説明

穀粒外観品位判別装置における品位別重量比率の算出方法

【課題】穀粒外観品位判別装置を利用して穀粒の品位別重量比率を算出する場合であっても該重量比率を精度よく算出できる方法を提供する。
【解決手段】撮像手段により穀粒を撮像し、該撮像データに基づいて穀粒の品位を判別する穀粒外観品位判別装置における品位別重量比率の算出方法において、複数の穀粒を撮像し、該撮像データに基づいて前記複数の穀粒の品位を判別し、該品位を判別された複数の穀粒の前記撮像データにおける画素数を品位別に集計し、該品位別に集計された画素数に予め品位別に設定される一画素当たりの重量換算係数を掛け合わせることで前記画素数を品位別の重量に換算し、該品位別の重量に基づいて当該穀粒の品位別重量比率を算出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒外観品位判別装置における米、麦、豆、コーン等の穀粒の品位別重量比率の算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米等の穀粒の評価手法の一つとして、外観品位による評価が知られている。当該評価は、穀粒中における整粒の重量比率である整粒歩合や、穀粒の外観品位別の重量比率に基づいて行われるものである。
上記各重量比率を算出するには、脱ぷした穀粒を一粒ずつ、整粒と屑粒とに選別し、あるいは整粒と胴割粒、未熟粒、死米、着色粒、胴割粒以外の被害粒等に選別し、該選別した穀粒を計量する必要があり、手間と時間のかかるものである。
【0003】
そこで、公知の穀粒外観品位判別装置を利用して穀粒の品位別重量比率を算出することが行われている。
上記穀粒外観品位判別装置は、例えばスキャナーを利用して1000粒程度のサンプル粒を一度に撮像し、該撮像して得られた画像情報を利用して該サンプル粒個々の品位を判別するものであり、穀物の品位を簡易に評価できる装置である(特許文献1,2参照。)。
【0004】
図6は、特許文献1に記載された穀粒外観品位判別装置を利用して穀粒の品位別重量比率を算出する従来のフローを示す。
(1)撮像処理(S11)
穀粒外観品位判別装置は、評価対象となる穀粒のサンプル粒を撮像し、該サンプル粒の撮像データを取得する。
(2)データ処理(S12)
穀粒外観品位判別装置は、前記撮像データに基づいてサンプル粒の品位に関連するデータを抽出する。
(3)品位判別処理(S13)
穀粒外観品位判別装置は、前記サンプル粒の品位に関連するデータを予め設定したしきい値と比較して該サンプル粒の品位を判別する。
(4)粒数集計処理(S14)
穀粒外観品位判別装置は、品位の判別したサンプル粒について品位別に粒数を集計する。
(5)重量比率算出処理(S15)
穀粒外観品位判別装置は、前記品位別に集計されるサンプル粒の粒数と予め品位別に設定した一粒当たりの重量換算係数(1粒重)とに基づいて品位別の重量比率を算出する。(6)出力処理(S16)
穀粒外観品位判別装置は、前記サンプル粒の品位別重量比率の算出値をプリンタやモニタに出力する。
【0005】
図7は、上記従来の方法による玄米の品位別重量比率の算出例を示す。ここで、図7において、玄米の品位は「判別区分」として示されるものである。
前述のとおり、穀粒外観品位判別装置には、予め判別区分(品位)別に玄米一粒当たりの重量換算係数(1粒重)が設定されている。
そして、穀粒外観品位判別装置は、判別区分(品位)別に集計されたサンプル粒の粒数に前記重量換算係数(1粒重)を掛け合わせることで換算重量を求め、該換算重量の総重量に対する割合を判別区分(品位)別の重量比率として算出する。
上記穀粒外観品位判別装置を利用する方法によれば、穀粒の品位別重量比率を簡易かつ迅速に算出することができる。
【0006】
ところで、穀粒を詳細に観察すると、同じ品位に区分されるものであっても、個々の大きさは異なるものである。
図8は二つの砕粒の比較例を示す。
図8(a)に示す砕粒と図8(b)に示す砕粒は、明らかに大きさが異なるものである。
しかしながら、上記従来の穀粒外観品位判別装置を利用する方法は、両者をともに一粒の砕粒として扱い、同じ重量換算係数(1粒重)を掛け合わせて換算重量を求めるものであり、必ずしも精度よく重量比率が算出できるものとはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−90799号公報
【特許文献2】実公平7−33151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、穀粒外観品位判別装置を利用して米、麦、豆、コーン等の穀粒の品位別重量比率を算出する場合であっても該重量比率を精度よく算出できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、撮像手段により穀粒を撮像し、該撮像データに基づいて穀粒の品位を判別する穀粒外観品位判別装置における品位別重量比率の算出方法において、複数の穀粒を撮像し、該撮像データに基づいて前記複数の穀粒の品位を判別し、該品位を判別された複数の穀粒の前記撮像データにおける画素数を品位別に集計し、該品位別に集計された画素数に予め品位別に設定される一画素当たりの重量換算係数を掛け合わせることで前記画素数を品位別の重量に換算し、該品位別の重量に基づいて当該穀粒の品位別重量比率を算出すること、を特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の穀粒外観品位判別装置における品位別重量比率の算出方法は、穀粒を撮像する撮像手段が画像読取装置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の穀粒外観品位判別装置における品位別重量比率の算出方法は、穀粒の撮像データにおける画素数を品位別に集計し、該品位別に集計された画素数に予め品位別に設定される一画素当たりの重量換算係数を掛け合わせることで前記画素数を品位別重量に換算し、該品位別重量に基づいて品位別重量比率を算出するものであるので、品位別重量の換算に際し穀粒の大きさを適切に反映することができ、従来に比べ穀粒の品位別重量比率を精度よく算出することができる。
【0012】
本発明の穀粒外観品位判別装置における品位別重量比率の算出方法は、穀粒を撮像する撮像手段が画像読取装置であれば、一度に複数の穀粒を撮像できるため、穀粒の品位別重量比率を簡易かつ迅速に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の方法に利用する穀粒外観品位判別装置の一例を示す外観図。
【図2】本発明の方法による穀粒の品位別重量比率の算出フロー図。
【図3】大きさの異なる砕粒の画素レベルでの比較図。
【図4】本発明の方法による玄米の品位別重量比率の算出例。
【図5】本発明の方法による玄米及び白米の品位別重量比率の他の算出例。
【図6】従来の方法による穀粒の品位別重量比率の算出フロー図。
【図7】従来の方法による玄米の品位別重量比率の算出例。
【図8】大きさの異なる砕粒の比較図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の方法で使用する穀粒外観品位判別装置の一例を示す。
穀粒外観品位判別装置1は、米、麦、豆、コーン等の穀粒を撮像する撮像手段2と、該撮像手段2とケーブル3で接続される品位判別手段4を備えるものである。前記撮像手段2には例えば市販のスキャナーを用いることができる。また、前記品位判別手段4にはパーソナルコンピュータを用いることができる。
【0015】
前記撮像手段2は、本体2aと、該本体2a上面に設けられる撮像台2bと、該撮像台2b上面を開閉するカバー2cを備えるものである。また、前記本体2aは、前記撮像台2b上に載置した穀粒に光を照射する白色蛍光灯や白色LED等からなる光源と、該穀粒からの反射光を受光するカラーCCDラインセンサー等からなる受光部を備えるものである。そして、前記穀粒Gは、撮像用トレイ5上に整列して収容され前記撮像台2bに載置される。
【0016】
一方、前記品位判別手段4は、前記撮像手段2により撮像される穀粒の撮像データを画像処理し、該穀粒の色彩等の光学情報及び外形等の形状情報等を抽出する画像処理部と、該画像処理部において抽出される前記各情報と比較し前記穀粒の品位を判別するためのしきい値、及び穀粒の品位別重量比率を算出するための一画素当たりの重量換算係数(ドット重)が予め記憶設定される演算制御部と、該演算制御部において得られる結果を表示するディスプレイとを備えるものである。
【0017】
本発明の方法で使用する上記穀粒外観品位判別装置1は、前記撮像手段2で取得される複数の穀粒の撮像信号を前記品位判別手段4に送り、該品位判別手段4において前記各穀粒の品位を判別し、該穀粒の品位別重量比率を算出するものである。
【0018】
なお、本発明の方法で使用する穀粒外観品位判別装置は、少なくとも米、麦、豆、コーン等の穀粒を撮像し、該撮像データに基づいて前記穀粒の品位を判別するものであれば、上記複数の穀粒を一度に撮像するスキャナー等の撮像手段を備えるものに限らない。本発明の方法で使用する穀粒外観品位判別装置は、例えば特開2008−298695号公報に記載される穀粒品位判別装置のように穀粒を一粒ずつ撮像するものであってもよい。
【0019】
以下、本発明における穀粒外観品位判別装置を利用した穀粒の品位別重量比率の算出方法について説明する。
【0020】
図2は、穀粒外観品位判別装置1を利用して玄米の品位別重量比率を算出する本発明のフローを示す。
本発明の方法は、玄米のサンプル粒を複数収納した撮像用トレイ5を撮像手段2の撮像台2b上に載置することで開始される。
(1)撮像処理(S1)
まず、穀粒外観品位判別装置1は、前記撮像手段2によって撮像用トレイ5に収納された複数のサンプル粒を撮像し、該サンプル粒の撮像データを取得する。
(2)データ処理(S2)
次に、穀粒外観品位判別装置1は、前記取得した撮像データを品位判別手段4に送り、画像処理によってサンプル粒の外形形状、面積、長さ、幅、色彩、胴割等の品位に関連する情報を抽出する。
(3)品位判別処理(S3)
そして、穀粒外観品位判別装置1は、品位判別手段4において前記品位に関する情報を予め設定したしきい値と比較して各サンプル粒の品位を判別する。
(4)画素数集計処理(S4)
穀粒外観品位判別装置1は、品位を判別したサンプル粒について、品位判別手段4において前記外形形状に基づいて該サンプル粒の画素数を品位別に集計する。
(5)重量比率算出処理(S5)
そして、穀粒外観品位判別装置1は、品位判別手段4において品位別に集計されるサンプル粒の画素数と予め品位別に設定される一画素当たりの重量換算係数(ドット重)とに基づいて品位別の重量比率を算出する。
(6)出力処理(S6)
最後に、穀粒外観品位判別装置1は、前記サンプル粒の品位別重量比率の算出値をディスプレイに出力する。
本発明の方法は、穀粒外観品位判別装置1が、全てのサンプル粒について品位の判別を終了し、全てのサンプル粒について画素数を品位別に集計し、全てのサンプル粒についての品位別重量比率を算出した段階で終了する。
なお、複数の玄米に対する上記各処理は、並行してなされるものでもよいし、一括してなされるものでもよい。
【0021】
ここで、図3は、図8に示す二つの砕粒を画素レベルで比較した図を示す。
図3に示すように画素数で両者を比較した場合、図3(a)は569画素、図3(b)は74画素となり、大きさが約3倍異なることが分かる。
上記本発明の方法によれば、このように同じ品位に区分される玄米について、大きさの違いを考慮した重量比率の算出が可能となる。
【0022】
図4は、上記本発明の方法による玄米の品位別重量比率の算出例を示す。ここで、図4において、玄米の品位は「判別区分」として示されるものである。
本発明において、穀粒外観品位判別装置1の品位判別手段4には、予め判別区分(品位)別に玄米一画素当たりの重量換算係数(ドット重)が記憶設定されている。
そして、穀粒外観品位判別装置1は、判別区分(品位)別に集計されたサンプル粒のドット数(画素数)に前記重量換算係数(ドット重)を掛け合わせることで換算重量を求め、該換算重量の総重量に対する割合を判別区分(品位)別の重量比率として算出する。
なお、図4における「重量換算係数(ドット数)」は、下位の数値を四捨五入して記載するものであるため、「換算重量」の計算値が実際と若干異なるものとなっている。
【0023】
ところで、図4に示す玄米一画素当たりの重量換算係数(ドット重)は、品位別に区分される玄米の実重量と、穀粒外観品位判別装置において集計される前記品位別に区分される玄米のドット数(画素数)を用いることで予め求めることができる。前記重量換算係数を、玄米の産地別、品種別や、産地と品種の組み合わせで求めておけば、本発明の方法において品位別重量比率をより精度よく算出することができる。
【0024】
図5は、本発明の方法による穀粒の品位別重量比率の他の算出例を示す。ここで、図5において、玄米の品位は「判別区分」として示されるものである。
図4に示す例では、穀粒として玄米を用いたが、本発明の方法によれば、白米等のその他の穀粒の品位別重量比率も精度よく算出できる。
また、図4に示す例では、判別区分(品位)として日本国内における玄米の一評価区分を用いたが、本発明の方法によれば、他の評価区分、特に中国やその他の国の評価区分においても同様に穀粒の品位別重量比率を精度よく算出できる。その場合、穀粒外観品位判別装置1の品位判別手段4に、当該評価区分の品位を判別するための各種しきい値や前記各品位に対応して求められる穀粒一画素当たりの重量換算係数(ドット重)を予め設定しておけばよいことはいうまでもない。
【0025】
上記本発明の方法において、穀粒一画素当たりの重量換算係数(ドット重)は、穀粒の大きさを考慮したものであるが、当該穀粒の大きさに厚み情報を含むものであれば、品位別重量比率を精度よく算出する上で好ましい。
【0026】
上記本発明の方法において、穀粒一画素当たりの重量換算係数(ドット重)は、穀粒の大きさを考慮したものであるが、更に穀粒の色情報を加味したものでもよい。穀粒一画素当たりの重量換算計数(ドット重)が穀粒の色情報を加味したものであれば、品位別重量比率を更に精度よく算出することができる。
【0027】
上記本発明の方法による穀粒の品位別重量比率の各算出例は、玄米及び白米についてのものであったが、麦、豆、コーン等のその他の穀粒についても同様に品位別重量比率を算出できることはいうまでもない。
【0028】
本発明は、上記実施の形態に限らず発明の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明における米、麦、豆、コーン、その他の穀粒の品位別重量比率の算出方法は、穀粒外観品位判別装置による品位判別結果を利用して重量比率を算出する場合であっても該重量比率を精度よく算出することができ、非常に利用価値の高いものである。
【符号の説明】
【0030】
1 穀粒外観品位判別装置
2 撮像手段(スキャナー)
3 ケーブル
4 品位判別手段(パーソナルコンピュータ)
5 撮像用トレイ
11,12 砕粒
15 画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段により穀粒を撮像し、該撮像データに基づいて穀粒の品位を判別する穀粒外観品位判別装置における品位別重量比率の算出方法において、
複数の穀粒を撮像し、
該撮像データに基づいて前記複数の穀粒の品位を判別し、
該品位を判別された複数の穀粒の前記撮像データにおける画素数を品位別に集計し、
該品位別に集計された画素数に予め品位別に設定される一画素当たりの重量換算係数を掛け合わせることで前記画素数を品位別の重量に換算し、
該品位別の重量に基づいて当該穀粒の品位別重量比率を算出すること、
を特徴とする穀粒外観品位判別装置における品位別重量比率の算出方法。
【請求項2】
前記穀粒を撮像する撮像手段は画像読取装置である請求項1記載の穀粒外観品位判別装置における品位別重量比率の算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−242284(P2011−242284A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115425(P2010−115425)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】