説明

移相器

【課題】新たな技術的手段により安定した特性を備えることができる移相器を提供する。
【解決手段】出力側導線1と、入力側導体2と、入力側導体2に入力された高周波信号を出力側導線1の出力端へ伝達するための可動結合導体3とを備えている。可動結合導体3は、絶縁体4を介して入力側導体2と結合されている入力側基部11と、出力側導線1に沿って移動可能であると共に絶縁体5を介して出力側導線1と結合されている出力側可動部13と、入力側基部11と出力側可動部13とを電気的に接続している線路部12とを有している。出力側可動部13は、線路部12に並列接続されかつ出力側導線1を間に配置した状態として設けられている第一出力素子21と第二出力素子22とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号の位相を連続的に変えることのできる移相器に関する。
【背景技術】
【0002】
アレイアンテナは複数のアンテナ素子を有していて、アンテナ素子間の位相差を調整することにより、アレイアンテナのビームチルト角(指向性)を変えることができる。そして、アンテナ素子間の位相差を調整するために、従来、分配移相器を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この従来の分配移相器は、出力側となる円弧状の固定導体と、この円弧状の固定導体の中心位置に設けられた入力側となる中心導体と、固定導体と中心導体とを絶縁フィルムを介して静電的に結合させる回転結合導体とを備えている。
【0003】
このように構成された分配移相器の特性、例えば分配特性やVSWR特性を安定させるためには、回転結合導体と固定導体とを安定した状態として結合させる必要がある。すなわちこれは、回転結合導体と固定導体との間は絶縁フィルムを介して結合(静電結合)されていることから、回転結合導体を回転させた際に、回転結合導体と固定導体との間の寸法が変化すると静電容量が変化し、分配移相器の特性が変化してしまうためである。
したがって、このような分配移相器では、回転結合導体と固定導体とを安定した状態として結合させる必要があり、移相時の繰り返し再現性を確保したり、分配移相器の固体差をなくしたりすることのできる構成が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−284902号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の図8に記載されているように、この分配移相器では、固定導体が設けられている基板側に回転結合導体をバネによって圧接させることで、回転結合導体と固定導体との間の寸法を一定とするようにしている。
しかし、このようなバネによる機構を用いて回転結合導体に負荷を与える構造よりも、負荷を与えない構造の方が好ましいと考えられる。また、回転結合導体と固定導体とを安定した状態として結合させるための構成を、より簡単とするのが好ましい。
【0006】
そこで、本発明は、新たな技術的手段により安定した特性を備えることができる移相器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の移相器は、端部が出力端となる出力側導線と、高周波信号が入力される入力側導体と、前記入力側導体に入力された前記高周波信号を前記出力側導線の出力端へ伝達するための可動結合導体とを備え、前記可動結合導体は、絶縁体を介して前記入力側導体と結合されている入力側基部と、前記出力側導線に沿って移動可能であると共に絶縁体を介して当該出力側導線と結合されている出力側可動部と、前記入力側基部と前記出力側可動部とを電気的に接続している線路部とを有し、前記出力側可動部は、前記線路部に並列接続されかつ前記出力側導線を間に配置した状態として設けられている第一出力部と第二出力部とを有していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、可動結合導体が有している出力側可動部の第一出力部と第二出力部との間に出力側導線が配置されて、出力側可動部と出力側導線とが絶縁体を介して結合されているので、第一出力部と第二出力部との対向方向に、出力側可動部と出力側導線とが相対的に位置変化することで、第一出力部と第二出力部との内のいずれか一方の出力部と出力側導線との間の静電容量が増加しても、他方の出力部と出力側導線との間の静電容量は減少することで全体としての変化が小さくなるため(つまり、前記位置変化の影響を受けにくいため)、移相器の特性を安定させることができる。
なお、前記絶縁体には樹脂等による絶縁部材の他に空気が含まれる。絶縁体を樹脂とする場合、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂以外に、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリアセタール等とすることができる。また、この場合、薄いシート状であるのが好ましい。
【0009】
(2)また、前記入力側導体は、並列接続されかつ前記入力側基部を間に配置した状態として設けられている第一入力導体部と第二入力導体部を有している構成とすることができる。
この場合、入力側導体の第一入力導体部と第二入力導体部との間に入力側基部が配置されて、入力側導体と入力側基部とが絶縁体を介して結合されているので、第一入力導体部と第二入力導体部との対向方向に、入力側導体と入力側基部とが相対的に位置変化することで、第一入力導体部と第二入力導体部との内のいずれか一方の入力導体部と入力側基部との間の静電容量が増加しても、他方の入力導体部と入力側基部との間の静電容量は減少することで全体としての変化が小さくなるため、移相器の特性を安定させることができる。
【0010】
(3)又は、前記入力側基部は、前記線路部に並列接続されかつ前記入力側導体を間に配置した状態として設けられている第一入力基部と第二入力基部とを有している構成とすることができる。
この場合、可動結合導体が有している入力側基部の第一入力基部と第二入力基部との間に入力側導体が配置されて、入力側導体と入力側基部とが絶縁体を介して結合されているので、第一入力基部部と第二入力基部との対向方向に、入力側導体と入力側基部とが相対的に位置変化することで、第一入力基部と第二入力基部との内のいずれか一方の入力基部と入力側導体との間の静電容量が増加しても、他方の入力基部と入力側導体との間の静電容量は減少することで全体としての変化が小さくなるため、移相器の特性を安定させることができる。
【0011】
(4)また、前記出力側可動部は、前記線路部に並列接続され、かつ、前記第一出力部と前記第二出力部との対向方向に直交する方向に前記出力側導線を間に配置した状態として対向して設けられている第三出力部と第四出力部とを有しているのが好ましい。
この場合、第一出力部と第二出力部との対向方向に直交する、第三出力部と第四出力部との対向方向に関して、出力側導線と出力側可動部とが相対的に位置変化しても、移相器の特性を安定させることができる。
【0012】
(5)また、前記入力側導体に接続された第一端子と、前記第一端子と絶縁されて設けられた第二端子とを有している入力端子部と、前記第二端子と電気的に接続されかつ対向して配置された対の板状の外導体とを更に備え、前記出力側導線、前記入力側導体及び前記可動結合導体を備えた移相器本体は、前記対の外導体の略中間位置に配置されているのが好ましい。
この場合、一方の外導体と移相器本体との間の隙間寸法が増加しても、他方の外導体と移相器本体との間の隙間寸法が減少するので、移相器全体におけるインピーダンスの変化を抑制することができる。
【0013】
(6)また、前記出力側導線は、円弧又は一部が開いた円環の線路であり、前記入力側導体は、前記円弧又は一部が開いた円環の中心線上に設けられた導体であり、かつ、前記可動結合導体の前記入力側基部は前記中心線について回転対称形の導体であり、前記入力側導体に接続されると共に高周波信号が入力されかつ前記中心線上に設けられた導体軸を更に備え、前記可動結合導体の前記入力側基部は、前記導体軸の中心線周りに回動可能に、絶縁体を介して当該導体軸に取り付けられているのが好ましい。
この場合、導体軸から入力側導体に入力された高周波信号は、可動結合導体を伝搬し、出力側導線に流れ端部へと伝達される。そして、可動結合導体を前記中心線回りに回動させると、端部に伝達させる信号の位相を変化させることができる。
さらに、可動結合導体の入力側基部は中心線に回転対称形(例えば円形)であり、この入力側基部は当該中心線周りに回動するため、入力側導体との相対位置が不変となる。この結果、入力側導体と入力側基部との結合部における高周波特性の変化を抑制することができる。なお、ここにいう中心線とは、出力側導線の円弧又は一部が開いた円環を含む平面と直交する方向に延びた線であり、円弧又は一部が開いた円環の中心点を通る線である。
【0014】
(7)また、本発明は、端部が出力端となる出力側導線と、高周波信号が入力される入力側導体と、前記入力側導体から入力された前記高周波信号を前記出力側導線の出力端へ伝達するための可動結合導体とを備え、前記可動結合導体は、絶縁体を介して前記入力側導体と結合されている入力側基部と、前記出力側導線に沿って移動可能であると共に絶縁体を介して当該出力側導線と結合されている出力側可動部と、前記入力側基部と前記出力側可動部とを電気的に接続している線路部とを有し、前記出力側導線は、並列接続されかつ前記出力側可動部を間に配置した状態として設けられている第一出力導線部と第二出力導線部とを有していることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、出力側導線の第一出力導線部と第二出力導線部との間に可動結合導体の出力側可動部が配置されて、出力側導線と出力側可動部とが絶縁体を介して結合されているので、第一出力導線部と第二出力導線部との対向方向に、出力側導線と出力側可動部とが相対的に位置変化することで、第一出力導線部と第二出力導線部との内のいずれか一方の出力導線部と出力側可動部との間の静電容量が増加しても、他方の出力導線部と出力側可動部との間の静電容量は減少することで全体としての変化が小さくなるため、移相器の特性を安定させることができる。
なお、前記絶縁体には樹脂等による絶縁部材の他に空気が含まれる。
【0016】
(8)また、本発明は、端部が出力端となる出力側導線と、高周波信号が入力される入力側導体と、前記入力側導体に入力された前記高周波信号を前記出力側導線の出力端へ伝達するための可動結合導体とを備え、前記可動結合導体は、絶縁体を介して前記入力側導体と結合されている入力側基部と、前記出力側導線に沿って移動可能であると共に絶縁体を介して当該出力側導線と結合されている出力側可動部と、前記入力側基部と前記出力側可動部とを電気的に接続している線路部とを有し、前記出力側可動部は、前記絶縁体を介して前記出力側導線の長手方向一部を周方向に囲む筒形状を有していることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、可動結合導体が有している出力側可動部は、絶縁体を介して出力側導線の長手方向一部を周方向に囲む筒形状を有しているので、この出力側可動部と出力側導線とが相対的に任意の方向に変位することで、当該出力側可動部の周壁の内の当該変位方向一方側の壁部と、出力側導線との間隔が狭くなって静電容量が増加しても、当該変位方向他方側の壁部と出力側導線との間隔は広くなって静電容量が減少することで、全体としての変化が小さくなるため、移相器の特性を安定させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、出力側導線と出力側可動部とが相対的に位置変化しても、移相器の特性を安定させることができるので、例えばこの移相器を用いてアレイアンテナのビームチルト角を正確に変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第一の実施形態〕
図1は本発明の移相器の一部を示している斜視図である。以下の実施形態の移相器は、高周波信号の電力分配を行えると共に、分配された信号の位相差を連続的に変えることのできる分配移相器Aである。
この分配移相器Aは、両端部が出力端1a,1bとなる出力側導線1と、この出力側導線1と離れて設けられ高周波信号が入力される入力側導体2と、入力側導体2に入力された高周波信号を出力側導線1の両出力端1a,1bへと分配して伝達するための可動結合導体3とを備えている。
【0020】
出力側導線1は、中心線Cを中心とした半径rの円弧形状(又は一部が開いた円環形状であってもよい)のストリップ線路である。
入力側導体2は前記中心線C上に設けられた導体であり、当該中心線Cを中心とした円形を有している。なお、図1の入力側導体2は、中心線C方向に並んだ二枚の第一入力導体部31(第一入力素子31という)と第二入力導体部32(第二入力素子32という)とを有している。第一入力導体部31と第二入力導体部32とは、後述する導体軸6に並列接続されている。
【0021】
可動結合導体3は、絶縁体4,4を介して入力側導体2と結合されている入力側基部11と、絶縁体5を介して出力側導線1と結合されている出力側可動部13と、入力側基部11と出力側可動部13とを連結し両者を電気的に接続している直線形状の線路部12とを有している。
線路部12は、前記中心線Cから半径r方向に延びている導体であり、一端部に前記入力側基部11が接続され、他端部に前記出力側可動部13が接続されている。
【0022】
図1において、出力側可動部13は、出力側導線1と同じ半径rを有する円弧形状に構成されている。出力側可動部13は、出力側導線1の長手方向に沿って、線路部12から一方の出力端1a側に延びている第一の部分13aと、線路部12から他方の出力端1b側に延びている第二の部分13bとを有している。そして、等価的に、第一及び第二の部分13a,13bの間(出力側可動部13の中央部)で、線路部12と、出力側導線1とが接続された構成としている。
図2(a)は可動結合導体3の出力側可動部13及び出力側導線1を有する出力側の結合部Qの断面図である。出力側可動部13は、後にも説明するが、出力側導線1の一部を間に配置した状態で当該一部の(上下)両側に設けられている第一出力部21(第一出力素子21という)と第二出力部22(第二出力素子22という)とを有している。第一出力部21と第二出力部22とは線路部12に並列接続されている。
この図2(a)の形態では、第一出力素子21と第二出力素子22とが線路部12から(上下)対称となるように分岐している。そして、可動結合導体3の厚さ方向中心と、出力側導線1の厚さ方向中心とが、同一平面上にある。
なお、図2(b)は出力側の結合部Qの変形例であり、第一出力素子21と第二出力素子22とが線路部12から非対称となるように分岐している。そして、第一出力部21と、線路部12とが略同一平面上にある。
【0023】
図3は可動結合導体3の入力側基部11及び入力側導体2を有する入力側の結合部Pの断面図である。入力側基部11は、前記中心線Cを中心とする回転対称形の導体であり、前記第一入力素子31及び第二入力素子32と輪郭形状を同じとする円環形状である。
また、前記中心線Cを軸線として金属製の前記導体軸6が設けられている。第一入力素子31と第二入力素子32とは、この導体軸6の端部に接続されていて、第一入力素子31と第二入力素子32とは当該導体軸6の端部に電気的に並列接続された状態にある。
【0024】
導体軸6は、入力側導体2(第一入力素子31及び第二入力素子32)と接続された状態にあると共に、図外のケーブルから、高周波信号が入力される。
そして、可動結合導体3の入力側基部11は、中心線C周りに回動可能となるように、絶縁体4を介して前記導体軸6に取り付けられている。
したがって、入力側基部11が中心線C周りに回動することで、前記出力側可動部13は出力側導線1に沿って移動する構成となる。
【0025】
以上の構成により、導体軸6から入力側導体2に入力された高周波信号は、絶縁体4を介して可動結合導体3の入力側基部11に伝わり、可動結合導体3の線路部12を伝搬し、可動結合導体3の出力側可動部13(図2参照)から絶縁体5を介して出力側導線1に流れ、当該高周波信号は出力側導線1の両端部の出力端1a,1bへと分配される。
そして、可動結合導体3を中心線C回りに回動させることで、入力側導体2から出力側導線1の出力端1a,1bに至る線路長が変化し、この線路長の変化によって、出力端1a,1bへと分配される高周波信号の位相差を変化させることができる。
【0026】
また、入力側導体2側の特性インピーダンスは例えば50Ωとなるように設定され、出力側導線1の特性インピーダンスは100Ω(入力側の二倍)となるように(例えば導体の幅が)設定されている。
可動結合導体3の線路部12から出力側導線1を見たインピーダンスは、特性インピーダンス100Ωの出力側導線1が二つ並列に接続された構成となるので50Ωとなる。したがって、出入力側でインピーダンスは一致している。
【0027】
また、可動結合導体3の出力側可動部13の構成についてさらに説明する。図2において、出力側可動部13は、直線状の線路部13から分岐して相互が(出力側導線1を間に置いて)対向するように形成された前記第一出力素子21と第二出力素子22とを有している。そして、第一出力素子21と第二出力素子22と間に出力側導線1が介在していて、第一出力素子21と出力側導線1との間には絶縁体5aが介在し、第二出力素子22と出力側導線1との間には絶縁体5bが介在している。
【0028】
図2の実施形態では、絶縁体5aと絶縁体5bとは一体である。絶縁体(絶縁部材)5a,5bは例えばフッ素樹脂からなる。また、この絶縁体5a,5bは、出力側可動部13の内面に取り付けられている。これにより、絶縁体5a,5bを有している出力側可動部13は出力側導線1に沿って摺動する。なお、図示しないが、絶縁体5a,5bは、出力側導線1の両面に取り付けられていてもよい。
【0029】
このように、可動結合導体3が有している出力側可動部13の第一出力素子21と第二出力素子22とが線路部12に並列接続され、第一出力素子21と第二出力素子22との間に出力側導線1が配置されているので、出力側導線1と出力側可動部13とが、第一出力素子21と第二出力素子22との対向方向(図1の中心線C方向となる)に、相対的に位置変化することで、例えば、第一出力素子21と出力側導線1との間隔A1(図2参照)が小さくなって両者間における静電容量が増加しても、第二出力素子22と出力側導線1との間隔B1(図2参照)が大きくなって両者間における静電容量は減少する。
すなわち、図4の出力側可動部13と出力側導線1との結合部Qの等価回路図に示しているように、結合部Qは、コンデンサC1,C2が並列接続されたモデルと等価であり、一方のコンデンサC1においてある値だけ静電容量が増加しても、他方のコンデンサC2において当該ある値だけ静電容量が減少すれば、回路全体として静電容量は変化しない(静電容量の変化が抑えられる)。したがって、出力側可動部13と出力側導線1とが図1の中心線C方向に相対的に変位しても、当該変位によって、分配移相器Aの特性の変化を小さく抑えることができる。
【0030】
また、入力側導体2の構成についてさらに説明する。図3において、入力側導体2は、環状の入力側基部11を間に配置した状態で当該入力側基部11の(上下)両側に設けられている前記第一入力素子31と前記第二入力素子32とを有している。すなわち、入力側導体2は、入力側基部11を間に置いて相互が対向するように形成された前記第一入力素子31と前記第二入力素子32とを有している。そして、第一入力素子31と入力側基部11との間には絶縁体4aが介在し、第二入力素子32と入力側基部11との間には絶縁体4bが介在している。
【0031】
このように、入力側導体2の第一入力素子31と第二入力素子32とが導体軸6に並列接続され、第一入力素子31と第二入力素子32との間に可動結合導体3の入力側基部11が配置されているので、入力側導体2と入力側基部11とが、第一入力素子31と第二入力素子32との対向方向に(図1の中心線C方向に)、相対的に位置変化することで、例えば、第一入力素子31と入力側基部11との間隔A2(図3参照)が変化して両者間における静電容量が増加しても、第二入力素子32と入力側基部11との間隔B2(図3参照)の静電容量は減少することで、(図4と同様に)全体としての変化は小さい。したがって、可動結合導体3の入力側基部11と入力側導体2とが中心線C方向に相対的に変位しても、分配移相器Aの特性の変化を抑えることができる。
【0032】
なお、可動結合導体3を中心線C回りに回動させることで、入力側導体2を中心とする回転角を変化させるためには、結合部P,Qにおいて僅かであるが隙間が設けられているのが好ましい。例えば図2において、出力側可動部13に固定した絶縁体5と出力側導線1との間に隙間が設けられているのが好ましい。これは、出力側可動部13は可動物であるため、滑らかに動かすためには隙間が必要となるためである。そこで、このような隙間が設けられていることによって、可動結合導体3と入力側導体2とが中心線C方向に位置ずれするおそれがある。しかし、本発明によれば、結合部P,Qにおいて静電容量の変化を小さく抑えることができるので、当該隙間が分配移相器Aの特性に与える影響を小さく抑えることができる。
また、前記のとおり、可動結合導体3の入力側基部11は中心線Cを中心とした円形(回転対称形)であり、この入力側基部11は、当該中心線C周りに回動するため、入力側導体2との相対位置が不変となる。この結果、入力側導体2と入力側基部11との結合部Pにおける高周波特性は変化しない。
【0033】
図5は、出力側可動部13の変形例を示している断面図である。この出力側可動部13は、出力側導線1を周方向に取り囲んでいる筒形状である。すなわち、出力側可動部13は断面環状であり、この形状とするために、出力側可動部13は、前記第一出力素子21と前記第二出力素子22との他に、当該第一出力素子21と当該第二出力素子22との対向方向(図1の中心線C方向)に直交する方向(半径r方向)に、出力側導線1を間に配置した状態で対向させて設けられている第三出力部23(第三出力素子23)と第四出力部24(第四出力素子24)とを有している。そして、第三出力素子23と第四出力素子24とは線路部12に並列接続された状態となる。
この場合、図2の構成と同様、出力側可動部13と出力側導線1とが図1の中心線C方向に相対的に変位しても、分配移相器Aの結合部Qにおける特性を安定させることができ、さらに、出力側可動部13と出力側導線1とが半径r方向に相対的に位置変化しても、結合部Qにおける特性を安定させることができる。
【0034】
図6は、可動結合導体3の入力側基部11及び入力側導体2を有する入力側の結合部Pの断面図である。この図6の結合部Pは図3の結合部Pの変形例である。図6の形態では、図外のケーブルから高周波信号が入力される導体軸6の形態が異なっている。この導体軸6に入力側導体2(第一入力素子31及び第二入力素子32)を並列接続した状態とするために、導体軸6は、軸本体6bと、その先部に設けられたネジ軸部6aとを有している。そして、ナット15をネジ軸部6aに螺合させることで、当該ナット15と軸本体6bの端面との間に、第一入力素子31及び第二入力素子32をスペーサ16を間に介在させて、取り付けている。
そして、可動結合導体3の入力側基部11は、ネジ軸部6aの軸線(中心線C)周りに回動可能に、絶縁体4を介して導体軸6に取り付けられている。この構成によれば、簡単に入力側の結合部Pを構成することができる。
【0035】
図7は分配移相器Aの断面図である。分配移相器Aは、金属製の筐体8と、図外のケーブルが接続される入力端子部7とを有していて、この筐体8内に前記出力側導線1、入力側導体2及び可動結合導体3を備えた移相器本体9が収納されている。なお、図7では、一つの入力側導体2から、二つの可動結合導体3を介して、二つの出力側導線1へと信号が送られる形態である。つまり、中心線Cを中心として180°離れて、図1に示した円弧形状の出力側導線1及び可動結合導体3がそれぞれ設けられている。
筐体8は、中心線C方向に対向して配置されている対の平面板状の上導体(外導体)17及び下導体(外導体)18と、これら上導体17と下導体18とを連結している周壁導体19とを有している。
【0036】
前記入力端子部7は、入力側導体2に接続された第一端子と、この第一端子と絶縁されて設けられた第二端子とを有している。図3に示しているように、第一端子は前記導体軸6からなり、第二端子は金属製であり筒形状の筒導体26からなり、導体軸6と筒導体26との間に絶縁体27が介在している。
そして、導体軸(第一端子)6は入力側導体2に電気的に接続されていて、対の上導体17と下導体18とは、筒導体(第二端子)26に電気的に接続されている。この導体軸6と筒導体26とを有している入力端子部7に高周波信号が給電される。
【0037】
そして、図7に示しているように、移相器本体9(出力側導線1、入力側導体2及び可動結合導体3)は、対の上導体17と下導体18の中間位置に配置されている(図7においてM1=M2)。
この構成によれば、例えば、上導体17と移相器本体9との間隔M1が増加しても、他方である、下導体18と移相器本体9との間隔M2が減少するので、分配移相器A全体におけるインピーダンスの変化を少なくすることができる。
【0038】
〔第二の実施形態〕
図8は本発明の分配移相器の一部を示している斜視図である。図8の実施形態の分配移相器は、図1の形態と同様に、両端部が出力端51a,51bとなる出力側導線51と、この出力側導線51と離れて設けられ高周波信号が入力される入力側導体52と、入力側導体52に入力された高周波信号を出力側導線51の両出力端51a,51bへ分配して伝達するための可動結合導体53とを備えている。出力側導線51、入力側導体52及び可動結合導体53の全体配置及び半径r等の寸法は、図1の形態と同様である。
【0039】
さらに、図1の形態と同様に、可動結合導体53は、入力側導体52と絶縁体54を介して結合されている入力側基部61と、出力側導線51に沿って移動可能であると共に当該出力側導線51と絶縁体55を介して結合されている前記出力側可動部63と、入力側基部61と出力側可動部63とを電気的に接続している線路部62とを有している。
【0040】
図8の実施形態の分配移相器と、図1の分配移相器との異なる点は、入力側の結合部P及び出力側の結合部Qの形態である。
まず、図8の出力側の結合部Qを説明する。図9は図8の出力側の結合部Qの断面図である。出力側導線51は、相互が対向するように形成された前記第一出力導線部71と第二出力導線部72とを有している。第一出力導線部71及び第二出力導線部72は、中心線Cを中心とした半径rの円弧形状(又は一部が開いた円環形状であってもよい)の線路である。第一出力導線部71と第二出力導線部72とは、出力側導線51の出力端51a,51bに対して、並列接続された構成となっている。
第一出力導線部71と第出力導線部72とは、図9の二点鎖線で示しているように、板状の導体73によって連結され、並列接続された構成となっている。
前記導体73が出力側導線51の長手方向の全長にわたって設けられて、出力側導線51が全長にわたって断面コ字状となっていてもよいが、部分的(例えば両端部)において導体73によって連結されていてもよい。
又は、第一出力導線部71と第二出力導線部72とを、出力側導線51の出力端51a,51bに対して並列接続させた構成とするために、図8の出力端51a側に示しているように、第一出力導線部71の長手方向端面と、第二出力導線部72の長手方向端面とを導体74によって連結してもよい。
【0041】
そして、第一出力導線部71と第二出力導線部72と間に可動結合導体53の出力側可動部63が介在していている。つまり、第一出力導線部71と第二出力導線部72とは、出力側可動部63を間に配置した状態で、当該出力側可動部63の(中心線C方向の)両側に設けられている。第一出力導線部71と出力側可動部63との間には絶縁体55aが介在し、第二出力導線部72と出力側可動部63との間には絶縁体55bが介在している。
【0042】
このように、出力側導線51の第一出力導線部71と第二出力導線部72とが並列接続され、かつ、第一出力導線部71と第二出力導線部72との間に可動結合導体53の出力側可動部63が配置されて、出力側導線51と出力側可動部63とが絶縁体55を介して結合されているので、出力側導線51と出力側可動部63とが、中心線Cの方向に、相対的に位置変化することで、例えば、第一出力導線部71と出力側可動部63との間(図9の隙間A1)の静電容量が増加しても、他方である、第二出力導線部72と出力側可動部63との間(図9の隙間B1)の静電容量は減少することで、図1の形態と同様に、全体として静電容量の変化は小さく、分配移相器Aの特性を安定させることができる。
【0043】
次に、入力側の結合部Pを図8及び図11により説明する。図11は、結合部Pの断面図である。入力側導体52は中心線C上に設けられた導体であり、当該中心線Cを中心とした円形を有した導体からなる。可動結合導体53の入力側基部61は、前記中心線Cを中心とする回転対称形の導体であり、前記入力側導体52と輪郭形状を同じとする円環形状である。
そして、この入力側基部61は、中心線C方向に並んだ二枚の第一入力基部(第一入力素子)81と第二入力基部(第二入力素子)82とを有している。第一入力素子81と第二入力素子82とは、入力側導体52を間に配置した状態で、当該入力側導体52の両側に設けられている。第一入力素子81と第二入力素子82とは、線路部62に並列接続されている。
【0044】
そして、前記中心線Cを軸線として金属製の前記導体軸6が設けられている。この導体軸6に前記入力側導体52が電気的に接続されている。また、可動結合導体53が有している入力側基部61の第一入力素子81と第二入力素子82とが、中心線C周りに回動可能に、絶縁体54を介して前記導体軸6に取り付けられている。
したがって、この入力側基部61が中心線C周りに回動することで、前記出力側可動部53は出力側導線51に沿って移動する構成となる。
なお、前記導体軸6の入力側導体52よりも先端側(図11では上側)の部分は、樹脂製であってもよく、又は、当該部分はなくてもよい。この場合、導体軸6を同軸内導体として入力側導体52に高周波信号が入力される。
又は、前記導体軸6の全体が樹脂製であってもよい。この場合、入力側導体52に図示していない導線を通じて高周波信号が入力され、また、第一入力素子81と第二入力素子82とを、中心線C周りに回動可能に、(絶縁体54の一部を介することなく)前記導体軸6に直接的に取り付けることができる。
【0045】
この入力側の結合部Pによれば、可動結合導体53が有している入力側基部61の第一入力素子81と第二入力素子82とが線路部62に並列接続され、かつ、第一入力素子81と第二入力素子82との間に入力側導体51が配置されて、入力側導体52と入力側基部61とが絶縁体54を介して結合されているので、入力側導体52と入力側基部61とが、第一入力素子81と第二入力素子82との対向方向に、相対的に位置変化することで、例えば、第一入力素子81と入力側導体52との間の静電容量が増加しても、第二入力素子82と入力側導体52との間の静電容量は減少することで全体としての変化が小さくなるため、分配移相器の特性を安定させることができる。
【0046】
なお、図1に示した分配移相器Aの入力側の結合部Pを、図8に示した入力側の結合部Pに適用してもよく、また、図8に示した分配移相器Aの入力側の結合部Pを、図1に示した入力側の結合部Pに適用してもよい。
また、以上の各実施形態では、入力側導体2と可動結合導体3との間、及び、可動結合導体3と出力側導線1との間には、絶縁体を介して結合されているので、金属接触がなく、相互変調波歪みの発生を防止することができる。
【0047】
〔第三の実施形態〕
図10は、本発明の分配移相器の一部を示している斜視図である。図10の形態が、図1の形態と異なる点は、可動結合導体3の出力側可動部13は、絶縁体5を介して出力側導線1の長手方向一部を周方向に囲む筒形状を有している点である。すなわち、この筒形状の出力側可動部13は、出力側導線1を全周から囲む形状である。その他の構成については、図1の形態と同様である。
なお、出力側可動部13の断面形状は環状であればよく、図10の形態では入力側導体1がストリップ導体からなるため、これに応じて断面形状を長円(楕円形)としている。また、断面形状は、矩形や、角部が円弧である矩形であってもよい。
また、この形態の入力側の結合部Pは、他の形態で説明したものであってもよい。
【0048】
この形態によれば、出力側可動部13と出力側導線1とが相対的に任意の方向(例えば図10の矢印V方向)に変位した場合、出力側可動部13の周壁の内の当該変位方向一方側の壁部20aと、出力側導線1との間隔が狭くなって静電容量が増加するが、この変位方向他方側の壁部20bと出力側導線1との間隔は広くなって静電容量が減少することで、全体としての変化が小さくなるため、分配移相器Aの特性を安定させることができる。
【0049】
〔第四の実施形態〕
図12は、本発明の分配移相器の一部を示している斜視図である。図12の分配移相器Aは、一箇所の入力側導体2に対して、出力側導線1が複数本(二本)設けられていて、この出力側導線1の数に対応して、可動結合導体3は同数(二つ)の出力側可動部13を有している。図12の形態が、図7の形態と異なる点は、中心線Cを中心として半径r方向同じ側に、複数の出力側導線1及び複数の出力側可動部13がそれぞれ設けられている点である。つまり、中心線Cから放射方向に複数の出力側導線1(出力側可動部13)が相互離れて配置されている。全ての出力側導線1及び全ての出力側可動部13の形状は、一つの中心線Cを中心とした円弧又は一部が開いた環状である。これにより、一つの可動結合導体3を移動させることで、四つの出力端1a,1b,1c,1dそれぞれにおいて、信号の位相を連続的に変化させることができる。そして、この場合においても、一つの分配移相器Aによって四つの出力端1a,1b,1c,1dを有する四分配型の分配移相器Aが得られる。
【0050】
そして、以上の各実施形態において、可動結合導体3(53)を移動させることで出力側導線1の出力端1a,1b(51a,51b)間の位相差を調整することができ、このように構成された分配移相器Aを、アレイアンテナのビームチルト角を変えるために用いれば、出力側導線1(51)と可動結合導体3(53)とが相対的に位置変化しても、及び、入力側導体2(52)と可動結合導体3(53)とが相対的に位置変化しても、結合部P,Qにおける静電容量の変化は小さいため、分配移相器Aの特性を安定させることができる。このため、この分配移相器Aを用いてアレイアンテナのビームチルト角を正確に変えることができ、また、移相時の繰り返し再現性を確保したり、複数の分配移相器Aの固体差をなくしたりすることができる。
【0051】
また、本発明に関して、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、前記実施形態では、可動結合導体3(53)の入力側基部11(61)が中心線C周りに回動することで、可動結合導体3(53)の出力側可動部13(63)が、出力側導線1(51)に沿って移動する構成であったが、本発明の分配移相器は、これ以外として、図示しないが、入力側導体を、線状であって出力側導線と並行する導線として形成し、可動結合導体をこれら入力側導体及び出力側導線に沿って移動させる構成であってもよい。
また、出力側導線及び可動結合導体等は、外導体間の中央に配置されたストリップ線路(トリプレート線路)が好ましいが、マイクロストリップ線路とすることもできる。
【0052】
前記実施形態(例えば図1)では、出力側可動部13が分岐して二つの出力素子21,22を有する構成を説明したが、分岐数(並列の数)は2に限らず、3以上であってもよい。この場合でも、出力側可動部13の出力素子と、出力側導線1の出力素子とが、絶縁体を介して、交互に重なるように構成すればよい。
つまり、前記実施形態(例えば図1及び図2)では、出力側の結合部Qに関して、可動結合導体3の出力側可動部13は、分岐させて並列接続させた二つの第一出力素子21と第二出力素子22とを有し(この場合2分岐)、これらの間に単一の入力側導体2を挟む構成であったが、これ以外として、例えば、図13に示しているように、出力側可動部13が、線路部12に並列接続させた三つの第一出力素子14a、第二出力素子14b、第三出力素子14cを有し(この場合3分岐)、出力側導線1が、二つの並列接続された第一出力導線部1e及び第二出力導線部1fを有していて(この場合2分岐)、出力側可動部13の出力素子14a,14b,14cと、出力側導線51の出力素子1e,1fとが、絶縁体5を介して、交互に重なるように構成してもよい。
すなわち、絶縁体5を介して接続される出力側可動部13と出力側導線1との内の一方の分岐数がNであれば、他方の分岐数を(N+1)とするのが好ましい。
【0053】
又は、図示しないが(図2のように)、出力側可動部13が、並列接続させた二つの第一出力素子21と第二出力素子22とを有し、かつ、(図8のように)出力側導線51が、二つの並列接続された第一出力導線部71及び第二出力導線部72を有していて、出力側可動部13の出力素子と、出力側導線51の出力素子とが、絶縁体を介して、交互に重なるように構成してもよい。
すなわち、出力側可動部13と出力側導線1との双方の分岐数を同数のNとしている。この場合、重なり方向で最も外側に位置する素子は、他の素子に比べて小さくするのが好ましい。
また、分岐数(並列の数)を2としたり、3以上としたりする前記構成は、出力側可動部13と出力側導線1との出力側の結合部Qのみならず、入力側導体2と入力側基部11との結合部Pにおいても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の分配移相器(第一実施形態)の一部を示している斜視図である。
【図2】可動結合導体の出力側可動部及び出力側導線を有する出力側の結合部の断面図である。
【図3】可動結合導体の入力側基部及び入力側導体を有する入力側の結合部の断面図である。
【図4】出力側可動部と出力側導線との結合部の等価回路図である。
【図5】出力側可動部の変形例を示している断面図である。
【図6】可動結合導体の入力側基部及び入力側導体を有する入力側の結合部の断面図である。
【図7】分配移相器の断面図である。
【図8】本発明の分配移相器(第二実施形態)の一部を示している斜視図である。
【図9】出力側の結合部の断面図である。
【図10】本発明の分配移相器(第三実施形態)の一部を示している斜視図である。
【図11】図8の入力側の結合部を説明する断面図である。
【図12】本発明の分配移相器(第四実施形態)の一部を示している斜視図である。
【図13】他の形態の出力側の結合部を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1,51 出力側導線
1a,1b,51a,51b 出力端
2,52 入力側導体
3,53 可動結合導体
4,54 絶縁体
5,55 絶縁体
6 導体軸(第一端子)
7 入力端子部
9 移相器本体
11,61 入力側基部
12,62 線路部
13,63 出力側可動部
13a,13b 可動子
17 上導体(外導体)
18 下導体(外導体)
21 第一出力素子(第一出力部)
22 第二出力素子(第二出力部)
23 第三出力素子(第三出力部)
24 第四出力素子(第四出力部)
26 筒導体(第二端子)
31 第一入力素子(第一入力導体部)
32 第二入力素子(第二入力導体部)
71 第一出力導線部
72 第二出力導線部
81 第一入力素子(第一入力基部)
82 第二入力素子(第二入力基部)
A 分配移相器
C 中心線
P 入力側の結合部
Q 出力側の結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が出力端となる出力側導線と、
高周波信号が入力される入力側導体と、
前記入力側導体に入力された前記高周波信号を前記出力側導線の出力端へ伝達するための可動結合導体と、
を備え、
前記可動結合導体は、絶縁体を介して前記入力側導体と結合されている入力側基部と、前記出力側導線に沿って移動可能であると共に絶縁体を介して当該出力側導線と結合されている出力側可動部と、前記入力側基部と前記出力側可動部とを電気的に接続している線路部とを有し、
前記出力側可動部は、前記線路部に並列接続されかつ前記出力側導線を間に配置した状態として設けられている第一出力部と第二出力部とを有していることを特徴とする移相器。
【請求項2】
前記入力側導体は、並列接続されかつ前記入力側基部を間に配置した状態として設けられている第一入力導体部と第二入力導体部とを有している請求項1に記載の移相器。
【請求項3】
前記入力側基部は、前記線路部に並列接続されかつ前記入力側導体を間に配置した状態として設けられている第一入力基部と第二入力基部とを有している請求項1に記載の移相器。
【請求項4】
前記出力側可動部は、前記線路部に並列接続され、かつ、前記第一出力部と前記第二出力部との対向方向に直交する方向に前記出力側導線を間に配置した状態として対向して設けられている第三出力部と第四出力部とを有している請求項1〜3のいずれか一項に記載の移相器。
【請求項5】
前記入力側導体に接続された第一端子と、前記第一端子と絶縁されて設けられた第二端子と、を有している入力端子部と、
前記第二端子と電気的に接続されかつ対向して配置された対の板状の外導体と、を更に備え、
前記出力側導線、前記入力側導体及び前記可動結合導体を備えた移相器本体は、前記対の外導体の略中間位置に配置されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の移相器。
【請求項6】
前記出力側導線は、円弧又は一部が開いた円環の線路であり、前記入力側導体は、前記円弧又は一部が開いた円環の中心線上に設けられた導体であり、かつ、前記可動結合導体の前記入力側基部は前記中心線について回転対称形の導体であり、
前記入力側導体に接続されると共に高周波信号が入力されかつ前記中心線上に設けられた導体軸を更に備え、
前記可動結合導体の前記入力側基部は、前記導体軸の中心線周りに回動可能に、絶縁体を介して当該導体軸に取り付けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の移相器。
【請求項7】
端部が出力端となる出力側導線と、
高周波信号が入力される入力側導体と、
前記入力側導体から入力された前記高周波信号を前記出力側導線の出力端へ伝達するための可動結合導体と、
を備え、
前記可動結合導体は、絶縁体を介して前記入力側導体と結合されている入力側基部と、前記出力側導線に沿って移動可能であると共に絶縁体を介して当該出力側導線と結合されている出力側可動部と、前記入力側基部と前記出力側可動部とを電気的に接続している線路部とを有し、
前記出力側導線は、並列接続されかつ前記出力側可動部を間に配置した状態として設けられている第一出力導線部と第二出力導線部とを有していることを特徴とする移相器。
【請求項8】
端部が出力端となる出力側導線と、
高周波信号が入力される入力側導体と、
前記入力側導体に入力された前記高周波信号を前記出力側導線の出力端へ伝達するための可動結合導体と、
を備え、
前記可動結合導体は、絶縁体を介して前記入力側導体と結合されている入力側基部と、前記出力側導線に沿って移動可能であると共に絶縁体を介して当該出力側導線と結合されている出力側可動部と、前記入力側基部と前記出力側可動部とを電気的に接続している線路部とを有し、
前記出力側可動部は、前記絶縁体を介して前記出力側導線の長手方向一部を周方向に囲む筒形状を有していることを特徴とする移相器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−135893(P2010−135893A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307381(P2008−307381)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】