、無線デバイス12は、無線状態に応じたフラグ情報11aを、記憶部11に書き込む。フラグ情報11aは、例えば、圏内か圏外かを示す1ビット(例えば、圏内=0,圏外=1)とすることができる。
【0021】
なお、無線デバイス12は、無線アクセス網21を利用したデータ通信の後、待ち受け中、ページングチャネルを間欠的に受信することがある。無線デバイス12は、例えば、ページングチャネルを受信するタイミングで、無線アクセス網21の圏内か圏外かを判断する。ページングチャネルでは、移動通信装置10の呼び出し情報(ページング情報)が伝送され得る。無線アクセス網21を利用したデータ通信の後は、データ通信経路が無線アクセス網21に設定されているため、無線アクセス網21からページング情報が送信される。一方、無線アクセス網22と接続を確立すると、データ通信経路が無線アクセス網22に設定され、無線アクセス網22からページング情報が送信されるようになる。
【0022】
プロセッサ13は、無線アクセス網21,22との接続を制御する演算装置である。プロセッサ13は、プログラムを実行するCPUでもよいし、DSP(Digital Signal Processor)でもよい。プログラムは、記憶部11または他の記憶部に格納される。プロセッサ13は、データ通信などのイベントが一定時間発生しないと、低消費電力のサスペンド状態に移行する。プロセッサ13は、例えば、サスペンド状態ではアプリケーションプログラムやドライバプログラムの実行を停止してイベントを待ち、割り込み信号などによりイベントを検出するとアクティブ状態に復帰する。割り込み信号は、例えば、無線アクセス網21の圏外が検出されたとき、無線デバイス12から発信される。
【0023】
サスペンド状態が解除されると、プロセッサ13は、記憶部11に記憶されたフラグ情報11aにアクセスし、フラグ情報11aに基づいて無線アクセス網22との接続を制御する。例えば、プロセッサ13は、フラグ情報11aが圏外を示すか判定し、判定結果に応じて、無線アクセス網22との接続を確立するか否か選択する。プロセッサ13は、フラグ情報11aが圏外を示すとき、無線アクセス網22との接続を確立し、それ以外のとき、無線アクセス網22との接続を確立しないようにしてもよい。
【0024】
確立する接続は、PPP(Point-to-Point Protocol)コネクションであってもよい。無線アクセス網22との接続が確立されると、例えば、データ通信経路が無線アクセス網21から無線アクセス網22に切り替わり、移動通信装置10が無線アクセス網22からデータ通信に関するページング情報を受信できるようになる。プロセッサ13は、フラグ情報11aに基づいて接続制御を行った後、再びサスペンド状態に移行してもよい。
【0025】
なお、移動通信装置10は、前述のように、無線アクセス網21,22以外の他の無線アクセス網を更に利用可能であってもよい。移動通信装置10は、他の無線アクセス網からの受信信号を処理する他の無線デバイスを更に備えてもよい。他の無線デバイスは、例えば、他の無線アクセス網の無線状態を検出し、検出した無線状態に応じた他のフラグ情報(例えば、圏内か圏外かを示す1ビット)を、記憶部11に書き込む。
【0026】
その場合、プロセッサ13は、フラグ情報11aと他のフラグ情報との組み合わせに基づいて、無線アクセス網22との接続を制御してもよい。例えば、プロセッサ13は、フラグ情報11aと他のフラグ情報の両方が圏外を示すか判定し、判定結果に応じて、無線アクセス網22との接続を確立するか否か選択する。プロセッサ13は、フラグ情報11aと他のフラグ情報の両方が圏外を示すとき、無線アクセス網22との接続を確立し、それ以外のとき、無線アクセス網22との接続を確立しないようにしてもよい。
【0027】
第1の実施の形態の移動通信装置10によれば、無線アクセス網21の無線状態に応じたフラグ情報11aが記憶部11に書き込まれる。プロセッサ13のサスペンド状態が解除されたとき、プロセッサ13から、記憶部11に記憶されたフラグ情報11aにアクセスされる。フラグ情報11aに基づいて、無線アクセス網22との接続が制御される。
【0028】
記憶部11にフラグ情報11aを書き込むことで、サスペンド状態が解除されたプロセッサ13は、割り込み信号に基づいて無線アクセス網21の無線状態を推定するよりも、無線状態を精度よく認識できるようになる。よって、無線アクセス網22との接続を確立しなくてもよいときに誤って接続を確立するといった接続制御の誤りを、抑制することができる。また、プロセッサ13は、サスペンド状態が解除された後、無線デバイス12にコマンドを送信して無線アクセス網21の無線状態を問い合わせなくてもよい。よって、無線状態を迅速に確認でき、接続制御のオーバヘッドを低減できる。
【0029】
このため、例えば、移動通信装置10が待ち受け中に無線アクセス網21の圏外に移動しても、データ通信経路を迅速に無線アクセス網22に切り替えることができ、データ通信に関するページングチャネルを受信できない時間を短縮できる。また、待ち受け中にプロセッサ13がアクティブ状態になる時間を短縮でき、消費電力を低減できる。
【0030】
また、移動通信装置10が無線アクセス網22以外に2以上の無線アクセス網(無線アクセス網21を含む)を利用できるとき、記憶部11に、2以上の無線アクセス網に対応する2以上のフラグ情報を記憶しておくこともできる。この場合、プロセッサ13は、2以上の無線アクセス網の無線状態の組み合わせを確認することが容易となり、無線アクセス網22の接続制御を迅速に行うことが可能となる。
【0031】
以下に説明する第2の実施の形態では、移動局が、EVDOネットワークとWiMAXネットワークと無線LANを用いてデータ通信を行う例を挙げる。ただし、第2の実施の形態で説明した通信制御方法は、W−CDMAネットワークやLTEネットワーク、LTE−Aネットワークなど、他の種類の無線アクセス網に応用してもよい。
【0032】
[第2の実施の形態]
図2は、第2の実施の形態の移動通信システムを示す図である。第2の実施の形態の移動通信システムは、移動局100、無線アクセス網210,220,230,240、公衆電話網(PSTN:Public Switched Telephone Network)310およびIP(Internet Protocol)コアネットワーク320を有する。
【0033】
移動局100は、携帯電話機や携帯情報端末装置などの無線端末装置である。移動局100は、CDMA2000の1x、CDMA2000のEVDO、WiMAXおよび無線LNAの4つの通信方式を利用できる。移動局100は、1x方式によって音声通信を行い、EVDO方式、WiMAX方式および無線LAN方式によってデータ通信を行う。
【0034】
無線アクセス網210は、CDMA2000の1x方式で移動局100と無線通信を行い、回線交換方式で音声信号を伝送するネットワークである。無線アクセス網210は、PSTN310と接続されている。無線アクセス網210は、基地局211を含む複数の基地局、MSC(Mobile Switching Center)212およびGMSC(Gateway Mobile Switching Center)213を有する。無線アクセス網210に属する各基地局がセルを形成し、セルの集合によって無線アクセス網210のエリアが形成される。
【0035】
基地局211は、移動局100と無線通信を行い、MSC212と有線通信を行う通信装置である。基地局211は、音声信号を移動局100とMSC212の間で転送する。MSC212は、基地局211およびGMSC213と接続された交換機である。MSC212は、図示しないHLR(Home Location Register)に形成された加入者情報データベースを参照して、音声信号を転送する。GMSC213は、PSTN310と接続されたゲートウェイ装置であり、音声信号を転送する。
【0036】
無線アクセス網220は、CDMA2000のEVDO方式で移動局100と無線通信を行い、パケット交換方式でデータを伝送するネットワークである。無線アクセス網220は、IPコアネットワーク320と接続されている。無線アクセス網220は、無線アクセス網210と共通に用いられる複数の基地局、PCF(Packet Control Function)221およびPDSN(Packet Data Serving Node)222を有する。各基地局がセルを形成し、セルの集合によって無線アクセス網220のエリアが形成される。なお、図2の例では、基地局211は無線アクセス網210,220の両方に属しているが、無線アクセス網210用の基地局と無線アクセス網220用の基地局とを分けてもよい。
【0037】
基地局211は、移動局100と無線通信を行い、PCF221と有線通信を行う。基地局211は、パケット形式のデータを移動局100とPCF221の間で転送する。PCF221は、基地局211およびPDSN222に接続され、パケット形式のデータを転送する。PDSN222は、IPコアネットワーク320と接続されたゲートウェイ装置である。PDSN222は、基地局211およびPCF221を介して移動局100とPPPコネクションを確立し、パケット形式のデータを転送する。
【0038】
無線アクセス網230は、WiMAX方式で移動局100と無線通信を行い、パケット交換方式でデータを伝送するネットワークである。無線アクセス網230は、IPコアネットワーク320と接続されている。無線アクセス網230は、基地局231を含む複数の基地局およびASN(Access Service Network)ゲートウェイ232を有する。各基地局がセルを形成し、セルの集合によって無線アクセス網230のエリアが形成される。
【0039】
基地局231は、移動局100と無線通信を行い、ASNゲートウェイ232と有線通信を行う通信装置である。基地局231は、パケット形式のデータを移動局100とASNゲートウェイ232の間で転送する。ASNゲートウェイ232は、IPコアネットワーク320と接続されたゲートウェイ装置であり、パケット形式のデータを転送する。
【0040】
無線アクセス網240は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11系の無線LAN方式で移動局100と無線通信を行い、パケット交換方式でデータを伝送するネットワークである。無線アクセス網240は、IPコアネットワーク320と接続されている。無線アクセス網240は、基地局241を含む1またはそれ以上の基地局を有する。各基地局は、アクセスポイントと呼ぶことがある。各基地局がセルを形成し、セルの集合によって無線アクセス網240のエリアが形成される。
【0041】
基地局241は、移動局100と無線通信を行い、IPコアネットワーク320と有線通信を行う通信装置である。基地局241は、パケット形式のデータを移動局100とIPコアネットワーク320の間で転送する。基地局241とIPコアネットワーク320の間には、中継装置が存在してもよい。なお、IEEE802.11系の規格に適合し、WiFiアライアンスにより認定された無線デバイスは、WiFiデバイスと呼ばれる。
【0042】
PSTN310は、回線交換方式によって音声信号を伝送する電話網であり、交換機を備える。PSTN310は、固定電話機からも利用され得る。なお、PSTN310に代えて、ISDN(Integrated Service Digital Network)を用いてもよい。
【0043】
IPコアネットワーク320は、移動局100のデータ通信を制御し、パケット交換方式によってデータを伝送するIPネットワークである。IPコアネットワーク320は、無線アクセス網220,230,240と接続されている。IPコアネットワーク320は、ホームエージェント(HA:Home Agent)321および認証・許可・課金(AAA:Authentication, Authorization and Accounting)サーバ322を有する。
【0044】
ホームエージェント321は、無線アクセス網220,230,240を利用する移動局100を登録し、登録情報に基づいて移動局100のデータを転送する通信装置である。ホームエージェント321は、移動局100が無線アクセス網220,230,240の何れを利用してデータ通信を行っているか確認し、移動局100宛てのデータを無線アクセス網220,230,240に選択的に転送する。AAAサーバ322は、移動局100の認証や、移動局100のユーザに対する課金を行うサーバ装置である。
【0045】
ここで、移動局100は、無線アクセス網220,230,240の何れか1つを選択してデータ通信を行う。データ通信経路は、無線アクセス網220,230,240の1つに排他的に設定される。移動局100が無線アクセス網220とPPPコネクションを確立すると、移動局100およびIPコアネットワーク320は、無線アクセス網220にデータ通信経路が設定され、無線アクセス網230,240は利用されていない状態と認識する。移動局100が無線アクセス網230または無線アクセス網240に接続する(エントリ手続きを実行する)と、移動局100およびIPコアネットワーク320は、無線アクセス網230または無線アクセス網240にデータ通信経路が切り替えられ、無線アクセス網220のPPPコネクションは無効になったと認識する。
【0046】
移動局100がデータ通信を行っていないとき、IPコアネットワーク320から移動局100へ送信するデータが発生すると、無線アクセス網220,230,240の何れか1つから、移動局100宛てにページング情報が送信される。無線アクセス網220のPPPコネクションが確立されているときは、基地局211が移動局100にページング情報を送信する。移動局100が無線アクセス網230に接続しているときは、基地局231が移動局100にページング情報を送信し、移動局100が無線アクセス網240に接続しているときは、基地局241が移動局100にページング情報を送信する。
【0047】
なお、移動局100は、第1の実施の形態の移動通信装置10の一例である。無線アクセス網230,240は、第1の実施の形態の無線アクセス網21の一例であり、無線アクセス網220は、第1の実施の形態の無線アクセス網22の一例である。また、以下では、無線アクセス網210を利用した音声通話については説明を省略することがある。
【0048】
図3は、無線アクセス網のエリアの例を示す図である。第2の実施の形態では、無線アクセス網230,240(WiMAXおよび無線LAN)のエリアは、無線アクセス網210,220(1xおよびEVDO)のエリアよりも狭く、無線アクセス網210,220のエリアの少なくとも一部と重複する。例えば、無線アクセス網230,240のエリアは、無線アクセス網210,220のエリア内に点在する。無線アクセス網230と無線アクセス網240のエリアは、一致しないが一部が重複することもある。
【0049】
無線アクセス網230,240のエリアは比較的狭いため、移動局100は、無線アクセス網230,240の圏外にいる可能性がある。ただし、無線アクセス網230,240を利用した場合、無線アクセス網220よりも高速・広帯域のデータ通信を行うことができる。よって、移動局100は、無線アクセス網230,240の圏内にいる場合、無線アクセス網230,240を優先的に利用してデータ通信を行うことが好ましい。
【0050】
なお、移動局100には、無線アクセス網230,240の両方を利用できるとき、何れを優先的に利用するか設定しておいてもよい。例えば、移動局100は、無線アクセス網240(無線LAN)を優先的に利用し、無線アクセス網240を利用できないときに無線アクセス網230(WiMAX)を利用するようにしてもよい。
【0051】
図4は、ページングの受信タイミングの例を示す図である。無線アクセス網220,230からは定期的にページングチャネルが送信され、無線アクセス網240からは定期的にビーコンと呼ばれるフレームが送信される。ページングチャネルおよびビーコンには、移動局100宛てのページング情報が含まれていることがある。
【0052】
移動局100は、無線アクセス網220とPPPコネクションを確立してEVDOのアイドルモードで待ち受けを行っている間、基地局211から間欠的にページングチャネルを受信する。例えば、移動局100は、5.12秒毎に、無線アクセス網220のページングチャネルを受信する。このとき、データ通信経路は無線アクセス網220に設定されており、移動局100宛てのページング情報は無線アクセス網230,240からは送信されない。よって、移動局100は、無線アクセス網230のページングチャネルおよび無線アクセス網240のビーコンを受信しなくてもよい。
【0053】
また、移動局100は、無線アクセス網230に接続してWiMAXのアイドルモードで待ち受けを行っている間、基地局231から間欠的にページングチャネルを受信する。例えば、移動局100は、1.28秒毎に、無線アクセス網230のページングチャネルを受信する。このとき、データ通信経路は無線アクセス網230に設定されており、移動局100宛てのページング情報は無線アクセス網220,240からは送信されない。よって、移動局100は、無線アクセス網220のページングチャネルおよび無線アクセス網240のビーコンを受信しなくてもよい。
【0054】
また、移動局100は、無線アクセス網240に接続して無線LANのアイドルモードで待ち受けを行っている間、基地局241から間欠的に、ビーコンと呼ばれるフレームを受信する。例えば、移動局100は、1秒毎にビーコンを受信する。このとき、データ通信経路は無線アクセス網240に設定されており、移動局100宛てのページング情報は無線アクセス網220,230からは送信されない。よって、移動局100は、無線アクセス網220,230のページングチャネルを受信しなくてもよい。
【0055】
待ち受け中にWiMAXのページングチャネルの受信に失敗すると、移動局100は、所定時間(例えば、5秒間)、アクセス可能な新たな基地局のサーチ(圏外サーチ)を行う。所定時間内に新たな基地局を検出できなかった場合、移動局100は、無線アクセス網230の圏外に移動したと判断する。同様に、待ち受け中に無線LANのビーコンの受信に失敗すると、移動局100は、圏外サーチを行い、所定時間内に新たな基地局を検出できなかった場合、無線アクセス網240の圏外に移動したと判断する。
【0056】
図5は、移動局のハードウェア例を示すブロック図である。移動局100は、CPU101、タイマ102、RAM103、メモリ104、電源制御部105、クロック制御部106、EVDOインタフェース111、EVDOデバイス112、WiMAXインタフェース113、WiMAXデバイス114、無線LANインタフェース116、無線LANデバイス117、入力インタフェース121、ディスプレイインタフェース122、ディスプレイパネル123、音声インタフェース124、スピーカ125およびマイクロホン126を有する。WiMAXデバイス114は、タイマ115を有する。無線LANデバイス117は、タイマ118を有する。
【0057】
CPU101は、無線アクセス網210,220,230,240との接続を制御し、また、音声入出力や画面出力を含むユーザインタフェースを制御するプロセッサである。CPU101は、アプリケーションプログラムやドライバプログラムなどのプログラムを実行する。CPU101は、メモリ104からプログラムやデータを読み出し、RAM103に展開してプログラムを実行する。ただし、移動局100は、CPU101に代えてまたはCPU101と共に、DSPなどの他の種類のプロセッサを用いてもよい。
【0058】
ここで、CPU101は、アクティブ状態のときに以下に挙げるような何れのイベントも一定時間発生しないと、低消費電力のサスペンド状態に移行し、サスペンド状態のときに割り込み信号が入力されると、アクティブ状態に復帰する。アクティブ状態では、アプリケーションプログラムやドライバプログラムが実行されており、サスペンド状態では、アプリケーションプログラムやドライバプログラムが実行されておらず停止している。
【0059】
イベントには、(1)ディスプレイパネル123に対するユーザのタッチ操作、(2)ディスプレイパネル123に表示する画面の更新、(3)アプリケーションプログラムの実行、(4)無線アクセス網210を利用した音声通話、(5)無線アクセス網220,230,240を利用したパケット通信が含まれる。割り込み信号は、GPIO(General Purpose Input Output)の信号線を介してCPU101に入力される。
【0060】
タイマ102は、CPU101から利用されるハードウェアタイマである。タイマ102は、セットされた時間が経過すると、CPU101に割り込み信号を送信する。
RAM103は、CPU101が使用するプログラムやデータを一時的に記憶する揮発性メモリである。RAM103の特定の記憶領域は、WiMAXデバイス114および無線LANデバイス117からアクセスすることもできる。当該特定の記憶領域には、後述するように、圏外フラグが書き込まれる。なお、移動局100は、RAM103に代えてまたはRAM103と共に、他の種類のメモリを用いてもよい。
【0061】
メモリ104は、CPU101が使用するプログラムやデータを記憶する不揮発性メモリであり、例えば、フラッシュメモリである。ただし、移動局100は、メモリ104に代えてまたはメモリ104と共に、他の種類の不揮発性の記憶装置を用いてもよい。
【0062】
電源制御部105は、移動局100が備える各ユニットへの電力供給を制御する。例えば、電源制御部105は、サスペンド状態の間、CPU101への供給電力を抑制する。また、例えば、電源制御部105は、無線アクセス網230,240の利用状況に応じて、WiMAXデバイス114および無線LANデバイス117への供給電力を調整する。
【0063】
クロック制御部106は、移動局100が備える各ユニットへのクロック信号の供給を制御する。例えば、クロック制御部106は、サスペンド状態の間、CPU101に供給するクロック信号の周波数を下げる。また、例えば、クロック制御部106は、無線アクセス網230,240の利用状況に応じて、WiMAXデバイス114および無線LANデバイス117に供給するクロック信号の周波数を調整する。
【0064】
EVDOインタフェース111は、EVDOデバイス112を、CPU101およびRAM103に接続するためのインタフェースである。
EVDOデバイス112は、無線アクセス網220を利用してEVDO方式で無線通信を行う無線デバイスである。EVDOデバイス112は、アンテナで受信した無線信号をベースバンド信号にダウンコンバートする無線受信部と、ベースバンド信号を復調および復号してデータを抽出するベースバンド受信部とを含む。また、EVDOデバイス112は、送信するデータを符号化および変調するベースバンド送信部と、ベースバンド信号を無線信号にアップコンバートする無線送信部とを含む。EVDOデバイス112は、EVDOのアイドルモードのとき、間欠的にページングチャネルを受信する。
【0065】
WiMAXインタフェース113は、WiMAXデバイス114を、CPU101およびRAM103に接続するためのインタフェースである。
WiMAXデバイス114は、無線アクセス網230を利用してWiMAX方式で無線通信を行う無線デバイスである。WiMAXデバイス114は、EVDOデバイス112と同様に、無線受信部、ベースバンド受信部、ベースバンド送信部および無線送信部を含む。WiMAXデバイス114は、WiMAXのアイドルモードのとき、間欠的にページングチャネルを受信する。また、WiMAXデバイス114は、後述するように、無線アクセス網230の圏内か圏外かを示す圏外フラグを、RAM103に書き込む。
【0066】
タイマ115は、WiMAXデバイス114によって利用されるハードウェアタイマである。例えば、タイマ115は、WiMAXデバイス114が定期的に基地局をサーチするとき、サーチを実行するタイミングを判断するために用いられる。タイマ115は、CPU101からの指示に応じて時間がセットされ、セットされた時間が経過すると、WiMAXデバイス114が所定の動作を行うように割り込み信号を出力する。
【0067】
無線LANインタフェース116は、無線LANデバイス117を、CPU101およびRMA103に接続するためのインタフェースである。
無線LANデバイス117は、無線アクセス網240を利用して無線LAN方式で無線通信を行う無線デバイスである。無線LANデバイス117は、EVDOデバイス112と同様に、無線受信部、ベースバンド受信部、ベースバンド送信部および無線送信部を含む。無線LANデバイス117は、無線LANのアイドルモードのとき、間欠的にビーコンを受信する。また、無線LANデバイス117は、後述するように、無線アクセス網240の圏内か圏外かを示す圏外フラグを、RAM103に書き込む。
【0068】
タイマ118は、無線LANデバイス117によって利用されるハードウェアタイマである。例えば、タイマ118は、無線LANデバイス117が定期的に基地局をサーチするとき、サーチを実行するタイミングを判断するために用いられる。タイマ118は、CPU101からの指示に応じて時間がセットされ、セットされた時間が経過すると、無線LANデバイス117が所定の動作を行うように割り込み信号を出力する。
【0069】
入力インタフェース121は、ディスプレイパネル123に対するタッチ操作を検出して、タッチ位置を示す入力信号をCPU101に通知する入力インタフェースである。
ディスプレイインタフェース122は、CPU101によって生成された画面をディスプレイパネル123に表示する出力インタフェースである。
【0070】
ディスプレイパネル123は、タッチパネル付きのディスプレイである。ディスプレイには、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイを用いることができる。タッチ位置の検出には、マトリクススイッチ方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式などの各種の検出方式を用いることができる。ユーザは、タッチペンなどのポインティングデバイスまたはユーザの指によって、タッチ操作を行う。なお、移動局100は、入力デバイスとして、文字キーや機能キーなどのキーを備えたキーパッドを有してもよい。
【0071】
音声インタフェース124は、音声信号を処理するインタフェースである。
スピーカ125は、音声インタフェース124から取得する音声信号としての電気信号を物理振動に変換し、音を再生する。例えば、無線アクセス網210を利用してユーザが通話を行っているとき、通話相手の声や背景雑音がスピーカ125から再生される。
【0072】
マイクロホン126は、音の物理振動を電気信号に変換することで音声を受け付け、音声信号としての電気信号を音声インタフェース124に出力するインタフェースである。例えば、無線アクセス網210を利用してユーザが通話を行っているとき、移動局100側のユーザの声や背景雑音がマイクロホン126から入力される。
【0073】
なお、CPU101は、第1の実施の形態のプロセッサ13の一例である。RAM103は、第1の実施の形態の記憶部11の一例である。WiMAXデバイス114および無線LANデバイス117は、第1の実施の形態の無線デバイス12の一例である。
【0074】
図6は、第2の実施の形態のインタフェースを示すブロック図である。WiMAXデバイス114および無線LANデバイス117は、それぞれGPIOおよびSDIO(Secure Digital Input Output)の信号線に接続されている。GPIOは割り込み信号の送信に用いられ、SDIOはデータの送信に用いられる。
【0075】
WiMAXデバイス114は、SDIOの信号線(SDIO#1)を介してRAM103にアクセスすることができる。RAM103には、無線アクセス網230の圏内か圏外かを示す圏外フラグ103aが書き込まれる。WiMAXデバイス114は、無線アクセス網230の圏内から圏外への移動および圏外から圏内への移動を検出すると、圏外フラグ103aを更新すると共に、GPIOの信号線を介して割り込み信号を出力する。
【0076】
無線LANデバイス117は、SDIOの信号線(SDIO#2)を介してRAM103にアクセスすることができる。RAM103には、無線アクセス網240の圏内か圏外かを示す圏外フラグ103bが書き込まれる。無線LANデバイス117は、無線アクセス網240の圏内から圏外への移動および圏外から圏内への移動を検出すると、圏外フラグ103bを更新すると共に、GPIOの信号線を介して割り込み信号を出力する。
【0077】
OR回路119は、CPU101と、WiMAXデバイス114および無線LANデバイス117との間に設けられる。OR回路119は、WiMAXインタフェース113および無線LANインタフェース116の何れか一方に設けてもよい。OR回路119は、WiMAXデバイス114および無線LANデバイス117の少なくとも一方が割り込み信号を出力すると、GPIOの信号線を介してCPU101に割り込み信号を送信する。
【0078】
なお、圏外フラグ103a,103bは、第1の実施の形態のフラグ情報11aの一例である。また、第2の実施の形態では、圏外フラグ103a,103bをRAM103に書き込むこととしたが、移動局100が備える他の記憶装置に書き込んでもよい。
【0079】
図7は、圏外フラグの組み合わせを示す図である。RAM103に記憶された圏外フラグ103a,103bは、それぞれ1ビットで表現できる。
例えば、圏外フラグ103a=0は、無線アクセス網230(WiMAX)の圏内であることを示し、圏外フラグ103a=1は、無線アクセス網230の圏外であることを示す。圏外フラグ103b=0は、無線アクセス網240(無線LAN)の圏内であることを示し、圏外フラグ103b=1は、無線アクセス網240の圏外であることを示す。
【0080】
圏外フラグ103a,103bの組み合わせにより、4通りのケース(ケース0〜3)が考えられる。圏外フラグ103a=圏外フラグ103b=0(ケース0)の場合、データ通信に無線アクセス網230,240の何れを用いてもよい。圏外フラグ103a=1,圏外フラグ103b=0(ケース1)の場合、データ通信に無線アクセス網240を用いる。圏外フラグ103a=0,圏外フラグ103b=1(ケース2)の場合、データ通信に無線アクセス網230を用いる。圏外フラグ103a=圏外フラグ103b=1(ケース3)の場合、データ通信に無線アクセス網220を用いることになる。
【0081】
図8は、移動局を制御するソフトウェア例を示すブロック図である。CPU101により実行されるソフトウェアは、階層構造を有し、カーネル層、ライブラリ/ランタイム層、フレームワーク層およびアプリケーション層を含む。
【0082】
カーネル層は、ハードウェアを制御するためのオペレーティングシステム(OS:Operating System)の基本的機能を提供する。ライブラリ/ランタイム層は、カーネル層の上位に位置し、仮想マシンなどのプログラム実行環境や、描画や通信などのハードウェア依存の機能を実装したネイティブライブラリを提供する。フレームワーク層は、ライブラリ/ランタイム層の上位に位置し、ネイティブライブラリを利用したハードウェア非依存のアプリケーションフレームワークを提供する。アプリケーション層は、フレームワーク層の上位に位置し、ユーザから利用されるアプリケーションソフトウェアを提供する。
【0083】
カーネル層は、ソフトウェアモジュールとして、EVDOドライバ131、WiMAXドライバ132、無線LANドライバ133、タッチパネルドライバ134およびディスプレイドライバ135を含む。EVDOドライバ131は、EVDOデバイス112を制御する。WiMAXドライバ132は、WiMAXデバイス114を制御する。無線LANドライバ133は、無線LANデバイス117を制御する。タッチパネルドライバ134およびディスプレイドライバ135は、ディスプレイパネル123を制御する。
【0084】
アプリケーション層は、ソフトウェアモジュールとして、Webブラウザ136、電話ソフトウェア137、ゲームソフトウェア138および通信制御部139を含む。Webブラウザ136は、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)通信を行い、Webページをレンダリングする。電話ソフトウェア137は、ユーザが音声通話を開始・終了するための機能を提供する。ゲームソフトウェア138は、無線アクセス網220,230,240からダウンロードされ、ゲーム機能をユーザに提供する。通信制御部139は、EVDOドライバ131、WiMAXドライバ132および無線LANドライバ133と連携して、無線アクセス網220,230,240の接続を制御する。
【0085】
図9は、データ通信状態の遷移例を示す図である。図9は、移動局100と無線アクセス網220(EVDO)との間のデータ通信状態を示している。
状態「NULL」は、移動局100が無線アクセス網220に関する信号処理を停止している状態であり、移動局100の電源がOFFであるときに相当する。移動局100の電源がONになると、移動局100が基地局211と無線区間のメッセージを送受信することで、状態「NULL」から状態「アイドル(PPP無効)」に遷移する。
【0086】
状態「アイドル(PPP無効)」は、移動局100が無線アクセス網220とPPPコネクションを確立していない状態である。データ通信を行う場合、移動局100が基地局211との間で無線チャネルであるトラフィックチャネル(TCH)を確立することで、状態「アイドル(PPP無効)」から状態「無線チャネル確立」に遷移する。移動局100が基地局211を介してPDSN222とPPPコネクションを確立すると、状態「無線チャネル確立」から状態「PPPコネクション確立」に遷移する。
【0087】
状態「PPPコネクション確立」は、移動局100が無線アクセス網220とPPPコネクションを確立した状態である。移動局100がPPPコネクション上でパケット形式のデータ通信を開始すると、状態「PPPコネクション確立」から状態「アクティブ」に遷移する。状態「アクティブ」は、移動局100が無線アクセス網220を利用してデータ通信を行っている状態である。移動局100のデータ通信が終了すると、状態「アクティブ」から状態「アイドル(PPP有効)」に遷移する。
【0088】
状態「アイドル(PPP有効)」は、PPPコネクションが維持された状態である。移動局100またはIPコアネットワーク320からの要求により再びデータ通信を行う場合、移動局100がトラフィックチャネルを確立することで、状態「アイドル(PPP有効)」から状態「無線チャネル確立」に遷移する。このとき、既にPPPコネクションが有効であるため、移動局100はすぐにデータ通信を開始し、状態「無線チャネル確立」から状態「アクティブ」に遷移する。ただし、移動局100が無線アクセス網230,240に接続すると無線アクセス網220とのPPPコネクションは無効となり、状態「アイドル(PPP有効)」から状態「アイドル(PPP無効)」に遷移することになる。
【0089】
図10は、データ通信プロトコルの階層例を示す図である。図10は、移動局100と無線アクセス網220(EVDO)との間のデータ通信プロトコルの階層を示している。
移動局100は、物理レイヤ上で、MAC(Medium Access Control)プロトコルおよびLAC(Link Access Control)プロトコルを用いて、基地局211またはPCF221と通信する。基地局211またはPCF221は、物理レイヤ上で、R−P(Radio Access Network - Packet Data Serving Node)のプロトコルを用いて、PDSN222と通信する。移動局100とPDSN222とは、基地局211およびPCF221を透過して、LACおよびR−P上で、PPPコネクションを確立する。また、移動局100とPDSN222とは、PPPコネクション上で、IPパケットを送受信する。
【0090】
前述のように、移動局100は、好ましくは、無線アクセス網230,240の少なくとも一方の圏内にいるときは、無線アクセス網230(WiMAX)または無線アクセス網240(無線LAN)を利用してデータ通信を行う。ただし、無線アクセス網230,240の両方の圏外にいるときは、移動局100は、PPPコネクションを確立し、無線アクセス網220(EVDO)を利用してデータ通信を行うことになる。以下、このような無線アクセス網220,230,240の接続制御について説明する。
【0091】
図11は、無線デバイスによる待ち受け処理を示すフローチャートである。WiMAXのアイドルモードで待ち受け中、図11に示す待ち受け処理が、WiMAXデバイス114によって実行される。無線LANのアイドルモードで待ち受け中には、図11と同様の待ち受け処理が、無線LANデバイス117によって実行される。
【0092】
(ステップS10)WiMAXデバイス114は、次にページングチャネルを受信するタイミング(例えば、1.28秒周期)を待つ。
(ステップS11)WiMAXデバイス114は、基地局231からページングチャネルの受信を試み、ページングチャネルの受信に成功したか判断する。受信に成功した場合、処理をステップS12に進め、受信に失敗した場合、処理をステップS14に進める。なお、無線LANのアイドルモードの場合、無線LANデバイス117が、基地局241からビーコンの受信を試み、ビーコンの受信に成功したか判断する。
【0093】
(ステップS12)WiMAXデバイス114は、受信したページングチャネルに、自局の呼び出しを示すページング情報が含まれているか判断する。含まれている場合、処理をステップS13に進め、含まれていない場合、処理を終了する。
【0094】
(ステップS13)WiMAXデバイス114は、WiMAXのアイドルモードを解除し、基地局231からのデータ受信を開始する。そして、待ち受け処理を終了する。
(ステップS14)WiMAXデバイス114は、無線アクセス網230の基地局のサーチ(圏外サーチ)を行う。基地局の検出は、例えば、基地局が送信するパイロット信号を捕捉することで行う。なお、無線LANのアイドルモードの場合、無線LANデバイス117が、無線アクセス網240の基地局のサーチ(圏外サーチ)を行う。
【0095】
(ステップS15)WiMAXデバイス114は、圏外サーチによってアクセス可能な基地局(例えば、受信電力レベルが閾値を超える基地局)を検出したか判断する。検出した場合、処理を終了し、検出しない場合、処理をステップS16に進める。
【0096】
(ステップS16)WiMAXデバイス114は、SDIOの信号線を介してRAM103にアクセスし、圏外フラグ103a=1をRAM103に書き込む。なお、無線LANのアイドルモードの場合、無線LANデバイス117が、SDIOの信号線を介してRAM103にアクセスし、圏外フラグ103b=1をRAM103に書き込む。
【0097】
(ステップS17)WiMAXデバイス114は、GPIOの信号線を介して、CPU101に割り込み信号を送信する。CPU101がサスペンド状態である場合、割り込み信号によって、CPU101がアクティブ状態に復帰することが期待される。
【0098】
図12は、第2の実施の形態の接続制御を示すフローチャートである。EVDO、WiMAXおよび無線LANの何れか1つのアイドルモードで待ち受け中、図12に示す接続制御が、CPU101によって実行される。なお、以下のステップS21〜S27の処理は、アプリケーション層の通信制御部139によって制御される。
【0099】
(ステップS20)CPU101は、割り込み信号が入力されると、サスペンド状態を解除してアクティブ状態に復帰する。入力され得る割り込み信号には、WiMAXデバイス114または無線LANデバイス117からの割り込み信号と、CPU101がセットしたタイマ102からの割り込み信号とが含まれる。
【0100】
(ステップS21)CPU101は、サスペンド状態が解除されると、RAM103にアクセスして圏外フラグ103a,103bを確認する。
(ステップS22)CPU101は、圏外フラグ103a=1かつ圏外フラグ103b=1(ケース3)であるか判定する。条件を満たす場合、処理をステップS23に進め、条件を満たさない場合、処理をステップS25に進める。
【0101】
(ステップS23)CPU101は、EVDOデバイス112に接続確立を指示する。EVDOデバイス112は、無線アクセス網220とPPPコネクションを確立する。
(ステップS24)EVDOデバイス112は、EVDOアイドルモードを維持する。
【0102】
(ステップS25)CPU101は、無線アクセス網230,240のうち圏内である何れか一方に接続し、または、既に接続している場合には接続を維持するよう制御する。圏外フラグ103a=1かつ圏外フラグ103b=0(ケース1)の場合には、無線アクセス網240が選択され、圏外フラグ103a=0かつ圏外フラグ103b=1(ケース2)の場合には、無線アクセス網230が選択されることになる。
【0103】
(ステップS26)CPU101は、基地局サーチのため、圏外フラグ103a=1のとき(無線アクセス網230の圏外のとき)タイマ115をセットし、圏外フラグ103b=1のとき(無線アクセス網240の圏外のとき)タイマ118をセットする。
【0104】
(ステップS27)CPU101は、タイマ102をセットする。これにより、CPU101は、WiMAXデバイス114および無線LANデバイス117からの割り込み信号を受信し損ねても、定期的に圏外フラグ103a,103bを確認し、無線アクセス網220のPPPコネクションを確立すべきか判定することができる。
【0105】
(ステップS28)CPU101は、アクティブ状態からサスペンド状態に移行する。
図13は、無線デバイスによる圏外処理を示すフローチャートである。移動局100が無線アクセス網230の圏外にいるとき、図13に示す圏外処理が、WiMAXデバイス114によって実行される。移動局100が無線アクセス網240の圏外にいるときは、図13と同様の圏外処理が、無線LANデバイス117によって実行される。
【0106】
(ステップS30)WiMAXデバイス114は、タイマ115が満了するタイミング(次に基地局をサーチするタイミング)を待つ。
(ステップS31)WiMAXデバイス114は、無線アクセス網230の基地局をサーチする。基地局の検出は、例えば、基地局が送信するパイロット信号を捕捉することで行う。なお、移動局100が無線アクセス網240の圏外にいる場合、無線LANデバイス117が、無線アクセス網240の基地局をサーチする。
【0107】
(ステップS32)WiMAXデバイス114は、サーチによってアクセス可能な基地局(例えば、受信電力レベルが閾値を超える基地局)を検出したか判断する。検出した場合、処理をステップS33に進め、検出しない場合、処理をステップS35に進める。
【0108】
(ステップS33)WiMAXデバイス114は、SDIOの信号線を介してRAM103にアクセスし、圏外フラグ103a=0をRAM103に書き込む。なお、無線アクセス網240の場合は、無線LANデバイス117が、SDIOの信号線を介してRAM103にアクセスし、圏外フラグ103b=0をRAM103に書き込む。
【0109】
(ステップS34)WiMAXデバイス114は、GPIOの信号線を介して、CPU101に割り込み信号を送信する。CPU101がサスペンド状態である場合、割り込み信号によって、CPU101がアクティブ状態に復帰することが期待される。
【0110】
(ステップS35)WiMAXデバイス114は、次に基地局をサーチするタイミングを待つため、タイマ115を再セットする。なお、移動局100が無線アクセス網240の圏外にいる場合、無線LANデバイス117が、タイマ118を再セットする。
【0111】
図14は、無線アクセス網への接続例を示すシーケンス図である。図14は、移動局100が、状態「アイドル(PPP無効)」から、PPPコネクションを確立して、状態「アイドル(PPP有効)」に遷移するための手順の例を示している。図14に示すシーケンスは、例えば、前述のステップS23において実行される。
【0112】
移動局100は、基地局211と通信し、無線チャネルであるトラフィックチャネルを確立する(ステップS110)。移動局100は、トラフィックチャネル上で基地局211にアクセスし、基地局211およびPCF221を介して、PDSN222との間にPPPコネクションを確立する(ステップS111)。
【0113】
PDSN222は、移動局100を認証するため、生成された乱数を含むCHAP(Challenge Handshake Authentication Protocol)チャレンジメッセージを移動局100に送信する(ステップS112)。移動局100は、所定の一方向性関数(例えば、ハッシュ関数)を乱数に適用し、計算結果を含むCHAP応答メッセージをPDSN222に送信する。移動局100の計算結果が、生成された乱数を所定の一方向関数に適用することでネットワーク側において計算される「期待される計算結果」と一致すれば、移動局100が接続権限を有するものとして承認される(ステップS113)。
【0114】
PDSN222は、AAAサーバ322に移動局100の認証を要求する(ステップS114)。AAAサーバ322は、ホームエージェント321との間で認証手続きのメッセージを送受信し、ホームエージェント321に移動局100を登録する(ステップS115)。AAAサーバ322は、認証成功を示す応答メッセージをPDSN222に送信する(ステップS116)。PDSN222は、CHAP認証成功を示すメッセージを移動局100に送信する(ステップS117)。また、ホームエージェント321は、移動局100にIPアドレスを割り当てる(ステップS118)。
【0115】
移動局100は、移動局100が認証され移動局100にIPアドレスが割り当てられると、データ通信を終了する(ステップS119)。移動局100は、PDSN222と確立したPPPコネクションを維持し、EVDOアイドルモードとして動作する。
【0116】
図15は、PPP接続の例を示すシーケンス図である。図15は、ステップS111におけるPPPコネクション確立の詳細を示している。なお、PPPについての詳細は、RFC(Request for Comment)1661にも記載されている。
【0117】
移動局100は、トラフィックチャネル上で、PPPコネクションの設定開始を基地局211に要求する(ステップS120)。基地局211は、設定開始の確認応答を移動局100に送信する(ステップS121)。基地局211は、PCF221とA8コネクションを確立し、A8コネクション上でPCF221に設定要求を送信する(ステップS122)。PCF221は、PDSN222とA10コネクションを確立し、A10コネクション上でPDSN222に登録要求を送信する(ステップS123)。
【0118】
PDSN222は、登録応答をPCF221に送信する(ステップS124)。PCF221は、接続通知を基地局211に送信する(ステップS125)。基地局211は、完了通知をPCF221に送信する(ステップS126)。これにより、移動局100が基地局211およびPCF221を介してPDSN222と通信可能となる。移動局100は、PDSN222との間にPPPコネクションを設定する(ステップS127)。
【0119】
図16は、ページングチャネルの受信例を示すシーケンス図である。図16は、PPPコネクションを確立することで無線アクセス網220(EVDO)にデータ通信経路が設定され、移動局100が無線アクセス網220からページングチャネルを受信する場合を示している。図16のシーケンスは、例えば、前述のステップS24の後に実行される。
【0120】
基地局211は、ページングチャネルを定期的に送信する。移動局100は、所定周期(例えば、5.12秒周期)でページングチャネルを受信し、自局の呼び出しがあるか判断する。自局の呼び出しがない場合、移動局100は、次にページングチャネルを受信するタイミングまで、無線アクセス網220の信号処理を停止する(ステップS130)。
【0121】
移動局100は、自局の呼び出しを検出すると(ステップS131)、基地局211に接続要求を送信する(ステップS132)。基地局211は、移動局100からの接続要求を検出すると、ACK(Acknowledgement)を移動局100に送信する(ステップS133)。
【0122】
基地局211は、トラフィックチャネルを移動局100に割り当て、チャネル割り当てを移動局100に通知する(ステップS134)。移動局100は、基地局211から割り当てられたトラフィックチャネルについてパイロット信号を送信する(ステップS135)。基地局211は、移動局100から受信したパイロット信号に基づいて、割り当てたトラフィックチャネルの通信品質が問題ないことを確認し、RCT(Radio Conformance Test)のACKを移動局100に送信する(ステップS136)。移動局100は、トラフィックチャネルの設定完了を基地局211に通知する(ステップS137)。
【0123】
移動局100は、基地局211からのデータ受信を開始する(ステップS138)。このとき、PPPコネクションが既に確立されているため、無線チャネルの確立後に迅速にデータ通信を開始することができる。基地局211は、移動局100宛てのデータ送信が完了すると、無線チャネルのコネクション解放を移動局100に通知する(ステップS139)。移動局100は、無線チャネルのコネクションを解放し、基地局211に応答する(ステップS140)。ただし、PPPコネクションは維持される。これにより、移動局100は、再び状態「アイドル(PPP有効)」に遷移する。
【0124】
第2の実施の形態の移動通信システムによれば、RAM103に圏外フラグ103a,103bが書き込まれて保持されるため、サスペンド状態が解除されたCPU101は、RAM103を参照して無線状態を精度よく認識することができる。また、CPU101は、サスペンド状態が解除された後に、WiMAXデバイス114や無線LANデバイス117にコマンドを送信して無線アクセス網230,240の無線状態を問い合わせなくてもよい。よって、無線状態を迅速に確認でき、接続制御のオーバヘッドを低減できる。特に、CPU101は、無線アクセス網230,240の無線状態の組み合わせを確認することが容易となり、無線アクセス網220の接続制御を迅速に行うことが可能となる。
【0125】
このため、移動局100が待ち受け中に無線アクセス網230,240の両方の圏外に移動したときでも無線アクセス網220のPPPコネクションが迅速に確立されるため、データ通信に関するページングチャネルが受信できない時間を短縮できる。また、待ち受け中にCPU101がアクティブ状態になる時間を短縮でき、移動局100の消費電力を低減できる。また、移動局100は、無線アクセス網230,240の圏外に移動すると、無線アクセス網220のPPPコネクションを維持したまま待ち受けを行う。よって、無線アクセス網220から呼び出しを受けた後にPPPコネクションを確立する手続きを行わなくてよく、データ通信開始までのオーバヘッドを抑制できる。
【0126】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態を説明する。第2の実施の形態との差異を主に説明し、第2の実施の形態と同様の事項については説明を省略する。第3の実施の形態の移動局は、無線アクセス網220,230(EVDOおよびWiMAX)をデータ通信に利用する一方、無線アクセス網240(無線LAN)をデータ通信に利用しない。
【0127】
このため、第3の実施の形態の移動局は、図5に示した移動局100のユニットのうち無線LANインタフェース116および無線LANデバイス117を備えなくてもよい。
図17は、第3の実施の形態のインタフェースを示すブロック図である。
【0128】
前述の通り、WiMAXデバイス114は、無線アクセス網230の圏内から圏外への移動および圏外から圏内への移動を検出すると、SDIOの信号線を介して、WiMAXに関する圏外フラグ103aをRAM103に書き込む。ただし、RAM103は、無線LANに関する圏外フラグ(前述の圏外フラグ103b)を記憶しなくてもよい。
【0129】
また、前述の通り、WiMAXデバイス114は、無線アクセス網230の圏内から圏外への移動および圏外から圏内への移動を検出すると、割り込み信号を出力する。割り込み信号は、GPIOの信号線を介してCPU101に入力される。
【0130】
図18は、第3の実施の形態の接続制御を示すフローチャートである。EVDOまたはWiMAXのアイドルモードで待ち受け中、図18に示す接続制御が、CPU101によって実行される。図18は、図12に示した第2の実施の形態の接続制御に対応する。
【0131】
(ステップS40)CPU101は、割り込み信号が入力されると、サスペンド状態を解除してアクティブ状態に復帰する。入力され得る割り込み信号には、WiMAXデバイス114からの割り込み信号と、タイマ102からの割り込み信号とが含まれる。
【0132】
(ステップS41)CPU101は、サスペンド状態が解除されると、RAM103にアクセスして圏外フラグ103aを確認する。
(ステップS42)CPU101は、圏外フラグ103a=1であるか(無線アクセス網230の圏外であるか)判定する。条件を満たす場合、処理をステップS43に進め、条件を満たさない場合、処理をステップS45に進める。
【0133】
(ステップS43)CPU101は、EVDOデバイス112に接続確立を指示する。EVDOデバイス112は、無線アクセス網220とPPPコネクションを確立する。
(ステップS44)EVDOデバイス112は、EVDOアイドルモードを維持する。
【0134】
(ステップS45)CPU101は、無線アクセス網230に接続し、または、既に接続している場合には接続を維持するよう制御する。
(ステップS46)CPU101は、基地局サーチのため、圏外フラグ103a=1のとき(無線アクセス網230の圏外のとき)タイマ115をセットする。
【0135】
(ステップS47)CPU101は、タイマ102をセットする。
(ステップS48)CPU101は、アクティブ状態からサスペンド状態に移行する。
第3の実施の形態の移動通信システムによれば、RAM103に圏外フラグ103aが書き込まれて保持されるため、サスペンド状態が解除されたCPU101は、RAM103を参照して無線状態を精度よく認識することができる。また、CPU101は、サスペンド状態が解除された後に、WiMAXデバイス114にコマンドを送信して無線アクセス網230の無線状態を問い合わせなくてもよい。よって、無線状態を迅速に確認でき、接続制御のオーバヘッドを低減できる。
【0136】
このため、第2の実施の形態と同様に、移動局においてデータ通信に関するページングチャネルを受信できない時間が短縮される。また、CPU101がアクティブ状態になる時間を短縮でき、移動局の消費電力を低減できる。また、移動局は待ち受け中にPPPコネクションを維持することで、データ通信を開始するまでのオーバヘッドを抑制できる。
【符号の説明】
【0137】
10 移動通信装置
11 記憶部
11a フラグ情報
12 無線デバイス
13 プロセッサ
21,22 無線アクセス網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の無線アクセス網を利用して通信が可能な移動通信装置であって、
記憶部と、
前記第1の無線アクセス網の無線状態を検出し、検出した無線状態に応じたフラグ情報を前記記憶部に書き込む無線デバイスと、
サスペンド状態が解除されたとき、前記記憶部に記憶された前記フラグ情報に基づいて前記第2の無線アクセス網との接続を制御するプロセッサと、
を有する移動通信装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記フラグ情報が圏外を示すか判定し、判定結果に応じて前記第2の無線アクセス網との接続を確立するか否か選択する、請求項1記載の移動通信装置。
【請求項3】
第3の無線アクセス網の無線状態を検出し、検出した無線状態に応じた他のフラグ情報を前記記憶部に書き込む他の無線デバイスを更に有し、
前記プロセッサは、前記記憶部に記憶された前記フラグ情報と前記他のフラグ情報との組み合わせに基づいて、前記第2の無線アクセス網との接続を制御する、
請求項1記載の移動通信装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記フラグ情報および前記他のフラグ情報の両方が圏外を示すか判定し、判定結果に応じて前記第2の無線アクセス網との接続を確立するか否か選択する、請求項3記載の移動通信装置。
【請求項5】
前記無線デバイスは、前記第1の無線アクセス網の圏外であることを検出すると、圏外を示す値を前記フラグ情報として前記記憶部に書き込み、また、割り込み信号を出力し、
前記割り込み信号によって前記プロセッサのサスペンド状態が解除される、
請求項1記載の移動通信装置。
【請求項6】
第1および第2の無線アクセス網を利用して通信が可能でありプロセッサおよび記憶部を備える移動通信装置が実行する無線通信方法であって、
前記第1の無線アクセス網の無線状態に応じたフラグ情報を前記記憶部に書き込み、
前記プロセッサのサスペンド状態が解除されたとき、前記プロセッサから、前記記憶部に記憶された前記フラグ情報にアクセスし、
前記フラグ情報に基づいて前記第2の無線アクセス網との接続を制御する、
無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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