移植機
【課題】 植付け深さに左右されることなく、広い範囲の植付け深さについて安定植付けすることができる移植機を提供することにある。
【解決手段】 植付具(11)と、この植付具(11)を後端部に保持して昇降動作可能な昇降アーム(12)と、この昇降アーム(12)と並行して昇降動作しつつ上記植付具(11)と連結してその姿勢を保持する副リンク(13)とによって構成される植付装置を設けた移植機において、上記昇降アーム(12)の前端部(12a)を前後に揺動可能な揺動アーム(14)に連結するとともに、同昇降アーム(12)の中間部分(12b)に連結されて回転駆動するクランクアーム(15)を設け、副リンク(13)の前端に連結されてクランクアーム(15)の回転動作と同期して回転動作する副クランクアーム(19)を設け、クランクアーム(15)よりも揺動アーム(14)の方が長い構成とした。
【解決手段】 植付具(11)と、この植付具(11)を後端部に保持して昇降動作可能な昇降アーム(12)と、この昇降アーム(12)と並行して昇降動作しつつ上記植付具(11)と連結してその姿勢を保持する副リンク(13)とによって構成される植付装置を設けた移植機において、上記昇降アーム(12)の前端部(12a)を前後に揺動可能な揺動アーム(14)に連結するとともに、同昇降アーム(12)の中間部分(12b)に連結されて回転駆動するクランクアーム(15)を設け、副リンク(13)の前端に連結されてクランクアーム(15)の回転動作と同期して回転動作する副クランクアーム(19)を設け、クランクアーム(15)よりも揺動アーム(14)の方が長い構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、昇降アームによってその後端部の植付具を昇降可能に保持する植付装置を備えた野菜苗移植機が知られている。この野菜苗移植機は、前端部を機体側に連結した昇降アームおよび平行動作する平行リンクによって植付具の姿勢を保持しつつ昇降することができ、また、昇降アームの前端を偏心支持して植付具の姿勢を変化させることにより、背の高い野菜苗株との干渉を小さく抑えて安定植付けすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−89330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の野菜苗移植機の植付装置は、植付け走行において、植付具の下降位置と上昇位置との差が大きくなり、深植えを要する苗株の植付けの場合は、植付け穴の深さとともに植付穴の開口径が大きくなることから、苗株を直立して安定保持することが困難となるので、適用可能な植付け深さの範囲が限定されるという問題があった。
【0005】
解決しようとする問題点は、植付け深さに左右されることなく、広い範囲の植付け深さについて安定植付けすることができる移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、植付具(11)と、この植付具(11)を後端部に保持して昇降動作可能な昇降アーム(12)と、この昇降アーム(12)と並行して昇降動作しつつ上記植付具(11)と連結してその姿勢を保持する副リンク(13)とによって構成される植付装置(6)を設けた移植機において、上記昇降アーム(12)の前端部(12a)を前後に揺動可能な揺動アーム(14)に連結するとともに、同昇降アーム(12)の中間部分(12b)に連結されて回転駆動するクランクアーム(15)を設け、副リンク(13)の前端に連結されてクランクアーム(15)の回転動作と同期して回転動作する副クランクアーム(19)を設け、クランクアーム(15)よりも揺動アーム(14)の方が長い構成としたことを特徴とする移植機とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、植付具(11)は、開閉動作して植付ける構成とし、植付具(11)を開閉させる開閉レバー(16)を、植付具(11)と昇降アーム(12)との支点(12c)に軸支して設け、昇降アーム(12)とクランクアーム(15)との連結点(12b)に開閉アーム(18)を軸支して設け、開閉レバー(16)と開閉アーム(18)とを連結する連結ロッド(17)を設け、開閉アーム(18)に作用する開閉カム(20)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の移植機とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、植付装置(6)に苗株を供給する苗株搬送装置(7)を設け、植付装置(6)および苗株搬送装置(7)を入出力軸(41a、41b)間で変速伝動する変速機(41)およびその変速動力を伝動制御する植付クラッチ(45a)によって駆動する構成とするとともに、植付装置(6)の伝動軸(44)および苗株搬送装置(7)の伝動軸(45)を上記変速機(41)の入出力軸(41a、41b)間に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移植機とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、植付装置(6)に苗株を供給する苗株搬送装置(7)を設け、苗株搬送装置(7)は、周回する苗受カップ(7c)を備えると共に、苗受カップ(7c)の下端を塞いで該苗受カップ(7c)内の苗株を落下しないように受ける周回スライド板(51)を、苗受カップ(7c)の周回経路に沿って設けたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の移植機とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明は、昇降アーム12の先端が揺動アーム14によって前後移動可能なので、後端部の植付具11がクランクアーム15の回転によって前後動作とともに大きく上下動作する長円状軌道に沿って昇降動作し、また、昇降アーム12の先端は、揺動アーム14の円弧軌跡による高さ位置の変化により植付具11の昇降速度の変化を伴うことから、植付具11の長円状軌道の下限位置の近傍ではその前後の下降時と上昇時に重畳的に増速されることとなるので、クランクアーム15の回転による植付具11の長円状軌道について、その前側を下降動作、後側を上昇動作として一定の前進車速Vで植付け走行する場合に、植付具11は下限位置における対地速度が小さく抑えられるとともに、高速の昇降動作によって下降経路と上昇経路の位置の差を一定範囲内に抑えることができるので、植付け深さに左右されることなく、植付具11が圃場に穿孔する植付穴の口径を小さくして安定して植付けすることができ、すなわち、植付け深さの適用範囲を拡大することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明の効果に加え、簡易な構成により、高精度で植付具11を開閉させることができる。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明の効果に加え、植付装置および苗株搬送装置の伝動系をコンパクトな伝動ケースによって構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】発明適用の構成例を示す野菜苗移植機の側面図
【図2】植付装置の要部拡大側面図
【図3】植付具の下降状態の側面図
【図4】植付装置のリンク構成線図
【図5】植付具の昇降動作軌跡の側面図
【図6】植付け走行時の植付具の昇降動作軌跡の側面図
【図7】主伝動機構の要部軸線展開図
【図8】植付伝動部の要部拡大側面図
【図9】植付伝動部の伝動系統展開図
【図10】苗株搬送装置の平面図(a)および側面図(b)
【図11】苗受カップの下面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は、発明適用構成例を示す野菜苗移植機の側面図である。
【0014】
移植機1は、前部にエンジン2及び主伝動機構3と走行車輪としての前側の左右の案内輪4,4及び後側の左右の駆動輪5,5と、主伝動機構3のケ−ス後部から延びるハンドルフレーム3aに植付装置6および苗株搬送装置7による植付部、覆土鎮圧輪8,8及び操縦ハンドル9等を備えて構成される。
【0015】
詳細には、主伝動機構3には、機体高さと左右高さを調整するために、その両側にアーム状の左右の伝動支持部5a,5aを回動可能に備え、この左右の伝動支持部5a,5aを介して左右の駆動輪5,5を支持するとともに、後述の植付具11を昇降可能に備えた植付装置6と周回テーブル型の苗株搬送装置7とからなる植付部を走行系と同期して駆動する。
【0016】
植付部の苗株搬送装置7は、投入苗株を受けうる受容体として苗受カップ7c…を等ピッチで配置し、不図示の伝動ロッドを介して走行系と連動して周回動作するフラットテーブル形式に構成し、植付具11の上昇端位置を通る長円形の軌道を周回動作可能に構成する。個々の苗受カップ7c…により、植付具11と対応するタイミングで植付装置6に苗株を搬送投下する。
【0017】
植付装置6は、要部拡大側面図を図2に示すように、上部に形成した開口11aから苗株を受けて左右に開閉可能な嘴状の植付具11と、この植付具11を昇降駆動する植付伝動部3cに前端側を連結する昇降アーム12と、この昇降アーム12の下方に並行して昇降動作しつつ植付具11のホルダ11bと連結してその姿勢を保持する副リンク13とから構成される。また、昇降アーム12の前端部12aは、前後に揺動可能に下端14aを支軸に軸支した揺動アーム14を介して前後移動可能に連結するとともに、昇降アーム12の中間部分の連結点12bを回転駆動するクランクアーム15を設ける。
【0018】
副リンク13と植付具11との連結部13cは、ホルダ11bの後部に配置してコンパクト化を図り、また、植付具11の開閉動作のための開閉レバー16を昇降アーム12との支点12cに軸支する。開閉レバー16には連結ロッド17を介して並行動作が可能な開閉アーム18を設けてクランクアーム15の連結点12bに軸支するとともに、このクランクアーム15の回転動作と平行に回転動作して副リンク13の前端を支持する副クランクアーム19を設け、この副クランクアーム19と一体に開閉カム20を設け、ローラ18aを介して開閉アーム18に所定のタイミングで作用させる。
【0019】
上記構成の植付装置6は、その下降状態の側面図を図3に示すように、クランクアーム15の回転によって上下に揺動される昇降アーム12により、植付具11が昇降動作と連動して左右に開閉して苗株の植付けを行う。詳細には、リンク構成線図およびその動作線図をそれぞれ図4、図5に示すように、クランクアーム15が回転すると、昇降アーム12の前端部12aが揺動アーム14により前後移動しつつ上下に揺動され、後端位置の植付具11は、クランクアーム15の連結点12bからの距離に応じて上下に延びる長円状軌道Aによってその周速が下限位置Bよりその前後で増速される。
【0020】
上記長円状軌道Aの形状は、長径側直径寸法L4が(L1+L2)/L1、短径側直径寸法L5が2Rの数式によって概略的に規定される。この場合、クランクアーム15の半径をR、昇降アーム12について揺動アーム14からクランクアーム15までの長さをL1、同昇降アーム12についてクランクアーム15から植付具11までの長さをL2、揺動アーム14の長さをL3とし、かつ、L3>Rを条件とする。
【0021】
また、昇降アーム12の前端部の揺動アーム14による上方に膨らむ円弧軌道Cによってその頂点位置Dの前後で植付具が下降動作から上昇動作に移行するので、長円状軌道Aに沿う動作速度は、下限位置動作Eの周速に対してその前後部分で重畳されて増速される。植付具11の長円状軌道Aの下限位置Bと揺動アーム14の円弧軌道Cの頂点位置Dの両タイミングを一致させることにより、さらに効果的な増速作用を得ることができる。
【0022】
したがって、植付具11の昇降軌跡の下限位置Bの周速Eに対してその前後の下降動作Fと上昇動作Gについて周速が増加することから、長円状軌道Aの前側を下降、後側を上昇する植付け動作において、長円状軌道Aの下限位置Bの周速Eと対応する前進車速で植付け走行する場合に、その昇降動作軌跡の側面図を図6に示すように、下降経路Fの位置と上昇経路Gの位置の差Lを一定範囲内に抑えて近接することができるので、植付け深さの適用範囲が拡大され、すなわち、植付け深さに左右されることなく、植付具が圃場に穿孔する植付穴の口径を小さくして苗株の倒れを招くことなく安定保持して植付けすることができる。また、下限位置Bにおいて昇降アーム12が水平姿勢となるように全体を構成することで圃場面に対する垂直動作が確保されるので、その前後の増速効果を最大化することができる。
【0023】
植付具11の開閉動作については、昇降アーム12の支点12cに軸支した開閉レバー16が、昇降アーム12の昇降位置によることなく、連結ロッド17を介して開閉アーム18と並行動作し、この開閉アーム18は、クランクアーム15と同一位相で回転動作する副クランクアーム19と一体の開閉カム20によって動作制御される。したがって、簡易な形状のカムによって開閉タイミングと開閉量の高精度の制御が可能となる。この場合において、開閉アーム18と開閉カム20を逆配置に構成しても両者の位置関係が変わらないことから、同一の作用および効果を得ることができる。
【0024】
次に、伝動機構について説明すると、エンジンと一体構成の主伝動機構3は、その要部軸線展開図を図7に示すように、入力ギヤ31からエンジン動力を受ける入力軸32、一定ギヤ比で逆転駆動されるカウンタ軸33、シフトギヤ34を備える変速軸35、機体走行用の左右の駆動軸36,36を備え、変速軸35は、シフトギヤ34のシフト位置により、入力軸32の高速ギヤ32aの選択による移動速、低速ギヤ32bの選択による植付速、カウンタ軸33の後進ギヤ33aの選択による後退速に変速される。
【0025】
また、カウンタ軸33によりベベルギヤ機構37aを介して植付軸37を一定速度で駆動する一方で、株間距離を変更するべく走行速度を変えて植付けを行う。このように構成することにより、株間距離が短くても、植付具11のサイクル動作が維持されて苗供給作業が可能となり、また、株間距離が長い場合についても植付能率を維持することができる。この場合において、植付軸37は、クランクアーム15と副クランクアーム19を同時に駆動する。
【0026】
植付伝動部3cは、要部拡大側面図およびその伝動系統展開図をそれぞれ図8、図9に示すように、側面視で無段変速機41と重なる位置に、植付装置6の伝動軸44、苗株搬送装置7の伝動軸45を配置する。すなわち、主伝動機構3からの動力を受ける無段変速機41の入力軸41aから分岐動力を受ける植付伝動軸44に間欠クラッチ44aを介設し、変速動力を出力する出力軸41bから植付クラッチ45aを介して苗株搬送装置7の伝動軸45を変速駆動するとともに、この変速動力を間欠クラッチ44aの制御側に入力する。上記構成の植付伝動部3cは、コンパクトな構成により、無段変速機41による変速動力によって苗株搬送装置7のテーブル駆動に合わせて間欠クラッチ44aが動作することから、植付具11の植付け動作と協調動作することができる。
【0027】
次に、苗株搬送装置7は、平面図(a)および側面図(b)を図10に示すように、筒状に構成した苗受カップ7c…の下端を受ける周回スライド板51を長円軌道に沿って構成し、この周回スライド板51に開閉可能にシャッター52を設け、このシャッター52を開放するように作用する開放レバー53を植付具11設ける。
【0028】
上記構成の苗株搬送装置7により、植付具11の上昇のタイミングでシャッター52が開放されることから、シャッター式の簡易な構成によって苗受カップ7c…の苗株を植付具11に確実に落下して受け渡しをすることができる。
【0029】
また、苗受カップ7c…の下部には、その下面図を図11に示すように、4箇所の突起7d…を設けることにより、周回スライド板51に対する滑りをよくすることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、昇降アームによってその後端部の植付具を昇降可能に保持する植付装置を備えた野菜苗移植機が知られている。この野菜苗移植機は、前端部を機体側に連結した昇降アームおよび平行動作する平行リンクによって植付具の姿勢を保持しつつ昇降することができ、また、昇降アームの前端を偏心支持して植付具の姿勢を変化させることにより、背の高い野菜苗株との干渉を小さく抑えて安定植付けすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−89330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の野菜苗移植機の植付装置は、植付け走行において、植付具の下降位置と上昇位置との差が大きくなり、深植えを要する苗株の植付けの場合は、植付け穴の深さとともに植付穴の開口径が大きくなることから、苗株を直立して安定保持することが困難となるので、適用可能な植付け深さの範囲が限定されるという問題があった。
【0005】
解決しようとする問題点は、植付け深さに左右されることなく、広い範囲の植付け深さについて安定植付けすることができる移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、植付具(11)と、この植付具(11)を後端部に保持して昇降動作可能な昇降アーム(12)と、この昇降アーム(12)と並行して昇降動作しつつ上記植付具(11)と連結してその姿勢を保持する副リンク(13)とによって構成される植付装置(6)を設けた移植機において、上記昇降アーム(12)の前端部(12a)を前後に揺動可能な揺動アーム(14)に連結するとともに、同昇降アーム(12)の中間部分(12b)に連結されて回転駆動するクランクアーム(15)を設け、副リンク(13)の前端に連結されてクランクアーム(15)の回転動作と同期して回転動作する副クランクアーム(19)を設け、クランクアーム(15)よりも揺動アーム(14)の方が長い構成としたことを特徴とする移植機とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、植付具(11)は、開閉動作して植付ける構成とし、植付具(11)を開閉させる開閉レバー(16)を、植付具(11)と昇降アーム(12)との支点(12c)に軸支して設け、昇降アーム(12)とクランクアーム(15)との連結点(12b)に開閉アーム(18)を軸支して設け、開閉レバー(16)と開閉アーム(18)とを連結する連結ロッド(17)を設け、開閉アーム(18)に作用する開閉カム(20)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の移植機とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、植付装置(6)に苗株を供給する苗株搬送装置(7)を設け、植付装置(6)および苗株搬送装置(7)を入出力軸(41a、41b)間で変速伝動する変速機(41)およびその変速動力を伝動制御する植付クラッチ(45a)によって駆動する構成とするとともに、植付装置(6)の伝動軸(44)および苗株搬送装置(7)の伝動軸(45)を上記変速機(41)の入出力軸(41a、41b)間に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移植機とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、植付装置(6)に苗株を供給する苗株搬送装置(7)を設け、苗株搬送装置(7)は、周回する苗受カップ(7c)を備えると共に、苗受カップ(7c)の下端を塞いで該苗受カップ(7c)内の苗株を落下しないように受ける周回スライド板(51)を、苗受カップ(7c)の周回経路に沿って設けたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の移植機とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明は、昇降アーム12の先端が揺動アーム14によって前後移動可能なので、後端部の植付具11がクランクアーム15の回転によって前後動作とともに大きく上下動作する長円状軌道に沿って昇降動作し、また、昇降アーム12の先端は、揺動アーム14の円弧軌跡による高さ位置の変化により植付具11の昇降速度の変化を伴うことから、植付具11の長円状軌道の下限位置の近傍ではその前後の下降時と上昇時に重畳的に増速されることとなるので、クランクアーム15の回転による植付具11の長円状軌道について、その前側を下降動作、後側を上昇動作として一定の前進車速Vで植付け走行する場合に、植付具11は下限位置における対地速度が小さく抑えられるとともに、高速の昇降動作によって下降経路と上昇経路の位置の差を一定範囲内に抑えることができるので、植付け深さに左右されることなく、植付具11が圃場に穿孔する植付穴の口径を小さくして安定して植付けすることができ、すなわち、植付け深さの適用範囲を拡大することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明の効果に加え、簡易な構成により、高精度で植付具11を開閉させることができる。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明の効果に加え、植付装置および苗株搬送装置の伝動系をコンパクトな伝動ケースによって構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】発明適用の構成例を示す野菜苗移植機の側面図
【図2】植付装置の要部拡大側面図
【図3】植付具の下降状態の側面図
【図4】植付装置のリンク構成線図
【図5】植付具の昇降動作軌跡の側面図
【図6】植付け走行時の植付具の昇降動作軌跡の側面図
【図7】主伝動機構の要部軸線展開図
【図8】植付伝動部の要部拡大側面図
【図9】植付伝動部の伝動系統展開図
【図10】苗株搬送装置の平面図(a)および側面図(b)
【図11】苗受カップの下面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は、発明適用構成例を示す野菜苗移植機の側面図である。
【0014】
移植機1は、前部にエンジン2及び主伝動機構3と走行車輪としての前側の左右の案内輪4,4及び後側の左右の駆動輪5,5と、主伝動機構3のケ−ス後部から延びるハンドルフレーム3aに植付装置6および苗株搬送装置7による植付部、覆土鎮圧輪8,8及び操縦ハンドル9等を備えて構成される。
【0015】
詳細には、主伝動機構3には、機体高さと左右高さを調整するために、その両側にアーム状の左右の伝動支持部5a,5aを回動可能に備え、この左右の伝動支持部5a,5aを介して左右の駆動輪5,5を支持するとともに、後述の植付具11を昇降可能に備えた植付装置6と周回テーブル型の苗株搬送装置7とからなる植付部を走行系と同期して駆動する。
【0016】
植付部の苗株搬送装置7は、投入苗株を受けうる受容体として苗受カップ7c…を等ピッチで配置し、不図示の伝動ロッドを介して走行系と連動して周回動作するフラットテーブル形式に構成し、植付具11の上昇端位置を通る長円形の軌道を周回動作可能に構成する。個々の苗受カップ7c…により、植付具11と対応するタイミングで植付装置6に苗株を搬送投下する。
【0017】
植付装置6は、要部拡大側面図を図2に示すように、上部に形成した開口11aから苗株を受けて左右に開閉可能な嘴状の植付具11と、この植付具11を昇降駆動する植付伝動部3cに前端側を連結する昇降アーム12と、この昇降アーム12の下方に並行して昇降動作しつつ植付具11のホルダ11bと連結してその姿勢を保持する副リンク13とから構成される。また、昇降アーム12の前端部12aは、前後に揺動可能に下端14aを支軸に軸支した揺動アーム14を介して前後移動可能に連結するとともに、昇降アーム12の中間部分の連結点12bを回転駆動するクランクアーム15を設ける。
【0018】
副リンク13と植付具11との連結部13cは、ホルダ11bの後部に配置してコンパクト化を図り、また、植付具11の開閉動作のための開閉レバー16を昇降アーム12との支点12cに軸支する。開閉レバー16には連結ロッド17を介して並行動作が可能な開閉アーム18を設けてクランクアーム15の連結点12bに軸支するとともに、このクランクアーム15の回転動作と平行に回転動作して副リンク13の前端を支持する副クランクアーム19を設け、この副クランクアーム19と一体に開閉カム20を設け、ローラ18aを介して開閉アーム18に所定のタイミングで作用させる。
【0019】
上記構成の植付装置6は、その下降状態の側面図を図3に示すように、クランクアーム15の回転によって上下に揺動される昇降アーム12により、植付具11が昇降動作と連動して左右に開閉して苗株の植付けを行う。詳細には、リンク構成線図およびその動作線図をそれぞれ図4、図5に示すように、クランクアーム15が回転すると、昇降アーム12の前端部12aが揺動アーム14により前後移動しつつ上下に揺動され、後端位置の植付具11は、クランクアーム15の連結点12bからの距離に応じて上下に延びる長円状軌道Aによってその周速が下限位置Bよりその前後で増速される。
【0020】
上記長円状軌道Aの形状は、長径側直径寸法L4が(L1+L2)/L1、短径側直径寸法L5が2Rの数式によって概略的に規定される。この場合、クランクアーム15の半径をR、昇降アーム12について揺動アーム14からクランクアーム15までの長さをL1、同昇降アーム12についてクランクアーム15から植付具11までの長さをL2、揺動アーム14の長さをL3とし、かつ、L3>Rを条件とする。
【0021】
また、昇降アーム12の前端部の揺動アーム14による上方に膨らむ円弧軌道Cによってその頂点位置Dの前後で植付具が下降動作から上昇動作に移行するので、長円状軌道Aに沿う動作速度は、下限位置動作Eの周速に対してその前後部分で重畳されて増速される。植付具11の長円状軌道Aの下限位置Bと揺動アーム14の円弧軌道Cの頂点位置Dの両タイミングを一致させることにより、さらに効果的な増速作用を得ることができる。
【0022】
したがって、植付具11の昇降軌跡の下限位置Bの周速Eに対してその前後の下降動作Fと上昇動作Gについて周速が増加することから、長円状軌道Aの前側を下降、後側を上昇する植付け動作において、長円状軌道Aの下限位置Bの周速Eと対応する前進車速で植付け走行する場合に、その昇降動作軌跡の側面図を図6に示すように、下降経路Fの位置と上昇経路Gの位置の差Lを一定範囲内に抑えて近接することができるので、植付け深さの適用範囲が拡大され、すなわち、植付け深さに左右されることなく、植付具が圃場に穿孔する植付穴の口径を小さくして苗株の倒れを招くことなく安定保持して植付けすることができる。また、下限位置Bにおいて昇降アーム12が水平姿勢となるように全体を構成することで圃場面に対する垂直動作が確保されるので、その前後の増速効果を最大化することができる。
【0023】
植付具11の開閉動作については、昇降アーム12の支点12cに軸支した開閉レバー16が、昇降アーム12の昇降位置によることなく、連結ロッド17を介して開閉アーム18と並行動作し、この開閉アーム18は、クランクアーム15と同一位相で回転動作する副クランクアーム19と一体の開閉カム20によって動作制御される。したがって、簡易な形状のカムによって開閉タイミングと開閉量の高精度の制御が可能となる。この場合において、開閉アーム18と開閉カム20を逆配置に構成しても両者の位置関係が変わらないことから、同一の作用および効果を得ることができる。
【0024】
次に、伝動機構について説明すると、エンジンと一体構成の主伝動機構3は、その要部軸線展開図を図7に示すように、入力ギヤ31からエンジン動力を受ける入力軸32、一定ギヤ比で逆転駆動されるカウンタ軸33、シフトギヤ34を備える変速軸35、機体走行用の左右の駆動軸36,36を備え、変速軸35は、シフトギヤ34のシフト位置により、入力軸32の高速ギヤ32aの選択による移動速、低速ギヤ32bの選択による植付速、カウンタ軸33の後進ギヤ33aの選択による後退速に変速される。
【0025】
また、カウンタ軸33によりベベルギヤ機構37aを介して植付軸37を一定速度で駆動する一方で、株間距離を変更するべく走行速度を変えて植付けを行う。このように構成することにより、株間距離が短くても、植付具11のサイクル動作が維持されて苗供給作業が可能となり、また、株間距離が長い場合についても植付能率を維持することができる。この場合において、植付軸37は、クランクアーム15と副クランクアーム19を同時に駆動する。
【0026】
植付伝動部3cは、要部拡大側面図およびその伝動系統展開図をそれぞれ図8、図9に示すように、側面視で無段変速機41と重なる位置に、植付装置6の伝動軸44、苗株搬送装置7の伝動軸45を配置する。すなわち、主伝動機構3からの動力を受ける無段変速機41の入力軸41aから分岐動力を受ける植付伝動軸44に間欠クラッチ44aを介設し、変速動力を出力する出力軸41bから植付クラッチ45aを介して苗株搬送装置7の伝動軸45を変速駆動するとともに、この変速動力を間欠クラッチ44aの制御側に入力する。上記構成の植付伝動部3cは、コンパクトな構成により、無段変速機41による変速動力によって苗株搬送装置7のテーブル駆動に合わせて間欠クラッチ44aが動作することから、植付具11の植付け動作と協調動作することができる。
【0027】
次に、苗株搬送装置7は、平面図(a)および側面図(b)を図10に示すように、筒状に構成した苗受カップ7c…の下端を受ける周回スライド板51を長円軌道に沿って構成し、この周回スライド板51に開閉可能にシャッター52を設け、このシャッター52を開放するように作用する開放レバー53を植付具11設ける。
【0028】
上記構成の苗株搬送装置7により、植付具11の上昇のタイミングでシャッター52が開放されることから、シャッター式の簡易な構成によって苗受カップ7c…の苗株を植付具11に確実に落下して受け渡しをすることができる。
【0029】
また、苗受カップ7c…の下部には、その下面図を図11に示すように、4箇所の突起7d…を設けることにより、周回スライド板51に対する滑りをよくすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付具(11)と、この植付具(11)を後端部に保持して昇降動作可能な昇降アーム(12)と、この昇降アーム(12)と並行して昇降動作しつつ上記植付具(11)と連結してその姿勢を保持する副リンク(13)とによって構成される植付装置(6)を設けた移植機において、上記昇降アーム(12)の前端部(12a)を前後に揺動可能な揺動アーム(14)に連結するとともに、同昇降アーム(12)の中間部分(12b)に連結されて回転駆動するクランクアーム(15)を設け、副リンク(13)の前端に連結されてクランクアーム(15)の回転動作と同期して回転動作する副クランクアーム(19)を設け、クランクアーム(15)よりも揺動アーム(14)の方が長い構成としたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
植付具(11)は、開閉動作して植付ける構成とし、植付具(11)を開閉させる開閉レバー(16)を、植付具(11)と昇降アーム(12)との支点(12c)に軸支して設け、昇降アーム(12)とクランクアーム(15)との連結点(12b)に開閉アーム(18)を軸支して設け、開閉レバー(16)と開閉アーム(18)とを連結する連結ロッド(17)を設け、開閉アーム(18)に作用する開閉カム(20)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
植付装置(6)に苗株を供給する苗株搬送装置(7)を設け、植付装置(6)および苗株搬送装置(7)を入出力軸(41a、41b)間で変速伝動する変速機(41)およびその変速動力を伝動制御する植付クラッチ(45a)によって駆動する構成とするとともに、植付装置(6)の伝動軸(44)および苗株搬送装置(7)の伝動軸(45)を上記変速機(41)の入出力軸(41a、41b)間に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移植機。
【請求項4】
植付装置(6)に苗株を供給する苗株搬送装置(7)を設け、苗株搬送装置(7)は、周回する苗受カップ(7c)を備えると共に、苗受カップ(7c)の下端を塞いで該苗受カップ(7c)内の苗株を落下しないように受ける周回スライド板(51)を、苗受カップ(7c)の周回経路に沿って設けたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の移植機。
【請求項1】
植付具(11)と、この植付具(11)を後端部に保持して昇降動作可能な昇降アーム(12)と、この昇降アーム(12)と並行して昇降動作しつつ上記植付具(11)と連結してその姿勢を保持する副リンク(13)とによって構成される植付装置(6)を設けた移植機において、上記昇降アーム(12)の前端部(12a)を前後に揺動可能な揺動アーム(14)に連結するとともに、同昇降アーム(12)の中間部分(12b)に連結されて回転駆動するクランクアーム(15)を設け、副リンク(13)の前端に連結されてクランクアーム(15)の回転動作と同期して回転動作する副クランクアーム(19)を設け、クランクアーム(15)よりも揺動アーム(14)の方が長い構成としたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
植付具(11)は、開閉動作して植付ける構成とし、植付具(11)を開閉させる開閉レバー(16)を、植付具(11)と昇降アーム(12)との支点(12c)に軸支して設け、昇降アーム(12)とクランクアーム(15)との連結点(12b)に開閉アーム(18)を軸支して設け、開閉レバー(16)と開閉アーム(18)とを連結する連結ロッド(17)を設け、開閉アーム(18)に作用する開閉カム(20)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
植付装置(6)に苗株を供給する苗株搬送装置(7)を設け、植付装置(6)および苗株搬送装置(7)を入出力軸(41a、41b)間で変速伝動する変速機(41)およびその変速動力を伝動制御する植付クラッチ(45a)によって駆動する構成とするとともに、植付装置(6)の伝動軸(44)および苗株搬送装置(7)の伝動軸(45)を上記変速機(41)の入出力軸(41a、41b)間に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移植機。
【請求項4】
植付装置(6)に苗株を供給する苗株搬送装置(7)を設け、苗株搬送装置(7)は、周回する苗受カップ(7c)を備えると共に、苗受カップ(7c)の下端を塞いで該苗受カップ(7c)内の苗株を落下しないように受ける周回スライド板(51)を、苗受カップ(7c)の周回経路に沿って設けたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−74905(P2013−74905A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−14364(P2013−14364)
【出願日】平成25年1月29日(2013.1.29)
【分割の表示】特願2008−142716(P2008−142716)の分割
【原出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月29日(2013.1.29)
【分割の表示】特願2008−142716(P2008−142716)の分割
【原出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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