説明

移植可能な薬物送達システム

【課題】単純で、低コストであり、容易に製造できる移植可能な小型の薬剤送達デバイスであって、薬剤を幅広い種々の位置へ送達するためのヒトまたは他の動物の体内への移植に適応し得るデバイスを提供する。
【解決手段】移植可能な小型の薬剤送達システムは、機械の体内への移植を可能とし、それによって、薬剤を幅広い種々の位置へ送達することを可能とする。少なくとも1つのベイスン、ウェル、または空き空間14は、コアボディ12内で、エンフレームされるか、封入されるか、エンケースされるか、または形成され、慢性的な状態または疾患の内部的処置を延長するために必要とされる所望の量の薬剤を収容する。その上部16、底部18、のいずれかまたは両方を覆うスクリーン24、26は、薬剤のヒトまたは動物の体内への放出または移動を制御するための穴28を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願番号60/363,150(2002年3月11日提出)からの優先権を主張する。
【0002】
(分野)
本発明は、薬剤送達システムに関する。より特定すると、本発明は、ヒトまたは他の動物に使用するための移植可能な小型の薬剤送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
1つ以上の薬剤の使用による処置に対して効果的に応答するヒトまたは動物の体内で発生する状態または疾患は、多く存在する。そのような状態または疾患のために、薬剤が経口的に取り込まれる。一旦飲み込まれると、薬剤は、胃腸系を通って、最終的には状態または疾患の位置にまで移動する。また別の例において、薬剤は、血流を介して状態または疾患の位置にまで送達される。詳細には、この薬剤は、注射器によって筋肉組織または軟性組織に注入され、次いで血液の流れによって運ばれる。また別の状況において、概してヘルスケアの施設において、静脈内滴注が、薬剤を直接的に血管内に入れるために使用され得る。さらに他の状況において、ある種の外科的介入が、特定の薬剤を状態または疾患の位置で、またはその近くで、体内に物理的に入れるために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集積回路の作製のために開発された技術を使用することで、薬剤の収容およびそれに続くヒトの体内の状態または疾患の部位へのその薬剤の送達の両方のために、使用され得る小型の薬剤送達デバイスが、製造され得る。そのような小型の薬剤移植デバイスの例は、以下の米国特許において開示されている:米国特許第5,770,076号;米国特許第5,797,898号;米国特許第5,985,328号;米国特許第6,123,861号、および米国特許第6,331,313。これらの小型の薬剤移植デバイスの多くは、高度に複雑であり、従って、製造することが困難でありかつ高価である。従って、当該分野において、単純で、低コストであり、容易に製造できる移植可能な小型の薬剤送達デバイスであって、薬剤を幅広い種々の位置へ送達するためのヒトまたは他の動物の体内への移植に適応し得るデバイスの必要性が、残っている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
本発明の単純で、低コストであり、容易に製造できる移植可能な小型の薬剤送達システムは、機械の体内への移植を可能とし、それによって、薬剤を幅広い種々の位置へ送達することを可能とする。開示するシステムは、少なくとも1つのベイスン(basin)、ウェル、または空き空間を含む。このベイスン、ウェル、または空き空間は、コアボディ内で、エンフレーム(enframe)されるか、封入されるか、エンケース(encase)されるか、または形成される。このコアボディまたはベイスンエンケースメント(encasement)部分内のベイスン、ウェル、または空き空間は、慢性的な状態または疾患の内部的処置を延長するために必要とされる所望の量の薬剤を収容するために十分な大きさである。そのような慢性的な状態または疾患の代表は、目の中で起こることが公知である状態または疾患である。
【0006】
コアボディによって囲まれているベイスン、ウェル、または空き空間を、その上部、底部、のいずれかまたは両方において覆うものが、スクリーンである。スクリーンは、ベイスン、ウェル、または空き空間の中にある錠剤、粉末またはスラリーからの薬物または薬剤のヒトまたは動物の体内への放出または移動を制御するために使用される。1つのスクリーンまたは複数のスクリーン中の穴の数、大きさ、位置、および配置は、ベイスン、ウェル、または空き空間に収容される薬剤の溶解性、薬剤の溶解速度、薬剤の濃度、および薬剤の形態(錠剤、粉末、スラリー、またはそれらの組み合わせ)の関数である。
【0007】
一旦、1つ以上の薬剤が、ベイスン、ウェル、または開口部の中に入れられ、ベイスン、ウェル、または開口部がスクリーンで覆われると、薬物または薬剤の全組み合わせ、その中にベイスンが形成されているコアボディ、およびスクリーンが、体内に移植される。例えば、目の中で発生した状態または疾患に対する技術の1つは、開示した薬物送達システムを強膜の部分を通して、目に挿入することである。一旦、開示した薬物デバイスが、適切に所望の位置に配置されると、種々の方法(これには、コアボディに形成された穴に縫合糸を通す方法が挙げられる)を使用することで、そのデバイスをその場に取り付け得る。
【0008】
体内由来の流体がスクリーン中の穴を通って、ベイスンに入り込んできた場合に、ベイスン、ウェル、または空き空間の外への薬剤の分散が発生する。スクリーンを通る流体のこの流れが、ベイスン内の薬剤の溶解を開始させる。次いで、溶解した薬剤は、開示した薬物送達デバイスのベイスンの中に一定量の薬剤が残っている限り、スクリーン中の穴を通ってゆっくりと外部へ拡散し、状態または疾患の持続する処置を提供する。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
移植可能な薬剤送達デバイスであって、以下:
薬剤を収容するように構築および設計されたベイスンであって、該ベイスンが、ベイスン収容部分に囲まれている、ベイスン;
該ベイスン収容部分に貼り付けられた場合に、該ベイスンの上部を覆うように構築および設計されたスクリーン、
を含む、デバイス。
(項目2)
前記ベイスンの底部を覆うスクリーンをさらに含む、項目1に記載の移植可能な薬剤送達デバイス。
(項目3)
項目1に記載の移植可能な薬剤送達デバイスであって、前記ベイスンが、前記ベイスン収容部分を貫通しており、そして前記ベイスンの底部上に、前記ベイスン収容部分に貼り付けられた場合に、該ベイスンの底部を覆うように構築および設計された第2のスクリーンがある、デバイス。
(項目4)
前記ベイスン収容部分が、実質的に平面である、項目1に記載の移植可能な薬剤送達デバイス。
(項目5)
項目1に記載の移植可能な薬剤送達デバイスであって、前記スクリーン中の穴の大きさおよび数が、薬剤の可溶性、薬剤の溶解速度および薬剤の濃度を含む群から選択される1つ以上の因子に依存する、デバイス。
(項目6)
前記ベイスンが、不浸透性の障壁によって分断されている複数のセクションを含む、項目1に記載の移植可能な薬剤送達デバイス。
(項目7)
項目1に記載の移植可能な薬剤送達デバイスであって、前記ベイスンの1つのセクションを覆う前記スクリーン中の穴の大きさおよび数が、前記ベイスンの別のセクションを覆う前記スクリーン中の穴の大きさおよび数とは異なる、デバイス。
(項目8)
薬剤で処置できる状態と近接している動物の体内に該薬物を送達するデバイスであって、該デバイスが、以下:
第1フェイス、第2フェイス、ペリメーター、および該第1フェイスと該第2フェイスとの間の薬剤ベイスンを有する、ベイスン収容部分;
該ベイスン収容部分の該第1フェイスと該ベイスンとのインターセクション近くで、該ベイスン収容部分の該第1フェイスに貼り付けられている、第1スクリーン、
を含むデバイス。
(項目9)
項目9に記載のデバイスであって、前記ベイスン収容部分の下部フェイスと前記ベイスンとのインターセクション近くで、該ベイスン収容部分の該下部フェイスに貼り付けられている第2スクリーンをさらに含む、デバイス。
(項目10)
項目8に記載のデバイスであって、前記第1スクリーン中の穴の大きさが、薬物の可溶性、薬物の溶解速度および薬物の濃度を含む群から選択される1つ以上の因子に依存する、デバイス。
(項目11)
項目9に記載のデバイスであって、前記第2スクリーン中の穴の数が、薬物の可溶性、薬物の溶解速度および薬物の濃度を含む群から選択される1つ以上の因子に依存する、デバイス。
(項目12)
項目9に記載のデバイスであって、前記ベイスン収容部分中の前記ベイスンが、不浸透性の壁によって互いに分断されている複数の小さなベイスンを含む、デバイス。
(項目13)
項目12に記載のデバイスであって、前記小さなベイスンを覆う前記第1スクリーン中の穴の大きさおよび数が、該小さなベイスン中の薬剤の可溶性、溶解速度、および濃度に依存して異なる、デバイス。
(項目14)
移植可能な薬剤送達プラットフォームを製造する方法であって、以下:
a)薬剤を収容するように構築および設計されたベイスンの周りにベイスン収容部分を形成する工程
b)該ベイスンを覆うために、第1スクリーンを該ベイスン収容部分に貼り付ける工程、
を包含する、方法。
(項目15)
第2スクリーンを前記ベイスンの反対側に設置する工程をさらに包含する、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記第2スクリーンが、前記ベイスン収容部分に貼り付けられている、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記ベイスン収容部分が実質的に平面である、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記第1スクリーンが、実質的に平面であるように形成される、項目14に記載の方法。
(項目19)
前記第2スクリーンが、実質的に平面であるように形成される、項目15に記載の方法。
(項目20)
前記ベイスン収容部分と前記スクリーンとの組み合わせが形成され、内部の本体部分を取り囲む、項目14に記載の方法。
(項目21)
項目14に記載の方法であって、前記スクリーンを形成する工程が、薬剤の可溶性、薬剤の溶解速度、および薬剤の濃度を含む群から選択される1つ以上の因子に依存して、ある数およびある大きさの穴を前記スクリーン中に形成する工程によって、さらに定義される、方法。
(項目22)
前記ベイスンを少なくとも2つの小さなベイスンに分割する工程をさらに包含する、項目14に記載の方法。
(項目23)
ある大きさおよびある数を有する穴を、前記小さなベイスンを覆う前記スクリーン中に形成する工程をさらに包含する、項目22に記載の方法。
(項目24)
動物の眼内の疾患を処置する方法であって、該方法が、以下:
強膜中に切開部を作る工程;
以下:
薬剤を収容するように構築および設計されたベイスンを含む、ベイスン収容部分;
該ベイスンを覆うように構築および設計され、かつ該ベイスン収容部分に貼り付けられた、スクリーン、
を含む、薬物送達デバイスを、該切開部の中に挿入する工程、
を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面を参照することにより、本発明の移植可能な薬剤送達システムが、より良く理解され得る。
【図1】図1は、ヒトの目に挿入された本発明の実施形態の側面立面図である。
【図2−1】図2Aは、好ましい実施形態の展開斜視図である。図2Bは、図2Aに示したものと類似のコアボディの斜視図である。図2Cは、図2Aに示したものと類似のスクリーンの斜視図である。図2Dは、図2Cに示したようなスクリーンの一部の拡大した平面図である。
【図2−2】図2Aは、好ましい実施形態の展開斜視図である。図2Bは、図2Aに示したものと類似のコアボディの斜視図である。図2Cは、図2Aに示したものと類似のスクリーンの斜視図である。図2Dは、図2Cに示したようなスクリーンの一部の拡大した平面図である。
【図3−1】図3は、第1の代替的実施形態の展開斜視図である。
【図3−2】図3は、第1の代替的実施形態の展開斜視図である。
【図4−1】図4Aおよび図4Bは、開示する薬物送達システムの第2の代替的実施形態および第3の代替的実施形態の斜視図である。
【図4−2】図4Aおよび図4Bは、開示する薬物送達システムの第2の代替的実施形態および第3の代替的実施形態の斜視図である。
【図4−3】図4Aおよび図4Bは、開示する薬物送達システムの第2の代替的実施形態および第3の代替的実施形態の斜視図である。
【図5−1】図5は、支持部品に接着した薬物送達システムの側面立面図である。
【図5−2】図5は、支持部品に接着した薬物送達システムの側面立面図である。
【図6A】図6Aは、鋭利なエッジまたは解剖刀のノーズ部分を含む薬物送達システムの斜視図である
【図6B】図6Bは、図6Aに示した実施形態の展開図である。
【図6C】図6Cは、図6Aに示したものと類似の鋭利なエッジを含む薬物送達システムの斜視図である。
【図6D】図6Dは、図6Cに示した実施形態の展開図である。
【図7】図7は、薬剤をベイスンに再供給するためのチャネルをさらに含む、本発明の薬物送達システムのコアボディの代替的実施形態の斜視図である
【図7A】図7Aは、フランジ部分を含む図7に示した薬物送達システムのコアボディの代替的実施形態である。
【図8】図8は、多数の小さなベイスンを含む薬物送達システムのまた別の代替的実施形態の斜視図である。
【図9】図9は、区画間に薬剤が移動するための内部通路を含む3つの区画のベイスンを有する薬物送達システムの斜視図である。
【図10】図10は、大きなベイスンの中に2つの小さなベイスンを含む薬物送達システムの斜視図である。
【図11】図11は、図10に示した薬物送達システムの代替的実施形態の斜視図である。
【図12】図12は、1つのベイスンを有する薬物送達システムの斜視図である。
【図13】図13は、図12に示した薬物送達システムの第1の代替的実施形態の斜視図である。
【図14】図14は、図12に示した薬物送達システムの第2の代替的実施形態の斜視図である。
【図15】図15は、図12に示した薬物送達システムの第3の代替的実施形態の斜視図である。
【図16】図16は、図12に示した薬物送達システムの第4の代替的実施形態の斜視図である。
【図17】図17は、図12に示した薬物送達システムの第5の代替的実施形態の斜視図である。
【図18】図18は、図12に示した薬物送達システムの第6の代替的実施形態の斜視図である。
【図19】図19は、図12に示した薬物送達システムの第7の代替的実施形態の斜視図である。
【図20】図20は、図12に示した薬物送達システムの第8の代替的実施形態の斜視図である。
【図21】図21は、図10に示した薬物送達システムの第1の代替的実施形態の斜視図である。
【図22】図22は、図10に示した薬物送達システムの第2の代替的実施形態の斜視図である。
【図23】図23は、塩酸ベタキソロール錠剤を使用したインビトロ研究における、時間経過に対する薬物濃度のグラフである。
【図24】図24は、ネパフェナック(nepafenac)錠剤を使用したインビトロ研究における、時間経過に対する薬物濃度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態の説明)
以下の好ましくかつ代替的な実施形態の説明において、参考番号は、開示する発明の説明を容易にするために使用される。本説明を通じて、1の位および10の位において同じである数字は、各実施形態の同じ部分を参照する。100の位および1000の位における数字は、代替的実施形態を指摘するために使用される。
図1に見られるように、本発明は、小型の移植可能な薬物送達システム10であり、目の内部に影響を与える状態または疾患の処置のために使用されているシステムが示されている。そのような疾患としては、ARMD(年齢関連性筋肉退化)、PDR(増殖性の糖尿病性網膜症)、血管新生緑内障、虚血性網膜症および医原性網膜症、眼の後部での炎症および網膜浮腫が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書中では、眼の内部の疾患の処置のための使用に従って説明されるが、本発明は、小型の薬物送達デバイス中に収容される薬剤による疾患または状態の処置に適した動物の体内の任意の位置で使用され得ることが、当業者によって理解される。
【0012】
眼の疾患の処置に加えて、本発明に従う薬物送達デバイスは、前立腺癌または良性の前立腺肥大の処置のために、男性の前立腺付近に配置され得る。開示するデバイスを使用することによって、通常は前立腺癌の処置に伴うネガティブな副作用(例えば、のぼせ、変声、または胸の肥大)が有意に軽減され得るか、または除去すらされ得る。さらに、疾患または状態の処置のために必要とされる薬物または薬剤の量が有意に軽減され、従って患者の費用負担が軽減され得ることを、当業者は理解する。頻繁な薬物投与の必要性が、効果的に取り除かれ得るので、処置レジメンへの患者のコンプライアンスが、改善され得る。薬剤師の仕事量および危険な医薬品または毒性の医薬品への曝露が、軽減され得る。薬物−薬物相互作用または薬物−食物相互作用の機会が、効果的に避けられ得る。そして、薬物の併用療法を提供する機会が、増大し得る。
【0013】
開示するデバイスが、女性に移植された避妊薬を替わりに含む場合にもまた、類似の利点が得られ得る。また他の潜在的な適用としては、抗真菌薬剤による腟の真菌感染の処置が、挙げられる。
【0014】
パーキンソン病の罹病者もまた、移植の候補であり得、震えを軽減するための薬剤をゆっくりと放出させるために、開示する薬物送達デバイスが脳内へ移植される。潰瘍性大腸炎または種々の異なる胃腸病学的疾患を有する患者もまた、開示するデバイスをその胃腸管に移植することで、救いを得ることができ得る。
【0015】
図2Aに見られるように、薬物送達システム10は、ベイスン14を含む。ベイスンは、ベイスン収容部分、エンフレームメント(enframement)部分、またはエンケースメント部分12中に形成される。説明を簡単にするために、ベイスン収容部分、エンフレームメント部分、またはエンケースメント部分は、コアボディ12と呼ぶ。好ましい実施形態において、コアボディ12は、実質的に平面である硬い材料の部品から形成される。図2A中のベイスン14は、上部16および底部18と共に示される。ベイスン14の上部16は、コアボディ12の上部フェイス20と交差する。好ましい実施形態において、ベイスン14の底部18は、コアボディ12の下部フェイス22と交差する。例示されるベイスン14は、事実上はコアボディ12を貫通する穴である。上部16が底部18よりも大きい場合、ベイスン14は、テーパ状の壁17を有し得る。
【0016】
図2Bを参照することで、コアボディ12の構造をさらに良く理解し得る。そこでは、弓状に改変された競技用トラック状の外周を有するコアボディ12が、示されている。この中に含まれるベイスン14は、上部フェイス20から下部フェイス22まで完全に貫通しており、コアボディの外周とおよそ並行している周を有する。小さなサイズの開示する薬物送達システムのより良い適用のためには、コアボディ12の長さは、約9.5mmであり、その幅は、約5.3mmである。
【0017】
ベイスン14は、図2Bに示すようにコアボディ12の中心部に位置し得るか、またはコアボディ12の1つの端の近くに位置し得る。ベイスン14の大きさは、種々の異なる薬剤を保持するのに十分である。そのような薬剤としては、小さな有機的分子または生物製剤(例えば、タンパク質、リボザイム、抗体、抗体フラグメント、アプタメーター(aptameter)、またはオリゴヌクレオチド)のいずれであっても、直接的または間接的に、神経保護薬剤、抗酸化薬剤、抗アポトーシス薬剤、可溶性の成長因子のアゴニストまたはアンタゴニスト、抗増殖薬剤、抗脈管形成薬剤、抗浮腫薬剤、血管標的化薬剤、抗炎症薬剤、あるいは抗生物質である薬剤が、挙げられ得る。より詳細には、適した薬剤としては、シグナル伝達インヒビター、プロテインキナーゼアンタゴニスト、チロシンキナーゼアンタゴニスト、VEGFレセプターアンタゴニスト、インテグリンアンタゴニスト、マトリクスメタロプロテイナーゼインヒビター、グルココルチコイド、NSAIDS、COX−1および/またはCOX−2インヒビター、ならびにアンジオスタチック(angiostatic)ステロイドが挙げられるが、これらに限定はされない。これらの薬剤の各々は、粉末、スラリー、または錠剤のいずれかの形態であり得る。そのような薬剤の量は、疾患の種類および重篤度に依存する所定の時間間隔で、薬剤が処方される疾患に十分な処置を提供するために十分であるべきである。所望する場合には、その効果を増大させるために、種々の異なる添加物が、薬剤に添加され得る。例えば、デバイスが眼に挿入されている領域に水分子を引きつけ、薬剤の溶解を開始または補助するために、あるいは薬剤をベイスン14の外へ輸送する目的のために、水親和性を有する添加物(例えば、湿潤性賦形剤)が、薬剤に添加され得る。
【0018】
ベイスン14内での小さい気泡の形成を最小にするために、ベイスン14の大きさおよび形状、ならびにベイスン14内に配置される薬剤の大きさおよび形状が、自由な空気の量を最小にするように、実質的に同じであることが好ましい。
【0019】
図2Cに示されるように、第一のスクリーン24は、コア本体12の上面20に取り付けられて、ベイスン14の頂部16を覆うように形成される。必要に応じて、第二のスクリーン26は、コア本体12の下面22に取り付けられて、ベイスン14の底部18を覆う。好ましい実施形態において、スクリーン24は、図2Cに示されるようなものである。具体的には、スクリーン24は、弓形の改変されたトラック外周(race track perimeter)36を有し、これは、ベイスン14の外周およびコア本体12の外周と、ほぼ平行である。このスクリーンの、穴28が形成される部分23は、デバイス10の構築に依存して、外周25と同じ厚さであっても、異なる厚さであってもよい。
【0020】
図2Dに見られ得るように、スクリーン24またはスクリーン24、26は、複数の穴28を含むように形成される。スクリーン24またはスクリーン24、26における穴28の数、大きさ、位置、および配置は、種々の要因(ベイスン14に入れられる薬物の溶解度、ベイスン14に入れられる薬物の溶解速度、およびベイスン14に入れられる薬物の濃度が挙げられる)によって変化する。代表的に、穴28の大きさは、実質的に約0.2ミクロン〜実質的に約100ミクロンまでのいずれかである。しかし、他の適用における、開示される発明の汎用性に起因して、なお異なる穴の大きさが使用され得る。スクリーン24またはスクリーン24、26の表面にわたる、穴28のほぼ均一な分布は、薬剤の最大の溶解を可能にすることが理解されるが、穴28の他の不均一な分布もまた、以下に説明されるように、可能である。さらに、当業者は、本発明の薬物送達システムが眼内で使用される場合、これらの穴は、薬剤のあらゆる未溶解粒子(これは、視覚を妨害し得る)の通過を遮断するために十分に小さくなければならないことを理解する。
【0021】
各スクリーンに対する適切な厚さは、約0.05mm〜0.5mmであり、そしてコア本体12の適切な厚さは、標的移植部位において投与される薬剤の量に依存して、約0.5mm〜約3.0mm、好ましくは、約1.0mm〜約2.0mmである。
【0022】
金属材料または非金属材料のいずれかが、開示される薬物送達デバイスを製造するために使用される場合、スクリーン24またはスクリーン24、26は、種々の異なる接着剤(シリコンゴム、シアノアクリレート、または通常入手可能な生体適合性の室温接着剤、熱接着剤、エポキシ、あるいは紫外光硬化接着剤が挙げられる)を使用して、コア本体12に固定され得る。好ましい実施形態において、スクリーン24またはスクリーン24、26は、コア本体12と同様にまた、実質的に平坦であるように形成される。
【0023】
種々の異なる材料が、コア本体12およびスクリーン24、26を製造するために使用され得る。このような材料は、種々の異なる生体適合性材料(シリコン、ガラス、ルビー、サファイア、ダイヤモンド、またはセラミックが挙げられる)から選択され得る。所望であれば、生体適合性金属が、コア本体12およびスクリーン24、26を形成するために使用され得る。このような生体適合性金属としては、金、銀、白金、ステンレス鋼、タングステン、およびチタンが挙げられる。生体適合性金属が使用される場合、スクリーン24またはスクリーン24、26は、種々の異なる技術(以前に示されたようなレーザー溶接、熱電結合または上記にかわおよび接着剤が挙げられる)を使用して、コア本体12に溶接され得る。
【0024】
当業者は、開示される薬物送達プラットフォームの有効性が、予め決定された時間の間の、適切な数の薬剤分子の送達によって決定されることを理解する。従って、スクリーン(単数または複数)における穴28の面積の総合計は、ベイスン14からの薬剤の所望の送達速度を可能にしなければならない。一般に、これは、穴密度と称される。本開示の目的で、穴密度とは、穴の全面積をデバイスの全表面積(この領域がスクリーンによって覆われていない場合でさえも)で除算したものである。
【0025】
スクリーンの表面上の穴の数、これらの大きさ、これらの位置、およびこれらの一般的な外観は、穴パターンを形成する。この穴パターンは、必要とされる量の薬剤が、必要とされる流量で送達されることを保証するように、調節される。複数のベイスンがコア本体に形成される場合、スクリーンにおける複数の穴パターンが、薬剤の流れを制御するために使用され得る。例えば、ベイスンの一端に集中した穴を有する穴パターンは、最初に、薬剤の速い流れを生じる。しかし、薬剤が使い果たされるにつれて、薬剤は、ベイスン14を出る前により長い移動経路を有する;従って、薬物送達ベイスン14からの薬剤の放出速度は、経時的に低下する。
【0026】
図3に示される代替の実施形態110において、ベイスン114の底部118は、それ自体がスクリーンとして形成され得、従って、図2Aに示されるような第二のスクリーン26の使用および取り付けに対する必要性を除く。他の適用において、図3に示されるように、ベイスン114が隙間のない(solid)底部を有することもまた可能である。ベイスン114が隙間のない底部を有する場合、単一のスクリーン124のみが、ベイスン114の頂部116において使用される。
【0027】
好ましい実施形態は、ベイスン14が遠位端15に近付き、そして縫合穴30が近位端13に配置される、改変されたトラック外周36を示すが、多くの他の設計の移植可能な薬物送達プラットフォームが、本発明の範囲から逸脱することなく可能であることが、当業者によって理解される。例えば、薬物送達プラットフォームは、複数の縫合穴30を備えて、または図4Aに示されるように、三角形の形状310のようなまっすぐな辺を備えて、形成され得る。あるいは、正方形の形状、円形の形状、へらの形状、または眼における小さい切開を通して挿入され得るか、もしくは薬剤が最も効果的であると決定された身体の部分に配置され得る、他の任意の好都合な形状が、使用され得る。
【0028】
開示される発明が、種々の異なる形状で構成される適合性に起因して、特に、コア本体およびスクリーンが生体適合性の金属から形成される場合、開示されるデバイスは、図4Bに示されるように、輪または円筒380として形成され得る。この様式で構成される場合、このデバイスは、腱、靭帯、筋肉線維、血管、神経束、または薬剤の局所投与に応答する身体の任意の他の部分の周りに巻かれ得る。同様に、このような円筒380はまた、身体内の管状導管内に配置され得、そしてその位置を固定するために、拡張または縫合のいずれかをされ得る。
【0029】
所望であれば、異なる型の薬剤が、異なる形状または異なる色を有する異なるコア本体に入れられ得る。異なる形状または色のコア本体における、異なる薬剤の使用は、外科医が、薬剤が収容されているデバイスの形状または色により薬剤を区別することを可能にすることによって、投薬の混乱を減少させる。
【0030】
特定の状況において、薬物送達デバイスを、処置される状態または疾患に関して特定の位置に配向することが必要であり得る。このような状況において、薬物送達デバイス410は、図5に示されるような支持片432に取り付けられて、コア本体412の所望の配向を可能にし得る。
【0031】
図6Aおよび6Bに示されるような薬物送達プラットフォーム510のなお別の実施形態において、コア本体512、上部スクリーン524、および下部プレート525は、鋭利な縁部534を形成するために製造され得る。図2A、3、および4Aに示されるような、薄い平坦な実施形態は、眼の硝子体に挿入するために適切であり得るが、他の適用は、軟部組織の貫通を必要とし得る。コア本体512が、コア本体512の外周縁部536の一部が鋭利な縁部534備えるように形成されるように形成される場合、コア本体512自体は、最初の切開(この切開を通して、薬物送達デバイス510が配置される)を作製するため、または切開を拡大するために使用され得る。この実施形態において、上部スクリーン524の前端は、開口部(この開口部を通して、開示される薬物送達デバイスが挿入され得る)を作製するために最初に接触するために使用される、鋭利な縁部の部分である。
【0032】
なお別の代替の実施形態610において、図6Cおよび6Dに示されるように、鋭縁は、ベイスン614下に位置する固体片625の縁部上の一部に配置され得る。
【0033】
十分な薬剤が、コア本体のベイスン内に配置され、最小期間または延長期間中の状態または疾患を処置し得るが、状態または疾患が特に根強い場合は、薬剤を実際に換えることが必要であり得る。デバイス全体が換えられ得るが、デバイスが患者内で延長された時間(例えば、1年以上)使用される場合、コア本体712内のベイスン714は、図7に示されるように、コア本体712の周辺縁部736からベイスン714に続く通路738の使用によって補充され得ることが見出されている。コア本体712の大きさが小さいことに起因して、周辺縁部736からベイスン714まで通路を穿孔することは可能であり得ない。このような場合において、2つの嵌合片712A、712Bからコア本体712を形成することが必要であり得、各々の嵌合片は、部分的チャネルを備える。嵌合片712Aおよび712Bが、他方の頂部上に配置された嵌合片である場合、これら2つの部分的チャネルは、水平か、垂直下のいずれかで一緒になって、周辺縁部736からベイスン714までの小孔738を形成する。
【0034】
なお別の実施形態810において、通路838の端部は、フランジ840に装着され得る。フランジ840は、シリンジ(図示せず)の使用により、薬剤をベイスン814に充填するための開口部の位置決めを容易にする。さらに、フランジ840の使用は、夾雑を防止または低減させ得る。フランジ840は、コア本体812の側面に配置され得るか、または短い距離で小管842により接続され得る。通路838は、図7Aに示されるように、蛇行経路として形成され得る。
【0035】
複雑な状況において、状態または疾患の部位付近に複数の薬剤を配置することが必要であり得る。このような場合、複数のベイスンが、コア本体943、945内に形成され得る。図8に示されるように、コア本体912は、少なくともより小さな近位ベイスン943およびより小さな遠位ベイスン945を備える。異なる薬剤に起因して、スクリーンにより近位ベイスン943および遠位ベイスン945をカバーすることが必要であり得、このカバーは、各々より小さな近位ベイスン943および遠位ベイスン945にわたって異なる数の異なる大きさの孔を備える。
【0036】
開示する薬物送達プラットフォームのなお他の実施形態は、以下の図9〜23に示される。
【0037】
近位ベイスン1043、中間のベイスン1045および遠位ベイスン1047を備える薬物送達デバイス1010の1つの実施形態を図9に示す。近位ベイスン1043は、第1の仕切り1041を用いて中間のベイスン1045から隔てられ、そして中間のベイスン1045は、第2の仕切り1049を用いて遠位ベイスン1047から隔てられる。必要な場合、種々のより小さいベイスン間の薬剤の輸送または移動は、仕切り1041、1049に形成される通路1048によって促進され得る。コア本体1012の上部表面1020上にある第1のスクリーン1024およびコア本体1012の下部表面1024上にある第2のスクリーンの両方の孔のパターンが、薬剤の放出を制御するように成形されていることもまた注目すべきである。具体的には、U型パターン1050が遠位端1015に備えられ、そして、弓状パターン1052が近位端1013に備えられる。この実施形態は、動物の体内に3つの薬剤(M1、M2およびM3)を配置する必要がある場合に特に有用である。あるいは、仕切り1041および1049は、薬剤M1、M2およびM3を別々のままにするために隙間がないかまたは不浸透性であり得る。
【0038】
図10は、体内に2つの薬剤M1およびM2を放散させるための実施形態1110を図示する。従って、コア本体1112は、間にある隙間がないかまたは不浸透性の仕切り1141を用いて近位のより小さいベイスン1143と遠位のより小さいベイスン1147とに分けられる。薬剤M2の放出は、遠位仕切り1147を覆う、上部スクリーン1124および下部スクリーン1126の両方のスクリーン孔1150のU型パターンによって制御される。薬剤M1の放出を制御するために、近位ベイスン1143を覆ってスクリーン孔1154の台形パターンが配置される。
【0039】
図11に、別の2コンパートメントの移植可能な薬物送達プラットフォーム1210を示す。遠位ベイスン1247全体を覆うスクリーン孔1256の第1のパターンおよび近位ベイスン1243全体を覆うスクリーン孔1258の第2のパターンが存在し、それぞれ薬剤M2およびM1を保持することが注目すべきである。
【0040】
薬剤Mを保持するための単一のベイスン1314を備える実施形態1310を図12に示す。単一のベイスン1314は、2つのコア本体小片1312A、1312Bを一緒に連結することによって形成される。小片1312A、1312Bの各々は、スクリーン孔1360の全パターンを備え、コア本体の2つの部分1312A、1312Bの間に形成されるベイスン1314を覆う。
【0041】
単一のベイスン1414を備えるなお別の実施形態1410を図13に示す。この実施形態1410において、コア本体1412は、上部スクリーン1424によって覆われる下部スクリーン1426を備える。上部スクリーン1424が、コア本体1412を完全に覆い、そしてスクリーン孔1460の全パターンで構成されてベイスン1414全体を覆うことが注目すべきである。
【0042】
なお別の単一のベイスンの実施形態1510を図14に示す。この実施形態において、上部スクリーン1524は、コア本体1512に形成されるベイスン1514の内周にフィットする外周1536を有する。
【0043】
単一のウェル1614を備えるなお別の実施形態1610を図15に示す。この実施形態1610において、上部スクリーン1634は、コア本体1612内に形成されるベイスン1614の外周にプレスばめされるように構築および配置される下方にぶら下がったフランジ1662を備える。あるいは、図18に示すように、このフランジは、コア本体1612上に配置されて上方に延び、スクリーン1624の凹部を係合し得る。
【0044】
単一のベイスン1714を備えるなお別の実施形態1710を図16に示す。単一のベイスン1714は、コア本体ホルダー1712Cにさらにフィットするコア本体1712に形成される。コア本体ホルダー1712Cは、その中に開放部分1712C.1を備え、これがコア本体1712をしっかりと保持する。コア本体1712内のベイスン1714を覆っているのは、上部スクリーン1724である。コア本体1712の下部部分がスクリーンとなるように形成される。
【0045】
図16に示す実施形態1710と類似の実施形態1810を図17に示す。しかし、コア本体ホルダー1812Dは連続する外周を有するのではなく、コア本体ホルダー1812Dは、それらの間に開放空間1812D.1を形成する2つのピンを有するように形成される。この開放空間1812D.1は、コア本体1812を受けとめるように構築および配置される。溝1864は、コア本体ホルダー1812Dの2つのピンを捕捉する。再度、コア本体1812がスクリーン1824で覆われ、コア本体1812の下部がスクリーンとして形成される。
【0046】
図18において開示された実施形態1910は、上向きに伸長するフランジ1966を有するコア本体1912を備え、このフランジ1966は、上部スクリーン1924がベイスン1914を超えてコア本体1912上に位置され得るように、上部スクリーン1924中に嵌合する。
【0047】
図19は、実質的に中空のコア本体2012を備える実施形態2010を示す。下部スクリーン2026は、この実質的に中空のコア本体2012の底面2022に静置され、上部スクリーン2026は、このコア本体の上面2020に静置される。
【0048】
図20は、近位のより小さいベイスン2143および遠位のより小さいベイスン2147を含む実施形態2110を示す。近位のより小さいベイスン2143を遠位のより小さいベイスン2147と分ける隔壁2141は、薬剤が通路を通って移動するために、この隔壁の中に通路2148を有する。薬剤Ml、M2の放出は、上部スクリーン2124および下部スクリーン2126の両方に形成された穴2152の弓形パターンによって制御される。あるいは、この隔壁2141は、ベイスン2114の長手軸方向に沿って走り、隣り合うより小さなベイスンを形成し得る。
【0049】
図21は、近位のより小さいベイスン2243および遠位のより小さいベイスン2247を含む、さらになお別の実施形態2210である。隔壁2241は、コア本体2212において、近位ベイスン2243を遠位ベイスン2247と分ける。この上部スクリーン2224およびこの下部スクリーン2226の両方は、U字形パターンの穴2250を遠位端2215に備え、そしてフルパターンの穴2260を近位端2213に備える。
【0050】
図22は、矩形の厚みを持たせた実施形態2310を示し、この実施形態2310は、コア本体2312の上部表面2320および下部表面2322に位置されるべき円形スクリーン2324、2326を備える。
【実施例】
【0051】
(実施例)
図15に示されるものに類似するデバイスを、8羽のNew Zealand Whiteウサギに移植した。そのスクリーンを、シリコーン接着剤を使用して、コア本体に取り付けた。反対側の眼をコントロールとして使用した。1羽のウサギを、2日で研究から外した。3匹の動物を、1ヶ月で試験し、残りの4羽のウサギを、3ヶ月で試験した。組織病理学的観察を、1ヶ月および3ヶ月の両方で行った。1ヶ月で、動物のうち3匹が、硝子体中に少数の炎症性細胞を示した。これらの3匹の動物のうちの1匹はまた、鋸状縁において最小限の炎症を示した。最後の動物は、最小限に腫脹した水晶体繊維を有した。この群の毒物学観察は、顕著ではなかった。3ヶ月サンプリングにおける動物の全ての毒物学観察は、顕著ではなかった。
【0052】
インビトロ研究において、ベタキソロールHCl(比較的水溶性の高い物質)を、10% 微結晶セルロースおよび0.40% ステアリン酸マグネシウムとともに総重量22mgの錠剤にした。ベタキソロールHCl錠剤を、図15に示される実施形態に類似の薬物送達デバイスのベイスンに挿入した。このデバイスは、1つの8ミクロン 1% 多孔度スクリーンをベイスンの一方の側面に利用した。全ての孔の面積 対 そのスクリーンの面積の比は、約0.18%であった。全ての孔の面積 対 薬物送達デバイス上の全表面の面積の比は、約0.02%であった。本発明に従う装填された薬物送達デバイスを、リン酸/生理食塩水緩衝液を含有する4mL HPLCバイアル中に入れ、次いで、小さなスターラーバーで攪拌した。そのバイアルを、周期的にサンプリングし、HPLCにより薬物濃度について分析した。図24に示されるように、時間に対する薬物濃度のプロットは、放出プロフィールを示す。
【0053】
第2のインビトロ研究において、比較的水溶性の低い物質であるネパフェナクを有する物質を使用して、錠剤形態にある別の第2の薬物処方物もまた、図15に示される実施形態に類似のデバイスにおいて研究した。これらの錠剤はまた、10% 微結晶セルロースおよび0.40% ステアリン酸マグネシウムを含んでいた。錠剤1錠を、2側面の14ミクロンの25% 多孔度デバイスにおいた。全ての孔の面積 対 スクリーンの面積の比は、約4.5%であった。全ての孔の面積 対 薬物送達デバイス上の全表面の面積の比は、約0.48%であった。第2の錠剤を、2側面の14ミクロン 1% デバイスに置いた。全ての孔の面積 対 スクリーンの面積の比は、約0.18%であった。全ての孔の面積 対 薬物送達デバイス上の全表面の面積の比は、約0.02%であった。薬物放出研究を、上記のように行った。図25に示されるように、プロット「A」は、2側面の14ミクロン25% 多孔度デバイスからの放出プロフィールを示す。プロット「B」は、2側面の14ミクロン1% 多孔度デバイスからの放出プロフィールである。第3の実験を、2側面14ミクロン1%多孔度デバイスからのリン酸/生理食塩水緩衝液を置換し、実験を再開することによって行った。この実験は、プロット「C」によって示される。
【0054】
(操作)
一旦身体内の医学的状態または疾患が、同定および位置づけられると、医師は、このような状態または投薬が、その状態または疾患の部位の近くに配置される医薬品で処置され得るか否かを決定する。その状態または疾患の近くに配置された医薬品で、この状態または疾患を処置する決定がなされると、この状態または疾患近くに医薬品を実際に配置することが必要になる。他の適用において、短い距離から状態または疾患を処置することが必要であり得る。このような短い距離での処置は、薬物送達デバイスからの保持されたレベルの医薬品の流れを必要とし得る。
【0055】
図1に示される実施形態10において、その状態または疾患は、患者の眼内に含まれる。例えば、外科医は、移植可能なデバイスを、強膜中に小さな切開を作製することによって、患者の硝子体腔へ挿入し得る。次いで、薬物送達プラットフォーム10は、切開を通して挿入され、コア本体12中の縫合孔30を介して縫合糸を通し、縫合の他の部分を眼に取り付けることによって、適所に保持される。プラットフォームの配向は、移植されたプラットフォームが、水晶体から網膜への光線の経路の外にあるようにする。
【0056】
ベイスンからスクリーンにおける孔を通しての医薬品の移動をブロックし得る細胞での移植されたデバイスのコーティングを防止するために、抗増殖コーティングを、スクリーンおよびコア本体の両方の上に使用し得る。同様に、シリコンのような材料は、スクリーンのチッピング(chipping)を防止するために、チップ(chip)を形成し得、そしてコア本体は、チッピングを防止するための物質でコーティングされ得る。
【0057】
先に述べたように、好ましい実施形態は、内眼内の状態または疾患を処置するための医薬品を挿入する目的で示されるが、当業者は、開示される移植可能な薬物送達プラットフォーム10が、状態または疾患が移植された医薬品で最もよく処置される動物の身体内のいずれの位置においても使用され得ることを理解する。
【0058】
本発明は、いまやその好ましい実施形態および代替的実施形態に従って開示されたが、ここで本発明は、当業者によって理解される。当業者は、本発明の多くの他の実施形態もまた、前述の開示によって具現化され得ることを理解する。このような他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲および意味内に含まれることとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図7A】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−63904(P2010−63904A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262381(P2009−262381)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【分割の表示】特願2003−576025(P2003−576025)の分割
【原出願日】平成15年3月11日(2003.3.11)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】