説明

移植機

【課題】ペースト及び粒状の両施肥装置を備え、粒状肥料を安定して施肥する。
【解決手段】走行機体5の前部にペースト肥料用タンク15を配置し、ホース19により植付装置10に導き、ノズル21からペースト肥料を施肥する。走行機体5の後部に粒状肥料タンク25を配置し、走行機体5に取付けたホース26の先端26aから粒状肥料を散蒔く。粒状肥料は、整地装置29のロータ31が回転することによりすき込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体と植付装置との間に、圃場面を整地する整地装置を配置した田植機等の移植機に係り、詳しくは粒状肥料を施肥する粒状施肥装置とペースト状肥料を施肥するペースト施肥装置の両施肥装置を備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペースト状又は液状等の即効性肥料を施肥する浅層施肥部と、例えば粒状等の緩効性肥料を施肥する深層施肥部とを備えた田植機や湛水直播機等の水田作業機が案出されている(特許文献1)。該水田作業機は、浅層及び深層の両施肥部の施肥部(施肥管)は、共に植付装置のフロートに配置されており、深層用施肥管は、植付け苗の根部下方の深層位置に、浅層用施肥管は、植付け苗の根部の側方浅層部にそれぞれ施肥される。
【0003】
また、植付装置に、走行機体の後車輪の後部側方近くを耕耘する耕耘装置と、施肥装置とを備え、耕耘装置で耕耘された部分に施肥して、該施肥後の土壌面に苗を植付ける移植機が案出されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2622594号公報
【特許文献2】特開平3−168007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1のものは、移植機による苗の植付けに際して、即効性肥料と緩効性肥料が同時に施肥され、効率的な水田作業を行うことができるが、ペースト状等の即効性肥料タンクは、走行機体に配置されており、緩効性肥料タンクは、植付装置に配置されており、両肥料タンクから植付装置のフロート部分に導かれ、植付装置部分で施肥される。このため、植付装置に、通常の植付けに係る装置以外に、緩効性(例えば粒状)肥料用タンク及び前記両施肥装置の施肥吐出部(深層用施肥管及び浅層用施肥管)を配置する必要があり、植付装置の構造が複雑で面倒になると共に、移植機の前後バランスが後方重心になり易い。
【0006】
また、緩効性肥料を植付け苗の根部の下方である深層位置に施肥する必要があり、ガイドにより開溝された圃場中に深層施肥管を入れ、施肥後にフロートにより泥土を均平にしている。このため、植付け作業の抵抗が大きいと共に、硬い圃場では、所定の深層位置に施肥することが困難であり、また深層施肥管の摩耗も激しい。
【0007】
前記特許文献2のものは、耕耘装置により膨軟した圃場面に、作溝器で作溝しながら施肥するか、又は施肥した部分を耕耘装置で耕耘し、肥料を土壌面に混合させた全層施肥形態として、この状態でフロートで均平にして植付け作業を行うものであり、施肥は、圃場浅層の耕耘部分のみであり、ペースト状及び粒状等の異なる複数の肥料を適正位置に施肥して、効果的な施肥を行うことはできない。
【0008】
そこで、本発明は、ペースト及び粒状の両施肥装置を走行機体に配置し、粒状肥料を整地装置ですき込み、もって上述した課題を解決した移植機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、走行機体(5)の後方に植付装置(10)を昇降自在に連結し、かつ前記走行機体(5)と植付装置(10)の前後方向での間部分に整地装置(29)を配設してなる、移植機(1)において、
粒状肥料用タンク(25)を前記走行機体(5)に配置した粒状施肥装置と、
ペースト肥料用タンク(15)を前記走行機体(5)に配置したペースト施肥装置と、を備え、
前記粒状施肥装置のホース(26)を前記走行機体(5)に取付けて、該ホース先端の施肥吐出部(26a)を前記整地装置(29)の前方に配置し、
前記ペースト施肥装置のホース(19)を前記走行機体(5)から前記植付装置(10)に延出して、該ホース先端に設けられた施肥吐出部(21)を前記植付装置(10)に配置したことを特徴とする。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、粒状施肥装置及びペースト施肥装置を備え、苗の生育にあった効果的な施肥作業を行うことができるものでありながら、両施肥装置の肥料用タンクを走行機体に配置したので、植付装置の構造を簡単化することができると共に、移植機の前後バランスを良好に保持することができる。
【0012】
粒状施肥装置のホースは、走行機体に取付けられてそのままホース先端の施肥吐出部から圃場面に散蒔かれるので、ホースの取り回しがシンプルで安定した施肥が行われると共に、上記施肥吐出部から散蒔かれた粒状肥料は、整地装置によりすき込まれるので、覆土板等の専用の部材を必要としないものでありながら、水による肥料の流亡を防止して、安定した施肥効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した移植機(田植機)の全体を示す側面図。
【図2】施肥部分及び植付部を示す平面図。
【図3】植付け面に対する施肥位置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に沿って、本発明による移植機(田植機)について説明する。移植機1は、図1に示すように、前輪2及び後輪3により支持される走行機体5を有している。走行機体5の前部には、ボンネット6で覆われてエンジンが搭載されており、その後方は運転座席等を有する運転席7になっている。上記走行機体5の後方には、リンク装置9及び油圧装置により昇降自在に植付装置10が連結されており、植付装置10は、苗のせ台11、該苗のせ台上の苗を掻取って田面に植付ける複数のプランタ12及び田面上を滑走して均平にする複数のフロート13を備える。
【0015】
前記ボンネット6の左右における前記走行機体5には、ペースト肥料用タンク15が配置されており、更に上方に向けて予備苗台16が設置されている。運転席7部分の走行機体5の下部には、ペースト肥料用ポンプ17が配置されており、前記ペースト肥料用タンク15と上記ポンプ17の吸入口が配管により結ばれている。上記ポンプ17の複数の吐出口からそれぞれホース19が植付装置10に向けて延びており、これら各ホース19の先端は、前記各フロート13の中央部に配置された連結管20に接続しており(図2参照)、更に各連結管20からフロート13を貫通してその底面側に延び、走行方向後方に向けて延びている吐出ノズル(施肥吐出部)21に連結している。上記ペースト肥料用タンク15、ポンプ17及びホース19、連結管20及びノズル21がペースト施肥装置を構成する。
【0016】
前記走行機体5における運転席7の後方には、粒状肥料用タンク25が配設されている。該タンク25から、肥料繰出し装置を介して走行機体の幅方向に植付け条数に分岐した各ホース26が前記走行機体5に取付けられ下方に延びて、後車輪3部分にて田面に向けて粒状肥料を吐出している。上記粒状肥料用タンク25及び各ホース26等が粒状施肥装置を構成し、上記各ホース26の先端26aが施肥吐出部を構成する。
【0017】
前記走行機体5と植付装置10の間部分に、整地装置29が配置されている。整地装置29は、図1及び図2に示すように、機体幅方向に延びるロータ軸30及び該ロータ軸に複数に分割して固定されているカゴ型の整地ロータ31を有しており、上記ロータ軸30を回転自在に支持した支持ロッド32が植付装置10に配置された連結アームに連結されている。また、上記ロータ軸30は、伝動軸33を介してエンジンからの動力が伝達される。上記整地ロータ31は、植付装置10と一体に昇降すると共に、操作レバー(図示せず)により上下動して、作業位置と非作業位置とに選択設定できると共に、上記操作レバーに連動して又は専用の操作レバーによりクラッチを操作して動力伝達状態(回転状態)及び切断状態(非回転状態)に切換え得る。
【0018】
前記粒状施肥装置の各施肥吐出部(ホース先端)26aは、上記整地ロータ31の走行方向前方に位置し、かつ各プランタ12により各苗の植付位置(図2のA参照)の側方近傍に位置するように配置される。
【0019】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、移植機1を圃場面で走行しつつ、植付装置10により苗Aを田面Dに植付ける。この際、ペースト施肥装置のポンプ17を駆動することにより、ペースト肥料用タンク15から各ホース19にペースト状肥料が供給され、更に各フロート13の中央部で土中に切込まれている吐出ノズル(施肥吐出部)21からペースト状肥料が土中に施される。
【0020】
同時に、粒状施肥装置が駆動され、粒状肥料用タンク25から各ホース26を通って、その先端(施肥吐出部)26aから粒状肥料が吐出される。この際、整地装置29が作業位置に下降され、かつクラッチが接続されて整地ロータ31が回転状態にあり、該整地装置29の走行方向前方のホース先端26aから田面Dに散蒔かれた粒状肥料は、上記整地ロータ31の回転により土中にすき込まれる。これにより、粒状肥料は、覆土された状態となり、水により流亡することが防止され、安定した施肥効果を得ることができる。なお、上記整地装置29は、上記粒状肥料のすき込みだけではなく、植付け面の凹凸を均平に均す本来の機能を当然に有するものであり、該本来の機能に加えて、上記粒状肥料のすき込み効果を奏する。
【0021】
図2及び図3に示すように、フロート13の中央部分に配置された吐出ノズル21から土中に施肥されるペースト肥料Bは、フロート13の左右切欠き部においてプランタ12により植付けられる苗Aの条間中央部分において、植付け苗の根部より少し深い部分に連続して(又は間欠的に)施肥される。上記吐出ノズル21により切割られた跡Fは、田面D(Eは水面)の土圧により塞がれる。また、ホース先端26aから散蒔かれて、整地装置29ですき込まれた粒状肥料Cは、植付苗Aの側方部分に連続して施肥される。初期生育効果の大きいペースト肥料Bは、植付け苗Aの根部に吸収され、緩効性の粒状肥料Cは、植付け苗Aの側条に連続して施肥され、一度に効果の高い施肥を行うことができる。
【0022】
なお、ペースト肥料及び粒状肥料は、苗の育成に最適な効果時期になるものが選ばれ、また施肥位置も上述した実施の形態に限らず、ペースト肥料を植付苗の側条に、粒状肥料を条間に施肥してもよい。
【0023】
ペースト肥料用タンク15及びポンプ17等のペースト施肥装置及び粒状肥料用タンク25及びホース等のその供給装置からなる粒状施肥装置は、両方とも走行機体5に配置されており、植付装置10の構造をシンプルかつ軽量化することができる。また、走行機体5にあって、その前部にペースト肥料用タンク15を配置し、その後部に粒状肥料用タンク25を配置したので、走行機体5の前後バランスを良好に保つことができる。更に、粒状施肥装置は、肥料用タンク25から略々真下方向に施肥を案内して吐出すればよく、ホース26の取り回しが容易となり、肥料詰り等の不具合を減少して安定して供給することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 移植機
5 走行機体
10 植付装置
15 ペースト肥料用タンク
17 ペースト肥料用ポンプ
19 ホース
21 施肥吐出部(吐出ノズル)
25 粒状肥料用タンク
26 ホース
26a 施肥吐出部(ホース先端)
29 整地装置
31 整地ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後方に植付装置を昇降自在に連結し、かつ前記走行機体と植付装置の前後方向での間部分に整地装置を配設してなる、移植機において、
粒状肥料用タンクを前記走行機体に配置した粒状施肥装置と、
ペースト肥料用タンクを前記走行機体に配置したペースト施肥装置と、を備え、
前記粒状施肥装置のホースを前記走行機体に取付けて、該ホース先端の施肥吐出部を前記整地装置の前方に配置し、
前記ペースト施肥装置のホースを前記走行機体から前記植付装置に延出して、該ホース先端に設けられた施肥吐出部を前記植付装置に配置した、
ことを特徴とする移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−78285(P2013−78285A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220046(P2011−220046)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】