説明

移相型の素子および移相型の素子を有する粒子ビーム装置

【課題】移相型の素子と、移相型の素子を有する粒子ビーム装置とを提供するという課題が、本発明の基礎になっている。移相型の素子および移相型の素子を有する粒子ビーム装置では、粒子ビームを遮蔽する構成部材が回避されるので、良好な情報内容が得られ、位相コントラストが実質的に空間周波数に依存しない。
【解決手段】移相型の素子(1)は、不均一なおよび/または異方性の電位を発生させるための少なくとも1つの手段(2)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子ビームの少なくとも一部分の位相をシフトさせるための移相型の素子(位相をシフトさせるための素子)およびこのような移相型の素子を有する粒子ビーム装置に関する。
【0002】
既に以前から、光学顕微鏡では、位相コントラストによる生物的なサンプルの検査が知られている。光学顕微鏡の対物レンズの後焦点面に設けられているいわゆる位相リングによって、検査されるサンプルから由来しかつ回折されたおよび回折されない成分を含むビームが、ゼロ回折次数で、90°(すなわちπ/2)だけ移相される。位相されたビームによる高い回折次数の干渉によって、コントラストに富んだ像(位相コントラストを有する像)が提供される。
【0003】
このような方法の、電子顕微鏡、特に透過電子顕微鏡への適用は、長いこと不可能であった。しかし、まさしくこの分野では、位相コントラスト検査の適用は好都合である。何故ならば、生物的なサンプルが基本的には非常に薄く形成されており、通常、非常に軽い原子からなり、それ故に、実際に、入射する電子または電子波に対し透過性を有するからである。このようなサンプルは、位相に弱い物体とも呼ばれる。位相に弱い物体は、入射する電子波の振幅を変える代わりに、入射する電子波の位相を引き起こすだけである。より良い位相コントラストを得るためには、散乱されたおよび/または回折された電子と、散乱されないおよび/または回折されない電子との間の、90°(すなわちπ/2)の追加の移相(位相のシフト)が必要である。
【0004】
透過電子顕微鏡で位相コントラストを達成するための、幾つかの提案が既になされた。
【0005】
一方では、対物レンズを有する透過電子顕微鏡(以下TEMという)で位相コントラストを、対物レンズの焦点ずらしおよび対物レンズの球面収差によって達成されることが、提案された。しかしながら、この場合に欠点であるのは、このような処置方法によって、空間周波数に依存する位相のみが達成され、それ故に、達成された位相コントラストも同様に空間周波数に依存することである。従って、非常に低い空間周波数を有する、検査されるサンプルは、非常に低いコントラストを有する。この関連は、位相コントラスト伝達関数(PCTFまたはCTFと略される)によって、詳述することが可能である(これに対しては、例えば、非特許文献1を参照せよ)。
【0006】
他方では、散乱されたまたは散乱されない電子の標準化された移相をすべての空間周波数のために用いるいわゆるゼルニケ位相板を用いることが提案された。このような位相板は、例えば、小さな穴のあいた薄い炭素フィルムからなる。この炭素フィルムは、TEMの対レンズの、後焦点面に設けられる。散乱されない電子は、炭素フィルムの小穴を通過する。これに対し、散乱された電子は、炭素フィルム自体に当たって、炭素フィルムの、均質な等方性の電位(内部電位、クーロン・ポテンシャル)に基づき、90°(すなわちπ/2)の移相を受けることが可能である。しかし、炭素フィルムが非常に速く汚れることが明らかになった。特に、小穴は、非常に速く塞がれる。更に、炭素フィルムが非常に速く帯電されることは、不都合である。
【0007】
更に、移相のために、いわゆるヒルベルト位相板が用いられる。ヒルベルト位相板は、ゼルニケ位相板のように、同様に、薄い炭素フィルムから形成されていることが可能であり、半空間の移相を引き起こす。しかしながら、ヒルベルト位相板は、ゼルニケ位相板と同じ欠点を有する。
【0008】
TEMの場合の移相の他の形態は、電子ビームが静電位に晒されてなるベルシュ位相板の使用によって、得られる。このようなベルシュ位相板の構造は、特許文献1から公知である。このベルシュ位相板は、リング電極および保持手段を有する。リング電極は、中心の開口部および外縁を有する環状のプレートからなる。保持手段は、互いに向かい合って設けられている2つの真っ直ぐなホルダによって形成されている。この公知のベルシュ位相板では、サンプルにおいて散乱されないおよび/または回折されない電子が、中心の開口部を通過する。これに対し、散乱されたおよび/または回折された電子は、環状のプレートの外側に延びている。中心の開口部には、静電界が形成されている。この静電界は、中心の開口部を通過する電子の移相を引き起こす。しかしながら、公知のベルシュ位相板は、特にホルダに基づいて粒子ビームの遮蔽が引き起こされるという欠点を有する。粒子ビームは、最早干渉には寄与することができず、それ故に、情報損失が生じる。
【0009】
他のベルシュ位相板は、特許文献2から公知である。この公報は、開口部と、周囲の外縁とを有するプレートとして形成されている、リング電極を有する位相板に関する。更に、複数のホルダを有する保持手段が設けられている。これらのホルダは、リング電極の外縁に取着されており、TEMにリング電極を位置決めするために用いられる。この公知の位相板は、保持手段が非中心対称的に形成されており、如何なるホルダのためにも、プレートの、開口部の中央に対して向かい合っている外縁には、他のホルダが設けられていないことを特徴とする。公知の位相板は、TEMの対物レンズの、後焦点面に設けられている。位相板のホルダに基いて、対物レンズの後焦点面で、散乱された電子の部分領域(Teibereich)の遮蔽がなされる。遮蔽された部分領域に対し中心対称的である他の部分領域にある散乱された電子は、非中心対称敵な配置によって、影響を受けていない。対称関係に基いて、この位相板は、ホルダに基いた遮蔽によってまず失われた像情報の再構成を可能にする。しかし、更に、この公知の位相板では、散乱された電子の部分領域が遮蔽されること、および、従って、像情報が部分的に再構成されねばならないことが、欠点である。
【0010】
特許文献3からは、同様に移相型の素子を有する電子顕微鏡が公知である。この移相型の素子は、中心の開口部を有し、環状に形成されており、従って、外周面に嵌め込まれていることが可能である。それ故に、自立のまたはほとんど自立の構造は不要である。
【背景技術】
【0011】
【特許文献1】EP 782 170 A2
【特許文献2】WO 03/068399 A2
【特許文献3】DE 102 00 645 A1
【非特許文献1】Optimizing phase contrast in transmission electron microscopy with an electrostatic (Boersch) plate, E. Majorovits et al, Ultramicroscopy 107(2007)213-226
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、移相型の素子および移相型の素子を有する粒子ビーム装置を提供するという課題が、本発明の基礎になっている。移相型の素子および移相型の素子を有する粒子ビーム装置では、粒子ビームを遮蔽する構成部材が回避されるので、良好な情報内容が得られ、焦点はずしがゼロと同じであるとき(ガウスの焦点)、位相コントラストが実質的に空間周波数に依存しない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、本発明により、請求項1および2夫々の特徴を有する移相型の素子によって解決される。本発明に係わる粒子ビーム装置は、請求項27の特徴を有する。本発明の他の特徴は、他の請求項と、以下の記述と、図面とから明らかである。
【0014】
本発明に係わる移相型の素子は、粒子ビームの少なくとも一部分の位相をシフトさせるために設けられている。この素子は、粒子ビームに作用する不均一な電位を発生させる少なくとも1つの手段を有する。その代わりにまたは追加的に、異方性の電位を発生させるための少なくとも1つの手段を設けることが提案されている。
【0015】
特に、本発明に係わる移相型の素子を、電子ビーム装置、例えば透過電子顕微鏡に用いることが提案されている。適切な不均一のおよび/または異方性の電位の選択によって、移相は任意に調整可能である。良好な結像コントラストのためには、90°(π/2)の移相が好ましい。しかしまた、他の移相も本発明では考慮される。従って、本発明は、物体によって散乱されない粒子が、物体によって散乱される粒子に対して、移相を受けること、を提案する。換言すれば、ゼロ回折次数を有する粒子ビームと、高い回折次数を有する回折された粒子ビームとの間で、相対移相がなされる。
【0016】
本発明に係わる移相型の素子は、妨害的な保持手段を最早必要としないという利点を有する。従って、従来の技術とは異なって、本発明では、粒子ビームの一部分が遮蔽によって使用されないことはない。かくして、常に、物体からの良好な信号従ってまた良好な像情報が得られる。更に、不均一な電位の使用は、焦点はずしがゼロと同じであるとき(ガウスの焦点)、得られた位相コントラストが、空間周波数に依存しないことを保証する。
【0017】
本発明に係わる移相型の素子の第1の実施の形態では、不均一な電位を発生させため手段が、不均一な電位を発生させるために形成されている。この手段は、容易に実現される。更に、この手段によって、特に、空間周波数に依存しない位相コントラストが達成可能である。その代わりに、不均一な電位を発生させための手段が、不均一な磁位を発生させるために形成されていることが提案される。この目的のために、例えば、少なくとも1つの永久磁石の使用が考えられる。前記のことは、適切な異方性の電位に該当する。
【0018】
更に、移相型の素子が少なくとも1つの開口部を有し、この開口部が好ましくは貫通する開口部として、移相型の素子の材料によって形成されていることが提案されていることは好ましい。しかし、開口部が貫通状態に形成されている必要がないことを明確に指摘しておく。例えば、開口部が貫通状態に形成されていない、本発明の実施の形態も提案されている。例えば、薄いフィルムで閉じられている開口部が提案されている。開口部が、移相型の素子の面に対し垂直方向に非回転対称的に設けられていることは好ましい。その目的は、かくて、良好なかつ極めて局所化された不均一なおよび/または異方性の電位を発生させるためである。
【0019】
他の実施の形態では、移相型の素子がまさしく1つの開口部を有することが提案されている。上記の少なくとも1つの開口部またはまさしく1つの開口部の中を、散乱されたおよび/または散乱されていない粒子ビーム(例えばTEM中の電子ビーム)が通過する。散乱されていない粒子ビーム(すなわちゼロ回折次数を有する粒子ビーム)が、高い回折次数を有する粒子ビームに対し、相対移相を受ける。相対移相された粒子ビームによる、高い回折次数を有する粒子ビームへの干渉により、高いコントラストの画像が提供される。
【0020】
移相型の素子が、第1の軸に沿った第1の素子長さおよび第2の軸に沿った第2の素子長さを有し、第1の軸が、第2の軸に対し非平行に設けられていることが提案されていることは特に好ましい。移相型の素子の開口部は、この実施の形態では、第1の軸に沿ってのみならず第2の軸に沿っても延びている。
【0021】
更に、本発明の実施の形態は、開口部が、第1の軸に沿った第1の開口部長さおよび第2の軸に沿った第2の開口部長さを有し、第1の開口部長さは、第2の開口部長さより大きいことを特徴とする。特に、第1の軸および第2の軸は、開口部が設けられてなる面(例えば移相型の素子の表面)を規定する。これらの開口部長さは、結像されるべきである回折像が、開口部を通過することができるように、選択されていることが可能である。この場合、特別な実施の形態では、第1の開口部長さは、好ましくは20μmないし200μmの範囲にあり、好ましくは40μmないし180μmの間の範囲に、更に好ましくは50μmないし150μmの間の範囲にある。第2の開口部長さは、好ましくは1μmないし20μmの間の範囲に、より好ましくは2μmないし5μmの間の範囲にある。
【0022】
第1の軸が第2の軸に対し垂直に設けられていることは好ましい。移相型の素子は第3の軸を有することは好ましい。この軸には、第1の軸に対し非平行におよび第2の軸に対し非平行に設けられており、好ましくは第1の軸のみならず第2の軸に対し垂直に設けられている。次に、開口部は第3の開口部長さを有し、この開口部長さは、第3の軸に沿って延びている。第3の開口部長さは、基本的には、移相型の素子の高さに対応している。この開口部長さは、基本的には、自由に選択可能であり、数μmないし数mmであることが可能である。
【0023】
特に、開口部がスリット状に形成されていることが提案されている。この形状は、特に、矩形の形態の実施の形態を意味する。スリット状の実施の形態が矩形の形状に限定されておらず、考えられる如何なる形状も有することができる。この形状によって、スリット状の実施の形態が達成可能である。実際また、他の実施の形態では、追加的にまたはその代わりに、開口部が十字形に形成されていることも提案されている。
【0024】
本発明に係わる移相型の素子の他の実施の形態では、移相型の素子は、多層に形成されている。この場合、移相型の素子が少なくとも1つの電極を有することが提案されていることは好ましい。しかしまた、2つ以上の電極が移相型の素子に設けられていてなる実施の形態も提案されている。電極は、好ましい実施の形態では、金から形成されている。更に、電極は、少なくとも1つの導体によって、制御ユニットに接続されている。その目的は、不均一なおよび/または異方性の電位を発生させるためである。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態では、電極が個々の電極セグメントからなるように、電極をセグメント化することが提案されている。これらの電極セグメントが個別に制御可能である。
【0026】
個々の電極のセグメント化に加えてまたはその代わりに、本発明の他の実施の形態では、同様に好ましくは個々に制御可能である別個の第1の電極および別個の第2の電極を設けることが提案されている。
【0027】
更に、電極が、第1の面および第2の面を有することが提案されていることは好ましい。電極の第1の面には、第1の絶縁体(絶縁層)が設けられていることが提案されていることは好ましい。追加的に、電極の第2の面には、第2の絶縁体を設けることが提案されていることは好ましい。第1のおよび/または第2の絶縁体が、Alから形成されている。他の実施の形態では、第1の絶縁体には、第1の遮蔽ユニットが設けられていることが提案されている。これに追加して、第2の絶縁体には、第2の遮蔽ユニットが設けられている。第1の遮蔽ユニットおよび/または第2の遮蔽ユニットが金から形成されていることは好ましい。
【0028】
前記1つの実施の形態または前記複数の実施の形態は、(例えばリソグラフィ法および/またはスパッタリング法によって)、容易に実現される。更に、これらの実施の形態は、外から容易に制御可能である。特に、不均一なまたは異方性の電位(例えば不均一な電位)を、所望の移相が得られるように、正確に制御することは可能である。
【0029】
本発明の他の実施の形態では、移相型の素子はドリフトユニットを有する。例えば、移相型の素子の開口部をドリフトユニットとして形成し、あるいは、開口部にドリフトユニットを設けることが提案されている。ドリフトユニットの構造および機能は、以前から知られている。それ故に、これについては、詳しく立ち入らない。
【0030】
本発明の他の実施の形態では、前記の移相型の素子が、追加的に、内部電極を有する少なくとも1つの区域を具備することが提案されている。従って、このことは、本発明に係わる移相型の素子と、既知の従来の技術との組合せである。
【0031】
本発明は、少なくとも1つの第1の移相型の素子および少なくとも1つの第2の移相型の素子を有するシステムにも関する。第1の移相型の素子ならびに第2の移相型の素子は、上記複数の特徴の少なくとも1または特徴の組合せを有する。特に、システムが、第1の光軸を有すること、および第1の移相型の素子および第2の移相型の素子が光軸に沿って設けられていることが提案されていることは好都合である。この場合、第2の移相型の素子は、第1の移相型の素子の後方に設けられている。
【0032】
本発明に係わるシステムは、特に、移相型の素子の開口部の十字形のデザインが用いられることが意図される場合に、好都合である。このデザインは、本発明に係わるシステムでは、或る優位偏光方位に整列された開口部(例えば、矩形のスリット)を夫々有する2つの直列接続された移相型の素子も、実現することができる。これらの移相型の素子は、移相の優位偏光方位が互いに直角に設けられているように、直列接続されている。かくして、粒子ビームが、実際に、2回の通過によって、矩形の開口部を通過する。
【0033】
本発明は、後焦点面を有する少なくとも1つの対物レンズを備える粒子ビーム装置にも関する。更に、粒子ビーム装置には、対物レンズの後焦点面を回折中間像面に拡大して結像するための少なくとも1つの回折レンズが設けられている。実際また、回折中間像面に設けられている少なくとも1つの第2の回折レンズが設けられている。この場合、「回折中間像面で」(ここでおよび以下にもこういう)は、一方では、「まさしく回折中間像面に」を、他方では、「回折中間像面の付近に」を意味する。更に、本発明に係わる粒子ビーム装置は、少なくとも1つの多極素子および少なくとも1つの移相型の素子を有する。後者の素子は、複数の特徴の少なくとも1または特徴の組合せを有し、好ましくは、回折中間像面に設けられている。
【0034】
本発明に係わる粒子ビーム装置は、既に上述した利点に加えて、対物レンズの、後焦点面すなわち回折面が、回折中間像面に拡大して結像されるという利点も有する。これに対応して、移相型の素子が、相応に拡大して結像されていることが可能である。それ故に、寸法に関しての要求があまり高くないので、移相型の素子は比較的容易に製造される。更に、第2の回折レンズが、回折中間像面にまたは中間画像面の区域に設けられており、それ故に、第2の回折レンズは、基本的には、ほぼ、対物レンズの物体面へ共役された像面の位置(Lage)にのみ影響を有する。
【0035】
回折面の拡大された結像は、少なくとも1つの多極素子の故に、基本的には線状に描かれている。すなわち、アナモルフィックな結像である。この場合、回折面の拡大された結像は、2つの互いに直角に設けられた軸の方向で、異なった大きさである。これらの2つの軸に関する倍率は、アスペクトレシオと呼ばれる。アスペクトレシオは、移相型の素子の寸法に影響を与え、かつ寸法を定める。本発明にとっては、1:10ないし1:100の範囲にあるアスペクトレシオが好ましい。
【0036】
本発明に係わる粒子ビーム装置の実施の形態では、粒子ビーム装置は光軸を有する。更に、対物レンズから第2の回折レンズの方向に見て、少なくとも1つの多極素子が設けられている。この多極素子は、上記のアナモルフィックな結像を形成するために用いる。第1の多極素子および第2の多極素子が設けられていることは好ましい。対物レンズから第2の回折レンズの方向に、第1の回折レンズと、第1の多極素子と、第2の多極素子と、回折中間像面とが設けられている。前記実施の形態によって、回折面の良好なアナモルフィックな結像が保証される。
【0037】
他の実施の形態では、第3の多極素子と、第4の多極素子と、投影レンズとが、本発明に係わる粒子ビーム装置に設けられている。回折中間像面から投影レンズの方向に、第3の多極素子と、第4の多極素子と、投影レンズとが設けられている。粒子ビーム装置が回折中間像面の区域に第5の多極素子も有することは好ましい。第5の多極素子が、第1の副多極素子および第2の副多極素子に分割されていることは好ましい。多極素子の前記実施の形態は、アナモルフィックな結像が再度補整され、すなわち、元の状態に戻されることを保証する。更に、2つの副多極素子への分割は、特に組立の際には好都合である。何故ならば、移相型の素子は、回折中間像面の区域に設けられねばならず、分割によって、より良い操作が保証されるからである。
【0038】
本発明の好ましい実施の形態では、多極素子または複数の多極素子のうちの少なくとも1は、少なくとも1つの磁気的なまたは電気的な極を有する。極の数に従って、アナモルフィックな結像のために必要である望ましい場が発生される。多極素子または複数の多極素子のうちの少なくとも1が、四重極場を有することは好ましい。特に、多極素子または複数の多極素子のうちの少なくとも1を四極素子として形成すること、が提案されている。
【0039】
更に、各々の四極素子(多極素子)に双極場を重ね合わせることは好都合である。それ故に、2軸の二重偏向システムは、2つの隣接する四極素子によって形成される。
【0040】
他の実施の形態では、粒子ビーム装置は、少なくとも6つの四極素子を有し、これらの四極素子は、回折中間像面に対し逆対称的に励起可能であり、各々の四極素子および回折中間像面には、夫々1つの八極子が重ね合わされている。四極素子および八極子のこのような実施の形態は、DE 42 04 512 A1から公知であるが、移相型の素子との関連では知られていない。この実施の形態は、一方では、回折面のアナモルフィックな結像を保証し、結像には、移相型の素子が設けられており、他方では、粒子ビーム装置の球面収差および色収差の補正を保証する。
【0041】
本発明に係わる粒子ビーム装置の他の実施の形態では、粒子ビーム装置は、6つの四極素子を含みかつ七つ組として形成されている少なくとも1つの四極子と、七つ組としての四極子内で励起可能な少なくとも5つの八極子とを具備する。このような実施の形態は、DE 101 59 454 A1から公知であるが、移相型の素子との関連では知られていない。この実施の形態は、同様に、一方では、回折面のアナモルフィックな結像を保証し、他方では、粒子ビーム装置の球面収差および色収差の補正を保証する。
【0042】
既に上述したように、好ましい実施の形態では、四極素子または複数の四極素子のうちの少なくとも1は、磁気的にまたは電気的に形成されている。実際また、複数の八極子のうちの少なくとも1が、電気的および/または磁気的に形成されていることが提案されている。
【0043】
実際また、粒子ビーム装置の好ましい実施の形態は、粒子ビーム装置が、収差を補正するための補正器を有し、この補正器は、例えば、上記のように形成されていてもよいことを提案する。この場合、多極素子(特に、複数の四極素子からなる上記システム)が、粒子ビーム装置の放射方向に関して、補正器の前方または後方に設けられることが可能であることが提案されていることは好ましい。この実施の形態は、ガウスの焦点での結像の場合に、ゼロ位置を有しないコントラスト伝達が実現されることを保証する。この場合、位相コントラスト伝達関数の値は、値1(すなわち、90°の位相の際に最適な位相コントラスト)と0.707(45°)の間で変化する。
【0044】
本発明に係わる粒子ビーム装置が、電子ビーム装置として、特にTEMとして形成されていることは好ましい。
【0045】
本発明は、後焦点面を有する少なくとも1つの対物レンズと、この対物レンズの後焦点面を回折中間像面へ拡大して結像するための少なくとも1つの第1の回折レンズとを有する粒子ビーム装置に関する。更に、回折中間像面にまたはこの中間画像面の区域に設けられている少なくとも1つの第2の回折レンズが設けられている。実際また、粒子ビーム装置には、少なくとも1つ移相型の素子と、四極素子として形成されている少なくとも1つの多極素子とが設けられている。移相型の素子が、上記複数の特徴の少なくとも1または特徴の組合せを有することは好ましい。しかし、素子は、これらの特徴に限定されていない。この粒子ビーム装置でも、回折面の結像がなされる。それ故に、移相型の素子は、幾何学的に拡大して構成されていることが可能である。このことは、一方では、移相型の素子の容易な製造を、他方では、移相型の素子の、従来の技術から知られている構成要素(例えば、保持バー)による、粒子ビームの部分の不使用の減少を保証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳述する。本発明は、不均一なおよび/または異方性の電位、特に、不均一な電位によって、所望の移相(位相のシフト)が、単純な幾何学的なデザインをもって達成可能であるという認識を前提としている。図1は、位相板の形態をとる移相型の素子1の第1の実施の形態の平面図を示す。この移相板により、不均一な電位および/または異方性の電位が発生される。この移相型の素子1は、粒子ビーム装置の光軸が、シート面に対して垂直方向であるz方向に延びているように、粒子ビーム装置の(例えばTEMの形態をとる電子ビーム装置の光路に設けられている。
【0047】
移相型の素子1は、y方向に第1の長さE1およびx方向に第2の長さE2を有する。この実施の形態では、基本的には、位相板が矩形に形成されている。本発明が位相板の矩形のデザインに限定されていないことは、明確に指摘しなければならない。むしろ、位相板の形状は、考えられる如何なる形を有することが可能である。例えば、形状が丸く形成されていてもよい。
【0048】
移相型の素子1は、ほぼ中央に、スリット2の形態をとる、矩形の貫通している開口部を有する。このスリット2は、y方向に第1の辺O1およびx方向に第2の辺O2を有する。辺O1は、ここに図示した実施の形態では、約60μmである。辺O2は約2μmないし3μmである。
【0049】
図2は、図1に示された線A-Aに沿った、移相型の素子1の断面図を略示する。多層に形成された移相型の素子1は、第3の長さE3を、z方向に有する。z方向に沿って、スリット2が完全に延びている。移相型の素子1は、更に、真ん中の電極3を有する。この電極は、金から形成されており、第1の面3aおよび第2の面3bを有する。第1の面3aには、第1の絶縁層6が設けられている。更に、第2の面3bには、第2の絶縁層7が設けられている。絶縁層6のみならず絶縁層7も、Alから形成されている。これら絶縁層6および7は、夫々、同様に、遮蔽層4および5を有する。遮蔽層4のみならず遮蔽層5も金から形成されており、周囲の電位に接続されている。例えば、遮蔽層は接地されている。
【0050】
図1でz方向に延びている軸には、図2では、参照符号8が付されている。軸はスリット2を通って延びている。真ん中の電極3は、スリット2で不均一な電位が存するように、電子ユニット(制御ユニット、図示しない)によって制御可能である。散乱されたまたは散乱されない粒子ビーム(例えばTEMでは電子ビーム)が、スリット2を通る。この場合、散乱されない粒子ビーム(すなわちゼロ回折次数を有する粒子ビーム)が、高い回折次数を有する粒子ビームに対し、相対移相を受ける。移相された粒子ビームによる、より高い回折次数を有する粒子ビームへの干渉によって、高いコントラストの画像が提供される。
【0051】
図3は、図1に示す線B-Bに沿った断面を示す。真ん中の電極3は、同様に、2つの個々に制御可能な電極9および10を有する。これらの電極は、絶縁層6および絶縁層7によって囲繞されている。更に、2つの電極9および10は、絶縁層11によって、分離されている。この実施の形態でも、絶縁層6,7および11は、Alから形成されている。絶縁層6および7には、夫々、同様に、遮蔽層4および5が設けられている。遮蔽層は金から形成されており、周囲の電位に接続され(例えば接地)されている。
【0052】
電子ユニット(制御ユニット、図示しない)によって、電極9では、第1の電位(−U)が発生され、他方、電極10では、第2の電位(U)が発生される。電位の推移は図5bに示されている。見て取れるように、スリット2を通過する回折しない粒子ビームは、高い回折次数を有しかつスリット2を通過する回折された粒子ビームに対し、180°(つまりπ)の相対移相を受ける。図3に示した実施の形態は、ヒルベルトに基づく移相に用いられ、従って、ヒルベルト位相板として形成されている。
【0053】
図4は、位相板の形態をとる、本発明に係わる、多層の、移相型の素子1の他の実施の形態を示す。前述の実施の形態の場合のように、同一の参照符号は、同一の要素に対して用いられる。この移相型の素子1は、平面図で、図1および図2に示した実施の形態と同一の構造を有する。従って、この素子もスリット2を有する。しかし、線B-Bに沿った断面図で、他の実施の形態が観察されるとき、図3に示した実施の形態に対し幾らか異なった構造が認められる。図4に示す実施の形態では、電極3は、金で形成された3つの電極12,13および14から形成されていてもよい。これらの電極は、Alからなる絶縁層15および16によって、互いに分離されている。この代わりに、絶縁層が真空によって形成されていてもよい。電極12ないし14の両側には、Alから形成された他の絶縁層6および7が設けられている。これらの絶縁層は、同様に、金から形成されかつ周囲の電位に接続(例えば接地)されている遮蔽層4および5を有する。
【0054】
電子ユニット(制御ユニット、図示しない)によって、再度、複数の電位が、以下のように、すなわち、電極12および14の各々には電位(U)が接続され、他方、電極13には電位(U)が接続されているように、発生される。電位の推移は図5bに示されている。見て取れるように、スリット2を通過する回折されない粒子ビームは、高い回折次数を有しかつスリット2を通過する回折された粒子ビームに対し、90°(つまりπ/2)の相対移相を受ける。図4に示した実施の形態は、ゼルニケに基づく移相に用いられ、従って、ゼルニケ位相板として形成されている。
【0055】
図6は、図1,2,3および4に示す移相型の素子1の実施の形態および制御ユニット103を示す。制御ユニットは、ライン101および102によって、移相型の素子1に接続されている。制御ユニット103によって、上記の複数の電極が、個々に、所望の電位を発生させるために制御可能である。
【0056】
図7および8は、本発明に係わる移相型の素子1において実現される、複数の電極の他の実施の形態を示す。図7は、中央の電極13と、絶縁層によってこの電極から間隔をあけた2つの電極12および14とを示す。2つの電極は、夫々、セグメント化されている。例えば、電極12は、互いに絶縁された複数のセグメント12aないし12hを有し、電極14は、互いに絶縁された複数のセグメント14aないし14hを有する。各々のセグメントは、個々に制御可能である。各々のセグメントは、基本的には、図6に示す制御ユニット103に接続されている。
【0057】
図8は電極の他の実施の形態を示す。この実施の形態では、電極12および14は櫛状に配置されている。
【0058】
図9は、円形の開口部17を有する、発明に係わる移相型の素子1の、他の実施の形態を示す。
【0059】
図10は、移相型の素子1の他の実施の形態を示す。この素子は、2つの矩形のスリット18および19を有する。これらのスリットは、互いに直角となるように配置されている。従って、2つのスリット18および19は、十字を形成している。十字の中心20には、回折されない粒子ビームが通過する。この移相型の素子1の多層の構造は、基本的には、図3または4に示した構造に対応する。この実施の形態も、不均一な電位の提供を保証する。それ故に、回折されない粒子ビームが、高い回折次数を有する粒子ビームに対し、相対移相を強く受ける。十字形のデザインにより、十字形の位相コントラストが形成される。
【0060】
図12aは、十字形に配置された2つのスリット18および19を有する位相板1の他の実施の形態を示す。プラスの電位に接続されている電極3(中間の電極)のみが示されている。光軸にゼロ電位を発生させるためには、4つの内側の四分区間が、夫々、アースに接続されており、あるいは、これらの四分区間に、僅かにマイナスの電圧が加えられている。スリット18および19には、夫々、π/2の相対移相のための電位が発生される。
【0061】
図12bは、十字形に設けられたスリット18および19を有する位相板の他の実施の形態を示す。この実施の形態では、電極104および105がプラスの電位に接続されているのに対し、電極106および107はマイナスの電位に接続されている。スリット18および19には、同様に、相対移相のための電位が発生される。X断面における電位が、−π/2の相対移相を行なうのに対し、Y断面における電位は、π/2の相対移相を行なう。Xの断面における電位が遠方区域でマイナスであり、Yの断面において遠方区域でプラスであるので、光軸上に、電位のゼロ軸交差(Nulldurchgang)が達成される。
【0062】
不均一な電位の良好な発生および十分に良好な移相の保証は、図11に略示されている実施の形態によっても、与えられる。この実施の形態では、夫々スリット状の開口部18および19を有し、かつ位相板の形態をとる2つの移相型の素子1が用いられる。2つの移相型の素子1が、粒子ビーム装置(例えばTEM)内で、直列接続されており、2つの移相型の素子1の間には、四極型レンズ21が設けられている。2つの移相型の素子1は、2つのスリット状の開口部18および19が互いに垂直に設けられているように、相対して設けられている。2つの移相型の素子1は、不均一な電位を、以下のように、すなわち、粒子ビームが開口部18および19の中を通過した後に、粒子ビームの回折されない成分が、粒子ビームの回折された成分に対し移相を受け、2つの移相型の素子1の直列接続によって、同様に、十字形の位相コントラストが発生されるように、用いる。
【0063】
図13は、位相板の形態をとる移相型の素子1の他の実施の形態を示す。図13は、移相型の素子1の半体の略図である。この半体は、同様に、十字形に設けられたスリット状の開口部18および19を有する。開口部18には、電極が設けられている。この電極は、向かい合う電極(図示せず)と共に、ドリフトユニット22を形成する。ドリフトユニットは、真空またはAlからなる絶縁層によって囲繞されている。ドリフトユニット22は、不均一な電位の提供のために形成されており、従って、同様に、回折された粒子ビームが、回折されない粒子ビームに対し相対移相を受けることを引き起こす。
【0064】
図14は、TEMの上部を示す。TEMの下部は、以下に詳述する。TEMは、熱形の電界放出源の形態をとる電子銃23を有する。しかしながら、他の電子銃も全く使用可能である。TEMの光軸32に沿って、電子銃23の後方に、抽出電極24が設けられている。抽出電極の電位によって、電子銃23から電子が吸引される。更に、電子銃により発生された電子ビームを集束するために電極25が設けられており、加速させるために少なくとも1つの他の電極26が設けられている。電極26に基づいて、電子銃23から出る電子が、電子電位によって、所望のかつ調整可能なエネルギへ加速される。このような構造は、既に、以前から知られており、従って、ここでは詳述しない。
【0065】
光軸32上の更なるコースでは、3つの磁気レンズ27ないし29を有する多段のコンデンサが設けられている。このコンデンサには、対物レンズ30が続いている。対物レンズ30には、物体面31が設けられている。物体面には、検査されるサンプルを、サンプル・マニュプレータによって配置することができる。電子銃の焦点が、対物レンズ30の後焦点面へ合わせられる。
【0066】
図15aおよび15bは、TEMの下部を示す。TEMは、多極システムを有しかつ回折面にアナモルフィックに結像するためのシステムを具備する。この場合、図15aは、X断面(すなわちX軸に沿った断面)を示し、図15bはY断面(すなわちY軸に沿った断面)を示す。図14に示した対物レンズ30には、TEMの光軸32に沿って、第1の回折レンズ34が続いている。回折レンズに続いて、第1の四極素子(四極子)36および第2の四極素子37が設けられている。調整の目的のために、四極素子36に関連して偏向システム38が設けられており、四極素子37に関連して偏向システム38が設けられている。2つの偏向システム38および39は、双極場を有する。回折中間像面40には、第2の回折レンズ41が設けられている。第2の回折レンズ41の主面は、回折中間像面40に対応する。第2の回折レンズ41の主面には、移相型の素子1も設けられている。この素子は、ここに図示した実施の形態では、既に上述された複数の移相型の素子1のうちの1である。例えば、素子は、図1,2および3に示した移相型の素子1である。第2の回折レンズ41の主面の区域には、四極素子43も設けられている。光軸32の更なるコースでは、複数の他の四極素子が設けられている。例えば、第2の回折レンズ41には、四極素子46および四極素子47が続く。2つの四極素子46および47に関連して、夫々偏向システム44および45が設けられている。偏向システムは、同様に、夫々、双極場を有する。四極素子47には、次に、光軸32に沿って、対物レンズ48が続く。
【0067】
以下、図14,15aおよび15bに示したTEMの機能方法を詳述する。ここに示したTEMで形成されるアナモルフィックな結像は、複数の多極装置によって生起される。これらの多極装置は、4つの基本的な経路によって描くことができる。すなわち、これらの経路は、経路xα,yβ,xγおよびyδである。X断面における光軸32上の結像面(すなわち物体面31)で始まる基本的な経路すなわち結像ビームには、xαが付される。対応のY断面には、yβが付される。対物レンズ30の後焦点面に対応する回折面33で所定の角度で始まる基本的な経路(電場ビーム(Feldstrahlen)には、X断面でxγが付され、Y断面でyδ付される。これらの経路は、変換法則(Wechselsatz)の式を満たす。
【0068】
x'α・xγ-xα・x'γ=1
y'β・yδ-yβ・y'δ=1
ただし、ダッシュの付いた変数は、夫々、経路の導関数(勾配)を表わしている。変換法則は、既に、以前から知られているので、変換法則については、詳しく立ち入らない。
【0069】
検査される物体が対物レンズ30の焦点に位置している。それ故に、結像ビームの平行の束が対物レンズ30から出て行く。第1の回折レンズ34によって、中間像35へ、結像ビームの束が集束される。第1の回折レンズ34の、前方の(物体側の)焦点面は、対物レンズ30の焦点面すなわち回折面33に位置している。それ故に、電場ビームは、第1の回折レンズ34から平行に出ていく。四極素子36は、四極素子が結像ビームに影響を与えないように、中間像35の区域に設けられている。しかしながら、第1の四極素子36によって、電場ビームが集束され(xγ)、あるいは、拡散される(yδ)。他の四極素子37との関連で、回折面33の、焦点が合わされたスチグマチックな像が存する。結像ビームは、四極素子36によって影響を受けないが、四極素子37によって影響を受ける。というのは、結像ビームは、或る方向(すなわちyβ)へ拡散され、この方向に垂直な方向(xα)へ集束されるからである。かくして、対称面である回折中間像面40には、回折面33の回折像が、種々の倍率で、2つの像断面XおよびYに存する。従って、アナモルフィックな(すなわち線状に表わされた)回折像が得られる。
【0070】
γ(ZS)=yδ(ZS)=0
(ただし、ZSは回折中間像面40に対応する)という、焦点が合わされた回折像のための条件をもって、複数の経路およびこれらの経路の勾配が、以下の式を満たさねばならない。
【0071】
α(ZS)・x'γ(ZS)=-1
β(ZS)・y'δ(ZS)=-1
回折中間像面40(ZS)におけるyβおよびxαの比率は、ここに示した実施の形態では1:10ないし1:100の範囲にあるアスペクトレシオである。アスペクトレシオは、スリット2を有しかつ矩形に形成されている移相型の素子1の寸法を定める。この場合、スリット2の寸法は、後焦点面33の回折像が少なくとも部分的にまたは全体的にスリット2を通って案内されるように、選択されている。換言すれば、ゼロ次数を有する散乱されないおよび/または回折されない粒子ビームが、高い回折次数を有する散乱されたおよび/または回折された粒子ビームと共に、スリット2を通って案内される。
【0072】
移相型の素子1と、アナモルフィックな結像との組合せの使用は、邪魔になる保持手段が移相型の素子1のために最早必要ないという利点を有する。従って、本発明では、従来の技術と異なり、粒子ビームの部分が遮蔽によって使用されなくはならない。かくして、良好な信号従ってまた良好な像情報が得られる。更に、不均一な電位の使用は、得られた位相コントラストが空間周波数に依存していないことを保証する。
【0073】
TEMの光路の更なるコースでは、アナモルフィックな結像が再度補整される。この目的のために、四極素子43,46および47が用いられる。第2の回折レンズ41および四極素子43,44および45は、結像ビームxαおよびyβに影響を及ぼす。それ故に、結像ビームは、アナモルフィックな回折面に対し像鏡面対称的に延びている。しかしながら、対称面で集束されている電場ビームは、対称面によっては影響を受けない。これに対し、電界ビームxγおよびyδは、移相型の素子1の面に対し逆対称的に延びている。対称特性があるので、回折中間像面40の下方に設けられた四極素子46および47が、光路の歪像形成を補整する。これらの四極素子には、偏向システム44および45によって、双極場が重ね合わされている。
【0074】
図1,2および3に示す実施の形態を有する移相型の素子1の代わりに、十字形の開口部(例えば図10)を有する移相型の素子1を、回折中間像面40に設けられることができる。複数の四極素子の適切な接続によって、回折面33のアナモルフィックな結像を90°回転することができる。かくして、移相型の素子に形成されたギャップに垂直に延びている回折された粒子ビームも、以下に、位相の中で移すことができる。
【0075】
図16aおよび16bは、TEMの、図15aおよび15bに対しほぼ同一の下部を示す。しかしながら、前者の図のTEMは、後者の図とは異なり、回折中間像面40の区域に、多極子素子43aの形態の副多極素子および多極子素子43bの形態の副多極素子を有する。図15aおよび15bに示した四極素子43の、2つの四極素子43aおよび43bへの分割は、組立の理由から好都合である。何故ならば、このことによって、移相型の素子1をマニプレータによってTEMの光路に設けることが容易化されるからである。四極素子43aおよび43bの機能を以下に説明する。
【0076】
四極素子43aは、結像ビームyβが容易に集束され、結像ビームxαが容易に拡散されることを引き起こす。それ故に、これらの結像ビームは、中間像35に位置している共通の仮想の結像面を有する。この結像面は、第2の回折レンズ41によって、中間像面49に結像される。四極素子43bは,四極素子43aに類似して作用し、結像ビームの適切な集束または拡散を引き起こす。
【0077】
図17は、TEMの結像システムの他の実施の形態を示す。この実施の形態は、基本的には、3つの物事、すなわち、移相型の素子の使用と、回折面のアナモルフィックな結像と、色補正および誤り補正を互いに結びつける。
【0078】
対物レンズに、従ってまた物体面に、この実施の形態では、図17で参照符号50が付されている。これに対し、対物レンズ50の、後焦点面すなわち回折面には、参照符号51が付されている。更に、光路には、TEMの、z方向に整列された光軸に沿って、四極子および八極子の形態の多数の多極素子が設けられている。図17は、基本的に、光軸zに沿って設けられた四極子詳しくは四重極場Q1ないしQ7のコースおよび強さを示す。四極子Q1ないしQ7は、真ん中の対称面ZSに対し対称的に設けられている。この対称面は、同時に、回折中間像面であり、対称面には、移相型の素子54が設けられている。移相型の素子54は、図1,2および3に示す構造を有する。
【0079】
この場合、対称面ZSは、四重極場に関してのみならず基本的な経路に関しても、対称面である。四極子Q1ないしQ7は、電気的および磁気的に形成されており、互いに静電的および磁気的な四重極場の重なり合いからなる。結像経路52、すなわち物体面50で所定の角度で始まり、xαおよびyβが付されている経路は、対称軸ZSに対し対称的に延びている。電場の経路53、すなわち回折面51で所定の角度で始まり、xγおよびyδが付されている経路は、対称軸ZSに対して逆対称に延びている。対称面ZSには、後方の回折面51は、図15a,15bおよび16a,16bに示す実施の形態に関して基本的に既に述べたように、アナモルフィックに、すなわち、線状に表わされた状態で結像されている。
【0080】
更に、図17に示す実施の形態は、5つの八極子O1ないしO5を有する。八極子O1ないしO5は、対応の矢印を特徴とする。光軸zに沿った個々の八極子O1ないしO5の位置は、基本的な経路のコースに関して、対物レンズの球面収差の成分が補正されるように、選択されている。八極子対は、第1の四極子Q1の前方のおよび最後の四極子Q7の後方の区域でのように、ビームが著しい回転対称を有してなる箇所に、設けられている。他の八極子対O2,O3およびO4は、アスティグマチックな中間像の区域に、すなわち、基本的な経路のゼロ通過点に設けられている。何故ならば、このことによって、誤り補正の分離が保証されているからである。対称面ZSにおける八極子O3の代わりに、2つの八極子O6およびO7が、夫々、第3のおよび第5の八極子に重ね合わされている。
【0081】
図17に示した実施の形態が、3つの重要な観点、すなわち、移相型の素子54の使用と、回折面のアナモルフィックな結像と、多極システムによる色補正および誤り補正とを結びつけることは好都合である。従って、この実施の形態は、既に上述した利点および作用方法に加えて、色補正および誤り補正機能を有する。しかしながら、この補正は省略することができる。それ故に、前記多極システムは、アナモルフィックな結像のためにのみ用いられる。この実施の形態では、アスペクトレシオが特に良好に調整される。
【0082】
移相型の素子の使用と、TEMの対物レンズの回折面のアナモルフィックな結像と、色補正および誤り補正とを有する、TEMの他の実施の形態は、図18に略示されている。TEMの光軸には、同様に、参照符号zが付されている。x方向およびy方向における、互いに直角に延びている2つの断面が、垂直に交わって投影されている。
【0083】
参照符号xαおよびyβが、夫々、物体点の軸から出ている軸方向のビーム55のx成分およびy成分が付されており、他の基本的な経路にも、同様に、参照符号xγおよびyδが付されている。2つの成分は、第1の四極子56では、異なって偏向される。この場合、アスティグマチックな中間像が存する。X断面で延びている経路はゼロになり、従って、光軸zと交差する。この箇所には、他の四極子57が設けられている。この四極子は、その位置の故に、yβ成分のみに影響を及ぼし、xα成分に影響を及ぼさない。他の四極子58は、yβ成分が光軸zと交差してなる箇所に最も近くにある。そのとき、この箇所には、反転の形態のxα成分の影響のみが生じる。
【0084】
更に、対称面59に対称的に設けられている八極子60が設けられている。更に、図示されていない複数の他の八極子も設けられている。
【0085】
図示された実施の形態は、多極子の配置に関して、対称的な構造を有する。この構造は、対称面59によって保証されている。しかしながら、四極子61ないし63は、四極子56ないし58に対し、逆の極性を有する。ビーム路が逆対称的であるにもかかわらず、ここでも、矩形の位相板が設けられる。
【0086】
上記のように、軸外のビーム64は、同様に、2つの成分すなわちxγ成分およびyδ成分を有する。これらの成分は、同様に、第1の四極子56によって分割され、かつ四極子57によって偏向される。
【0087】
この実施の形態でも、移相型の素子54は、図1,2および3に示すように設けられている。この素子を、2つの異なった箇所に設けることもできる。ここでも、対物レンズの、後焦点面すなわち回折面が、対称面59にアナモルフィックに結像される。それ故に、既に上述したように、同様の利点が達成される。移相型の素子54を四極子61の区域に設けることも、特に好都合である。ここでは、かなり大きなアスペクトレシオが生じる。xγ成分は、軸z(移相方向に対し垂直)からかなり遠方に延びているが、矩形に構成された開口部を有する移相型の素子54を通って、強くアスティグマチックな回折されていない粒子ビーム(ゼロビーム)が通過されて、移相を受けることはない。しかしながら、高い回折次数を有する回折された粒子ビームは移相を受ける。
【0088】
図19は、TEMの下部の他の実施の形態の略図を示す。例えば、TEMの光軸72に沿って、対物レンズ65が設けられている。この対物レンズは、後焦点面すなわち回折面66を有する。後焦点面すなわち回折面66には、図1,2及び3に示すように構成されている第1の移相型の素子73が設けられている。更に、光軸72に沿った、TEMの光路には、第1の回折レンズ67が設けられている。回折レンズには、TEMの光路には、更に、四極素子68が続いている。第1の回折レンズは、像面を有する。この像面は、一方では、回折中間像面であり、他方では、対物レンズ65の回折面66への共役面である。回折中間像面には、第2の回折レンズ69の主面が設けられている。この回折中間像面には、第2の位相型の素子74が設けられている。この素子は、同様に、図1,2及び3の実施の形態に示すように構成されている。第2の回折レンズ69の後方には、第2の四極素子が設けられており、四極素子には、投影レンズ71が続いている。この実施の形態でも、第1の回折レンズ67によって、対物レンズ65の後焦点面66の拡大された結像が、回折中間像面69に提供される。それ故に、ここでも、既に上述した利点が達成される。
【0089】
ここでは、図14ないし19に示した実施の形態が、移相型の素子の、図1,2および3に示した実施の形態の使用に限定されないことを、明確に指摘しておく。むしろ、移相のための不均一なまたは異方性の電位を発生させることができる如何なる移相型の素子も用いられる。
【0090】
図20は、本発明に係わる移相型の素子1と、2つの側方に設けられた接着フィルム104及び105との組合せを示す。この実施の形態は、従来の技術を、本発明に係わる移相型の素子1と組み合わせる。
【0091】
TEMすなわち透過電子顕微鏡を参照して、本発明を例として説明する。しかし、本発明が透過電子顕微鏡に限定されないことを、明確に指摘しておく。むしろ、本発明は、移相型の素子の使用が望ましい如何なる粒子ビーム装置、例えば透過電子顕微鏡にも、用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】位相板の形態の移相型の素子の平面図を示す。
【図2】図1に示す線A-Aに沿った、第1の移相型の素子の断面図を示す。
【図3】図1に示す線B-Bに沿った、第1の移相型の素子の断面図を示す。
【図4】図1に示す平面図を有する第2の移相型の素子の断面図を示す。線B-Bに沿って切断がなされる。
【図5a】移相のための不均一な電位の分布の略図を示す。
【図5b】移相のための不均一な電位の他の分布の略図を示す。
【図6】移相型の素子に接続されている制御ユニットの略図を示す。
【図7】セグメント化された電極の略図を示す。
【図8】電極の櫛状の配列の略図を示す。
【図9】他の移相型の素子の平面図を示す。
【図10】十字形の開口部を有する他の移相型の素子の平面図を示す。
【図11】2つの移相型の素子からなるシステムの略図を示す。
【図12a】十字形の開口部を有する移相型の素子の略図を示す。
【図12b】十字形の開口部を有する他の移相型の素子の略図を示す。
【図13】ドリフトユニットの構造の他の移相型の素子の略図を示す。
【図14】TEMの上部の略図を示す。
【図15a】移相型の素子を有するTEMの下部のX断面の略図を示す。
【図15b】移相型の素子を有するTEMの下部のY断面の略図を示す。
【図16a】移相型の素子を有する、図15aに対し変形されたTEMの、その下部の略図を示す。
【図16b】移相型の素子を有する、図15bに対し変形されたTEMの、その下部の略図を示す
【図17】複数の多極素子を有するTEMの下部におけるビーム路の略図を示す。
【図18】複数の多極素子を有する他のTEMの下部におけるビーム路の略図を示す。
【図19】2つの移相型の素子を有するTEMの下部の略図を示す。
【図20】炭素フィルムを有する移相型の素子の略図を示す。
【符号の説明】
【0093】
1 移相型の素子
2 スリット、電位発生手段、開口部
3 中央の電極
3a 第1の面
3b 第2の面
4 遮蔽層
5 遮蔽層
6 絶縁層(絶縁体
7 絶縁層
8 軸
9 電極
10 電極
11 絶縁層
12 電極
12aないし12h 電極
13 電極
14 電極
14aないし14h 電極
15 絶縁層
16 絶縁層
17 開口部、電位発生手段
18 スリット、電位発生手段、開口部
19 スリット、電位発生手段、開口部
20 ゼロ次数のビーム
21 四極子光学系、四極型レンズ
22 ドリフトユニット
23 電子銃
24 抽出電極
25 電極
26 電極
27 磁気レンズ(コンデンサ)
28 磁気レンズ(コンデンサ)
29 磁気レンズ(コンデンサ)
30 対物レンズ
31 物体面
32 光軸
33 回折面、焦点面
34 回折レンズ
35 中間像
36 四極素子、多極素子
37 四極素子、多極素子
38 二重偏向ユニット、二重偏向システム
39 二重偏向ユニット、二重偏向システム
40 中間面
41 第2の回折レンズ
42 アナモルフィックな回折像
43 四極素子、多極素子
44 二重偏向ユニット、二重偏向システム
45 二重偏向ユニット、二重偏向システム
46 四極素子、多極素子
47 四極素子、多極素子
48 対物レンズ
49 中間像
50 対物レンズ
51 回折面、焦点面
52 ビーム
53 ビーム
54 移相型の素子
55 軸方向ビーム
56 四極素子、多極素子
57 四極素子、多極素子
58 四極素子、多極素子
59 対称面、回折中間像面
60 八極子
61 四極素子、四極子、多極素子
62 四極素子、四極子、多極素子
63 四極素子、四極子、多極素子
64 軸外のビーム
65 対物レンズ
66 回折面、焦点面
67 回折面
68 四極素子
69 回折中間像面
70 四極素子
71 投影レンズ
72 光軸
73 移相型の素子
74 移相型の素子
101 ライン
102 ライン
103 制御ユニット
104 炭素フィルム
105 炭素フィルム
Z1 第1の中間像
ZS アナモルフィックな回折像を有する対称面
Q1ないしQ7 四極素子、多極素子
O1ないしO6 八極素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不均一な電位(U)を発生させるための少なくとも1つの手段(2,17,18,19)を有し、粒子ビームの少なくとも一部分の位相をシフトさせるための移相型の素子(1,54,73,74)。
【請求項2】
異方性の電位(U)を発生させるための少なくとも1つの手段(2,17,18,19)を有し、粒子ビームの少なくとも一部分の位相をシフトさせるための、請求項1に記載の移相型の素子(1,54,73,74)。
【請求項3】
前記不均一なおよび/または異方性の電位を発生させるための前記移相型の素子(1,54,73,74)には、開口部が、前記移相型の素子(1,54,73,74)の面に対し垂直な方向に非回転対称的に形成されている、請求項1または2に記載の移相型の素子(1,54,73,74)。
【請求項4】
不均一な電位を発生させための前記手段(2,17,18,19)が、電位(U)を発生させるために設けられている、請求項1ないし3のいずれか1に記載の移相型の素子(1,54,73,74)。
【請求項5】
不均一な電位を発生させための前記手段は、磁位を発生させるように形成されている、請求項1ないし4のいずれか1に記載の移相型の素子(1,54,73,74)。
【請求項6】
前記移相型の素子(1,54,73,74)は、複数の開口部(2,17,18,19)を有する、請求項3ないし5のいずれか1に記載の移相型の素子(1,54,73,74)。
【請求項7】
前記移相型の素子(1,54,73,74)は、1つの開口部(2,17,18,19)を有する、請求項3ないし5のいずれか1に記載の移相型の素子(1,54,73,74)。
【請求項8】
前記移相型の素子(1)は、第1の軸(y)に沿った第1の素子長さ(E1)と第2の軸(x)に沿った第2の素子長さ(E2)とを有し、
前記第1の軸(y)は、前記第2の軸(x)に対し非平行に設けられており、
前記開口部(2)は、前記第1の軸(y)と前記第2の軸(x)とに沿っても延びている、請求項6または7に記載の移相型の素子(1,54,73,74)。
【請求項9】
前記開口部(2)は、前記第1の軸(y)に沿った第1の開口部長さ(O1)と前記第2の軸(x)に沿った第2の開口部長さ(O2)とを有し、前記第1の開口部長さ(O1)は、前記第2の開口部長さ(O2)より長い、請求項8に記載の移相型の素子(1)。
【請求項10】
前記第1の軸(y)は、前記第2の軸(x)に対し垂直に設けられている、請求項8または9に記載の移相型の素子(1)。
【請求項11】
前記移相型の素子(1)は、第3の軸(z)を有し、この軸は、前記第1の軸(y)と前記第2の軸(x)とに対して非平行に延びており、前記第3の軸に沿って、第3の開口部長さ(E3)が延びている、請求項8ないし10のいずれか1に記載の移相型の素子(1)。
【請求項12】
前記開口部(2,18,19)は、スリット状に形成されている、請求項3ないし11のいずれか1に記載の移相型の素子(1)。
【請求項13】
前記開口部(2,18,19)は、矩形に形成されている、請求項3ないし12のいずれか1に記載の移相型の素子(1)。
【請求項14】
前記開口部(18,19)は、十字形に形成されている、請求項3ないし13のいずれか1に記載の移相型の素子(1)。
【請求項15】
前記移相型の素子(1)は、多層に形成されている、請求項1ないし14のいずれか1に記載の移相型の素子(1)。
【請求項16】
前記移相型の素子(1)は、少なくとも1つの電極(3,9,10,12,13,14)を有する、請求項1ないし15のいずれか1に記載の移相型の素子(1)。
【請求項17】
前記電極は、複数のセグメント(12aないし12h,14aないし14h)からからなっている、請求項16に記載の移相型の素子(1)。
【請求項18】
個々に制御可能でありかつ異なる電位が別個に印加可能である第1の電極(12)と第2の電極(14)とが、1つの面に設けられている、請求項16または17に記載の移相型の素子(1)。
【請求項19】
前記電極(3,9,10,12,13,14)、または前記第1の電極(12)および前記第2の電極(14)のうちの少なくとも1が、第1の面(3a)および第2の面(3b)を有し、前記第1の面(3a)には、第1の絶縁体(6)が設けられている、請求項16ないし19のいずれか1に記載の移相型の素子(1)。
【請求項20】
前記第2の面(3b)には、第2の絶縁体(7)が設けられている、請求項19に記載の移相型の素子(1)。
【請求項21】
前記第1の絶縁体(6)には、第1の遮蔽ユニット(4)が設けられている、請求項19または20に記載の移相型の素子(1)。
【請求項22】
前記第2の絶縁体(7)には、第2の遮蔽ユニット(5)が設けられている、請求項20または21に記載の移相型の素子(1)。
【請求項23】
前記移相型の素子(1)は、ドリフトユニット(22)を有する、請求項1ないし22のいずれか1に記載の移相型の素子(1)。
【請求項24】
前記移相型の素子(1)は、内部電位を有する少なくとも1つの区域(104,105)を具備する、請求項1ないし23のいずれか1に記載の移相型の素子(1)。
【請求項25】
少なくとも1つの第1の移相型の素子(1,73,74)と、少なくとも1つの第2の移相型の素子(1,73,74)とを有し、請求項1ないし24のいずれか1に記載の前記第1の移相型の素子(1,73,74)と前記第2の移相型の素子(1,73,74)とが設けられているシステム。
【請求項26】
前記システムは、光軸(72)を有し、
前記第1の移相型の素子(1,73,74)と前記第2の移相型の素子(1,73,74)とは、前記光軸(72)に沿って設けられており、
前記第2の移相型の素子(1,74)は、前記第1の移相型の素子(1,73)の後方に設けられている、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
後焦点面(33,51,66)を有する少なくとも1つの対物レンズ(30,50,65)と、
前記対物レンズ(30,50,65)の前記後焦点面(33,51,66)を回折中間像面(40,59,69,ZS)へ拡大して結像するための少なくとも1つの第1の回折レンズ(34,67)と、
前記回折中間像面(40,69)に設けられている少なくとも1つの第2の回折レンズ(41,69)と、
少なくとも1つの多極素子(36,37,43,46,47,56ないし58,61ないし63,Q1ないしQ7)と、
請求項1ないし24のいずれか1に記載の少なくとも1つの移相型の素子(1)と、を具備する粒子ビーム装置。
【請求項28】
前記粒子ビーム装置は、光軸(32,z)を有し、前記対物レンズ(30,50,65)から前記第2の回折レンズ(41,69)の方向に、前記少なくとも1つの多極素子(36,37,43,46,47,56ないし58,61ないし63,Q1ないしQ7)が設けられている、請求項27に記載の粒子ビーム装置。
【請求項29】
前記粒子ビーム装置は、第1の多極素子(36)と、第2の多極素子(37)とを有し、
前記対物レンズ(30)から前記第2の回折レンズ(41)の方向に、前記第1の回折レンズ(34)と、前記第1の多極素子(36)と、前記第2の多極素子(37)と、前記回折中間像面(40)とが設けられている、請求項28に記載の粒子ビーム装置。
【請求項30】
前記粒子ビーム装置は、第3の多極素子(46)と、第4の多極素子(47)と、投影レンズ(48)とを有し、前記第2の回折レンズ(41)から前記投影レンズ(48)の方向に、前記第3の多極素子(46)と、前記第4の多極素子(47)と、前記投影レンズ(48)とが設けられている、請求項29に記載の粒子ビーム装置。
【請求項31】
第5の多極素子(43)が、前記回折中間像面(40)の区域に設けられている、請求項30に記載の粒子ビーム装置。
【請求項32】
前記第5の多極素子(43)は、第1の副多極素子(43a)および第2の副多極素子(43b)を有する、請求項31に記載の粒子ビーム装置。
【請求項33】
前記多極素子は、少なくとも1つの磁気的なまたは電気的な極を有する、請求項27ないし32に記載のいずれか1に記載の粒子ビーム装置。
【請求項34】
前記多極素子(36,37,43,46,47,56ないし58,61ないし63,Q1ないしQ7)またはこれらの多極素子(36,37,43,46,47,56ないし58,61ないし63,Q1ないしQ7)のうちの少なくとも1が、四重極場を発生させる、請求項27ないし33のいずれか1に記載の粒子ビーム装置。
【請求項35】
前記多極素子は、四極素子(36,37,43,46,47,56ないし58,61ないし63,Q1ないしQ7)として形成されている、請求項34に記載の粒子ビーム装置。
【請求項36】
前記多極素子(36,37,46,47)に関連して、双極場を有する二重偏向システム(38,39,44,45)が設けられている、請求項27ないし35のいずれか1に記載の粒子ビーム装置。
【請求項37】
前記粒子ビーム装置は、少なくとも6つの四極素子(56,57,58,61,62,63)を有し、これらの四極素子は、回折中間像面(59)に対し逆対称的に励起可能であり、前記6つの四極素子(56,57,58,61,62,63)の各々および前記回折中間像面(59)に、夫々八極子(60)が重ね合わされている、請求項27ないし36のいずれか1に記載の粒子ビーム装置。
【請求項38】
6つの四極素子(Q1ないしQ7)を含みかつ七つ組として形成された少なくとも1つの四極子と、七つ組としての四極子内で励起可能な少なくとも5つの八極子(O1ないしO7)とを具備し、前記四極素子(Q1ないしQ7)は、前記回折中間像面(ZS)に対し対称的に励起可能である、請求項27ないし36のいずれか1に記載の粒子ビーム装置。
【請求項39】
前記八極子(60,O1ないしO7)のうちの少なくとも1が、電気的にまたは磁気的に形成されている、請求項37または38に記載の粒子ビーム装置。
【請求項40】
前記粒子ビーム装置は、収差を補正するための補正器を有する、請求項27ないし39のいずれか1に記載の粒子ビーム装置。
【請求項41】
前記粒子ビーム装置は、電子ビーム装置として、特に透過電子顕微鏡として形成されている、請求項27ないし40のいずれか1に記載の粒子ビーム装置。
【請求項42】
後焦点面(33)を有する少なくとも1つの対物レンズ(30)と、
この対物レンズ(30)の前記後焦点面(33)を回折中間像面(40)へ拡大して結像するための少なくとも1つの第1の回折レンズ(34)と、
前記回折中間像面(40)に設けられている少なくとも1つの第2の回折レンズ(41)と、
少なくとも1つ移相型の素子(1)と、
四極素子として形成されている少なくとも1つの多極素子(36,37,43,46,47)とを具備する粒子ビーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−198612(P2008−198612A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33633(P2008−33633)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【出願人】(594056568)マツクス−プランク−ゲゼルシャフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシャフテン エー フアウ (13)