説明

穀物ベースフラクション及びプロバイオティックを含む非発酵組成物、並びにそれらの使用

本発明は、結腸において酪酸の形成を増加させる能力を有し、少なくとも一つの穀物ベースフラクション及び少なくとも一つの単離された乳酸菌のプロバイオティック株を含む非発酵組成物、並びにシンバイオティックとして、及びメタボリック症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群(IBS)、又は炎症性腸疾患(IBD)の治療のための前記非発酵組成物の使用に関する。本発明の非発酵組成物は、健康的な腸粘膜の維持、及び/又は腸粘膜の増加した関門機能の提供に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、結腸において酪酸の形成を増加させる能力を有する非発酵組成物、及び増加した関門機能の提供により健康的な腸粘膜の維持のためなどの、前記非発酵組成物の様々な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
酪酸及びグルタミンは、結腸の健康のために重要であることが提案されている。純粋なオオムギβ−グルカンは、比較的大量の酪酸を与えることが示され、大量のβ−グルカン及びグルタミンを含む、ビール醸造使用済み穀物から得られる発芽したオオムギ食品は、潰瘍性大腸炎に罹患した対象の結腸における炎症性反応を減少させることが報告されている。
【0003】
食物繊維、健康を促進する細菌、並びにクローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患の予防の関係性に近年大きな関心が存在する。
【0004】
食物繊維は、小腸において消化に対して耐性があり、従って、大腸において微生物叢による発酵に使用可能であり、ガス及び熱と一緒に短鎖脂肪酸(SCFA)を形成する。形成された主なSCFAは、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸であり、一方で、吉草酸、カプロン酸、及びヘプタン酸、並びに分枝のイソ酪酸、及びイソ吉草酸は少ない量で形成される。SCFAは吸収され、門脈を通って肝臓に輸送され、吸収されなかったフラクションは、糞便に排出される。プロピオン酸は、肝臓のグルコース新生の基質であり、コレステロール合成を阻害することが報告されている一方で、酢酸は、グルコース新生、及びアセチルCoAを介したコレステロールの形成を刺激することが示されている。酪酸は、結腸細胞の主なエネルギー源であり、結腸癌のリスクを減少させ、及びIBDに有益であると仮説が立てられている。近年、酪酸はまた、代謝効果を有することが提案されている。
【0005】
食物繊維に加えて、少量のタンパク質はまた、結腸に達する。この意味で、グルタミンは、特に興味深いアミノ酸の一つである。酪酸と共にグルタミンは結腸上皮細胞の重要な基質である。これは、結腸中の大量の酪酸の存在が、上皮細胞のグルタミンについての必要性を減少させ、このような方法で、血中のグルタミンレベルを減少させるので、興味深い。循環系におけるグルタミンの高いレベルは、それが免疫防御を改善するので、有益であることが分かっている。
【0006】
穀物ベース食品は、大変長期間用いられており、穀物粒は、成長及び維持にために、ヒトにより必要とされるタンパク質、脂肪、糖質を含む。オオムギの発酵は、その高含量のβ−グルカンのために大量の酪酸を製造し得、それは発芽したオオムギ食品(GBF)が大量のグルタミンを含むことを示している。GBF中のグルタミンは、食物繊維と結合し、大腸に到達することが報告されており、それは発酵の間に遊離され、結腸粘膜の基質であり得る。研究では、GBFが用いられる場合、症状及び炎症は、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)結腸炎を誘発されたラットにおいて改善された。同様の効果は、潰瘍性大腸炎に罹患したヒトにおいても見られた。
【0007】
プロバイオティック細菌は、十分量で投与された場合に、宿主に有益に影響を与える、生きている微生物として定義される。乳酸菌及びビフィズス菌は、プロバイオティック製品において最も頻繁に用いられる細菌である。これらの細菌はこれらの有機体に基づくプロバイオティックであるように、一般的に安全である。病原性がないことは、全ての年齢群に亘り、免疫不全の個人にまで広がる。様々なプロバイオティック細菌の摂取は、様々な生理学的、又は病理学的状態において臨床的有益性を有することが示されている。最も明確な効果は、抗生物質治療、又はロタウイルス感染により引き起こされる下痢において示される。プロバイオティック細菌の摂取後、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、及び高コレスレテロール血症における好ましい臨床効果を示す研究はまた、存在する。プロバイオティック細菌がこれらの臨床的改善に寄与する機構は、明らかではない。ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)は、健康な個人の腸において代表的な最も大きい細菌群の一つである。大量のプロバイオティック細菌は、病原性細菌の増殖を妨害し得る。プレ−及びプロバイオティックの組み合わせは、微生物に作用し得るのみならず、CAの形成を最適化し得る。
【0008】
WO2007036230は、発酵された穀物、及び非病原性微生物を含む、すぐに使える製品であって、発酵された穀物が好ましくはオートミールである製品を開示する。本発明は、本組成物が発酵されていないという事実により、WO2007036230と異なる。
【0009】
腸の増加した関門機能を提供することによる、腸粘膜の健康を維持するための方法の新規の手法の必要性は、存在する。
【0010】
本発明の目的は、CAの盲腸形成、血中のSCFA及びアミノ酸のレベル及び細菌叢(乳酸菌、ビフィズス菌、腸内細菌科)の盲腸組成物、並びにプロバイオティック株の添加が何らかのさらなる効果を与えるかどうかに関して、プレバイオティック製品としての少数の穀物ベースフラクション、例えば、様々なオオムギフラクションの潜在的な役割を調査することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
従って、本発明は、一つの態様では、結腸において酪酸の形成を増加させる能力を有し、少なくとも一つの穀物ベースフラクション及び少なくとも一つの単離された乳酸菌(Lactobacillus)のプロバイオティック株を含む非発酵組成物に関する。
【0012】
本発明は、さらなる態様では、シンバイオティックとしての前記非発酵組成物の使用に関する。
【0013】
本発明は、なおさらなる態様では、メタボリック症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群(IBS)、又は炎症性腸疾患(IBD)の治療に使用のための前記非発酵組成物に関する。
【0014】
本発明は、なおさらなる態様では、健康的な腸粘膜の維持に使用のための、及び/又は腸粘膜の増加した関門機能の提供のための前記非発酵組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、全粒オオムギ(WGB)、モルト(Malt)、又はビール醸造使用済み穀物(BSG)、及びL.ラムノサス(rhamnosus)(Lr)が添加された同様の食事を与えられたラットの盲腸内容物における、乳酸菌(白色バー)、ビフィズス菌(黒色バー)、及び腸内細菌科(チェック模様のバー)の細菌カウントを示す。値は平均であり、WGB、Malt及びBSGのそれら値、すなわち、異なる上付き文字を含む何らかのプロバイオティックを添加されなかったものは、著しく異なった(P<0.05)。平均値は、細菌を含まない食事を与えられたラットについてのものと著しく異なった(*P<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の実施形態の詳細な説明
本発明は、結腸において酪酸の形成を増加させる能力を有し、少なくとも一つの穀物ベースフラクション及び少なくとも一つの単離された乳酸菌のプロバイオティック株を含む非発酵組成物に関する。語句「結腸において酪酸の形成を増加させる能力を有する」の意味は、プロバイオティックを含まない穀物ベースフラクションのみが与えられた場合と比較して、プロバイオティック及び穀物ベースフラクションの双方を含む本非発酵組成物が、結腸中及び血中の酪酸の形成を増加させること(表4及び5を参照のこと)を意味する。表4では、結腸における酪酸の形成が、全粒オオムギについて157%(7から18μmol/gまで)、発芽したオオムギについて50%(12から18μmol/gまで)、及び醸造使用済み穀物について33%(9から12μmol/gまで)増加した。従って、酪酸の形成の増加は、30〜200%の範囲であり、好ましくは、40〜180%の範囲、より好ましくは、50〜160%の範囲である。あるいは、言い換えれば、結腸において形成された酪酸の含量は、14〜20μmol/g、又は>14μmol/gの範囲である。
【0017】
本文脈において、語句「非発酵組成物」は、まだ消化されていない組成物として解釈されるべきである。発酵は、組成物を消費した後、胃腸管において起こるべきであることが意図される。胃腸内発酵の間形成された有機酸は、血液及び盲腸内容物において測定される。本発明の乾燥製品、例えば、シリアル、ミューズリー、パン、ビスケット、シリアル、ヘルスバー、又はスプレッドでは、有機酸は、非発酵のために組成物中に存在しない。湿った製品では、細菌は、胃腸管に入る前に、組成物を発酵することからそれらを防ぐカプセル化された形態中に存在し得る。発酵を防ぐための別の手法は、組成物を低温で保つこと、すなわち適切な温度及び保存期間で、冷蔵、又は冷凍された組成物を保つことである。本発明の非発酵組成物は、乾燥組成物、及び液体組成物でもよい。
【0018】
表5では、門脈中の形成された酪酸含量は測定された。WGBについての増加は133%(46から107μmol/Lまで)、発芽したオオムギについて、117%(96から208μmol/Lまで)、及びBSGについて、56%(53から83μmol/Lまで)である。従って、全ての三つのオオムギフラクションについて、酪酸含量は、>80μmol/Lである。
【0019】
穀物ベースフラクションは、40〜100重量%の範囲で、非発酵組成物中に存在する。組成物の残りの含量は、シンバイオティック組成物を製剤化する技術分野における当業者に明らかである。
【0020】
本発明の結果は大変意外であり、観察された酪酸形成の増加は、穀物ベースフラクションのみを与えた場合と比較して、本発明の組成物を与えた場合、倍化した(表4及び5参照のこと)。
【0021】
本発明の一つの実施形態では、組成物の少なくとも一つの穀物ベースフラクションは、全粒穀物フラクション、例えば、全粒オオムギ、全粒オートムギ、全粒コムギ、全粒ライムギ、又はそれらの組み合わせである。本発明の組成物に用いられる少なくとも一つの穀物ベースフラクションは、本組成物に添加される前に様々な方法で加工され得、例えば、穀物ベースフラクションは挽かれた及び/又は加熱処理された穀物ベースフラクション、又は押し出された、引き伸ばされた穀物ベースフラクション、又はドラム乾燥された穀物ベースフラクション、又は剥離された穀物ベースフラクション、又は蒸気加熱された穀物ベースフラクションでもよい。
【0022】
本発明のさらなる実施形態では、少なくとも一つの穀物ベースフラクションは、オオムギフラクション、オートムギフラクション、コムギフラクション、ライムギフラクション、及びそれらの任意の組み合わせの群から選択される。少なくとも一つの穀物ベースフラクションは、さらに発芽され得、本発明の一つの実施形態では、発芽した穀物ベースフラクションは、モルト、又は醸造プロセスの副産物であるビール醸造使用済み穀物(BSG)である。最初のステップでは、ビールを醸造する場合、オオムギは発芽され、その後ローストされる。モルトは粉砕され、水と混合され、混合物は加熱される。BSGは、混合物が濾過された時の副生成物であり、濾液は次の醸造プロセスステップに続く。BSGはしばしば家畜飼料として用いられているが、過去の研究からの結果は、BSGがヒトの食品においてプレバイオティックとして用いられ得るかどうかを検討する興味があることを示す。
【0023】
本発明の一つの実施形態では、穀物ベースフラクションは、組成物において好適なサイズを有するために挽かれ、ここで、少なくとも一つの穀物ベースフラクションのサイズは、約0.1mm〜10mm、好ましくは0.5mm〜5mmの範囲内ある。
【0024】
乳酸菌の少なくとも一つの単離された株は、106〜1014CFU/日、好ましくは108〜1012CFU/日、より好ましくは、109〜1011CFU/日の量で存在する。CFUは、コロニー形成単位を表し、プロバイオティックの技術分野における当業者によく知られた単位である。
【0025】
本発明の実施形態では、少なくとも一つの単離されたプロバイオティック株は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・プラプランタルム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、及びラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)からなる群から選択される。
【0026】
本発明の一つの実施形態では、少なくとも一つの単離されたプロバイオティック株は、ラクトバチルス・ラムノサス271(DSM6594)である。別の実施形態では、少なくとも一つのプロバイオティック株は、ラクトバチルス・プランタルム299,DSM6595、ラクトバチルス・プランタルム299v,DSM9843、ラクトバチルス・プランタルムHEAL9,DSM15312、ラクトバチルス・プランタルムHEAL19,DSM15313、及びラクトバチルス・プランタルムHEAL99,DSM15316からなる群から選択される。
【0027】
ラクトバチルス・プランタルム299,DSM6595、及びラクトバチルス・ラムノサス271(DSM6594)は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに、1991年7月2日に寄託され、ラクトバチルス・プランタルム299v,DSM9843は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに、1995年3月16日に寄託され、ラクトバチルス・プランタルムHEAL9,DSM15312、ラクトバチルス・プランタルムHEAL19,DSM15313、及びラクトバチルス・プランタルムHEAL99,DSM15316は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに、2002年11月27日に寄託された。少なくとも一つのプロバイオティックは、凍結乾燥成分として、油中にプロバイオティックの形態で、水性溶液又は懸濁液中にプロバイオティックの形態で、スプレー乾燥プロバイオティックの形態で、又は堅い脂肪状態中にプロバイオティックの形態で組成物に提供され得る。
【0028】
本発明の実施形態では、前記組成物は、液体製剤、又は固体製剤である。本発明の組成物が液体、又は固体状態中のいずれかで調製される場合、当該技術分野に用いられるような従来の添加物は、当業者により理解される。
【0029】
別の実施形態では、前記組成物は、医療食品、機能性食品、栄養補助食品、栄養製品、食品、又は食品添加物である。食品添加物は、混合された粉末組成物、又は分離されたそれぞれの成分として、例えば、シリアル、ミューズリー、パン、ビスケット、シリアル、ヘルスバー、又はスプレッドに添加される。最も後者の例は、例えば、関連する食品、例えばミューズリー上に穀物ベースフラクションを広げること、従って、関連するプロバイオティック株を添加することである。本発明の有益な効果は、穀物ベースフラクション及びプロバイオティック株が一緒に摂取された場合に得られる。組み合わせが組成物として与えられることが重要ではないことは、理解されるべきである。例えば、正確には、摂取の前に組成物を混合することは可能である。
【0030】
本発明の別の実施形態では、食品は飲料(drink)、飲料(beverage)、ヨーグルト、ジュース、又はアイスクリームである。従って、組成物は、日常的に、食品の形態で容易に摂取され得ることが理解される。従って、ヒトの一般的な健康は、本発明の組成物の使用により、良くなり得る。
【0031】
本発明の組成物は、シンバイオティックとして用いられ得る。シンバイオティックは、ヒトの腸の「友好的な細菌叢」を向上させるために共に働くプレバイオティック及びプロバイオティックを共に含むサプリメントである。
【0032】
さらなる実施形態では、本発明は、メタボリック症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群(IBS)、又は炎症性腸疾患(IBD)の治療のための組成物の使用に関する。
【0033】
なお別の実施形態では、本発明は、健康的な腸粘膜の維持に、及び/又は腸粘膜の増加した関門機能の提供に使用のための、本明細書で定義されたような組成物に関する。
【実施例】
【0034】
材料及び方法
試験物質の組成物
用いられる原料は、全粒オオムギ(Viking Malt AB,Halmstad,Sweden)、モルト及びビール醸造使用済み穀物(Carlsberg,Falkenberg,Sweden)であった。全粒オオムギ、モルト、及びビール醸造使用済み穀物は、フラワーの同じバッチに由来した。原料は、食事に含まれる前に、約1mmの範囲の粒子径に挽かれた。実験に含まれる細菌株は、L.ラムノサス271(Probi AB,Lund Sweden)であり、それは、凍結乾燥状態で送達された。
【0035】
動物及び実験設計
6つの試験食事は、表1:全粒オオムギ(WGB)を含む一つの参照食事、並びに全粒オオムギ及びL.ラムノサス271(WGB+Lr)、モルト(Malt)、モルト及びL.ラムノサス271(Malt+Lr)、ビール醸造使用済み穀物(BSG)、又はビール醸造使用済み穀物及びL.ラムノサス271(BSG+Lr)を含む5つの試験食事に従って調製された。原料は、80g食物繊維/kg食事(dwb、乾燥重量基準)のレベルで添加された。コムギデンプンは、乾燥物質含量を調節するために用いられ、この種類のデンプンは、完全に消化されることが事前に示されており、従って、何らのCAも形成しない。プロバイオティック株は、2x108コロニー形成単位(CFU)/日の量でそれぞれのラットについて、飼料の時間に、毎日食事に含まれた。
【0036】
表1は、以下の群:L.ラムノサス(Lr)の添加を含む又は含まない、全粒オオムギ(WGB)、モルト(Malt)、又はビール醸造使用済み穀物(BSG)、においてラットに与えられた試験食事の組成を示す(表1)。
【0037】
【表1】

【0038】
雄性ウィスターラット(初期体重、134±1g)は、Scanbur(Sollentuna,Sweden)から得られた。それらは、それぞれ7匹ずつ、ランダムに6つの群に分けられ、12時間の明/暗サイクルで、22℃に維持された部屋の中のメタボリックケージ中で個別に飼われた。飼料摂取は12g/日(dwb)に制限され、ラットは、水への自由なアクセスを与えられた。動物は、7日間食事に適応させ、その後、糞便及び飼料の残りが毎日回収される5日間の延長期間が続けられた。糞便サンプルは、−20℃で保存され、その後凍結乾燥され、食物繊維の分析の前に挽かれた。実験の最後に、動物は、0.15ml/100gの用量で、ヒポノルム(Division of Janssen−Cilag Ltd.,Janssen Pharmaceutica,Beerse,Belgium)、ドルミカム(F.Hoffman−La Roche AG,Basel,Switzerland)、及び滅菌水の混合物(1:1:2)皮下注射により麻酔され、血液、盲腸組織、及び内容物は回収された。血液サンプルは、門脈から集められ、二つのチューブ:EDTAを含む血漿について一つ、及び血清について一つにサンプルされた。血漿及び血清サンプルは、15分(2500xg)遠心分離され、その後アミノ酸及びSCFAの分析まで、−40℃で保存された。盲腸組織重量、内容物、及びpHは、直接測定された。盲腸内容物は、凍結溶媒を含む一つの滅菌チューブに分けられ、微生物の分析のために液体窒素中で即時に凍結され、盲腸内容物の他の部分は、CAの分析まで、凍結され、−40℃で保存され、それはまた、後腸の様々な部分について行われた。
【0039】
分析
食物繊維。重量測定法は、原料中の可溶性及び不溶性食物繊維の量を決定するために用いられた。単離された食物繊維残余物の組成は、それらのアルジトールアセテートとして、中性糖のガス−液体クロマトグラフィー(GLC)を用いて分析され、ウロン酸の含量は、分光光度法を用いて分析された。糞便中の食物繊維モノマーは、食物繊維の単離を事前にすることなく、直接的に特徴付けられた。
【0040】
糞便中のCA。GLC法は、腸内容物(盲腸、近接及び遠位結腸)中のSCFA(酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、カプロン酸、及びヘプタン酸)を分析するために用いられた。希釈溶液(2.5M HCI)及び2−エチル酪酸(内部標準、1mM)は、均質化の前にサンプルに添加された。サンプルは、その後、石英ガラスキャピラリーカラム上への注入の前に、遠心分離された。
【0041】
コハク酸及び乳酸は、市販の酵素法キット(それぞれ、カタログ番号10176281035及び1112821;Boehringer Mannheim,Mannheim,Germany)を用いて、分光光度法で定量化された。手順は、製造者の説明書に従って行われた。
【0042】
血清中のSCFA。血清中のSCFAは、GLC法を用いて分析された。塩酸と共に、水及び2−エチル酪酸(内部標準、1mM)は、サンプルに添加され、その後、中空糸は血清溶液に浸漬され、SCFAを抽出した。抽出後、SCFAは繊維内腔から流し出され、石英ガラスキャピラリーカラム(DB−FFAP 125−3237,J&W Scientific,Agilent Technologies Inc.,Folsom,CA USA)上に注入された。GC ChemStationソフトウェア(Agilent Technologies Inc.,Wilmington,DE,USA)は、分析に用いられた。
【0043】
血漿中のアミノ酸含量。スルホサリチル酸は、高分子量タンパク質を沈殿させることにより、遊離のアミノ酸を純化するために、血漿サンプルに添加された。イオン交換クロマトグラフィーに基づくアミノ酸分析装置(Biochrom 30,Biochrom Ltd,Cambridge,England)は、アミノ酸の量を定量するために用いられた。EZChrom Eliteソフトウェアパッケージ(Scientific Software Inc.,Pleasanton,CA,USA)は、分析に用いられた。
【0044】
腸内微生物叢。
盲腸サンプルは解凍され、その後均質化され、従来の段階希釈手順は完了され、適切な希釈物はアガープレートに広げられた。生菌カウントは、37℃で72時間、嫌気的にインキュベーションされたRogosa agar(Oxoid,Unipath Ltd.,Basingstoke,UK)から(乳酸菌カウント)、37℃で72時間、嫌気的にインキュベーションされたModified Wilkins−Chalgren agar(Oxoid)から(ビフィズス菌カウント)、37℃で24時間好気的にインキュベーションされたviolet red−bile glucose agar VRBG(Oxoid)から(腸内細菌科カウント)得られた。それぞれのプレート上で形成されたコロニーの数は計測され、元のサンプルの重量について補正された。
【0045】
計算及び統計学的分析
それぞれのCA(μmol/g)の濃度は、盲腸内容物の量により掛け算され、盲腸プール(μmol)を得た。少量の飼料残余物について補正するために、プール値は、食物繊維(4.8g)の完全な摂取に外挿された。実験期間の体重増加は、消費されたグラム飼料につき計算された。
【0046】
食物繊維(fiber)、プロバイオティック(Pro)、及びそれらの相互作用(fiberxPro)の効果を決定するために、二要因ANOVAは用いられた(表3〜5、及び7)。一要因ANOVAは、Tukeyの手順を用いることにより、食物繊維の効果、又はプロバイオティック効果を評価するための個別手段のために用いられた。誤差分散が不均一(heterogeneous)であると考えられる場合、データは、ANOVAの前にBoxCox変換により変換された。値は、平均±SEMとして表され、0.05未満のP値をもたらす差異は、有意であると考えられた。全ての計算は、Minitab統計ソフトウェア(リリース14)を用いて行われた。
【0047】
結果
食物繊維の糞便排泄
食物繊維含量は、全粒オオムギ及びモルトにおいて似ている(それぞれ、15.4及び12.1g/100g、dwb)一方で、ビール醸造使用済み穀物は、4〜5倍多くの食物繊維を含む(58.2g/100g、dwb)。食物繊維多糖の主な成分は、グルコース(35〜49%)、キシロース(29〜35%)、及びアラビノース(16〜22%)であった。全粒オオムギ及びビール醸造使用済み穀物中の食物繊維多糖は、ラット結腸において、モルトよりもより発酵された(表2)。モルト中の食物繊維の56パーセントが、糞便に排出される一方で、全粒オオムギ及びビール醸造使用済み穀物において、それぞれ食物繊維の38%及び49%は排出された(P<0.001)。主な成分の中でも、キシロースは、同様に45±4%発酵された一方で、アラビノース及び中でもグルコースは、異なる程度で発酵される(それぞれ、P<0.01及びP<0.001)。グルコースを含むポリマーは、モルトにおいて発酵に対して最も耐性を有し(72%が糞便に排出された)、全粒オオムギにおいて最も発酵された(36%が糞便に排出された)。全粒オオムギのみと比較して、Lrを含む食事においてより発酵された少量のウロン酸の量が存在することを除いては、Lrが食事に添加された場合、発酵の程度において何らかの違いは見られなかった(P=0.040)。
【0048】
【表2】

【0049】
飼料摂取及び体重増加
様々な群におけるラットは、提供された食事のほとんどを食べた(56.6〜59.3g/5日)。さらに、体重増加、盲腸内容物、組織重量、及びpHは、これらの群間でかなり似ていた(表3)。プロバイオティックが食事に添加された場合、いくつかの違いは見られ得た。BSGのラットにおける高い体重増加(P=0.044)、及びWGBにおいて、ともに高い盲腸内容物、組織重量(それぞれ、P=0.019、及びP=0.004)が存在した。低い盲腸pHは、WGB(P=0.011)及びMalt(P=0.032)で見られ得た。バルキング(bulking)能力は、他の製品と比較して、Maltを与えられたラットにおいて高かった(P<0.001)。
【0050】
【表3】

【0051】
ラットの後腸におけるCAの形成
Maltを与えられたラットは、WGBを与えられたラットよりも高いレベル及びCAのプールを有した(それぞれ、79対62μmol/g、P=0.027、及び173対116μmol、P=0.037)一方で、二つの他のオオムギフラクションは、CAの同様の盲腸レベル(62〜66μmol/g)及びプール(123〜173μmol)を有した(表4)。一般的に、プロバイオティック株は、様々な食物繊維フラクションよりもより個別のCAの盲腸レベルに影響を与えた。しかしながら、L.ラムノサスを含む食事と、このプロバイオティック株を含まないそれらに対応する食事の間の有意な個別差は、WGBを与えられたラットにおいてのみ見られた。6つの試験食事を与えられたラットの盲腸において形成された主な酸は、酢酸(62±3%)、続いて酪酸(15±4%)、及びプロピオン酸(14±1%)であった。
【0052】
【表4】

【0053】
Maltを与えられたラットにおける酢酸の盲腸レベルは、WGBを与えられたラットにおいてよりも高く(P=0.035)、それは、酪酸(P=0.016)及び乳酸(P=0.024)と共に見られ得た。さらに、BSGを与えられたラットは、WGB群(P=0.003)よりも乳酸の高いレベルを有した。乳酸及びコハク酸のレベルを除いて、すべての酸のレベルは、プロバイオティックがWGB群に添加された場合(P=0.011〜0.033)よりも高かった。
【0054】
結腸の近接及び遠位部位におけるレベル(データは示されない)は、様々な試験食事と大変似ていた(それぞれ、46〜56μmol/g、及び44〜73μmol/g)。結腸の遠位部位において、食物繊維フラクションは、一般的に、L.ラムノサスと比べて、CAレベルへの大きな影響を有する。しかしながら、酪酸レベルに関する試験物質間で、一つの個別差のみが存在し、すなわち、WGBを与えられたラットは、Maltを与えられたラットよりも、酪酸の低いレベルを有した(P=0.025)。酢酸及びプロピオン酸のレベル、並びに合計遠位レベルは、L.ラムノサスを添加されたMaltを与えられたラットにおいて、Maltのみと比較して高かった。(それぞれ、P=0.02、P=0.048、及びP=0.038)。高いプロピオン酸レベルはまた、WGBのみを与えられたラットにおいてよりも、WGB+Lrを与えられたラットにおいて見られた(P=0.047)。
【0055】
門脈血中のSCFAのレベル
酢酸(976〜1596μmol/l)、プロピオン酸(72〜195μmol/l)及び酪酸(46〜208μmol/l)は、門脈血中の主な酸である(表5)。Maltを与えられたラットは、WGB(それぞれ、P=0.039、及びP=0.011)及びBSG(それぞれ、P=0.020及びP=0.032)を与えられたラットよりも、門脈血中でプロピオン酸及び酪酸の高いレベルを有した。Malt+Lrを与えられたラットは、Malt群と比較して、門脈血中の大変高い酪酸レベルを有した。酪酸レベルの違いは、有意ではなかったが、それに大変近かった(P=0.055)。主でない酸(イソ酪酸、イソ吉草酸、及び吉草酸)は、WGB+Lrを与えられたラットの門脈血において、WGBのみを与えられたラットのものよりも高かった(P=0.040)。
【0056】
【表5】

【0057】
オオムギ製品中のアミノ酸の組成
アミノ酸の合計量は、全粒オオムギ及びモルトにおいて、おおよそ同じであった(9.7g/100g及び9.5g/100g)一方で、ビール醸造使用済み穀物は、大変多く含んだ(24.3g/100g)(表6)。オオムギ製品のアミノ酸パターンは、グルタミン酸に続いて、プロリン、ロイシン、及びアルパラギン酸の最も高い割合は、似ていた。
【0058】
【表6】

【0059】
門脈血におけるアミノ酸の分布
全ての群の19のアミノ酸の検出可能な量は存在したが、有意な差を有するアミノ酸のみ表7に示される。食物繊維フラクションは、プロバイオティック株が与えるのと同様の程度、アミノ酸に影響を与えたが、もっともそれらは同様のアミノ酸に影響を与えなかった。
【0060】
【表7】

【0061】
WGBを与えられたラットは、グルタミン(Maltを与えられた群と比較して、P=0.01)、及びチロシン(BSGを与えられた群と比較して、P=0.027)の最も高い割合を有した一方で、ヒスチジン及びNH4の割合は、三つのフラクションのうち最も低かった(それぞれ、BSGを与えられたラットと比較して、P=0.01、並びにMalt及びBSGと比較して、P=0.01)。グルタミン及びチロシンの割合は、BSG群においてよりも、BSG+Lr群において高かった(それぞれ、P=0.046及びP=0.025)。全体的に見れば、セリン(seronine)の門脈の割合は、BSGを与えられたラットにおいて、他の試験食事よりも高かったが、もっとも、様々な食物繊維フラクションを与えられたラット間の個別の有意性は、見ることができなかった。
【0062】
細菌学
一般的に、ビフィズス菌及び腸内細菌科の生菌盲腸カウントの双方は、食物繊維フラクションにより影響を受け、ビフィズス菌カウントはまた、L.ラムノサスにより影響を受けた(図1)。Maltを与えられたラットは、WGB又はBSGを与えられたラットよりも、ビフィズス菌の低いカウントを有し(6.3±0.2logCFU/g盲腸内容物、対平均7.0±0.1logCFU/g盲腸内容物、P<0.006)、L.ラムノサスがWGB食事に与えられた場合、ビフィズス菌カウントは、WGBのみを与えられたラットにおいてよりも低かった(6.3±0.2logCFU/g盲腸内容物、対6.9±0.1logCFU/g盲腸内容物、P=0.021)。もっと、Malt群における腸内細菌科の生菌カウントは、WGB群においてよりも著しく低くなかったにもかかわらず、p値は、優位性に大変近かった(P=0.059)。
【0063】
酪酸は、例えば、炎症性腸疾患及び結腸癌のリスクを減少させることにより、結腸健康に重要であることが提案されている。これらの効果は、上皮細胞の主なエネルギー源としてその機能、及び細胞増殖及び分化の制御におけるその主な役割により得る。グルタミンはまた、粘膜上皮細胞の主なエネルギー源であることが、報告されており、例えば、腸粘膜を回復及び保護する、並びに細菌転移を予防することができる。大量のβ−グルカン及びグルタミンを含むことが知られているGBFは、潰瘍性大腸炎に罹患した対象において、及びDSS誘導性結腸炎に罹患したマウスの双方において、上皮の炎症反応を減少させることが報告されている。純粋なオオムギβ−グルカンは、ラットにおいてかなり大量の酪酸を与えることがすでに示されており、GBF中のグルタミンは、オオムギ食物繊維と結合するので、粘膜の基質であるとして提案されている。この実験において、3つの異なるオオムギのフラクション単独、又はプロバイオティック株であるL.ラムノサスとの組み合わせは、CAの盲腸形成、SCFA、及び血中アミノ酸のレベルに関してのプロバイオティック製品としてビール醸造使用済み穀物(BSG)の重要な役割、及び全粒オオムギ(WGB)及びモルト(Malt)と比較したラットにおける細菌叢(乳酸菌、ビフィズス菌、腸内細菌科)の盲腸組成、及びL.ラムノサスの添加が任意のさらなる効果を与えるかどうかを評価するために用いられた。
【0064】
Maltは、WGBと比較して、ラットの盲腸、結腸の遠位部分、及び門脈血、並びにBSGとまた比較して門脈血において、酪酸の高いレベルを与えた。プロピオン酸レベルはまた、門脈血においてより高かった。酪酸及びプロピオン酸の双方の増加した循環レベルは、代謝効果と関連している。近年、これらのアミノ酸は、炎症誘導性マーカーを調節し得、そのような方法で代謝障害と関連したパラメータに影響を与え得ることが提案されている。晩におけるオオムギからの増加した食物繊維の摂取はまた、続く標準的な朝食におけるグルコース耐性を改良することが報告され、それは、増加したSCFAの血漿レベルに関連し得る。それは、WBG及びBSGと比較して、Malを与えられたラットにおける変化した盲腸細菌叢が、粘膜を通してSCFAの輸送を促進するかどうかについて推測され得る。微生物叢の組成の重要性は、この点において、プロバイオティック株であるL.ラムノサス271が一般的に、形成されるSCFAのレベル及びパターンに影響を与えたという事実により、さらに確立される。従って、盲腸及び門脈血の双方における酪酸レベルは、株が食事に添加された場合、より高くなる。かなりの個別差は、特に血中において、群間で見られ得るにも関わらず、添加されたプロバイオティックは、明らかに効果を有し、SCFAのレベルを増加させ、それは、表4及び5(Pro)において、全体的な有意性により示された。Malt及びMalt+Lr間の酪酸の差異のp値は、有意性に大変近く(P=0.055)、それは、群におけるさらなるラット、又は延長された実験期間が有意な差を導くかどうかが推測され得る。血中のSCFAの高いレベルは、プロバイオティックが食物繊維に富んだ食事に添加される前に、示されている。しかしながら、盲腸及び門脈血中の特に酪酸のみならずプロピオン酸のレベルは、ブルーベリーの皮を与えられたラットにおけるこの先の実験と比較して、オオムギフラクションを与えられたラットにおいて、著しく高かったことは、言及されるべきである。発酵の増加した程度はまた、プロバイオティックによるpHに反映され、それは、L.ラムノサス271を受けるこれらの群において低かった。この点において、低pHにおいて、潜在的病原菌、例えば、クロストリジウム菌の増殖が減少することは言及する価値があり、従って、それはL.ラムノサス271が病原性細菌叢に対抗し得るように見える。
【0065】
Malを与えられたラットは、結腸の遠位部位において、高い酪酸レベルを有した(WBGと比較して、P<0.05)。食物繊維が、近接結腸のみならず、遠位部位にも達し得ることは、結腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、及び結腸癌は、通常、結腸のこの部分に生じるので、大変重要である。潰瘍性大腸炎に罹患した対象は、β−グルカンに富んだオーツムギのふすまを含む食事の4週間後に、酪酸の彼らの糞便レベルを上昇させ、全体における異なった制御、疾病は、この治療を用いて改良された。同様の結果は、発芽したオオムギ食品を用いて、カナウチ及び協力者により得られた。
【0066】
盲腸プール及びCAのレベルは、WGBと比較して、Malを与えられたラットにおいて高く、それは、食物繊維の発酵の高い程度を示す。しかしながら、モルトにおいて、食物繊維多糖を含むグルコースを含む食物繊維は、研究された三つのオオムギフラクションのうちで最も少なく発酵された。もっともらしい説明は、全粒オオムギ中の食物繊維は、発芽の間に分解され、食物繊維分析において、エタノール中で沈殿しないということであり得る。これは、実際にMalを与えられたラットについての食物繊維摂取は、他のオオムギ調製物を用いたものよりも高く、CAの高い形成を導くことを意味する。表2における値は、食物繊維分析に基づき、すなわち、ポリマー化の高い程度(約20)を有する多糖のみが測定され、見かけの発酵の低い程度をもたらす。しかしながら、これは、この方法のみに関する問題ではなく、全ての現在用いられる食物繊維方法論に関する問題である。発酵計算においてポリマー化の低い程度の難消化性の糖質を含むことは、約36%まで糞便排出を減少させる。BSGは、恐らく、完全な発酵されないとして知られる、多糖を含むセルロースの富化により、最も少なく発酵された(WGBと比較して、P<0.05)。
【0067】
ビフィズス菌カウントの数は、他のオオムギフラクションを用いたものよりも、Maltを用いたものの方が低かった。もっとも、この実験における細菌カウントは、全微生物叢について計測されておらず、それは、微生物叢が変化したことを示し得る。変化した微生物叢はまた、発酵についての他の経路、及び他のオオムギ製品と比較して、Malを与えられたラットにおける盲腸及び結腸の遠位部位において、酪酸の高いレベルにより判断されるような、分解産物の変化した形成をもたらし得る。
【0068】
アミノ酸として測定されたタンパク質の全量は、モルト及び全粒オオムギにおいてよりもビール醸造使用済み穀物において3倍近く高かった一方で、タンパク質の組成物は、三つのオオムギフラクションにおいて大変似ていた。食事におけるオオムギフラクションのタンパク質の寄与は、しかしながらMaltで最も高かった(表6)。それにもかかわらず、門脈血におけるアミノ酸の合計量に差異はなかった。しかしながら、いくつかの差異はアミノ酸の分布において見られ、WGBを与えられたラットは、Maltを与えられたラットよりも、血漿中のグルタミンの高い割合を有した。この実験では、全粒オオムギが、発酵のために結腸に到達し得るグルタミンを含む難消化性のタンパク質を含むかどうかは、測定されていない。酪酸の増加した形成は、グルタミンの必要性を減少させ得、従って循環するグルタミンレベルを増加させることが提案されている。大量の酪酸を与えるモルトは、他のオオムギフラクションよりも、ラットの血漿中のグルタミンの何らかの高いレベルを示さず、少しの程度もグルタミンが結腸に達せず、従ってそこで吸収されないことを示す。実際、タンパク質源としてカゼインを含む食事におけるブルーベリーの皮は、同様の動物モデルを用いたこの実験のように、グルタミンの同様の血漿レベルを与えることが示されている(データは公開されていない)。これは、この実験に用いられたオオムギフラクションのうちで、カゼインよりもグルタミンの血漿レベルを増加させるものはないことを示唆し得る。潰瘍性大腸炎に罹患したヒト、及びDSS誘導性大腸炎に罹患したラットにおいて、GFBの有益な効果は、部分的にグルタミンによるものとみなされる。
【0069】
試験物質においてグルタミンを分析する場合、いくつかの困難性が存在する。酸加水分解の間、グルタミンはグルタミン酸に変換され、グルタミン酸の量はまた、従って、グルタミンの量を含む。しかしながら、グルタミン酸の微量のみが、発芽したオオムギ食品において発見され、それ故、測定された量の多くは、グルタミンであるべきである。さらに、オオムギ中のグルタミンは、結腸に達する食物繊維と結合し、食物繊維発酵後、結腸粘膜の基質となることが報告されている。しかしながら、グルタミンは、大変不安定なアミノ酸であることが知られており、食物繊維と結合しなかったグルタミンの大部分は、胃酸により分解される。Malt群は、グルタミンの低い血漿レベルを有し、これがいくつかの方法において発芽するプロセスと関連するかどうかが推測され得る。上述のように、食物繊維が発芽の間分解される場合、それはごく少量の結合したグルタミンをもたらし得ると考えられる。
【0070】
Malt群におけるアンモニア血漿レベルは、WGB及びBSGを与えられたラットにおいてよりも高かった。門脈中のアンモニアの供給源は複雑であり、しかしいくつかは、グルタミンの代謝から生じる。これは、Malt群におけるグルタミンの低い割合についての別の理由であり得る。ヒトにおける先の研究は、糞便のビフィズス菌の増加した数が、糞便及び血液中のアンモニアの減少したレベルと関連したことを示す。ビフィズス菌種は、それらの成長の窒素源としてアンモニアを使用することが知られている。Maltを与えられたラットは、盲腸のビフィズス菌の低い生菌カウントを有し、これは、門脈血において見られるアンモニアの高い割合を説明し得ることを示す。アンモニアは、細胞に対して毒性があり、及びDNAの合成を変更することを示し、従って、ヒトにおいて発癌のプロモーターであることが提案されている。Maltを与えられたラットにおいてアンモニアのレベルを減少させる一つの方法は、ビフィズス菌を添加することでもあり得る。この実験に用いられたL.ラムノサスは、減少しなかったが、むしろ血中のアンモニアレベルを増加させた。
【0071】
結論として、本発明に従って行われた本実験において、プロバイオティック株との組み合わせにおける、全粒オオムギ、ビール醸造使用済み穀物、又は発芽したオオムギの形態におけるオオムギは、オオムギフラクションがそれらにより与えられた状況と比較して、結腸(表4を参照のこと)、及び血液(表5を参照のこと)において酪酸の形成を著しく増加させた。表5に見ることができるように、増加は、血中において、WGB及びMaltについて2倍以上であり、BSGについてほぼ2倍である。これらの成分を含む組成物の商業的関心は、酪酸と関連のある多くの有益な効果の観点か理解される。従って、最も大きい効果、例えば、盲腸及び門脈血における増加した酪酸レベルはWBGと一緒に示されたが、プロバイオティック株であるL.ラムノサスがオオムギフラクションに添加された場合、酪酸のみならずCAの形成は増加した。穀物類のオオムギ、オーツムギ、及びライムギの類似性を考慮して、同様の結果は、他の穀物を用いても得られることが予期される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸において酪酸の形成を増加させる能力を有し、少なくとも一つの穀物ベースフラクション及び少なくとも一つの単離された乳酸菌のプロバイオティック株を含む非発酵組成物。
【請求項2】
少なくとも一つの前記穀物ベースフラクションが、全粒穀物フラクションである、請求項1に記載の非発酵組成物。
【請求項3】
少なくとも一つの前記穀物ベースフラクションが、挽かれた及び/又は加熱処理された穀物ベースフラクション、押し出された、引き伸ばされた穀物ベースフラクション、ドラム乾燥された穀物ベースフラクション、剥離された穀物ベースフラクション、又は蒸気加熱された穀物ベースフラクションである、請求項1又は2に記載の非発酵組成物。
【請求項4】
少なくとも一つの前記穀物ベースフラクションが、オオムギフラクション、オートムギフラクション、コムギフラクション、ライムギフラクション、及びそれらの任意の組み合わせの群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の非発酵組成物。
【請求項5】
少なくとも一つの前記穀物ベースフラクションがさらに発芽される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の非発酵組成物。
【請求項6】
発芽した前記穀物ベースフラクションが、ビール醸造使用済み穀物又はモルトである、請求項5に記載の非発酵組成物。
【請求項7】
少なくとも一つの前記穀物ベースフラクションのサイズが、約0.1mm〜10mmの範囲である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の非発酵組成物。
【請求項8】
少なくとも一つの乳酸菌の単離された株が、106〜1014CFU/日、好ましくは108〜1012CFU/日、より好ましくは、109〜1011CFU/日の量で存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の非発酵組成物。
【請求項9】
少なくとも一つの単離された乳酸菌のプロバイオティック株が、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・プラプランタルム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、及びラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の非発酵組成物。
【請求項10】
少なくとも一つの単離されたプロバイオティック株が、ラクトバチルス・ラムノサス271,DSM6594である、請求項9に記載の非発酵組成物。
【請求項11】
少なくとも一つのプロバイオティック株が、ラクトバチルス・プランタルム299,DSM6595、ラクトバチルス・プランタルム299v,DSM9843、ラクトバチルス・プランタルムHEAL9,DSM15312、ラクトバチルス・プランタルムHEAL19,DSM15313、及びラクトバチルス・プランタルムHEAL99,DSM15316からなる群から選択される、請求項10に記載の非発酵組成物。
【請求項12】
前記組成物が、医療食品、機能性食品、栄養補助食品、栄養製品、食品又は食品添加物である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の非発酵組成物。
【請求項13】
前記食品添加物が、シリアル、ミューズリー、パン、ビスケット、シリアル、ヘルスバー、又はスプレッドに添加される、請求項12に記載の非発酵組成物。
【請求項14】
前記食品が、飲料(drink)、飲料(beverage)、ヨーグルト、ジュース、又はアイスクリームである、請求項12に記載の非発酵組成物。
【請求項15】
メタボリック症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群(IBS)、又は炎症性腸疾患(IBD)の治療に使用のための、請求項1〜14のいずれか一項に記載の非発酵組成物。
【請求項16】
健康的な腸粘膜の維持における使用のため、及び/又は腸粘膜の増加した関門機能の提供のための、請求項1〜14のいずれか一項に記載の非発酵組成物。
【請求項17】
メタボリック症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群(IBS)、又は炎症性腸疾患(IBD)の治療のための組成物の製造のための、請求項1〜14のいずれか一項に記載の非発酵組成物の使用。
【請求項18】
シンバイオティックとしての、請求項1〜14のいずれか一項に記載の非発酵組成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2013−515051(P2013−515051A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545906(P2012−545906)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051464
【国際公開番号】WO2011/078781
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512161192)プロビ アクティエボラーグ (1)
【Fターム(参考)】