説明

穀物保存具及び穀物の保存方法

【課題】高価な設備を必要とせず、大量に保存することができ、ランニングコストも不要な穀物保存具を提供する。
【解決手段】穀物を収容するためのガスバリア性の密閉容器1と、穀物と共に密閉容器1に収容される脱酸素剤2とを備える。脱酸素剤2による脱酸素状態でガスバリア性の密閉容器1に穀物Rを密閉して保存することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾、玄米、白米(精白米)などの穀物を長期間保存するための穀物保存具及び穀物の保存方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、穀物の保存(貯蔵、保管も含む)に際し、保存性や食味の向上あるいは害虫の予防などのために低温庫が用いられている(特許文献1参照)。このような低温庫は庫内の温度を冷凍機で10℃前後に維持しながら、庫内に穀物を保存するものである。
【特許文献1】特開平5−168342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、低温庫による保存では、高価な低温庫を購入しなければならず、また、低温を維持するための冷凍機のランニングコストも高くなり、さらに、保存量も庫内容量に限定されるという問題があった。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高価な設備を必要とせず、大量に保存することができ、ランニングコストも低く抑えることができる穀物保存具及び穀物の保存方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の穀物保存具は、酸素の透過を遮断するガスバリア性を有し、穀物Rを収容するための密閉容器1と、穀物Rと共に密閉容器1に収容される脱酸素剤2とを備えて成ることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の穀物の保存方法は、酸素の透過を遮断するガスバリア性を有する密閉容器1に穀物Rと脱酸素剤2とを収容し、密閉容器1を密閉することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
脱酸素剤2による脱酸素状態でガスバリア性の密閉容器1に穀物を密閉して保存することができ、穀物の酸化を防止して品質の劣化を防止することができると共にカビや害虫の発生も防止することができるものである。しかも、従来の低温庫のような高価な装置を必要とせず、また、低温にするための冷凍機の運転も不要でランニングコストを低く抑えることができ、さらに、所定容量の保存庫も不要であり、穀物を長期間にわたって安価に品質劣化なく保存することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0009】
本発明の穀物保存具は、密閉容器1と脱酸素剤2とを備えて形成されている。
【0010】
本発明の密閉容器1としては、例えば、ドライフード用として好適に使用されているものであって、内部を密閉状態(自然に通気しない状態)に維持することが可能であり、酸素の透過度が低いガスバリア性を有する容器であればいずれでも使用することができる。例えば、ガスバリア性を有する樹脂の箱状容器や袋体やボトル、金属缶、ガラス瓶などを密閉容器1として用いることができる。ガスバリア性を有する樹脂としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)やエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などを例示することができ、このような樹脂をフィルムにして袋体を形成することができる。また、アルミニウムやシリカやアルミナなどをポリエステルフィルムなどの基材に蒸着した蒸着フィルムを用いて袋体を形成することができる。本発明では、密閉容器1が酸素透過率1〜150ml/m・24hrs・MPa(JIS K 7126準拠、20℃、80%R.H.)が好ましく、また、厚み30〜300μmであればよいが、これらに限定されるものではない。
【0011】
また、密閉容器1はその開口部3を閉塞手段4により閉口することができる。袋体の密閉容器1ではチャックやジッパーなど閉塞手段4として設けて閉口できるようにしてもよいし、クリップ等の挟着具を用いて閉口できるようにしたり、あるいは開口部3を熱溶着(ヒートシール)や接着剤、粘着テープ等の接着手段により閉口できるようにしてもよい。箱状の密閉容器の場合は蓋で開口部を閉口できるようにすることができる。
【0012】
脱酸素剤2としては、酸素を吸着して保持できるものであれば何でも使用することができ、例えば、三菱ガス化学株式会社製のエージレス(登録商標)や使い捨てカイロなどの鉄粉の酸化により酸素を吸着するものを用いることができる。
【0013】
そして、本発明の穀物保存具で穀物を保存するにあたっては、密閉容器1に穀物Rと脱酸素剤2とを収容した後、密閉容器1の開口部3を閉塞して密閉状態にする。これにより、密閉後の密閉容器1内の酸素が脱酸素剤2により除去されることになり、穀物の酸化を防止することができると共に好気性のカビの発生を防止することができるものである。また、コクヌストなどの病害虫の発生も防止することができるものである。従って、品質劣化を速度を遅くして穀物Rを常温で長期間保存することができるものである。特に、梅雨の時期では湿気の影響により穀物が劣化しやすいが、本発明では密閉されているために湿気の影響も少なくなり、梅雨の前後でも品質の劣化を防止することができるものである。また、密閉容器内を真空にしたり空気を窒素ガスに置換する場合に比べて、手間やコストを抑えることができるものである。
【0014】
尚、穀物が紙袋等の他の包装体で包装されている場合は、その包装体に入れたままで密閉容器に収容することができる。また、穀物は、籾、玄米、白米などの各種のものに適用可能である。
【実施例】
【0015】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0016】
(実施例1)
密閉容器として、ガスバリア性を有する樹脂フィルム製の袋体(布団圧縮袋として市販されているもの)を用いた。脱酸素剤としては携帯用の使い捨てカイロを用いた。
【0017】
そして、玄米30kgを販売用の通気性のある紙袋に入れたまま、密閉容器に収容すると共に脱酸素剤も密閉容器に入れ、密閉容器の開口端部を折り返した後、粘着テープで開口部を閉塞した。この後、暗所の常温下で保存した。
【0018】
(実施例2)
穀物として白米30kgを用い、紙袋に入れずに直接密閉容器に収容した以外は実施例1と同様にした。
【0019】
(比較例1)
玄米30kgを販売用の通気性のある紙袋に入れたまま、暗所の常温下で保存した。
【0020】
(比較例2)
白米を米びつで保存した。
【0021】
(比較例3)
玄米30kgを販売用の通気性のある紙袋に入れたまま、低温庫を用いて10℃で保存した。
【0022】
[評価試験]
実施例1、2及び比較例1〜3で得られた玄米及び白米の評価試験を行った。評価試験は、所定の保存期間後の玄米及び白米を炊飯し(玄米は精米後に炊飯)、得られた米飯の外観(つや、ふっくらした感じ)、食味、食感、においを総合的に評価した。試験人は10人とし、保存期間を三ヶ月、六ヶ月、十二ヶ月、十八ヶ月とした。評価は「非常に良い」を◎、「良い」を○、「普通」を△、「悪い」を×とした。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
実施例1、2と比較例1、2とを対比すると、実施例1、2では、玄米及び白米共に、一年以上でも品質の劣化が少なく保存できたのに対して、比較例1では特に一年以上保存した場合に品質の劣化が見られ、白米である比較例2では短期間の保存であっても劣化が進んだ。
【0025】
また、実施例1、2と比較例3とを対比すると、比較例3は低温保存であるため、実施例1、2と同様に長期間にわたって品質の劣化を防止できたが、冷凍機の運転コストが多大となった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は本発明の実施の形態の一例を示す斜視図、(b)は使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 密閉容器
2 脱酸素剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素の透過を遮断するガスバリア性を有し、穀物を収容するための密閉容器と、穀物と共に密閉容器に収容される脱酸素剤とを備えて成ることを特徴とする穀物保存具。
【請求項2】
酸素の透過を遮断するガスバリア性を有する密閉容器に穀物と脱酸素剤とを収容し、密閉容器を密閉することを特徴とする穀物の保存方法。


【図1】
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【公開番号】特開2010−148424(P2010−148424A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329857(P2008−329857)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(509000932)
【Fターム(参考)】