説明

穀物燥機における穀物張込装置

【課題】 穀物乾燥機に張り込まれる穀物に塵埃などが多く含まれていても昇降機に搬送される前に吸引排除するとともに、穀物張込ホッパに投入される穀物が湿気等により流動性が悪くても詰まりが生じるのを防止して円滑に張り込み供給することができる穀物燥機における穀物張込装置を提供する。
【解決手段】 穀物乾燥機1は、乾燥機本体の穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部を経て循環流動させながら乾燥する構成である。熱風供給胴8と排風胴9を交互に対向配置して乾燥通路10を形成する通風乾燥部3の排風胴9は排風室11に連通させていて、排風室11の一端側には吸引送風機12を備えている。穀物貯留槽に穀物を張り込みまたは循環させる昇降機7の穀物供給部には排塵室16を介在させて穀物張込ホッパ17を接続するとともに、排塵室16を排風室11に連通させて吸引排塵するように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥機本体の穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部を経て循環流動させながら乾燥する穀物燥機における穀物張込装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾燥機本体の上段に穀物貯留槽、中段に通風乾燥部、下段に穀物取出槽をそれぞれ設け、穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部、穀物取出槽、穀物貯留槽の経路で循環流動させながら乾燥する穀物乾燥装置は、特開2007−292337号公報に記載されている。また、穀物乾燥装置の内部で穀物が搬送される通過部(昇降機)と連通した排塵装置を設けた構成は、特開2008−51385号公報および特開2009−198027号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−292337号公報
【特許文献2】特開2008−51385号公報
【特許文献3】特開2009−198027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
穀物乾燥機における張込ホッパは、昇降機もしくは昇降機付近の搬送部の一部に取付けられており、コンバイン等の刈取収穫機で収穫された穀物は集穀袋に袋詰めされて運ばれ、収穀袋から穀物を穀物乾燥機の張込ホッパに投入するか、あるいはグレンタンク等の搬送装置を用いて穀物乾燥機への穀物の投入作業を行なっている。
【0005】
コンバイン等の刈取収穫機よって収穫された穀物は水分を多く含んでいるうえ泥や藁屑などの塵埃が多く含まれているので、穀物乾燥機の張込ホッパに投入された穀物からは昇降機に供給される前に塵埃などを除去することが望ましく、前掲の特許文献2,3にもそのことが紹介されている。また、穀物乾燥機の張込ホッパに張り込まれる穀物は湿気が多いためその流動性が悪く、張込ホッパに詰まりが生じてその除去等の対応のため、乾燥作業にしばしば支障をきたすことも指摘されていた。
【0006】
そこで本発明は、このような問題点を解消するため、乾燥機本体の穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部を経て循環流動させながら乾燥する穀物乾燥機において、穀物貯留槽に穀物を張り込みまたは循環させる昇降機の穀物供給部には排塵室を介在させて穀物張込ホッパを接続するとともに、前記排塵室を吸引送風機を備える排風室に連通させて吸引排塵するように構成したことにより、穀物乾燥機に張り込まれる穀物に塵埃などが多く含まれていても昇降機に搬送される前に吸引排除するとともに、穀物張込ホッパに投入される穀物が湿気等により流動性が悪くても詰まりが生じるのを防止して円滑に張り込み供給することができる穀物燥機における穀物張込装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、請求項1ないし請求項4記載の穀物乾燥機における穀物張込装置を提案するものである。
【0008】
すなわち、請求項1記載の穀物乾燥機における穀物張込装置は、乾燥機本体の穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部を経て循環流動させながら乾燥する穀物乾燥機において、熱風供給胴と排風胴を交互に対向配置して乾燥通路を形成する通風乾燥部の熱風供給胴は熱風供給室に、かつ排風胴は排風室にそれぞれ連通させていて、排風室の一端側には吸引送風機を備えており、前記穀物貯留槽に穀物を張り込みまたは循環させる昇降機の穀物供給部には排塵室を介在させて穀物張込ホッパを接続するとともに、前記排塵室を前記排風室に連通させて吸引排塵するように構成してあることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2記載の穀物乾燥機における穀物張込装置は、請求項1の構成において、排塵室は、その内部が穀物張込ホッパの流下口に対して下方分岐路と上方分岐路を成していて、その下方分岐路が昇降機の穀物供給部に接続され、かつその上方分岐路が排風室に接続されており、前記上方分岐路内には撹乱気流を生じさせて穀物と塵埃とを分離させるための邪魔板を設けてあることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3の穀物乾燥機における穀物張込装置は、請求項1または2の構成において、排塵室の上面は外気に対する通気面としてあるとともに、その開口度調節のためのシャッタを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、請求項4の穀物乾燥機における穀物張込装置は、請求項1,2または3の構成において、昇降機の穀物供給部には、穀物の循環経路を成す穀物搬出コンベアの一端部が接続されていて、排塵室の下方分岐路が穀物搬出コンベアの一端部の拡散羽根に対応して開口している構成であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、穀物乾燥機に張り込まれる穀物に塵埃などが多く含まれていても昇降機に搬送される前に吸引排除するとともに、穀物張込ホッパに投入される穀物が湿気等により流動性が悪くても詰まりが生じるのを防止して円滑に張り込み供給することができる穀物燥機における穀物張込装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】同上斜視図である。
【図3】同上他の方向からみた断面図である。
【図4】穀物乾燥機の全体を一部破断して示す斜視図である。
【図5】同上一部の断面図である。
【図6】同上内部構造の一部を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る装置における作用を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面において、1は乾燥機本体であって、乾燥機本体1の上段には穀物貯留槽2が、また中段には通風乾燥部3が、さらに下段には穀物取出槽4がそれぞれ設けられている。穀物取出槽4の下部にはその前後方向全長にわたる穀物搬出コンベア5が設けられており、穀物搬出コンベア5と穀物貯留槽2の上方の上部コンベア6間は昇降機7によって連絡されていて、穀物搬出コンベア5、昇降機7および上部コンベア6を介して、穀物貯留槽2、通風乾燥部3、穀物取出槽4、穀物貯留槽槽2の経路で穀物が循環されるように構成されている。
【0015】
上記通風乾燥部3は、多孔状の通気壁により形成された複数の熱風供給胴8と、多孔状の通気壁により形成された複数の排風胴9を交互に対向配置してそれらの間にそれぞれ乾燥通路10を形成しており、通風乾燥部3を構成する熱風供給胴8は熱風供給室に、かつ排風胴9は排風室11にそれぞれ連通していて、排風室11の一端側には吸引送風機12を備えている。
【0016】
前記排風室11は、吸引送風機12を備えた一端側から前方側に向かって漸次断面積が小さくなるように絞り形状の風洞をなしている。すなわち、排風室11の外側面壁13を吸引送風機12側から前方に向けて内側に近づく斜面状をなすように設けて吸引送風機12を備えた一端側から前方側に向かって漸次断面積が小さくなるように形成している。
【0017】
穀物取出槽4は、その上部両側から穀物搬出コンベア5の搬送樋にかけて傾斜する流穀板と両側壁とで囲まれて形成されている。穀物取出槽4内には、遠赤外線放射体15が配設されており、この遠赤外線放射体15は、穀物取出槽4の前後方向略全長にわたる円筒形のものである。この遠赤外線放射体15から放射される遠赤外線は、通風乾燥部3の乾燥通路10から繰出ロールの回転により繰り出されて、流穀板面上を穀物が散粒状ないし薄層状に流下する穀物に照射される。遠赤外線放射体15の一端には、ガンタイプのバーナが設けられており、遠赤外線放射体15の排気側には排気筒が接続されている。なお、遠赤外線放射体15は低速で連続回転する構造となっている。
【0018】
本発明に係る穀物乾燥機1においては、穀物貯留槽2に穀物を張り込みまたは循環させる昇降機7の穀物供給部に排塵室16を介在させて穀物張込ホッパ17を接続するとともに、排塵室16を排風室11にダクト18により接続口19に接続して連通させており、排塵室16から排風室11に吸引送風機12による吸引空気により吸引排塵するように構成してある。なお、上記接続口19はシャッタ27をそなえていて、風量調節を可能とした開閉構造となっている。
【0019】
前記排塵室16は、その内部が穀物張込ホッパ17の流下口20に対して下方分岐路21と上方分岐路22を成していて、その下方分岐路21が昇降機7の穀物供給部に接続され、かつその上方分岐路22が排風室11にダクト18により接続されている。そして、下方分岐路21が接続されている昇降機7の穀物供給部は、穀物取出槽4の下部に設けられている穀物搬出コンベア5の一端部との接続空間を成しているので、下方分岐路21は穀物搬出コンベア5の一端部の拡散羽根5a上で開口している。穀物搬出コンベア5は回転スクリュー5bの一端部に拡散羽根5aを一体に設けた構成である。
【0020】
前記上方分岐路22内には下方の邪魔板23が下向き傾斜状に、また上方の邪魔板24が下方の邪魔板23とその上方で対向するように下向きに傾斜状に設けられていて、これら邪魔板23,24により撹乱気流を生じさせて穀物aと塵埃bとを浮遊分離させ、塵埃bを分離された穀物aは下方分岐路21を流下して穀物搬出コンベア5を経て昇降機7に供給される。また上記撹乱気流により分離された塵埃bは上方分岐路22から吸引気流にのってダクト18を経て排風室11に入り、吸引送風機12により機外に排出される。排塵室16の上面はグリル状に外気に対する通気面25としてあるとともに、その開口度調節のためのシャッタ26を備えているので、通気面25の開開口度を調節して外気の導入の度合を調整することにより排塵室16内における負圧状態を適切に保たせることが可能である。
【0021】
ところで、前記のように排塵室16で分離されて排風室11内に吸引される塵埃は細塵から比較的大きい粗塵(比較的大きいゴミ)まで種々含まれているので、排塵室16から吸引された比較的大きなゴミ(侠雑物)が、熱風供給胴8から乾燥通路10、排風胴9を通過して、排風室11内の底面14に堆積する比較的比重が重く細かなゴミ(雑草種・割れ米など)にぶつかることによって、底面14の斜面上のゴミを吸引送風機12方向移動させる。このため、排風室11内を常に清浄な状態に保つことができる。
【0022】
一方、前記のように排塵室16に接続した穀物張込ホッパ17の流下口19の部分には穀物の流下方向に吸引力が作用するので、穀物張込ホッパ17に投入された穀物が湿気等により流動性が悪くても、穀物張込ホッパ17における詰まり現象を未然に防止する効果を期待することができる。また、排塵室16内では前記のように撹乱気流が生じているので、その作用が穀物張込ホッパ17の流下口19付近における穀物の流動性を促進させて、前記穀物張込ホッパ17における詰まり現象を未然に防止する効果を一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 乾燥機本体
2 穀物貯留槽
3 通風乾燥部
4 穀物取出槽
5 穀物搬出コンベア
5a 拡散羽根
5b 回転スクリュー
6 上部コンベア
7 昇降機
8 熱風供給胴
9 排風胴
10 乾燥通路
11 排風室
12 吸引送風機
13 外側面壁
14 底面
15 遠赤外線放射体
16 排塵室
17 穀物張込ホッパ
18 ダクト
19 接続口
20 流下口
21 下方分岐路
22 上方分岐路
23 下方の邪魔板
24 上方の邪魔板
25 通気面
26 シャッタ
27 シャッタ
a 穀物
b 塵埃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機本体の穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部を経て循環流動させながら乾燥する穀物乾燥機において、
熱風供給胴と排風胴を交互に対向配置して乾燥通路を形成する通風乾燥部の熱風供給胴は熱風供給室に、かつ排風胴は排風室にそれぞれ連通させていて、排風室の一端側には吸引送風機を備えており、
前記穀物貯留槽に穀物を張り込みまたは循環させる昇降機の穀物供給部には排塵室を介在させて穀物張込ホッパを接続するとともに、前記排塵室を前記排風室に連通させて吸引排塵するように構成してある
ことを特徴とする穀物乾燥機における穀物張込装置。
【請求項2】
排塵室は、その内部が穀物張込ホッパの流下口に対して下方分岐路と上方分岐路を成していて、その下方分岐路が昇降機の穀物供給部に接続され、かつその上方分岐路が排風室に接続されており、前記上方分岐路内には撹乱気流を生じさせて穀物と塵埃とを分離させるための邪魔板を設けてあることを特徴とする請求項1記載の穀物乾燥機における穀物張込装置。
【請求項3】
排塵室の上面は外気に対する通気面としてあるとともに、その開口度調節のためのシャッタを備えていることを特徴とする請求項1または2記載の穀物乾燥機における穀物張込装置。
【請求項4】
昇降機の穀物供給部には、穀物の循環経路を成す穀物搬出コンベアの一端部が接続されていて、排塵室の下方分岐路が穀物搬出コンベアの一端部の拡散羽根に対応して開口している構成であることを特徴とする請求項1,2または3記載の穀物乾燥機における穀物張込装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−2378(P2012−2378A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135281(P2010−135281)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(308020892)金子農機株式会社 (21)
【Fターム(参考)】