説明

種子入りザクロジュースの製造方法、その製造方法を使用して成る種子入りザクロジュース及び前記種子入りザクロジュースを使用して成るザクロ果汁入りゼリー

【課題】種子入りザクロジュースの製造方法、その製造方法を使用して成る種子入りザクロジュース及び前記種子入りザクロジュースを使用して成るザクロ果汁入りゼリーを提供する。
【解決手段】ザクロを集荷し、ベルトコンベア上で選別する工程と、前記ザクロ全果を潰し、前記ザクロ全果から果皮を取り除き、果肉及び種子から成る果実部分を残す工程と、前記果実部分について、前記種子及び前記果肉とに分離し、前記果肉を搾って果汁にする工程と、前記種子を粒状になるまで潰す工程と、粒状の前記種子と前記果汁から成るザクロ混合液を滅菌する工程と、該滅菌工程後、前記ザクロ混合液を2回に分けて濾過をする濾過工程と、前記濾過後、前記ザクロ混合液を加熱濃縮する工程とを具備する種子入りザクロジュースの製造方法であって、前記濾過工程は、粗い孔を有するフィルタで濾過をする第1濾過と、前記第1濾過で使用されるフィルタよりも孔径の小さいフィルタで濾過をする第2濾過とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ザクロの果肉及び種子を同時にすりつぶした種子入りザクロジュースの製造方法、その製造方法を使用して成る種子入りザクロジュース及び前記種子入りザクロジュースを使用して成るザクロ果汁入りゼリーに関する。
【背景技術】
【0002】
生理不順、生理痛、冷え性、肩こり、めまい、体の火照り、発汗異常など女性の更年期障害の症状は、近年若い世代(20代〜30代)にも現れる傾向があるが、これらは主に自律神経の失調やストレスなどの心因性のもの、若しくは食生活の変化などが原因として挙げられるが、根本の原因は女性ホルモンの分泌異常(分泌過多若しくは減少)である。
【0003】
女性ホルモンの中でも卵胞由来のエストロゲンは、全身の女性化を促進し、子宮や膣などの発達や機能を維持する働きがある。エストロゲンは、単に更年期障害による減少だけでなく、無理なダイエットなどでも減少し、ホルモンバランスが崩れる。ここで、この対処療法としてエストロゲン経口剤服用がある。しかし、エストロゲン経口剤の服用は、作用が強すぎ、乳房痛、乳がん、子宮ガン及び肝機能障害の発生又はそれらの促進といった副作用を伴う場合があると報告されている。
【0004】
こうして、更年期障害を改善するため若しくは女性生殖機能維持のためのエストロゲンの補充と、逆にエストロゲン過剰摂取による乳がん等の促進という相反する効果に対応することが長年の研究課題である。
【0005】
一方、植物性食品(天然物)に由来するエストロゲン様活性物質はフィトエストロゲンと呼ばれ、これを含む食品は、更年期障害に伴う骨粗鬆症及び高脂血症の予防、肥満などの予防、乳がん、子宮がんの予防又は治療に有効であると考えられている。そして、該食品は、エストロゲン経口剤のように即効性は無いものの、摂取した場合に過剰摂取とはならず、それ故該経口剤摂取による副作用も殆どない。このようなフィトエストロゲン(植物性エストロゲン)には、大豆、ヒヨコマメ、ヒラマメ等の豆類に含まれるイソフラボン、穀物、果実、野菜に含まれるリグナン、リンゴ、カンゾウ、インゲンマメ、ナツメヤシ、ザクロに含まれる植物性(天然物)由来エストロゲンなどが含まれている。これらの中では、例えばザクロが注目されている。
【0006】
ザクロは、学名をプニカ・グラナタム(Punica・granatum)といい、トルコ若しくはイランなどの西南アジア、南ヨーロッパ、北アフリカが原産地とされている。ザクロの可食部については後述するが、ザクロの樹皮や根皮は、駆虫薬として、ザクロの果皮や花は、主に消毒薬としてそれぞれ用いられるなど、古くから薬としての効能が知られている。また、ザクロの種子に関しては、1964年に、Sharafらが種子油にエストロゲン活性があることを見出し、更にカルフォルニア工科大学のHefutmannらによってこの活性がエストロンになることが示され、また更に乾燥ザクロ種子(主に繊維質部分)100g中に1mgのエストロンが含まれることMoneamらによって確認された。
【0007】
このように、種子に含まれている成分若しくは乾燥ザクロ種子を配合した薬剤などが近年開発されており、例えば特開2002−105483号公報(特許文献1)に開示されている方法がある。この方法は、種衣部及び糖質の付着量の少ない、種子油製造に適した乾燥ザクロ種子を得ることが目的である。しかしながら、特許文献1に記載の方法は、種衣部及び糖質の除去を行う目的で硫酸や塩酸などの強酸、水酸化カリウム水溶液などの強アルカリを用いるため、エストロンやエストラジオールを含むザクロ種子の繊維質部分を溶解してしまう可能性があること、さらにエストロンやエストラジオールが、酸又はアルカリ処理液に混入してしまう可能性がある。
【0008】
一方、古くからザクロの可食部は、果実から皮と種子を取り除いた果肉とされている。果肉は、生食や果肉を絞ったジュース(果汁)が飲料として摂取される。この果汁若しくは果肉にもまた、ザクロ種子同様にエストロゲンが含まれるとして、2000年代初頭にブームとなったが、一般に流通している果肉(果汁)から成るザクロジュースやエキス錠剤などを用いた国民生活センターの分析では、いずれもエストロゲンは検出されなかった。
【0009】
こうした背景もあり、エストロゲンを、経口剤などの薬剤で摂取するという方法ではなく、ジュース等の飲食品として摂取できるようなザクロ種子入り飲食品の開発が、例えば特開2003−274888号公報(特許文献2)や特許第3785424号公報(特許文献3)に開示されている。特許文献2に記載の発明は、ザクロなどの果物を全果、即ち果皮、種子、果肉などを丸ごと磨砕し、得られた磨砕物に添加物を加えて飲食品にするという発明である。また、特許文献3に記載の発明は、ザクロ種子の成分を水で抽出し、該抽出物をザクロ果汁と乳酸発酵用原液と混合して乳酸菌発酵飲料を得るという発明である。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の磨砕物は、飲食品として用いるとき、該磨砕物の粒径に風味や栄養分の含有量が依存すること、更にビタミンC、ビタミンB類、果糖やブドウ糖などの糖類、ミネラル分など元来ザクロ果実に含まれているこれらの成分を食品添加物として添加することにより補わなくてはならないことが問題点である。また、特許文献3に記載の飲料は、ザクロ種子の成分を飲料に含有させるに際し、種子を一旦水で抽出したものを使用しなくてはならないことが問題点である。
【0011】
以上のように、女性にとっての健康維持及び美容におけるザクロの性質(効能)が見直されているが、一方で、美容の部分、特に美肌成分を司るコラーゲン成分については、ザクロには含有されていない。この様な場合、ザクロとコラーゲン成分を一度に摂取することが望ましいが、ザクロ果汁のpH(水素イオン濃度)値が強い(pH<2)ため、コラーゲン成分と併せた場合、コラーゲン成分が分解してしまうといった問題点があった。なお、ベリー類などの酸性果汁とコラーゲン成分との反応を制御する技術が特許第3574612号公報(特許文献4)に開示されているが、特許文献4に記載の技術は、ザクロ果汁に対しては用いられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−105483号公報
【特許文献2】特開2003−274888号公報
【特許文献3】特許第3785424号公報
【特許文献4】特許第3574612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上の事情に鑑み、本発明の目的は、種子入りザクロジュースの製造方法、その製造方法を使用して成る種子入りザクロジュース、更に前記種子入りザクロジュースを使用して成るザクロ果汁入りゼリーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る製造方法の上記目的は、ザクロを集荷し、ベルトコンベア上で選別する工程と、前記ザクロ全果を潰し、前記ザクロ全果から果皮を取り除き、果肉及び種子から成る果実部分を残す工程と、前記果実部分について、前記種子及び前記果肉とに分離し、前記果肉を搾って果汁にする工程と、前記種子を粒状になるまで潰す工程と、粒状の前記種子と前記果汁から成るザクロ混合液を滅菌する工程と、該滅菌工程後、前記ザクロ混合液を2回に分けて濾過をする濾過工程と、前記濾過後、前記ザクロ混合液を加熱濃縮する工程とを具備する種子入りザクロジュースの製造方法であって、前記濾過工程は、粗い孔を有するフィルタで濾過をする第1濾過と、前記第1濾過で使用されるフィルタよりも孔径の小さいフィルタで濾過をする第2濾過とを具備することで効果的に達成される。
【0015】
更に、前記ザクロがイラン・ザクロス山脈産の赤身ザクロ及び/又は黒ザクロであることにより、或いは前記ザクロが9〜11月に収穫されることにより、或いは前記滅菌は、60〜95℃で30〜50分間行うことにより、或いは前記第1濾過で使用されるフィルタの孔径が1.0〜1.5mmであることにより、或いは前記第2濾過で使用されるフィルタの孔径が0.1〜0.3mmであることにより、或いは前記第1濾過及び/又は前記第2濾過で使用されるフィルタの材質がスチール製であることにより、或いは前記加熱濃縮は、前記混合液をBrix65±1%に濃縮することにより、より効果的に達成される。
【0016】
また、本発明は、上記製造方法を使用して成る種子入りザクロジュースであって、前記種子入りザクロジュースは、種子由来繊維質成分、蛋白質、ブドウ糖、果糖、ミネラル類、ナトリウム、ポリフェノールを含み、更に前記種子由来繊維質成分に、エストロゲン類が付着して成ることにより効果的に達成される。
【0017】
更に、前記ミネラル類が、カリウム及びカルシウムであることにより、或いは前記種子由来繊維質成分が食物繊維であることにより、或いは前記エストロゲン類がエストロン、17β−エストラジオール及びエストリオールであることにより、より効果的に達成される。
【0018】
また、本発明は、上記種子入りザクロジュースを使用して成るザクロ果汁入りゼリーであって、前記ザクロ果汁入りゼリーは、コラーゲン類及び/又はプラセンタエキス、保湿成分並びに凝固剤を含み、前記コラーゲン類が、平均分子量1000〜3000の低分子化コラーゲンペプチドであり、前記コラーゲン類の配合量が、前記ザクロ果汁入りゼリー100重量%に対して、0.6〜5重量%であることによって効果的に達成される。
【0019】
更に、前記プラセンタエキスが豚由来であることにより、或いは前記保湿成分がヒアルロン酸及び/又はトレハロースであることにより、或いは前記凝固剤がペクチンであることにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の製造方法により、エストロゲン(エストロゲン様活性物質も含む)、繊維質、ミネラル、糖質などが損なわれることなく、ザクロジュースを製造することが可能である。
【0021】
また、本発明のザクロ果汁入りゼリーにより、ザクロ由来成分はもとより、コラーゲン成分を同時に摂取することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る製造方法を示すフローチャート図である。
【図2】本発明に係る製造方法にて使用するザクロの果実部分の概略図である。
【図3】本発明に係るザクロ果汁入りゼリーの製造を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る種子入りザクロジュースの製造方法について、図面を用いて説明する。
【0024】
図1は、種子入りザクロジュースの製造方法を示すフローチャートである。
【0025】
ステップS1では、ザクロを収穫し、集荷する。本発明に係る種子入りザクロジュースの製造方法で使用するザクロは、赤身ザクロ、水晶ザクロ、黄ザクロ、黒ザクロ、白ザクロなど種類は問わず、また、産地もイラン、中国、日本産等特に問わないが、本発明ではイラン・ザクロス山脈産の赤身ザクロ及び/又は黒ザクロを使用することが好ましい。更に、赤身ザクロのみ、黒ザクロのみでも本発明に係る種子入りザクロジュースの製造は可能であるが、赤身ザクロと、黒ザクロとを混合させることが好ましい。また更に、白ザクロを混合しても良い。なお、本発明においては、白ザクロ、赤身ザクロ及び黒ザクロの混合比率は、適宜選択可能である。
【0026】
また、イラン・ザクロス山脈産の赤身ザクロ及び/又は黒ザクロを使用することが好ましい理由として、イラン・ザクロス山脈付近は、昼夜の気温差が激しいため、害虫が殆ど存在せず、赤身ザクロ及び黒ザクロを無農薬で生育可能なこと、昼は紫外線が強くザクロの抗酸化力(具体的には、ポリフェノール類の増加)が自然に増すという理由からである。そのため、イラン産(特に前記ザクロス山脈付近)のザクロは、ザクロ1個あたりの果汁が65%前後のものが殆どである。ちなみにザクロ1個あたりの果汁の平均は、25%前後である。また、ザクロの収穫時期は9月〜11月に収穫することが望ましい。この時期に糖度(甘み)が最大になるからである。
【0027】
ステップS1にてザクロを収穫後、ベルトコンベア上にて選別し、洗浄をする(ステップS2)。ステップS2における選別は、傷のついているザクロ、未成熟なザクロ及び汚れているザクロを取り除くためで、従来技術に従えば良い。洗浄もまた、従来技術に従えば良い。なお、本発明に係る種子入りザクロジュース1kgに対し、約9〜11kgのザクロが必要である。
【0028】
次に、選別したザクロ全果を潰す(粉砕する)(ステップS3)。ここで、ザクロ全果とは集荷して選別したザクロの実全体のことを指す。前記ザクロ全果を潰すための粉砕機は、ハンマーミル、ウィングミル、マスコロイダー(登録商標)など一般的な果実用粉砕機であれば粉砕機の種類などは特に制限は無い。また、粉砕機の代わりに手動で粉砕しても構わない。
【0029】
次に、粉砕したザクロ全果から果皮(外皮)のみを取り除き、果実部分を残す(ステップS4)。図2に示すように、ここで言う果実部分1とは、果肉2及び種子3からなり、果肉2が種子3を覆うようにして成る。なお、果皮は従来技術で取り除けば良い。
【0030】
次に、ステップS4にて残した果実部分に関し、更に果肉と種子とに一旦分離し、分離した果肉を潰して(搾って)果汁にする(ステップS5)。なお、ステップS5において、果肉と種子とに分離する際は、遠心分離機等で分離すれば良い。また、果汁にする作業に関しては従来技術で構わず、その際、果肉の外側を覆う皮については一緒に潰して構わない。
【0031】
次に、ステップS5にて分離した種子を押圧して、該種子を粒径が1.5mm程度の粒になるまで潰す(ステップS6)。ステップS6において、種子を潰すための押圧機は、スクリュー型押圧機、当て盤プレス機等が好ましいが、特に限定は無い。
【0032】
なお、ステップS5にて果肉(果汁)と、種子とを一旦分離するとしたが、ステップS5の工程を省いてステップS4からステップS6へ移行することも可能である。
【0033】
次に、ステップS6にて潰した種子と、ステップS5にて分離した果汁とを混合し、該混合液を60〜95℃で30〜50分間殺菌する(ステップS7)。該滅菌は、従来技術で構わない。また、滅菌の温度範囲及び滅菌時間の範囲についてであるが、これらの範囲以下であると、十分滅菌されず、これらの範囲以上であると、前記混合液に含まれる成分が変質してしまうため、60〜95℃で30〜50分間殺菌することが好ましい。なお、ステップS7にて、果汁と種子の混合液を滅菌するとしたが、先に果汁のみを滅菌しても構わない。
【0034】
次に、ステップS7でザクロ混合液を滅菌後、該混合液を孔径1.0〜1.5mmのフィルタで濾過をする(ステップS8)。なお、ステップS7の後、ザクロ混合液を一旦冷却後にステップS8に移行することが望ましいが、該ザクロ混合液を冷却せずに速やかにステップS7からS8に移行しても構わない。ここで、ステップS8における濾過を第1濾過とする。前記第1濾過の目的は、種子の外種皮を取り除くことである。フィルタの孔径が1.5mm以上であると、外種皮が濾液の中に混入する可能性がある。また、フィルタの孔径が1.0mm以下であると、外種皮は取り除かれるものの、外種皮の中に入り込んだ種子由来繊維質成分が濾液(混合液)に残らない可能性がある。
【0035】
次に、第1濾過後のザクロ混合液を、孔径0.1〜0.5mmのフィルタで濾過をする(ステップS9)。ここで、ステップS9における濾過を第2濾過とする。前記第2濾過の目的は、第1濾過で取り除かれなかった外種皮と、内種皮とを取り除くことにある。また、第2濾過に使用するフィルタは、孔径が0.1〜0.5mmであれば形状は特に問わない。また、フィルタの孔径が0.5mm以上であると、外種皮は完全に取り除かれるものの、内種皮が濾液に混入する可能性がある。また、フィルタの孔径が0.1mm未満であると、内種皮は完全に取り除かれるものの、種子由来繊維質成分が濾液(混合液)に残らない可能性がある。
【0036】
ここで、ステップS8及びS9における第1及び第2濾過に関して、第1濾過及び第2濾過に使用するフィルタの形状は円盤(ふるい)型、円筒型等特に問わない。またフィルタの孔の形状は、1.0〜1.5mm(第1濾過)及び0.1〜0.5mm(第2濾過)の孔径を確保できれば、円状、四辺形状、多角型状、線状、格子状等特に問わない。また、フィルタの材質は、スチール製、合成繊維製、プラスチック製などであるが、スチール製のものが望ましい。スチール製の場合、種子における外種皮及び内種皮のような硬い部分だけが取り除かれ、種子の繊維質部分がフィルタに付着するといったことが防止できるからである。また、第1及び第2濾過では同じ材質のフィルタを使用するのが望ましいが、材質の違うフィルタを使用しても良い。また、第1及び第2濾過共に、自然濾過、減圧濾過、加圧濾過など適宜選択可能である。
【0037】
次に、ステップS9で得られたザクロ混合液を、タンクなどの容器に入れ、Brix65±1%になるまで加熱濃縮する(ステップS10)。加熱温度、加熱時間は特に問わず、濃縮方法は従来技術で構わない。ここで、Brixとは、ショ糖(砂糖)溶液の濃度の単位で、20℃におけるザクロ果汁溶液100グラム中の糖類のグラム数を、ショ糖のグラム数に換算した値を重量百分率で表すものである。
【0038】
ステップS10の後、適宜冷却し、瓶詰めして出荷する(ステップS11)。ステップS11にて使用する瓶(容器)は、ガラス瓶、プラスチック(ポリ容器)、紙パックなどである。
【0039】
次に、本発明の種子入りザクロジュースの製造方法で製造された種子入りザクロジュースについて説明する。
【0040】
該製造方法で製造された種子入りザクロジュースの成分を分析したところ、種子由来繊維質(主に食物繊維)成分、蛋白質、ブドウ糖や果糖等の糖類、ポリフェノール、ナトリウム並びにカリウム及びカルシウムなどのミネラル類等が確認された。また、種子由来繊維質(主に食物繊維)成分に付着したエストロゲンの一種であるエストラジオールも検出された。また、その他のエストロゲン類(エストリオール、エストロン)も確認された。その他、ビタミンC、ビタミンB類(B1及びB2)も確認された。
【0041】
次に、本発明の種子入りザクロジュースを使用したザクロ果汁入りゼリーの製造の概要について、図3のフローチャートを基に説明する。
【0042】
先ず、図1のステップS11にて出荷された種子入りザクロジュース(ザクロ果汁)は、Brix65±1%であるため、該ザクロ果汁入りゼリーを製造する際は、水で2倍以上、好ましくは2〜20倍程度に希釈したものを使用する(ステップS31)。種子入りザクロジュースをそのまま、即ち希釈しないと、コラーゲンやプラセンタエキスと、凝固剤とが反応してしまい、凝固しない。この理由として、ザクロジュースのpH値(水素イオン濃度)が影響する。一方、20倍以上に希釈してしまうと、ミネラルやビタミン類などのザクロ由来成分が、十分に摂取できない。
【0043】
次にステップS31にて希釈した種子入りザクロジュースに対し、コラーゲン類、プラセンタエキス、保湿成分、凝固剤を配合する(ステップS32)。なお、配合順は、凝固剤を最後に配合する以外は特に順番は問わない。
【0044】
コラーゲン類としては、低分子化した、分子量が500〜5000のコラーゲンペプチドを使用するのが望ましい。分子量が500以下であると、凝固剤やザクロ果汁そのものと反応し、コラーゲン成分がアミノ酸にまで分解する。分子量が5000以上であると、コラーゲン成分が元来果たすべき機能が果たせなくなる可能性がある。なお、前記コラーゲンペプチドの配合量は、前記ザクロ果汁入りゼリー100重量%に対して、0.6〜5重量%、好ましくは0.6〜1重量%が望ましい。配合量が0.6重量%以下であると、コラーゲン成分が元来果たすべき機能が果たせなくなり、5重量%以上であると、凝固剤と反応し、コラーゲン成分が分解してしまう可能性がある。
【0045】
プラセンタエキスは、豚由来のものが望ましいが、その限りではない。また、プラセンタエキスは、コラーゲン成分と同質の性質を有するため、コラーゲン類と共に用いるのが望ましいが、別に配合しなくても構わない。逆にコラーゲン成分の代わりにプラセンタエキスを使用しても構わない。プラセンタエキスを配合する場合、コラーゲン類同様、前記ザクロ果汁入りゼリー100重量%に対して、0.6〜5重量%、好ましくは0.6〜1重量%が望ましい。配合量が0.6重量%以下であると、プラセンタエキス由来成分が元来果たすべき機能が果たせなくなり、5重量%以上であると、凝固剤と反応し、プラセンタエキスが分解してしまう可能性がある。
【0046】
次に、保湿成分であるが、コラーゲン類、ヒアルロン酸、トレハロース、ヒアルロン酸ナトリウム、アロエベラジェル、植物性グリセリン、ベタイン、キトサン、PCAソーダ(ピロリドンカルボン酸ナトリウム)、プルラン、ローヤルゼリー、デオキシリボ核酸ナトリウム、リボ核酸ナトリウム、ナイアシンアミドなどの物質が使用可能である。ちなみに、コラーゲン類(前記コラーゲンペプチド)のみでも本発明のザクロ果汁入りゼリーは成立するが、水分含有力やその他の成分(凝固剤やザクロ果汁)との相性を考慮した場合、ヒアルロン酸及び/又はトレハロースを更に配合することが望ましい。なお、ヒアルロン酸及びトレハロースについては、共に配合しても、また、どちらか一方を配合しても良い。前記保湿成分の配合量は、前記ザクロ果汁入りゼリー100重量%に対して、0.2重量%以上、好ましくは0.2〜1重量%であれば構わない。
【0047】
次に、凝固剤については、ペクチン、カラギーナン、寒天、ゼラチンなどが使用可能であるが、ザクロ果汁との相性、即ちザクロ果汁の酸性度等を考慮した場合、ペクチンが望ましい。ペクチンの配合量は、前記ザクロ果汁入りゼリー100重量%に対して、1重量%〜10重量%添加される。ペクチンの配合量が1重量%以下であると十分に凝固せず、10重量%以上であると、コラーゲン成分等と反応してしまう。
【0048】
その他、ビタミンC、クエン酸、甘味料、ザクロ香料を適宜添加する。本発明に係るザクロ果汁入りゼリーにおいて、ビタミンC及びクエン酸については、ザクロ果汁の栄養補充(ビタミンC)、酸化防止剤、緩衝剤(コラーゲン成分と凝固剤との反応における)などの役割を担うが、添加しなくても構わない。ビタミンC及びクエン酸を添加する場合の配合量は、前記ザクロ果汁入りゼリー100重量%に対して、0.2重量%以上添加すれば良い。
【0049】
また、甘味料及びザクロ香料については、添加してもしなくてもどちらでも構わない。なお、甘味料については、砂糖、スクラロース、アスパルファムKなど、種類は問わない。また、甘味料及びザクロ香料についての配合量に特に制限は無い(大体1重量%以下である)。なお、ザクロ香料の代わり若しくは併用して、ローズオイルの使用も可能である。ローズオイルは、サプリメント等に使用されるブルガリア、ダマスク、ヴェレダ等が望ましい。ローズオイルの使用は、ザクロ果汁の栄養補充や、該オイルに含まれるビタミンE、リコピンの抗酸化作用が期待される。
【0050】
ステップS32における、材料の配合の後、冷暗所にて2時間以上静置して、本発明に係るザクロ果汁入りゼリーとする(ステップS33)。
【0051】
なお、本発明に係るザクロ果汁入りゼリーは、グミキャンディーへの応用も可能である。
【0052】
以上、本発明に係る種子入りザクロジュースの製造方法、該製造方法から成る種子入りザクロジュース及び該種子入りザクロジュースを使用して成るザクロ果汁入りゼリーについて説明したが、本発明の実施形態はこの限りではない。
【実施例】
【0053】
次に、上記に述べた本発明の実施形態の詳細を、実施例を基に説明する。
【0054】
[実施例1]種子入りザクロジュースの製造
先ず、イラン・ザクロス山脈産の赤ペルシャザクロ及び黒ペルシャザクロを、10月に収穫し、収穫した該ザクロをベルトコンベア上で選別し、選別の後に洗浄した。本実施例では、赤ペルシャザクロ(赤身ザクロ)及び黒ペルシャザクロ(黒ザクロ)の混合使用比率を1:1とし、本発明に係る種子入りザクロジュース1kgに対し、9.8kgのザクロを使用した。
【0055】
次に、洗浄後の赤ペルシャザクロ及び黒ペルシャザクロの全果を、粉砕機を用いて潰した後、果皮を取り除き、更にそれ以外の部分、即ち果実(果肉及び種子)部分を遠心分離機にて果肉と種子に分離した。ここで、果肉については搾って果汁にし、種子についてはスクリュー型押圧機で粒状にした。
【0056】
次に、前記果汁と、粒状の前記種子とを混合して得られたザクロ混合液(本発明に係る種子入りザクロジュース原液)を、90℃で40分間滅菌を行った。
【0057】
前記滅菌の後、前記ザクロ混合液に関して、孔径が1.2mmのステンレススチール316製フィルタで1回目の濾過(第1濾過)をした。続けて、前記第1濾過後に孔径が0.3mmのステンレススチール316製フィルタで2回目の濾過(第2濾過)をした。
【0058】
前記第2濾過後、濾過された前記ザクロ混合液をタンクに回収し、該タンク内で加熱濃縮を行った。前記濃縮は、Brix65%になるまで加熱した。ここで本発明(本実施例)に係る種子入りザクロジュースが完成した。
【0059】
次に前記種子入りザクロジュースを適宜冷却し、そしてガラス瓶に瓶詰めし、出荷した。
【0060】
以上、本発明に係る種子入りザクロジュースの製造方法に関する実施例を説明したが、本実施例はあくまで一例であり、ザクロの収穫時期、赤ペルシャザクロ及び黒ペルシャザクロを使用したときの混合使用比率、滅菌温度等の種々の条件はこの限りではない。
【0061】
[実施例2]実施例1にて製造された種子入りザクロジュースの成分分析
実施例1にて製造された種子入りザクロジュースについて、エストロゲン由来成分以外の成分分析表について、表1に示す。なお、表1に示す成分分析表については、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について(衛新第13号平成11年4月26日)」によった。
【0062】
【表1】

【0063】
上記表1の結果から、食物繊維(種子由来繊維質成分)、蛋白質、脂質、ブドウ糖や果糖等の糖類(上記表1では糖質として)、カリウム及びカルシウムなどのミネラル類(上記表1では灰分として)、ナトリウム並びにポリフェノールが検出された。なお、上記表1にて示さなかったが、ビタミンC、ビタミンB類(B1及びB2)についても別法にて検出された。
【0064】
次に、エストロゲン3画分(エストロン、17β−エストラジオール及びエストリオール)について、RIA(ラジオイムノアッセイ)法で分析したところ、参考値ではあるが、エストロン、エストロン及び17β−エストラジオールについては本発明に係る種子入りザクロジュース1mLあたり、1〜1000pg(ピコグラム)レベルでの検出が確認された。なお、薬事法に抵触するので具体的な数値は伏せる。
【0065】
[実施例3]本発明に係るザクロ果汁入りゼリーの製造
実施例3では、本発明に係るザクロ果汁入りゼリーの実施例を説明する。
【0066】
先ず、本発明に係る種子入りザクロジュース(本実施例1にて製造された種子入りザクロジュース)を水で2倍に希釈した。
【0067】
次に希釈した前記種子入りザクロジュースを15mL中に、トレハロース50mg、魚由来のコラーゲン(コラーゲンペプチド。平均分子量2000〜3000のものを使用)100mg、豚由来プラセンタエキス50mg、クエン酸50mg、ビタミンC50mg、ヒアルロン酸30mg、及びペクチン200mgを配合した。なお、ザクロ香料及び甘味料を少量配合した。
【0068】
該配合後、ザクロ果汁入りゼリー溶液を冷暗所にて3時間静置して、凝固させることにより本発明に係るザクロ果汁入りゼリーとした。
【0069】
[実施例4]本発明に係るザクロ果汁入りゼリーの製造の別態様
上記実施例3にて使用したザクロ香料の代わりに、ローズオイル(ブルガリア)を使用した。なお、ローズオイル以外のその他の材料の配合量や製造条件等は実施例3と同じである。
【0070】
以上、本発明に係る種子入りザクロジュースの製造方法に関する実施例1として説明したが、本実施例はあくまで一例であり、ザクロの収穫時期、赤ペルシャザクロ及び黒ペルシャザクロを使用したときの混合使用比率、滅菌温度等の種々の条件はこの限りではない。
【0071】
また、本発明に係るザクロ果汁入りゼリーについて、実施例3及び4にて説明したが、上記の実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
1 果実部分
2 果肉
3 種子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ザクロを集荷し、ベルトコンベア上で選別する工程と、前記ザクロ全果を潰し、前記ザクロ全果から果皮を取り除き、果肉及び種子から成る果実部分を残す工程と、前記果実部分について、前記種子及び前記果肉とに分離し、前記果肉を搾って果汁にする工程と、前記種子を粒状になるまで潰す工程と、粒状の前記種子と前記果汁から成るザクロ混合液を滅菌する工程と、該滅菌工程後、前記ザクロ混合液を2回に分けて濾過をする濾過工程と、前記濾過後、前記ザクロ混合液を加熱濃縮する工程とを具備する種子入りザクロジュースの製造方法であって、前記濾過工程は、粗い孔を有するフィルタで濾過をする第1濾過と、前記第1濾過で使用されるフィルタよりも孔径の小さいフィルタで濾過をする第2濾過とを具備することを特徴とする種子入りザクロジュースの製造方法。
【請求項2】
前記ザクロがイラン・ザクロス山脈産の赤身ザクロ及び/又は黒ザクロである請求項1に記載の種子入りザクロジュースの製造方法。
【請求項3】
前記ザクロが9〜11月に収穫される請求項1又は2に記載の種子入りザクロジュースの製造方法。
【請求項4】
前記滅菌は、60〜95℃で30〜50分間行う請求項1乃至3のいずれか1項に記載の種子入りザクロジュースの製造方法。
【請求項5】
前記第1濾過で使用されるフィルタの孔径が1.0〜1.5mmである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の種子入りザクロジュースの製造方法。
【請求項6】
前記第2濾過で使用されるフィルタの孔径が0.1〜0.5mmである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の種子入りザクロジュースの製造方法。
【請求項7】
前記第1濾過及び/又は前記第2濾過で使用されるフィルタの材質がスチール製である請求項5又は6に記載の種子入りザクロジュースの製造方法。
【請求項8】
前記加熱濃縮は、前記ザクロ混合液をBrix65±1%に濃縮することである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の種子入りザクロジュースの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法を使用して成る種子入りザクロジュースであって、前記種子入りザクロジュースは、種子由来繊維質成分、蛋白質、ブドウ糖、果糖、ミネラル類、ナトリウム、ポリフェノールを含み、更に前記種子由来繊維質成分に、エストロゲン類が付着して成ることを特徴とする種子入りザクロジュース。
【請求項10】
前記ミネラル類が、カリウム及びカルシウムである請求項9に記載の種子入りザクロジュース。
【請求項11】
前記種子由来繊維質成分が食物繊維である請求項9又は10に記載の種子入りザクロジュース。
【請求項12】
前記エストロゲン類がエストロン、17β−エストラジオール及びエストリオールである請求項9乃至11のいずれか1項に記載の種子入りザクロジュース。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか1項に記載の種子入りザクロジュースを使用して成るザクロ果汁入りゼリーであって、前記ザクロ果汁入りゼリーは、コラーゲン類及び/又はプラセンタエキス、保湿成分並びに凝固剤を含み、前記コラーゲン類が、平均分子量500〜5000の低分子化コラーゲンペプチドであり、前記コラーゲン類の配合量が、前記ザクロ果汁入りゼリー100重量%に対して、0.6〜5重量%であることを特徴とするザクロ果汁入りゼリー。
【請求項14】
前記保湿成分がヒアルロン酸及び/又はトレハロースである請求項13に記載のザクロ果汁入りゼリー。
【請求項15】
前記凝固剤がペクチンである請求項13又は14に記載のザクロ果汁入りゼリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−39997(P2012−39997A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277818(P2010−277818)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(509148119)株式会社クワン (1)
【出願人】(510200440)
【Fターム(参考)】