説明

種々の物質を識別するためのミリメートル波探知デバイス

入り口(1)は、身体に隠された品物を探知すべく構成したミリメートル波画像化装置(10,11)を有する。ポンプ(21)は、入り口(1)の下側の排気口(20)から、検査を受ける人の足の上に向けられる空気の噴流を供給する。第2ポンプ(25)は、噴流によって釈放された物質を伴う空気を吸込み口(22)から吸込んで、爆発物、又は麻薬の存在を探知すべく配置したイオン移動度スペクトロメーターに供給する。表示スクリーン(12)は検査を受ける人が所有する怪しい品物や物品の存在を指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体に隠された品物及び物質を探知する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空港におけるような人々に隠された品物及び物質を検出するのに様々な技法が用いられている。馴染みの1つの技法は、乗客が携行する銃や、ナイフのような、隠された金属物件を検出するために全ての主要空港にて現在用いられている通り抜け式の金属探知機を用いるものである。こうした技法は有効で、しかも殆ど遅滞を生じることはないが、セラミックのナイフや、爆発物、又は麻薬のような非金属物体を検出することができないと云う欠点がある。現在使用されているが、非常に小形の別形態の装置として、微量化学物質検出器がある。この一形態のものは、乗客の身体に向けられる多数の空気噴流を有すると共に、空気噴流によって取り除かれた微量の化学物質を収集するために位置付けた吸込み口を有している通り抜け式の入り口に組み込まれる。収集した空気及び微量化学物質は化学物質探知器に供給される。この探知器は様々な形態のものとすることができるが、典型的には、選択される化学物質の存在に応答すべく構成配置したイオン移動度スペクトロメーター(IMS)を含む。微量化学物質探知器はスミスス・ディテクション(Smiths Detection)社から市販されている。微量化学物質探知器は有効に作動し得るが、これは高価で、しかも応答時間が金属探知機よりも遅く、さらに、ナイフ等を検出することができない。
【0003】
他の形態の探知装置、即ちミリメートル波画像化によるものも提案されているが、これはまだ大々的には用いられていない。これは衣類に殆ど妨げられることなく通過する約10GHz〜400GHzの範囲内の放射、通常は93GHz付近の放射を用い、これにより、衣類の下に隠された物質を検出することができる。偏光コヒーレント放射を用いるUS 4901084に記載されているような、又は屋外における通常の背景放射を複製したインコヒーレント放射源を用いるUS 6353224に記載されているような、ミリメートル波を用いる技術は種々ある。ミリメートル波画像化の利点は、衣類の下に携行されるセラミックのナイフ及び爆発物のような非金属物質を探知することができるということにある。ミリメートル波画像化の問題は、放射が殆どの靴やブーツを貫通しないと云うことにある。また、薄いシート状の爆発物を探知するのも困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、身体に隠された物質を探知する代替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した種類の探知装置において、当該装置が、ミリメートル波探知デバイスと微量化学物質探知デバイスとの組み合わせを含むことを特徴とする。
【0006】
ミリメートル波探知デバイスは、身体のほぼ全体に応答するのが好適であり、これは身体の像を提供すべく構成することができる。微量化学物質探知デバイスは、人体の限られた部分のみからの微量な化学物質を検出すべく構成するのが好適である。好ましくは、微量化学物質探知デバイスは、人の足の箇所あたりにおける微量な化学物質を検出すべく構成し、人の足の上に空気噴流を向けるように配置した出口を具えるようにすることができる。微量化学物質探知デバイスにはイオン移動度スペクトロメーターを設け、爆発物及び麻薬の少なくとも1つの存在を検出すべく構成することができる。探知装置は、複数のミリメートル波探知デバイスと、これら複数のミリメートル波探知デバイスに共通の1つの微量化学物質探知デバイスを含むことができる。このような探知装置は1つ以上の入り口に組み込むのが好適である。
【0007】
以下、本発明による人々を検査する装置を、添付図面を参照して実施例につき説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明による装置は、隠された物質を探知するのに2つの異なる技法の組み合わせを用いるもので、これらの技法は、その一方が他方の技法よりも所定の状況で物質を良好に検出し得ることからして、互いに補間し合うものである。特に、一方の技法はミリメートル波探知を用い、他方の技法は微量化学物質探知を用いるものである。
【0009】
図面は、2つの垂直なポスト2及び3と、これらのポスト間に床レベルで延在する敷居4と、ポストの上側端間に延在する横木5とを有している入り口1を示す。入り口1の寸法は、人々がポストの間を歩いて自由に通り抜けることができるような大きさとする。入り口1は、US 6353224に記載されている種類のような、参照符号10にて総称する1つ以上のミリメートル波放射源を収容している。これらの放射源10はインコヒーレントなミリ放射を放出し、放射源には放射を必要な方向に向ける反射器を配置することができる。放射源は入り口1を歩いて通る人の体のほぼ全体を放射で照射すべく配置する。入り口1の向かい側で、検査を受ける人を見る位置には、ミリメートル波探知デバイス、即ちイメージャ(画像化デバイス)11を取り付ける。このイメージャ11は入り口の前又は片側に直接取り付けることができる。検査を受ける人の背後を見るために第2のイメージャ(図示せず)を配置することもできる。イメージャ11はUS 6353224に記載されているものと同種のものとすることができ、これによりプロセッサ13を介してディスプレイ12に出力を供給する。プロセッサ13は、身体をシミュレートした像を生成し、その上に衣類の下に隠された品物を表すものを重畳すべく構成するのが好適である。プロセッサは、武器に特有な既知の特徴を有している品物を自動的に識別すべく構成することができ、この観点では、ミリメートル波探知デバイスは必ずしも像を提供する必要はない。
【0010】
入り口は、ポスト2及び3の下側端の方へ約50cmの距離にわたって位置付けられる多数の空気噴流排気口20を具えている。これらの排気口20は、検査を受ける人の足及び脚部の上に水平又は下向きの角度で空気噴流を向けるべく適合させる。敷居4の上側面にも空気噴流を上方へ向けるべく分配させた多数の空気噴流排気口20がある。これらの排気口は空気ポンプ21に繋がっており、このポンプには検出の妨げとなる微粒子、又は環境化学物質を除去するフィルタを設けることができる。排気口20からの空気噴流は検査を受ける人の足及び脚部の下側部分における化学物質の微粒子を吹き飛ばす。空気吹出し口20以外に、入り口1はその同じ下側部分に幾つかの空気吸込み口22も有している。吸込み口22は管23を介して微量化学物質探知器24及び第2ポンプ25に繋がっている。探知器24は慣例のタイプのものとすることができ、これには種々の爆発物及び麻薬中に存在する化学物質を探知すべく構成したイオン移動度スペクトロメーターを設けるのが好適である。探知器24はプロセッサ13に出力も供給する。怪しい化学物質が探知されると、プロセッサ13はディスプレイ12にアラーム信号を発生する。一般的に、アラームは検査を受ける人の体の下側部分におけるどこかに怪しい化学物質があることを単に指示する。検出器24には、入り口のいろいろな部分における空気吸込み口22に繋がる多数の異なるチャネルを設けて、人体のどの部分に化学物質が隠されているのかの指示を与えるようにすることもできる。それぞれのチャネルを単一の探知器によって順次サンプリングするか、又は各チャネルに各々固有の専用探知器を持たせることができる。
【0011】
上述した装置は、従来のミリメートル波画像化によるものが持っていた、履物の内部に隠された物を検出することの困難性を、脚部箇所の微量化学物質を探知することによって軽減する。微量化学物質探知システムは、人体の小部分のみに限定されるため、低量の空気を扱うだけで済み、システムを簡単にし、コストを低減し、且つその応答時間を増やすことができる。少ない空気量で済むために、幾つかの入り口に対して共通のIMS探知系を共有できることになる。この共通のIMS探知系は種々の入り口を順次サンプリングすることができる。それぞれの入り口を一緒にサンプリングし、どこかの入り口で怪しい化学物質が探知された場合に警報を発するようにすることもできる。この場合には、手持ちの化学的痕跡検出器を用いて、各入り口にて人々をチェックする。
【0012】
微量化学物質の探知を脚部箇所に限定するのが有利であるが、ミリメートル波画像化を身体全体からの微量化学物質の探知と組み合わせて、特にシート状にした場合に検出するのが困難な爆発物や麻薬のような、所定の化学成分を有する物を探知すべく探知装置の能力を向上させることが可能になる。ミリメートル波画像化と微量の化学物質探知技法の組み合わせは、広範囲の潜在的脅威の探知に特に有効である。単一入り口にこれら2つの技法を一緒に組み合わせることにより、人々を異なる技法によって別々に検査しなければならない装置に比べて、検査に要する時間を短縮することもできる。本発明の装置はオペレータの仕事量を減らし、オペレータの人数を減らすこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による探知装置の一例を示す概略ブロック図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に隠された品物及び物質を探知する装置において、当該装置が、ミリメートル波探知デバイス(10,11)と、微量化学物質探知デバイス(24)との組み合わせを含むことを特徴とする探知装置。
【請求項2】
前記ミリメートル波探知デバイス(10,11)は身体のほぼ全体に応答することを特徴とする請求項1に記載の探知装置。
【請求項3】
前記ミリメートル波探知デバイス(10,11)は、身体の像を提供すべく構成配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の探知装置。
【請求項4】
前記微量化学物質探知デバイス(24)は身体の限られた部分のみからの微量化学物質を検出すべく構成配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の探知装置。
【請求項5】
前記微量化学物質探知デバイス(24)は身体の足の箇所における微量化学物質を検出すべく構成配置されることを特徴とする請求項4に記載の探知装置。
【請求項6】
前記微量化学物質探知デバイス(24)は、身体の足の上に空気の噴流を向けるべく構成配置した吹出し口(20)を含むことを特徴とする請求項5に記載の探知装置。
【請求項7】
前記微量化学物質探知デバイスはイオン移動度スペクトロメーター(24)を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の探知装置。
【請求項8】
前記微量化学物質探知デバイスは、爆発物及び麻薬の少なくとも1つの存在を検出すべく構成配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の探知装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の探知装置において、当該探知装置が、複数個のミリメートル波探知デバイスと、これら複数のミリメートル波探知デバイスに共通の微量化学物質探知デバイスを含むことを特徴とする探知装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の探知装置において、当該装置が1つ以上の入り口(1)に組み込まれることを特徴とする探知装置。

【公表番号】特表2007−506083(P2007−506083A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526678(P2006−526678)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003902
【国際公開番号】WO2005/029053
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501038551)スミスズ グループ ピーエルシー (26)
【氏名又は名称原語表記】SMITHS GROUP PLC
【Fターム(参考)】