説明

穀物からの4群主要アレルゲンのDNA配列および組換え製剤

本発明は、穀物からの4群主要アレルゲンのDNA配列を提供することに関する。本発明はまた、低アレルゲン性作用を有する断片、部分配列の新規な組み合わせおよび点突然変異体を包含する。組換えDNA分子および誘導されたポリペプチド、断片、部分配列の新規な組み合わせおよびバリアントを、花粉アレルギー疾患の療法のために用いることができる。組換え方法により製造されたタンパク質を、花粉アレルギーのインビトロおよびインビボ診断のために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、穀物(Triticeae)からの4群主要アレルゲンのDNA配列を提供することに関する。本発明はまた、低刺激性(hypoallergenic)作用を有する断片、部分配列の新規な組み合わせおよび点突然変異体を包含する。組換えDNA分子および誘導されたポリペプチド、断片、部分配列の新規な組み合わせおよびバリアントを、花粉アレルギー疾患の療法のために用いることができる。組換え方法により製造されるタンパク質を、花粉アレルギーのインビトロおよびインビボ診断のために、用いることができる。
【背景技術】
【0002】
1型アレルギーは、世界的に重要である。工業化された国の人口の20%までは、アレルギー性鼻炎、結膜炎または気管支喘息などの症状を患っている。これらのアレルギーは、種々の起源、例えば植物花粉、ダニ、ネコまたはイヌの供給源により放出される、空気中に存在するアレルゲン(エアロアレルゲン)により生じる。次に、これらの1型アレルギー患者の40%までが、花粉アレルゲン、特に穀物花粉アレルゲンとの特異的なIgE反応性を示す(Freidhoff et al., 1986, J. Allergy Clin. Immunol. 78, 1190-2001)。穀物花粉アレルゲンの中で、ライムギのアレルゲンは、特定の重要性を有する。
【0003】
1型アレルギーを誘発する物質は、タンパク質、糖タンパク質またはポリペプチドである。粘膜を通っての取り込みの後に、これらのアレルゲンは、感作された個体中の肥満細胞の表面に結合したIgE分子と反応する。2つのIgE分子が、アレルゲンにより互いに架橋された場合には、これにより、エフェクター細胞によるメディエータ(例えばヒスタミン、プロスタグランジン)およびサイトカインの放出並びに従って対応する臨床症状がもたらされる。
【0004】
個別のアレルゲン分子がアレルギー患者のIgE抗体と反応する相対的頻度に依存して、主要なアレルゲンと主要でないアレルゲンとの間で、区別がなされる。
【0005】
草(イネ科)の族からの種々の種の花粉からのアレルゲンは、互いの中で相同な群に分けられる。
特に、4群主要アレルゲンの分子は、モノクローナルマウス抗体およびまたヒトIgE抗体の両方と、互いに高い免疫学的交差反応性を有する(Fahlbusch et al., 1993 Clin. Exp. Allergy 23:51-60; Leduc-Brodard et al., 1996, J. Allergy Clin. Immunol. 98:1065-1072; Su et al., 1996, J. Allergy Clin. Immunol. 97:210; Fahlbusch et al., 1998, Clin. Exp. Allergy 28:799-807; Gavrovic-Jankulovic et al., 2000, Invest. Allergol. Clin. Immunol. 10 (6):361-367; Stumvoll et al. 2002, Biol. Chem. 383:1383-1396; Grote et al., 2002, Biol. Chem. 383:1441-1445; AnderssonおよびLidholm, 2003, Int. Arch. Allergy Immunol. 130:87-107; Mari, 2003, Clin. Exp. Allergy, 33 (1):43-51)。
【0006】
完全なDNA配列は、4群主要アレルゲンのいずれについても、現在まで知られていない。
Dactylus glomerataからの4群アレルゲンから、現在まで、ペプチドを、酵素的分解により得、配列決定することが可能であるに過ぎなかった:
【表1】

ペプチドはまた、亜熱帯ギョウギシバ(Cynodon dactylon)の4群アレルゲンから、タンパク質分解により得られ、配列決定された:
【表2】

【0007】
Lolium perenneについて、以下の配列を有するペプチド断片が、基本的な4群アレルゲンについて記載された:FLEPVLGLIFPAGV(配列番号28)およびGLIEFPAGV(配列番号29、Jaggi et al., 1989, Int. Arch. Allergy Appl. Immunol. 89: 342-348)。
4群アレルゲンの第1の配列として、Phleum pratenseからのPhl p 4の未だ刊行されていない配列(配列番号11)は、本特許出願の発明者らにより明らかにされ、国際出願WO 04/000881中に記載された。
【0008】
現在まで、穀物(Triceae)からの4群主要アレルゲンの配列に関して、何も知られていない。
従って、本発明が基づく目的は、穀物からの4群主要アレルゲン、特にライムギ(Secale cerale)からのアレルゲンSec c 4(配列番号1、3)、オオムギ(Hordeum vulgare)からのHor v 4(配列番号5)およびコムギ(Triticum aestivum)からのTri a 4(配列番号7、9)のDNA配列並びにこれに基づいて、アレルゲンが、このようなものとして、または改変された形態でタンパク質として発現され、有用にされ得る対応する組換えDNA分子を、薬学的に有意義な開発のために提供することにあった。Phl p 4の配列(配列番号11)は、本発明のための出発点であった。
【発明の開示】
【0009】
本発明の配列のリスト
配列番号1〜10による成熟アレルゲンのDNAおよびタンパク質配列に、シグナル配列が先行する。コード領域は、DNA配列におけるTGAまたはTAG停止コドンで終了する。
【0010】
−Sec c 4のDNA配列。(a)アイソフォームSec c 4.01(配列番号1)、(b)アイソフォームSec c 4.02(配列番号3)。
−配列番号1および3によるDNA配列から誘導されるタンパク質配列(配列番号2、4)。
−Hor v 4のDNA配列(配列番号5)。
−配列番号5によるDNA配列から誘導されるタンパク質配列(配列番号6)。
−Tri a 4のDNA配列。(a)アイソフォームTri a 4.01(配列番号7)、(b)アイソフォームTri a 4.02(配列番号9)。
−配列番号7および9によるDNA配列から誘導されるタンパク質配列(配列番号8、10)。
−WO 04/000881からの配列番号5によるPhl p 4のDNA配列(配列番号11)。
−WO 04/000881からの配列番号6によるPhl p 4のタンパク質配列(配列番号12)。
【0011】
発明の記載
ここで、本発明は、初めて、配列番号1、3、5、7および9による穀物花粉主要アレルゲンSec c 4、Hor v 4およびTri a 4のDNA配列を提供する。
従って、本発明は、配列番号1、3、5、7および9によるヌクレオチド配列から選択されたDNA分子に関する。
【0012】
本発明はさらに、本発明のDNA配列と相同な配列並びに、存在する配列相同性のために、本発明のDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするかまたは、本発明のアレルゲンに関する免疫学的交差反応性を有する、他のイネ科、例えばLolium perenne、Dactylis glomerata、Poa pratensis、Cynodon dactylonおよびHolcus lanatusからの4群アレルゲンの対応するDNA分子に関する。
本発明はまた、低刺激性作用を有する断片、部分的配列の新たな組み合わせおよび点突然変異体を包含する。
【0013】
従って、本発明はさらに、イネ科からの4群アレルゲンの、免疫調節性のT細胞反応性の断片をコードする、対応する部分配列、部分配列の組み合わせまたは置換、欠失もしくは付加突然変異体に関する。
天然に存在するアレルゲンのDNA配列の知識を用いて、ここで、これらのアレルゲンを、アレルギー性疾患の診断および療法において用いることができる組換えタンパク質として調製することが、可能である(ScheinerおよびKraft, 1995, Allergy 50: 384-391)。
【0014】
アレルギーの有効な治療的処置のための古典的な方法は、特定の免疫療法または減感作である(Fiebig, 1995, Allergo J. 4 (6): 336-339, Bousquet et al., 1998, J. Allergy Clin. Immunol. 102 (4): 558-562)。この方法において、患者に、天然のアレルゲン抽出物を、増大する用量で皮下注射する。しかし、この方法において、アレルギー反応またはさらにアナフィラキシーショックの危険がある。これらの危険を最小にするために、アレルゴイドの形態での革新的な製剤が用いられる。これらは、未処置の抽出物と比較して顕著に低下したIgE反応性、しかし同一のT細胞反応性を有する、化学的に改変されたアレルゲン抽出物である(Fiebig, 1995, Allergo J. 4 (7): 377-382)。
【0015】
尚一層実質的な療法の最適化が、組換え方法により調製されたアレルゲンを用いて可能である。随意に患者の個別の感作パターンに整合させた、組換え方法により調製された高純度アレルゲンの所定の混合物は、天然のアレルゲン供給源からの抽出物に代わることができる。その理由は、これらは、種々のアレルゲンに加えて、比較的多数の免疫原性であるが、アレルゲン性ではない二次タンパク質を含むからである。
【0016】
発現産物での信頼性のある減感作をもたらし得る現実的な展望は、特定に突然変異した組換えアレルゲンにより提供され、ここで、IgEエピトープは、療法に必須のT細胞エピトープを損なわずに特定に欠失している(Schramm et al., 1999, J. Immunol. 162: 2406-2414)。
【0017】
アレルギー患者における妨害されたTH細胞平衡の治療的な影響についてのさらなる可能性は、免疫療法的DNAワクチン接種であり、これは、関連するアレルゲンをコードする発現可能なDNAでの処置を伴う。免疫応答のアレルゲン特異性の影響の最初の実験的な証拠は、げっ歯動物において、アレルゲンをコードするDNAの注射により提供された(Hsu et al., 1996, Nature Medicine 2 (5): 540-544)。
【0018】
従って、本発明はまた、医薬としての本明細書中に記載したDNA分子および医薬としての対応する組換え発現ベクターに関する。
【0019】
組換え方法により調製された対応するタンパク質を、花粉アレルギーの療法並びにインビトロおよびインビボ診断のために用いることができる。
組換えアレルゲンの調製のために、クローン化した核酸を、発現ベクター中に連結し、この構造物を、好適な宿主生物体中で発現させる。生化学的精製の後に、この組換えアレルゲンは、確立された方法によるIgE抗体の検出のために有用である。
【0020】
従って、本発明はさらに、発現制御配列に機能的に結合した、本明細書中に記載したDNA分子を含む組換え発現ベクターおよび、前述のDNA分子または前述の発現ベクターで形質転換した宿主生物体に関する。
【0021】
本発明はまた、上記した少なくとも1種のDNA分子または上記した少なくとも1種の発現ベクターの、イネ科、好ましくはTriticeaeからの4群アレルゲン、特にSec c 4、Hor v 4、Tri a 4が誘発に関与するアレルギーを有する患者の免疫療法的DNAワクチン接種および/またはこのようなアレルギーの防止のための医薬の製造への使用に関する。
【0022】
すでに述べたように、本発明を、特定の免疫療法のための組換えアレルゲンまたは核酸含有製剤における必須の成分として用いることができる。多くの可能性が、ここで生じる。他方、不変の一次構造を有するタンパク質は、製剤の構成成分であってもよい。他方、低刺激性(アレルゴイド)形態を、本発明において、全体としての分子のIgEエピトープの特異的な欠失またはT細胞エピトープをコードする個別の断片の産生による不所望な副作用を回避するための療法のために用いることができる。最後に、核酸自体は、真核性発現ベクターと連結した場合には、直接用いた際に、アレルギー性免疫状態を治療的な意味で改変する製剤を生じる。
【0023】
本発明はさらに、好ましくは医薬としての特性において、上記したDNA分子の1種または2種以上によりコードされたポリペプチドに関する。
これらは、配列番号2、4、6、8または10によるアミノ酸配列に相当するタンパク質である。特に、これらは、アミノ酸23(配列番号2、4および6)並びにアミノ酸22(配列番号8、10)において開始する成熟タンパク質である(シグナル配列成分を含まない)。本発明はさらに、これらのアミノ酸配列またはこれらの配列の一部を含むタンパク質に関する。
【0024】
従って、本発明はまた、宿主生物体の培養および培養物からの対応するポリペプチドの単離によるこのようなポリペプチドの製造方法に関する。
本発明は、同様に、上記した少なくとも1種のポリペプチドの、イネ科、好ましくはTriticeaeからの4群アレルゲン、特にSec c 4、Hor v 4、Tri a 4が誘発に関与するアレルギーの診断および/または処置並びにこのようなアレルギーの防止のための医薬の製造への使用に関する。
【0025】
以下の手順により本発明のタンパク質およびDNA配列を決定した:
ライムギからのSec c 4
1.Phl p 4(配列番号12、WO 04/000881)のDNA配列から開始して、Phl p 4配列から誘導された特定のプライマー(表1)を発生させた。5種のクローンを、ライムギ花粉DNAから、プライマー#87および#83を用いPCRにより得た。これらのクローンに相当する増幅させたSec c 4遺伝子断片1は、Phl p 4(配列番号12)のアミノ酸68〜401に相当するポリペプチドをコードする。
【0026】
2.ESTデータベース検索を、部分的Sec c 4配列について行った。しかし、相同性の配列は、ライムギに特定したESTデータベースにおいて見出されなかった。代わりに、個別の相同性の重複しないEST断片が、オオムギおよびコムギにおいて特定的なESTデータベースにおいて見出された。個別のEST断片は、5’−UTR領域中にわたり、他のものは、対応する遺伝子の3’−UTR領域(UTR=非翻訳領域)中にわたる。
【0027】
3.しかし、コムギまたはオオムギからの完全な4群遺伝子を、データベースにおいて見出されたEST配列から構成することはできない。その理由は、これらの配列は、重複せず、相同性の4群遺伝子は知られていないからである。しかし、これらのEST配列を、段階1において得られたPhl p 4配列(配列番号11)およびSec c 4断片を参照して割り当てることが可能であり、これらは、PCRプライマーの調製のための鋳型として作用した。
【0028】
4.このようにして調製されたプライマー#195および#189を用いて、3種のクローンを、PCRにより得た。プライマー#195は、オオムギEST配列から誘導されており、プライマー#189は、Phl p 4特異性プライマーであり、Phl p 4停止コドンおよび10個のC末端Phl p 4アミノ酸のコドンと重複している。このようにして増幅されたSec c 4遺伝子断片2は、シグナル配列内で開始し、Phl p 4の位置490に相当する位置で終了するポリペプチドをコードする。このポリペプチドは、Sec c 4のN末端を保護する。
【0029】
5a.3種のさらなるクローンが、プライマー#195および#202でのPCRにより得られた。両方のプライマーは、オオムギEST配列から誘導された。増幅されたSec c 4遺伝子3は、シグナル配列内で開始し、Sec c 4のC末端で終了する対応するアミノ酸をコードする。従って、成熟したSec c 4の完全な配列は、決定された配列中に存在する。
【0030】
次の2つの段階5bおよび5cは、段階5aにおいて得られた結果を二重チェックする作用を奏する:
5b.さらなるクローンを、プライマー#195および#203でのPCRにより得た。プライマー#195は、オオムギEST配列から誘導されており、プライマー#203は、コムギEST配列から誘導された。増幅されたSec c 4遺伝子は、シグナル配列内で開始し、Sec c 4のC末端で終了する対応するアミノ酸をコードする。従って、成熟したSec c 4の完全な配列は、決定された配列中に存在する。
【0031】
5c.さらなるクローンを、プライマー#195および#198を用いPCRにより得た。またプライマー#198。増幅されたSec c 4遺伝子は、シグナル配列内で開始し、Sec c 4のC末端で終了する対応するアミノ酸をコードする。従って、成熟したSec c 4の完全な配列は、決定された配列中に存在する。
【0032】
2種のアイソフォームSec c 4.01および4.02が見出された。成熟したアレルゲンは、配列番号2、4および6による配列のアミノ酸23で開始する。
【0033】
オオムギからのHor v 4
上記したように得られたSec c 4配列を用い、相同性のEST断片が、Hordeum vulgareのESTデータベースにおいて見出された。これらの断片は重複しているが、完全な遺伝子を付与するためではない。しかし、見出されたEST配列を参照して、Hor v 4特異的プライマーを生成することが可能であり、これを、ゲノムDNAからのHor v 4遺伝子の増幅のために用いた。
【0034】
合計で、15種のクローンを、分析した。
4種のクローンが、プライマー#195および#198を用いたPCRにより得られた。
4種のクローンが、プライマー#195および#202を用いたPCRにより得られた。
3種のクローンが、プライマー#194および#198を用いたPCRにより得られた。
4種のクローンが、プライマー#194および#202を用いたPCRにより得られた。
【0035】
誘導されたタンパク質配列は、Hor v 4のシグナル配列内で開始し、タンパク質のC末端端部まで及ぶ(配列番号6のアミノ酸23から)。
【0036】
コムギからのTri a 4
上記したように得られたSec c 4配列の補助により、相同性のEST断片が、Triticum aestivumのESTデータベースにおいて見出された。これらの断片は重複しているが、完全な遺伝子を付与するためではない。しかし、見出されたEST配列を参照して、Tri a 4特異的プライマー#199、#203、#204および#206を生成することが可能であり、これを、ゲノムDNAからのTri a 4遺伝子の増幅のために用いた。
【0037】
合計で、13種のクローンを、分析した。
4種のクローンが、プライマー#204および#203を用いたPCRにより得られた。
4種のクローンが、プライマー#204および#199を用いたPCRにより得られた。
3種のクローンが、プライマー#206および#203を用いたPCRにより得られた。
4種のクローンが、プライマー#206および#199を用いたPCRにより得られた。
【0038】
誘導されたタンパク質配列は、Tri a 4のシグナル配列内で開始し、タンパク質のC末端端部まで及ぶ。
2種のバリアントTri a 4.01(配列番号8のアミノ酸22から)およびTri a 4.02(配列番号10のアミノ酸22から)が見出された。
【0039】
本発明の組換えアレルゲンを調製するために、配列番号1、3、5、7および9によるDNA配列を、発現ベクター(例えばpProEx、pSE380)中に導入した。大腸菌により最適化されたコドンを、タンパク質配列決定から知られているN末端アミノ酸のために用いた。
【0040】
大腸菌における形質転換、種々の分離手法による本発明の組換えアレルゲンの発現および精製の後に、得られたタンパク質に、再折り畳みプロセスを施した。
両方のアレルゲンを、花粉アレルギーの高度に特異的な診断のために用いることができる。この診断を、特定の抗体(IgE、IgG1〜4、IgA)の検出およびIgE負荷エフェクター細胞(例えば血液からの好塩基球)との反応によりインビトロで、または皮膚試験反応および反応器官における誘発によりインビボで行うことができる。
【0041】
本発明のアレルゲンの、花粉アレルギー患者からのTリンパ球との反応を、増殖のためのTリンパ球のアレルゲン特異性刺激、並びに新たに調製した血液リンパ球におけるT細胞との、およびまた、確立されたnSec c 4、nHor v 4またはnTri a 4反応性T細胞系およびクローンにおけるサイトカイン合成により検出することができる。
【0042】
システインをコードするトリプレットを、部位特異的変異導入により、これらが、他のアミノ酸、好ましくはセリンをコードするように改変した。個々のシステインを置換したバリアントおよび、2つのシステイン残基の種々の組み合わせまたはすべてのシステインを改変したバリアントの両方を、製造した。これらのシステイン点突然変異体の発現されたタンパク質は、アレルギー患者からのIgE抗体との大幅に低減したか、またはゼロの反応性を有するが、これらの患者からのTリンパ球と反応する。
従って、本発明はさらに、対応するポリペプチドの1つ、複数またはすべてのシステイン残基が、他のアミノ酸で、部位特異的変異導入により置換されている、本明細書中に記載したDNA分子に関する。
【0043】
T細胞エピトープを有するポリペプチドおよび低アレルゲン性点突然変異体(例えばシステイン置換)のポリペプチドに対応する低アレルゲン性断片の免疫調節活性を、花粉アレルギー患者からのT細胞とのこれらの反応により検出することができる。
【0044】
このような低アレルゲン性断片またはシステインの点突然変異体を、アレルギー患者の減感作のための製剤として用いることができる。その理由は、これらがT細胞と、等しい有効性を伴って反応するが、低減されたかまたは全く存在しないIgE反応性のために、IgEを介する副作用が低減するからである。
【0045】
本発明の低アレルゲン性アレルゲンバリアントをコードする核酸または本発明の未改変DNA分子を、ヒト発現ベクターと連結する場合には、これらの構築物を、同様に、免疫療法(DNAワクチン接種)のための製剤として用いることができる。
【0046】
最後に、本発明は、上記した少なくとも1種のDNA分子または上記した少なくとも1種の発現ベクター、および随意に他の活性成分および/またはアジュバントを含む、イネ科、好ましくはTriticeaeからの4群アレルゲン、特にSec c 4、Hor v 4、Tri a 4が誘発に関与するアレルギーを有する患者の免疫療法的DNAワクチン接種および/またはこのようなアレルギーの防止のための医薬組成物に関する。
【0047】
本発明の他の群の医薬組成物は、上記した少なくとも1種のポリペプチドをDNAの代わりに含み、前述のアレルギーの診断および/または処置に適する。
【0048】
本発明の意味における医薬組成物は、活性成分として、本発明のポリペプチドまたは発現ベクターおよび/またはすべての比率での混合物を含む、それぞれの薬学的に使用可能な誘導体を含む。本発明の活性成分を、ここで、少なくとも1種の固体、液体および/または半液体賦形剤またはアジュバントと共に、および随意に1種または2種以上の他の活性成分と組み合わせて、好適な投薬形態とすることができる。
特に好適なアジュバントは、CpGモチーフを有する免疫賦活性DNAまたはオリゴヌクレオチドである。
【0049】
これらの組成物を、ヒト医学または獣医学における治療剤または診断剤として用いることができる。好適な賦形剤は、非経口投与に適し、本発明の活性成分の作用に悪影響を生じない有機または無機物質である。非経口的使用に適するのは、特に、溶液、好ましくはオイルベース、または水性の溶液、さらに懸濁液、エマルジョンまたはインプラントである。本発明の活性成分を、また、凍結乾燥し、得られた凍結乾燥物を、例えば、注射製剤を製造するために用いることができる。示した組成物を、滅菌し、および/またはこれは、補助剤、例えば保存剤、安定剤および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧を調整するための塩、緩衝物質および/または複数の他の活性成分を含むことができる。
さらに、持続放出製剤を、本発明の活性成分の対応する処方により、−例えば水酸化アルミニウム上への吸着により得ることができる。
【0050】
従って、本発明はまた、アレルゲン成分が誘発する患者に特異的な感作範囲の同定の一部として、インビトロ診断を改善するのに役立つ。本発明は、同様に、花粉アレルギーの特異的な免疫療法のための顕著に改善された製剤を製造するのに役立つ。
【0051】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、3、5、7および9による配列の1つから選択された穀物花粉主要アレルゲンのヌクレオチド配列に相当する、DNA分子。
【請求項2】
請求項1に記載のDNA分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、イネ科種からのDNA配列に由来する、DNA分子。
【請求項3】
Secale cerale、Hordeum vulgareまたはTriticum aestivumからの主要なアレルゲンSec c 4、Hor v 4またはTri a 4と免疫学的に交差反応し、イネ科種からのDNA配列に由来するポリペプチドをコードする、DNA分子。
【請求項4】
イネ科からの4群アレルゲンの、免疫調節性のT細胞反応性断片をコードする、請求項1〜3のいずれかに記載の部分配列または部分配列の組み合わせに相当する、DNA分子。
【請求項5】
免疫調節性のT細胞反応性断片をコードする、請求項1〜4のいずれかに記載のヌクレオチド配列に相当するDNA分子であって、前記ヌクレオチド配列が、個別のコドンの特異的な変異、欠失または付加により特異的に改変されていることを特徴とする、前記DNA分子。
【請求項6】
前記変異が、対応するポリペプチドの1個、複数またはすべてのシステインの他のアミノ酸による置換をもたらすことを特徴とする、請求項5に記載のDNA分子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のDNA分子を含み、発現制御配列に機能的に結合している組換えDNA発現ベクターまたはクローニングシステム。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のDNA分子または請求項7に記載の発現ベクターで形質転換された、宿主生物体。
【請求項9】
請求項8に記載の宿主生物体の培養および培養物からの対応するポリペプチドの単離による、請求項1〜6のいずれかに記載のDNA配列によりコードされたポリペプチドの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のDNA配列によりコードされた、配列番号2、4、6、8および10によるアミノ酸配列の1つに相当する、ポリペプチド。
【請求項11】
請求項10に記載のアミノ酸配列の成熟アレルゲンに相当するポリペプチドであって、以下の群のアミノ酸配列
−アミノ酸23で開始される、配列番号2、4または6によるアミノ酸配列の1つ、
−アミノ酸22で開始される、配列番号8または10によるアミノ酸配列の1つ
から選択されている、前記ポリペプチド。
【請求項12】
医薬としての、請求項10または11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
イネ科からの4群アレルゲンが誘発に関与するアレルギーの診断および/または処置のための、請求項12に記載の少なくとも1種のポリペプチドおよび随意に他の活性成分および/またはアジュバントを含む、医薬組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の少なくとも1種のポリペプチドの、イネ科からの4群アレルゲンが誘発に関与するアレルギーの診断および/または処置および/またはこのようなアレルギーの防止のための医薬の製造への使用。
【請求項15】
医薬としての、請求項1〜6のいずれかに記載のDNA分子。
【請求項16】
医薬としての、請求項7に記載の組換え発現ベクター。
【請求項17】
請求項15に記載の少なくとも1種のDNA分子または請求項16に記載の少なくとも1種の発現ベクター、および随意に他の活性成分および/またはアジュバントを含む、イネ科からの4群アレルゲンが誘発に関与するアレルギーを有する患者の免疫療法的DNAワクチン接種および/またはこのようなアレルギーの防止のための医薬組成物。
【請求項18】
請求項15に記載の少なくとも1種のDNA分子または請求項16に記載の少なくとも1種の発現ベクターの、イネ科からの4群アレルゲンが誘発に関与するアレルギーを有する患者の免疫療法的DNAワクチン接種および/またはこのようなアレルギーの防止のための医薬の製造への使用。

【公表番号】特表2008−504004(P2008−504004A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544263(P2006−544263)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013664
【国際公開番号】WO2005/059136
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】