移植機
【課題】移植作業をする際に、移植部操作手段により植付クラッチを接続操作すると、走行部の走行速度が抑制されて、苗移植精度を良好に確保することができる移植機を提供すること。
【解決手段】走行変速手段を備えた走行部を走行させながら、移植変速手段を備えた移植部により圃場に苗を移植可能とした移植機であって、走行変速手段に変速制御機構を介して増減速操作手段を連動連結する一方、移植変速手段に設けた植付クラッチに移植部操作手段を連動連結し、移植部操作手段による植付クラッチの接続操作に変速制御機構の増速動作範囲を規制する規制手段の規制動作を連動させた。
【解決手段】走行変速手段を備えた走行部を走行させながら、移植変速手段を備えた移植部により圃場に苗を移植可能とした移植機であって、走行変速手段に変速制御機構を介して増減速操作手段を連動連結する一方、移植変速手段に設けた植付クラッチに移植部操作手段を連動連結し、移植部操作手段による植付クラッチの接続操作に変速制御機構の増速動作範囲を規制する規制手段の規制動作を連動させた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
移植機の一形態として、特許文献1に開示されたものがある。かかる特許文献1には、移植部を配設した走行部を走行させながら、移植部により圃場に苗を移植可能とした乗用型の移植機が開示されている。そして、かかる移植機には植付クラッチレバーが設けられて、植付クラッチレバーを操作することにより移植部への動力伝達を接続・切断することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−225008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記した移植機では、走行速度を増大させると、それに比例して移植部の作動速度も増大して、苗移植精度を良好に確保することができないという不具合があった。
【0005】
そこで、本発明は、移植作業をする際に、移植部操作手段により植付クラッチを接続操作すると、走行部の走行速度が抑制されて、苗移植精度を良好に確保することができる移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、走行変速手段を備えた走行部を走行させながら、移植変速手段を備えた移植部により圃場に苗を移植可能とした移植機であって、走行変速手段に変速制御機構を介して増減速操作手段を連動連結する一方、移植変速手段に設けた植付クラッチに移植部操作手段を連動連結し、移植部操作手段による植付クラッチの接続操作に変速制御機構の増速動作範囲を規制する規制手段の規制動作を連動させたことを特徴とする。
【0007】
かかる移植機では、移植部操作手段により植付クラッチを接続操作すると、その操作に連動して規制手段が規制動作して、変速制御機構の増速動作範囲が規制される。つまり、移植作業をする際に、移植部操作手段により植付クラッチを接続操作すると、走行部の走行速度が抑制される。そのため、移植作業を堅実に行う(苗移植精度を良好に確保する)ことができる。そして、移植作業時における走行部の走行速度は、規制手段の規制動作を調整することで、農作業体系に合わせて簡単に選定することができる。また、変速制御機構の増速動作範囲を規制する規制手段は変速制御機構に外付けすることができるため、機種の異なる農作業機に設けられている変速制御機構を共用することができるとともに、作業に応じた車速の選定を容易に行うことができる。その結果、移植機の製造コストを低減することができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の移植機であって、移植部操作手段による植付クラッチの切断操作に変速制御機構の増速動作範囲を規制する規制手段の規制解除動作を連動させたことを特徴とする。
【0009】
かかる移植機では、移植部操作手段により植付クラッチを切断操作すると、その操作に連動して規制手段が規制解除動作して、変速制御機構の増速動作範囲が規制解除される。つまり、移植作業時以外において、移植部操作手段により植付クラッチを切断操作すると、走行部の走行速度が抑制解除される。そのため、移植機の圃場内移動、特に旋回移動を速やかに行うことができて、作業能率を向上させることができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の移植機であって、変速制御機構が所定以上の増速動作範囲にある場合には、規制手段の規制動作が阻止されて、植付クラッチの接続操作が不能となるようにしたことを特徴とする。
【0011】
かかる移植機では、走行部が所定の速度以上で走行している際には、規制手段の規制動作が阻止されて、移植部操作手段により植付クラッチを接続操作することができない。そのため、走行部が所定の速度以上で走行している際に、移植部操作手段が誤操作されて植付クラッチが接続されるのを防止することができる。その結果、移植部が高速作動して破損等されるという不具合の発生を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、次のような効果を奏する。すなわち、本発明によれば、移植部操作手段により植付クラッチを接続操作すると、走行部の走行速度が抑制されるため、移植作業を堅実に行う(苗移植精度を良好に確保する)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る苗移植機の斜視図。
【図2】本実施形態に係る苗移植機の側面図。
【図3】本実施形態に係る苗移植機の平面図。
【図4】本実施形態に係る苗移植機の底面図。
【図5】本実施形態に係る下部体の平面説明図。
【図6】本実施形態に係る変速制御機構の後方斜視説明図。
【図7】本実施形態に係る変速制御機構の前方斜視説明図。
【図8】本実施形態に係る変速制御機構の側面説明図。
【図9】規制突片の規制動作説明図。
【図10】規制突片の規制解除動作説明図。
【図11】規制突片の規制解除動作から規制動作への説明図。
【図12】走行部の動力伝達概念説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図3に示すAは、本発明に係る乗用型の苗移植機である。苗移植機Aは、図1〜図3に示すように、牽引車としての走行部1の後方に昇降機構部2を介して移植部3を昇降自在に取り付けている。そして、かかる苗移植機Aは、複数(本実施形態では2条)の苗の移植作業を行うことができるようにしている。
【0015】
走行部1は、図1〜図3に示すように、下部体11に上部体12を載設して構成している。そして、下部体11は、図4及び図5にも示すように、前部に配置したミッションケース13と、後部に配置したリヤアクスルケース14との間に、前後方向に伸延する連結フレーム15を介設して形成している。ミッションケース13の左右側壁部よりそれぞれ外側下方へ左右方向に伸延する軸ケース16,16を延設し、各軸ケース16,16の外側端部より下方へ上下方向に伸延するフロントアクスルケース17,17を延設し、各フロントアクスルケース17,17の外側下端部に前車軸18,18を介して左右一対の前車輪19,19を取り付けている。リヤアクスルケース14の左右外側端部には後車軸20,20を介して左右一対の後車輪21,21を取り付けている。連結フレーム15は、断面四角形状でかつ前後方向に直状に伸延するパイプ状に形成している。連結フレーム15上には原動機部としてのエンジン22を搭載している。
【0016】
図5及び図12に示すように、エンジン22とミッションケース13は第1伝動機構150を介して連動連結している。ミッションケース13とリヤアクスルケース14は第2伝動機構160を介して連動連結している。ミッションケース13と移植部3の動力取り入れ部710は第3伝動機構170を介して連動連結している。
【0017】
第3伝動機構170の中途部には、図2,図4及び図5に示すように、クラッチケース130を設けるとともに、クラッチケース130は下部体11の右側後部に配設している。クラッチケース130内には、図12に示すように、植付クラッチ145を具備するクラッチ機構141と株間調節機構142と移植部動力取出機構143と施肥装置動力取出機構144を連動連結して配設している。
【0018】
下部体11上には、図2及び図5に示すように、平面視枠状の支持枠体25を設けている。支持枠体25は、左右方向に伸延する前部支持片26と後部支持片27を前後方向に間隔をあけて略平行に配置し、両支持片26,27間に前後方向に伸延する左右一対のサイド支持片28,28を架設している。そして、両サイド支持片28,28の前部と中途部にそれぞれ突出支持片29,29,30,30を外側方へ突出させている。中途部の突出支持片30,30の各外側端と後部支持片27の両外側端との間には前後方向に伸延する補助サイド支持片31,31を架設している。両サイド支持片28,28の前部間には左右方向に伸延する第1・第2横架支持片32,33を前後に間隔をあけて横架している。前部支持片26と第1・第2横架支持片32,33との間にはハンドルコラム支持体34を架設している。
【0019】
ハンドルコラム支持体34上には、図6及び図7に示すように、円筒状のハンドルコラム35を立設し、ハンドルコラム35中にハンドル支軸36を挿通して、ハンドル支軸36の上端にハンドル37(図1〜図3参照)を取り付けている。ハンドルコラム35の上部には左右方向に張り出し状に板状のレバーガイド体38を張設し、レバーガイド体38の左側部に変速レバーガイド溝39を前後方向に伸延させて形成する一方、レバーガイド体38の右側部に移植部昇降レバーガイド溝40を前後方向に伸延させて形成している。ハンドルコラム35の中途部には、枢支体41を介して変速レバー42の下端部と移植部昇降レバー43の下端部をそれぞれ枢支し、変速レバーガイド溝39中に変速レバー42を挿通する一方、移植部昇降レバーガイド溝40中に移植部昇降レバー43を挿通している。
【0020】
右側中途部の突出支持片30上には、図5に示すように、増減速操作手段としての変速ペダル50を設け、変速ペダル50の踏み込み操作により、後述する走行変速手段としての静油圧式無段変速機912を無段変速操作可能としている。すなわち、変速ペダル50は、変速制御機構51を介して静油圧式無段変速機912の出力制御軸52に連動連結している。変速ペダル50は、図6〜図9に示すように、右側中途部の突出支持片30上に設けた枢支片53に後端部を左右方向に軸線を向けたペダル支軸54を介して枢支して、ペダル支軸54を中心に前端部側を上下方向に揺動自在となしている。後述する移植部操作手段としての移植部昇降レバー43による植付クラッチ145の接続操作には、変速制御機構51の増速動作範囲を規制する規制手段としての規制突片56の規制動作を連動させている。
【0021】
変速制御機構51は、変速ペダル50に連動連結した第1回転制御部60と、第1回転制御部60の回転動作をセンシングするセンシング部61と、センシング部61の一部を一側端部に支持する第2回転制御部63と、第2回転制御部63の他側端部に取り付けた回転駆動部64と、回転駆動部64に静油圧式無段変速機912の出力制御軸52に突設した制御アーム55を連動連結する制御ロッド65とを具備する。
【0022】
第1回転制御部60は、変速ペダル50の直前方に位置する右側のサイド支持片28の部分の位置に、左右方向に伸延する第1筒状支軸70を直交状態に取り付け、第1筒状支軸70中に第1制御軸71を挿通している。そして、第1制御軸71の右側端部と変速ペダル50の下面中途部との間に連動連結体72を介設している。連動連結体72は、上下方向に伸延して、変速ペダル50の下面中途部に上端部を連結したリンク片73と、リンク片73の下端部に連結して第1制御軸71の右側端部に連設したレバー体74とから形成している。レバー体74は後方伸延片75と下方張り出し片76とを有し、リンク片73の下端部に後方伸延片75の先端部を連結している。下方張り出し片76の下端部と右側中途部の突出支持片30の中途部との間に引っ張りスプリング77を介設している。78はレバー体74に上方へ突出させて設けたストッパー受け片、79は第1筒状支軸70の右側端部にブラケット80を介して設けたストッパー片であり、ストッパー片79にストッパー受け片78が当接して変速ペダル50の踏み込み作動が規制されるようにしている。
【0023】
このように構成して、変速ペダル50を踏み込み作動すると、連動連結体72がリンク片73と後方伸延片75の連結部を中心に中折れ状態に姿勢を変更して、第1制御軸71を引っ張りスプリング77の付勢力に抗して右側面視にて反時計廻りに回転させるようにしている。また、変速ペダル50の踏み込み作動が解除されると、引っ張りスプリング77の付勢力により連動連結体72が伸長状態に復元されて、変速ペダル50も踏み込み作動前の元の姿勢に復元されるようにしている。
【0024】
センシング部61は、第1筒状支軸70の左側端部にボス部82を介して変速用カム体81を同心円的に回動自在に外嵌している。変速用カム体81は、図8に示すように、基端部81aよりカム本体81bを略扇状に前方へ張り出し状に形成している。しかも、カム本体81bの先端縁部には上部が短径で下部が長径の円弧面カム81cを形成している。また、変速用カム体81は、基端部81aより規制受け片81dを下方へ突出させ、規制受け片81dの下端部に規制受けローラ81eを取り付けている。第1制御軸71の左側端部にはスプリングステー83の基端部を連設するとともに、スプリングステー83の先端部を、変速用カム体81の基端部81aさらにはボス部82の直後方へ伸延させ、かつ、ボス部82の右側端面の右側方に折曲させて配置している。そして、ボス部82の外周面にトルクバネ84を配置し、スプリングステー83にトルクバネ84の一側端部84aを係止するとともに、カム本体81bにトルクバネ84の他側端部84bを係止している。
【0025】
後述する第2回転制御部63の第2筒状支軸101の端面には、変速用カム体81の動作を検出するセンサケース85を取り付けている。センサケース85内には第2筒状支軸101の右側端に基端部を回動自在に嵌入した支軸86を配置し、支軸86の先端部を右側外方へ突出させている。支軸86の先端部には二叉従動片87の基端部を取り付けている。センサケース85内には増速用スイッチと減速用スイッチ(これらは図示しない)を対向状態に配置し、二叉従動片87がセンサケース85に対して一定角度だけ正回転(右側面視にて支軸86の時計廻り)すると増速用スイッチがONされ、また、二叉従動片87がセンサケース85に対して一定角度だけ逆回転(右側面視にて支軸86の反時計廻り)すると減速用スイッチがONされるようにしている。
【0026】
第2筒状支軸101におけるセンサケース85の直左側部に位置する部分には遊嵌リング90を外嵌し、遊嵌リング90より後方へピンステー91を突設して、ピンステー91に左右方向に軸線を向けたピン92の基端部を取り付けている。ピン92は二叉従動片87の中途部を摺動自在に貫通させて、その先端部92aを円弧面カム81cに上方から圧接させている。93はピンステー91と第1横架支持片32に固設した固定側ステー94との間に介設した下方引っ張りスプリングであり、下方引っ張りスプリング93によりピン92を下方へ付勢している。
【0027】
第2回転制御部63は、ハンドルコラム支持体34上に設けた軸支持体100に左右方向に軸線を向けた第2筒状支軸101を横架している。第2筒状支軸101の右側端部に前記したセンサケース85を取り付ける一方、左側端部に後方へ向けて膨出させて形成したセクタギヤ102の基端部を取り付けている。
【0028】
回転駆動部64はセクタギヤ102の直後方に電動モータ103を配設して、電動モータ103の駆動軸に取り付けたピニオンギヤ(これらは図示せず)をセクタギヤ102に噛合させている。そして、電動モータ103は増速用スイッチがONされると正回転駆動されるようにしている。さらには、セクタギヤ102を介して第2筒状支軸101が正回転(右側面視にて時計廻り)して、二叉従動片87とセンサケース85との相対角度が元の設定角度まで復元されると、電動モータ103の駆動が停止されるようにしている。また、電動モータ103は減速用スイッチがONされると逆回転駆動されるようにしている。さらには、セクタギヤ102を介して第2筒状支軸101が逆回転(右側面視にて反時計廻り)して、二叉従動片87とセンサケース85との相対角度が元の設定角度まで復元されると、電動モータ103の駆動が停止されるようにしている。
【0029】
制御ロッド65は前後方向に伸延して、セクタギヤ102の基端部から下方へ突出させたロッド連結片104に先端部(前端部)を連結する一方、静油圧式無段変速機912の出力制御軸52に突設した制御アーム55の先端部に基端部(後端部)を連結している。
【0030】
このように構成して、電動モータ103によりセクタギヤ102を介して第2筒状支軸101が正回転されると、ロッド連結片104を介してロッド連結片104が後方へ摺動されて制御アーム55の先端部が後方へ回動されるようにしている。その結果、制御アーム55の基端部に連動連結された静油圧式無段変速機912の出力制御軸52が増速側へ回動される。電動モータ103によりセクタギヤ102を介して第2筒状支軸101が逆回転されると、ロッド連結片104を介してロッド連結片104が前方へ摺動されて制御アーム55の先端部が前方へ回動されるようにしている。その結果、制御アーム55の基端部に連動連結された静油圧式無段変速機912の出力制御軸52が減速側へ回動される。
【0031】
上記したセンシング部61は、変速制御規制機構110により変速制御範囲が規制されるようにしている。すなわち、変速制御規制機構110は、移植部昇降レバー43と前記した規制手段としての規制突片56とを連動連結して形成している。移植部昇降レバー43は、枢支体41に、つまり、ハンドルコラム35の中途部に直交状態に設けた左右伸延支軸111にレバー枢支片112を介して枢支している。左右伸延支軸111の右側部にレバー枢支片112の下部を前後揺動自在に枢支し、レバー枢支片112の右側部に枢支ピン113を介して移植部昇降レバー43の下端部を左右揺動自在に枢支している。
【0032】
レバー枢支片112の上部には前後方向に伸延する前後伸延レバー体114の中途部を左右方向に軸線を向けた連結ピン115により連結している。前後伸延レバー体114の前部には仮止め凹部116を形成し、仮止め凹部116に仮止め体117の先端部を係脱自在に係合させて仮止め可能としている。仮止め体117は変速レバー42の変速操作に連動して仮止め凹部116に係脱動作するようにしている。また、固定側ステー94には、左右方向に軸線を向けた枢支軸120を横架し、枢支軸120に後方へ向けて突出する連動アーム121と規制突片56の各基端部を取り付けている。つまり、連動アーム121と規制突片56は枢支軸120を介して一体的に上下揺動自在となしている。連動アーム121の先端部と前後伸延レバー体114の後端部との間には上下方向に伸延する連動ロッド122を介設している。123,124はロッド連結ピンである。
【0033】
また、図5〜図8に示すように、前後伸延レバー体114の後端部と植付クラッチ145との間には、インナーワイヤの周囲をアウターワイヤ(これらは図示せず)で被覆して形成した連動ワイヤ118を介設している。そして、移植部昇降レバー43を前方に揺動操作すると、前後伸延レバー体114の後端部が連結ピン115を中心に上方へ回動され、前後伸延レバー体114の後端部に連結した連動ワイヤ118のインナーワイヤが上方へ引張摺動されて、インナーワイヤの後端部に連動連結された植付クラッチ145が接続作動されるようにしている。また、移植部昇降レバー43を後方に揺動操作すると、前後伸延レバー体114の後端部が連結ピン115を中心に下方へ回動され、前後伸延レバー体114の後端部に連結した連動ワイヤ118のインナーワイヤが下方へ後退摺動されて、インナーワイヤの後端部に連動連結された植付クラッチ145が切断作動されるようにしている。
【0034】
このように構成して、図9(a)に示すように、移植部昇降レバー43を前方に揺動操作して植付クラッチ145を接続操作すると、前後伸延レバー体114の後端部が連結ピン115を中心に上方へ回動され、連動ロッド122が上方へ摺動されて、連動アーム121と規制突片56が枢支軸120を中心に上方へ回動される。この際、規制突片56の先端部は、規制受け片81dの下端部に取り付けた規制受けローラ81eの前方に対向配置される(規制動作を採る)ようにしている。その結果、図9(b)に示すように、変速ペダル50を踏み込み操作すると、規制受けローラ81eを支持する規制受け片81dが前方へ回動されて、規制受けローラ81eが規制突片56の先端部に当接したところで、変速用カム体81の増速動作(本実施形態では反時計廻りの回動動作)が規制されるようにしている。
【0035】
また、図10(a)に示すように、移植部昇降レバー43を後方揺動操作して植付クラッチ145を切断操作すると、前後伸延レバー体114の後端部が下方へ回動され、連動ロッド122が下方へ摺動されて、連動アーム121と規制突片56が枢支軸120を中心に下方へ回動される。この際、規制突片56の先端部は、直下方を指向する規制解除動作を採って、規制受け片81dの下端部に取り付けた規制受けローラ81eの前方に対向配置されないようにしている。その結果、図10(b)に示すように、変速ペダル50を踏み込み操作すると、規制受けローラ81eを支持する規制受け片81dが前方へ回動されて、規制受けローラ81eが規制突片56の先端部に当接することがないため、変速用カム体81の増速動作は規制されない。
【0036】
変速用カム体81が所定以上の増速動作範囲にある場合には、規制突片56の規制動作が阻止されて、植付クラッチの接続操作が不能となるようにしている。
【0037】
このようにして、移植部昇降レバー43により植付クラッチ145を接続操作すると、その操作に連動して規制突片56が規制動作して、変速用カム体81の増速動作範囲が規制される。つまり、移植作業をする際に、移植部昇降レバー43により植付クラッチ145を接続操作すると、走行部1の走行速度が抑制される。そのため、移植作業を堅実に行う(苗移植精度を良好に確保する)ことができる。そして、移植作業時における走行部1の走行速度は、規制突片56の規制動作を調整することで、農作業体系に合わせて簡単に選定することができる。また、変速用カム体81の増速動作を規制する規制突片56は変速制御機構51に外付けすることができるため、機種の異なる農作業機に設けられている変速制御機構51を共用することができるとともに、作業に応じた車速の選定を容易に行うことができる。その結果、移植機の製造コストを低減することができる。
【0038】
そして、移植部昇降レバー43により植付クラッチ145を切断操作すると、その操作に連動して規制突片56が規制解除動作して、変速制御機構51の増速動作が規制解除される。つまり、移植作業時以外において、移植部昇降レバー43により植付クラッチ145を切断操作すると、走行部1の走行速度が抑制解除される。そのため、苗移植機Aの圃場内移動、特に旋回移動を速やかに行うことができて、作業能率を向上させることができる。
【0039】
また、走行部1が所定の速度以上で走行している際には、規制突片56の規制動作が阻止されて、移植部昇降レバー43により植付クラッチ145を接続操作することができない。そのため、走行部1が所定の速度以上で走行している際に、移植部昇降レバー43が誤操作されて植付クラッチ145が接続されるのを防止することができる。その結果、移植部3が高速作動して破損等されるという不具合の発生を回避することができる。
【0040】
図11に示すように、変速ペダル50を踏み込み操作して、変速用カム体81が増速動作範囲にある場合に、規制突片56がトルクバネ84の付勢力に抗しての規制動作可能となすことにより、移植部昇降レバー43を後方から前方に揺動操作して植付クラッチ145を切断動作から接続動作させることができるようにすることもできる。
【0041】
支持枠体25上には、図1〜図3に示すように、上部体12を被覆状に張設している。そして、上部体12の後部にはハンドルコラム35の周囲を被覆しているカバー体44の後方に位置させて運転席45を載置している。
【0042】
次に、図12を参照しながら走行部1の動力伝達構造について説明する。エンジン22には第1伝動機構150を介してミッションケース13を連動連結している。第1伝動機構150はエンジン22の駆動軸23とミッションケース13に設けた入力軸900との間にプーリ901,902を介して伝動ベルト903を巻回して形成している。ミッションケース13には可変斜板を有する油圧ポンプ910と油圧モータ911からなる静油圧式無段変速機912を設けている。油圧ポンプ910は入力軸900に連動連結している。油圧モータ911は油圧ポンプ910に流体接続し、出力軸913に主変速機構914を連動連結している。915は主クラッチ、916は主変速軸である。主変速軸916には左右方向に伸延する前車輪伝動軸917を連動連結し、前車輪伝動軸917の左右側端部にフロントアクスル918,918と前車軸18,18を介して左右一対の前車輪19,19を連動連結している。
【0043】
ミッションケース13の左側部には前後方向に軸線を向けた動力出力軸919を設けている。動力出力軸919は、基端部を主変速軸916に連動連結するとともに、先端部を後方に突出させて、リヤアクスルケース14から前方に突出させた動力入力軸920に第2伝動機構160を介して連動連結している。第2伝動機構160は前後方向に伸延する伝動シャフトで形成している。
【0044】
リヤアクスルケース14には左右方向に伸延する後車輪伝動軸921を設けている。入力軸920の基端部に後車輪伝動軸921の中途部を連動連結するとともに、後車輪伝動軸921の左右側部にリヤアクスル922,922と後車軸20,20を介して左右一対の後車輪21,21を連動連結している。923はサイドクラッチである。
【0045】
ミッションケース13の右側後部には前後方向に軸線を向けたPTO軸930を設けている。PTO軸930は、基端部を主変速機構914に連動連結した連動軸931に連動連結するとともに、先端部を後方に突出させて、後述する移植部3の動力取り入れ部710に第3伝動機構170を介して連動連結している。第3伝動機構170は、上流側伝動シャフト932と下流側伝動シャフト933とから形成している。そして、上流側伝動シャフト932は、PTO軸930の先端部とクラッチケース130に設けた第1伝動支軸144の基端部とを連動連結している。また、下流側伝動シャフト933は、クラッチケース130に設けた第2伝動支軸145の先端部と動力取り入れ部710から前方へ突出させた動力取り入れ軸711の先端部とを連動連結している。下流側伝動シャフト933は、中折れ自在かつ伸縮自在に形成している。
【0046】
昇降機構部2は、図2に示すように、支持枠体25の後側起立部を形成する昇降機構支持体24に上下回動自在に取り付けている。昇降機構部2は、図4にも示すように、前後方向に伸延するトップリンク片180と左右一対のロワリンク片181と後端部連結片182と単動式の昇降シリンダ183とから構成している。
【0047】
このように構成して、昇降シリンダ183に圧油を供給することで、昇降シリンダ183を単縮作動させて後端部連結片182を上昇させる一方、昇降シリンダ183に供給した圧油を排出させることで伸長作動させて、後端部連結片182に連結した移植部3を自重により下降させるようにしている。
【0048】
移植部3は、図1〜図4に示すように、支持機枠190上に苗を供給する左右一対の苗供給手段200を左右横方向及び上下縦方向に間欠的に移送可能に載設している。そして、支持機枠190の後端部に左右一対の移植ユニット300の前端部を左右幅方向に取付位置調節自在かつ着脱自在に取り付けている。各移植ユニット300は、苗供給手段200から苗を取り出す苗取手段400と、苗取手段400により取り出した苗を受けて圃場に植付ける植付手段500を一体的に組み付けて形成している。600は昇降センサローラ、610は覆土輪である。
【0049】
このように構成して、各苗供給手段200から供給された苗を苗取手段400により取り出して、苗取手段400により取り出した苗を植付手段500が受けて圃場に植付けるようにしている。そして、圃場に植え付けられた苗の両側方は覆土輪610により覆土される。
【符号の説明】
【0050】
A 苗移植機
1 走行部
2 昇降機構部
3 移植部
18 前車軸
19 前車輪
56 規制突片
81 変速用カム体
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
移植機の一形態として、特許文献1に開示されたものがある。かかる特許文献1には、移植部を配設した走行部を走行させながら、移植部により圃場に苗を移植可能とした乗用型の移植機が開示されている。そして、かかる移植機には植付クラッチレバーが設けられて、植付クラッチレバーを操作することにより移植部への動力伝達を接続・切断することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−225008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記した移植機では、走行速度を増大させると、それに比例して移植部の作動速度も増大して、苗移植精度を良好に確保することができないという不具合があった。
【0005】
そこで、本発明は、移植作業をする際に、移植部操作手段により植付クラッチを接続操作すると、走行部の走行速度が抑制されて、苗移植精度を良好に確保することができる移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、走行変速手段を備えた走行部を走行させながら、移植変速手段を備えた移植部により圃場に苗を移植可能とした移植機であって、走行変速手段に変速制御機構を介して増減速操作手段を連動連結する一方、移植変速手段に設けた植付クラッチに移植部操作手段を連動連結し、移植部操作手段による植付クラッチの接続操作に変速制御機構の増速動作範囲を規制する規制手段の規制動作を連動させたことを特徴とする。
【0007】
かかる移植機では、移植部操作手段により植付クラッチを接続操作すると、その操作に連動して規制手段が規制動作して、変速制御機構の増速動作範囲が規制される。つまり、移植作業をする際に、移植部操作手段により植付クラッチを接続操作すると、走行部の走行速度が抑制される。そのため、移植作業を堅実に行う(苗移植精度を良好に確保する)ことができる。そして、移植作業時における走行部の走行速度は、規制手段の規制動作を調整することで、農作業体系に合わせて簡単に選定することができる。また、変速制御機構の増速動作範囲を規制する規制手段は変速制御機構に外付けすることができるため、機種の異なる農作業機に設けられている変速制御機構を共用することができるとともに、作業に応じた車速の選定を容易に行うことができる。その結果、移植機の製造コストを低減することができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の移植機であって、移植部操作手段による植付クラッチの切断操作に変速制御機構の増速動作範囲を規制する規制手段の規制解除動作を連動させたことを特徴とする。
【0009】
かかる移植機では、移植部操作手段により植付クラッチを切断操作すると、その操作に連動して規制手段が規制解除動作して、変速制御機構の増速動作範囲が規制解除される。つまり、移植作業時以外において、移植部操作手段により植付クラッチを切断操作すると、走行部の走行速度が抑制解除される。そのため、移植機の圃場内移動、特に旋回移動を速やかに行うことができて、作業能率を向上させることができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の移植機であって、変速制御機構が所定以上の増速動作範囲にある場合には、規制手段の規制動作が阻止されて、植付クラッチの接続操作が不能となるようにしたことを特徴とする。
【0011】
かかる移植機では、走行部が所定の速度以上で走行している際には、規制手段の規制動作が阻止されて、移植部操作手段により植付クラッチを接続操作することができない。そのため、走行部が所定の速度以上で走行している際に、移植部操作手段が誤操作されて植付クラッチが接続されるのを防止することができる。その結果、移植部が高速作動して破損等されるという不具合の発生を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、次のような効果を奏する。すなわち、本発明によれば、移植部操作手段により植付クラッチを接続操作すると、走行部の走行速度が抑制されるため、移植作業を堅実に行う(苗移植精度を良好に確保する)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る苗移植機の斜視図。
【図2】本実施形態に係る苗移植機の側面図。
【図3】本実施形態に係る苗移植機の平面図。
【図4】本実施形態に係る苗移植機の底面図。
【図5】本実施形態に係る下部体の平面説明図。
【図6】本実施形態に係る変速制御機構の後方斜視説明図。
【図7】本実施形態に係る変速制御機構の前方斜視説明図。
【図8】本実施形態に係る変速制御機構の側面説明図。
【図9】規制突片の規制動作説明図。
【図10】規制突片の規制解除動作説明図。
【図11】規制突片の規制解除動作から規制動作への説明図。
【図12】走行部の動力伝達概念説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図3に示すAは、本発明に係る乗用型の苗移植機である。苗移植機Aは、図1〜図3に示すように、牽引車としての走行部1の後方に昇降機構部2を介して移植部3を昇降自在に取り付けている。そして、かかる苗移植機Aは、複数(本実施形態では2条)の苗の移植作業を行うことができるようにしている。
【0015】
走行部1は、図1〜図3に示すように、下部体11に上部体12を載設して構成している。そして、下部体11は、図4及び図5にも示すように、前部に配置したミッションケース13と、後部に配置したリヤアクスルケース14との間に、前後方向に伸延する連結フレーム15を介設して形成している。ミッションケース13の左右側壁部よりそれぞれ外側下方へ左右方向に伸延する軸ケース16,16を延設し、各軸ケース16,16の外側端部より下方へ上下方向に伸延するフロントアクスルケース17,17を延設し、各フロントアクスルケース17,17の外側下端部に前車軸18,18を介して左右一対の前車輪19,19を取り付けている。リヤアクスルケース14の左右外側端部には後車軸20,20を介して左右一対の後車輪21,21を取り付けている。連結フレーム15は、断面四角形状でかつ前後方向に直状に伸延するパイプ状に形成している。連結フレーム15上には原動機部としてのエンジン22を搭載している。
【0016】
図5及び図12に示すように、エンジン22とミッションケース13は第1伝動機構150を介して連動連結している。ミッションケース13とリヤアクスルケース14は第2伝動機構160を介して連動連結している。ミッションケース13と移植部3の動力取り入れ部710は第3伝動機構170を介して連動連結している。
【0017】
第3伝動機構170の中途部には、図2,図4及び図5に示すように、クラッチケース130を設けるとともに、クラッチケース130は下部体11の右側後部に配設している。クラッチケース130内には、図12に示すように、植付クラッチ145を具備するクラッチ機構141と株間調節機構142と移植部動力取出機構143と施肥装置動力取出機構144を連動連結して配設している。
【0018】
下部体11上には、図2及び図5に示すように、平面視枠状の支持枠体25を設けている。支持枠体25は、左右方向に伸延する前部支持片26と後部支持片27を前後方向に間隔をあけて略平行に配置し、両支持片26,27間に前後方向に伸延する左右一対のサイド支持片28,28を架設している。そして、両サイド支持片28,28の前部と中途部にそれぞれ突出支持片29,29,30,30を外側方へ突出させている。中途部の突出支持片30,30の各外側端と後部支持片27の両外側端との間には前後方向に伸延する補助サイド支持片31,31を架設している。両サイド支持片28,28の前部間には左右方向に伸延する第1・第2横架支持片32,33を前後に間隔をあけて横架している。前部支持片26と第1・第2横架支持片32,33との間にはハンドルコラム支持体34を架設している。
【0019】
ハンドルコラム支持体34上には、図6及び図7に示すように、円筒状のハンドルコラム35を立設し、ハンドルコラム35中にハンドル支軸36を挿通して、ハンドル支軸36の上端にハンドル37(図1〜図3参照)を取り付けている。ハンドルコラム35の上部には左右方向に張り出し状に板状のレバーガイド体38を張設し、レバーガイド体38の左側部に変速レバーガイド溝39を前後方向に伸延させて形成する一方、レバーガイド体38の右側部に移植部昇降レバーガイド溝40を前後方向に伸延させて形成している。ハンドルコラム35の中途部には、枢支体41を介して変速レバー42の下端部と移植部昇降レバー43の下端部をそれぞれ枢支し、変速レバーガイド溝39中に変速レバー42を挿通する一方、移植部昇降レバーガイド溝40中に移植部昇降レバー43を挿通している。
【0020】
右側中途部の突出支持片30上には、図5に示すように、増減速操作手段としての変速ペダル50を設け、変速ペダル50の踏み込み操作により、後述する走行変速手段としての静油圧式無段変速機912を無段変速操作可能としている。すなわち、変速ペダル50は、変速制御機構51を介して静油圧式無段変速機912の出力制御軸52に連動連結している。変速ペダル50は、図6〜図9に示すように、右側中途部の突出支持片30上に設けた枢支片53に後端部を左右方向に軸線を向けたペダル支軸54を介して枢支して、ペダル支軸54を中心に前端部側を上下方向に揺動自在となしている。後述する移植部操作手段としての移植部昇降レバー43による植付クラッチ145の接続操作には、変速制御機構51の増速動作範囲を規制する規制手段としての規制突片56の規制動作を連動させている。
【0021】
変速制御機構51は、変速ペダル50に連動連結した第1回転制御部60と、第1回転制御部60の回転動作をセンシングするセンシング部61と、センシング部61の一部を一側端部に支持する第2回転制御部63と、第2回転制御部63の他側端部に取り付けた回転駆動部64と、回転駆動部64に静油圧式無段変速機912の出力制御軸52に突設した制御アーム55を連動連結する制御ロッド65とを具備する。
【0022】
第1回転制御部60は、変速ペダル50の直前方に位置する右側のサイド支持片28の部分の位置に、左右方向に伸延する第1筒状支軸70を直交状態に取り付け、第1筒状支軸70中に第1制御軸71を挿通している。そして、第1制御軸71の右側端部と変速ペダル50の下面中途部との間に連動連結体72を介設している。連動連結体72は、上下方向に伸延して、変速ペダル50の下面中途部に上端部を連結したリンク片73と、リンク片73の下端部に連結して第1制御軸71の右側端部に連設したレバー体74とから形成している。レバー体74は後方伸延片75と下方張り出し片76とを有し、リンク片73の下端部に後方伸延片75の先端部を連結している。下方張り出し片76の下端部と右側中途部の突出支持片30の中途部との間に引っ張りスプリング77を介設している。78はレバー体74に上方へ突出させて設けたストッパー受け片、79は第1筒状支軸70の右側端部にブラケット80を介して設けたストッパー片であり、ストッパー片79にストッパー受け片78が当接して変速ペダル50の踏み込み作動が規制されるようにしている。
【0023】
このように構成して、変速ペダル50を踏み込み作動すると、連動連結体72がリンク片73と後方伸延片75の連結部を中心に中折れ状態に姿勢を変更して、第1制御軸71を引っ張りスプリング77の付勢力に抗して右側面視にて反時計廻りに回転させるようにしている。また、変速ペダル50の踏み込み作動が解除されると、引っ張りスプリング77の付勢力により連動連結体72が伸長状態に復元されて、変速ペダル50も踏み込み作動前の元の姿勢に復元されるようにしている。
【0024】
センシング部61は、第1筒状支軸70の左側端部にボス部82を介して変速用カム体81を同心円的に回動自在に外嵌している。変速用カム体81は、図8に示すように、基端部81aよりカム本体81bを略扇状に前方へ張り出し状に形成している。しかも、カム本体81bの先端縁部には上部が短径で下部が長径の円弧面カム81cを形成している。また、変速用カム体81は、基端部81aより規制受け片81dを下方へ突出させ、規制受け片81dの下端部に規制受けローラ81eを取り付けている。第1制御軸71の左側端部にはスプリングステー83の基端部を連設するとともに、スプリングステー83の先端部を、変速用カム体81の基端部81aさらにはボス部82の直後方へ伸延させ、かつ、ボス部82の右側端面の右側方に折曲させて配置している。そして、ボス部82の外周面にトルクバネ84を配置し、スプリングステー83にトルクバネ84の一側端部84aを係止するとともに、カム本体81bにトルクバネ84の他側端部84bを係止している。
【0025】
後述する第2回転制御部63の第2筒状支軸101の端面には、変速用カム体81の動作を検出するセンサケース85を取り付けている。センサケース85内には第2筒状支軸101の右側端に基端部を回動自在に嵌入した支軸86を配置し、支軸86の先端部を右側外方へ突出させている。支軸86の先端部には二叉従動片87の基端部を取り付けている。センサケース85内には増速用スイッチと減速用スイッチ(これらは図示しない)を対向状態に配置し、二叉従動片87がセンサケース85に対して一定角度だけ正回転(右側面視にて支軸86の時計廻り)すると増速用スイッチがONされ、また、二叉従動片87がセンサケース85に対して一定角度だけ逆回転(右側面視にて支軸86の反時計廻り)すると減速用スイッチがONされるようにしている。
【0026】
第2筒状支軸101におけるセンサケース85の直左側部に位置する部分には遊嵌リング90を外嵌し、遊嵌リング90より後方へピンステー91を突設して、ピンステー91に左右方向に軸線を向けたピン92の基端部を取り付けている。ピン92は二叉従動片87の中途部を摺動自在に貫通させて、その先端部92aを円弧面カム81cに上方から圧接させている。93はピンステー91と第1横架支持片32に固設した固定側ステー94との間に介設した下方引っ張りスプリングであり、下方引っ張りスプリング93によりピン92を下方へ付勢している。
【0027】
第2回転制御部63は、ハンドルコラム支持体34上に設けた軸支持体100に左右方向に軸線を向けた第2筒状支軸101を横架している。第2筒状支軸101の右側端部に前記したセンサケース85を取り付ける一方、左側端部に後方へ向けて膨出させて形成したセクタギヤ102の基端部を取り付けている。
【0028】
回転駆動部64はセクタギヤ102の直後方に電動モータ103を配設して、電動モータ103の駆動軸に取り付けたピニオンギヤ(これらは図示せず)をセクタギヤ102に噛合させている。そして、電動モータ103は増速用スイッチがONされると正回転駆動されるようにしている。さらには、セクタギヤ102を介して第2筒状支軸101が正回転(右側面視にて時計廻り)して、二叉従動片87とセンサケース85との相対角度が元の設定角度まで復元されると、電動モータ103の駆動が停止されるようにしている。また、電動モータ103は減速用スイッチがONされると逆回転駆動されるようにしている。さらには、セクタギヤ102を介して第2筒状支軸101が逆回転(右側面視にて反時計廻り)して、二叉従動片87とセンサケース85との相対角度が元の設定角度まで復元されると、電動モータ103の駆動が停止されるようにしている。
【0029】
制御ロッド65は前後方向に伸延して、セクタギヤ102の基端部から下方へ突出させたロッド連結片104に先端部(前端部)を連結する一方、静油圧式無段変速機912の出力制御軸52に突設した制御アーム55の先端部に基端部(後端部)を連結している。
【0030】
このように構成して、電動モータ103によりセクタギヤ102を介して第2筒状支軸101が正回転されると、ロッド連結片104を介してロッド連結片104が後方へ摺動されて制御アーム55の先端部が後方へ回動されるようにしている。その結果、制御アーム55の基端部に連動連結された静油圧式無段変速機912の出力制御軸52が増速側へ回動される。電動モータ103によりセクタギヤ102を介して第2筒状支軸101が逆回転されると、ロッド連結片104を介してロッド連結片104が前方へ摺動されて制御アーム55の先端部が前方へ回動されるようにしている。その結果、制御アーム55の基端部に連動連結された静油圧式無段変速機912の出力制御軸52が減速側へ回動される。
【0031】
上記したセンシング部61は、変速制御規制機構110により変速制御範囲が規制されるようにしている。すなわち、変速制御規制機構110は、移植部昇降レバー43と前記した規制手段としての規制突片56とを連動連結して形成している。移植部昇降レバー43は、枢支体41に、つまり、ハンドルコラム35の中途部に直交状態に設けた左右伸延支軸111にレバー枢支片112を介して枢支している。左右伸延支軸111の右側部にレバー枢支片112の下部を前後揺動自在に枢支し、レバー枢支片112の右側部に枢支ピン113を介して移植部昇降レバー43の下端部を左右揺動自在に枢支している。
【0032】
レバー枢支片112の上部には前後方向に伸延する前後伸延レバー体114の中途部を左右方向に軸線を向けた連結ピン115により連結している。前後伸延レバー体114の前部には仮止め凹部116を形成し、仮止め凹部116に仮止め体117の先端部を係脱自在に係合させて仮止め可能としている。仮止め体117は変速レバー42の変速操作に連動して仮止め凹部116に係脱動作するようにしている。また、固定側ステー94には、左右方向に軸線を向けた枢支軸120を横架し、枢支軸120に後方へ向けて突出する連動アーム121と規制突片56の各基端部を取り付けている。つまり、連動アーム121と規制突片56は枢支軸120を介して一体的に上下揺動自在となしている。連動アーム121の先端部と前後伸延レバー体114の後端部との間には上下方向に伸延する連動ロッド122を介設している。123,124はロッド連結ピンである。
【0033】
また、図5〜図8に示すように、前後伸延レバー体114の後端部と植付クラッチ145との間には、インナーワイヤの周囲をアウターワイヤ(これらは図示せず)で被覆して形成した連動ワイヤ118を介設している。そして、移植部昇降レバー43を前方に揺動操作すると、前後伸延レバー体114の後端部が連結ピン115を中心に上方へ回動され、前後伸延レバー体114の後端部に連結した連動ワイヤ118のインナーワイヤが上方へ引張摺動されて、インナーワイヤの後端部に連動連結された植付クラッチ145が接続作動されるようにしている。また、移植部昇降レバー43を後方に揺動操作すると、前後伸延レバー体114の後端部が連結ピン115を中心に下方へ回動され、前後伸延レバー体114の後端部に連結した連動ワイヤ118のインナーワイヤが下方へ後退摺動されて、インナーワイヤの後端部に連動連結された植付クラッチ145が切断作動されるようにしている。
【0034】
このように構成して、図9(a)に示すように、移植部昇降レバー43を前方に揺動操作して植付クラッチ145を接続操作すると、前後伸延レバー体114の後端部が連結ピン115を中心に上方へ回動され、連動ロッド122が上方へ摺動されて、連動アーム121と規制突片56が枢支軸120を中心に上方へ回動される。この際、規制突片56の先端部は、規制受け片81dの下端部に取り付けた規制受けローラ81eの前方に対向配置される(規制動作を採る)ようにしている。その結果、図9(b)に示すように、変速ペダル50を踏み込み操作すると、規制受けローラ81eを支持する規制受け片81dが前方へ回動されて、規制受けローラ81eが規制突片56の先端部に当接したところで、変速用カム体81の増速動作(本実施形態では反時計廻りの回動動作)が規制されるようにしている。
【0035】
また、図10(a)に示すように、移植部昇降レバー43を後方揺動操作して植付クラッチ145を切断操作すると、前後伸延レバー体114の後端部が下方へ回動され、連動ロッド122が下方へ摺動されて、連動アーム121と規制突片56が枢支軸120を中心に下方へ回動される。この際、規制突片56の先端部は、直下方を指向する規制解除動作を採って、規制受け片81dの下端部に取り付けた規制受けローラ81eの前方に対向配置されないようにしている。その結果、図10(b)に示すように、変速ペダル50を踏み込み操作すると、規制受けローラ81eを支持する規制受け片81dが前方へ回動されて、規制受けローラ81eが規制突片56の先端部に当接することがないため、変速用カム体81の増速動作は規制されない。
【0036】
変速用カム体81が所定以上の増速動作範囲にある場合には、規制突片56の規制動作が阻止されて、植付クラッチの接続操作が不能となるようにしている。
【0037】
このようにして、移植部昇降レバー43により植付クラッチ145を接続操作すると、その操作に連動して規制突片56が規制動作して、変速用カム体81の増速動作範囲が規制される。つまり、移植作業をする際に、移植部昇降レバー43により植付クラッチ145を接続操作すると、走行部1の走行速度が抑制される。そのため、移植作業を堅実に行う(苗移植精度を良好に確保する)ことができる。そして、移植作業時における走行部1の走行速度は、規制突片56の規制動作を調整することで、農作業体系に合わせて簡単に選定することができる。また、変速用カム体81の増速動作を規制する規制突片56は変速制御機構51に外付けすることができるため、機種の異なる農作業機に設けられている変速制御機構51を共用することができるとともに、作業に応じた車速の選定を容易に行うことができる。その結果、移植機の製造コストを低減することができる。
【0038】
そして、移植部昇降レバー43により植付クラッチ145を切断操作すると、その操作に連動して規制突片56が規制解除動作して、変速制御機構51の増速動作が規制解除される。つまり、移植作業時以外において、移植部昇降レバー43により植付クラッチ145を切断操作すると、走行部1の走行速度が抑制解除される。そのため、苗移植機Aの圃場内移動、特に旋回移動を速やかに行うことができて、作業能率を向上させることができる。
【0039】
また、走行部1が所定の速度以上で走行している際には、規制突片56の規制動作が阻止されて、移植部昇降レバー43により植付クラッチ145を接続操作することができない。そのため、走行部1が所定の速度以上で走行している際に、移植部昇降レバー43が誤操作されて植付クラッチ145が接続されるのを防止することができる。その結果、移植部3が高速作動して破損等されるという不具合の発生を回避することができる。
【0040】
図11に示すように、変速ペダル50を踏み込み操作して、変速用カム体81が増速動作範囲にある場合に、規制突片56がトルクバネ84の付勢力に抗しての規制動作可能となすことにより、移植部昇降レバー43を後方から前方に揺動操作して植付クラッチ145を切断動作から接続動作させることができるようにすることもできる。
【0041】
支持枠体25上には、図1〜図3に示すように、上部体12を被覆状に張設している。そして、上部体12の後部にはハンドルコラム35の周囲を被覆しているカバー体44の後方に位置させて運転席45を載置している。
【0042】
次に、図12を参照しながら走行部1の動力伝達構造について説明する。エンジン22には第1伝動機構150を介してミッションケース13を連動連結している。第1伝動機構150はエンジン22の駆動軸23とミッションケース13に設けた入力軸900との間にプーリ901,902を介して伝動ベルト903を巻回して形成している。ミッションケース13には可変斜板を有する油圧ポンプ910と油圧モータ911からなる静油圧式無段変速機912を設けている。油圧ポンプ910は入力軸900に連動連結している。油圧モータ911は油圧ポンプ910に流体接続し、出力軸913に主変速機構914を連動連結している。915は主クラッチ、916は主変速軸である。主変速軸916には左右方向に伸延する前車輪伝動軸917を連動連結し、前車輪伝動軸917の左右側端部にフロントアクスル918,918と前車軸18,18を介して左右一対の前車輪19,19を連動連結している。
【0043】
ミッションケース13の左側部には前後方向に軸線を向けた動力出力軸919を設けている。動力出力軸919は、基端部を主変速軸916に連動連結するとともに、先端部を後方に突出させて、リヤアクスルケース14から前方に突出させた動力入力軸920に第2伝動機構160を介して連動連結している。第2伝動機構160は前後方向に伸延する伝動シャフトで形成している。
【0044】
リヤアクスルケース14には左右方向に伸延する後車輪伝動軸921を設けている。入力軸920の基端部に後車輪伝動軸921の中途部を連動連結するとともに、後車輪伝動軸921の左右側部にリヤアクスル922,922と後車軸20,20を介して左右一対の後車輪21,21を連動連結している。923はサイドクラッチである。
【0045】
ミッションケース13の右側後部には前後方向に軸線を向けたPTO軸930を設けている。PTO軸930は、基端部を主変速機構914に連動連結した連動軸931に連動連結するとともに、先端部を後方に突出させて、後述する移植部3の動力取り入れ部710に第3伝動機構170を介して連動連結している。第3伝動機構170は、上流側伝動シャフト932と下流側伝動シャフト933とから形成している。そして、上流側伝動シャフト932は、PTO軸930の先端部とクラッチケース130に設けた第1伝動支軸144の基端部とを連動連結している。また、下流側伝動シャフト933は、クラッチケース130に設けた第2伝動支軸145の先端部と動力取り入れ部710から前方へ突出させた動力取り入れ軸711の先端部とを連動連結している。下流側伝動シャフト933は、中折れ自在かつ伸縮自在に形成している。
【0046】
昇降機構部2は、図2に示すように、支持枠体25の後側起立部を形成する昇降機構支持体24に上下回動自在に取り付けている。昇降機構部2は、図4にも示すように、前後方向に伸延するトップリンク片180と左右一対のロワリンク片181と後端部連結片182と単動式の昇降シリンダ183とから構成している。
【0047】
このように構成して、昇降シリンダ183に圧油を供給することで、昇降シリンダ183を単縮作動させて後端部連結片182を上昇させる一方、昇降シリンダ183に供給した圧油を排出させることで伸長作動させて、後端部連結片182に連結した移植部3を自重により下降させるようにしている。
【0048】
移植部3は、図1〜図4に示すように、支持機枠190上に苗を供給する左右一対の苗供給手段200を左右横方向及び上下縦方向に間欠的に移送可能に載設している。そして、支持機枠190の後端部に左右一対の移植ユニット300の前端部を左右幅方向に取付位置調節自在かつ着脱自在に取り付けている。各移植ユニット300は、苗供給手段200から苗を取り出す苗取手段400と、苗取手段400により取り出した苗を受けて圃場に植付ける植付手段500を一体的に組み付けて形成している。600は昇降センサローラ、610は覆土輪である。
【0049】
このように構成して、各苗供給手段200から供給された苗を苗取手段400により取り出して、苗取手段400により取り出した苗を植付手段500が受けて圃場に植付けるようにしている。そして、圃場に植え付けられた苗の両側方は覆土輪610により覆土される。
【符号の説明】
【0050】
A 苗移植機
1 走行部
2 昇降機構部
3 移植部
18 前車軸
19 前車輪
56 規制突片
81 変速用カム体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行変速手段を備えた走行部を走行させながら、移植変速手段を備えた移植部により圃場に苗を移植可能とした移植機であって、
走行変速手段に変速制御機構を介して増減速操作手段を連動連結する一方、移植変速手段に設けた植付クラッチに移植部操作手段を連動連結し、
移植部操作手段による植付クラッチの接続操作に変速制御機構の増速動作範囲を規制する規制手段の規制動作を連動させたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
移植部操作手段による植付クラッチの切断操作に変速制御機構の増速動作範囲を規制する規制手段の規制解除動作を連動させたことを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項3】
変速制御機構が所定以上の増速動作範囲にある場合には、規制手段の規制動作が阻止されて、植付クラッチの接続操作が不能となるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の移植機。
【請求項1】
走行変速手段を備えた走行部を走行させながら、移植変速手段を備えた移植部により圃場に苗を移植可能とした移植機であって、
走行変速手段に変速制御機構を介して増減速操作手段を連動連結する一方、移植変速手段に設けた植付クラッチに移植部操作手段を連動連結し、
移植部操作手段による植付クラッチの接続操作に変速制御機構の増速動作範囲を規制する規制手段の規制動作を連動させたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
移植部操作手段による植付クラッチの切断操作に変速制御機構の増速動作範囲を規制する規制手段の規制解除動作を連動させたことを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項3】
変速制御機構が所定以上の増速動作範囲にある場合には、規制手段の規制動作が阻止されて、植付クラッチの接続操作が不能となるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−74836(P2013−74836A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216450(P2011−216450)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】
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