説明

種子の温湯消毒装置及び該温湯消毒装置を用いた種子の消毒設備

【課題】人手間(労力)を必要とせず自動化した温湯消毒装置を提供する。
【解決手段】
本発明の温湯消毒装置1によれば、複数の消毒容器10に種籾(種子)をばらの状態で供給し、該消毒容器10を無端搬送チェーン6や搬送駆動部7などからなる搬送手段によって、温浴槽4及び冷浴槽5に順次浸漬し、この後、消毒容器10から種籾を排出するので、消毒容器10を作業者が温浴槽4等に入れたり出したりすることなく、連続的、かつ、自動で、ばらの種籾を温湯消毒することができる。また、各消毒容器10への種籾の供給やその排出も自動的に行われるので、この点においても作業者の労力が不要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種籾(もみ)を温湯に浸漬して消毒を行う温湯消毒装置及び該温湯消毒装置を用いた種子の消毒設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水稲苗用の種子(種籾)を播種・育苗するに先立って、前記種籾に前処理を施す施設(種子センターなど)がある。この施設は、前記種籾の荷受・計量の工程に続いて、精選、種子消毒、乾燥、貯蔵及び計量・出荷等の工程を順次構成している。この消毒設備において、前記種子消毒の工程では、水稲苗がいもち病等にかかるのを予防するために、前記種籾に消毒が施される。
【0003】
前記種子消毒の工程で使用される既存の温湯消毒装置としては、例えば、特許文献1のようなものがある。特許文献1の温湯消毒装置は、種籾を詰めたネット袋をコンテナ籠(かご)に入れ、該コンテナ籠を昇降移動クレーンを使って、温浴槽及び冷浴槽に順次浸漬させて移動し、温湯消毒するものである。また、特許文献2の温湯消毒装置は、種子を網状部材で構成した円筒籠容器にばら状態でセットし、当該円筒籠容器を温水槽に漬け、該温水槽の底部に配設した搬送コンベヤーによって浸漬させた状態で排出側まで搬送するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2006−42745号公報
【特許文献2】特許第2876001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の温湯消毒装置においては、以下の問題点があった。すなわち、特許文献1の温湯消毒装置においては、種籾をネット袋に詰める工程及び、昇降移動クレーンを使って前記コンテナ籠を温浴槽及び冷浴槽に順次移送する工程とに、それぞれオペレータを常駐させておく必要があり、このため複数の作業者を要するという問題があった。一方、特許文献2の温湯消毒装置については、前記円筒籠容器の温水槽への投入・排出は、具体的には記載されてないが、作業者の人手等によって行われるものと思われ、このため作業者の手間を要するという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題点にかんがみ、人手間(労力)を必要とせず自動化した温湯消毒装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1により、
温湯を張った温浴槽と冷水を張った冷浴槽とに、搬送手段によって、順次、種子を入れた消毒容器を搬送して浸漬消毒を行う種子の温湯消毒装置において、
前記消毒容器は、種子をばら状態で供給・排出する開閉部を備えて密閉状で、かつ籠状に構成し、
前記搬送手段は、複数の前記消毒容器を連結した無端搬送チェーンと、該無端搬送チェーンに連結した各消毒容器を、該各消毒容器に種子を供給する種子供給部、前記温浴槽と冷浴槽とからなる浸漬部及び浸漬後の各消毒容器内の種子を排出する種子排出部の順からなる経路で搬送する搬送駆動部とを有してなり、
前記搬送経路における前記種子供給部の下流側及び種子排出部の上流側には各消毒容器の開閉部の開閉手段をそれぞれ配設する、という技術的手段を講じた。
【0007】
また、請求項2により、
前記種子供給部は、搬送経路において、搬送される前記消毒容器の各開閉部が上面になる位置に配設する一方、前記種子排出部は、前記消毒容器の各開閉部が下面になる位置に配設する、という技術的手段を講じた。
【0008】
さらに、請求項3により、
前記搬送経路には前記浸漬部における各消毒容器の入出を検知する検知手段を設けるとともに、前記各消毒容器内には温度センサを配設し、さらに、前記検知手段及び温度センサの検出データを取得して各消毒容器における浸漬履歴データを集計する浸漬履歴集計部を備える、という技術的手段を講じた。
【0009】
また、請求項4により、
前記温度センサは無線式温度センサとし、前記浸漬履歴集計部は無線式温度センサの検出値を受信する受信装置を接続した、という技術的手段を講じた。
【0010】
さらに、請求項5により、
前記浸漬履歴集計部は、集計した各消毒容器における浸漬履歴データをディスプレイ表示及び/又はプリントアウトする、という技術的手段を講じた。
【0011】
また、請求項6により、
前記浸漬履歴集計部が取得した浸漬履歴データにおける浸漬温度と浸漬時間とを基にして、各消毒容器における浸漬温度及び/又は浸漬時間がしきい値以内か否かを判定する浸漬状態判定部を設け、前記浸漬履歴集計部は、前記浸漬状態判定部によってなされた判定結果も前記浸漬履歴データに含める、という技術的手段を講じた。
【0012】
さらに、請求項7により、
前記浸漬状態判定部の判定結果に基づいて、前記搬送駆動部が前記消毒容器を搬送する速度を変更する搬送速度変更手段を設けてなる、という技術的手段を講じた。
【0013】
また、請求項8により、
前記種子排出部には、排出路を切換える切換装置を備え、各消毒容器内の種子を排出する際、前記浸漬状態判定部がなした前記しきい値以内か否かの判定結果に基づいて前記切換装置を切換える、という技術的手段を講じた。
【0014】
さらに、請求項9により、
種子の消毒設備は、前記請求項1乃至請求項8に記載の種子の温湯消毒装置の後工程に、水切り装置と乾燥装置とを順次配設してなる、という技術的手段を講じた。
【発明の効果】
【0015】
本発明の温湯消毒装置によれば、複数の消毒容器に種籾(種子)をばらの状態で供給し、該消毒容器を無端搬送チェーンや搬送駆動部などからなる搬送手段によって、温浴槽及び冷浴槽に順次浸漬し、この後、消毒容器から種籾を排出するので、消毒容器を作業者が温浴槽等に入れたり出したりする必要がない。よって、連続的に、かつ、自動で、ばらの種籾を温湯消毒することができる。また、各消毒容器への種籾の供給やその排出も自動的に行われるので、この点においても作業者の労力が不要である。さらに、各消毒容器には温度センサ(無線式温度センサ)を設けて、各消毒容器内の温度(種籾温度)を検出し、各消毒容器内の種籾が、浸漬温度面から十分に消毒できたか否かを判定することができ、また、消毒不十分の消毒容器を検出して監視できるようにしてあるため、種籾排出部において切換弁を切換えて、消毒不十分の種籾(不良品)が消毒十分の種籾に混合しないようにすることができる。
【0016】
また、本発明の種子の消毒設備においては、温湯消毒等が十分に行われた種籾だけが温湯消毒装置から排出されて水切り装置に搬送されて水切りがなされる。そして、水切り装置から排出された種籾は、乾燥装置に搬送されて乾燥される。よって、種籾を温湯消毒から保存可能な水分にするまでを自動的に行うことができ、また、作業者の人員数が低減され、作業労力も低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明における種子の温湯消毒装置の実施例を説明する。図1は、前記温湯消毒装置1の側断面図である。該温湯消毒装置1は、種子を浸漬して消毒する浸漬部2と、ばらの種子(以下「種籾(もみ)」という)を入れる複数の消毒容器(後述する)10と、該消毒容器10を搬送する搬送手段3とを備える。
【0018】
前記浸漬部2は、温湯を張った温浴槽4と冷水を張った冷浴槽5とを併設してなる。前記温浴槽4と冷浴槽5の各底部には排水用の開閉弁4a,5aを備える。
【0019】
前記搬送手段3は、無端状の搬送チェーン(無端搬送チェーン)6と、該無端搬送チェーン6を移送させる搬送駆動部7とからなる。前記搬送駆動部7は、前記無端搬送チェーン6を移送させる複数のスプロケット8を備える。該スプロケット8は、図1に示すように、前記浸漬部2(温浴槽4及び冷浴槽5)の上部に一対を対設するとともに、前記温浴槽4の開口上端部に一つ、前記冷浴槽5の開口上端部に一つ、さらに、前記温浴槽4及び冷浴槽5の各内部に一対、をそれぞれの位置に配設する。また、前記温浴槽4と冷浴槽5とが接する壁面の上方にも、前記無端搬送チェーン6用の搬送ガイド4bが設けてある。これらの全てのスプロケット8及び搬送ガイド4bには、前記無端搬送チェーン6が掛け渡してある。前記スプロケット8の内、複数のスプロケット8には駆動ベルト9aを介してモータ9が接続し、該モータ9の駆動によって当該スプロケット8を回転駆動させて、前記無端搬送チェーン6を所定の方向(図1に示す矢印Y方向)に移送するようにしてある。
【0020】
前記消毒容器10は、前記無端搬送チェーン6に、等間隔ごとに連結してある(図1)。図2は、消毒容器10の一例である。該消毒容器10は、前記種籾が通過しない大きさにした孔11を複数設けた有孔板12を互いに接合して、断面が6角形で横長状をなし、かつ、閉塞(そく)状に形成する。前記消毒容器10は、長手方向の一面を、種籾を供給・排出するための開閉部13とする。該開閉部13は、本実施例では、開閉扉14とした。該開閉扉14は、長手方向の一側縁部と容器本体側の開口縁部との間に丁番15を設けて、開閉可能にしてある。前記開閉扉14の短面側縁部14aと容器本体10aの側面10bとは、それぞれに取付部14b,10cを設け、両者間をスプリング16によって互いに引っ張り会う状態で連結させてある。また、前記開閉扉14の表面における回動縁部の近傍位置には、前記容器本体10aと当接して、当該開閉扉14の開き具合を制限する、断面く形状のストッパー板17を設ける。これによって、前記開閉扉14の閉状態と開状態とが保持されるようにしてある。
【0021】
また、前記開閉扉14において、他方側となる短面側縁部14bには、当接プレート18を設け、該当接プレート18に後述するプッシュロッド(開閉手段)が当接して押され、当該開閉扉14が開き状態になるようにしてある。前記容器本体10aの両側面10bには、連結棒19の一端側を溶接し、他端側は、前記無端搬送チェーン6の側面6aに溶接し、このようにして、各消毒容器10は、後述する種子供給部22に位置する際に、前記開閉扉14が上方に位置するようにして前記無端搬送チェーン6に連結固定してある。前記開閉扉14の内面側には、無線式温度センサ20を装着する。該無線式温度センサ20は、一般的に市販されている、ワイヤレスでかつ防水タイプの温度センサであって、複数の受信チャンネルを有して、1台の受信装置(温度受信装置36)で複数の温度センサからの検出信号を個別に受信することができるものを使用する。なお、前記消毒容器10のそれぞれには、各消毒容器10を識別(何番の容器かを識別)する識別表示部を設ける。該識別表示部は、本実施例ではバーコードラベル21とし、該バーコードラベル21を容器本体10aに装着し、これを、後述する光学的な検知手段(バーコード検知機33,34,35)によって識別できるようにしてある。
【0022】
前記種子供給部22は、前述のように、前記浸漬部2(温浴槽4及び冷浴槽5)の上部に対設した一対のスプロケット8a,8b間の上方に配設する。前記種子供給部22は、排出口にロータリーバルブ23を設けた種子供給タンク24からなり、前記ロータリーバルブ23を断続的に作動させて、種籾を各消毒容器10に供給するようにしてある。前記種子供給タンク24を設けた位置よりも搬送方向の下流側には、消毒容器10の開いた状態の開閉扉14を閉めるためのプッシュロッド(開閉手段)25を配設する。該プッシュロッド25は、後述する演算指示部36からの出力信号により、エアー圧をオンオフさせて、ロッドを出没させるようにしてある。
【0023】
前記種子排出部26は、前述のように、前記冷浴槽5の開口上端部に設けたスプロケット8cと前記スプロケット8bとの間に配設する。前記種子排出部26は、プッシュロッド(開閉手段)27、排出散水部28及び切換弁29を備える。前記種子排出部26には、前記開閉扉14が下面になって各消毒容器10が搬送されるようになっている。前記プッシュロッド27は、後述する演算指示部からの信号により、エアー圧をオンオフさせて、ロッドを出没させて、搬送されてきた消毒容器10の前記当接プレート18に当接して開閉扉14を開放状態にするものである(図3参照)。排出散水部28は、前記開閉扉14が開放状態になった消毒容器10に、上方から水を散水して消毒容器10内に残留した種籾を洗い流すためのものである。前記切換弁29は、消毒容器10から排出された種籾を機外排出する排出路30に設け、良品排出路31と不良排出路32の2方向に排出方向を切換えるものである。前記切換弁29の弁は、後述する演算指示部36からの出力信号によって切換えるようにしてある(図1及び図3参照)。
【0024】
また、前記温浴槽4における開口縁部の近傍位置、前記搬送ガイド4bの近傍位置及び前記冷浴槽5における開口縁部の近傍位置には、それぞれ、バーコード検知機(検知手段)33,34,35が配設してある。該バーコード検知機(検知手段)33,34,35は、前記容器本体10aに装着したバーコードラベル21を光学的に検知して各容器本体10aを識別するためのものであり、それぞれは、各位置において、各バーコードラベル21を光学検出できるように配設する。
【0025】
次に、前記演算指示部36を説明する(図4参照)。該演算指示部33は、中央演算装置(以下「CPU」という)37を中心とし、該CPU37に、入出力回路(以下「I/O」という)38,39、読み出し専用記憶部(以下「ROM」という)40及び読み出し・書き込み用記憶部(以下「RAM」という)41が接続してある。また、前記I/O38には、運転開始ボタン42及び運転停止ボタン43を設けて接続してある。以上の要素で前記演算指示部36は構成する。そして、該演算指示部36におけるI/O38には、前記バーコード検知機33,34,35と温度受信機20aが接続してある。該温度受信機20aは、前記無線式温度センサ20が発信した検出温度の出力信号を受信するものである。一方、I/O39には、プリンター44、ディスプレー45、前記ロータリーバルブ23(種子供給タンク24)、前記プッシュロッド25,27及び前記排出散水部28がぞれぞれ接続してあり、このそれぞれは、前記CPU37からの出力信号によって駆動するようにしてある。
【0026】
次に、本発明の前記温湯消毒装置1を用いた種子の消毒設備46を説明する。該消毒設備46は、前記温湯消毒装置1の後工程に、水切り装置47と乾燥装置48とを順次配設してなる。
【0027】
前記水切り装置47は、無端状のネットコンベヤー48を横設し、該ネットコンベア48で種籾を搬送しながら水切りするものである(図5,6参照)。前記ネットコンベヤー48の搬送始端側には、前記温湯消毒装置1の前記良品排出路31と連通させた供給ホッパー49を備える。前記ネットコンベヤー48上において、前記供給ホッパー49を設けた位置よりも下流の搬送方向側には、ネットコンベヤー48上に供給された種籾を均(なら)す均板50を配設する。さらに、下流の搬送方向側には、温風送風装置51を設けて、温風がネットコンベヤー48上の種籾に当たるようにしてある。なお、前記ネットコンベヤー48の下方には、排水底部52を設け、該排水底部52には排出口53が設けてある。
【0028】
前記乾燥装置48は、一般的に公知の循環式穀物乾燥機48である。循環式穀物乾燥機48は、貯留タンク、熱風通風乾燥部及び穀粒排出部を上から順に重設した乾燥機本体部54を立設する(図5,7参照)。該乾燥機本体部54には、前記穀粒排出部から排出された穀粒を前記貯留タンクに還流させるための還流部55を構成する。該還流部55は昇降機56と上部搬送スクリュー57とで構成する。また、前記乾燥機本体部54の下部側面には、開閉式の張込ホッパー58を設ける。該張込ホッパー58は、前記水切り装置47との間に設けた昇降機59の排出側と連通させてある。前述のように、当該循環式穀物乾燥機48は一般的に公知のため、詳細説明は省略する。なお、昇降機59の排出側には切換弁60を設けて、一方側は前記張込ホッパー58に、他方側は、種籾を乾燥させないで計量して出荷する計量出荷装置61に切換えるようにしてある。
【0029】
次に、本発明の前記温湯消毒装置1の作用を説明する。図8は、該温湯消毒装置1の運転フローである。
ステップ1,2:
まず、前記温湯消毒装置1の電源をONにした後に、前記演算指示部36の運転開始ボタン42を押す(ステップ1)。すると、前記演算指示部36は、前記ROM40に内蔵した運転プログラムを実行する(ステップ2)。まず、前記モータ9、ロータリーバルブ23、プッシュロッド25,27及び排出散水部28のそれぞれが駆動を開始する。
【0030】
前記演算指示部36からの出力信号により、前記モータ9は任意の速度で駆動を開始し、前記無端搬送チェーン6と各容器本体10aは、図1における矢印Yの方向に移送が開始される。これにより、各容器本体10aは、種子供給部22、浸漬部2及び種子搬出部26の順に搬送される。各容器本体10aは、前記種子供給部22の位置では開閉扉14が上面になり、次いで、搬送される途中で、温浴槽4の上部のスプロケット8dを通過する際に上下が反転されて温浴槽4の温湯内に浸漬され、この姿勢のまま温湯内で搬送される。
【0031】
次いで、容器本体10aは、温浴槽4の側壁に沿って上方に搬送され温湯から出る。温湯から出た容器本体10aは、前記搬送ガイド4bに沿って搬送され、前記側壁を乗り越え、該側壁に沿って前記冷浴槽5内に降下搬送される。前記冷浴槽5内に降下搬送された容器本体10aは冷水内で搬送され、冷浴槽5の他の側壁に沿って上方に搬送され冷水から出る。冷水から出た容器本体10aは、前記スプロケット8を通り、容器本体10aの開閉扉14側を下方に向けた姿勢のまま横送りされて前記種子排出部26を通過する。該種子排出部26を通過した後は、前記スプロケット8bを通り、容器本体10aの開閉扉14側を上方に向け、この姿勢でかつ前記開閉扉14を開放状態にして前記種子供給部22に搬送されて戻る。以上のようにして容器本体10aは搬送中に上下を反転するので、種籾は容器本体10a内で攪拌され、均等な消毒作用が施される。
【0032】
また、CPU37は容器本体10aの搬送速度に合わせて信号を出力し、前記プッシュロッド25,27を出没させる。これにより、前記プッシュロッド25は、開放状態の容器本体10aの開閉扉14を押して閉め、また、前記プッシュロッド25は、閉状態の容器本体10aの開閉扉14を、該開閉扉14の当接プレート18を押して開ける。前記排出散水部28は、本装置の運転中は連続して散水させておく。なお、CPU37は、前記ロータリーバルブ23に対して容器本体10aの搬送速度に合わせて信号を出力し、断続的に回転・停止を行わせて、前記供給タンク24内の種籾を容器本体10a内に供給させる。
【0033】
ステップ3:
前記バーコード検知機33,34,35は、それぞれの位置で通過する各容器本体10aに装着したバーコードラベル21を光学検出し、検出した信号を前記CPU37に送り、これにより、前記CPU37は、どの番号の容器本体10aが温浴槽4に何時入って出たか、また、冷浴槽5に何時入って出たかを検出し、この浸漬履歴データをRAM41に記憶する(ステップ3)。
【0034】
ステップ4:
前記CPU37は、前記温度受信機20aを介して、温湯槽4内及び冷浴槽5内に浸漬して搬送中の消毒容器10内の温度を、前記各消毒容器10に装着した無線式温度センサ20からの検出電波信号によって検知する。前記各消毒容器10に装着した各無線式温度センサ20のチャンネルは、消毒容器10の識別番号と符号するように予め設定し、各消毒容器10内の温度が他の消毒容器10と区別して認識できるようにしてある。これにより、前記CPU37は、前述のように、温湯槽4及び冷浴槽5に浸漬移送中の消毒容器10を検出しているので、このデータと合わせて各消毒容器10内の温度を検出することができる。この消毒容器10内の検出温度は、前記浸漬履歴データに含めてRAM41に記憶する。本発明では、前記検出温度を種子温度として扱う。なお、前記検出温度は、数分間隔、例えば、1分間隔で取得する。
【0035】
ステップ5,6:
前記温浴槽4は、本実施例においては、温湯を60℃強に調整した。このとき、前記CPU37は、温浴槽4の検出温度と、所定のしきい値、例えば、60℃と比較し、検出温度が60℃を超えているか否かを判定し、検出温度が60℃を以上の場合は十分な消毒として「良好消毒」と判定し、検出温度が60℃を未満である場合は不十分な消毒として「不十分消毒」と判定する(ステップ5)。この判定は、冷浴槽5においても同様に行う。すなわち、本実施例において、冷浴槽5の冷水温度を20℃弱に調整した場合、冷浴槽5の検出温度と、所定のしきい値、例えば、20℃と比較し、検出温度が20℃以下か否かを判定し、検出温度が20℃を以下の場合は十分な冷却として「良好冷却」と判定し、検出温度が20℃を超えた場合は不十分な冷却として「不十分冷却」と判定する(ステップ6)。なお、温湯消毒後の種籾は、冷却することにより、発芽率の低下が防止されるため、必要な温度と時間で冷却されなければならない。上記の判定結果は、前記浸漬履歴データに含めて同様に記憶する。
【0036】
ステップ7,8:
前記ステップ5において「不十分消毒」と判定された場合には、当該消毒容器10の番号をチェックするとともに、図示しない給湯器を作動させて温湯の温度を上昇させる。
【0037】
ステップ9,10:
前記ステップ6において「不十分冷却」と判定された場合には、当該消毒容器10の番号をチェックするとともに、図示しない冷却器を作動させて冷水の温度を低下させる。
【0038】
ステップ11,12,13:
前記CPU37は、前記浸漬履歴データに基づいて、各消毒容器10が温湯槽4及び冷浴槽5に設定時間浸漬されていたかを判定する。すなわち、前記温湯槽4及び冷浴槽5に入出時間を基に浸漬時間を演算し、温湯消毒が例えば10以上であったか、また、冷却時間が5分以上であったかを判定する。この判定の結果、上記条件について、両方不適合又は一方が不適合の場合には「浸漬時間不適合」とし、その消毒容器10の番号をチェックするとともに、搬送速度を変更するために、前記モータ9の回転数を変更し、前記条件を満足するようにする。なお、上記「両方不適合又は一方が不適合」の判定情報も前記浸漬履歴データとして記憶する。
【0039】
ステップ14:
前記CPU37は、前記浸漬履歴データを前記ディスプレー45に表示する。
【0040】
ステップ15:
前記CPU37は、運転終了信号の有無を判定し、信号が検出されない場合は、前記ステップ4に戻る。なお、前記種子搬出部26においては、搬送された消毒容器10の判定結果を基に前記切換弁29を切換える。すなわち、消毒容器10の判定結果が「不十分消毒」、「不十分冷却」及び「浸漬時間不適合」の何れかであった場合には、前記切換弁29を切換えて、当該消毒容器10の種籾を前記不良搬出路32に排出し、良品搬出路31の種籾に混じらないようにする。
【0041】
ステップ16,17:
前記CPU37は、運転終了信号を検知すると、前記浸漬履歴データを前記プリンター44に出力した後、前記モータ9のほか、各駆動部を停止させる。
【0042】
以上のように、本発明の温湯消毒装置1によれば、複数の消毒容器10に種籾をばらの状態で供給し、該消毒容器10を無端搬送チェーン6や搬送駆動部7等によって、温浴槽4及び冷浴槽5に順次浸漬し、この後、消毒容器10から種籾を排出するので、消毒容器10を作業者が温浴槽4に入れたり出したりすることなく、連続的にばらの種籾を温湯消毒することができる。また、各消毒容器10への種籾の供給やその排出も自動的に行われるので、この点においても作業者の労力は不要である。さらに、各消毒容器10には温度センサ(無線式温度センサ20)を設けて、各消毒容器10内の温度(種籾温度)を検出し、各消毒容器10内の種籾が、温度面から十分に消毒できたか否かを判定することができ、また、消毒不十分の消毒容器10を検出して監視できるようにしてある。このため、種籾排出部26において切換弁29を切換えて、消毒不十分の種籾(不良品)が消毒十分の種籾に混合しないようにすることができる。
【0043】
また、前記種子の消毒設備46においては、温湯消毒等が十分に行われた種籾だけが温湯消毒装置1から排出されて前記水切り装置47に搬送されて、前記ネットコンベヤー48で搬送される間に水切りがなされる。そして、前記ネットコンベヤー48の排出側から排出された種籾は、前記昇降機59及び切換弁60を介して前記乾燥装置48に搬送され、張込ホッパー58から張込まれる。張込まれた種籾は、前記乾燥装置48を適宜乾燥運転させることで、前記乾燥機本体部54の内部を繰り返し循環し、保存に適した水分値(例えば15%)まで乾燥させる。以上の消毒設備46により、種籾を温湯消毒から保存可能な水分にするまでを自動的に行うことができ、また、作業者の人員数が低減され、作業労力も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明における温湯消毒装置の側断面図
【図2】開閉扉を上面にした消毒容器の上方斜視図
【図3】開閉扉を下面にした消毒容器の下方斜視図
【図4】演算指示部等のブロック図
【図5】本発明の温湯消毒装置を用いた種子の消毒施設の構成図
【図6】水切り装置の側断面図
【図7】乾燥装置の上方斜視図
【図8】前記温湯消毒装置の運転フローチャート
【符号の説明】
【0045】
1 種子の温湯消毒装置
2 浸漬部
3 搬送手段
4 温浴槽
5 冷浴槽
6 無端搬送チェーン
7 搬送駆動部
8 スプロケット
9 モータ
10 消毒容器
11 孔
12 有孔板
13 開閉部
14 開閉扉
15 丁番
16 スプリング
17 ストッパー
18 当接プレート
19 連結棒
20 無線式温度センサ(温度センサ)
20a 温度受信機
21 バーコードラベル
22 種子供給部
23 ロータリーバルブ
24 供給タンク
25 プッシュロッド(開閉手段)
26 種子排出部
27 プッシュロッド(開閉手段)
28 排出散水部
29 切換弁
30 排出路
31 良品搬出路
32 不良品排出路
33 バーコード検知機(検知手段)
34 バーコード検知機(検知手段)
35 バーコード検知機(検知手段)
36 演算指示部
37 中央演算装置(CPU)
38 入出力回路(I/O)
39 入出力回路(I/O)
40 読み出し専用記憶部(ROM)
41 読み出し・書き込み用記憶部(RAM)
42 運転開始ボタン
43 運転停止ボタン
44 プリンター
45 ディスプレー
46 種子の消毒設備
47 水切り装置
48 乾燥装置
49 供給ホッパー
50 均板
51 温風送風装置
52 排出底部
53 排出口
54 乾燥機本体部
55 還流部
56 昇降機
57 上部搬送スクリュー
58 張込ホッパー
59 昇降機
60 切換弁
61 計量出荷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温湯を張った温浴槽と冷水を張った冷浴槽とに、搬送手段によって、順次、種子を入れた消毒容器を搬送して浸漬消毒を行う種子の温湯消毒装置において、
前記消毒容器は、種子をばら状態で供給・排出する開閉部を備えて密閉状で、かつ籠状に構成し、
前記搬送手段は、複数の前記消毒容器を連結した無端搬送チェーンと、該無端搬送チェーンに連結した各消毒容器を、該各消毒容器に種子を供給する種子供給部、前記温浴槽と冷浴槽とからなる浸漬部及び浸漬後の各消毒容器内の種子を排出する種子排出部の順からなる経路で搬送する搬送駆動部とを有してなり、
前記搬送経路における前記種子供給部の下流側及び種子排出部の上流側には各消毒容器の開閉部の開閉手段をそれぞれ配設したことを特徴とする種子の温湯消毒装置。
【請求項2】
前記種子供給部は、搬送経路において、搬送される前記消毒容器の各開閉部が上面になる位置に配設する一方、前記種子排出部は、前記消毒容器の各開閉部が下面になる位置に配設することを特徴とする請求項1に記載の種子の温湯消毒装置。
【請求項3】
前記搬送経路には前記浸漬部における各消毒容器の入出を検知する検知手段を設けるとともに、前記各消毒容器内には温度センサを配設し、さらに、前記検知手段及び温度センサの検出データを取得して各消毒容器における浸漬履歴データを集計する浸漬履歴集計部を備えることを特徴とする請求項2に記載の種子の温湯消毒装置。
【請求項4】
前記温度センサは無線式温度センサとし、前記浸漬履歴集計部は無線式温度センサの検出値を受信する受信装置を接続したことを特徴とする請求項3に記載の種子の温湯消毒装置。
【請求項5】
前記浸漬履歴集計部は、集計した各消毒容器における浸漬履歴データをディスプレイ表示及び/又はプリントアウトすることを特徴とする請求項4に記載の種子の温湯消毒装置。
【請求項6】
前記浸漬履歴集計部が取得した浸漬履歴データにおける浸漬温度と浸漬時間とを基にして、各消毒容器における浸漬温度及び/又は浸漬時間がしきい値以内か否かを判定する浸漬状態判定部を設け、前記浸漬履歴集計部は、前記浸漬状態判定部によってなされた判定結果も前記浸漬履歴データに含めることを特徴とする請求項5に記載の種子の温湯消毒装置。
【請求項7】
前記浸漬状態判定部の判定結果に基づいて、前記搬送駆動部が前記消毒容器を搬送する速度を変更する搬送速度変更手段を設けてなることを特徴とする請求項6に記載の種子の温湯消毒装置。
【請求項8】
前記種子排出部には、排出路を切換える切換装置を備え、各消毒容器内の種子を排出する際、前記浸漬状態判定部がなした前記しきい値以内か否かの判定結果に基づいて前記切換装置を切換えることを特徴とする請求項7に記載の種子の温湯消毒装置。
【請求項9】
前記請求項1乃至請求項8に記載の種子の温湯消毒装置の後工程に、水切り装置と乾燥装置とを順次配設してなる種子の消毒設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−29245(P2008−29245A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205363(P2006−205363)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】