説明

移植片用の共有結合した親水性塗装組成物

【課題】外科移植片用の親水性塗装組成物、特に、シリコーン、疎水性アクリル材料またはヒドロゲル材料を含有する眼科移植片の提供。
【解決手段】移植片用の共有結合した親水性共重合体被覆が開示されている。この共重合体被覆は、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチル、親水性モノマーおよび架橋剤を含有し、この親水性モノマーは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ポリエチレングリコール(200−500)モノ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(200−500)モノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート;およびアクリルアミドからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、外科移植片用の被覆に関する。特に、本発明は、外科移植片の表面に共有結合した親水性の共有結合的に架橋した共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
強固かつ折り畳み可能の両方の移植可能な眼科レンズ材料は、公知である。眼科移植片に使用される最も一般的な剛性材料は、ポリメタクリル酸メチル(「PMMA」)である。折り畳み可能な眼内レンズ(「IOL」)材料は、一般に、以下の3つの範疇に分類できる:シリコーン材料、ヒドロゲル材料、および非ヒドロゲル(「疎水性」)アクリル材料。例えば、Foldable Intraocular Lenses,Ed.Martinら、Slack Incorporated,Thorofare,New Jersey(1993)を参照のこと。本発明の目的のために、疎水性アクリル材料とは、室温で約5%未満の水を吸収するアクリル材料である。
【0003】
眼科移植片で使用されるシリコーン材料および非ヒドロゲルアクリル材料は、潜在的に、この移植片を目に挿入中または挿入後、内皮細胞およびおそらく他の細胞または組織に損傷を与え得る。これらの材料は、一般に、疎水性および/または粘着性であり、この移植片が接触する目の組織から細胞を引き離し得る。特に、莢膜バッグ(capsular bag)と虹彩との間に移植したファキック(phakic)IOLの場合には、この移植片がその標的位置に達した後でも、この移植片とそれを取り囲む細胞または組織との間で物理的な接触が起こる可能性が高い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、外科移植片用の親水性塗装組成物、特に、シリコーン、疎水性アクリル材料またはヒドロゲル材料を含有する眼科移植片に関する。さらに具体的には、本発明は、移植片用の共重合体塗装材料に関し、ここで、この共重合体塗装材料は、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルおよび親水性モノマーを含有し、この親水性モノマーは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ポリエチレングリコール(200−500)モノ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(200−500)モノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート;およびアクリルアミドからなる群から選択される。この塗装材料は、約40〜約70%の水を吸収できる。
【0005】
本発明はまた、塗装共重合体を移植片の表面に塗布する方法に関し、この共重合体は、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルおよび上で特定した親水性モノマーを含有する。1実施形態では、この方法は、潜在架橋剤を含有する共重合体を溶媒に溶解して塗装溶液を形成する工程、塗装溶液を該移植片の表面と接触させる工程、および塗装共重合体中の潜在架橋剤を活性化する工程を包含する。別の実施形態では、この方法は、共重合体を溶媒に溶解して塗装溶液を形成する工程、塗装溶液に架橋剤を添加する工程、塗装溶液を移植片の表面と接触させる工程、および被覆移植片を加熱して架橋を作り出す工程を包含する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1) 外科移植片用の共重合体塗装組成物であって、ここで、該塗装組成物は、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチル、親水性モノマー、および架橋剤を含有し、該親水性モノマーは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ポリエチレングリコール(200−500)モノ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(200−00)モノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選択され、ここで、該塗装組成物は、約40〜約70%の水を吸収できる、塗装組成物。
(項目2) 前記親水性モノマーが、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルである、項目1に記載の塗装組成物。
(項目3) 前記(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルが、メタクリル酸2−フェニルエチルであり、そして前記親水性モノマーが、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル;メタクリル酸1,3−ジヒドロキシプロピル;メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル;メタクリル酸1,3−および2,3−ジヒドロキシプロピルの混合物;メタクリル酸モノメトキシグリセリル;およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目2に記載の塗装組成物。
(項目4) 前記親水性モノマーが、メタクリル酸1,3−および2,3−ジヒドロキシプロピルの混合物である、項目3に記載の塗装組成物。
(項目5) 前記塗装組成物が、約42〜約55%の水を吸収できる、項目1に記載の塗装組成物。
(項目6) 前記塗装組成物が、約25〜約60%の(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルおよび約40〜約75%の前記親水性モノマーを含有する、項目1に記載の塗装組成物。
(項目7) 前記塗装組成物が、25〜40%の(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルおよび25〜35%の前記親水性モノマーを含有する、項目6に記載の塗装組成物。
(項目8) 前記架橋剤が、ブロックドイソシアネートおよび過酸化物からなる群から選択される、項目1に記載の塗装組成物。
(項目9) 前記架橋剤が、イミダゾールブロックドイソシアナトエチルメタクリレート;ジ−イミダゾールブロックド1,12−イソシアナトドデカン;過酸化ベンゾイル;および過酸化2,4−ジクロロベンゾイルからなる群から選択される、項目8に記載の塗装組成物。
(項目10) 前記塗装組成物が、さらに、前記(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルおよび前記親水性モノマーと共重合可能なUV吸収体;前記(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルおよび前記親水性モノマーと共重合可能な青色光遮断着色剤;反応性可塑剤;および連鎖移動剤からなる群から選択される1種またはそれ以上の成分を含有する、項目1に記載の塗装組成物。
(項目11) 前記塗装組成物が、ポリエチレングリコール(200−2000)モノ(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコール(200−2000)モノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される反応性可塑性を含む、項目10に記載の塗装組成物。
(項目12) 前記反応性可塑剤が、ポリエチレングリコール(400)モノメチルエーテルモノメタクリレートである、項目11に記載の塗装組成物。
(項目13) 前記塗装組成物が、1−ドデカンチオールおよび2−メルカプトエタノールからなる群から選択される連鎖移動剤を含有する、項目10に記載の塗装組成物。
(項目14) 被覆および基板を含む被覆外科移植片であって、ここで、該被覆は、共有結合により、該基板に付着しており、該被覆は、約0.01〜約1μm厚であり、そして該被覆は、共有的に架橋した共重合体を含み、該共重合体は、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチル、親水性モノマーおよび架橋剤を含有し、該親水性モノマーは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ポリエチレングリコール(200−500)モノ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(200−500)モノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート;およびアクリルアミドからなる群から選択され、ここで、該塗装組成物は、約40〜約70%の水を吸収できる、被覆外科移植片。
(項目15) 前記基板が、疎水性アクリル材料を含む、項目14に記載の被覆外科移植片。
(項目16) 外科移植片に被覆を塗布する方法であって、該方法は、以下:
a)未架橋共重合体を調製する工程であって、該共重合体は、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチル、親水性モノマー、および必要に応じて、潜在架橋剤を含有し、該親水性モノマーは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ポリエチレングリコール(200−500)モノ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(200−500)モノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート;およびアクリルアミドからなる群から選択され、ここで、該共重合体は、約40〜約70%の水を吸収できる、工程;
b)該共重合体を有機溶媒に溶解することにより塗装溶液を形成し、そして該共重合体が潜在架橋剤を含有しない場合、該溶液に架橋剤を添加する工程;
c)該塗装溶液を該移植片に塗布する工程;および
e)該移植片上の該塗装溶液を乾燥して、該潜在架橋剤または架橋剤を活性化し該共重合体を該移植片に共有結合させる工程、
を包含する、方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
他に指示がなければ、全ての量は、重量%で表わされる。
【0007】
本発明の塗装材料は、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルおよび親水性モノマーを含有する共重合体であり、この親水性モノマーは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ポリエチレングリコール(200−500)モノ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(200−500)モノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート;およびアクリルアミドからなる群から選択される。好ましい親水性モノマーは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルである。メタクリル酸2−ヒドロキシエチル;メタクリル酸1,3−ジヒドロキシプロピル;メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル;メタクリル酸1,3−および2,3−ジヒドロキシプロピルの混合物(「GMMA」);メタクリル酸モノメトキシグリセリル;およびそれらの混合物は、最も好ましい。最も好ましい(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルは、メタクリル酸2−フェニルエチル(「2−PEMA」)である。
【0008】
この塗装材料は、約40〜約70%の水、好ましくは、約42〜約55%の水を吸収できる。この共重合体のモノマーの割合は、所望の含水量に依存しており、個々の濃度は、一般に、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルについて、約25〜約60%、そしてこの親水性モノマーについて、約40〜約75%の範囲である。最も好ましい実施形態では、所望の含水量は、約42〜約55%であり、この塗装材料は、25〜40%の2−PEMAおよび25〜35%のGMMAを含む。
【0009】
1実施形態では、上記成分に加えて、この塗装材料はまた、潜在架橋剤(例えば、ブロックドイソシアネート)を含有する。適当なブロックドイソシアネート化合物としては、イミダゾールブロックドイソシアナトエチルメタクリレートが挙げられる。この実施形態では、この潜在架橋剤は、この塗装共重合体の他の成分と共重合される。代替の実施形態では、この架橋剤は、この塗装共重合体が溶解されて塗装溶液を形成する時点まで、添加されない。この代替の実施形態で使用するのに適当な架橋剤の例には、ジ−イミダゾールブロックド1,12−イソシアナトドデカンおよび過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイルおよび過酸化2,4−ジクロロベンゾイル)が挙げられる。
【0010】
本発明の塗装組成物に含有される架橋剤の量は、特に、選択した架橋剤および所望の架橋度に依存している。一般に、この塗装組成物を架橋してそれを移植片の表面に固定するのに必要な架橋剤の量は、ブロックドイソシアネートについて、約0.5〜3%、そして過酸化物について、約3〜6%である。
【0011】
この共重合体塗装材料は、選択した(メタ)アクリル酸2−フェニルエチル、親水性モノマーおよび重合開始剤を、(必要に応じて、潜在架橋剤と共に)、配合して、塗装組成物を形成し、次いで、この塗装組成物を硬化することにより、調製される。任意の種類の重合開始剤が使用され得、これには、熱開始剤および光開始剤が挙げられるが、但し、この開始剤は、この潜在架橋剤(もし、存在しているなら)を活性化することなく、活性化できる。好ましい開始剤は、UVおよび青色光活性化開始剤である。最も好ましい開始剤は、ベンゾイルホスフィンオキシド開始剤、すなわち、2,4,6−トリメチル−ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(benzoyldiphenylophosphine oxide)(「TPO」)であり、これは、青色光で活性化される。本発明の塗装組成物中の重合開始剤の量は、その硬化条件に依存している。しかしながら、一般に、その量は、約3%(w/w)以下、好ましくは、約2%(w/w)以下、最も好ましくは、約1%(w/w)である。
【0012】
早すぎる架橋を防止するために、本発明の塗装組成物は、1個より多い不飽和結合を有するモノマーを多量には含有しない。このような成分には、一般的な架橋モノマーであるエチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;エチレングリコールジアクリレート;メタクリル酸アリル;アクリル酸アリル;1,3−プロパンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;ポリエチレンオキシドジアクリレートなどが挙げられる。
【0013】
この(メタ)アクリル酸2−フェニルエチル、親水性モノマー、任意の潜在架橋剤、および重合開始剤に加えて、この塗装組成物は、必要に応じて、この(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルおよび親水性モノマーと共重合可能なUV吸収体;この(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルおよび親水性モノマーと共重合可能な青色光遮断着色剤;反応性可塑剤(これは、曇りまたは皮膜割れをできるだけ少なくする);および連鎖移動剤(chain transfer agemt)(これは、この塗装共重合体内の架橋を遅くする)からなる群から選択される1種またはそれ以上の成分を含有する。
【0014】
紫外線吸収発色団は、約400nmより短い波長を有する光を吸収するが可視光をあまり多く吸収しない任意の化合物であり得る。適当な共重合可能紫外線吸収化合物には、米国特許第4,304,895号で開示された置換2−ヒドロキシベンゾフェノンおよび米国特許第4,528,311号で開示された2−ヒドロキシ−5−アクリルオキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾールがある。最も好ましい紫外光吸収化合物は、2−(3’−メタリル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールである。適当な重合可能な青色光遮断発色団には、米国特許第5,470,932号で開示されたものが挙げられる。青色光活性化重合開始剤が選択され、そして青色光遮断着色剤が添加される場合、この重合開始剤の素性または濃度は、何らかの干渉をできるだけ少なくするように調節しなければならない場合がある。
【0015】
適当な反応性可塑剤または軟化剤には、ポリエチレングリコール(200−2000)モノ(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコール(200−2000)モノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。メタクリレートが好ましく、PEG(400)モノメチルエーテルモノメタクリレートは、最も好ましい。必要であるかまたは望ましい場合、この反応性可塑剤の量は、約5〜約25%の範囲である。移植片の機能およびこの被覆の厚さに依存して、反応性可塑剤が必要とされ得ない程度の曇りまたは被膜割れは、許容され得る。
【0016】
この連鎖移動剤は、もし存在しているなら、典型的には、0.01〜0.4%の範囲の量で添加される。多くの連鎖移動剤が、当該技術分野で公知である。適当な連鎖移動剤の例には、1−ドデカンチオールおよび2−メルカプトエタノールが挙げられる。
【0017】
この塗装共重合体を重合した後、塗装溶液は、塗装重合体を溶媒または溶媒混合物(例えば、エタノールと2−ペンタノンとの50:50(重量部)混合物)に溶解することにより、調製される。この溶媒または溶媒混合物は、好ましくは、透明で均一な塗装溶液を与えるように選択され、この場合、選択した溶媒または溶媒混合物は、曇った被覆が残る程には急速に蒸発しない。この塗装共重合体内に潜在架橋剤が含有されない場合、この塗装溶液には、架橋剤(例えば、ジ−イミダゾールブロックド1,12−イソシアナトドデカンまたは過酸化物)が添加される。
【0018】
この塗装溶液中の塗装共重合体の濃度は、所望の被覆厚さに依存している。この被覆の厚さに影響を与える他の因子には、この塗装溶液の粘度、塗装溶液および移植片の温度、ならびに選択した溶媒の蒸発速度が挙げられる。一般に、本発明の被覆は、1μm厚以下、好ましくは、約0.5μm厚である。約0.01μmの最低被覆厚が、その被覆を、この移植片の何らかの操作(例えば、IOLの折り畳み)および患者の標的部位での移植中または長期滞留中に引き起こされる何らかの摩滅に耐えるために必要であると思われる。この塗装溶液中での約7〜9%の塗装共重合体濃度が、典型的には、浸漬コーティング法において、約0.5μm厚の被覆を生じる。
【0019】
この塗装溶液は、通常の方法(例えば、スピンまたは浸漬コーティング法)により、この移植片に塗布される。浸漬コーティングが好ましい。この移植片は、好ましくは、この塗装溶液中の溶媒により引き起こされる移植片のいずれかの膨潤をできるだけ少なくするために、素早く浸漬される。
【0020】
この被覆は、この移植片に塗布した後、乾燥される。2段階乾燥法が好ましい。まず第一に、被覆した移植片は、その溶媒の殆どまたは全部が蒸発するまで(一般に、15分以下)、空気中で乾燥される。第二に、被覆した移植片は、高温(例えば、約80〜110℃)で焼き付けられて、残留している溶媒をできるだけ取り除き、この架橋剤を活性化する。好ましい乾燥法は、15分間にわたる室温空気乾燥に続いて、ブロックドイソシアネート架橋剤については、100℃で約2時間焼き付けること、そして過酸化物架橋剤については、110℃で約3〜5時間焼き付けることが含まれる。
【0021】
この被覆は、一旦、この架橋剤を活性化することにより形成された共有結合により、移植片の表面に固定されると、溶媒または溶媒混合物(この塗装溶液の調製でベースとして使用したものと同じ溶媒を含めて)により除去することはできない。この被覆を移植片の表面に共有結合した後、この被覆(または移植片)での任意の不純物または未結合成分は、適当な溶媒(例えば、この移植片がACRYSOF(登録商標)IOLの場合、アセトン)中での抽出により、除去され得る。この被覆および基板の抽出溶媒に対する膨潤応答は、この抽出工程中の一方または両方に対する損傷を防止するために、異なりすぎないことが重要である。この被覆の被膜割れまたはひび割れを防止するために、この被覆の膨潤は、この基板のそれと等しいかまたはそれより大きくすべきである。
【0022】
被覆した移植片を操作する前に、この被覆は、好ましくは、数秒間にわたって水和されて、被覆に対する被膜割れまたは他の損傷をできるだけ少なくする。
【0023】
本発明の親水性被覆で塗装するのに適当な移植片は、好ましくは、疎水性アクリル材料から製造されるが、また、シリコーン、シリコーン−アクリル共重合体またはヒドロゲルから作成できる。好ましい疎水性アクリル材料には、米国特許第5,290,892号および同第5,693,095号で記述されたものがあり、それらの内容の全体は、本明細書中で参考として援用される。この移植片がIOLである場合、本発明の被覆は、「硬質」IOL(これは、折り畳んでいない状態で、挿入される)または「折り畳み可能」または「軟質」IOL(これは、折り畳んだ状態または圧縮した状態で、挿入される)として使用する目的の基板材料と共に、使用され得る。例えば、被覆されるIOL材料は、米国特許第5,693,095号または同第5,331,073号で開示されたIOL材料であり得る。この被覆は、全IOLに塗布され得るか、またはIOLの一部だけに塗布され得る。本明細書中で使用する「移植片」との用語は、コンタクトレンズを含む。
【0024】
被覆する移植材料が被覆を受容できるように調製するために、本発明の塗装組成物を塗布する前に、被覆する表面を反応性プラズマガスに晒すことが必要であるかまたは望まれ得る。適当な反応性プラズマガスは、酸化性ガス(例えば、酸素ガス)が挙げられる。適当なプラズマチャンバは、Advanced Plasma Systems,Inc.製のP2CIM B−Seriesプラズマチャンバである。このようなチャンバを使用して、適当なプラズマパラメータには、以下が挙げられる:出力=400W、プラズマガス=酸素;プラズマガスの圧力=225mTorr;暴露時間=4〜6分間。
【0025】
以下の実施例は、限定ではなく、例示の目的であることが意図される。
【0026】
(実施例1〜2(潜在架橋剤))
以下の表1で示した処方物を調製し、そしてポリプロピレンスラブ型(10mm×20mm×0.9mm)中で硬化した。これらの処方物は、Kulzer Palatray CU青色光ユニット(12〜14mW/cm2)を使用して青色光に1時間晒すことにより、硬化した。
【0027】
(塗装溶液の調製)
実施例1の塗装共重合体を、21:3:2(pbw)の2−ペンタノン:エタノール:ジクロロメタン溶媒に溶解して、8.4%溶液を得た。実施例2の塗装共重合体を2−ペンタノンに溶解して、8.0%溶液を得た。得られた溶液をGelmanガラス繊維Acrodisc(1μm)で濾過して、微粒子のない塗装溶液を得た。
【0028】
(被覆の塗布)
熱開始剤として1.8%のPerkadox−16を使用して、アクリル酸2−フェニルエチル(65%);メタクリル酸フェニルエチル(30%);o−メチルTinuvin P(1.8%);およびジアクリル酸1,4−ブタンジオール(3.2%)を含有する共重合体を調製した。この共重合体を上記スラブ型中で硬化し、アセトンで約2時間抽出し、室温で約1時間空気乾燥し、次いで、オーブン中で、100℃で、約1時間乾燥した。この材料は、規定のスラブの形状で、全ての実施例に対して、その移植片/基板材料として供した(「移植片スラブ」)。
【0029】
この移植片スラブを、これらの塗装溶液に浸漬した。その溶媒が試料を膨潤するので、これらの試料の塗装溶液への浸漬時間をできるだけ短くするように、注意を払う。被覆した移植片を、室温で、空気中にて15分間乾燥させ、続いて、100℃で、2時間焼き付けて、その潜在架橋剤を活性化し、その被覆を移植片の表面に固定する。
【0030】
【表1】

(実施例3(塗装溶液を形成するときに添加する架橋剤))
その塗装共重合体が以下の表2で示した成分を含有すること以外は、実施例1〜2で上で記述した手順に従って、被覆移植片スラブを調製する。この塗装共重合体を、1時間にわたって、Kulzer Palatray CUユニットを使用して硬化する。塗装溶液は、この塗装共重合体を2−ペンタノンに溶解して8.0%溶液を形成することにより、形成される。これらの移植片スラブを浸漬被覆し、空気中にて、室温で、15分間乾燥させ、続いて100℃で2時間焼き付けて、そのイソシアネート架橋剤を脱ブロックし(de−block)、その被覆を移植片の表面に固定する。
【0031】
【表2】

本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記述されるている;しかしながら、本発明は、本発明の精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形状またはそれらの変形で具体化してもよいことを理解すべきである。従って、上記実施形態は、いずれの点でも、例示と見なされ、限定的ではなく、本発明の範囲は、前述の記述ではなく添付の請求の範囲により示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2011−229981(P2011−229981A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−179956(P2011−179956)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【分割の表示】特願2001−520129(P2001−520129)の分割
【原出願日】平成12年8月23日(2000.8.23)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】