移植における免疫応答抑制のための線維芽細胞または線維芽細胞からの上澄みを使用する方法とその組成物
【課題】移植における免疫応答抑制のための方法及び組成物を提供する。
【解決手段】移植片の宿主拒絶を減少または阻害するのに有効な繊維芽細胞または繊維芽細胞培養物からの上澄みの量で受容者を処置することにより前記受容者にある移植応答を減少するように誘導する一つの方法である。繊維芽細胞または繊維芽細胞培養物からの上澄みは移植の前、移植と同時に、または移植後に投与することができる。この方法は他の外部抗原に対する免疫応答と妥協することなく移植片に対する免疫応答を減少するのに有効である。更に、外部組織による宿主に対する免疫応答、すなわち対宿主移植片病の減少を誘導する方法も開示される。
【解決手段】移植片の宿主拒絶を減少または阻害するのに有効な繊維芽細胞または繊維芽細胞培養物からの上澄みの量で受容者を処置することにより前記受容者にある移植応答を減少するように誘導する一つの方法である。繊維芽細胞または繊維芽細胞培養物からの上澄みは移植の前、移植と同時に、または移植後に投与することができる。この方法は他の外部抗原に対する免疫応答と妥協することなく移植片に対する免疫応答を減少するのに有効である。更に、外部組織による宿主に対する免疫応答、すなわち対宿主移植片病の減少を誘導する方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は1998年11月13日出願された(合衆国)暫定出願番号60/108,234号に基づく優先権を主張する。
本発明は移植片およびまたは対宿主性移植片反応の宿主拒絶反応を予防しまたは処置する領域に関する。
【背景技術】
【0002】
耐性は免疫応答が通常発生する抗原に対する応答性の後天的欠乏である。典型的には耐性を誘導するために、耐性化抗原への露出がなければならず、それはある種のリンパ球の死滅または機能的不活性化に帰着する。完全な耐性は第二抗原攻撃に対して抗体仲介または細胞仲介のいずれかの検出可能免疫応答の欠乏により特徴づけられる。部分的耐性は免疫応答の量的減少で象徴される。
【0003】
免疫系(免疫機構)の機能は病原体を含む異物(外部物体)を排除し、自己抗原に対する非応答性または耐性を維持することである。T細胞耐性は、1)自己ペプチドに反応する胸腺細胞がクローン欠失で排除される胸腺で(中心耐性で)、また2)免疫寛容条件下で自己抗原に露出することによる末梢で(末梢耐性で)達成される。
【0004】
不幸なことに、免疫系は有害な侵入者から移植組織などの有益な侵入者を区別せず、かくして免疫系は移植組織または器官を拒絶する。移植器官の拒絶は提供者同種異系抗原または異種抗原を認識する宿主に存在する同種異系反応性T細胞により著しく仲介される。
【0005】
現在移植を拒絶する患者は強力な免疫抑制剤で処置される。T細胞免疫応答を予防しまたは抑制する薬剤の注入は移植片拒絶を阻害するが、全身免疫抑制、毒性更には日和見感染による死に終る可能性もあり得る提供者組織拒絶に対する毒性と不完全な応答の故で、現在の薬剤治療のやり方に耐えられないか応答しない患者を処置するための代替的なアプローチが必要される。
【0006】
従って、提供者組織の宿主拒絶を避ける方法として、移植片に対する宿主の望ましくない免疫応答を減少または排除する必要がある。また対宿主性移植片病として知られる受容者組織に対する提供者組織による望ましくない免疫応答を排除しまたは減少する方法も有利となるであろう。
【0007】
IFN−γで処置されT細胞とも接触されると、ヒト歯肉線維芽細胞は同種異系反応抹梢T細胞の非効果的刺激薬となり、同種異系抗原提示細胞またはミトゲン刺激細胞の増殖応答を阻害したことが報告されている(Y.島袋他、免疫学76;344−347(1992))。
【発明の概要】
【0008】
ヒト線維芽細胞は、抗原に対する免疫応答が減少または排除されるように免疫系による応答を改善するために移植で使用できることが発見された。ここに記載される免疫応答の線維芽細胞(FBLs)による減少または排除は、提供者組織または器官の移植片に対する受容者の免疫応答を改善するために使用することができる。かくして一つの見地において、本発明の方法は提供者組織移植片に対する望ましくないT細胞免疫応答を抑制するのに特に有用である。
【0009】
従って、一つの見地において、本発明の方法は、提供者組織の、受容者の分離された線維芽細胞への接触を提供する。この見地での一つの実施例において、この方法は、提供者組織の受容者に、分離線維芽細胞を投与することを含む。線維芽細胞は移植の前、移植と同時に、または移植後に投与することができる。線維芽細胞は受容者に自己由来または同種異系であることができる。同種異系線維芽細胞は提供者から得ることができ、従ってこの場合は移植組織に対して自己由来のものである。本発明のも一つの見地において、同種異系線維芽細胞も提供者以外の源から得ることとができ、このような源は提供者の型あるいは受容者の型のいずれにも適合する必要はない。
【0010】
線維芽細胞は更に移植片の一部として受容者に投与できる。この目的に対して、本発明は、線維芽細胞を灌流されまたはそれを含む提供者組織または器官を受容者に提供することにより、免疫応答を減少しまたは改善する方法を提供する。望ましい実施例において、線維芽細胞は同種異系であり、望ましくは提供者および受容者両方に対して同種異系である。線維芽細胞はそれが受容者に移植される時に、外部組織に対する受容者のT細胞により免疫応答を改善する。
【0011】
も一つの実施例において、提供者組織または器官は、提供者または受容者のMHC型のいずれにも適合する必要のない提供者以外の源から得た線維芽細胞で灌流されあるいはそれを含む。
【0012】
も一つの見地において、本発明の方法は、移植に対する拒絶エピソードの発病度を減少しまた排除するために、提供者組織が受容者に移植された後に提供者組織の受容者に線維芽細胞を投与することにより移植を受けた患者を処置することを提供とする。線維芽細胞は受容者または提供者から得ることができ、また望ましくは第三者源から得られる。
【0013】
移植片に対する有害な免疫反応を受けている受容者への線維芽細胞の提示は更なる抗原刺激に対するT細胞の低応答性を減少または誘導し、それにより提供者組織に対して活性化されたT細胞による有害な応答を減少または排除する。
【0014】
本発明の更なる見地において、組織または器官の受容者への移植の前に、生体外で提供者組織または器官を線維芽細胞で処置することを含む、受容者に対する提供者組織による免疫応答、すなわち対宿主性移植応答を減少する方法が提供される。線維芽細胞は受容者に自己由来または同種異系であってもよい。同種異系線維芽細胞は提供者から得られ、または望ましくは線維芽細胞は提供者と受容者両方に対して同種異系である。線維芽細胞は受容者細胞に対して活性化され得る移植組織内でT細胞の応答性を減少し、そのため組織は宿主に対する提供者組織の有害な応答の発生なしであるいは減少の下で受容者(宿主)の体内に導入される。かくして「対宿主性移植片」病を防ぐことができる。
【0015】
更なる実施例において、提供者組織または器官は提供者組織内のT細胞を「事前活性化する」ために、生体外で受容者組織にまず露出される。提供者組織は次いで線維芽細胞に、望ましくは第三者線維芽細胞に接触される。線維芽細胞は、提供者組織が受容者に配置される時に受容者による抗原刺激に対して提供者組織内でのT細胞による有害な二次免疫応答を減少しあるいは阻害するであろう。
【0016】
本発明の更なる実施例は、提供者組織に対する受容者の有害な免疫応答を減少しまたは予防するために、移植後第三者線維芽細胞を受容者に投与することを含む。
も一つの実施例において、線維芽細胞は移植の前、移植の間もしくは移植の後に移植片受容者に投与される。
【0017】
かくして本発明の望ましい実施例に従って、ヒト線維芽細胞は移植結果として移植片拒絶およびまたは対宿主性移植片病を処置し、およびまたは移植片拒絶およびまたは対宿主性移植片病を予防または減少するために採用される。ヒトまたは非ヒトの線維芽細胞は、更に異種移植または移植片の使用を促進するために採用することができる。
【0018】
線維芽細胞培養および線維芽細胞/混合リンパ球反応培養から誘導される上澄みは同種異系抗原に対するT細胞応答に抑制効果を持つ。かくして、本発明は更に上澄みを使用する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ヒト繊維芽細胞が2個の異なる固体からのリンパ球の間の進行中の混合リンパ球反応(MLR)を抑制したことを示す図。繊維芽細胞はMLRでの刺激細胞と応答細胞両方に不適合であった。刺激T細胞は事前平板培養繊維芽細胞で保温された。
【図2】ヒト繊維芽細胞が2個の異なる固体からのリンパ球の間の進行中の混合リンパ球反応(MLR)を抑制したことを示す図。繊維芽細胞はMLRの刺激細胞と応答細胞両方に不適合であった。刺激T細胞は新鮮なトリプシン消化繊維芽細胞で保温された。
【図3】ヒト繊維芽細胞が二次混合リンパ球反応を抑制したことを示す図。同種異系繊維芽細胞で保温され、次いで同種異系、自己由来または第三者刺激細胞で接触された前もって刺激されたT細胞の再刺激は抑制された。
【図4】繊維芽細胞培養物からの上澄みが混合リンパ反応を抑制することを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで定義されるように、同種異系線維芽細胞は受容者と同種の異なる個体から得られる。提供者抗原は受容体に移植される提供者組織により発現される抗原を指示する。同種異系抗原は受容者により発現される抗原とは異なる抗原である。移植される提供者組織は移植片である。
【0021】
発明者は、ヒト線維芽細胞が試験管内で同種異系Tリンパ球と接触する時、繊維芽細胞が進行する混合リンパ球反応を抑制したことを発見した。通常異なる個体からの共存培養は混合リンパ球反応(MLR)としても知られるT細胞の活性化と増殖で立証されるT細胞応答に帰着する。MLRを受けるT細胞を線維芽細胞と接触させると、それはMLRを抑制した。
【0022】
一つの見地において、本発明は受容者にある提供者組織または器官移植片に対する免疫応答を減少しまたは阻害しもしくは排除する方法を提供する。本発明の一つの見地において、この方法は受容者への線維芽細胞の投与を含む。線維芽細胞は提供者組織または器官に対する受容者のT細胞応答を改善し、阻害しまたは減少するのに有効な量で採用される。
【0023】
従って、本発明は線維芽細胞を提供者組織または器官の受容者に投与することにより免疫応答を減少し、阻害しまたは排除する方法を提供する。一つの実施例において、線維芽細胞は移植と同時期に受容者に投与される。選択肢として、ヒト線維芽細胞は移植片の投与の前に投与することができる。例えばヒト線維芽細胞は提供者組織の移植の約3日乃至7日前に受容者に投与することができる。更なる選択肢として、線維芽細胞は移植後に投与できる。
【0024】
かくして、受容者T細胞による免疫応答を減少しまたは排除するのに有効な量で、提供者組織の移植の前、あるいは移植と同時に線維芽細胞を受容者に投与することにより、線維芽細胞は提供者または外部組織に対する受容者の免疫系をよいコンディションに持っていくように使用することができる。線維芽細胞は受容者のT細胞に影響し、そのためT細胞は低応答性となり受容者が提供者または外部組織を与えられるとT細胞応答は減少または排除される。かくして移植片の宿主拒絶あるいはその発病度は避けられる。
【0025】
発明者は更に、抗原刺激に露出されすなわち活性化されたTリンパ球が続けて線維芽細胞に露出された時、T細胞が続く抗原刺激に対し免疫応答を産出しないことを発見した。かくして線維芽細胞はT細胞を刺激した抗原、または他の抗原からの刺激に対し、低応答性の状態を誘導する。
【0026】
これらの予期しない結果は、同種異系ヒト線維芽細胞に露出された後、活性化T細胞が更なる抗原刺激に低応答性にされ、これにより進行中の有害な免疫応答を減少しまたは改善することを示した。
【0027】
従って、本発明は患者に線維芽細胞を投与ることで移植片に対する有害な免疫応答を受けているそのような患者を処置する方法を提供する。望ましい実施例において、線維芽細胞は提供者または受容者にMHC適合を必要としない第三者から得られる。
【0028】
線維芽細胞は免疫応答を減少しまたは排除するのに有効な量で受容者に投与され、それにより有害な免疫応答を改善する。
も一つの見地において、本発明は受容者に対する提供者組織または器官(対宿主性移植片)による免疫応答を減少しまたは阻害しあるいは排除する方法を提供する。従って本発明は、移植の前に、望ましくは提供者組織にあるT細胞の受容者組織による事前刺激で、提供者器官または組織の線維芽細胞への接触を提供する。線維芽細胞は受容者に対する提供者組織による有害な免疫応答を改善し、阻害しまたは減少する。
【0029】
も一つの実施例において、線維芽細胞は移植の前、移植の間または移植後に移植片受容者に静脈内投与される。
線維芽細胞はこのように受容者の免疫系に対する提供者組織または外部組織を事前調整して使用することができる。一つの実施例において、これは受容者への組織の移植の前に生体外で提供者組織または外部組織を単離線維芽細胞に接触して行うことができる。この実施例において、提供者の組織または器官は組織を受容者に配置する前に1日以下乃至7日間の同時保温で受容者線維芽細胞と同時に保温することができる。線維芽細胞は組織または器官に存在しあるいはその中にあるT細胞を抑制するものと考えられ、従ってそれが続いて受容者に配置される時には組織内のT細胞を受容者に対して低応答性にする。かくして組織または器官の線維芽細胞での処置は移植組織に存在する活性化T細胞が宿主を攻撃する対宿主性移植片病の発生数およびまたは発病度を改善する。
【0030】
かくして骨髄(造血幹細胞)移植に関連して、移植による宿主の攻撃を減少または排除することができる。提供者の骨髄は骨髄または抹梢血幹細胞を受容者に移植する前に単離線維芽細胞で事前処置することができる。繊維芽細胞は、受容者が骨髄により有害な影響を受けることを減少または排除するようにT細胞応答を阻害しまたは減少する。つまりこの療法は対宿主性移植片応答を減少しまたは排除する。
【0031】
更なる実施例において、対宿主性移植片病で苦しむ移植片受容者は、宿主の移植拒絶を減少し、または排除するのに有効な量で受容者または提供者のいずれかに自己由来のものである単離線維芽細胞、あるいは第三者線維芽細胞をそのような受容者に投与することにより発病度を減少しまたは排除することで処置される。線維芽細胞は受容者に対して免疫応答を配備することから提供者組織内の活性化T細胞を阻害し、これにより対宿主性移植片応答を減少または排除する。
【0032】
受容者の線維芽細胞は移植の前に受容者から得られ、例えば進行中の宿主に対する移植片攻撃で多数の処置を提供するために十分な量での線維芽細胞の貯蔵品を提供するために貯蔵されおよびまたは培養拡張される。
【0033】
更に本発明のも一つの方法において、提供者の組織は単離線維芽細胞に露出され、そのため線維芽細胞は移植の前に線維芽細胞がそれ自身器官移植片に組み込まれる。この状態において、移植拒絶を予防する標準処置、例えば薬剤仲介免疫抑制を逃れたいずれかの同種異系反応性宿主細胞は線維芽細胞が移植片に入りそれを破壊することで線維芽細胞により免疫抑制されるであろう。繊維芽細胞は受容者にとって自己由来または同種異系のものであり、更に望ましくは提供者または受容者以外の第三者から得られ。
【0034】
ここに記載された本発明の方法に基づいて、本発明の線維芽細胞は提供者組織の拒絶または対宿主性移植片病を処置する現在のやり方と併用して使用できることが考慮される。このような使用の利点は、移植片受容者での免疫応答の発病度を改善することにより、処置で使用される薬剤量およびまたは薬剤治療の投与頻度を減少することができ、その結果全体的な免疫抑制と望ましくない副作用を軽減することに帰着する。
【0035】
更に本発明の線維芽細胞で1回だけの処置が必要とされ、慢性的な免疫抑制薬剤治療の必要性が排除されることも考慮される。選択肢として、線維芽細胞の複数の投与も行われることはある。
【0036】
従って、ここに記載の発明は、同一種から器官または組織、あるいは異種移植器官または組織およびまたは対宿主性移植片病の移植片拒絶の予防または処置もしくは改善のための予防あるいは治療有効量で線維芽細胞を投与することにより、移植片拒絶の予防または処置を提供する。
【0037】
線維芽細胞の単一用量投与は、とりわけTリンパ球が線維芽細胞から単離された後に、同種異系細胞に対しその非応答特性(すなわち耐性あるいはアネルギー(免疫力低下状態))を保持する場合には、T細胞または「非自己」組織に同種異系の組織に対するT細胞応答を減少し、または排除するのに有効である。
【0038】
活性成分の用量は広い範囲で変化し、また勿論各特定の場合個々の必要条件に適合するものとなるであろう。一般に非経口投与の場合には、受容者の体重キログラム当り約0.01乃至約20百万細胞を投与することが通例である。使用される細胞数は受容者の体重と体調、投与の回数と頻度及び当業者にとって公知の他の変数に依存する。細胞は移植される組織または器官に適したルートで投与することができ、それは全身に、すなわち非経口で、静脈内注射で投与でき、または骨髄などのような特定の組織または器官を標的とすることができる。ヒト線維芽細胞は細胞の皮下移植を介して、または結合組織、例えば筋への幹細胞の注射により投与することができる。
【0039】
細胞は約0.01乃至約5×106細胞/mlの濃度で適切な希釈剤に懸濁することができる。注射液のための適切な賦形剤は緩衝生理食塩水またはほかの適切な賦形剤などのような細胞とまた受容者と生物学的生理学的に融和性のものである。投与のための組成物は適当な無菌性と安定性を満たす標準方法に従って処方され、生産されかつ貯蔵されねばならない。
【0040】
本発明はそれで限定されないが、線維芽細胞をここに記載の方法で使用するために皮膚から得ることができる。
本発明者は更に、線維芽細胞培養物から誘導される上澄みが同種異系細胞間にあるMLRを制御できることを発見した。ここで使用されるように、またここで「線維芽細胞上澄み」として指摘される線維芽細胞培養物から誘導される上澄みは、単独で培養された線維芽細胞および免疫応答を受ける細胞すなわち結合リンパ球反応を受けるT細胞を共存培養される繊維芽細胞から得ることができる。
【0041】
線維芽細胞上澄みは用量依存のやり方で混合リンパ球での同種異系T細胞応答を活発に減少する。線維芽細胞との場合と同じく、異なる提供者からの線維芽細胞培養物からの上澄みはMHC型と関連する減少した応答の特異性を示さない。
【0042】
加えて、線維芽細胞と接触した混合リンパ球反応から誘導される上澄みは同じく同種異系細胞管のMLRを抑制できる。これらのMLR/線維芽細胞上澄みは用量依存のやり方で混合リンパ球反応での同種異系T細胞応答を減少させ、またMHC型に関して減少した応答の特異性を示さない。
【0043】
ここに記載された方法は従来の技術で公知の数多くのやり方でまた各種の修飾と順列で実行することができることは理解されるべきである。細胞間の作用または相互作用のやり方について測定される何らかの理論がどのようなやり方でもこの発明を制限するものとして解釈されるべきものではなく、発明の方法がより完全に理解できるように提示されることが評価されてしかるべきであろう。
【0044】
下記の実施例は本発明の更なる見地を説明する。しかしそれはここに設定された本発明の教示または開示を限定するものではない。
実施例1
混合リンパ球本能の抑制
混合リンパ球反応は提供者表面抗原の融和性を測定し、また提供者組織の拒絶の尤度の微候である。移植片拒絶を引き出すのに原因となる細胞表面抗原はMHC抗原クラスIとクラスIIである。T細胞は外部MHC抗原に対して同種異系である。MHC分子クラスIとクラスIIは混合リンパ球反応を刺激する。
【0045】
繊維芽細胞が同種異系応答を活発に抑制したかどうかを決定するために、混合リンパ球反応(MLR)が刺激細胞または応答細胞のいずれかと関係なく提供者から得た繊維芽細胞ありまたはなしで細胞培養平板に設定された。
【0046】
リンパ球調製
末梢血単核細胞(PBMC)が密度勾配遠心法によりフィコール−パック(ファルマチア)で調製された。細胞のアリコートは10%DMSOを持つ90%FCSに凍結され液体チッ素で貯蔵された。解凍後、細胞はMSC培地(DMEM低グルコースと10%FCS)で2回洗浄され、検定培地(25mMへペス、1mMピルビン酸ナトリウム、100μM非必須アミノ酸、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、0.25μg/mlアンホテリシンB、5.5×10-5M、2メルカプトエタノール(すべてジブコBLRよりの試薬)を持つイスコーブと5%ヒトAB血清(シグマ、試験されたMLR))で再懸濁された。
【0047】
T細胞富化分画を調製するために、PBMCは免疫磁性負選択により単核球とB細胞を使い果した。PBMCはマウス抗ヒトCD19とCD14mAbs(アジ化物なし/低エンドトキシン(NA/LE)形態)で保温され、次いでビオチン接合ヤギ抗マウスIgG(多吸着)Ab(すべてファーミンゲンよりの試薬)およびストレプトアビジン・マイクロビード(ミルテニイ・バイオテック)で続けられた。細胞は次いで磁気細胞ソータ(MACS、ミルテニイ・バイオテック)を用いて分離された。T細胞富化分画は約70−90%CD3+細胞を含有していた。
【0048】
線維芽細胞
線維芽細胞はATCC(Cat#CRL−2104)から得た18歳の女性からのヒト正常皮膚線維芽細胞CCD−1087Skであり、DMEM−低グルコース/10%FCSで維持された。
【0049】
活性化T細胞/線維芽細胞培養物
線維芽細胞(第三者)はT細胞との混合4日前に組織培養皿当り1×106細胞で平板培養された。IFN−γ(ファーミンゲン、5ng/ml)が3日間加えられ繊維芽細胞をT細胞と混合する前に集中的に洗浄された。
【0050】
第一次(1°)MLR
応答細胞と刺激細胞は無関係の個体から得られた。刺激に使用されたPBMCはキャビネットX放射線システム(ファクシトロンXレイ、バッファロー、イリノイ)を用いて3,000ラドでX線照射された。富化T細胞は応答細胞として使用された。
【0051】
A.提供者248からのT細胞が提供者244からの照射PBMCsで7日間(5%CO2で37℃)刺激され、次いで収集され事前平板培養FBLsで24時間保温された(1×105T細胞/ウエル、2×104FBLs/ウエル)。3H−チミジンがT細胞増殖を測定するために培養期間の追加の18時間に加えられた。図1で示された結果は線維芽細胞が進行中のMLRを抑制したことを明示する。
【0052】
B.提供者273からのT細胞が提供者248からの照射PBMCsで96ウエル平板で結合された(1.5×105細胞/各ウエル)。新鮮なトリプシンで消化された線維芽細胞がIFNなしで2×104細胞/ウエルで4日後に加えられ、培養物は更に3日間保温された(MLR全体で7日間)。3H−チミジンが追加の18時間加えられた。図2で示された結果は線維芽細胞がウエル表面に接触されない時もまた進行中のMLRを抑制したことを明示する。
【0053】
実施例2
T細胞非応答性の誘導
1°MLR(提供者244と248のT細胞)で活性化されたT細胞が収集され、MSC培地(DMEM−LG/10%FCS)で1回洗浄され検定培地で1×106細胞/mlで再懸濁された。細胞は事前平板培養線維芽細胞と線維芽細胞当り10T細胞の大体の比率で混合された。T細胞は線維芽細胞と3日間保温された。対照培地でT細胞は単独で保温された。
【0054】
再刺激検定
T細胞培養物が収集され、1×106細胞/mlで再懸濁され、96ウエル平板(50マイクロリットルで5×104細胞/ウエル)に加えられた。培養物は提供者244からのもとの刺激細胞、第三者刺激細胞、植物性血球凝集素(PHA、5マイクログラム/ml)、ミリスチン酸酢酸ホルボール、プラス、カルシウムイオノフォア(PMA、10ナノグラム/ml+CaIo、1ナノグラム/ml)、またはブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA100ナノグラム/ml)を含む各種の刺激剤と混合された。細胞は0,1,2,3,4,5、または6日目に3H−チミジン(5μCi/mmol,1μCi/ウエル)で1晩(18時間)パルス標識され、次いで収穫された。2日目の結果が図3で示される。前に刺激され次いで同種異系繊維芽細胞に露出されたT細胞はいずれかの刺激剤の存在下で再刺激はされなかった。
【0055】
実施例3
成人の真皮繊維芽細胞の密集培養物から上澄みが収集された(#1087SK、メリーランド、ロックビル、ATCCより)。細胞は継代6であり、上澄み収穫の際には1ヶ月培養されたものであった。馴化培養は培地変更の3日後に収穫された。上澄み(「繊維芽細胞」)がMLR培養(上部パネル)の開始時にあるいは培養の4日目(進行中、下部パネル)のいずれかに指示された希釈で加えられた。MLRは提供者155からの応答T細胞を提供者273からの照射(3000R)刺激細胞PBMCsと混合して構成された。培養物の両セットは細胞を収穫しDNAへのチミジンとり込みで評価される増殖応答を決定する前に培養6日に18時間3H−チミジンでパルス標識された。対照は、何も加えられないMLR培養物(「なし」)と無関係で3日目のMLR培養物からの上澄みが加えられた培養物(「MLR」)で構成された。この結果は、培養の開始時に加えられた時に繊維芽細胞上澄みが全般的に第一次MLRを抑制したことを示す。たとえ1:8192の希釈であっても効果を希釈し去ることができないことで示されるように、抑制はきわめて強力であった。進行中の培養物に加えられた時に、上澄みは1:2048までの希釈でも50%以上の抑制を示した。
【0056】
しかし本発明の範囲は前に記載の特異的実施例に限定されるべきでないことは理解されるべきである。本発明は特に記載されたもの以外にも実施することができ、しかもなお冒頭に掲げた特許請求の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
本出願は1998年11月13日出願された(合衆国)暫定出願番号60/108,234号に基づく優先権を主張する。
本発明は移植片およびまたは対宿主性移植片反応の宿主拒絶反応を予防しまたは処置する領域に関する。
【背景技術】
【0002】
耐性は免疫応答が通常発生する抗原に対する応答性の後天的欠乏である。典型的には耐性を誘導するために、耐性化抗原への露出がなければならず、それはある種のリンパ球の死滅または機能的不活性化に帰着する。完全な耐性は第二抗原攻撃に対して抗体仲介または細胞仲介のいずれかの検出可能免疫応答の欠乏により特徴づけられる。部分的耐性は免疫応答の量的減少で象徴される。
【0003】
免疫系(免疫機構)の機能は病原体を含む異物(外部物体)を排除し、自己抗原に対する非応答性または耐性を維持することである。T細胞耐性は、1)自己ペプチドに反応する胸腺細胞がクローン欠失で排除される胸腺で(中心耐性で)、また2)免疫寛容条件下で自己抗原に露出することによる末梢で(末梢耐性で)達成される。
【0004】
不幸なことに、免疫系は有害な侵入者から移植組織などの有益な侵入者を区別せず、かくして免疫系は移植組織または器官を拒絶する。移植器官の拒絶は提供者同種異系抗原または異種抗原を認識する宿主に存在する同種異系反応性T細胞により著しく仲介される。
【0005】
現在移植を拒絶する患者は強力な免疫抑制剤で処置される。T細胞免疫応答を予防しまたは抑制する薬剤の注入は移植片拒絶を阻害するが、全身免疫抑制、毒性更には日和見感染による死に終る可能性もあり得る提供者組織拒絶に対する毒性と不完全な応答の故で、現在の薬剤治療のやり方に耐えられないか応答しない患者を処置するための代替的なアプローチが必要される。
【0006】
従って、提供者組織の宿主拒絶を避ける方法として、移植片に対する宿主の望ましくない免疫応答を減少または排除する必要がある。また対宿主性移植片病として知られる受容者組織に対する提供者組織による望ましくない免疫応答を排除しまたは減少する方法も有利となるであろう。
【0007】
IFN−γで処置されT細胞とも接触されると、ヒト歯肉線維芽細胞は同種異系反応抹梢T細胞の非効果的刺激薬となり、同種異系抗原提示細胞またはミトゲン刺激細胞の増殖応答を阻害したことが報告されている(Y.島袋他、免疫学76;344−347(1992))。
【発明の概要】
【0008】
ヒト線維芽細胞は、抗原に対する免疫応答が減少または排除されるように免疫系による応答を改善するために移植で使用できることが発見された。ここに記載される免疫応答の線維芽細胞(FBLs)による減少または排除は、提供者組織または器官の移植片に対する受容者の免疫応答を改善するために使用することができる。かくして一つの見地において、本発明の方法は提供者組織移植片に対する望ましくないT細胞免疫応答を抑制するのに特に有用である。
【0009】
従って、一つの見地において、本発明の方法は、提供者組織の、受容者の分離された線維芽細胞への接触を提供する。この見地での一つの実施例において、この方法は、提供者組織の受容者に、分離線維芽細胞を投与することを含む。線維芽細胞は移植の前、移植と同時に、または移植後に投与することができる。線維芽細胞は受容者に自己由来または同種異系であることができる。同種異系線維芽細胞は提供者から得ることができ、従ってこの場合は移植組織に対して自己由来のものである。本発明のも一つの見地において、同種異系線維芽細胞も提供者以外の源から得ることとができ、このような源は提供者の型あるいは受容者の型のいずれにも適合する必要はない。
【0010】
線維芽細胞は更に移植片の一部として受容者に投与できる。この目的に対して、本発明は、線維芽細胞を灌流されまたはそれを含む提供者組織または器官を受容者に提供することにより、免疫応答を減少しまたは改善する方法を提供する。望ましい実施例において、線維芽細胞は同種異系であり、望ましくは提供者および受容者両方に対して同種異系である。線維芽細胞はそれが受容者に移植される時に、外部組織に対する受容者のT細胞により免疫応答を改善する。
【0011】
も一つの実施例において、提供者組織または器官は、提供者または受容者のMHC型のいずれにも適合する必要のない提供者以外の源から得た線維芽細胞で灌流されあるいはそれを含む。
【0012】
も一つの見地において、本発明の方法は、移植に対する拒絶エピソードの発病度を減少しまた排除するために、提供者組織が受容者に移植された後に提供者組織の受容者に線維芽細胞を投与することにより移植を受けた患者を処置することを提供とする。線維芽細胞は受容者または提供者から得ることができ、また望ましくは第三者源から得られる。
【0013】
移植片に対する有害な免疫反応を受けている受容者への線維芽細胞の提示は更なる抗原刺激に対するT細胞の低応答性を減少または誘導し、それにより提供者組織に対して活性化されたT細胞による有害な応答を減少または排除する。
【0014】
本発明の更なる見地において、組織または器官の受容者への移植の前に、生体外で提供者組織または器官を線維芽細胞で処置することを含む、受容者に対する提供者組織による免疫応答、すなわち対宿主性移植応答を減少する方法が提供される。線維芽細胞は受容者に自己由来または同種異系であってもよい。同種異系線維芽細胞は提供者から得られ、または望ましくは線維芽細胞は提供者と受容者両方に対して同種異系である。線維芽細胞は受容者細胞に対して活性化され得る移植組織内でT細胞の応答性を減少し、そのため組織は宿主に対する提供者組織の有害な応答の発生なしであるいは減少の下で受容者(宿主)の体内に導入される。かくして「対宿主性移植片」病を防ぐことができる。
【0015】
更なる実施例において、提供者組織または器官は提供者組織内のT細胞を「事前活性化する」ために、生体外で受容者組織にまず露出される。提供者組織は次いで線維芽細胞に、望ましくは第三者線維芽細胞に接触される。線維芽細胞は、提供者組織が受容者に配置される時に受容者による抗原刺激に対して提供者組織内でのT細胞による有害な二次免疫応答を減少しあるいは阻害するであろう。
【0016】
本発明の更なる実施例は、提供者組織に対する受容者の有害な免疫応答を減少しまたは予防するために、移植後第三者線維芽細胞を受容者に投与することを含む。
も一つの実施例において、線維芽細胞は移植の前、移植の間もしくは移植の後に移植片受容者に投与される。
【0017】
かくして本発明の望ましい実施例に従って、ヒト線維芽細胞は移植結果として移植片拒絶およびまたは対宿主性移植片病を処置し、およびまたは移植片拒絶およびまたは対宿主性移植片病を予防または減少するために採用される。ヒトまたは非ヒトの線維芽細胞は、更に異種移植または移植片の使用を促進するために採用することができる。
【0018】
線維芽細胞培養および線維芽細胞/混合リンパ球反応培養から誘導される上澄みは同種異系抗原に対するT細胞応答に抑制効果を持つ。かくして、本発明は更に上澄みを使用する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ヒト繊維芽細胞が2個の異なる固体からのリンパ球の間の進行中の混合リンパ球反応(MLR)を抑制したことを示す図。繊維芽細胞はMLRでの刺激細胞と応答細胞両方に不適合であった。刺激T細胞は事前平板培養繊維芽細胞で保温された。
【図2】ヒト繊維芽細胞が2個の異なる固体からのリンパ球の間の進行中の混合リンパ球反応(MLR)を抑制したことを示す図。繊維芽細胞はMLRの刺激細胞と応答細胞両方に不適合であった。刺激T細胞は新鮮なトリプシン消化繊維芽細胞で保温された。
【図3】ヒト繊維芽細胞が二次混合リンパ球反応を抑制したことを示す図。同種異系繊維芽細胞で保温され、次いで同種異系、自己由来または第三者刺激細胞で接触された前もって刺激されたT細胞の再刺激は抑制された。
【図4】繊維芽細胞培養物からの上澄みが混合リンパ反応を抑制することを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで定義されるように、同種異系線維芽細胞は受容者と同種の異なる個体から得られる。提供者抗原は受容体に移植される提供者組織により発現される抗原を指示する。同種異系抗原は受容者により発現される抗原とは異なる抗原である。移植される提供者組織は移植片である。
【0021】
発明者は、ヒト線維芽細胞が試験管内で同種異系Tリンパ球と接触する時、繊維芽細胞が進行する混合リンパ球反応を抑制したことを発見した。通常異なる個体からの共存培養は混合リンパ球反応(MLR)としても知られるT細胞の活性化と増殖で立証されるT細胞応答に帰着する。MLRを受けるT細胞を線維芽細胞と接触させると、それはMLRを抑制した。
【0022】
一つの見地において、本発明は受容者にある提供者組織または器官移植片に対する免疫応答を減少しまたは阻害しもしくは排除する方法を提供する。本発明の一つの見地において、この方法は受容者への線維芽細胞の投与を含む。線維芽細胞は提供者組織または器官に対する受容者のT細胞応答を改善し、阻害しまたは減少するのに有効な量で採用される。
【0023】
従って、本発明は線維芽細胞を提供者組織または器官の受容者に投与することにより免疫応答を減少し、阻害しまたは排除する方法を提供する。一つの実施例において、線維芽細胞は移植と同時期に受容者に投与される。選択肢として、ヒト線維芽細胞は移植片の投与の前に投与することができる。例えばヒト線維芽細胞は提供者組織の移植の約3日乃至7日前に受容者に投与することができる。更なる選択肢として、線維芽細胞は移植後に投与できる。
【0024】
かくして、受容者T細胞による免疫応答を減少しまたは排除するのに有効な量で、提供者組織の移植の前、あるいは移植と同時に線維芽細胞を受容者に投与することにより、線維芽細胞は提供者または外部組織に対する受容者の免疫系をよいコンディションに持っていくように使用することができる。線維芽細胞は受容者のT細胞に影響し、そのためT細胞は低応答性となり受容者が提供者または外部組織を与えられるとT細胞応答は減少または排除される。かくして移植片の宿主拒絶あるいはその発病度は避けられる。
【0025】
発明者は更に、抗原刺激に露出されすなわち活性化されたTリンパ球が続けて線維芽細胞に露出された時、T細胞が続く抗原刺激に対し免疫応答を産出しないことを発見した。かくして線維芽細胞はT細胞を刺激した抗原、または他の抗原からの刺激に対し、低応答性の状態を誘導する。
【0026】
これらの予期しない結果は、同種異系ヒト線維芽細胞に露出された後、活性化T細胞が更なる抗原刺激に低応答性にされ、これにより進行中の有害な免疫応答を減少しまたは改善することを示した。
【0027】
従って、本発明は患者に線維芽細胞を投与ることで移植片に対する有害な免疫応答を受けているそのような患者を処置する方法を提供する。望ましい実施例において、線維芽細胞は提供者または受容者にMHC適合を必要としない第三者から得られる。
【0028】
線維芽細胞は免疫応答を減少しまたは排除するのに有効な量で受容者に投与され、それにより有害な免疫応答を改善する。
も一つの見地において、本発明は受容者に対する提供者組織または器官(対宿主性移植片)による免疫応答を減少しまたは阻害しあるいは排除する方法を提供する。従って本発明は、移植の前に、望ましくは提供者組織にあるT細胞の受容者組織による事前刺激で、提供者器官または組織の線維芽細胞への接触を提供する。線維芽細胞は受容者に対する提供者組織による有害な免疫応答を改善し、阻害しまたは減少する。
【0029】
も一つの実施例において、線維芽細胞は移植の前、移植の間または移植後に移植片受容者に静脈内投与される。
線維芽細胞はこのように受容者の免疫系に対する提供者組織または外部組織を事前調整して使用することができる。一つの実施例において、これは受容者への組織の移植の前に生体外で提供者組織または外部組織を単離線維芽細胞に接触して行うことができる。この実施例において、提供者の組織または器官は組織を受容者に配置する前に1日以下乃至7日間の同時保温で受容者線維芽細胞と同時に保温することができる。線維芽細胞は組織または器官に存在しあるいはその中にあるT細胞を抑制するものと考えられ、従ってそれが続いて受容者に配置される時には組織内のT細胞を受容者に対して低応答性にする。かくして組織または器官の線維芽細胞での処置は移植組織に存在する活性化T細胞が宿主を攻撃する対宿主性移植片病の発生数およびまたは発病度を改善する。
【0030】
かくして骨髄(造血幹細胞)移植に関連して、移植による宿主の攻撃を減少または排除することができる。提供者の骨髄は骨髄または抹梢血幹細胞を受容者に移植する前に単離線維芽細胞で事前処置することができる。繊維芽細胞は、受容者が骨髄により有害な影響を受けることを減少または排除するようにT細胞応答を阻害しまたは減少する。つまりこの療法は対宿主性移植片応答を減少しまたは排除する。
【0031】
更なる実施例において、対宿主性移植片病で苦しむ移植片受容者は、宿主の移植拒絶を減少し、または排除するのに有効な量で受容者または提供者のいずれかに自己由来のものである単離線維芽細胞、あるいは第三者線維芽細胞をそのような受容者に投与することにより発病度を減少しまたは排除することで処置される。線維芽細胞は受容者に対して免疫応答を配備することから提供者組織内の活性化T細胞を阻害し、これにより対宿主性移植片応答を減少または排除する。
【0032】
受容者の線維芽細胞は移植の前に受容者から得られ、例えば進行中の宿主に対する移植片攻撃で多数の処置を提供するために十分な量での線維芽細胞の貯蔵品を提供するために貯蔵されおよびまたは培養拡張される。
【0033】
更に本発明のも一つの方法において、提供者の組織は単離線維芽細胞に露出され、そのため線維芽細胞は移植の前に線維芽細胞がそれ自身器官移植片に組み込まれる。この状態において、移植拒絶を予防する標準処置、例えば薬剤仲介免疫抑制を逃れたいずれかの同種異系反応性宿主細胞は線維芽細胞が移植片に入りそれを破壊することで線維芽細胞により免疫抑制されるであろう。繊維芽細胞は受容者にとって自己由来または同種異系のものであり、更に望ましくは提供者または受容者以外の第三者から得られ。
【0034】
ここに記載された本発明の方法に基づいて、本発明の線維芽細胞は提供者組織の拒絶または対宿主性移植片病を処置する現在のやり方と併用して使用できることが考慮される。このような使用の利点は、移植片受容者での免疫応答の発病度を改善することにより、処置で使用される薬剤量およびまたは薬剤治療の投与頻度を減少することができ、その結果全体的な免疫抑制と望ましくない副作用を軽減することに帰着する。
【0035】
更に本発明の線維芽細胞で1回だけの処置が必要とされ、慢性的な免疫抑制薬剤治療の必要性が排除されることも考慮される。選択肢として、線維芽細胞の複数の投与も行われることはある。
【0036】
従って、ここに記載の発明は、同一種から器官または組織、あるいは異種移植器官または組織およびまたは対宿主性移植片病の移植片拒絶の予防または処置もしくは改善のための予防あるいは治療有効量で線維芽細胞を投与することにより、移植片拒絶の予防または処置を提供する。
【0037】
線維芽細胞の単一用量投与は、とりわけTリンパ球が線維芽細胞から単離された後に、同種異系細胞に対しその非応答特性(すなわち耐性あるいはアネルギー(免疫力低下状態))を保持する場合には、T細胞または「非自己」組織に同種異系の組織に対するT細胞応答を減少し、または排除するのに有効である。
【0038】
活性成分の用量は広い範囲で変化し、また勿論各特定の場合個々の必要条件に適合するものとなるであろう。一般に非経口投与の場合には、受容者の体重キログラム当り約0.01乃至約20百万細胞を投与することが通例である。使用される細胞数は受容者の体重と体調、投与の回数と頻度及び当業者にとって公知の他の変数に依存する。細胞は移植される組織または器官に適したルートで投与することができ、それは全身に、すなわち非経口で、静脈内注射で投与でき、または骨髄などのような特定の組織または器官を標的とすることができる。ヒト線維芽細胞は細胞の皮下移植を介して、または結合組織、例えば筋への幹細胞の注射により投与することができる。
【0039】
細胞は約0.01乃至約5×106細胞/mlの濃度で適切な希釈剤に懸濁することができる。注射液のための適切な賦形剤は緩衝生理食塩水またはほかの適切な賦形剤などのような細胞とまた受容者と生物学的生理学的に融和性のものである。投与のための組成物は適当な無菌性と安定性を満たす標準方法に従って処方され、生産されかつ貯蔵されねばならない。
【0040】
本発明はそれで限定されないが、線維芽細胞をここに記載の方法で使用するために皮膚から得ることができる。
本発明者は更に、線維芽細胞培養物から誘導される上澄みが同種異系細胞間にあるMLRを制御できることを発見した。ここで使用されるように、またここで「線維芽細胞上澄み」として指摘される線維芽細胞培養物から誘導される上澄みは、単独で培養された線維芽細胞および免疫応答を受ける細胞すなわち結合リンパ球反応を受けるT細胞を共存培養される繊維芽細胞から得ることができる。
【0041】
線維芽細胞上澄みは用量依存のやり方で混合リンパ球での同種異系T細胞応答を活発に減少する。線維芽細胞との場合と同じく、異なる提供者からの線維芽細胞培養物からの上澄みはMHC型と関連する減少した応答の特異性を示さない。
【0042】
加えて、線維芽細胞と接触した混合リンパ球反応から誘導される上澄みは同じく同種異系細胞管のMLRを抑制できる。これらのMLR/線維芽細胞上澄みは用量依存のやり方で混合リンパ球反応での同種異系T細胞応答を減少させ、またMHC型に関して減少した応答の特異性を示さない。
【0043】
ここに記載された方法は従来の技術で公知の数多くのやり方でまた各種の修飾と順列で実行することができることは理解されるべきである。細胞間の作用または相互作用のやり方について測定される何らかの理論がどのようなやり方でもこの発明を制限するものとして解釈されるべきものではなく、発明の方法がより完全に理解できるように提示されることが評価されてしかるべきであろう。
【0044】
下記の実施例は本発明の更なる見地を説明する。しかしそれはここに設定された本発明の教示または開示を限定するものではない。
実施例1
混合リンパ球本能の抑制
混合リンパ球反応は提供者表面抗原の融和性を測定し、また提供者組織の拒絶の尤度の微候である。移植片拒絶を引き出すのに原因となる細胞表面抗原はMHC抗原クラスIとクラスIIである。T細胞は外部MHC抗原に対して同種異系である。MHC分子クラスIとクラスIIは混合リンパ球反応を刺激する。
【0045】
繊維芽細胞が同種異系応答を活発に抑制したかどうかを決定するために、混合リンパ球反応(MLR)が刺激細胞または応答細胞のいずれかと関係なく提供者から得た繊維芽細胞ありまたはなしで細胞培養平板に設定された。
【0046】
リンパ球調製
末梢血単核細胞(PBMC)が密度勾配遠心法によりフィコール−パック(ファルマチア)で調製された。細胞のアリコートは10%DMSOを持つ90%FCSに凍結され液体チッ素で貯蔵された。解凍後、細胞はMSC培地(DMEM低グルコースと10%FCS)で2回洗浄され、検定培地(25mMへペス、1mMピルビン酸ナトリウム、100μM非必須アミノ酸、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、0.25μg/mlアンホテリシンB、5.5×10-5M、2メルカプトエタノール(すべてジブコBLRよりの試薬)を持つイスコーブと5%ヒトAB血清(シグマ、試験されたMLR))で再懸濁された。
【0047】
T細胞富化分画を調製するために、PBMCは免疫磁性負選択により単核球とB細胞を使い果した。PBMCはマウス抗ヒトCD19とCD14mAbs(アジ化物なし/低エンドトキシン(NA/LE)形態)で保温され、次いでビオチン接合ヤギ抗マウスIgG(多吸着)Ab(すべてファーミンゲンよりの試薬)およびストレプトアビジン・マイクロビード(ミルテニイ・バイオテック)で続けられた。細胞は次いで磁気細胞ソータ(MACS、ミルテニイ・バイオテック)を用いて分離された。T細胞富化分画は約70−90%CD3+細胞を含有していた。
【0048】
線維芽細胞
線維芽細胞はATCC(Cat#CRL−2104)から得た18歳の女性からのヒト正常皮膚線維芽細胞CCD−1087Skであり、DMEM−低グルコース/10%FCSで維持された。
【0049】
活性化T細胞/線維芽細胞培養物
線維芽細胞(第三者)はT細胞との混合4日前に組織培養皿当り1×106細胞で平板培養された。IFN−γ(ファーミンゲン、5ng/ml)が3日間加えられ繊維芽細胞をT細胞と混合する前に集中的に洗浄された。
【0050】
第一次(1°)MLR
応答細胞と刺激細胞は無関係の個体から得られた。刺激に使用されたPBMCはキャビネットX放射線システム(ファクシトロンXレイ、バッファロー、イリノイ)を用いて3,000ラドでX線照射された。富化T細胞は応答細胞として使用された。
【0051】
A.提供者248からのT細胞が提供者244からの照射PBMCsで7日間(5%CO2で37℃)刺激され、次いで収集され事前平板培養FBLsで24時間保温された(1×105T細胞/ウエル、2×104FBLs/ウエル)。3H−チミジンがT細胞増殖を測定するために培養期間の追加の18時間に加えられた。図1で示された結果は線維芽細胞が進行中のMLRを抑制したことを明示する。
【0052】
B.提供者273からのT細胞が提供者248からの照射PBMCsで96ウエル平板で結合された(1.5×105細胞/各ウエル)。新鮮なトリプシンで消化された線維芽細胞がIFNなしで2×104細胞/ウエルで4日後に加えられ、培養物は更に3日間保温された(MLR全体で7日間)。3H−チミジンが追加の18時間加えられた。図2で示された結果は線維芽細胞がウエル表面に接触されない時もまた進行中のMLRを抑制したことを明示する。
【0053】
実施例2
T細胞非応答性の誘導
1°MLR(提供者244と248のT細胞)で活性化されたT細胞が収集され、MSC培地(DMEM−LG/10%FCS)で1回洗浄され検定培地で1×106細胞/mlで再懸濁された。細胞は事前平板培養線維芽細胞と線維芽細胞当り10T細胞の大体の比率で混合された。T細胞は線維芽細胞と3日間保温された。対照培地でT細胞は単独で保温された。
【0054】
再刺激検定
T細胞培養物が収集され、1×106細胞/mlで再懸濁され、96ウエル平板(50マイクロリットルで5×104細胞/ウエル)に加えられた。培養物は提供者244からのもとの刺激細胞、第三者刺激細胞、植物性血球凝集素(PHA、5マイクログラム/ml)、ミリスチン酸酢酸ホルボール、プラス、カルシウムイオノフォア(PMA、10ナノグラム/ml+CaIo、1ナノグラム/ml)、またはブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA100ナノグラム/ml)を含む各種の刺激剤と混合された。細胞は0,1,2,3,4,5、または6日目に3H−チミジン(5μCi/mmol,1μCi/ウエル)で1晩(18時間)パルス標識され、次いで収穫された。2日目の結果が図3で示される。前に刺激され次いで同種異系繊維芽細胞に露出されたT細胞はいずれかの刺激剤の存在下で再刺激はされなかった。
【0055】
実施例3
成人の真皮繊維芽細胞の密集培養物から上澄みが収集された(#1087SK、メリーランド、ロックビル、ATCCより)。細胞は継代6であり、上澄み収穫の際には1ヶ月培養されたものであった。馴化培養は培地変更の3日後に収穫された。上澄み(「繊維芽細胞」)がMLR培養(上部パネル)の開始時にあるいは培養の4日目(進行中、下部パネル)のいずれかに指示された希釈で加えられた。MLRは提供者155からの応答T細胞を提供者273からの照射(3000R)刺激細胞PBMCsと混合して構成された。培養物の両セットは細胞を収穫しDNAへのチミジンとり込みで評価される増殖応答を決定する前に培養6日に18時間3H−チミジンでパルス標識された。対照は、何も加えられないMLR培養物(「なし」)と無関係で3日目のMLR培養物からの上澄みが加えられた培養物(「MLR」)で構成された。この結果は、培養の開始時に加えられた時に繊維芽細胞上澄みが全般的に第一次MLRを抑制したことを示す。たとえ1:8192の希釈であっても効果を希釈し去ることができないことで示されるように、抑制はきわめて強力であった。進行中の培養物に加えられた時に、上澄みは1:2048までの希釈でも50%以上の抑制を示した。
【0056】
しかし本発明の範囲は前に記載の特異的実施例に限定されるべきでないことは理解されるべきである。本発明は特に記載されたもの以外にも実施することができ、しかもなお冒頭に掲げた特許請求の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植片受容者における提供者組織に対する免疫応答の減少を誘導する一つの方法であって、移植された提供者組織に対する受容者の免疫応答を減少するのに有効な量で線維芽細胞と線維芽細胞培養からの上澄みよりなるグループから選択される少なくとも1個の部材で受容者を処置することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、ここで前記少なくとも1個の部材が線維芽細胞であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が受容者に自己由来であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が受容者に同種異系であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法であって、ここで線維芽細胞が移植片の提供者から得られることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が移植片の提供者と受容者両方に対して同種異系であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が移植片の投与の前に受容者に投与されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が移植片の投与と同時に投与されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法であって、ここで線維芽細胞が移植片の一部として投与されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が移植片の後で投与されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が受容者による移植片の拒絶を処置するために移植片受容者に投与されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞がヒトのものであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法であって、更に受容者に免疫抑制剤を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法であって、ここで提供者組織が固形器官(solid organ)であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、ここで固形器官が心臓、腎臓、肺または肝臓から選択されることを特徴とする方法。
【請求項16】
提供者組織による受容者組織に対する免疫応答を減少する一つの方法であって、受容者に対する提供者組織による免疫応答を減少するのに有効な量で線維芽細胞と線維芽細胞培養からの上澄みよりなるグループから選択される少なくとも1個の部材に提供者組織を接触させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、ここで前記少なくとも1個の部材が線維芽細胞であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、ここで線維芽細胞が受容者に自己由来であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法であって、ここで線維芽細胞が提供者に自己由来であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項17記載の方法であって、ここで線維芽細胞が提供者と提供者組織の受容者両方に対して同種異系であることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項17記載の方法であって、ここで提供者組織と線維芽細胞が提供者組織の移植の前に生体外で接触されることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法であって、ここで提供者組織が線維芽細胞と接触される前に受容者組織に露出されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項18記載の方法であって、ここで線維芽細胞が受容者から得られることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項16記載の方法であって、ここで提供者組織が骨髄であることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項16記載の方法であって、ここで提供者組織が末梢血であることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項16記載の方法であって、更に受容者に免疫抑制剤を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
対宿主性移植片病に対し移植片受容者を処置する一つの方法であって、移植された提供者組織による受容者に対する免疫応答を減少するのに有効な量で線維芽細胞と線維芽細胞培養からの上澄みよりなるグループから選択される少なくとも1個の部材で移植片の受容者を処置することを含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法であって、ここで前記少なくとも1個の部材が線維芽細胞であることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法であって、ここで線維芽細胞が受容者に自己由来であることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28記載の方法であって、ここで線維芽細胞が提供者に自己由来であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項28記載の方法であって、ここで線維芽細胞が提供者と受容者両方にとって同種異系であることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項27記載の方法であって、更に受容者に免疫抑制剤を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
有害な免疫応答を処置する一つの組成物であって、移植片受容者における提供者組織に対する有害な免疫応答を阻害しまたは減少させるのに有効な量のヒト線維芽細胞と薬理担体とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項1】
移植片受容者における提供者組織に対する免疫応答の減少を誘導する一つの方法であって、移植された提供者組織に対する受容者の免疫応答を減少するのに有効な量で線維芽細胞と線維芽細胞培養からの上澄みよりなるグループから選択される少なくとも1個の部材で受容者を処置することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、ここで前記少なくとも1個の部材が線維芽細胞であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が受容者に自己由来であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が受容者に同種異系であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法であって、ここで線維芽細胞が移植片の提供者から得られることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が移植片の提供者と受容者両方に対して同種異系であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が移植片の投与の前に受容者に投与されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が移植片の投与と同時に投与されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法であって、ここで線維芽細胞が移植片の一部として投与されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が移植片の後で投与されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞が受容者による移植片の拒絶を処置するために移植片受容者に投与されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項2記載の方法であって、ここで線維芽細胞がヒトのものであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法であって、更に受容者に免疫抑制剤を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法であって、ここで提供者組織が固形器官(solid organ)であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、ここで固形器官が心臓、腎臓、肺または肝臓から選択されることを特徴とする方法。
【請求項16】
提供者組織による受容者組織に対する免疫応答を減少する一つの方法であって、受容者に対する提供者組織による免疫応答を減少するのに有効な量で線維芽細胞と線維芽細胞培養からの上澄みよりなるグループから選択される少なくとも1個の部材に提供者組織を接触させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、ここで前記少なくとも1個の部材が線維芽細胞であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、ここで線維芽細胞が受容者に自己由来であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法であって、ここで線維芽細胞が提供者に自己由来であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項17記載の方法であって、ここで線維芽細胞が提供者と提供者組織の受容者両方に対して同種異系であることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項17記載の方法であって、ここで提供者組織と線維芽細胞が提供者組織の移植の前に生体外で接触されることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法であって、ここで提供者組織が線維芽細胞と接触される前に受容者組織に露出されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項18記載の方法であって、ここで線維芽細胞が受容者から得られることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項16記載の方法であって、ここで提供者組織が骨髄であることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項16記載の方法であって、ここで提供者組織が末梢血であることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項16記載の方法であって、更に受容者に免疫抑制剤を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
対宿主性移植片病に対し移植片受容者を処置する一つの方法であって、移植された提供者組織による受容者に対する免疫応答を減少するのに有効な量で線維芽細胞と線維芽細胞培養からの上澄みよりなるグループから選択される少なくとも1個の部材で移植片の受容者を処置することを含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法であって、ここで前記少なくとも1個の部材が線維芽細胞であることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法であって、ここで線維芽細胞が受容者に自己由来であることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28記載の方法であって、ここで線維芽細胞が提供者に自己由来であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項28記載の方法であって、ここで線維芽細胞が提供者と受容者両方にとって同種異系であることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項27記載の方法であって、更に受容者に免疫抑制剤を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
有害な免疫応答を処置する一つの組成物であって、移植片受容者における提供者組織に対する有害な免疫応答を阻害しまたは減少させるのに有効な量のヒト線維芽細胞と薬理担体とを含むことを特徴とする組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2011−37865(P2011−37865A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−213040(P2010−213040)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【分割の表示】特願2000−582047(P2000−582047)の分割
【原出願日】平成11年11月4日(1999.11.4)
【出願人】(500430486)オシリス セラピューティクス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213040(P2010−213040)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【分割の表示】特願2000−582047(P2000−582047)の分割
【原出願日】平成11年11月4日(1999.11.4)
【出願人】(500430486)オシリス セラピューティクス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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