説明

種子収納媒体

【課題】植物等の種子を基材に収納してなる種子収納媒体において、種子を充填する際、基材からの跳び跳ねによる種子収納不良のない種子収納媒体を提供する。
【解決手段】少なくとも種子収納部を設けた基材2と、該種子収納部を覆うカバーフィルム7と、を具備する種子収納媒体1であって、該種子収納部に、種子5が固定された種子シートが配置されている種子収納媒体1とすることで種子充填不良のない種子収納媒体1とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物等全般の種子を収納した媒体に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来から、農作業において手作業にて種子を土中に散布する手間を省くため、若しくは、イベントの景品等として手軽に多数の人に植物等の種子を配布するため等に、基材表面や基材に設けた凹部に植物等の種子を配置し、種子の発芽の力で破壊可能な薄いカバーフィルム等で表面を覆う等して収納することが行われている。
特許文献としては例えば、土中において容易に腐食する紙、布、木版等の生地材に凹部を設け、種子を収納し、凹部を塗膜層あるいはカバーフィルムによって封止した種子収納シートが知られている(特許文献1)。
また、紙等の生分解性を有する素材の表面に植物の種子と植物成長促進物質を配置し、その表面にカバーフィルムを被せたメッセージ伝達媒体が知られている(特許文献2)。
【0003】
また、カードに付加価値をつけるためにカード本体の所定の位置に種を配置したカードが知られている(特許文献3)。
種を配置したカードは、本来のカードとしての機能を有しながら、カード廃棄時に土中に埋めるなどして植物の育成を行うことができ、新たな用途を切り開いていくことができるものである。通常このような平板状のものに種を配置する場合、ディスペンサーのような針状ノズルから種を吐出する装置を用いる。しかしながら、カードは硬い材料を基材として用いているため、ノズルから種を吐出させて配置する場合、種子が跳ねて飛び出し収納不良を起こすことがある。また、カードに種を収納するための凹部を設け、この凹部内にノズルから種を吐出させて配置する場合においても、基材、種の硬さなどによるが、跳ねて凹部から飛び出ることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−106714
【特許文献2】特開平11−277952
【特許文献3】実用新案登録第3157337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、種子収納不良のない種子収納媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、少なくとも種子収納部を設けた基材と、該種子収納部を覆うカバーフィルムと、を具備する種子収納媒体であって、該種子収納部に、種子が収納された種子シートが配置されていることを特徴とする種子収納媒体としたものである。
【0007】
また本発明は、前記種子シートに高分子吸収体が収納されていることを特徴とする趣旨収納媒体したものである。
【0008】
また本発明は、前記種子収納部が、凹部又は孔部であることを特徴とする種子収納媒体したものである。
【0009】
また本発明は、前記種子収納部が、凹部又は孔部であることを特徴とする種子収納媒体としたものである。
【0010】
また本発明は、前記カバーフィルムに前記種子が接着されていることを特徴とする種子収納媒体としたものである。
【0011】
また本発明は、前記種子シートは、水溶性又は生分解性であることを特徴とする種子収納媒体としたものである。
【0012】
また本発明は、前記カバーフィルムは、水溶性又は生分解性であることを特徴とする種子収納媒体としたものである。
【0013】
また本発明は、前記カバーフィルムと前記基材とは、生分解性の接着剤で貼り合わせられていることを特徴とする種子収納媒体としたものである。
【0014】
また本発明は、前記基材には、少なくとも前記種子収納部を含む形状に該基材を切り取り可能な切取部が設けられていることを特徴とする種子収納媒体としたものである。
【0015】
また本発明は、前記基材には、ICチップ若しくは磁気記録層からなる情報記録部が設けられており、前記切取部は、少なくとも前記種子収納部を含む部分と、少なくとも該情報記録部の一部を含む部分とに基材を分断可能であることを特徴とする種子収納媒体としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上説明したような構成であるから、以下に示す如き効果がある。
【0017】
即ち、本発明における種子収納媒体は、直接基材の種収納部に種子を配置するのではなく、種子を種収納袋に収納した状態で基材の種収納部に配置するため、配置する際に種子が跳ねて飛び出す種子収納不良がないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における種子収納媒体の一実施形態例における断面図である。
【図2】本発明における種子収納媒体の一実施形態例における断面図である。
【図3】本発明における種子収納媒体の使用例を説明する概要図である。
【図4】本発明における種子収納媒体の一実施形態例における断面図である。
【図5】本発明に用いるカバーフィルムの一例を示す概略図である。
【図6】本発明に用いる種子シートへの種子充填方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明における種子収納媒体について、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明における種子収納媒体の一実施例における断面図である。本発明における種子収納媒体1は、基材2に種子収納部として凹部3若しくは孔部4を設け、そこに種子5が収納された種子シート6を配置し、これをカバーフィルム7で封止してなる。図1(a)は種子収納部が凹部である場合の種子収納媒体の一実施例であり、図1(b)は種子収納部が孔部である場合の種子収納媒体の一実施例である。
【0021】
基材としては、従来のカードとしての機能や取扱い性を有するもので、一定の強度を有するもの、すなわちある程度の硬さを有する材料を用いる。このようなものとして例えばプラスチック、生分解性樹脂、紙等が使用でき、特に生分解性樹脂や紙は土中に埋めた際に徐々に分解されるので好ましい。
生分解性樹脂の材料としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等の生分解性を有する脂肪族ポリエステル系、及び樹脂等が挙げられる。
紙としては、一般的な紙、バルカナイズドファイバー等が挙げられる。また、基材は、花の香り等を芳香させるものであっても良い。例えば、収納する種子から発芽する植物がつける花又は実等の香りを芳香させるものであると、よりユーザーを楽しませることが可能である。
【0022】
基材の大きさ、形状については、特に限定しないが、JIS規格に規定されている、短辺が53.92〜54.03mm、長辺が85.47〜85.72mm、厚みが0.76±0.08mmのカード基材を用いても良い。しかし、本発明における基材の形状は特にこれに限定されるものではなく、長方形、正方形、台形、星型、ハート型、その他諸々の自由な形状に設計して良い。また、基材は単層構造であっても、複数層からなっても良い。
【0023】
種子収納部は、種子が収納された種子収納袋を収納するための空間である。種子収納部の構造としては、例えば凹部及び孔部が挙げられる。凹部は、基材をザグリ加工することにより形成可能である。他にも、基材が複数層からなる場合には、貫通孔を有する基材と、貫通孔が無い基材とを重ねることにより凹部を形成することも可能である。また、孔部は基材を抜き打ち加工することにより形成可能である。ただし、種子収納部は凹部及び孔部以外の構造であっても、種子及び高分子吸収体が収納可能な構造であれば特に限定しない。また、種子収納部の大きさ、形状についても、収納する種子及び高分子吸収体の大きさや量により適宜設定してよく、特に限定しない。また、1つの種子収納媒体に対して、種子収納部を複数形成しても良い。
【0024】
本発明における種子とは、花、草、野菜、果物、木等の植物全般における種子またはその断片、若しくは、菌糸類の胞子、地衣類の芽子等を指しており、種子収納部に収納が可能な大きさ、形状、性質を有しているのであれば、特に限定されるものではない。
【0025】
本発明では、種子シート用い、予め種子が固定された種子シートを基材の種子収納部に配置するため、種子充填時の種子の飛び跳ねによる収納不良がないものとなる。
種子シートは、土中に埋めた際、又は水耕栽培用スポンジ上に置かれた際等に分解されやすい材料または土と同化する材料からなるシートである。このような材料として、紙材料、パルプ材料、繊維材料、でんぷん材料、生分解性樹脂材料、土系材料等が挙げられる。
また、種子シートの厚みは、その材料や種子の大きさによっても異なるが、0.05〜1mmとすることが望ましい。また、種子収納媒体がJIS規格を満たすカード形状の場合は0.05〜0.7mmの範囲内であることが望ましい。
【0026】
種子シートに種子を固定する方法としては、図6に示すようにシート化された上記材料に種子をディスペンサー等で吐出配置していく方法が挙げられる。なお、種子シート上に生分解性、水溶性の粘着接着剤層を形成しておくことにより、シート表面に種子を固定することができる。また、シート上に種子を配置した後に、生分解性、水溶性のシートで覆うことにより固定してもよい。さらに、シート上に種子を配置した後に、押圧により、シート上に埋設固定することもできる。
また、種子シートの材料が、熱可塑性の材料を含み、加熱により表面が粘着性を有する材料である場合、表面を粘着状態にしてディスペンサー等により種子を吐出配置し、冷却により種子をシートに固定してもよい。
また、パルプ材料、繊維材料、土系材料等を用いる場合、流動化された状態でディスペンサー等により種子を吐出配置し、加熱加圧や粘着接着剤添加により固めることにより種子が埋設固定された種子シートを得ることもできる。
種子は、一定の間隔をあけて配置固定する。間隔は用いる種子によって適宜設定できる。
得られた種子シートは、種子収納部のサイズに合わせ切り取り、種子収納部に配置することができる。
【0027】
本発明では、種子収納部または種子シート内に高分子吸収体を配置してもよい。高分子吸収体とは、水分を吸収して保持し、膨張する材料のことである。高分子吸収体の水分を保持するという働きにより、種子への安定的な水分補給が可能である。また、膨張するという働きにより、カバーフィルムと接することでカバーフィルムへも水分を供給し、カバーフィルムの膨潤、軟化を促進させる効果を有する。また、合わせてカバーフィルムに圧力をかけ、押し出すことにより、種子の発芽の力だけでは完全に破壊しきれないカバーフィルムの破壊・分解を助けるという効果も有する。高分子吸収体を収納する量は、種子の大きさ、量、割合、種子収納部の大きさ等に応じて適宜決定して良い。
高分子吸収体は種子シートの内側に配置しても外側に配置してもよいが、図4(a)に示すように種子シートの外側でかつ種子シートの下部に配置することが好ましい。このようにすることで、種子収納媒体を土中に埋めた際、又は水耕栽培用スポンジに置いた時に、種子シートに水分を供給しながら種子を押し上げ、さらにカバーフィルムを破壊・分解するので、発芽しやすい状況となるため好ましい。
【0028】
具体的な高分子吸収体の材料としては、ポリアクリル酸系高分子、でんぷん系高分子、カルボキシルメチルセルロース系高分子等が挙げられる。
【0029】
高分子吸収体は、一般的に吸収した水分量の体積まで膨張する。また水分の吸収量は、材料により異なるが、自重の数十倍から数百倍である。今回、高分子吸収体として、マジッククリスタル(松野工業(株)製)を用いて実験したところ、土中に埋めた場合に1g当たり50g(約50cm)以上の水分が吸収され、膨張することが確認できた。
【0030】
高分子吸収体の分量としては、材料や、埋められる土中の環境によっても異なるが、種子収納部に収納され、土中に埋められて水分を吸収することで、基材の厚さ以上に膨張する分量であることが望ましい。これにより、カバーフィルムの破壊を確実に助けることが可能となる。
【0031】
また、本発明では肥料を種子収納部または種子シート内に配置してもよい。肥料や品種によっては、肥料が根に直接接することで根が腐る場合があり、種子シートにはいれずに種子収納部に配置することが好ましい。また、品種によっては、図4(b)に示すように、種子シート内に発芽促進剤を入れ、種子収納部内の種子シートの外に肥料を配置することにより、発芽を促し、根が生長してから袋の外の肥料分含有の土に接して根が更に強く生長させてもよい。
【0032】
カバーフィルムは、種子収納部が凹部の場合には、凹部を封止するために基材の片面に設ける必要が有り、種子収納部が孔部の場合には、基材の両面に設ける必要がある。
【0033】
また、カバーフィルムは通常時には確実に種子を封止するため、一定の破裂強さを有する必要が有る。ただし、土中に埋めた際、又は水耕栽培用スポンジに置かれた際等には、種子の発芽率を向上させるために、破壊されやすい材料である必要がある。よって、水や微生物で分解、溶解可能な紙、でんぷん質、生分解性樹脂等が挙げられる。カバーフィルムの材料として、特に限定しないが、環境問題的視点から特に生分解性樹脂や紙は土中に埋めた際に徐々に分解されるので好ましい。また、カバーフィルムの厚みは、その材料によっても異なるが、数μm〜200μmとすることが望ましい。
【0034】
カバーフィルムの材料として紙を用いる場合には、破裂強さ(kgf/cm{kPa}(10枚))が0.8{78}以上(参考:JIS P8112 紙及び板紙のミューレン低圧形試験機による破裂強さ試験方法)であることが望ましい。
【0035】
上記破裂強さを有する紙として、例えば、トイレットペーパーと同等の物性、すなわち、吸水度が20(mm)程度(試験時間:1分間、水温:20±5℃、参考:JIS P8141 紙のクレム法による吸水度試験方法)であり、水を吸収し、ほぐれやすい性質を有するものを用いることが好ましい。ただし、すきむら、破れ、穴等の使用状の欠点がないものを用いる。
【0036】
また、カバーフィルムの材料として生分解性樹脂を用いる場合には、基材と同様、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等の生分解性を有する脂肪族ポリエステル系、及び樹脂等が挙げられる。
【0037】
カバーフィルムの形状としては、少なくとも基材に設けられた種子収納部の開口部を覆うに足りるだけの面積を有していれば良いが、特にその形状は限定されるものではない。例えば、種子収納部が凹部である場合には、図1(a)−1に示すように、凹部の開口部の面積よりも少し大きな面積を有するカバーフィルムを用いても良いし、図1(a)−2に示すように、基材の全面を覆うカバーフィルムを用いても良い。また、図1(a)−3に示すように、凹部を2段形状にし、カバーフィルムを基材が面一になるようにしてもよい。
【0038】
また、種子収納部が孔部の場合には、図1(b)−1に示すように、孔部の開口部の面積よりも少し大きな面積を有するカバーフィルムを2枚用いても良いし、図1(b)−2及び(b)−3に示すように、いずれか片方は孔部の面積よりも少し広い面積を有するカバーフィルムを、もう片方は基材の全面を覆う面積のカバーフィルムを用いても良い。さらにまた、図1(b)−4に示すように、両面とも、基材の全面を追う面積のカバーフィルムを用いても良い。また、図1(b)−5に示すように、表裏に凹部を形成した後凹部内に貫通孔を設け、凹部部分にカバーフィルムを配置することで基材が面一になるようにしてもよい。本発明におけるカバーフィルムの形状は上述した形状に限定されるものではなく、適宜設計可能である。
【0039】
カバーフィルムには、基材の種子収納部を封止するため、少なくとも種子収納部の周辺部と重なる部分に接着層8を設けておく必要が有る。接着層は、種子及び高分子吸収体を収納するため、土中に埋められる前の通常時には、基材からはがれないだけの接着力を有していることが求められる。接着層の材料としては、でんぷん系、ゴム系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系等が挙げられる。接着剤の材料として、特に限定しないが、環境問題的視点から特に生分解性樹脂や紙は土中に埋めた際に徐々に分解されるので好ましい。
【0040】
カバーフィルムの貼り合わせについて、図2を用いて説明する。なお、図2にはカバーフィルムが、種子収納部の開口部の面積より少し広い面積を有している場合についてのみ示しているが、これはカバーフィルムが基材の全面に設けられている場合であっても、その他いずれの形状で設けられている場合であっても同様である。
【0041】
まず、種子収納部が凹部である場合について、図2(a)に実施形態例をいくつか示した。凹部に収納した種子シート、高分子吸収体、肥料等を基材の片面からカバーフィルムで封止する場合、例えば図2(a)−1に示したように、凹部の周辺に対応する部分に接着層を設けたカバーフィルムを用いる事が出来る。この場合、凹部に種子シート、高分子吸収体、肥料等を収納した後に、位置を合わせて基材にカバーフィルムを貼り合わせると良い。
【0042】
また、図2(a)−2に示したように、接着層はカバーフィルムの全面に設けても良い。この場合、図に示したように、カバーフィルムを基材に貼り合わせる際に、事前に凹部に対応する部分の接着層に種子シート、高分子吸収体、肥料等を仮固定しておき、これを基材に貼り付けるようにしても良い。このようにすることで、凹部に種子シートを配置する手間を省くことができ、生産効率を向上させることが可能であり、また貼り合わせの際に高分子吸収体、肥料等を散布させないという効果も有する。
【0043】
次に種子収納部が孔部である場合について、図2(b)に実施形態例をいくつか示した。孔部に収納した種子シートを基材の両面からカバーフィルムで封止する場合、例えば、図2(b)−1に示したように、両面とも孔部の周辺に対応する部分に接着層を設けたカバーフィルムを用いる事が出来る。この場合、基材の片面に先にカバーフィルムを貼り合わせて孔部の片側を封止し、孔部に種子シート、高分子吸収体、肥料等を収納した後に基材のもう一方の面にカバーフィルムを貼り合わせることにより封止可能である。
【0044】
また、図2(b)−2に示したように、片側のカバーフィルムには、孔部の周辺に対応する部分に接着層を設け、もう一方のカバーフィルムには全面に接着層を設けておくことも出来る。この場合にも、図2(a)−2と同様、全面に接着層を設けたカバーフィルムの孔部に対応する部分に、事前に種子シート、高分子吸収体、肥料等を仮固定しておき、これを基材に貼り合わせるようにしても良い。
【0045】
若しくは、先に全面に接着層を設けたカバーフィルムを基材に貼り合わせ、基材の反対側から接着層上に種子シート、高分子吸収体、肥料等を仮固定した後に、基材のもう一方の面にカバーフィルムを貼り合せても良い。こうすることで、製造工程中に高分子吸収体、肥料等が飛散することを防止することが可能となる。また、この際、高分子吸収体、肥料等を接着層上に敷き詰めて仮固定することで高分子吸収体、肥料等の層を形成し、この層上に種子シートを配置しても良い。
【0046】
さらにまた、図2(b)−4に示したように、両面のカバーフィルムの全面に接着層を設けておくことも出来る。この場合、両面のカバーフィルムの孔部に対応する部分に、事前に種子シート、高分子吸収体、肥料等を仮固定しておき、これを基材に貼り合わせるようにしても良い。また、片方のカバーフィルムには種子シートを、もう一方のカバーフィルムには高分子吸収体を仮固定するようにすれば、製造工程が整理されて良い。
【0047】
またこれまで接着剤を用いてカバーフィルムを貼り合わせる方法について説明したが、カバーフィルムが熱融着性を有する材料からなれば、加熱ヘッド等を用いて基材と融着させてもよい。
【0048】
図3には、本発明における種子収納媒体の使用形態例を示す。本発明における種子収納媒体は、図3に示すように、カード形状で形成された媒体から特定の部分を切り取って使用するSIMカード、ミニICカード、ミニ磁気カード等に有効に使用できる。
【0049】
基材を切り取るためには、基材に切取可能な切取部を設けておく必要が有る。切取部は、片面若しくは両面からのハーフカット加工する、破線状等に一部を抜き打ち加工する等して得られる。
【0050】
図3(a)は種子収納媒体をSIMカードに使用した例である。SIMカードは、接触式のICモジュール10を有し、全体としては通常の接触式ICカードと同じ形状をしている。この接触式のICモジュールの周囲に切取部を設けておくことで、携帯電話、パソコンのUSBアダプタ等に差し込み可能な形状のSIMカードを得ることが可能となる。そして、このSIMカードとして切り取られる部分以外の部分に、種子収納部を設け、種子を収納された種子シートを配置し、種子収納媒体となる。
【0051】
図3(b)は種子収納媒体をミニICカードに使用した例である。図に示したミニICカードは、非接触式のICチップ11と通信用のアンテナ12を備え、全体としては通常の非接触式ICカードと同じ形状をしているが、非接触式のICチップの代わりに接触式のICモジュールを備えていても構わない。このICチップ及びアンテナを含む部分の周囲に切取部を設けておくことで、様々な形状を有するミニICカードを得ることが可能である。図においては、ミニICカードの形状は、長方形であるが、特にこれに限定されるものではない。そして、このミニICカードとして切り取られる部分以外の部分に、種子収納部を設け、種子を収納された種子シートを配置し、種子収納媒体となる。
【0052】
図3(c)は種子収納媒体をミニ磁気カードに使用した例である。ミニ磁気カードは、磁気記録部13を有し、全体としては通常の磁気カードと同じ形状をしている。この磁気記録部を、外部の磁気読取装置との通信が可能な面積を少なくとも有するように、少なくとも一部含む形状に切取部を設けておくことで、ミニ磁気カードを得ることが可能である。また、ミニ磁気カードについても、その形状は図示したものに限定されない。そして、このミニ磁気カードとして切り取られる部分以外の部分に、種子収納部を設け、種子を収納された種子シートを配置し、種子収納媒体となる。
【0053】
つまり、SIMカード、ミニICカード、ミニ磁気カード等は、従来の生産ラインを使用する為に、製造時には通常のカードの一部を切り取って使用し、残りの部分は廃棄されるため、エコロジーの観点から問題になっていた。この従来は廃棄される部分に、種子収納部を設けて種子を収納された種子シートを配置することにより、有効活用が可能となるのである。
【実施例】
【0054】
<実施例1>
基材として、厚さ0.75〜0.81mmのバルカナイズドファイバー(東洋ファイバー(株)製)を用い、基材の一部に接触型ICモジュールと、SIMカード形状に切取可能な切取部を設けた。そして、SIMカードに切取られる以外の部分に、直系10mm、深さ0.7mmの凹部を設け、粒径が約0.2〜0.8mm程度のマジッククリスタル(松野工業(株)製)(高分子吸収体を収納した量は種子と大体同量)を敷き詰めるように配置し、凹部内の高分子吸収体上に、スウィートバジル(米粒状、長径約1mm、短径約0.5mm)の種子が3粒固定された種子シートを配置した。種子シートを収納した凹部を接着層としてでんぷん糊を設けた厚さ0.065mmの水溶紙30MDP(日本製紙パピリア(株)製)で封止し種子収納媒体を得た。
種子が固定された種子シートは以下のようにして用意した。厚み0.1mmの再生紙上にでんぷん糊を設けディスペンサーにより種子を間隔約1mmあけて固定し、種子3粒含む直径約5mmに切り取ることにより種子シートを得た。なお、種子の種子シートへの充填時において、充填不良はなかった。得られた種子シートは、充填装置を用いにより凹部に配置した。
このようにして種子収納媒体を3つ作成し実施例1のサンプルとした。
【0055】
<実施例2>
基材として、厚さ0.75〜0.81mmのバルカナイズドファイバー(東洋ファイバー(株)製)を用い、基材の一部に接触型ICモジュールと、SIMカード形状に切取可能な切取部を設けた。そして、SIMカードに切取られる以外の部分に、直系10mmの孔部を設け、一方の孔部の開口部を接着層としてでんぷん糊を設けた厚さ0.065mmの水溶紙30MDP(日本製紙パピリア(株)製)を貼り合わせることにより蓋をした。なお、この水溶紙の接着層には、粒径が約0.2〜0.8mm程度のマジッククリスタル(松野工業(株)製)(高分子吸収体を収納した量は種子と大体同量)と肥料(窒素・リン系)を敷き詰めておいた。この孔部の水溶紙上にスウィートバジル(米粒状、長径約1mm、短径約0.5mm)の種子が3粒固定された種子シートを配置した。そして種子シートを収納した孔部のもう一方の開口部を接着層としてでんぷん糊を設けた厚さ0.065mmの水溶紙30MDP(日本製紙パピリア(株)製)で封止し種子収納媒体を得た。
なお、種子が充填された種子シートは実施例1と同様の方法で用意した。
このようにして種子収納媒体を3つ作成し実施例2のサンプルとした。
【0056】
<比較例1>
種子シートを用いず、直接基材に設けた凹部にディスペンサーを用いて種子を充填し、凹部を接着層としてでんぷん糊を設けた厚さ0.065mmの水溶紙30MDP(日本製紙パピリア(株)製)で封止した以外は実施例1と同様に行った。
種子収納媒体を3つ作成し比較例1のサンプルとした。
【0057】
<比較例2>
種子シートを用いず、基材に設けた孔部を設け、一方の孔部の開口部を接着層としてでんぷん糊を設けた厚さ0.065mmの水溶紙30MDP(日本製紙パピリア(株)製)を貼り合わせることにより蓋をし、この孔部にディスペンサーを用いて種子を充填し、孔部を接着層としてでんぷん糊を設けた厚さ0.065mmの水溶紙30MDP(日本製紙パピリア(株)製)で封止した以外は実施例2と同様に行った。なお、種子充填時には表面が硬質のメラミン樹脂製からなる実験台上で行った。
種子収納媒体を3つ作成し比較例2のサンプルとした。
【0058】
<評価>
実施例、比較例のサンプルをそれぞれ20ずつ用意し種子充填不良を評価した。
実施例1、2では全てのサンプルにおいて充填不良がなかったものの、比較例1では充填した3つの種子のうち2つ充填不良となったサンプルが1つ、1つ充填不良となったサンプルが1つ発生し、比較例2では種子が1つ充填不良となったサンプルが1つ発生した。
【符号の説明】
【0059】
1・・・・種子収納媒体
2・・・・基材
3・・・・凹部
4・・・・孔部
5・・・・種子
6・・・・種子シート
7・・・・カバーフィルム
8・・・・接着層
9・・・・切取部
10・・・接触ICモジュール
11・・・ICチップ
12・・・アンテナ
13・・・磁気記録部
14・・・高分子吸収体
15・・・発芽促進剤
16・・・肥料
17・・・ディスペンサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも種子収納部を設けた基材と、
該種子収納部を覆うカバーフィルムと、を具備する種子収納媒体であって、
該種子収納部に、種子が固定された種子シートが配置されていることを特徴とする種子収納媒体。
【請求項2】
前記種子シートに高分子吸収体が収納されていることを特徴とする請求項1記載の趣旨収納媒体。
【請求項3】
前記種子収納部が、凹部又は孔部であることを特徴とする請求項1または2に記載の種子収納媒体。
【請求項4】
前記カバーフィルムに前記種子シートが接着されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の種子収納媒体。
【請求項5】
前記種子シートは、水溶性又は生分解性であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の種子収納媒体。
【請求項6】
前記カバーフィルムは、水溶性又は生分解性であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の種子収納媒体。
【請求項7】
前記カバーフィルムと前記基材とは、生分解性の接着剤で貼り合わせられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の種子収納媒体。
【請求項8】
前記基材には、少なくとも前記種子収納部を含む形状に該基材を切り取り可能な切取部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の種子収納媒体。
【請求項9】
前記基材には、ICチップ若しくは磁気記録層からなる情報記録部が設けられており、
前記切取部は、少なくとも前記種子収納部を含む部分と、少なくとも該情報記録部の一部を含む部分とに基材を分断可能であることを特徴とする請求項8に記載の種子収納媒体。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−90566(P2012−90566A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240614(P2010−240614)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】