説明

移植機

【課題】本発明では、植付体が前後に開いて移植物を土中に残して植え付ける移植機において、植付動作に伴って移植物を収容する植付体内に付着する泥土を無くして、確実に移植物の植付動作を継続出来る移植機を提供することを課題とする。
【解決手段】植付ホッパ部7bが昇降して移植物を収容する前植付体16Fと後植付体16Bが最降下位置で前後に開いて移植物を土中に残して上昇しながら前植付体16Fと後植付体16Bを閉じる移植機において、植付ホッパ部7bの上昇の際に開いた前植付体16Fと後植付体16Bの内部に横側方からスクレーパ38が侵入し、上昇に伴って前植付体16Fと後植付体16Bが閉じるまでに前記スクレーパ38が退出する構成にしたことを特徴とする移植機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種芋等球根類や野菜苗類の移植物を圃場に植付ける移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業者によって供給された移植物を自動で圃場に植付ける移植機が知られている。例えば、特許文献1に示されるように、種芋を貯留する種芋載せ台と該種芋載せ台から種芋が移動して収容される収容部と該収容部の下方に配置された複数の供給カップを設けた供給部と該供給部から受け取った種芋を圃場に植付ける植付装置を装備した球根類の移植機がある。作業者は、供給部の中央上方に配置された収容部から種芋を取出して供給部の各供給カップに種芋を入れるだけで種芋の植付作業が行うことができて、作業性が良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−51613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移植機は、植付装置の植付カップが最上昇位置で移植物を植付カップ内に受け取り降下して植付カップが土中に差し込まれて最降下位置で植付カップを左右或いは前後に開くことで移植物を土中に残し、その後に上昇することで一連の植付動作を行うが、圃場の土に粘り気が有ると植付カップ内に土が多く付着して移植物を植付カップ内に補給できなくなったり最降下位置で植付カップを開いても土中に移植物を残さずに土と共に移植物を植付カップ内に残したままで上昇してしまって植付動作が失敗することが有る。
【0005】
そこで、本発明では、植付体が前後に開いて移植物を土中に残して植え付ける移植機において、植付動作に伴って移植物を収容する植付体内に付着する泥土を無くして、確実に移植物の植付動作を継続出来る移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、植付ホッパ部7bが昇降して移植物を収容する前植付体16Fと後植付体16Bが最降下位置で前後に開いて移植物を土中に残して上昇しながら前植付体16Fと後植付体16Bを閉じる移植機において、植付ホッパ部7bの上昇の際に開いた前植付体16Fと後植付体16Bの内部に横側方からスクレーパ38が侵入し、上昇に伴って前植付体16Fと後植付体16Bが閉じるまでに前記スクレーパ38が退出する構成としたことを特徴とする移植機とする。
【0007】
この構成で、前植付体16Fと後植付体16Bが最降下位置で前後に開いて移植物を土中に残す際に前植付体16Fと後植付体16Bの内部に泥土が付着しても、前植付体16Fと後植付体16Bが開いたままで上昇する際に左右方向の側部から前植付体16Fと後植付体16Bの内部に侵入したスクレーパ38が前植付体16Fと後植付体16Bの上昇に伴って泥土を掻き落とすようになって、次の植付動作で、最上昇位置で閉じた前植付体16Fと後植付体16B内に移植物を確実に供給出来て、前植付体16Fと後植付体16Bを開いた際に泥土が内部に付着していないので、移植物を土中に残して植付が行われる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、スクレーパ38を先端に装着した揺動支持アーム36を前植付体16Fと後植付体16Bの前側に設ける植付伝動ケース2bから揺動して前植付体16Fと後植付体16Bの内部に横側方から侵入すべくしたことを特徴とする請求項1に記載の移植機とする。
【0009】
この構成で、スクレーパ38の揺動支持アーム36やその駆動部が前植付体16Fと後植付体16Bの前側に位置するので、植え付けた苗を倒すようなことがなく、良好な植え付けが行える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、スクレーパ38を先端に装着した揺動支持アーム57を前植付体16Fと後植付体16Bの側部でハンドルフレーム3に取り付けるスクレーパブラケット55に揺動可能に設け、前植付体16Fと後植付体16Bの昇降動作に連動してスクレーパ38を前植付体16Fと後植付体16Bの内部に横側方から侵入すべくしたことを特徴とする請求項1に記載の移植機とする。
【0011】
この構成で、揺動支持アーム57を取り付けるスクレーパブラケット55が前植付体16Fと後植付体16Bの側部に位置しているので、前植付体16Fと後植付体16Bの植え付けた苗を倒すことなく、前植付体16Fと後植付体16Bの昇降動作に伴ってスクレーパ38を前植付体16Fと後植付体16Bの内部に横側方から侵入させて泥土を確実に掻き落とす。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前植付体16Fと後植付体16Bの内部に横側方から侵入するスクレーパ38と前植付体16Fの外周面に圧接する前スクレパ49を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の移植機とする。
【0013】
この構成で、前植付体16Fと後植付体16Bの内部をスクレーパ38で掻き落とすだけでなく、前植付体16Fの前側面に付着する泥土を前スクレパ49で掻き落とすようになる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前植付体16Fと後植付体16Bの内部に横側方から侵入したスクレーパ38を前後に揺動させたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の移植機とする。
【0015】
この構成で、前植付体16Fと後植付体16Bの内部でスクレーパ38が前後に揺動することで、泥土の掻き落としが促進される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1乃至請求項5に記載の発明で、前後方向に開閉する前植付体16Fと後植付体16Bの内部にスクレーパ38が横側方から侵入して内部に付着する泥土を効果的に掻き落として前植付体16Fと後植付体16Bの植付動作が確実に継続する。特に請求項4に記載の発明で、前植付体16Fの前側面に付着する泥土も前スクレパ49で掻き落として植付動作が軽快になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施例を示す移植機の側面図である。
【図2】第1実施例を示す移植機の平面図である。
【図3】植付装置の作動構造を示す拡大側面図である。
【図4】スクレープ装置の拡大側面図である。
【図5】スクレープ装置の拡大平面図である。
【図6】スクレープ装置の別実施例拡大側面図である。
【図7】別実施例スクレープ装置の拡大側面図である。
【図8】別実施例スクレープ装置の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について、以下に、図面を参照しつつ説明する。
先ず、この発明の第1実施例を図1乃至図5に示す歩行型移植機について詳細に説明する。
【0019】
移植機1は、機体前端部に搭載したエンジン2及び該エンジン2に直結された主伝動ケース2a、機体前部を案内支持する左右の前輪4,4、左右の伝動支持部5a,5aを介して機体高さと左右高さを調整可能に駆動支持する左右の駆動輪5,5、主伝動ケース2aの後部から一体的に延びるハンドルフレーム3、その後端に一体形成した歩行操縦用の操縦ハンドル3aよりなる走行部1aと、ジャガイモや里芋等の種芋やラッキョウ等を含む球根類やネギ苗等の野菜苗類の移植物Aを圃場に植付けるための植付部1bとから構成される。尚、移植機1のエンジン2を設けた側を機体前部、操縦ハンドル3a側を機体後部と謂い、操縦ハンドル3a側の後部に立ってエンジン2側の前部に向かって左側を機体の左側、右側を機体の右側と謂う。
【0020】
植付部1bは、移植物Aを受けて周回軌道6a上を移送する複数個の供給カップ6b…を備える供給装置6、植付け動作する植付ホッパ部7aを備える植付装置7、植付装置7の後方の覆土鎮圧輪8,8等からなり、また、供給装置6の各供給カップ6b…に作業者が入れる移植物Aを貯留する貯留部9を設ける。
【0021】
この植付部1bは、主伝動ケース2aから伝動を受ける植付伝動ケース2bにて植付装置7を駆動し、植付伝動ケース2bから伝動回転軸2cを介して供給装置6を駆動して、該植付装置7及び供給装置6を走行部1aと同期して駆動することにより、貯留部9内の移植物Aを作業者が取出して供給装置6の各供給カップ6b…に1個ずつ入れると、各供給カップ6b…に入れられた移植物Aは周回軌道6a上を移送されて植付装置7上方位置でその底蓋6cが開いて植付装置7内に落下供給されて、植付装置7によって圃場に順次植付けを行うことができる。
【0022】
ここで、植付装置7の駆動構成を詳細に説明する。
植付装置7は、供給装置6の供給カップ6bの底蓋6cが開いて落下供給された移植物Aを受けるロート状上部筒部7aと該上部筒部7aの下方に位置して閉じた状態で内部に移植物Aを保持し、圃場の土中に突入した時に前後に開いて保持した移植物Aを開放し植付ける植付ホッパ部7bを装備している。そして、植付装置7は、前部が植付伝動ケース2bに回動自在に上下前部支持軸17Fに支持されて植付伝動ケース2b内の駆動機構にてその後部が上下方向に作動するリンク機構7cの上下後部支持軸17Bに装着支持されており、植付装置7の上部筒部7aの上部開口部が供給装置6の供給カップ6bの下方位置近くに位置する状態(供給カップ6bの底蓋6cが開いて植付装置7内に移植物Aが落下供給される状態)から、植付装置7の植付ホッパ部7b下部が圃場の土中に突入して前後に開いて保持した移植物Aを開放し植付ける状態に上下動する構成となっている。
【0023】
植付ホッパ部7bは、嘴状の前植付体16Fと後植付体16Bで内部に移植物Aを収納できる構成となっている。そして、前植付体16Fと後植付体16Bは、共にその上部が植付装置7のフレーム7dに設けた前支持軸18Fと後支持軸18Bに前後方向に回動自在に各々枢支されている。そして、前植付体16Fと後植付体16Bには、各々、回動作動用前アーム19Fと回動作動用後アーム19Bが一体回動するように装着されている。
【0024】
尚、回動作動用前アーム19Fには係止ピン7gの基部が溶接固着され、係止ピン7gの先端部は回動作動用後アーム19Bに設けた係合孔7hに係合し、回動作動用前アーム19Fによる前植付体16Fの前方開放回動に連動して、回動作動用後アーム19Bが回動して後植付体16Bが後方開放回動する構成となっている。
【0025】
一方、回動作動用前アーム19Fの前部に上方に向けて設けた連係アーム部20Fの上部が、リンク機構7cの上後部支持軸17Bに自由回動自在に装着されたL字状の中継アーム7iの前端部に連結されている。そして、リンク機構7cの上前部支持軸17Fに矢印イ方向に付勢された従動アーム7jの先端に従動カム7kを回転自在に設け、従動アーム7jの先端部と中継アーム7iの下端部を連結ロッド7lで連結している。リンク機構7cの下前部支持軸17Fには、植付装置7の上下作動に連動して回転する駆動カム7mが設けられており、該駆動カム7mの外周面には上記の従動カム7kが接当している。
【0026】
従って、植付ホッパ部7bが圃場面から供給カップ6bの下方位置近くに上動して来る時(最上動位置に来る手前で)に従動カム7kは駆動カム7mの最少径に接当する状態となって、前植付体16Fと後植付体16Bは閉じて、植付ホッパ部7b内部に移植物Aを保持できる状態となる。そして、最上動位置で供給カップ6bの底蓋6cが開いて植付ホッパ部7b内に移植物Aが落下供給された後、植付ホッパ部7bが圃場の土中に突入するまで下動した時に、従動カム7kは駆動カム7mの最大径に接当する状態となって、従動アーム7jが矢印ロ方向に揺動して連結ロッド7lを引き、中継アーム7i及び回動作動用前アーム19Fを介して前植付体16Fの前方開放回動に連動して、回動作動用後アーム19Bが回動して後植付体16Bが後方開放回動し、前後に開いて保持した移植物Aを開放して圃場中に植付ける。
【0027】
また、回動作動用前アーム19Fと回動作動用後アーム19Bの各上部には各々把持部7nが設けられており、両把持部7nを握り締めることにより、前植付体16Fを前方開放回動させ、後植付体16Bを後方開放回動させることができる。即ち、機体を止めた状態で、両把持部7nを握り締め操作することにより、手動で植付ホッパ部7bの前植付体16F及び後植付体16Bを開放回動させて、植付ホッパ部7b内部に溜まった泥土やゴミ等を容易に掃除することができる。
【0028】
図4と図5に示す35は植付ホッパ部7b内部に付着した泥土を掻き落とすスクレープ装置であって、揺動支持アーム36の下端部にボルト37にて着脱自在に固定したスクレーパ38を設け、揺動支持アーム36の上端近くを植付伝動ケース2bに立設した支持軸43に回動可能に設ける支持具41にピン42で枢支し、先端部に作動従動カムローラ39を取り付けている。スクレーパ38は、ゴム板や樹脂板で戦後端側を上方へ湾曲させている。
【0029】
植付伝動ケース2bから突出した駆動軸11に作動駆動カム40を設けて、揺動支持アーム36の支持具41の作動アーム44の先端に設けるアーム従動カムローラ45を引張バネ47の張力で作動駆動カム40に当接して、作動駆動カム40の回転で揺動支持アーム36が上下に揺動する。また、作動駆動カム40の側面にサイドカム46を突設し、揺動支持アーム36が下方から上方へ揺動する際に前記揺動支持アーム36の作動従動カムローラ39が当接して揺動支持アーム36を横へ揺動させる。揺動支持アーム36は引張バネ47で横揺動から元に引き戻すようになる。なお、揺動支持アーム36を枢支するピン42が作動従動カムローラ39の近くにあるために、サイドカム46の隆起が小さくてもスクレーパ38が大きく左右に揺動する。
【0030】
この揺動支持アーム36の揺動は、植付装置7の昇降動作と連動し、植付装置7の降下に伴ってスクレーパ38が植付ホッパ部7bに当たらないように横へ逃げながら、前植付体16Fと後植付体16Bが前後に開いて内部に保持していた苗を圃場に植付けた後に開いたままで上昇する過程で、スクレーパ38が水平から後上がりの状態で前植付体16Fと後植付体16Bの内部に横から嵌り込んで留まり、さらに前植付体16Fと後植付体16Bが上昇することで内部の泥土を掻き落とすように作用する。作動駆動カム40のカム形状によってスクレーパ38が先に前植付体16F側の前に移動して前植付体16Fの内面に付着する泥土を掻き落とし、後で後植付体16B側の後に移動して後植付体16Bの内面に付着する泥土を掻き落とすようになる。
【0031】
そして、前植付体16Fと後植付体16Bが閉じる前にスクレーパ38が側方へ移動して前植付体16Fと後植付体16Bの内部から脱出してそのままで上昇して上死点で植付ホッパ部7bが再度上昇するまで停止待機する。
【0032】
図6に示す実施例では、揺動支持アーム36のスクレーパ38近くに、前スクレパ49を設けたスクレパアーム48を取付軸50で揺動支持アーム36に枢支しトーションスプリング53でスクレーパ38に向けて付勢している。このスクレパアーム48にはワイヤ51が取り付けられて、スクレーパ38が前植付体16Fと後植付体16Bの間に嵌り込む際にスクレパアーム48を前側に引いて前スクレパ49が邪魔にならないようにし、スクレーパ38が前植付体16F内に侵入するとトーションスプリング53で前スクレパ49を前植付体16Fの外周面に当接する。
【0033】
この構成では、スクレーパ38が前植付体16Fと後植付体16Bの内部の泥土を掻き落とすと同時に前スクレパ49が前植付体16の前外側の泥土も掻き落とすようになる。
図7と図8には、スクレープ装置35の別実施例を示している。
【0034】
昇降する植付ホッパ部7bの略真横位置でハンドルフレーム3にスクレーパブラケット55を設け、このスクレーパブラケット55に前下方に向かう枢支軸56で揺動支持アーム57のアームブラケット61を軸支し、揺動支持アーム57に設ける横軸59にスクレーパ38を固定した第二スクレーパアーム58を軸支している。第二スクレーパアーム58はスクレーパ38が前下がり状態にトーションスプリング60で保持しているが、スクレーパ38が前植付体16Fと後植付体16Bの間に嵌り込んで該前植付体16Fと後植付体16Bが昇降すると水平に姿勢変更して泥土を掻き落とし易くなる。
【0035】
スクレーパブラケット55の上方でハンドルフレーム3に固定の前後方向の支持軸63にカムプレート65を設けたカムアーム64を設け、このカムアーム64と前記アームブラケット61の先端をリンク62で連結している。カムプレート65の下端がローラ66を導くように傾斜している。
【0036】
植付装置7の植付ホッパ部7bにローラ66を設け、このローラ66が前記カムプレート65に当接してカムアーム64を回動すると、リンク62で連結したアームブラケット61が回動して、スクレーパ38を前植付体16Fと後植付体16Bの間に横下方から植付ホッパ部7bの移動軌跡に沿って交差して嵌り込ませ、所定幅の昇降で嵌り込み位置を維持し、前植付体16Fと後植付体16Bの昇降で内部の泥土を掻き落とすようになる。
【0037】
なお、スクレーパブラケット55は、ハンドルフレーム3の外側に位置して植付ホッパ部7bの昇降動作に支障とならない。
また、スクレーパ38の前植付体16Fと後植付体16Bの間への侵入は、植付ホッパ部7bの昇降に同期しているために、植付速度を変更しても追従する。
【0038】
次に、貯留部9を詳細に説明すると、貯留部9は、供給装置6の前方位置に配置された主貯留部9aと該主貯留部9aに貯留した移植物Aが供給装置6の中央付近の上方位置に移動して収容される収容部9bから構成されている。そして、主貯留部9aの底面を主伝動ケース2aの上部に基部が固定された鉄製の杆体よりなる支持枠9cの上部に固定して支持し、主貯留部9aから機体後方に向けて延設した状態で一体構成の収容部9bの底面を供給装置6の中心部に設けられた中心回転駆動軸23の上端に接当して載せた状態で支持している。
【0039】
そして、主貯留部9aは、移植作業状態で後部が低くなる傾斜状態に設けられており、主貯留部9a内に貯留している移植物Aが主貯留部9aから機体後方の収容部9bに向けて順次移動する構成となっている。
【0040】
一方、収容部9bは、供給装置6の中央付近の上方位置に配置され、その前側は順次テーパー状に狭まった主貯留部9aの後側と連通し、前述のように移植物Aが主貯留部9aから移動してくる。また、収容部9bの左側に供給装置6の各供給カップ6b…に移植物Aを供給する機体側方に向けて開放した供給口14を設けている。そして、該供給口14の開放した左端部は、その下方で周回軌道6a上を移動している供給装置6の各供給カップ6b…の中央部の上方位置になるようにしている。
【0041】
また、供給口14には移植物Aをせき止めるシャッター15が設けられており、該シャッター15は供給口14を閉鎖して移植物Aが側方に向けて落下又は取出されるのを阻止する状態と供給口14を開放して移植物Aが側方に向けて落下又は取出される状態に切替えられるように回動軸15aにて回動自在に装着されている。
【0042】
従って、移植作業時の畝終端位置で機体を旋回させる時は、左右駆動輪5,5を機体に対して下降させ機体を上昇させた後に操縦ハンドル3aを押し下げて左右前輪4,4を浮かせて機体の旋回操作をする。その時、貯留部9は後下がり傾斜になるが、シャッター15で供給口14を閉鎖して移植物Aが側方に向けて落下又は取出されるのを阻止する状態にしておけば、移植物Aが貯留部9からこぼれ落ちるのが防止でき、良好な旋回操作が行なえて、作業性が良い。
【0043】
尚、シャッター15を回動式でなく、供給口14を閉塞した状態から機体左側方に向けて供給カップ6bの外周よりも外側までスライドさせて供給口14を開放させる構成にすれば、その開放状態にしたシャッター15に作業者が手を置いて供給口14から移植物Aを指で落下させて各供給カップ6b…に供給でき、作業が楽に行なえて作業性が良い。
【0044】
供給装置6は、前記のように植付装置7の上方位置で移植物Aを受けて周回軌道6a上を移送する8個の供給カップ6b…を備え、伝動回転軸2cの回転動力によって中心回転駆動軸23にて所定速度で回転作動される構成となっている。尚、伝動回転軸2cの回転動力にて所定速度で回転する中心回転駆動軸23による回転作動は植付装置7の昇降動作と対応させており、即ち、供給カップ6bの底蓋6cが開いて移植物Aが落下するタイミングを植付装置7が最も上昇した位置にある時に同期させている。
【0045】
貯留部9の機体前方側には、多数の移植物Aを収容した一般的な樹脂製の農業用コンテナ24を載置できるコンテナ載置枠25が配置されている。該コンテナ載置枠25は、植付伝動ケース2bに基部が固着された左右支持フレーム26の上端部に回動支軸26aにて前部が上下方向に回動調節自在に支持されている。そして、作業者は、機体左側方位置である供給装置6の左側位置を歩きながら、貯留部9の収容部9b内に貯留された移植物Aを取出して供給装置6の各供給カップ6b…に投入して移植作業を行なうが、該移植作業時の作業者が前記移植作業を行ないながら操作できる位置にコンテナ載置枠25の前後傾斜角度を調節できるコンテナ角度調節レバー27aを設けている。
【0046】
このコンテナ角度調節レバー27aによるコンテナ載置枠25の前後傾斜角度調節構成は、コンテナ載置枠25の下面に上部を固着した支持アーム28を下方に向けて延設し、該支持アーム28下端部と植付伝動ケース2bとの間に揺動リンク29を連結し、該揺動リンク29の中途部とコンテナ角度調節レバー27aとを連結杆30にて連結して構成し、コンテナ角度調節レバー27aを機体に固定したレバー固定具27bの調節溝27c1〜27c5の何れかに係合させて、コンテナ載置枠25を前後傾斜角度調節した状態で固定できるようになっている。
【0047】
即ち、コンテナ角度調節レバー27aをレバー固定具27bの一番前側の調節溝27c1に係合させた時は、コンテナ載置枠25は水平となって農業用コンテナ24も水平状態になる。そして、コンテナ角度調節レバー27aをレバー固定具27bの一番後側の調節溝27c5に係合させた時は、コンテナ載置枠25は垂直に近い状態まで傾斜し農業用コンテナ24も上部開口が後方に向いた垂直に近い傾斜状態となる。
【0048】
ここで、上記の歩行型移植機でジャガイモの種芋Aを圃場の畝に移植する作業について説明する。
先ず、機体を圃場に入れて、左右駆動輪5,5及び左右前輪4,4が畝を跨いだ状態とし、コンテナ角度調節レバー27aをレバー固定具27bの一番前側の調節溝27c1に係合させてコンテナ載置枠25を水平とし、コンテナ載置枠25にジャガイモの種芋Aを満杯に入れた農業用コンテナ24を載せる。この時、農業用コンテナ24は、水平状態である。そして、貯留部9(主貯留部9a及び収容部9b)にも、ジャガイモの種芋Aを入れる。
【0049】
そして、作業者は、機体の左側(供給装置6の左側方で供給口14からジャガイモの種芋Aを取出せ、且つ、コンテナ角度調節レバー27aを操作できる位置)の畝溝に立って、シャッター15を開けて供給口14を開放して移植物Aが側方に向けて落下又は取出される状態に切替えて左右駆動輪5,5を駆動回転させて機体を前進させる。作業者は、機体の前進と共に畝溝を歩いて前進し、収容部9bの左側に設けられた供給口14からジャガイモの種芋Aを1つずつ周回軌道6aに沿って供給口14の下方を移動してくる各供給カップ6b…に各々供給する。この時、収容部9bの左側に設けられた供給口14は、供給口14の下方を移動してくる各供給カップ6b…の内側(供給装置6の回転中心側)から作業者の位置する方向に向かって開口した状態なので、作業者は容易に且つ作業性良く各供給カップ6b…にジャガイモの種芋Aを1つずつ供給することができて、作業が容易で且つ効率良く行え、移植作業が容易で且つ能率良く行える。
【0050】
そして、各供給カップ6b…に供給されたジャガイモの種芋Aは、植付装置7の上方まで移動され、供給カップ6bの底蓋6cが左右方向外方に開くことにより最も上昇した位置にある時の植付ホッパ部7a内に落下供給され、植付装置7によって圃場に順次植付けられる。
【0051】
移植作業を進めて、貯留部9内のジャガイモの種芋Aが残り少なくなると、作業者は、コンテナ載置枠25に載置された農業用コンテナ24内からジャガイモの種芋Aを取出して貯留部9に移して、上記の移植作業を続行する。そして、農業用コンテナ24内のジャガイモの種芋Aが少なくなるにつれて、順次、コンテナ角度調節レバー27aを操作して、農業用コンテナ24の上部開口が後方に向いた垂直に近い傾斜状態となるように傾斜させていけば、容易な姿勢で効率よく農業用コンテナ24内からジャガイモの種芋Aを取出して貯留部9に移す作業が行なえるので、作業が容易で且つ効率良く行え、移植作業が容易で且つ能率良く行える。
【0052】
また、移植作業をしていて、植付装置7の植付ホッパ部7b内部に泥土やゴミ等が溜まった場合や移植作業を終えて機体を清掃する場合には、機体を停止させて、回動作動用前アーム19Fと回動作動用後アーム19Bの各上部に設けられた各把持部7nを握り締めることにより、前植付体16Fを前方開放回動させ、後植付体16Bを後方開放回動させて、植付ホッパ部7b内部に溜まった泥土やゴミ等を容易に掃除することができる。
【符号の説明】
【0053】
2b 植付伝動ケース
3 ハンドルフレーム
7d フレーム
16B 後植付体
16F 前植付体
36 揺動支持アーム
38 スクレーパ
57 揺動支持アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付ホッパ部(7b)が昇降して移植物を収容する前植付体(16F)と後植付体(16B)が最降下位置で前後に開いて移植物を土中に残して上昇しながら前植付体(16F)と後植付体(16B)を閉じる移植機において、植付ホッパ部(7b)の上昇の際に開いた前植付体(16F)と後植付体(16B)の内部に横側方からスクレーパ(38)が侵入し、上昇に伴って前植付体(16F)と後植付体(16B)が閉じるまでに前記スクレーパ(38)が退出する構成としたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
スクレーパ(38)を先端に装着した揺動支持アーム(36)を前植付体(16F)と後植付体(16B)の前側に設ける植付伝動ケース(2b)から揺動して前植付体(16F)と後植付体(16B)の内部に横側方から侵入すべくしたことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
スクレーパ(38)を先端に装着した揺動支持アーム(57)を前植付体(16F)と後植付体(16B)の側部でハンドルフレーム(3)に取り付けるスクレーパブラケット(55)に揺動可能に設け、前植付体(16F)と後植付体(16B)の昇降動作に連動してスクレーパ(38)を前植付体(16F)と後植付体(16B)の内部に横側方から侵入すべくしたことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項4】
前植付体(16F)と後植付体(16B)の内部に侵入するスクレーパ(38)と前植付体(16F)の外周面に圧接する前スクレパ(49)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の移植機。
【請求項5】
前植付体(16F)と後植付体(16B)の内部に横側方から侵入したスクレーパ(38)を前後に揺動させたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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