説明

移植機

【課題】ジャガイモの種芋やラッキョの球根類等の移植対象物を適正且つ円滑に供給できる構成とし、供給カップの開閉底蓋を不要としながら、移植対象物の大きさにかかわりなく適正な移植作業が行なえる移植機を提供することを目的とする。
【解決手段】移植対象物Cが補給される上端と下端に開口を有する複数個の供給カップ72をループ状に移動自在に構成し、移植対象物Cを下方に供給する供給口201が形成された板状部材200をループ状に移動する供給カップ72の下側に固定配置し、該供給口201から供給される移植対象物Cを上動位置で受けて下動位置で圃場に植え付ける植付具26を設けた移植機において、供給カップ72内部の移植対象物Cを収納する収納部を供給カップ72が移動する方向の前側の収納端部を変更して収納部の大きさを変更自在に構成した移植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャガイモの種芋やラッキョの球根類等の移植対象物を圃場に移植する移植機に関するものであり、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、移植機の載置台上に準備された種芋等を、その移植機の走行にあわせてループ状に回転搬送される複数の供給カップに、作業者が一個ずつ手で供給することで、自動的に圃場に植え付ける種芋移植機が知られている。
【0003】
この種芋移植機は、その機体の走行と共に歩行する作業者が、種芋収納部にある種芋を一つずつ手でつかんで、機体の走行にあわせて回転している複数の供給カップに、それぞれ入れていく。
【0004】
供給カップの底の開閉底蓋は、供給カップの回転に伴って、植付具が上死点に来た時に開放され、供給カップ内の種芋が下方の植付具に供給される。植付具の先端部は、ほぼ楕円状の軌跡を描いて駆動し、最下端に来た時に圃場に所定深さまで進入するとともに鳥のくちばしの如く開いて、内部に保持されていた種芋が圃場に落下して植え付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−51613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この様な従来の種芋移植機の構造では、供給カップ毎に開閉底蓋が設けられているため、部品点数が多くなると共に、製造時の組立作業に手間がかかるという課題があった。
【0007】
また、作業者は、この様な従来の種芋移植機を使用する場合、全ての開閉底蓋がスムーズな開閉動作をするように、開閉底蓋毎に可動部の汚れを落としたりする必要があり、保守点検に手間がかかるという課題もあった。
【0008】
本発明は、上記従来の種芋移植機の課題に鑑み、ジャガイモの種芋やラッキョの球根類等の移植対象物を適正且つ円滑に供給できる構成とし、供給カップの開閉底蓋を不要としながら、移植対象物の大きさにかかわりなく適正な移植作業が行なえる移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
請求項1に係る発明は、移植対象物Cが補給される上端と下端に開口を有する複数個の供給カップ72をループ状に移動自在に構成し、移植対象物Cを下方に供給する供給口201が形成された板状部材200をループ状に移動する供給カップ72の下側に固定配置し、該供給口201から供給される移植対象物Cを上動位置で受けて下動位置で圃場に植え付ける植付具26を設けた移植機において、供給カップ72内部の移植対象物Cを収納する収納部を供給カップ72が移動する方向の前側の収納端部を変更して収納部の大きさを変更自在に構成した移植機とした。
【0010】
従って、請求項1記載の発明は、従来のような供給カップの開閉蓋を不要とし、シンプルな構造で移植対象物Cを適正且つ円滑に植付具26に供給できると共に、部品点数を削減した簡潔な構成の移植機を提供することができる。また、供給カップ72内部の移植対象物Cを収納する収納部を供給カップ72が移動する方向の前側の収納端部を変更して収納部の大きさを変更自在に構成したので、移植対象物Cの大きさに応じて供給カップ72の移植対象物Cを収納する収納部の大きさを変更して、供給カップ72内で移植対象物Cがむやみに大きく移動することを防止し、且つ、移植対象物Cは供給カップ72の移動方向後方側に位置して収納された状態となり、供給カップ72が供給口201と合致する時に、丁度、上動位置に来た植付具26内に適切に供給され、移植対象物Cが植付具26内に入らずに外にこぼれてしまって移植作業ができなくなるような事態を回避し、常に適正な移植作業が行なえる
請求項2に係る発明は、平面部71bに設けた複数の貫通孔71cに各々供給カップ72を配置し、該供給カップ72内に平面部71bが入り込む切り欠き部72dを設け、供給カップ72が移動する方向の前側の平面部71bが供給カップ72内に入り込むように供給カップ72の位置を調節して供給カップ72の収納部の大きさを変更する請求項1記載の移植機とした。
【0011】
従って、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の作用に加えて、供給カップ72内部の移植対象物Cを収納する収納部を供給カップ72が移動する方向の前側の収納端部を簡潔な構成で精度良く変更して収納部の大きさを変更調節することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、供給カップ72内に入れられた移植対象物Cを供給カップ72の移動方向後方側に移動させる押さえ体300を設けた請求項1記載の移植機とした。
従って、請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の作用に加えて、押さえ体300にて供給カップ72内に入れられた移植対象物Cを供給カップ72の移動方向後方側に移動させて、移植対象物Cの大きさに係わらず、供給カップ72と供給口201とが合致した時に軌跡Bの最上昇位置にある植付具26内に適切に供給されることとなり、常に適切な移植作業が行える。
【0013】
請求項4に係る発明は、押さえ体300は、供給カップ72が供給口201の上に来る直前から供給カップ72が供給口201と合致するまでの間、移植対象物Cを供給カップ72の移動方向後方側に押え、それ以外の移動区間は、供給カップ72の移動方向前側に退避している請求項3記載の移植機とした。
【0014】
従って、請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の作用に加えて、供給カップ72が供給口201の上に来る直前から供給カップ72が供給口201と合致するまでの間、供給カップ72内に入れられた移植対象物Cは押さえ体300によって移動方向後方側の供給カップ72壁面に押さえつけられた状態となっており、移植対象物Cの大きさに係わらず、供給カップ72と供給口201とが合致した時に軌跡Bの最上昇位置にある植付具26内に適切に供給されることとなり、常に適切な移植作業が行える。また、押さえ体300は、それ以外の移動区間では供給カップ72の移動方向前側に退避した状態となっており、作業者は容易に供給カップ72内に移植対象物Cを入れることができて作業性が良い。
【0015】
請求項5に係る発明は、押さえ体300の押さえ部302を供給カップ72の移動方向後方側に向けて傾斜した状態で供給カップ72内の移植対象物Cを押さえる構成とした請求項3または請求項4記載の移植機とした。
【0016】
従って、請求項5記載の発明は、請求項3または請求項4記載の発明の作用に加えて、押さえ体300の押さえ部302が移植対象物Cを押さえた状態では移植対象物Cは下方に向けて押えつけられた状態となっており、移植対象物Cが不用意に動くことを適切に防止して、移植対象物Cが安定良く位置決めされた状態となる。
【0017】
また、供給カップ72の移動方向後方側に向けて傾斜した押さえ部302は、移植対象物Cを押さえた状態では移植対象物Cを下方に向けて押えつけており、供給カップ72が供給口201と合致して移植対象物Cが下方に落下供給される際に、移植対象物Cを下方に向けて付勢した状態なので、移植対象物Cはこの付勢力で適確に且つ即座に下方の植付具26内に供給されて常に適切な移植作業が行える。
【0018】
請求項6に係る発明は、供給カップ72が供給口201と重なる時以外は供給カップ72内に入れられた移植対象物Cを供給カップ72の移動方向後方側に位置決めし、供給カップ72が供給口201と重なる時は該移植対象物Cの位置決めを解除する位置規制体310を設けた請求項1記載の移植機とした。
【0019】
従って、請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明の作用に加えて、供給カップ72が供給口201と重なる時以外は、位置規制体310によって移植対象物Cをその大きさに係わらず供給カップ72内の移動方向後方側の壁面に接当した安定位置に規制し、供給カップ72が供給口201と重なる時は該移植対象物Cの位置決めを解除するので、供給カップ72が供給口201と重なる時に上動位置にある植付具26内に適切に供給されることとなり、常に適切な移植作業が行える。
【発明の効果】
【0020】
よって、この発明は、移植対象物Cを適正且つ円滑に供給できる構成としながら、供給カップ72の開閉蓋を不要としたことで、部品点数を削減した簡潔な構成の移植機を提供することができる。
【0021】
また、移植対象物Cの大きさにかかわりなく適正な移植作業が行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における種芋移植機の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における種芋移植機の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における種芋移植機から種芋載置台を除いた平面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における種芋供給部を説明するための概略平面図である。
【図5】本発明の実施の形態1における種芋供給部を説明するための一部断面を含む概略正面である。
【図6】本発明の実施の形態1における種芋供給部を説明するための概略側面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における種芋供給部の要部を説明するための拡大平面図である。
【図8】本発明の実施の形態1における種芋供給部の要部を説明するための拡大側面図である。
【図9】種芋供給部の各構成部品を説明するための分解斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態1における種芋移植機の種芋供給部の回転駆動機構の主要部を説明するための概略平面図である。
【図11】(a)本発明の実施の形態1における種芋移植機の畝ガイドローラの作用説明用分解斜視図、(b)畝ガイドローラの作用説明用正面図である。
【図12】本発明の実施の形態2における種芋供給部の要部を説明するための拡大平面図である。
【図13】本発明の実施の形態2における種芋供給部の要部を説明するための拡大一部断面側面図である。
【図14】本発明の実施の形態3における種芋供給部の要部を説明するための拡大平面図である。
【図15】本発明の実施の形態3における種芋供給部の要部を説明するための拡大一部断面側面図である。
【図16】本発明の実施の形態4における種芋供給部の要部を説明するための拡大斜視図である。
【図17】本発明の実施の形態4における種芋供給部の要部を説明するための拡大一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の移植機の一実施の形態のジャガイモの種芋移植機についてその構成と動作を説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の移植機の一例としてジャガイモの種芋を移植する種芋移植機1を示す側面図であり、図2・図3は、種芋移植機1の平面図である。尚、図3は、種芋載置台30を除いている点で、図2と相違する。
【0024】
この種芋移植機1は、前部にエンジン2及びミッションケース3と走行車輪としての左右一対の前輪4及び後輪5と、後部に種芋植付装置60、種芋供給部70、鎮圧輪8及び操縦ハンドル9とを備えて構成されている。
【0025】
この種芋移植機1は、機体が圃場内の畝Uをまたぐように、前輪4及び後輪5が畝間を走行し、畝の上面の左右幅方向における中央位置に種芋植付装置60により種芋を植付けていくようになっている。
【0026】
また、ミッションケース3の左右端には該ミッションケース3に対して回動可能な走行エクステンションケース10を左右それぞれ設け、左右の走行エクステンションケース10のそれぞれの端部に走行チェーンケース11を取り付けている。従って、エンジン2から入力されるミッションケース3内の動力を走行チェーンケース11内に伝動する構成となっている。
【0027】
走行チェーンケース11の回動先端部の左右外側には、走行車輪である左右一対の後輪5をそれぞれ取り付け、この左右一対の後輪5の駆動により機体が走行するようになっている。従って、ミッションケース3は、走行車輪としての後輪5に伝動する伝動装置となっている。
【0028】
一方、エンジン載置台の下部には左右方向に延びる前輪支持フレーム12を前後方向のローリング軸13(図1参照)回りに回動可能に設け、この前輪支持フレーム12の左右両端部に前輪4を取り付けた構成としている。
【0029】
また、ミッションケース3の後端の左右方向に配置された横フレーム14の後部には、機体の左右方向右寄りの位置に延びる主フレーム15を設けている。該主フレーム15の後端部には操縦ハンドル9を設け、この操縦ハンドル9が主フレーム15及び、横フレーム14を介してミッションケース3に支持された構成となっている。
【0030】
また、ミッションケース3の後部で左右方向の中央には、油圧昇降シリンダ16を設けている。この油圧昇降シリンダ16は、ミッションケース3に取り付けられた油圧切替バルブ部17に固着して設けられ、ミッションケース3に取り付けられた油圧ポンプからの油圧を切り替える油圧切替バルブ部17に備えられた昇降操作バルブを操作することにより作動するようになっている。
【0031】
また、油圧昇降シリンダ16のシリンダロッド端には左右に延びる横杆19を設け、この横杆19の左右端部にそれぞれ後輪昇降ロッド20,21を枢着し該ロッド20,21の他端をそれぞれの走行エクステンションケース10に取り付けられた上側アーム10aに枢着して、横杆19と走行エクステンションケース10とが連結された構成となっている。
【0032】
従って、油圧昇降シリンダ16の伸縮により横杆19、後輪昇降ロッド20,21を介してミッションケース3の左右の出力軸回りに走行チェーンケース11が回動され、該走行チェーンケース11の回動により後輪5が上下して機体が昇降する構成となっている。
【0033】
また、左側の後輪昇降ロッド20が伸縮するように該ロッド20の中途部に油圧ポンプからの油圧により作動する水平用油圧シリンダ22を設けており、該水平用油圧シリンダ22の伸縮により右側の後輪5の上下位置に対して左側の後輪5を上下させて、畝の谷部の凹凸に関係なく機体を左右水平に維持できるようになっている。
【0034】
尚、ミッションケース3の右側には振り子式の左右傾斜センサ23が設けられて、この左右傾斜センサ23の検出により油圧切替バルブ部17に備えられた水平操作バルブを介して水平用油圧シリンダ22を作動させ機体を左右水平に維持する構成となっている。
【0035】
本実施の形態の種芋植付装置60は、種芋を1個ずつ圃場の畝部に植付けるべく、ミッションケース3内からの動力がミッションケース3の後側に設けた植付伝動ケース24と、その植付伝動ケース24に取り付けられた植付装置駆動ケース25aを介して伝達され作動するようになっている。
【0036】
種芋植付装置60は、先端が尖ったカップ状の植付具26と該植付具26を昇降させるべく作動する植付具作動機構27とで構成される。植付具26の先端は、植付具26の昇降動作によって、図1に示すように、概ね楕円形の軌跡Bを描いて図中の矢印方向に繰り返し作動する。
【0037】
次に、本実施の形態の種芋移植機1の種芋載置台30及び種芋供給部70について、図面を参照しながら、その構成を説明する。
図4〜図6は、種芋供給部70を説明するための概略平面図、回転テーブル71の中心部に断面を含む概略正面図、及び概略側面図である。
【0038】
種芋載置台30は、基部が植付伝動ケース24に固着された苗枠フレーム31上に杆体にて枠組みされ、移植対象物の一例としての種芋Cを収容したコンテナAを機体左右方向に3個並べて載置する主載置枠32と、該主載置枠32の左側後部にコンテナAを1個載置できる副載置枠33とから構成されている。
【0039】
そして、副載置枠33は、主載置枠32の下部に固着されたパイプ状フレーム34にて前後方向に摺動自在に構成されている。即ち、副載置枠33を主載置枠32の後部に引出した状態では、副載置枠33に種芋Cを収容したコンテナAを1個載置することができ、作業者は、機体の左側で該副載置枠33の後方を歩きながら、副載置枠33に載置したコンテナAから種芋Cを取出して、側方の種芋供給部70の各供給カップ72に容易に入れることができて、作業性良く且つ作業効率良く移植作業を行なうことができる。なお、副載置枠33に載置したコンテナAの種芋Cが無くなった時は、主載置枠32上の種芋Cが入ったコンテナAを置き換えて作業を続行する。また、副載置枠33を主載置枠32の下部に押し入れて収納した状態とすれば、機体移動時や機体を納屋等に収納する際に便利である。
【0040】
また、種芋供給部70は、種芋植付装置60の上方に設けられた、上端と下端に開口を有する供給カップ72を8つ貫通させてループ状に配置した回転可能な回転テーブル71と、その下側に配置されて且つ種芋移植機1の機体側に固定配置された種芋支持板200と、回転テーブル71を反時計回りに回転させるための回転駆動機構76と、所定位置G(図3参照)に移動してきた供給カップ72の中に作業者の指などが誤って入らないようにするための安全カバー40と、作業者が植付具26等の可動部に接触しないようにするための防護カバー50等を備えている。
【0041】
回転テーブル71は、外周縁部71aが下方に曲げられた盆状部材であって、その円形平面部(主面部)71bの外周寄りに等間隔に開けられた8つの貫通孔71cに、両端が開放された円筒状の供給カップ72がそれぞれ貫通して設けられている。また、回転テーブル71の中央部には、回転駆動機構76からの回転力により回転テーブル71を反時計回りに回転するための回転軸76f(図1、図4参照)が固定配置されている。
【0042】
種芋支持板200は、所定位置に供給口201開口が設けられた円盤状の板部材であって、その外周部に安全カバー40を固定するための出っ張り部203を有し、図1、図4〜図6に示すように、供給カップ72の直ぐ下側で、回転テーブル71の円形平面部(主面部)71bに平行であって、後述する支柱93に溶接にて固定されている。種芋支持板200の更に下側には、回転駆動機構76が設けられている。
【0043】
以下、上記種芋供給部70を構成する回転テーブル71、種芋支持板200、回転駆動機構76、安全カバー40、及び防護カバー50の構成を、更に具体的に説明する。
図7は、種芋供給部70の各構成部品を説明するために分解して図示した斜視図である。
(1)回転テーブル71について:
回転テーブル71は、その円形平面部71bの外周寄りに等間隔に開けられた8つの貫通孔71cに、両端が開放された円筒状の供給カップ72がそれぞれ貫通して設けられている。
【0044】
供給カップ72は、その上下方向中央部よりも少し下側の外周壁に取付けリブ72aが一体に設けられており、供給カップ72が円形平面部71bの貫通孔71cを貫通した状態で取付けリブ72aの一側方が回転支持軸72bを介して円形平面部71bに回動自在に支持され、取付けリブ72aの他側方に設けた円弧孔72cにはボルトBoが挿通されてナットNaにて円形平面部71bに固定する構成となっている。そして、供給カップ72には、円形平面部71bに嵌り込む切り欠き部72dが回転テーブル71の回転方向後方側に形成されている。
【0045】
従って、供給カップ72の内部円状空間を円形平面部71bの貫通孔71cに合致させた状態でボルトBo・ナットNaにて供給カップ72を円形平面部71bに固定すると、供給カップ72の内部円柱状空間は最大の貫通孔となり、供給カップ72内に大きな種芋Cを入れて移植作業が行なえる。
【0046】
そして、供給カップ72の切り欠き部72dが円形平面部71bに嵌り込むように供給カップ72を回転支持軸72b回りに回転テーブル71の回転方向後方側に向けて回動させてボルトBo・ナットNaにて固定すると、移植する種芋Cが小さい場合にその大きさに合わせて供給カップ72の内部貫通孔の大きさを小さく調節することができる。よって、供給カップ72内に入れられた小さな種芋Cは、供給カップ72の内部貫通孔内に丁度収まり、然も、供給カップ72を回転テーブル71の回転方向後方側に向けて移動させて調節するので、小さな種芋Cは円形平面部71bの貫通孔71cの回転テーブル71の回転方向後方側で押されて移動することとなり、小さな種芋Cでも円形平面部71bの貫通孔71cと種芋支持板200の供給口201とが合致した時に軌跡Bの最上昇位置にある植付具26内に適切に供給されることとなり、小さな種芋Cが植付具26内に入らずに外にこぼれてしまって移植作業ができなくなるような事態を回避し、常に適切な移植作業が行える。
【0047】
これは、例えば、供給カップ72の内部貫通孔の大きさを調節する機構がないと、小さな種芋Cは、供給カップ72の内部貫通孔内で転がり内部貫通孔内の回転テーブル71回転方向前方側に位置することがある。すると、供給カップ72と円形平面部71bの貫通孔71cとが完全に合致する前に、即ち、供給カップ72の内部貫通孔前側が円形平面部71bの貫通孔71c上に来た時点で、内部貫通孔内の回転テーブル71回転方向前方側に位置する小さな種芋Cは、貫通孔71cを通過してしまい、未だ植付具26が軌跡Bの最上昇位置に来ていないので、小さな種芋Cは植付具26内に入らずに外にこぼれてしまって移植作業が行なえなくなる。上記実施例は、そのような事態を回避することができ、種芋Cの大きさに合わせて供給カップ72を回転テーブル71の回転方向後方側に向けて移動させて調節し、小さな種芋Cでも円形平面部71bの貫通孔71cと種芋支持板200の供給口201とが合致した時に軌跡Bの最上昇位置にある植付具26内に適切に供給されるようにしたものである。
(2)種芋支持板200について:
種芋支持板200は、出っ張り部203を除き、回転テーブル71の直径より小さく、且つ、リング状に配置された8個の供給カップの下端の開口の投影領域を包括できる直径の円盤状の板部材であり、その板部材の一部には、供給カップ72の下端開口の直径より大きい円形状の供給口201が、植付部26が上死点に位置する時の植付具26の上部開口部(図示省略)の上方に対応する位置に1つ形成されている。
【0048】
また、種芋支持板200は、供給カップ72の下端の縁部から所定の距離を隔てて、回転テーブル71の主面に平行に配置されており、供給カップ72に補給された種芋Cが、供給口201を除き、種芋支持板200と供給カップ72の下端の縁部との隙間から落下することが無く、しかも、回転移動する供給カップ72が、動作中に振動などしても、種芋支持板200にぶつかることが無い程度の間隔が確保されている。
【0049】
ここで、出っ張り部203は、供給口201に近傍の外周側に所定寸法だけ突き出しており、安全カバー40を締結部品40a、40bで固定するための2つの貫通孔203aが設けられている。安全カバー40については、後述する。
【0050】
また、種芋支持板200は、中心部に後述する軸受け部材76gを通すための円形の貫通孔202を有し、その裏面には、貫通孔202の縁部から外周部に向けて位置する長方形の第1板状部材211と第2板状部材212が、溶接固定されている。これら第1及び第2板状部材211、212は、防護カバー50を取り付けるための部材であると共に、種芋支持板200を補強する機能をも兼ねている。尚、防護カバー50については後述する。
【0051】
更に、種芋支持板200には、その上面に溜まったゴミなどを効果的に排出し、種芋は落下しない程度の大きさのスリット状の長孔部204が、半径方向に沿って形成されている。
【0052】
一方、回転テーブル71の裏面には、種芋支持板200に形成された長孔部204からゴミを落とすための長方形状の硬質ゴム製のスクレーパ73が固定配置されている。スクレーパ73の取付角度は、種芋支持板200上の長孔部204に引っかかりにくくするとともに、長孔部204のみならず、種芋支持板200の外周側からもゴミを排出出来るようにするために、回転テーブル71の半径方向を基準として図4に示すように角度αだけ傾けて固定されている。尚、スクレーパ73は、長孔部204よりも長く構成されており、該長孔部204と異なる形状とすることでも該長孔部204に引っかかりにくくしている。尚、スクレーパ73は、硬質ゴム製以外に、例えば、刷毛状の構成や変形しない板状の構成でも良く、要するにゴミをかき集めることが出来るものであればどの様なものでも良い。
【0053】
また、種芋支持板200は、種芋移植機1の機体から真っ直ぐ機体の後方に向けて配置されている支柱93により支持されると共に、その支持部において溶接固定されている。尚、後述する軸受け部材76gの外周側面は、支柱93の後方端93aに固定されている(図9参照)。
【0054】
更にまた、種芋支持板200の裏面には、後述する回転方向変換ユニット76bを固定するためのユニット固定用アングル260が溶接固定されている。
尚、上記構成によれば、供給カップ72の底面に蓋が無く、しかも種芋支持板200の裏面に支柱93が直接固定されているので、供給カップ72(図3参照)の下端の開口位置と、植付具26の上死点との距離がより短く出来る。そのため、種芋支持板200の供給口201から落下する種芋Cを、植付具26に案内するためのガイド部材を設ける必要が無い。
(3)回転駆動機構76について:
次に、上記回転駆動機構76を構成する各部の構成について、更に、具体的に説明する。
【0055】
図10は、種芋供給部70の回転駆動機構76の主要部を説明するための概略平面図であり、各部品の配置の前後関係の理解を容易にするために、各部品の一部を切り取った状態で描いた図である。
【0056】
即ち、回転駆動機構76は、回転テーブル駆動ケース25bに一端76a1が回転可能に接続され、回転方向変換ユニット76bの入力側に他端76a2が回転可能に接続された回転力伝達部材76cと、回転方向変換ユニット76bの入力側の回転軸に対して直交配置された出力側の回転軸76dに固定された第1歯車76e1と、第1歯車76e1と噛み合って配置された第2歯車76e2とを備えている。第2歯車76e2は反時計方向に滑らかに回転する。
【0057】
また、図9に示すように、回転方向変換ユニット76bの上面には、回転方向変換ユニット固定用アングル270が締結部品270aによって固定されている。更に、回転方向変換ユニット76bは、回転方向変換ユニット固定用アングル270を介して、種芋支持板200の裏面に固定されているユニット固定用アングル260に締結部品270bによって固定されている。
【0058】
また、軸受け部材76gは、第2歯車76e2の回転軸76fを回転可能に支持する軸受け部材であり、上述した通り、その外周側面の下端側において、支柱93の後方端93aと固定されている(図9参照)。一方、軸受け部材76gの上端側は、種芋支持板200の中心部に設けられた貫通孔202を貫通しており、軸受け部材76gから上方に飛び出している回転軸76fが回転テーブル71の中心部に固定されている。これにより、回転テーブル71は、回転軸76fを介して、軸受け部材76gにより回転可能に支持されている。
(4)安全カバー40について:
安全カバー40は、出っ張り部203に固定するための2つの貫通孔41aが一端側に形成された、断面がコの字型の安全カバー取付部41と、安全カバー取付部41の他端側に固定された、弾性変形可能なゴム製または樹脂製の安全カバー本体42とから構成されている。
【0059】
このように、安全カバー本体42は、供給カップ72が所定位置G(図3・図4参照)に移動して来た時に、その供給カップ72の上端の開口を完全に覆うので、作業者が誤って指などを入れることを防止出来る。
【0060】
また、安全カバー本体42は弾性変形可能な部材で構成されているので、供給カップ72と安全カバー本体42の間に作業者が誤って指を挟んだとしても、直ぐにその指を引き抜くことが出来き、また、ダメージも少ない。
(5)防護カバー50について:
防護カバー50は、植付具26と作業者の作業位置(本実施の形態では、種芋移植機1の機体の左右方向を基準として、回転テーブル71の左側のスペース)との間を仕切ると共に、回転テーブル71の下面側に突き出した供給カップ72の下端と種芋支持板200との間の空間を覆い、更には回転駆動機構76と作業者の作業位置との間をも仕切るためのカバーであり、回転テーブル71を上から見て、種芋移植機1の左右方向を基準として、回転テーブル71の左側から操縦ハンドル9側を経て右側に至る範囲を略U字型に保護している(図4〜図6参照)。また、防護カバー50は、上部よりも下部の方が外側に拡がった形状をしている。
【0061】
防護カバー50は、第1の固定部材51a、51bと、第2の固定部材52a、52bによって、種芋支持板200の下面にて一端が固定配置された第1取付部材151と、第2取付部材152にそれぞれ固定され、且つ、第3の固定部材53によって、支柱93の外周面の下側に固定された第3取付部材153に固定されている。尚、第1取付部材151の一端は、種芋支持板200の下面において、第1板状部材211に締結部品で固定されており、第2取付部材152の一端は、種芋支持板200の下面において、第2板状部材212に締結部品で固定されている。
【0062】
このように防護カバー50を設けたことにより、作業者が、種芋移植機1の作業位置に居る場合に限らず、作業位置と反対側(本実施の形態では、種芋移植機1の機体の左右方向を基準として、回転テーブル71の右側)に居る場合でも、作業者が植付具26と接触したり、回転する各部の隙間に手などを挟まれることを防止出来る。
【0063】
また、第1板状部材211と第2板状部材212は、種芋支持板200を補強する機能と共に、防護カバー50を取り付ける機能をも兼ね備えているので、部品点数を削減出来る。
【0064】
次に、図11(a)、(b)に基づいて、機体前部に設けられた畝ガイドローラ220の構成とその上下作動構成について説明する。
機体前部に設けたエンジン2は、ミッションケース3に基部を固着したエンジンベース2a上に搭載されているが、該エンジンベース2aの下部にコ字状の軸回動支持部材221をボルトにて固定し、該軸回動支持部材221の左右両側に設けた軸受け孔222にて機体左右方向に設けたガイドローラ支持軸223を左右端が突出する状態で回動自在に貫通支持している。尚、エンジンベース2aと軸回動支持部材221との間に、機体の前後バランスを調節するフロントウエイトをボルトで友締めして設けても良い。
【0065】
ガイドローラ支持軸223の機体左端側には等間隔に多数の左右位置調節用貫通孔224を設け、機体右端側には1個の固定用貫通孔225を設けている。
ガイドローラ支持軸223の機体左端側に左右位置調節部材226の筒状ボス227を貫通させ、左右位置を調節して固定ピン228を筒状ボス227に設けた位置固定用貫通孔227aを貫通して左右位置調節用貫通孔224に差し込んで左右位置を固定している。また、左右位置調節部材226の下部には、支点用貫通孔229と該支点用貫通孔229を中心とした円弧状貫通孔230を設けている。そして、左右傾斜調節ボス231の上部支持軸232を左右位置調節部材226の支点用貫通孔229に貫通させ、左右傾斜調節ボス231の下部固定用ボルト233を左右位置調節部材226の円弧状貫通孔230に貫通させて、左右傾斜調節ボス231を左右傾斜調節してナット234にて左右位置調節部材226に左右傾斜調節ボス231を固定している。
【0066】
畝ガイドローラ220を回転自在に支持するガイドローラ回転支持具235の上部縦軸236には等間隔に多数の上下位置調節用貫通孔237を設けている。そして、該上部縦軸236を左右傾斜調節ボス231の筒部231aに貫通させ、上下位置を調節して固定ピン238を筒部231aに設けた位置固定用貫通孔231bを貫通して上下位置調節用貫通孔237に差し込んで上下位置を固定している。
【0067】
一方、ガイドローラ支持軸223の機体右端側に上昇用ボス240を貫通させ、固定ピン241を上昇用ボス240に設けた位置固定用貫通孔242を貫通して固定用貫通孔225に差し込んで固定している。そして、上昇用ボス240に上方に向けて設けたアーム243と前記右走行エクステンションケース10に取り付けられた上側アーム10aとを連係ロッド244にて連結している。尚、連係ロッド244の上側アーム10aとの連結部には、融通長孔245が設けられている。
【0068】
そして、右前輪4は、トーアウトした状態(機体直進時に、若干、右前輪4が右向きの状態)で回転自在に設けられている。
従って、機体の左側のみに設けられた畝ガイドローラ220を上下位置、左右位置及び左右傾斜調節して畝Uの側面に接当して回転するように位置調節して、畝Uをまたぐように左右前輪4及び左右後輪5が畝間を走行して畝Uに移植作業を行なう。この時、畝ガイドローラ220は機体の左側のみに設けられた簡潔な構成であるが、右前輪4をトーアウトさせているので、機体は畝ガイドローラ220によって畝Uに沿って適切に進行し、良好な移植作業が行える。
【0069】
また、畝U終端部では、油圧昇降シリンダ16を伸長作動させて、横杆19、後輪昇降ロッド20,21、左右上側アーム10aを介してミッションケース3の左右の出力軸回りに左右走行チェーンケース11を下向きに回動させ左右後輪5を下動して機体を上昇させて、機体の旋回を行なうが、この時、左右後輪5の下動に伴って右上側アーム10a、連係ロッド244、上昇用ボス240,ガイドローラ支持軸223,左右位置調節部材226,左右傾斜調節ボス231及びガイドローラ回転支持具235を介して畝ガイドローラ220も上昇するので、機体の旋回が容易に且つ適切に行なえる。
【0070】
尚、畝Uに移植作業時の左右後輪5の上下動では、連係ロッド244の上側アーム10aとの連結部に設けた融通長孔245にて畝ガイドローラ220が上昇することはなく、適正な移植作業が行なえる。即ち、機体旋回時に、通常の移植作業時の左右後輪5の下動範囲以上に最大限まで左右後輪5を下動させた時のみ、畝ガイドローラ220が上昇する。
【0071】
また、畝ガイドローラ220を上昇させる連係機構を右後輪5の右上側アーム10aと連係したことにより、右後輪5側には機体を左右水平に維持する機構である水平用油圧シリンダ22が設けられていないので(機体を左右水平に維持する機構である水平用油圧シリンダ22によって上下作動するのは左後輪5のみである)、機体旋回時に畝ガイドローラ220は適切なタイミングで上昇し、機体の旋回操作が容易で且つ適切に行なえる。
【0072】
次に、本実施の形態の種芋移植機1の種芋供給部70及び植付具26を中心とした動作を、説明する。
まず、種芋載置台30の副載置枠33を主載置枠32の後部に引出した状態として、主載置枠32に種芋Cを収容したコンテナAを機体左右方向に3個並べて載置し、副載置枠33に種芋Cを収容したコンテナAを1個載置する。
【0073】
次に、エンジン2を始動して、植付作業の開始に伴って、種芋移植機1は畝Uをまたぐようにしてゆっくりと前進する。一方、エンジン2の回転が回転力伝達部材76cに伝達されて、第1歯車76e1及び第2歯車76e2を介して、回転テーブル71が反時計方向に滑らかに回転する。
【0074】
作業者は、種芋移植機1の左側の作業スペースに位置して、機体の前進に歩調を合わせながら、回転テーブル71の回転に伴って回転する供給カップ72の内、安全カバー40が設置されている所定位置G(図3参照)を通過して、すでに種芋Cが植付具26側に供給されて空になった供給カップ72に対して、副載置枠33に載置したコンテナAから種芋Cを取出して1つずつ補給する。これを繰り返すことにより、8個の供給カップ72には順次、種芋Cが補給されることになる。この時、作業者は、副載置枠33に載置したコンテナAから種芋Cを取出して、側方の種芋供給部70の各供給カップ72に容易に入れることができて、作業性良く且つ作業効率良く移植作業を行なうことができる。なお、副載置枠33に載置したコンテナAの種芋Cが無くなった時は、主載置枠32上の種芋Cが入ったコンテナAを置き換えて作業を続行する。
【0075】
このように、作業者が種芋Cを補給する作業中において、所定位置Gを通過する供給カップ72の中に、誤って指などを入れることを防止できる。仮に、この安全カバー40が設置されていないとすると、供給カップ72の内部に誤って指などを入れた場合、その供給カップ72の下面側の開口縁部と供給口201の内周縁部との間に指などが挟まれる可能性がある。
【0076】
更に、安全カバー本体42は弾性変形可能な部材で構成されているので、仮に、供給カップ72と安全カバー本体42の間に作業者が誤って指を挟んだとしても、安全カバー本体42が指に与えるダメージが少ないので安全性が高いと言える。
【0077】
また、種芋支持板200の上面では、種芋Cが供給カップ72の回転に伴って転がっているので、様々なゴミが溜まりやすい。この様なゴミは、回転テーブル71の裏面に取り付けられたスクレーパ73の回転によってかき集められ、スクレーパ73が、種芋支持板200に設けられたスリット状の長孔部204を通過する際に、その長孔部204から下方に吐き出されると共に、スクレーパ73の傾斜角αに起因して、種芋支持板200の外周側からも常に排出される。
【0078】
一方、供給カップ72の下端の開口は、回転テーブル71の回転により供給カップ72が所定の位置G(図3参照)に来たときを除いて、種芋支持板200により閉じられている。
【0079】
即ち、図4に示すように、所定位置Gを通過する供給カップ72が、供給口201の直ぐ上を通過し始めてからある程度の距離を移動した時(供給カップ72の下端の開口の中心が供給口201の中心と合致するよりも手前の位置に移動したとき)、それまで種芋支持板200の表面を、供給カップ72の回転と共に転がっていた種芋Cは、供給口201の場所まで移動すると、種芋支持板200による支えが無くなっているために、下方へ落下し始める。そして、その種芋Cは、丁度、上死点位置(図1に示す位置)に来た植付具26に供給されて、その後、植付具26が軌跡Bを描いて下方に移動して、最下端に来た時に圃場に種芋Cの植付が行われる。
【0080】
この時、大きな種芋Cを移植する場合、作業者は、供給カップ72の内部円状空間を円形平面部71bの貫通孔71cに合致させた状態でボルトBo・ナットNaにて供給カップ72を円形平面部71bに固定しておく。すると、供給カップ72の内部円柱状空間は最大の貫通孔となり、供給カップ72内に作業者が入れた大きな種芋Cは、供給カップ72の下端の開口の中心が供給口201の中心と合致した時に、供給口201から、丁度、上死点位置に来た植付具26に適切に供給されて、良好な移植作業が行なえる。
【0081】
また、小さな種芋Cを移植する場合、作業者は、供給カップ72の切り欠き部72dが円形平面部71bに嵌り込むように供給カップ72を回転支持軸72b回りに回転テーブル71の回転方向後方側に向けて回動させてボルトBo・ナットNaにて固定すると、移植する小さい種芋Cの大きさに合わせて供給カップ72の内部貫通孔の大きさを小さく調節することができる。よって、供給カップ72内に入れられた小さな種芋Cは、供給カップ72の内部貫通孔内に丁度収まり、然も、供給カップ72を回転テーブル71の回転方向後方側に向けて移動させて調節するので、小さな種芋Cは円形平面部71bの貫通孔71cの回転テーブル71の回転方向後方側で押されて移動することとなり、小さな種芋Cでも円形平面部71bの貫通孔71cと種芋支持板200の供給口201とが合致した時に、丁度、上死点位置に来た植付具26内に適切に供給されることとなり、小さな種芋Cが植付具26内に入らずに外にこぼれてしまって移植作業ができなくなるような事態を回避し、常に適切な移植作業が行える。
【0082】
即ち、植付具26は、図1に示すように、前後方向に2分割して下部を開閉する構成となっている。これにより、回転テーブル71の供給カップ72から受け継いだ一個の種芋Cを収容保持した状態で、上死点位置から軌跡Bで示すように下降し(図1参照)、種芋植付位置で下部を前後に開いて畝Uに植付穴を形成すると共にその植付穴に種芋Cを供給して植え付ける。その後、再び、植付具26は上死点位置に戻る。植付具26の軌跡Bで示す動作は(図1参照)、回転テーブル71の回転動作と同期しており、供給カップ72が所定位置Gに来た時に(図3参照)、植付具26は上死点位置に戻るように構成されている。
【0083】
尚、回転テーブル71の下方にある各駆動部を覆うように防護カバー50が、作業者の作業位置との間を仕切るように配置されているので、作業者が駆動部と接触することを防止出来る。
【0084】
また、植付具26の前方には圃場面感知プレート36が設けられている。圃場面感知プレート36は左右方向の回動支点軸36a回りに回動可能に設けられ、接地することによる圃場面感知プレート36の回動に伴って種芋植付装置60により所定の植付深さとなるように後輪5を昇降する。
【0085】
鎮圧輪8は、種芋植付位置の後方位置において設けられ、横軸37回りに上下揺動自在な鎮圧輪支持フレーム38に軸受支持されている。また、この鎮圧輪8は、種芋移植機1の進行に伴って畝面を転動し、種芋が植え付けられた後の移植穴の周囲の土を崩落させて穴を埋め戻すと共に、植付具26で移植穴の前後、特に後方に盛り上がった土手を平らに鎮圧する。
【0086】
これにより、移植した種芋の周辺の土壌を平らにすることができ、ジャガイモの成育を良好にできる。
以上のように、本実施の形態の種芋移植機によれば、供給カップ72毎に開閉蓋を設けた従来の構成に代えて、種芋支持板200を備える構成を採用したことにより、簡単な構成で部品点数も削減出来る、種芋移植機を提供出来た。
【0087】
また、安全カバー40や防護カバー50を備えたことにより、作業者はより安全に作業が出来る。
尚、上記実施の形態では、振り子式の左右傾斜センサ23を設けて、この左右傾斜センサ23の検出により水平用油圧シリンダ22を作動させ機体を左右水平に維持する構成の場合について説明したが、これに限らず例えば、左右傾斜センサ23を備えずに、水平用油圧シリンダ22を作業者自身が手動でコントロールするためのマニュアル式の水平レバーが、作業者が種芋を供給カップ72に補給する作業位置(作業スペース)側であって、後輪5の上方に配置されている構成でも良い。
【0088】
この場合、油圧切替バルブ部17に備えられた左右傾斜バルブを、水平レバーによって操作することにより、水平用油圧シリンダ22が作動する構成である。即ち、作業者が水平レバーを左右方向に移動させることにより、左右傾斜バルブを操作する構成である。
【0089】
また、本発明の移植対象物の一例として上記実施の形態では、ジャガイモ等の種芋を移植する場合について説明したが、これに限らず例えば、種芋以外にラッキョウの球根等の球状体を移植する場合においても本発明が適用できるものであり、上記と同様の効果を発揮する。
【0090】
また、上記実施の形態では、種芋を移植する場合について説明したが、これに限らず例えば、供給カップ72を、野菜苗の標準のカップサイズに構成しておくことにより、野菜苗も植え付け可能となる。
【0091】
(実施の形態2)
種芋Cの大きさに係わらず適正な移植作業が行なえる回転テーブル71の第2の実施形態について説明する。
【0092】
円形平面部71bの外周寄りに等間隔に開けられた8つの貫通孔71cに、両端が開放された円筒状の供給カップ72がそれぞれ貫通した状態で設けられている。
各供給カップ72は、その内部に入れられた種芋Cを回転テーブル71の回転方向後方側に向けて押さえつけるイモ押さえ体300を設けた構成となっている。
【0093】
イモ押さえ体300は、基部300aを供給カップ72近くの円形平面部71bに回動支軸301にて回動自在に枢支している。そして、その先端部を供給カップ72内に配置して、先端部に押さえ部302を形成している。この押さえ部302は、回転テーブル71の回転方向後方側に向けて傾斜した板状体で構成されており、図13に示すように、押さえ部302が種芋Cを押さえつけた状態では種芋Cは下方に向けて押えつけられた状態となっており、種芋Cが不用意に動くことを防止して、種芋Cが安定良く位置決めされた状態となっている。
【0094】
押さえ部302は連結部303を介して基部300aと一体形成されており、該連結部303が供給カップ72に形成した切り欠き溝72eを貫通して、基部300aと共に押さえ部302が回動する構成となっている。
【0095】
基部300aには、回動支軸301に対して押さえ部302と反対側に突出する従動カム304が一体形成されており、該従動カム304が対向する円形平面部71bの回転中心側には固定カム305が種芋支持板200に固定されて設けられている。該固定カム305の従動カム304が接当する外周形状は、平面視で種芋支持板200の供給口201に対向する部位に凹んだ形状の凹部305aが形成されており、他の部位は円形305bである。
【0096】
また、基部300aの従動カム304側上面には第1バネ係止ピン306が設けられており、本体部を回動支軸301に貫通支持させた巻きバネ307の一端側を該第1バネ係止ピン306に係合させ、他端側を円形平面部71bに固定の第2バネ係止ピン308に係合させて、基部300aと一体の従動カム304が該巻きバネ307によって付勢されて常に固定カム305に接当する構成となっている。
【0097】
よって、従動カム304が固定カム305の円形305bに接当している間は、イモ押さえ体300の押さえ部302は供給カップ72の内壁面に接当した退避状態となっており、作業者は容易に供給カップ72内に種芋Cを入れることができて作業性が良い。
【0098】
一方、従動カム304が固定カム305の凹部305aに接当している間は、イモ押さえ体300の押さえ部302は供給カップ72の内壁面から離れて中心側に巻きバネ307の付勢力で付勢された状態となっており、供給カップ72内に入れられた種芋Cを回転テーブル71の回転方向後方側の供給カップ72壁面に押さえつけている。
【0099】
従って、回転テーブル71の回転にともなって、供給カップ72が供給口201の上に来る直前から供給カップ72が供給口201と合致した直後までの間、供給カップ72内に入れられた種芋Cはイモ押さえ体300の押さえ部302によって回転テーブル71の回転方向後方側の供給カップ72壁面に押さえつけられた状態となっており、種芋Cの大きさに係わらず、供給カップ72と種芋支持板200の供給口201とが合致した時に軌跡Bの最上昇位置にある植付具26内に適切に供給されることとなり、種芋Cが植付具26内に入らずに外にこぼれてしまって移植作業ができなくなるような事態を回避し、常に適切な移植作業が行える。また、回転テーブル71の回転方向後方側に向けて傾斜した押さえ部302は、種芋Cを押さえつけた状態では種芋Cを下方に向けて押えつけており、供給カップ72が供給口201と合致して種芋Cが下方に落下供給される際に、種芋Cを下方に向けて付勢した状態なので、種芋Cはこの付勢力で適確に且つ即座に下方の植付具26内に供給されて常に適切な移植作業が行える。
【0100】
(実施の形態3)
種芋Cの大きさに係わらず適正な移植作業が行なえる回転テーブル71の第3の実施形態について説明する。
【0101】
円形平面部71bの外周寄りに等間隔に開けられた8つの貫通孔71cに、両端が開放された円筒状の供給カップ72がそれぞれ貫通した状態で設けられている。
各供給カップ72は、その内部に入れられた種芋Cを回転テーブル71の回転方向後方側に位置決めするイモ位置規制体310を設けた構成となっている。
【0102】
イモ位置規制体310は、上端基部311を供給カップ72内壁上端部に螺子等の固定具312にて固定し、下部は自由に動ける構成とし、平板状のゴム板にて形成している。そして、供給カップ72にイモ位置規制体310を固定した位置から下端までの長さLは、供給カップ72にイモ位置規制体310を固定した位置から供給カップ72下端までの高さHよりも長くなっており、然も、イモ位置規制体310下部の幅Wは種芋支持板200の供給口201の直径Dよりも小さく構成されている。
【0103】
従って、供給カップ72が供給口201の上に合致した位置では、イモ位置規制体310の下部は供給口201を貫通して下方に真直ぐ垂れ下がった状態となり、供給カップ72内に入れられた種芋Cは供給口201から落下し下方の植付具26内に供給されて適切な移植作業が行える。
【0104】
一方、種芋Cが供給口201から落下した後の回転テーブル71の回転にともなって、供給カップ72が供給口201上を通過するにつれて、真直ぐ垂れ下がった状態のイモ位置規制体310の下部は、供給口201の縁で持ち上げられ、供給カップ72が供給口201上を通過した時点で、イモ位置規制体310はその下部が回転テーブル71の回転方向後方側に位置する傾斜状態でその下端が回転テーブル71の上面に摺接した状態となる。このイモ位置規制体310が傾斜状態の時に、作業者が種芋Cを供給カップ72に入れると、種芋Cは傾斜状態のイモ位置規制体310によって供給カップ72内の回転テーブル71の回転方向後方側の供給カップ72壁面に接当して安定して位置するように規制される。
【0105】
すると、供給カップ72内に入れられた種芋Cは、種芋Cの大きさに係わらず、イモ位置規制体310によって供給カップ72内の回転テーブル71回転方向後方側に位置するので、供給カップ72と種芋支持板200の供給口201とが合致した時に軌跡Bの最上昇位置にある植付具26内に適切に供給されることとなり、種芋Cが植付具26内に入らずに外にこぼれてしまって移植作業ができなくなるような事態を回避し、常に適切な移植作業が行える。
【0106】
然も、イモ位置規制体310の下端が回転テーブル71の上面に摺接した状態で各供給カップ72は種芋支持板200上を回転するので、イモ位置規制体310の下端が種芋支持板200上のゴミや泥を掃除するスクレーパの役を兼用し、長年に亘り、適切な移植作業が行える。
【0107】
(実施の形態4)
種芋Cの大きさに係わらず適正な移植作業が行なえる回転テーブル71の第4の実施形態について説明する。
【0108】
円形平面部71bの外周寄りに等間隔に開けられた8つの貫通孔71cに、両端が開放された円筒状の供給カップ72がそれぞれ貫通した状態で設けられている。
第3の実施形態と同様に、各供給カップ72は、その内部に入れられた種芋Cを回転テーブル71の回転方向後方側に位置決めするイモ位置規制体320を設けた構成となっている。
【0109】
この実施形態のイモ位置規制体320は、上部横軸321に複数の縦杆322を櫛歯状に設けた構成で、上部横軸321を供給カップ72内壁上端部に回動自在に支持し、下部は自由に揺動する構成としている。そして、供給カップ72にイモ位置規制体320の上部横軸321を枢支した位置から下端までの長さLは、供給カップ72にイモ位置規制体320を枢支した位置から供給カップ72下端までの高さHよりも長くなっており、然も、イモ位置規制体310下部の幅Wは種芋支持板200の供給口201の直径Dよりも小さく構成されている。
【0110】
従って、供給カップ72が供給口201の上に合致した位置では、イモ位置規制体320の下部は供給口201を貫通して下方に真直ぐ垂れ下がった状態となり、供給カップ72内に入れられた種芋Cは供給口201から落下し下方の植付具26内に供給されて適切な移植作業が行える。
【0111】
一方、種芋Cが供給口201から落下した後の回転テーブル71の回転にともなって、供給カップ72が供給口201上を通過するにつれて、真直ぐ垂れ下がった状態のイモ位置規制体320の下部は、供給口201の縁で持ち上げられ、供給カップ72が供給口201上を通過した時点で、イモ位置規制体320はその下部が回転テーブル71の回転方向後方側に位置する傾斜状態でその下端が回転テーブル71の上面に摺接した状態となる。このイモ位置規制体320が傾斜状態の時に、作業者が種芋Cを供給カップ72に入れると、種芋Cは傾斜状態のイモ位置規制体320によって供給カップ72内の回転テーブル71の回転方向後方側の供給カップ72壁面に接当して安定して位置するように規制される。
【0112】
すると、供給カップ72内に入れられた種芋Cは、種芋Cの大きさに係わらず、イモ位置規制体320によって供給カップ72内の回転テーブル71回転方向後方側に位置するので、供給カップ72と種芋支持板200の供給口201とが合致した時に軌跡Bの最上昇位置にある植付具26内に適切に供給されることとなり、種芋Cが植付具26内に入らずに外にこぼれてしまって移植作業ができなくなるような事態を回避し、常に適切な移植作業が行える。
【0113】
然も、イモ位置規制体320の下端が回転テーブル71の上面に摺接した状態で各供給カップ72は種芋支持板200上を回転するので、イモ位置規制体320の下端が種芋支持板200上のゴミや泥を掃除するスクレーパの役を兼用し、長年に亘り、適切な移植作業が行える。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明にかかる移植機は、供給カップの開閉底蓋を不要としたことで、部品点数を削減出来る上に、移植対象物を適正且つ円滑に供給できる構成としながら、また、更に安全性を確保出来るという効果を有し、種芋移植機や球根移植機等として有用である。
【符号の説明】
【0115】
26 植付具
71b 平面部(円形平面部)
71c 貫通孔
72 供給カップ
72d 欠き部
200 板状部材(種芋支持板)
201 供給口
300 押さえ体(イモ押さえ体)
310 位置規制体(イモ位置規制体)
C 移植対象物(種芋)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植対象物(C)が補給される上端と下端に開口を有する複数個の供給カップ(72)をループ状に移動自在に構成し、移植対象物(C)を下方に供給する供給口(201)が形成された板状部材(200)をループ状に移動する供給カップ(72)の下側に固定配置し、該供給口(201)から供給される移植対象物(C)を上動位置で受けて下動位置で圃場に植え付ける植付具(26)を設けた移植機において、供給カップ(72)内部の移植対象物(C)を収納する収納部を供給カップ(72)が移動する方向の前側の収納端部を変更して収納部の大きさを変更自在に構成したことを特徴とする移植機。
【請求項2】
平面部(71b)に設けた複数の貫通孔(71c)に各々供給カップ(72)を配置し、該供給カップ(72)内に平面部(71b)が入り込む切り欠き部(72d)を設け、供給カップ(72)が移動する方向の前側の平面部(71b)が供給カップ(72)内に入り込むように供給カップ(72)の位置を調節して供給カップ(72)の収納部の大きさを変更することを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項3】
供給カップ(72)内に入れられた移植対象物(C)を供給カップ(72)の移動方向後方側に移動させる押さえ体(300)を設けたことを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項4】
押さえ体(300)は、供給カップ(72)が供給口(201)の上に来る直前から供給カップ(72)が供給口(201)と合致するまでの間、移植対象物(C)を供給カップ(72)の移動方向後方側に押え、それ以外の移動区間は、供給カップ(72)の移動方向前側に退避していることを特徴とする請求項3記載の移植機。
【請求項5】
押さえ体(300)の押さえ部(302)を供給カップ(72)の移動方向後方側に向けて傾斜した状態で供給カップ(72)内の移植対象物(C)を押さえる構成としたことを特徴とする請求項3または請求項4記載の移植機。
【請求項6】
供給カップ(72)が供給口(201)と重なる時以外は供給カップ(72)内に入れられた移植対象物(C)を供給カップ(72)の移動方向後方側に位置決めし、供給カップ(72)が供給口(201)と重なる時は該移植対象物(C)の位置決めを解除する位置規制体(310)を設けたことを特徴とする請求項1記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−115188(P2012−115188A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266785(P2010−266785)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】