説明

稼働状況判別装置、稼働状況判別プログラム、稼働状況判別方法、波形パターン学習装置、波形パターン学習プログラム、及び波形パターン学習方法

【課題】電気機器に印加される電圧波形が変化しても高い精度で電気機器の稼働状況を判別できる稼働状況判別装置等を提供する。
【解決手段】稼働状況判別装置は、電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流の波形データと、該波形データが発生するときの電気機器の稼働状況を示す稼働状況情報と、前記電気機器に印加される交流電圧の1交流電圧周期中の予め設定された波形データ比較対象区間を特定する区間特定情報と、を関連付けた学習データを取得する。そして、稼働状況判別装置は、取得した学習データに関連づけられた高調波電流の波形データと高調波電流計測部410で計測した高調波電流の波形データとを波形データ比較対象区間において照合した結果を基に、電気機器の稼働状況を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稼働状況判別装置、稼働状況判別プログラム、稼働状況判別方法、波形パターン学習装置、波形パターン学習プログラム、及び波形パターン学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー意識の高まりに伴い、住宅内で稼働する電気機器の稼働状況を詳細に分析する装置が求められている。特許文献1には、電気機器に流れる電流に含まれる高調波電流等の計測データと電気機器の特徴を示す学習データとを照合することによって、電気機器の稼働状況を判別する電気機器モニタリングシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−292465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気機器に印加される交流電圧の電圧波形は、外部環境の影響を受け変化する。電圧波形が変化すると高調波電流の波形パターンも変化する。しかし、特許文献1のシステムは電圧波形の変化に伴う高調波電流の波形パターンの変化を全く考慮していないため、電圧波形の変化が大きくなると、波形パターンと学習データが一致しなくなり、誤った判別をするという問題がある。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、電気機器に印加される電圧波形が変化しても高い精度で電気機器の稼働状況を判別できる稼働状況判別装置、稼働状況判別プログラム、及び稼働状況判別方法を提供すること、並びに、電圧波形に変化がある状況での稼働状況判別にも使用可能な学習データを生成できる波形パターン学習装置、波形パターン学習プログラム、及び波形パターン学習方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る稼働状況判別装置は、
電気機器に電源を供給する電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流を計測する高調波電流計測手段と、
前記電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流の波形データと、該波形データが発生するときの電気機器の稼働状況を示す稼働状況情報と、前記電気機器に印加される交流電圧の1交流電圧周期中の予め設定された波形データ比較対象区間を特定する区間特定情報と、を関連付けた学習データを予め記憶する学習データ記憶手段と、
前記学習データに含まれる区間特定情報に基づいて、前記高調波電流計測手段により計測された高調波電流の波形データのうち前記区間特定情報により特定される波形データ比較対象区間に相当する高調波電流の波形データを特定し、特定した高調波電流の波形データと前記学習データに含まれている高調波電流の波形データのうち前記波形データ比較対象区間に相当する高調波電流の波形データとを照合する波形データ比較対象区間照合手段と、
前記波形データ比較対象区間照合手段の照合結果と前記学習データに含まれている可動状況情報とを基に、電気機器の稼働状況を判別する稼働状況判別手段と、を備える、
ことを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る波形パターン学習装置は、
電気機器に電源を供給する電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流を計測する高調波電流計測手段と、
電気機器に印加される交流電圧の波形変化に起因して、前記電気機器に印加される交流電圧の1交流電圧周期中、高調波電流の波形パターンが周期毎に変化する程度が所定の基準より低い区間から選択された所定の基準区間を判別する基準区間判別手段と、
前記電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流の波形データと、該波形データを取得した際の電気機器の稼働状況を示す稼働状況情報と、前記基準区間判別手段で判別した基準区間を特定する区間特定情報と、を関連付けた学習データを生成する学習データ生成手段と、を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
電気機器に印加される電圧波形が変化しても高い精度で電気機器の稼働状況を判別できる稼働状況判別装置、稼働状況判別プログラム、及び稼働状況判別方法を提供すること、並びに、電圧波形に変化がある状況での稼働状況判別にも使用可能な学習データを生成できる波形パターン学習装置、波形パターン学習プログラム、及び波形パターン学習方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る稼働検知システムの設置状態を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態に係る稼働検知システムのブロック図である。
【図3】図2の教師データ入力部で生成される教師データを説明するための図である。
【図4】図2の波形データベースに格納される波形情報を説明するための図である。
【図5】波形情報に格納される波形データを説明するための図であり、(A)は交流電圧の波形データを説明するための図、(B)は高調波電流の波形データを説明するための図である。
【図6】図2の学習データベースに格納される学習データを説明するための図である。
【図7】波形パターン学習処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】「波形パターン変化区間」と「波形パターン同一区間」を説明するための図である。
【図9】波形パターン変化区間判別処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】想定正弦波を説明するための図である。
【図11】波形パターン変化区間を判別する様子を説明するための図である。
【図12】稼働状況判別処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】波形パターン変化区間における波形パターン変化種別を判別する様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
本発明の実施形態に係る稼働検知システム100は、住宅内で稼働している電気機器の稼働状況を判別するためのシステムである。
【0012】
なお、以下の説明では、理解を容易にするため、図1に示すように、1本の電力供給線510から分岐した配線511〜513に、それぞれ、稼働状況判別対象となる3台の電気機器(図1に示す電気機器521〜523)が接続されているものとする。また、稼働検知システム100は電力供給線510に接続されており、電力供給線510に流れる高調波電流に基づいて3台の電気機器521〜523の稼働状況(例えば、電気機器521〜523がそれぞれ「動作中」か「停止中」か)を判別するものとする。ここで、高調波電流とは、電気機器に流れる電流のうち基本波を除いた電流成分(例えば、基本波より高い周波数の電流成分)のことをいう。
【0013】
稼働検知システム100は、図2に示すように、波形パターン学習装置200と、学習データベース300と、稼働状況判別装置400とから構成される。
【0014】
波形パターン学習装置200は、電気機器521〜523に流れる高調波電流の波形パターンと電気機器521〜523の稼働状況との関係を学習するための装置である。波形パターン学習装置200は、図2に示すように、高調波電流計測部210と、電圧計測部220と、教師データ入力部230と、学習処理部240と、波形データベース250とから構成される。
【0015】
高調波電流計測部210は、負荷抵抗、バンドパスフィルタ、アナログプロセッサ等から構成される。高調波電流計測部210は電力供給線510に設置されたクランプ式の電流センサ211と接続されている。電流センサ211は、磁気コアにコイルを巻いた変流器構造をしており、例えば、電力供給線510に流れる電流を1対3000程度の変流比で変流して2次電流を生成する。高調波電流計測部210は電流センサ211から出力される2次電流を基に、電力供給線510に流れる高調波電流を計測する。一例として、高調波電流計測部210は次のように高調波電流を計測する。
【0016】
高調波電流計測部210は、電流センサ211から出力された2次電流を10Ωから1KΩの負荷抵抗に流し、その両端電圧を計測することによって電流の変動を電圧の変動に変換する。高調波電流計測部210は変換した電圧にバンドパスフィルタ(例えば、100Hz〜100KHzの周波数帯を通過させる高次のフィルタ)を適用して、変換した電圧から高調波以外の通常の電流成分(商用周波数成分)を取り除く。その後、高調波電流計測部210はアナログプロセッサ等を使って電流波形1周期分の100周期分の加算平均を算出する。以上により、計測電流から高調波電流のみが取り出される。
【0017】
高調波電流計測部210は、取り出された高調波電流を100KHz程度のサンプリングレートでデジタルデータに変換し、交流電圧の1周期(例えば、交流電圧が負から正の電圧に変化するゼロクロス点から、次に負から正の電圧に変化するゼロクロス点までの区間。商用周波数50Hzエリアでは約20ms、60Hzエリアでは約17ms。以下、単に「交流電圧周期」という。)を1単位として学習処理部240に送信する。なお、高調波電流計測部210は、波形パターン学習装置200に電源が投入された後、逐次、高調波電流を計測し、学習処理部240に送信する。
【0018】
電圧計測部220は、ローパスフィルタ、アナログプロセッサ等から構成される。電圧計測部220は電力供給線510に設置された電圧センサ221と接続され、電力供給線510に印加される交流電圧を計測する。電圧計測部220は、例えば、20KHz〜100KHz程度の低いレートで計測電圧をサンプリングし、1交流電圧周期分の計測データを1単位として学習処理部240に送信する。なお、電圧計測部220は、波形パターン学習装置200に電源が投入された後、逐次、電圧を計測し、学習処理部240に送信する。
【0019】
教師データ入力部230は、キーボードやマウス等の入出力インタフェースから構成される。教師データ入力部230は電気機器の現在の稼働状況を、教師データとして、波形パターン学習装置200に送信する。ここで「教師データ」とは、電気機器の現在の稼働状況を示すデータであり、例えば、3台の電気機器521〜523が現在動作中か停止中かを示すデータである。例えば、波形パターン学習装置200の不図示のメモリに、電気機器521〜523の動作中・稼動中の組み合わせを記した例えば図3に示すようなリストが保存されている。現在の電気機器の稼動状況が「電気機器521“動作中”、電気機器522“停止中”、電気機器513“動作中”」なのであれば、現在の稼働状況は図3のリストの上から3行目の組み合わせ(番号“3”の組み合わせ)に該当するので、教師データ入力部230には該当番号の“3”が入力される。教師データは、例えば、稼働検知システム100設置後、システム設置者等によって入力される。
【0020】
学習処理部240は、プロセッサ等の処理装置から構成される。学習処理部240はワークメモリ(不図示)に格納されているプログラムに従って動作し、後述の「波形パターン学習処理」を含む種々の動作を実行する。また、学習処理部240は、高調波電流計測部210および電圧計測部220より送信された波形データを、逐次、波形データベース250に格納する。
【0021】
波形データベース250は、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置から構成される。波形データベース250には、電源投入直後から、学習処理部240によって「波形情報」が逐次格納される。ここで「波形情報」とは、例えば図4に示すように、「交流電圧の波形データ」と「高調波電流の波形データ」とを関連付けた情報のことである。
【0022】
「交流電圧の波形データ」は、高調波電流計測部210で計測された例えば図5(A)に示すような1交流電圧周期分の電圧波形のデータである。例えば、商用周波数が50Hzエリア(1交流電圧周期が約20msの区間)で20KHzのレート(1サンプル0.005ms)でサンプリングしたのであれば、波形データは、0番〜399番の400サンプルデータで構成される400次元ベクトルデータである。
【0023】
「高調波電流の波形データ」は、高調波電流計測部210で計測される例えば図5(B)に示すような1交流電圧周期分の高調波電流波形のデータであって、上記交流電圧の波形データと同じタイミングでの波形データである。例えば、高調波電流計測部210において、商用周波数が50Hzエリアで100KHzのレート(1サンプル0.001ms)で高調波電流をサンプリングしたのであれば、波形データは0番〜1999番の2000サンプルデータで構成される2000次元ベクトルデータである。
【0024】
学習データベース300は、ハードディスク等の不揮発性の記憶装置から構成される。学習データベース300には、図6に示すように、学習処理部240で生成される複数の「学習データ」が格納されている。「学習データ」は、図6に示すように、「高調波電流波形情報」と「稼働状況情報」とを関連付けた情報である。
【0025】
「高調波電流波形情報」は、電気機器に流れる電流に含まれる1交流電圧周期分の高調波電流の波形データである。より具体的には、商用周波数が50Hzのエリアで100KHzのレートでサンプリングしたのであれば、高調波電流の波形データは2000サンプルデータで構成される2000次元ベクトルデータである。
【0026】
「稼働状況情報」は、高調波電流波形情報を取得した際の電気機器521〜523の稼働状況を示す情報である。具体的には、稼働状況情報は、教師データ入力部230から入力された教師データ(図3に示す組み合わせのデータの1つを示す数値)である。
【0027】
図2に戻り、稼働状況判別装置400は、電気機器521〜523に流れる高調波電流の波形パターンから電気機器521〜523の稼働状況を判別するための装置である。稼働状況判別装置400は、高調波電流計測部410と、稼働状況判別処理部420と、入出力部430とから構成される。
【0028】
高調波電流計測部410は、負荷抵抗、バンドパスフィルタ、アナログプロセッサ等から構成される。高調波電流計測部410は電力供給線510に設置されたクランプ式の電流センサ411と接続されている。高調波電流計測部410は、例えば、高調波電流計測部210と同様の手法で取り出した高調波電流を所定のサンプリングレートでデジタルデータに変換し、1交流電圧周期を1単位として稼働状況判別処理部420に送信する。高調波電流計測部410のその他の構成は高調波電流計測部210と同一である。
【0029】
稼働状況判別処理部420は、プロセッサ等の処理装置から構成される。稼働状況判別処理部420はワークメモリ(不図示)に格納されているプログラムに従って動作し、後述の「稼働状況判別処理」を実行して電気機器521〜523の現在の稼働状況を判別する等、種々の動作を実行する。
【0030】
入出力部430は、キーボートやディスプレイ等の入出力インタフェースから構成される。入出力部430はユーザからの指示を稼働状況判別処理部420に送信する。また、入出力部430は稼働状況判別処理部420の処理結果をディスプレイ等に表示する。
【0031】
次に、このような構成を有する稼働検知システム100の動作について説明する。
稼働検知システム100の動作は、波形パターン学習装置200の波形パターン学習動作と、稼働状況判別装置400の稼働状況判別動作と、に分けられる。
波形パターン学習動作は、電気機器521〜523の稼働状況の組み合わせと、その組み合わせに応じて発生する特徴的な電流波形パターンを学習する動作である。一方、稼働状況判別動作は、学習した電流波形パターンを用いて、電気機器521〜523の現在の稼働状況を判別する動作である。
最初に、波形パターン学習装置200の波形パターン学習動作について説明する。
【0032】
まず、波形パターン学習装置200の電源が投入されると、電圧計測部220は電力供給線510の印加電圧(電源電圧)を測定し、1周期単位でサンプリングデータ(本実施形態では、2000サンプル)を波形データベース250に順次格納する。一方、高調波電流計測部410は、電力供給線510を流れる電流の高調波成分を測定し、1周期単位でサンプリングデータ(2000サンプル)を、印加電圧の波形のサンプリングデータに対応付けて、波形データベース250に格納する。
ユーザは、任意のタイミングで、教師データ入力部230から、電気機器521〜523のその時点でのオン・オフの状況を示す教師データを入力する。この教師データは、図3に示すように、例えば、1〜6の何れかである。
波形パターン学習装置200は、教師データ入力部230から教師データを受信すると、「波形パターン学習処理」を開始する。以下、図7のフローチャートを参照して波形パターン学習処理について説明する。
【0033】
学習処理部240は、直近の高調波電流の波形データ(例えば、2000次元ベクトルデータ)を波形データベース250から取得し、そのまま「高調波電流波形情報」として不図示のワークメモリに保存する(ステップS110)。
【0034】
学習処理部240は、教師データ入力部230から送信された教師データ(例えば、“3”といった数値情報)を取得し、そのまま「稼働状況情報」として不図示のワークメモリに保存する(ステップS120)。
【0035】
次に、学習処理部240は、ステップS130の「波形パターン変化区間判別処理」を開始する。波形パターン変化区間判別処理は、電圧波形が大きく異なる複数周期の高調波電流波形を比較することによって、例えば図8に示すように、「波形パターン変化区間」と「波形パターン同一区間」とを判別するための処理である。ここで、波形パターン変化区間とは、1交流電圧周期中、電力供給線510に印加されている電源電圧の波形の変化(変動:例えば、電圧の変動、歪み、ノイズ)に伴って高調波電流の波形パターンが変化する区間であり、波形パターン同一区間とは、1交流電圧周期中の波形パターン変化区間以外の区間である。より具体的には、波形パターン変化区間は、電源電圧の波形の正弦波形状の変化に伴って、高調波電流の波形パターン(例えば、電流値の平均・分散等の波形の特徴や、隠れマルコフモデル等のパターン認識手法により抽出される波形の特徴)が他の周期の波形パターン(例えば、理想的な正弦波の電圧波形時における高調波電流の波形パターン)と比べ相違する区間である。なお、本実施形態では、電圧波形が大きく異なる3つの周期の高調波電流波形を比較する。これは、より多くの高調波電流波形を比較することによって、波形パターン変化区間の判別漏れを少なくすることを目的としたものである。
【0036】
以下、図9のフローチャートを参照して、「波形パターン変化区間判別処理」について説明する。
【0037】
学習処理部240は、波形データベース250に格納されている直近の電圧波形データを基に電圧波形特徴量CHを算出する(ステップS131)。電圧波形特徴量CHは電流波形に与える電圧波形の影響度合いを定量化したものであり、交流電圧の大小度V、歪み度D、および、ノイズ度Nを基に算出される値である。大小度V、歪み度D、ノイズ度Nは、例えば、以下のように算出される。
【0038】
大小度Vは、交流電圧の交流波形の大きさを定量化したものであり、例えば、1交流電圧周期分の電圧波形の面積や実効値のことである。大小度Vを算出する方法は1手法に限定されないが、電圧の波形データが400サンプルのデータで構成されるのであれば、例えば、(1)400サンプルのデータそれぞれを2乗し、(2)2乗したデータ全てを加算し、(3)加算したデータをサンプル数(400)で割ることによって算出される。
【0039】
歪み度Dは、交流波形の歪みを定量化したものであり、例えば、1交流電圧周期分の電圧波形と想定正弦波との相違(例えば、図10の拡大図に示すような電圧波形の相違)を定量化したものである。ここで想定正弦波とは、計測した電圧波形から想定される、ノイズを含まない理想的な電圧波形である。より具体的には、計測した電圧波形の大小度と一致する大小度を有する理想的な位相、周期、振幅の正弦波のことをいう。歪み度Dを算出する方法は1手法に限定されないが、電圧の波形データが400サンプルのデータで構成されるのであれば、例えば、(1)計測電圧の大小度Vを算出し、(2)その算出した大小度と一致する大小度を有する想定正弦波を算出し、(3)400サンプルのデータそれぞれについて想定正弦波との電圧差を算出し、(4)算出したデータ全てを加算し、(5)加算したデータをサンプル数(400)で割ることによって算出される。
【0040】
ノイズ度Nは、電圧波形に重担される高周波ノイズの量を定量化したものである。電圧波形と想定正弦波との違いを定量化したものである。ノイズ度Nを算出する方法は1手法に限定されないが、電圧の波形データが400サンプルのデータで構成されるのであれば、例えば、(1)計測電圧の大小度Vを算出し、(2)算出した大小度と一致する大小度を有する想定正弦波を算出し、(3)400サンプルのデータと想定正弦波との差の2乗平均を求めることによって算出される。
【0041】
学習処理部240は、例えば、大小度V、歪み度D、ノイズ度Nを、下記(式1)に示すように、それぞれ所定の重み(W〜W)を付けて加算することによって電圧波形特徴量CHを算出する。学習処理部240は算出した電圧波形特徴量CHを「第1の電圧波形特徴量」として不図示のワークメモリに保存する。
【0042】
CH = WV + WD + WN ・・・・・・・・・(式1)
【0043】
次に、学習処理部240は、波形データベース250から、波形パターン学習処理開始後(つまり教師データ入力後)に格納された波形データであって、前述のステップS131や本ステップS132でまだ電圧波形特徴量CHを算出していない波形データを1つ選択し、ステップS131と同様の手法で電圧波形特徴量を算出する。学習処理部240は算出した電圧波形特徴量CHを「第2の電圧波形特徴量」としてワークメモリに保存する(ステップS132)。
【0044】
学習処理部240は、第1の電圧波形特徴量と第2の電圧波形特徴量との相違が、所定の閾値以上(例えば5%以上)であるか否か判別する(ステップS133)。相違が所定の閾値未満の場合(ステップS133:No)、2つの電圧波形はそれほど大きく異なっていないので、再び、ステップS132に戻って波形データベース250から別の波形データを1つ選択する。相違が所定の閾値以上の場合(ステップS133:No)、2つの電圧波形は大きく異なっているので、ステップS134に進む。
【0045】
学習処理部240は、波形データベース250から、2つの電圧波形に対応する第1の高調波電流と第2の高調波電流の波形データをそれぞれ取得する。そして、例えば図11に示す(a)のように、それら2つの波形データの波形パターンの違いが大きな区間を、第1の波形パターン変化区間候補としてワークメモリに保存する。
【0046】
例えば、第1の高調波電流と第2の高調波電流の波形データがそれぞれ2000サンプルデータで構成されるデータ列なのであれば、それらデータ列をそれぞれ所定数の区間に等分し、所定長のデータ列に分割する。例えば、2つのデータ列それぞれを20区間に等分し、1区間100サンプルデータで構成される20個×2のデータ列に分割する。そして第1の高調波電流と第2の高調波電流の対応する区間のデータ列それぞれについて相関係数を算出する。そして、相関係数が基準レベル(例えば0.8)以下の区間を第1の波形パターン変化区間候補としてワークメモリに保存する。
あるいは、例えば、第1の高調波電流と第2の高調波電流の波形データの1周期2000サンプルデータのうちのi番目のデータをI1iとI2iとしたときに、I1iとI2iとの差の絶対値|I1i−I2i|が閾値Ith以上であり、且つ、その状態が所定サンプル数以上連続する領域を第1の波形パターン変化区間候補としてワークメモリに保存する(ステップS134)。
【0047】
次に、学習処理部240は、波形パターン変化区間の判別漏れ区間を少なくするため、ステップS135〜ステップS137を実行して、さらに2の波形パターン変化区間候補の判別を開始する。
【0048】
学習処理部240は、波形データベース250から、波形パターン学習処理開始後(教師データ入力後)に格納された波形データであって、前述のステップS131、S132、および、本ステップS135でまだ電圧波形特徴量を算出していない波形データを1つ選択し、ステップS131と同様の手法で電圧波形特徴量を算出する。学習処理部240は算出した電圧波形特徴量を第3の電圧波形特徴量としてワークメモリに保存する(ステップS135)。
【0049】
学習処理部240は、第3の電圧波形特徴量が、第1の電圧波形特徴量と所定の閾値以上(例えば5%以上)異なっていて、かつ、第2の電圧波形特徴量と第1の電圧波形特徴量を間に挟んで所定の閾値以上(例えば10%以上)異なっているか否か判別する(ステップS136)。相違が所定の閾値未満の場合(ステップS136:No)、電圧波形はそれほど大きく異なっていないので、学習処理部240はステップS135に戻って波形データベース250から別の波形データを1つ選択する。相違が所定の閾値以上の場合(ステップS136:Yes)、電圧波形は大きく異なっているので、ステップS137に進む。
【0050】
学習処理部240は、第1の電圧波形特徴量と第3の電圧波形特徴量に対応する「第1の高調波電流」と「第3の高調波電流」の波形データを波形データベース250から取得する。そして、それら2つの波形データの電流値の差が大きな区間を、例えば図11に示す(b)ように、第2の波形パターン変化区間候補としてワークメモリに保存する(ステップS137)。
【0051】
学習処理部240は、例えば、図11に示す(c)のように、第1の波形パターン変化区間候補と第2の波形パターン変化区間候補の和集合を波形パターン変化区間として、その他の区間を波形パターン同一区間として判別する。ここで、「波形パターン変化区間」は、電源電圧の波形の変動(変動の原因は問わない)によって、電力供給線510を流れる電流の高調波成分の波形パターンが変動する(ばらつく)期間であり、この期間の高周波電流の波形パターンにもとづいて何らかの判別を行うのに適さない時間領域である。一方、「波形パターン同一区間」は、電源電圧の波形の変動があっても、電力供給線510を流れる電流の高調波成分の波形パターンがあまり変動しない期間であり、この期間の高周波電流の波形パターンにもとづいて何らかの判別を行うのに適した時間領域である。このため、本実施形態では、電力供給線510を流れる電流の高調波の波形パターン(波形データ)と、教師データの波形パターン(波形データ)との波電流の波形データとの照合による動作状況の判別を、電源電圧の1周期中の、予め設定された波形データ比較対象区間として機能する「波形パターン同一区間」の波形に基づいて実行する。
そして、学習処理部240は、波形パターン変化区間、および、波形パターン同一区間の情報を「波形パターン変化区間情報」としてワークメモリに保存し(ステップS138)、波形パターン変化区間判別処理を終了する。
【0052】
波形パターン変化区間判別処理を終了したら、学習処理部240は、図7のフローに戻り、ステップS110で生成した「高調波電流波形情報」と、ステップS120で生成した「稼働状況情報」と、ステップS130で生成した「波形パターン変化区間情報」とを関連づけて「学習データ」を生成する(ステップS140)。
【0053】
学習処理部240は、生成した学習データを学習データベース300に格納し(ステップS150)、波形パターン学習処理を終了する。
【0054】
次に、稼働状況判別装置400の稼働状況判別動作について説明する。
稼働状況判別装置400は、入出力部430から処理開始命令が送信されると、電気機器521〜523の稼働状況を判別するための「稼働状況判別処理」を開始する。以下、図12のフローチャートを参照して稼働状況判別処理について説明する。
【0055】
稼働状況判別処理部420は、高調波電流計測部410から直近の高調波電流の波形データ(2000次元ベクトルデータ)を取得し、不図示のワークメモリに保存する(ステップS210)。
【0056】
稼働状況判別処理部420は、後述のステップS230でまだパターンマッチングを実行していない学習データを選択する。本ステップをまだ一度も実行していない場合は、任意の学習データを選択する(ステップS220)。
【0057】
稼働状況判別処理部420は、選択した学習データに含まれる「高調波電流波形情報」の波形データと、ステップS210で取得した波形データとの波形パターンと、が一致しているか否かパターンマッチングをおこなう。このとき、稼働状況判別処理部420は、電圧の変動の影響を受け難く、環境の変動にかかわらず高調波電流波形が安定している「波形パターン同一区間」のみの波形データでパターンマッチングを行う(ステップS230)。即ち、電力供給線510を流れる電流の高調波の波形パターン(波形データ)と、教師データの波形パターン(波形データ)との波電流の波形データとの照合を、電源電圧の1周期中の、予め設定された波形データ比較対象区間として機能する「波形パターン同一区間」でのみ実行する。
【0058】
パターンマッチングの手法は1つに限定されないが、例えば、稼働状況判別処理部420は2つのデータ列の相関を定量化する相関係数を使ってパターンマッチングを行う。より具体的には、高調波電流波形情報の波形データとステップS210で取得した波形データとがそれぞれ2000サンプルのデータで構成されるデータ列とすれば、稼働状況判別処理部420は、例えば、2000サンプルのデータから波形パターン変化区間のサンプルデータを取り除いた残りのデータ列を使って相関係数を算出する。
【0059】
2つのデータ列の相関が低い場合(例えば、相関係数が0.8未満の値である場合:ステップS240:No)、ステップ220に戻って、高い相関を示す学習データが見つかるまでステップS220〜S240の処理を繰り返す。
【0060】
2つのデータ列が高い相関を示す場合(例えば、相関係数が0.8以上の値である場合:ステップS240:Yes)、稼働状況判別処理部420は、選択した学習データに関連付けられた「稼働状況情報」を入出力部430に送信し(ステップS250)、稼働状況判別処理を終了する。
【0061】
本実施形態によれば、電圧波形の変化によって波形パターンが変化しやすい「波形パターン変化区間」を除いてパターンマッチングしているので、学習時と稼働検知時で電圧波形の変化があっても、精度の高い電気機器の稼働状況判別を実現できる。
【0062】
また、従来、電圧波形の変化は振幅の変化で判断されることが主であったが、電圧波形の電流波形に与える影響は、電圧の振幅より、電圧波形の大小度、歪み度、ノイズ度のほうが大きい。本実施形態においては、波形パターン学習時、電圧波形の変化を捉えるために、電圧波形の大小度、歪み度、ノイズ度を使用しているため、電圧波形の変化が電流波形に与える影響をより正確に捉えることができる。その結果、より正確に「波形パターン変化区間」を判別することができる。
【0063】
また、電圧波形特徴量が異なる高調波電流の波形パターンを比較しているので、より正確に「波形パターン変化区間」を判別することができる。
【0064】
また、電圧波形特徴量がそれぞれ所定閾値以上異なる3つの高調波電流を比較しているので、2つの高調波電流を比較して波形パターン変化区間を判別する場合と比べ、波形パターン変化区間の判別漏れ区間(電圧波形の影響を大きく受ける区間であるにもかかわらず、波形パターン同一区間と誤って判別されてしまう区間)の存在を少なくすることができる。
【0065】
なお、上述の実施形態では、波形パターン同一区間のみでパターンマッチングを実行したが、波形パターン変化区間の波形データも利用して、より精度の高いパターンマッチングを実現することも可能である。具体的には、以下のように処理を実行する。
【0066】
波形パターン学習装置200は、波形パターン変化区間判別処理(ステップS130)において、ステップS131で選択した「第1の高調波電流波形」と、ステップS132で選択した「第2の高調波電流波形」との波形パターン変化区間における相互相関を計算し、相関係数が0.8を超える強い相関を示す箇所がないか探索する。例えば、第1の高調波電流波形の波形パターン変化区間を4等分し、分割した区間1つ1つについて、時間軸方向に少しずつシフトさせながら第2の高調波電流と照合する。
【0067】
探索の結果、例えば、図13(A)に示すように、高い相関を示す部分が見つかった場合、波形パターン学習装置200は、波形パターン変化種別情報を「位相ずれ」として、ステップS150で生成した学習データに関連付ける。このとき、波形パターン学習装置200は双方の位相がどの程度ずれているかを示す情報(例えば時間情報。以下、「位相ずれ量情報」という)もあわせて格納する。一方、例えば、図13(B)に示すように、高い相関を示す部分が見つからなかった場合、波形パターン学習装置200は、波形パターン変化種別を「再現率低下」として学習データに関連付ける。
【0068】
稼働状況判別装置400は、学習データの波形パターン変化種別情報が「位相ずれ」となっている場合、ステップS230の処理(波形パターン同一区間におけるパターンマッチング)に加えて、波形パターン変化区間におけるパターンマッチングも実行する。具体的には、位相ずれ量情報に格納されている情報に基づいて位相ずれを補正した(例えば、位相ずれ量情報に格納されている時間分だけ波形をシフトさせた)高調波電流波形情報とステップS210で取得した高調波電流の波形データとでパターンマッチングを実行する。そして、稼働状況判別装置400は、波形パターン同一区間と波形パターン変化区間の両方の波形パターンが一致した場合を波形パターンの一致と判別する。一方、波形パターン変化種別情報が「再現率低下」となっている場合、稼働状況判別装置400は、波形パターン同一区間のみの情報でパターンマッチングを行う。
【0069】
以上のように、波形パターン変化区間の波形データも利用してパターンマッチングを実行することによって、稼働検知システム100は、より精度の高いパターンマッチングを実現できる(例えば、波形パターン変化区間が広くなって波形パターン同一区間が十分に確保されない場合であっても、波形パターン変化区間の波形データを利用することで、より精度の高いパターンマッチングを実現できる)。その結果、より精度の高い稼働状況の判別が可能になる。
【0070】
波形パターン同一区間、即ち、波形マッチング或いは照合に使用する領域を特定する手法は任意である。例えば、一周期のうちの「波形パターン変化区間」以外の区間の一部、例えば、所定の位置及び長さの区間としてもよい。連続していなく、断続する複数区間でもよい。また、波形パターン同一区間を特定する手法も、上記例に限定されない。例えば、波形を複数区間に分割、区間毎に複数周期分の波形を比較して、統計的手法により分散σが基準より大きい区間を波形パターン変化区間とし、分散σが基準より小さい区間(又はその一部)を波形パターン同一区間とする等してもよい。また、波形パターン同一区間(照合対象区間)を特定する情報は、その始点と終点を特定するものでも、それ以外の区間を特定することにより間接的に波形パターン同一区間を特定するものでもよい。
【0071】
また、学習データに格納する高調波電流波形情報は波形データそのものでなくてもよい。例えば、波形データをパターンマッチングしやすいようにパターン化した波形パターンデータであってもよい。なお、波形パターンデータのデータ形式は1つの形式に限定されない。一例として、以下に示す形式のデータであってもよい。
【0072】
まず、高調波電流の波形データ(以下、「原データ」という。)の移動平均を算出して第1の移動平均データを取得する。次に、原データと第1の移動平均データの差を計算し、第1の差分データを取得する。次に、第1の移動平均データの移動平均を計算し、第2の移動平均データを取得する。そして、第1の移動平均データと第2の移動平均データの差を計算し、第2の差分データを取得する。これを再度繰り返し、第3の差分データを取得する。以上で算出した第1の差分データ、第2の差分データ、第2の差分データを波形パターンデータとして取得する。
【0073】
以上のように、高調波電流波形情報を予めパターンマッチングしやすい形式のデータに変換しておくことによって、稼働状況判別装置400の処理速度を高めることができる。
【0074】
本実施形態の稼働検知システム100は、専用のシステムにより実現してもよいし、通常のコンピュータシステムにより実現してもよい。例えば、上述の動作を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、該プログラムをコンピュータにインストールして、上述の処理を実行することによって稼働検知システム100を構成してもよい。また、インターネット等のネットワーク上のサーバ装置が備えるディスク装置に格納しておき、例えばコンピュータにダウンロード等できるようにしてもよい。また、上述の機能を、OSとアプリケーションソフトとの共同により実現してもよい。この場合には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロード等してもよい。
【0075】
上記プログラムを記録する記録媒体としては、USBメモリ、フレキシブルディスク、CD、DVD、Blu−ray Disc(登録商標)、MO、SDカード、メモリースティック(登録商標)、その他、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、磁気テープ等のコンピュータ読取可能な記録媒体を使用することができる。
【0076】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0077】
100 稼働検知システム
200 波形パターン学習装置
210 高調波電流計測部
211 電流センサ
220 電圧計測部
221 電圧センサ
230 教師データ入力部
240 学習処理部
250 波形データベース
300 学習データベース
400 稼働状況判別装置
410 高調波電流計測部
411 電流センサ
420 稼働状況判別処理部
430 入出力部
510 電力供給線
511〜513 配線
521〜523 電気機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に電源を供給する電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流を計測する高調波電流計測手段と、
前記電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流の波形データと、該波形データが発生するときの電気機器の稼働状況を示す稼働状況情報と、前記電気機器に印加される交流電圧の1交流電圧周期中の予め設定された波形データ比較対象区間を特定する区間特定情報と、を関連付けた学習データを予め記憶する学習データ記憶手段と、
前記学習データに含まれる区間特定情報に基づいて、前記高調波電流計測手段により計測された高調波電流の波形データのうち前記区間特定情報により特定される波形データ比較対象区間に相当する高調波電流の波形データを特定し、特定した高調波電流の波形データと前記学習データに含まれている高調波電流の波形データのうち前記波形データ比較対象区間に相当する高調波電流の波形データとを照合する波形データ比較対象区間照合手段と、
前記波形データ比較対象区間照合手段の照合結果と前記学習データに含まれている可動状況情報とを基に、電気機器の稼働状況を判別する稼働状況判別手段と、を備える、
ことを特徴とする稼働状況判別装置。
【請求項2】
前記波形データ比較対象区間は、電源電圧の変動に対する高調波電流の変動が基準より大きい区間以外の所定の区間から構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の稼働状況判別装置。
【請求項3】
前記学習データ記憶手段は、前記波形データと、前記区間特定情報と、前記波形データ比較対象区間以外の区間における高調波電流の波形が基準となる波形からどの程度時間方向にずれているかを示す位相ずれ量情報と、を関連付けた学習データを記憶し、
前記稼働状況判別装置は、前記学習データに含まれる区間特定情報に基づいて、前記高調波電流計測手段により計測された高調波電流のうち前記区間特定情報により特定される波形データ比較対象区間以外の区間に相当する高調波電流の波形データを特定し、特定した高調波電流の波形データを前記位相ずれ量情報に基づいて補正し、補正した高調波電流の波形データと前記学習データに含まれている高調波電流の波形データのうち前記波形データ比較対象区間以外の区間に相当する高調波電流の波形データとを照合する補正データ照合手段、をさらに備え、
前記稼働状況判別手段は、前記波形データ比較対象区間照合手段の照合結果と補正データ照合手段の照合結果と前記学習データに含まれている可動状況情報とを基に、電気機器の稼働状況を判別する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の稼働状況判別装置。
【請求項4】
電気機器に電源を供給する電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流を計測する高調波電流計測手段と、
電気機器に印加される交流電圧の波形変化に起因して、前記電気機器に印加される交流電圧の1交流電圧周期中、高調波電流の波形パターンが周期毎に変化する程度が所定の基準より低い区間から選択された所定の基準区間を判別する基準区間判別手段と、
前記電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流の波形データと、該波形データを取得した際の電気機器の稼働状況を示す稼働状況情報と、前記基準区間判別手段で判別した基準区間を特定する区間特定情報と、を関連付けた学習データを生成する学習データ生成手段と、を備える、
ことを特徴とする波形パターン学習装置。
【請求項5】
電気機器に印加される交流電圧を計測する電圧計測手段と、
計測した交流電圧の交流波形の特徴を表す電圧波形特徴量を交流電圧周期単位で算出する算出手段と、
複数の交流電圧周期のうち、前記電圧波形特徴量が所定閾値以上異なる2以上の交流電圧周期を選択する選択手段と、を備え、
前記基準区間判別手段は、選択した交流電圧周期における2以上の高調波電流の波形データを基に、基準区間を判別する、
ことを特徴とする請求項4に記載の波形パターン学習装置。
【請求項6】
前記選択手段は、複数の交流電圧周期の中から、第1の交流電圧周期と、第1の交流電圧周期の電圧波形特徴量と所定閾値以上電圧波形特徴量が異なる第2の交流電圧周期と、第1の交流電圧周期および第2の交流電圧周期の双方の電圧波形特徴量と所定閾値以上電圧波形特徴量が異なる第3の交流電圧周期と、を選択し、
前記基準区間判別手段は、
第1の交流電圧周期における高調波電流と第2の交流電圧周期における高調波電流の波形パターンとが異なる区間を第1の区間として判別し、
第1の交流電圧周期における高調波電流と第3の交流電圧周期における高調波電流の波形パターンとが異なる第2の区間として判別し、
前記第1の区間と前記第2の区間の和集合となる区間以外の区間を基準区間として判別する、
ことを特徴とする請求項5に記載の波形パターン学習装置。
【請求項7】
コンピュータに、
電気機器に電源を供給する電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流を計測する高調波電流計測ステップと、
前記電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流の波形データと、該波形データが発生するときの電気機器の稼働状況を示す稼働状況情報と、前記電気機器に印加される交流電圧の1交流電圧周期中の予め設定された波形データ比較対象区間を特定する区間特定情報と、を関連付けた学習データを予め記憶する学習データ記憶ステップと、
前記学習データに含まれる区間特定情報に基づいて、前記高調波電流計測ステップにより計測された高調波電流の波形データのうち前記区間特定情報により特定される波形データ比較対象区間に相当する高調波電流の波形データを特定し、特定した高調波電流の波形データと前記学習データに含まれている高調波電流の波形データのうち前記波形データ比較対象区間に相当する高調波電流の波形データとを照合する波形データ比較対象区間照合ステップと、
前記波形データ比較対象区間照合ステップの照合結果と前記学習データに含まれている可動状況情報とを基に、電気機器の稼働状況を判別する稼働状況判別ステップと、を実行させる、
ことを特徴とする稼働状況判別プログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
電気機器に電源を供給する電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流を計測する高調波電流計測ステップと、
電気機器に印加される交流電圧の波形変化に起因して、前記電気機器に印加される交流電圧の1交流電圧周期中、高調波電流の波形パターンが周期毎に変化する程度が所定の基準より低い区間から選択された所定の基準区間を判別する基準区間判別ステップと、
前記電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流の波形データと、該波形データを取得した際の電気機器の稼働状況を示す稼働状況情報と、前記基準区間判別ステップで判別した基準区間を特定する区間特定情報と、を関連付けた学習データを生成する学習データ生成ステップと、を実行させる、
ことを特徴とする波形パターン学習プログラム。
【請求項9】
電気機器に電源を供給する電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流を計測する高調波電流計測ステップと、
前記電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流の波形データと、該波形データが発生するときの電気機器の稼働状況を示す稼働状況情報と、前記電気機器に印加される交流電圧の1交流電圧周期中の予め設定された波形データ比較対象区間を特定する区間特定情報と、を関連付けた学習データを予め記憶する学習データ記憶ステップと、
前記学習データに含まれる区間特定情報に基づいて、前記高調波電流計測ステップにより計測された高調波電流の波形データのうち前記区間特定情報により特定される波形データ比較対象区間に相当する高調波電流の波形データを特定し、特定した高調波電流の波形データと前記学習データに含まれている高調波電流の波形データのうち前記波形データ比較対象区間に相当する高調波電流の波形データとを照合する波形データ比較対象区間照合ステップと、
前記波形データ比較対象区間照合ステップの照合結果と前記学習データに含まれている可動状況情報とを基に、電気機器の稼働状況を判別する稼働状況判別ステップと、を有する、
ことを特徴とする稼働状況判別方法。
【請求項10】
電気機器に電源を供給する電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流を計測する高調波電流計測ステップと、
電気機器に印加される交流電圧の波形変化に起因して、前記電気機器に印加される交流電圧の1交流電圧周期中、高調波電流の波形パターンが周期毎に変化する程度が所定の基準より低い区間から選択された所定の基準区間を判別する基準区間判別ステップと、
前記電源供給線に流れる電流に含まれる高調波電流の波形データと、該波形データを取得した際の電気機器の稼働状況を示す稼働状況情報と、前記基準区間判別ステップで判別した基準区間を特定する区間特定情報と、を関連付けた学習データを生成する学習データ生成ステップと、を有する、
ことを特徴とする波形パターン学習方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−44736(P2013−44736A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185342(P2011−185342)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)