説明

移植機

【課題】構造が簡単でかつコンパクトに構成された、操作が簡単で誤操作のない、伝動切換え機構及びブレーキ機構を備える移植機を提供する。
【解決手段】植付伝動装置に介在する伝動ケース25内に不等速回転で出力する不等速伝動装置51を収納し、等速回転伝動経路を設けて等速回転伝動経路と不等速回転伝動経路とに切換える伝動切換え機構62と、不等速回転時に制動力を作用させるブレーキ機構63を収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機等の移植機に係り、詳しくは植付装置に等速回転又は不等速回転で伝達する植付伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、移植機の植付作業機は、苗載せ台上の苗を土中へと植付けるための植付装置を備える。植付装置は、植付爪が両端に取付けられて、植付駆動軸に支持されるロータリケースを有し、植付駆動軸の回転により前記ロータリケースを回転させて植付を行う。
【0003】
従来、前記植付駆動軸の伝動経路に、1回転中の回転を周期的に不等速とする不等速伝動装置と等速伝動装置とに切換える切換え機構を備える移植機が案出されている(特許文献1参照)。
【0004】
不等速回転を植付駆動軸に伝達する場合において、植付駆動軸の回転が加速域から減速域に移行する際、植付駆動軸を回転駆動させる駆動力よりも、上記ロータリケースの回転の慣性が先行してしまう場合がある。係る場合には、植付伝動装置を構成するギアのガタ(バックラッシュ)分だけ植付駆動軸が先行回転してしまい、この回転が止まる衝撃によって苗が植付爪から外れてしまうことがある。この先行回転を抑制するために、植付駆動軸の回転に対して制動力を作用させるブレーキ機構を備える移植機も案出されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
また、不等速伝動装置及びブレーキ機構を1個のケース内に収納して、該ケースを植付伝動装置における伝動上流側に配置した移植機も案出されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−263879号公報
【特許文献2】特開2006−262758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の移植機にあっては、上記切換え機構及びブレーキ機構の何れも有しているが、切換え機構はミッションケース内に設けられており、第2株間変速レバーにより広株間(疎植株間)側への切換えと同時に、等速回転から不等速回転に切換えられる。また、ブレーキ機構は、各植付伝動ケース(プランタケース)内に設けられ、植付駆動軸に作用する。等速回転時に該ブレーキ機構が作用すると、周期的な制動力が逆効果となるため、不等速回転時には制動力を強く作動し、等速回転時には制動力を弱くする制動力切換え手段が設けられている。このように、切換え機構とブレーキ機構とが別々の場所(異なるケース内)に設けられるため、植付伝動装置自体の構成が複雑になっている。また、該ブレーキ機構は、複数設けられた植付伝動ケース内にそれぞれ設けられるため、複数のブレーキ機構が必要となる。さらには、等速、不等速の切換え操作以外に、制動力の強弱の切換え操作が必要となり、操作が面倒で誤操作の原因となっている。
【0008】
特許文献2に記載の移植機にあっては、ケース内に収納された1つのブレーキ機構で複数の植付駆動軸に制動力を作用させることができので、特許文献1に記載の移植機と比べて植付伝動装置の構造を簡単にすることができると共に、植付伝動装置自体をコンパクトにすることができる。しかしながら、前記ケース内には、前記不等速伝動装置及びブレーキ機構が収納されているだけであって、不等速伝動経路と等速伝動経路とを切換える切換え機構は設けられていない。このため、動力源からの回転は、不等速回転でしか植付駆動軸に伝達することができず、作業者は、不等速回転のみでしか植付作業を行うことができなかった。
【0009】
そこで、本発明は、等速伝動経路と不等速伝動経路とを切換える伝動切換え機構とブレーキ機構とを同一のケース内に設け、上記課題を解決した移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、動力源の回転を変速装置(30)で変速して、更に各植付装置(17)に分岐して伝達する植付伝動装置(44)と、前記変速装置(30)で変速した回転を走行輪(2,3)に伝達する走行伝動装置(48)と、を備えてなる移植機(1)において、
前記植付伝動装置(44)に、入力側の軸(52)の回転を不等速回転にして出力側に伝達する不等速伝動装置(51)を収納した伝動ケース(25)を介在し、
前記伝動ケース(25)に、前記不等速伝動装置(51)を介する伝動経路と入力側(52)の軸の回転を等速回転で出力側の軸(53)に伝達する伝動経路とに切換える伝動切換え機構(62)と、
該伝動切換え機構(62)に連動して、等速回転を伝達する状態では非作用状態に、不等回転を伝達する状態では作用状態に切換えられるブレーキ機構(63)と、を配設してなることを特徴とする。
【0011】
例えば図5を参照して、前記等速回転を伝達する伝動経路は、前記伝動ケース(25)に支持され、1軸上にかつ互いに分離されて配置された前記入力側の軸(52)と前記出力側の軸(53)とを有し、
前記不等速伝動装置(51)は、前記伝動ケース(25)に支持されるカウンタ軸(55)と、該カウンタ軸(55)を経由して前記入力側の軸(52)から前記出力側の軸(53)へ動力伝達するギア列(56,57,60,61)とを有し、かつ該ギア列は、第1の偏芯ギア(56)と、該第1の偏芯ギア(56)に噛合する第2の偏芯ギア(57)とを有し、
前記伝動切換え機構(62)は、前記入力側の軸(52)と前記出力側の軸(53)を連結又は分離すると共に、前記ギア列を経由する動力伝達を断接する第1のクラッチ(64)を有し、
前記ブレーキ機構(63)は、前記不等速伝動装置(51)の伝動経路に介在するカム(66)と、該カム(66)に摺接するブレーキ片(67)と、を有してなる。
【0012】
前記ブレーキ機構(63)の前記カム(66)が前記カウンタ軸(55)に回動自在に支持され、かつ前記第2の偏芯ギア(57)に係脱自在な第2のクラッチ(68)に一体に設けられ、
前記第1のクラッチ(64)と前記第2のクラッチ(68)が連動して操作される。
【0013】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によると、植付伝動装置に介在する伝動ケース内に、入力される回転を、不等速伝動装置を介して不等速回転で伝達する伝動経路と等速回転で伝達する伝動経路とに切換える伝動切換え機構と、不等速回転に作用するブレーキ機構とを配設したので、植付伝動装置の構成を簡単にすることができ、かつコンパクトな構成にすることができる。また、ブレーキ機構は、伝動切換え機構に連動して、等速回転の伝達状態では非作用状態に、不等速回転の伝達状態では作用状態に切換るので、ブレーキ機構の切換えが不要となると共に、誤操作をなくすことができる。
【0015】
請求項2の発明によると、伝動切換え機構の入力側の軸と出力側の軸を1軸上で、かつ互いに分離して配置すると共に、不等速回転のギア列を経由する動力伝達を断接するクラッチを設けたので、伝動切換え機構の構成を簡単にすることができる。また、ブレーキ機構は、不等速伝動装置の伝動経路に介在するカムと、該カムに摺接するブレーキ片とを有してなるので、ブレーキ機構の構成を簡単にすることができる。
【0016】
請求項3の発明によると、ブレーキ機構は、ブレーキ機構を構成するカムをカウンタ軸に支持された第2のクラッチに一体に設けたので、ブレーキ機構をコンパクトな構成にするができる。また、第1のクラッチと第2のクラッチは連動して操作されるので、第1のクラッチと第2のクラッチのそれぞれを操作する必要がなく運転者の操作負担の軽減になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る乗用田植機の側面図。
【図2】その平面図。
【図3】乗用田植機のトランスミッションの展開図。
【図4】植付伝動装置の展開図。
【図5】伝動ケース内を示す側面図であり、(a)は等速回転伝動時の状態を示すもので、(b)は不等速回転伝動時の状態を示すもので、(c)は上部の拡大図である。
【図6】伝動ケース内を示す正面図。
【図7】植付爪の静止軌道を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る移植機の一例である乗用田植機の実施の形態について図面に沿って説明する。
【0019】
乗用田植機1(以下、単に田植機という)は、図1及び図2に示すように、左右一対の前後輪2,3に支持される走行機体5を有しており、走行機体5の前部には、ボンネット6に覆われて動力源であるエンジン(不図示)が搭載され、その下部にはミッションケース31が配置されている(図3参照)。前記ボンネット6の後方には、ステアリングハンドル9、操作パネル10、及び運転座席11などからなる運転操作部12が配設されて、該運転操作部12の後方には、昇降リンク機構13を介して昇降自在に植付作業機15が連結されている。また、ボンネット6及び運転操作部12の側方には、苗を搬送するための予備苗搬送装置7が配設されている。
【0020】
植付作業機15は、昇降リンク機構13にローリング自在に連結される植付フレーム20と、植付フレーム20の上方で左右方向に摺動自在に支持される苗載せ台16と、該苗載せ台16の苗を田面に植付ける複数の植付装置17と、該植付装置17の下部に上下方向に揺動自在に支持された複数のフロート21とを備えている。
【0021】
エンジンの回転は、図3及び図4に示すように、HST(静油圧式無段変速機)32及び複数の変速軸33,34からなる変速装置30(以下、トランスミッションという)に入力される。該変速回転は、ミッションケース31内で植付伝動装置44と走行伝動装置48とに分岐して伝達され、走行伝動装置48の回転は、走行伝動装置48により走行輪2,3に伝達されて、植付伝動装置44の回転は、植付伝動装置44により複数配設される各植付装置17に分岐して伝達される。
【0022】
走行伝動装置48は、図3に示すように、変速軸35からの回転を伝達する伝動軸36と、該伝動軸36の回転を左右前輪に伝達するデファレンシャル機構37と、該デファレンシャル機構37と中間軸40,41を介して連動する左右のフロントアクスル38,39と、前記伝動軸36の回転を左右の後輪3に伝達する走行PTO軸43と、該走行PTO軸43の回転で後輪3を駆動するリアアクスル42とを備えている。
【0023】
植付伝動装置44は、ミッションケース31内に設けられる株間変速軸45と、ベベルギアを介して該株間変速軸45に連動する植付PTO軸46と、該植付PTO軸46へ株間変速軸45からの回転の伝達を断接する植付クラッチ47と、図4に示すように、植付PTO軸46の回転が伝達される伝動ケース25内の伝動装置51(図5参照)と、該伝動装置の出力側にユニバーサルジョイント24を介して連動する植付伝動軸23と、該植付伝動軸23にユニバーサルジョイント24及び入力ケース19内の回転駆動部材(不図示)を介して連動する動力分配軸22と、動力分配軸22の回転が複数の植付伝動ケース18内のチェーン(不図示)を介して伝達される植付装置17とを備えている。
【0024】
植付装置17は、植付駆動軸14に支持されるロータリケース17aと、該ロータリケース17aの両端に取付けられるプランタアーム17bと、該プランタアーム17bに支持されて土中に苗を植付ける植付爪17cとを備えている。
【0025】
次いで、植付伝動装置44に介在する上記伝動ケース25について詳細に説明する。伝動ケース25は、図4に示すように、植付PTO軸46と植付伝動軸23との間に介在しており、ミッションケース31の後方に配置される(図1参照)。伝動ケース25は、図5に示すように、外形が側面視略矩形形状で形成されており、2分割の構造で構成されている。また、伝動ケース25内には、不等速伝動装置51を介して回転を不等速回転にして出力する伝動経路と、等速回転のまま出力する伝動経路と、これら等速、不等速との伝動経路を切換える伝動切換え機構62と、不等速回転時に制動力を作用するブレーキ機構63とが収納されている。
【0026】
伝動ケース25には、図5に示すように、入力側の軸(以下、入力軸という)52と、出力側の軸(以下、出力軸という)53と、カウンタ軸55とが回転自在に支持されている。前記入力軸52と出力軸53とは、1軸上に僅かな間隔を隔てて対向配置されており、前記カウンタ軸55は、上記入力軸52及び出力軸53と平行に配置されている。前記入力軸52に回転自在に配置された第1の偏芯ギア56(不等速ギア)と、カウンタ軸55の一端に回転方向及び軸方向に一体に連結された第2の偏芯ギア57(不等速ギア)とが噛合してなる偏芯ギア列が構成され、カウンタ軸55及び出力軸53にそれぞれ回転方向及び軸方向に一体に連結された円形ギア60,61が噛合して円形ギア列が構成され、これらギア列により不等速伝動装置51が構成されている。
【0027】
入力軸52の先端スプライン部には、第1のクラッチ64が軸方向に摺動自在に係合しており、該第1のクラッチ64はその両側面にドッグを有しており、該ドッグが第1の偏芯ギア56及び円形ギア61の側面に形成されたドッグのいずれか一方に係合して、伝動経路が切換えられる。カウンタ軸55には、第2のクラッチ68が回動自在で、かつ軸方向に摺動可能でカウンタ軸55に支持されており、該第2のクラッチ68は、その一側面にドッグを有しており、該ドッグは、第2の偏芯ギア57の側面に形成されたドッグに係脱自在に係合し得る。これら第1のクラッチ64及び第2のクラッチ68により、クラッチからなる伝動切換え機構62が構成されている。また、前記各クラッチ64,68のドッグとギア56,57,61のドッグとは、ドッグ同士が1ヵ所で噛合うように構成され、この噛合いにより入力軸52から不等速伝動装置51を介して不等速回転を出力軸53に伝達するように構成されている。
【0028】
前記第1のクラッチ64及び第2のクラッチ68は、連動操作機構71より一体に軸方向に摺動するように操作されて切換えられる。第1のクラッチ64が円形ギア61に係合し、かつ第2のクラッチが第2の偏芯ギア57と外れた状態で、入力軸52の回転が第1のクラッチ64を介して出力軸53に直接伝達する等速伝動経路を構成し、第1のクラッチ64が第1の偏芯ギア56に係合し、第2のクラッチ68が第2の偏芯ギア57に係合した状態で、入力軸52の回転が偏芯ギア列56,57及び円形ギア列60,61を介して出力軸53に伝達される不等速伝動経路を構成している。
【0029】
連動操作機構71は、図5(c)及び図6に示すように、伝動ケース25上部側で、前後方向に摺動自在なシフタ軸72と、該シフタ軸72に取付けられるシフタアーム(シフタ部材)73と、シフタ軸72を固定する位置決め機構75とを有して構成されている。シフタ軸72の端部に形成された凹部72aは、リンク機構76を介して伝動切換えレバー8と連結されており、前記シフタアーム73は、第1のクラッチ64及び第2のクラッチ68それぞれに形成された嵌合部64a,68aに嵌合している。
【0030】
上記ブレーキ機構63は、第2のクラッチ68に一体に形成された楕円形状のカム66と、該カム66に所定付勢力で摺接するブレーキ片67とを有して構成され、ブレーキ片67は、伝動ケース25に回転自在に支持され、かつ該ケースを貫通して外部に延びる軸65に一体に連結されて、該軸65のケース外方にてアーム69が一体に連結されている。該アーム69は、スプリング70に連結されて、前記ブレーキ片67に所定の付勢力を付与する。ブレーキ機構63は、図7に示すように、植付爪17cが高速域A,Cの制動開始位置E,Gにあるときに制動力を作用させ、前記植付爪17cが低速域B,Dの制動力解除位置F,Hにあるときに制動力の作用を解除するように構成されている。
【0031】
次いで、乗用田植機の作動について説明する。エンジンの回転(等速回転)は、HST32に伝達され、該HST32で変速された後に変速軸33,34に伝達される。該変速軸33,34に伝達された回転は、変速軸34と株間変速軸45のギア34a,45aの噛み合わせにより株間変速された後(図3参照)、植付クラッチ47を介して植付PTO軸46に伝達されて、植付PTO軸46から入力軸52に伝達される。
【0032】
作業者が不等速回転による植付け作業を選択して、伝動切換えレバー8を不等速回転側に操作する。この操作により、シフタ軸72及びシフタアーム73は軸方向に移動され、第1のクラッチ64は、図5(a)に示すように、入力軸52を第1の偏芯ギア56側に摺動され、該第1のクラッチ64のドッグは第1の偏芯ギア56のドッグに係合される。第2のクラッチ68は、シフタアーム73により第1のクラッチ64と連動してカウンタ軸55を第2の偏芯ギア57側に摺動され、第2のクラッチ68のドッグは第2の偏芯ギア57のドッグに係合され、カム66が一体に回転する。
【0033】
上記入力軸52の回転は、第1のクラッチ64を介して偏芯ギア列56,57に伝達され、該回転は、該偏芯ギア列56,57で等速回転から不等速回転に変換されてカウンタ軸55に伝達される。このとき該不等速回転は、第2の偏芯ギア57から第2のクラッチ68を介してカム66にも伝達される。カム66に摺接するブレーキ片67の付勢力は、カムの回転を抑える抵抗力となり、この抵抗力が第2のクラッチ68を介して第2の偏芯ギア57に伝達され、カウンタ軸55に対する制動力として作用する。
【0034】
カウンタ軸55の不等速回転は、円形ギア列60,61を介して出力軸53に伝達される。出力軸53の回転は、植付伝動軸23、入力ケース19内の回転駆動部材、動力分配軸22、及び植付伝動ケース18内のチェーンを介して植付駆動軸14に伝達され、ロータリケース17aが不等速回転し、植付爪17cは、図7に示す軌跡を描いてマット苗から苗を掻き取って土中に植える。
【0035】
作業者が等速回転による植付け作業を選択して、伝動切換えレバー8を等速回転側に操作する。この操作により、シフタ軸72及びシフタアーム73は、軸方向に移動され、第1のクラッチ64は、図5(b)に示すように、入力軸52を円形ギア61側に摺動され、第1のクラッチ64のドッグは円形ギア61のドッグに係合される。このとき、第2のクラッチ68は、シフタアーム73により第1のクラッチ64と連動してカウンタ軸55を円形ギア60側に摺動されて、第2のクラッチ68のドッグと第2の偏芯ギア57のドッグとの係合が解除される。
【0036】
入力軸52の回転は、第1のクラッチ64を介して連結された出力軸53に等速回転で伝達される。このとき第1の偏芯ギア56は空転し、回転が偏芯ギア列56,57に伝達されることはない。出力軸53に伝達された等速回転は、不等速回転の伝達時と同様の伝達経路で植付装置17まで伝達されて、ロータリケース17aは等速回転する。
【0037】
上述のように、植付伝動装置44に介在する伝動ケース25内に、入力される回転を、不等速伝動装置51を介して不等速回転で伝達する伝動経路と等速回転で伝達する伝動経路とに切換える伝動切換え機構62と、不等速回転に作用するブレーキ機構63とを配設したので、植付伝動装置44の構成を簡単にすることができ、かつコンパクトな構成とすることができる。
【0038】
また、ブレーキ機構63は、伝動切換え機構62に連動して、等速回転の伝達状態では非作用状態に、不等速回転の伝達状態では作用状態に切換るので、ブレーキ機構63の切換えが不要となると共に、誤操作をなくすことができる。
【0039】
また、伝動切換え機構62の入力軸52と出力軸53を1軸上で、かつ互いに分離して配置すると共に、不等速回転のギア列を経由する動力伝達を断接するクラッチを設けたので、伝動切換え機構62の構成を簡単にすることができる。これにより、伝動切換え機構62を納める伝動ケース25の構造を簡単にすることができ、例えば、伝動切換え機構62を収納するケースが従来3分割の構造で構成されていたのを2分割の構造にすることができる。
【0040】
また、ブレーキ機構63は、不等速伝動装置51の伝動経路に介在するカム66と、該カム66に摺接するブレーキ片67を有してなるので、ブレーキ機構63の構成を簡単にすることができる。
【0041】
また、カム66をカウンタ軸55に支持された第2のクラッチ68に一体に設けたので、ブレーキ機構63をコンパクトな構成にすることができる。
【0042】
また、第1のクラッチ64と第2のクラッチ68は連動して操作されるので、運転者は、第1のクラッチと第2のクラッチのそれぞれを操作する必要がなく運転者の操作負担の軽減になる。
【0043】
第2のクラッチ68を切換えて、ブレーキ機構63による制動力が作用するブレーキ入り状態と、制動力が作用しないブレーキ切り状態とに切換えることができるので、植付装置17を等速回転させて植付け作業を行うときには、ブレーキ機構63の制動力を作用させずに植付作業を行うことができ、植付作業の効率を良くすることができる。
【0044】
また、伝動ケース25内に第1のクラッチの切換えに連動して第2のクラッチが切換わる連動操作機構71を設けたので、第1のクラッチ64が円形ギア61と係合すると同時に第2のクラッチ68と第2の偏芯ギア57との係合が解除される。これにより、等速回転での植付け作業時にブレーキの切り忘れをなくすことができ、作業効率をあげることができる。
【0045】
また、連動操作機構71が有するシフタ部材を1枚のプレートで形成されるシフタアーム73で構成したので、連動操作機構の製造コストを抑えることができる。
【0046】
また、ドッグ同士が1ヵ所で噛合うように構成したので、伝動切換え機構62の切換えに伴い、偏芯ギア56,57の増減速位置にズレを生じないので、安定して所望の植付け軌跡を得ることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、第2のクラッチ68と第2の偏芯ギア57との係合によりブレーキ機構63の作用状態、非作用状態に切換える構成としたが、これに限らず、例えば、第2の偏芯ギア57か円形ギア60自体にカム66を設けて、ブレーキ片67を動かすことでカム66とブレーキ片67とを摺接させ、またはそれを解除してブレーキ機構63の状態を切換える構成としてもよい。このように構成する場合は、第2のクラッチ68を必要としない。
【0048】
また、上述の実施の形態では、第1のクラッチ64の両側にドッグを設けたが、これに限らず、例えば、第1のクラッチ64の円形ギア61側のみにドッグを設け、かつ第1の偏芯ギア56を入力軸52に一体に連結し、第2のクラッチ68をカウンタ軸55に回転方向一体にかつ摺動自在に連結すると共に、第2の偏芯ギア57をカウンタ軸55に回転自在にかつ摺動一体に支持して第1のクラッチ64及び第2のクラッチ68により伝動経路を切換えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 移植機(乗用田植機)
2 走行輪(前輪)
3 走行輪(後輪)
17 植付装置
25 伝動ケース
30 変速装置
44 植付伝動装置
48 走行伝動装置
51 不等速伝動装置
52 入力側の軸
53 出力側の軸
55 カウンタ軸
56 第1の偏芯ギア
57 第2の偏芯ギア
60 円形ギア
61 円形ギア
62 伝動切換え機構
63 ブレーキ機構
64 第1のクラッチ
68 第2のクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源の回転を変速装置で変速して、更に各植付装置に分岐して伝達する植付伝動装置と、前記変速装置で変速した回転を走行輪に伝達する走行伝動装置と、を備えてなる移植機において、
前記植付伝動装置に、入力側の軸の回転を不等速回転にして出力側に伝達する不等速伝動装置を収納した伝動ケースを介在し、
前記伝動ケースに、前記不等速伝動装置を介する伝動経路と入力側の軸の回転を等速回転で出力側の軸に伝達する伝動経路とに切換える伝動切換え機構と、
該伝動切換え機構に連動して、等速回転を伝達する状態では非作用状態に、不等速回転を伝達する状態では作用状態に切換えられるブレーキ機構と、を配設してなる、
ことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記等速回転を伝達する伝動経路は、前記伝動ケースに支持され、1軸上にかつ互いに分離されて配置された前記入力側の軸と前記出力側の軸とを有し、
前記不等速伝動装置は、前記伝動ケースに支持されるカウンタ軸と、該カウンタ軸を経由して前記入力側の軸から前記出力側の軸へ動力伝達するギア列とを有し、かつ該ギア列は、第1の偏芯ギアと、該第1の偏芯ギアに噛合する第2の偏芯ギアとを有し、
前記伝動切換え機構は、前記入力側の軸と前記出力側の軸を連結又は分離すると共に、前記ギア列を経由する動力伝達を断接する第1のクラッチを有し、
前記ブレーキ機構は、前記不等速伝動装置の伝動経路に介在するカムと、該カムに摺接するブレーキ片と、を有してなる、
請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記ブレーキ機構の前記カムが前記カウンタ軸に回転自在に支持され、かつ前記第2の偏芯ギアに係脱自在な第2のクラッチに一体に設けられ、
前記第1のクラッチと前記第2のクラッチが連動して操作される、
請求項2に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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