説明

穀物乾燥装置

【課題】穀物貯留槽内に上部コンベアの底面から分散流下して堆積させたうえ、さらに上部コンベの側面から穀物を押し出し続けて堆積高さのムラを解消して所定満量分の穀物を貯留するとともに、必要に応じて循環乾燥により嵩目減り分に見合う量の穀物を高密度状態に貯留して、穀物貯留槽の容積に対する有効利用率の向上を図ることができる穀物乾燥装置を提供する。
【解決手段】乾燥機本体1の上段に穀物貯留槽2、中段に通風乾燥部3、下段に穀物取出槽4をそれぞれ設ける。穀物貯留槽2の天面壁15の内面に沿って穀物を張り込む上部コンベア6を設ける。上部コンベア6は搬送樋16内に搬送スクリュー17を備えていて、供給される穀物を搬送過程で搬送樋6の底面から下方に分散流下させる機能と搬送樋の側方に押し出す機能とを有する構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥機本体の穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部を経て循環流動させながら乾燥する穀物乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾燥機本体の上段に穀物貯留槽、中段に通風乾燥部、下段に穀物取出槽をそれぞれ設け、穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部、穀物取出槽、穀物貯留槽の経路で循環流動させながら乾燥する穀物乾燥装置において、穀物貯留槽内の上部に穀物を張り込む上部コンベアを設けた構成は、特開2009−275983号公報、特開2004−28372号公報、特開2000−320970号公報及び特開平8−285452号公報に記載されている。また、穀物乾燥貯蔵庫などの穀槽において、穀槽内に投入する穀物が満量に達したことを検出する装置を備えることは特開2000−29号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−275983号公報
【特許文献2】特開2004−28372号公報
【特許文献3】特開2000−320970号公報
【特許文献4】特開平8−285452号公報
【特許文献5】特開2000−29号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特許文献1,2,3,及び4に記載されている構成においては、穀槽内に穀物を均等に配分して張り込むため、上部コンベアの搬送終端を穀槽の中心部に臨ませてあって、かつその位置に穀物拡散回転体を備えている。また、前掲の特許文献5に記載されている構成においては、穀槽の中心に位置する穀物投入口の下方に穀物拡散回転体を備えている。
【0005】
しかしながら、このような穀物均等配分装置による投入穀物の分配だけでは、穀槽内の全体にわたって穀物を均等高さに堆積させることができず、穀槽内には穀物を堆積高さの高いところや低いところが生じてしまうので、これが穀槽の容積に対する有効利用率を低下させる原因となっている。
【0006】
そこで本発明は、このような問題点を解消するため、穀物貯留槽内の上部で穀物貯留の満量堆積位置に設ける上部コンベアを、搬送樋内に搬送スクリューを備えていて供給される穀物を搬送過程で搬送樋の底面及び底面の先端から下方に分散流下させる機能と搬送樋の側方に押し出す機能とを有するものとすることにより、穀物貯留槽内に上部コンベアの底面及び底面の先端から分散流下して堆積させたうえ、さらに上部コンベの側面から穀物を押し出し続けて堆積高さのムラを解消して所定満量分の穀物を貯留するとともに、必要に応じて循環乾燥により嵩目減り分に見合う量の穀物を高密度状態に堆積貯留して、穀物貯留槽の容積に対する有効利用率の向上を図ることができる穀物乾燥装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に係わる穀物乾燥装置は、乾燥機本体の上段に穀物貯留槽、中段に通風乾燥部、下段に穀物取出槽をそれぞれ設け、穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部、穀物取出槽、穀物貯留槽の経路で循環流動させながら通風乾燥部で通風乾燥する穀物乾燥装置において、前記穀物貯留槽内の上部で所定の穀物満量堆積位置に、穀物貯留槽内に穀物を張り込む上部コンベアを設け、前記上部コンベアは搬送樋内に搬送スクリューを備えていて、供給される穀物を搬送過程で搬送樋の底面から下方に分散流下させる機能と搬送樋の側方に押し出す機能とを有する構成であることを特徴とするものである。
【0008】
そして本発明においては、上部コンベアは、その搬送樋の底面に搬送方向にわたって複数の穀物流下口を設けるとともに、搬送樋内における搬送圧力の上昇にともなって搬送樋の側方に開く複数の穀物押出口を設けてあること、及び上部コンベアは、穀物貯留槽の天面壁内面に沿って設けてあることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、穀物貯留槽内の上部で穀物貯留の満量堆積位置に設ける上部コンベアを、搬送樋内に搬送スクリューを備えていて供給される穀物を搬送過程で搬送樋の底面から下方に分散流下させる機能と搬送樋の側方に押し出す機能とを有するものとすることにより、穀物貯留槽内に上部コンベアの底面から分散流下して堆積させたうえ、さらに上部コンベの側面から穀物を押し出し続けて堆積高さのムラを解消して所定満量分の穀物を貯留するとともに、必要に応じて循環乾燥により嵩目減り分に見合う量の穀物を高密度状態に貯留して、穀物貯留槽の容積に対する有効利用率の向上を図ることができる効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態を示す穀物乾燥装置の一部を破断して示す全体斜視図である。
【図2】上部コンベア部分の斜視図である。
【図3】同上一部を破断して示す斜視図である。
【図4】図3のA−A拡大断面図である。
【図5】図3の矢視Y方向の断面図である。
【図6】本発明の作用説明図である。
【図7】通風乾燥部及び穀物取出槽部の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面において、1は乾燥機本体であって、この乾燥機本体1の上段には穀物貯留槽2が、また中段には通風乾燥部3が、さらに下段には穀物取出槽4がそれぞれ設けられている。穀物取出槽4の下部にはその前後方向全長にわたる穀物搬出コンベア5が設けられており、穀物搬出コンベア5と穀物貯留槽2の上方の上部コンベア6間は昇降機7によって連絡されていて、穀物搬出コンベア5、昇降機7および上部コンベア6を介して、穀物貯留槽2、通風乾燥部3、穀物取出槽4、穀物貯留槽槽2の経路で穀物が循環されるように構成されている。
【0012】
上記通風乾燥部3は、多孔状の通気壁により形成された複数の熱風供給胴8と、多孔状の通気壁により形成された複数の排風胴9を交互に対向配置してそれらの間にそれぞれ乾燥通路10を形成しており、通風乾燥部3を構成する熱風供給胴8は熱風供給室に、かつ排風胴9は排風室にそれぞれ連通していて、排風室の一端側には吸引送風機11を備えている。
【0013】
穀物取出槽4は、その上部両側から穀物搬出コンベア5の搬送樋にかけて傾斜する流穀板と両側壁とで囲まれて形成されている。穀物取出槽4内には、遠赤外線放射体12が配設されており、この遠赤外線放射体12は、穀物取出槽4の前後方向略全長にわたる円筒形のものである。この遠赤外線放射体12から放射される遠赤外線は、通風乾燥部3の乾燥通路10から繰出ロール13の回転により繰り出されて、流穀板面上を穀物が散粒状ないし薄層状に流下する穀物に照射される。遠赤外線放射体12の一端には、ガンタイプのバーナが設けられており、遠赤外線放射体12の排気側には排気筒が接続されている。なお、遠赤外線放射体12は低速で連続回転する構造となっている。14は穀物張込ホッパであって昇降機7の穀物供給部に接続されている。
【0014】
穀物貯留槽2内に穀物を張り込む上部コンベア6は、昇降機7から供給される穀物を穀物潮流槽2内に分散流下させるものであり、穀物貯留槽2の天面壁15の内面に沿って設けられている。すなわち、この実施の形態では穀物貯留槽2の天面壁15の内面が所定の穀物満量堆積位置に当たるが、所定の穀物満量堆積位置は天面壁15の内面からやや低い位置に設定することもある。
【0015】
上部コンベア6は昇降機7に接続されたその搬送基端から天面壁15の内面に沿って昇降機7と反対方向に向かって穀物貯留槽2の幅約半分の位置まで搬送樋16が延びており、搬送樋16内には搬送スクリュー17を備えていて、その搬送スクリュー17の回転軸18は穀物貯留槽2の幅約半分の位置よりさらに延びていてモータ19と連動している。上部コンベア6の搬送樋16は、その底面20の搬送始端部および搬送中間部にそれぞれ穀物流下口21,22が開口しているとともに、搬送樋16の搬送終端は穀物貯留槽2の幅約半分の位置で開口して穀物流下口23をなしている。搬送樋16の穀物流下口21,22はいずれも開口度が調節可能となっており、搬送始端側の穀物流下口21はその搬送下流位置となる穀物流下口22より開口度を小さく設定して、搬送樋16内を搬送スクリュー17により搬送される穀物が成るべく均等に流下するように調節するものとする。
【0016】
上部コンベア6の搬送樋16は、その底面20に至る両側面が傾斜側面板24,24となっており、その傾斜側面板24,24の前記穀物流下口21,22に対応する位置が側面開口部25,25となっていて、側面開口部25,25は側方に開く垂下状シャッタ26,26によって塞がれている。この垂下状シャッタ26,26は搬送樋16内における搬送圧力の上昇にともなって開き、搬送樋16内を搬送される穀物がその側方に押し出されるようになっている。なお、図示の実施の形態では側面開口部25,25を両側面に設けているが、これは片面だけでも又両面交互に設けた構成とすることもできる。
【0017】
穀物貯留槽2に穀物を張り込むには、穀物張込ホッパ14に穀物を投入するが、穀物張込ホッパ14に投入された穀物は昇降機7で揚送されて上部コンベア6に供給され、その搬送樋16の底面の穀物流下口21,22,23から分散されて穀物貯留槽2内に順次堆積される。そして、穀物貯留槽2内で堆積する穀物の高さが搬送樋16の穀物流下口21,22,23を塞ぐ位置に到達すると、搬送樋16内を搬送スクリュー17で搬送される穀物の搬送圧力が上昇するにともなって側面開口部25,25の垂下状シャッタ26,26が押し開かれて穀物は側面開口部25,25から穀物貯留槽2内の穀物堆積上面を滑るように押し出されていく。このため、穀物貯留槽2内の穀物堆積上面が均されて全体に均等な堆積状態とし、堆積高さのムラを解消して所定満量分の穀物を貯留することができる。
【0018】
また、前記のように穀物貯留槽2内の穀物堆積上面が均されて全体に均等な堆積状態となった時点で、さらに穀物の投入供給を継続した場合には、穀物貯留槽2内の穀物堆積層が穀物貯留槽2の天面壁15まで達した状態でさらに搬送樋16の側面開口部25,25から穀物が押し出して、穀物貯留槽2内に穀物堆積密度を高くして張り込み量を増やし、循環乾燥により生じる嵩目減り分に見合う量の穀物を高密度状態に貯留して、穀物貯留槽の容積に対する有効利用率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0019】
1 乾燥機本体
2 穀物貯留槽
3 通風乾燥部
4 穀物取出槽
5 穀物搬出コンベア
6 上部コンベア
7 昇降機
8 熱風供給胴
9 排風胴
10 乾燥通路
11 吸引送風機
12 遠赤外線放射体
13 繰出ロール
14 穀物張込ホッパ
15 天面壁
16 搬送樋
17 搬送スクリュー
18 回転軸
19 モータ
20 底面
21,22、23 穀物流下口
24、24 傾斜側面板
25,25 側面開口部
26,26 垂下状シャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機本体の上段に穀物貯留槽、中段に通風乾燥部、下段に穀物取出槽をそれぞれ設け、穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部、穀物取出槽、穀物貯留槽の経路で循環流動させながら通風乾燥部で通風乾燥する穀物乾燥装置において、
前記穀物貯留槽内の上部で所定の穀物満量堆積位置に、穀物貯留槽内に穀物を張り込む上部コンベアを設け、
前記上部コンベアは搬送樋内に搬送スクリューを備えていて、供給される穀物を搬送過程で搬送樋の底面から下方に分散流下させる機能と搬送樋の側方に押し出す機能とを有する構成であること
を特徴とする穀物乾燥装置。
【請求項2】
上部コンベアは、その搬送樋の底面に搬送方向にわたって複数の穀物流下口を設けるとともに、搬送樋内における搬送圧力の上昇にともなって搬送樋の側方に開く複数の穀物押出口を設けてあることを特徴とする請求項1記載の穀物乾燥装置。
【請求項3】
上部コンベアは、穀物貯留槽の天面壁内面に沿って設けてあることを特徴とする請求項1又は2記載の穀物乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−122627(P2012−122627A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271354(P2010−271354)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(308020892)金子農機株式会社 (21)
【Fターム(参考)】