説明

積み重ね可能な容器

【課題】 上下に間隔を開けて安定して積み重ねることができる容器の提供。
【解決手段】 容器本体2の左右両部に取っ手3が揺動可能に設けられる。容器本体2は、上方へ開口した略矩形の有底容器である。取っ手3は、前後一対のアーム8,8と、このアーム8を容器本体2に揺動可能に保持する枢軸10と、前後のアーム8,8同士を連結する第一片11、第二片12および第三片13とから構成される。取っ手3は、枢軸10まわりに容器本体2の内側へ倒された際、第一片11が容器本体2の上端縁に当接されて位置決めされる。この位置決め状態で、第二片12および第三片13は、容器本体2より上方に離隔して配置される。そして、その第二片12および第三片13と、アーム8の開放他端部18側の端部とで、他の容器本体2の下端部の前後左右の角部が、前後左右に移動規制されて保持可能とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上下に間隔を空けて積み重ね可能な容器に関するものである。たとえば食材または食品(以下、単に食品という)を収容して、その食品に冷風を吹き付けて冷却を図るのに適した容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱調理後の食品の冷却装置として、真空冷却装置と冷風冷却装置とが知られている。真空冷却装置は、食品が収容された処理槽内を減圧することで、食品からの水分蒸発を促し、その蒸発潜熱を利用して食品の冷却を図る装置である。一方、冷風冷却装置は、ブラストチラーとして知られ、食品へ冷風を吹き付けて冷却を図る装置である。
【0003】
このような冷却装置に対する食品の出し入れは、食品が入れられた容器を台車で出し入れしてなされるのが通常である。そのような容器として、従来、図9および図10に示すような容器101が知られている。この容器101は、上方へ開口した略矩形状の有底容器とされ、その左右両部には取っ手102,102が揺動可能に設けられている。この取っ手102,102を容器101の内側へ倒した状態で、容器101を上下に積み重ねることができる。
【0004】
しかしながら、この場合、図10に示すように、上側の容器101の下部は、下側の容器101の上部にはめ込まれた状態で積み重ねられる。この状態でも、上側の容器101と下側の容器101との間には、前後左右の側壁間に僅かな隙間が残るので、この隙間から各容器101内を減圧可能であり、容器101内の食品103を真空冷却することはできる。但し、食品103から生じる蒸気は、容器101外へ逃げにくいといえる。また、上下の容器101,101は一部が重なって積み重ねられるので、各容器101内の食品103に冷風を当てにくく、冷風冷却には適さない。
【0005】
そこで、冷風冷却装置に対しては、下記各特許文献に開示されるように、略矩形ボックス状の枠を備える台車を用い、その枠に上下所定間隔にトレイやホテルパンなどの容器を保持している。但し、この場合、台車は、大掛かりなものとなる。そのため、製造にコストを要し、不使用時にもスペースをとる。また、枠には多数の容器を保持可能であるが、その一部にしか容器を保持しない場合にも、全体として取り扱う必要が生じ、作業性が劣ると共に、冷却時にも余分な熱負荷となる。
【特許文献1】特開2001−17141号公報 (段落番号0003、0019および0020、図1)
【特許文献2】特開2002−318051号公報 (段落番号0008および0018、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で、上下に間隔を開けて安定して積み重ねることができ、真空冷却と冷風冷却との双方に利用できる容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、上方へ開口した有底容器から構成される容器本体と、この容器本体の左右両部に設けられる取っ手とを備え、前記取っ手は、前後方向へ沿う枢軸まわりに揺動可能に、前記容器本体に設けられ、前記取っ手は、前記枢軸まわりに前記容器本体の内側へ倒された際、前記容器本体に当接されて位置決めされ、前記取っ手は、前記位置決め状態で前記容器本体より上方への延出部を有し、この延出部に、他の容器本体の下端部の左右の角部が保持可能とされたことを特徴とする積み重ね可能な容器である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、取っ手を容器本体の内側へ倒して位置決めしつつ、取っ手に他の容器本体を載せつつ、容器本体を上下に積み重ねることができる。しかも、取っ手を容器本体の内側へ倒して位置決めした状態では、取っ手は容器本体より上方への延出部を有し、この延出部に他の容器本体の下端部が保持されるので、上下に間隔を空けて容器本体を積み重ねることができる。その際、容器本体の下端部の左右の角部が保持されるので、容器本体は安定して積み重ねられる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記容器本体は、上方へ開口した略矩形の有底容器から構成され、前記取っ手は、前記容器本体の左右両部において、前記容器本体の前後両側壁の外側にそれぞれ配置されるアームと、このアームの一端部から前記容器本体の前後方向内側へ突出し、前記容器本体の左右の側壁に揺動可能に保持される枢軸と、この枢軸まわりに前記アームが前記容器本体の左右方向内側へ倒された際、前記容器本体の上端縁に当接して、前記アームを位置決めするストッパーと、この位置決め状態で前記容器本体より上方に離隔して前記アームに設けられ、他の容器本体の下端部の前後左右の角部がはめ込まれて、前後左右に移動規制する容器保持部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の積み重ね可能な容器である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、アーム、枢軸、ストッパーおよび容器保持部を備える取っ手により、簡易な構成で、容器本体を上下に間隔を空けて安定して積み重ねることができる。その際、上側の容器は、その容器本体の下端部の前後左右の角部が、下側の容器の取っ手の容器保持部にはめ込まれるので、前後左右の移動が確実に規制される。また、取っ手は、容器本体の左右方向内側へ倒された際、容器本体の上端縁に当接して位置決めされるので、位置決めの機構が簡易である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記容器本体は、上方へ開口した略矩形の有底容器から構成され、前記取っ手は、前記容器本体の左右両部において、前記容器本体の前後両側壁の外側にそれぞれ配置される略V字状のアームと、前記略V字の開放一端部から前記容器本体の前後方向内側へ突出し、前記容器本体に揺動可能に保持される枢軸と、前記略V字の中央屈曲部から前記容器本体の前後方向内側へ突出する第一片と、前記略V字の開放他端部から前記容器本体の前後方向内側へ突出する第二片と、前記中央屈曲部と前記開放他端部との中途から前後方向内側へ突出する第三片とを備え、前記第一片、前記第二片および前記第三片の内、一または複数の片で、前後に対向する前記アームが連結され、前記取っ手は、前記枢軸まわりに前記容器本体の内側へ倒された際、前記容器本体に前記第一片が当接されて位置決めされ、この位置決め状態で、前記第二片および前記第三片は、前記容器本体より上方に離隔して配置され、前記第二片および前記第三片と、前記アームの前記開放他端部側の端部とで、他の容器本体の下端部の前後左右の角部が、前後左右に移動規制されて保持可能とされたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積み重ね可能な容器である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、左右の各取っ手は、略V字状の前後のアーム、その略V字の開放一端部に設けられる枢軸、中央屈曲部に設けられる第一片、開放他端部に設けられる第二片、および中央屈曲部と開放他端部との中途に設けられる第三片を備え、いずれかの片で前後のアーム同士が連結されて構成される。これにより、簡易な構成で、容器本体を上下に間隔を空けて安定して積み重ねることができる。その際、上側の容器は、その容器本体の下端部の前後左右の角部が、下側の容器の取っ手の第二片および第三片と、アームの前記開放他端部側の端部との間にはめ込まれるので、前後左右の移動が確実に規制される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記第一片、前記第二片および前記第三片の全ての片で、前後に対向する前記アームが連結され、前記取っ手は、前記枢軸まわりに前記容器本体の内側へ倒された際、前記容器本体の上端縁に前記第一片が当接されて位置決めされることを特徴とする請求項3に記載の積み重ね可能な容器である。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、第一片、第二片および第三片の全ての片で、前後に対向するアームが連結され、取っ手を容器本体の内側へ倒した際には、容器本体の上端縁に第一片が当接されて位置決めされる。これにより、簡易な構成で安定して、上下に間隔を開けて容器を積み重ねることができる。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明は、食材または食品が収容され、この食材または食品に冷風を吹き付けて冷却を図る冷却装置に、上下に間隔を空けて積み重ねられた状態で、平台車に載せられて出し入れされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積み重ね可能な容器である。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、上下に間隔を空けて積み重ねた容器を平台車に載せて冷却装置に出し入れできる。そして、冷却装置内では、容器内に入れられた食材または食品の冷風冷却を確実に図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の積み重ね可能な容器によれば、簡易な構成で安定して容器を積み重ねることができる。しかも、上下に間隔を空けて積み重ねることができるので、真空冷却と冷風冷却との双方に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の容器は、容器本体の左右両部に取っ手が設けられて構成される。容器本体は、上方へ開口した有底容器であれば、その形状を特に問わないが、典型的には、上方へ開口した略矩形の有底筒状である。但し、容器本体は、場合により略矩形ではなく、その他の多角形や円形の有底筒状であってもよい。また、容器本体の側壁(容器本体が略矩形の有底筒状の場合は前後左右の側壁、略円形の有底筒状の場合は周側壁)は、垂直面であってもよいし、上方へ行くに従って容器本体の外方へ傾く傾斜面であってもよい。
【0019】
容器本体の左右両部には、取っ手が設けられる。この取っ手は、典型的には略コ字形状とされ、その開放両端部に前後方向へ沿う枢軸が設けられ、この枢軸が容器本体の側壁に回転自在に保持される。これにより、取っ手は、前後方向へ沿う枢軸まわりに揺動可能とされる。
【0020】
容器本体が略矩形の有底筒状の場合、左右の取っ手は、それぞれ前後一対のアームを備え、この前後のアームを一または複数の棒材で連結して構成するのが簡易である。この場合、各アームは、容器本体の左右両部において、容器本体の前後の側壁の外側に配置される。そして、アームの一端部には、容器本体の前後方向内側へ突出して枢軸が設けられ、この枢軸が容器本体に揺動可能に保持される。この際、枢軸は、容器本体の左右の側壁に保持されてもよいし、容器本体の前後の側壁の左右両部に保持されてもよい。
【0021】
取っ手は、枢軸まわりに容器本体の内側へ倒された際、容器本体に当接されて位置決めされる。この際、取っ手は、容器本体の上端縁に当接されてもよいし、容器本体の前後の側壁の外面に設けた突部に当接されてもよい。たとえば、取っ手は、前記アームにストッパーが設けられており、枢軸まわりに容器本体の左右方向内側へ倒された際、容器本体の上端縁にストッパーが当接されて位置決めされる。
【0022】
取っ手の位置決め状態において、取っ手は容器本体より上方へ延出する。この延出部は、他の容器本体の下端部の左右の角部を保持する容器保持部とされる。容器本体が略矩形の有底筒状の場合、容器保持部は、取っ手の位置決め状態において、容器本体より上方に離隔して前記アームに設けられる。この場合、他の容器本体は、その下端部の前後左右の角部が容器保持部にはめ込まれて、前後左右に移動規制される。これにより、上下に間隔を空けて、容器本体を上下に複数段、安定して積み重ねることができる。
【0023】
左右の各取っ手は、次に述べるように、前後一対のアーム、枢軸、第一片、第二片および第三片を備えて構成されるのが好ましい。アームは、容器本体の左右両部において、容器本体の前後両側壁の外側にそれぞれ配置され、略V字状の板材または棒材である。枢軸は、前記略V字の開放一端部から容器本体の前後方向内側へ突出し、容器本体に揺動可能に保持される。第一片は、前記略V字の中央屈曲部から容器本体の前後方向内側へ突出し、前記ストッパーとして機能する。第二片は、前記略V字の開放他端部から容器本体の前後方向内側へ突出する。第三片は、前記中央屈曲部と前記開放他端部との中途から前後方向内側へ突出する。そして、第一片、第二片および第三片の内、一または複数の片で、前後に対向するアームは連結される。たとえば、第一片、第二片および第三片の全ての片で、前後に対向するアームが連結される。第二片および第三片と、アームの前記開放他端部側の端部とで、前記容器保持部が構成される。
【0024】
このような構成の場合、取っ手は、枢軸まわりに容器本体の内側へ倒された際、容器本体に第一片が当接されて位置決めされる。この際、第一片は、容器本体の前後の側壁の外面に設けた突部に当接されてもよいが、容器本体の上端縁に当接されるのが簡易である。この位置決め状態で、第二片および第三片は、容器本体より上方に離隔して配置され、第二片および第三片と、アームの前記開放他端部側の端部とで、他の容器本体の下端部の前後左右の角部が、前後左右に移動規制されて保持可能とされる。
【0025】
このように、取っ手を容器本体の左右方向内側へ倒して位置決めしつつ、その取っ手に他の容器本体を載せつつ、容器本体を上下に積み重ねることができる。しかも、上下に間隔を空けて、容器本体を安定して積み重ねることができる。上下に十分な間隔を空けて積み重ねるので、食品の冷風冷却にも利用することができる。そのための冷却装置に対しては、容器内に食品を収容して、上下に積み重ねた状態で、台車を介して出し入れすることができる。この際、台車は、平台車で足り、従来のように略矩形のボックス状のラックを備える必要はない。
【0026】
冷却装置内で発生される冷風は、上下の容器本体間の隙間から、各容器内の食品に当てられる。これにより、各容器内の食品は、効率よく冷風冷却を図られる。ところで、容器本体を上下に間隔を空けて積み重ねるので、食品から生じる蒸気も容器本体外へ逃がしやすい。そのため、本発明の容器は、冷風冷却だけでなく、真空冷却にも有効である。
【実施例】
【0027】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の積み重ね可能な容器の一実施例を示す斜視図であり、上下二段に積み重ねた状態を示している。また、図2から図4は、本実施例の容器を示す図であり、図2は平面図、図3は正面図、図4は側面図である。
【0028】
本実施例の容器1は、上方へ開口した略矩形の有底容器から構成される容器本体2と、この容器本体2の左右両部に揺動可能に設けられる取っ手3とから構成される。容器1は、その材質を特に問わないが、たとえば、ステンレスもしくはアルミニウムなどの金属製、またはポリプロピレンなどのプラスチック製とされる。本実施例では、容器本体2は、金属またはプラスチック製とされ、取っ手3は金属製とされる。
【0029】
容器本体2は、平面視長方形状とされ、その前後左右の角部は丸みを付けられている。容器本体2の前後左右の側壁4,4,5,5は、垂直面とされるか、上方へ行くに従って容器本体2の外方へ傾く傾斜面とされる。容器本体2の前後左右の側壁4,4,5,5には、その上端縁から設定距離だけ下方位置において、容器本体2の内方へ略矩形状に突出する段部6が、全周に亘って形成されている。また、容器本体2の前後左右の側壁4,4,5,5には、その上端縁において、容器本体2の外方へ延出するツバ部7が、全周に亘って形成されている。
【0030】
容器本体2の左右の側壁5,5の外面には、それぞれ取っ手3が揺動可能に設けられる。本実施例では、左右の各取っ手3は、前後一対のアーム8,8と、このアーム8,8を容器本体2の枢軸保持部9に揺動可能に保持する枢軸10,10と、前後のアーム8,8同士を連結する第一片11、第二片12および第三片13とから構成される。
【0031】
アーム8は、正面視略V字状の板材または棒材から構成される。この略V字状のアーム8は、容器本体2の左右両部において、容器本体2の前後両側壁4,4の外側にそれぞれ配置される。アーム8は、その略V字の開放一端部14に、丸棒状の枢軸10が固定される。この枢軸10は、その軸線を前後方向へ沿って配置され、前記略V字の開放一端部14から容器本体2の前後方向内側へ突出して設けられる。容器本体2の左右両側壁5,5の外面には、前後両端部に枢軸保持部9,9が設けられており、この枢軸保持部9に枢軸10が回転自在に保持される。これにより、略V字状のアーム8は、その一辺部15の一端部に設けられた枢軸10を中心として、左右方向へ揺動可能とされる。
【0032】
略V字状のアーム8には、その他辺部16に第一片11、第二片12および第三片13が固定され、これら各片11〜13で前後のアーム8,8同士は連結される。具体的には、各片11〜13は、細長い棒状または板状(図示例では丸棒状)とされ、その軸線を前後方向へ沿って配置される。そして、各片11〜13の前後両端部は、前後のアーム8,8に固定される。この際、第一片11は、略V字の中央屈曲部17同士を連結し、第二片12は、略V字の開放他端部18同士を連結し、第三片13は、前記他辺部16の中途部(前記中央屈曲部17と前記開放他端部18との中途部)同士を連結する。
【0033】
取っ手3は、枢軸10まわりに容器本体2の左右方向内側へ倒された際、容器本体2の前後両側壁4,4の上端縁に第一片11が当接されて位置決めされる。すなわち、取っ手3を枢軸10まわりに容器本体2の左右方向内側へ倒した際、取っ手3の第一片11は、容器本体2に対する取っ手3の位置決めを果たすストッパーとして機能する。
【0034】
この位置決め状態では、左右の取っ手3,3は、その各アーム8の略V字の開放部を、容器本体2の左右方向外側へ向けて配置される。また、各アーム8の他辺部16は、上方へ行くに従って、容器本体2の左右方向外側へ延出するよう傾斜して配置される。さらに、各アーム8の他辺部16に設けた第二片12および第三片13は、それぞれ容器本体2の上端縁よりも上方に離隔して、水平かつ平行に配置される。
【0035】
このようにして位置決めされた取っ手3には、他の容器本体2を載せることができる。これにより、上下に間隔を空けて、容器1を順次、積み重ねることができる。上下に積み重ねられる各容器1は、通常、同一の形状および大きさで、同一の構成を有する容器である。容器1を上下に積み重ねる際、各取っ手3は、第二片12および第三片13と、アーム8の前記開放他端部18側の端部とが、他の容器本体2を保持するための容器保持部として機能する。
【0036】
具体的には、上下に容器1,1,…を積み重ねる際、上側の容器1は、その容器本体2の底面が、下側の容器1の取っ手3の第三片13に載せられる。また、上側の容器1は、その容器本体2の左右の側壁5,5が、下側の容器1の左右の取っ手3,3の第二片12,12間に挟まれる。さらに、上側の容器1は、その容器本体2の前後の側壁4,4が、下側の容器1の左右の取っ手3,3の前後のアーム8,8間に挟まれる。このようにして、上側の容器本体2の下端部の前後左右の角部が、下側の容器1の取っ手3の第二片12および第三片13と、アーム8の開放他端部18側の端部とに保持される。これにより、上下に間隔を空けて、前後左右に移動規制しつつ安定して、上下に容器1を積み重ねることができる。なお、図1では、上下二段に容器1を積み重ねた状態を示しているが、同様にして、三段以上に積み重ねできるのは言うまでもない。
【0037】
ところで、容器1は、その大きさを特に問わないが、本実施例では、左右寸法が665mm、前後寸法が440mm、上下寸法が90mmとされる。また、容器1を上下に積み重ねる際、上側の容器1の容器本体2(具体的にはその前後左右の側壁4,4,5,5)と、下側の容器1の取っ手3,3(具体的にはその前後のアーム8,8や左右の第二片12,12)との間に、それぞれ2.5mmずつの余裕を持たせている。また、上下に30mmの隙間を空けて、容器1,1を上下に積み重ね可能とされる。但し、容器1の形状および大きさの他、積み重ねる際の上下の隙間の大きさは、適宜変更可能なことは言うまでもない。
【0038】
本実施例の容器1は、たとえば番重(ばんじゅう)またはコンテナバットなどとして、食品を収容するのに好適に利用される。その際、上述したように、食品を収容した状態で、容器本体2を上下に間隔を空けて積み重ねることができる。
【0039】
図5および図6は、本実施例の容器1を平台車19に積み重ねた状態を示す図であり、図5は正面視縦断面図、図6は側面視縦断面図である。これらの図に示すように、本実施例の容器1は、平台車19上に積み重ねることができ、積み重ねた状態で容易に移動させることができる。平台車19は、周知のとおり、略矩形状の枠体20を備え、その枠体20の底部四隅には、キャスター21が設けられている。また、枠体20内の左右両部には、前後方向へ沿って角材22,22が固定されており、この左右の角材22,22上に、容器1が載せられる。食品を容器1に収容し、冷却装置で冷却を図ろうとする場合、食品が入れられた容器1が、順次、平台車19上に積み重ねられる。そして、その平台車19が冷却装置に対し出し入れされる。
【0040】
図7は、本実施例の容器1を用いて食品23の冷却を図る状態を示す概略図であり、一部を断面にして示している。図示例の冷却装置24は、出願人が先に提案した真空冷風複合冷却装置である。この冷却装置24は、真空冷却と冷風冷却とを実行可能に構成されており、真空冷却と冷風冷却との内、いずれか一方または双方を適宜組み合わせて、食品23の冷却を図る装置である。
【0041】
この冷却装置24は、処理槽25、減圧手段26、復圧手段27、冷却器28およびファン29などを備える。処理槽25は、前面へ開口した処理槽本体30に、扉31が開閉可能に設けられる。処理槽本体30に食品23を収容した状態で、扉31は気密状態に閉じられる。減圧手段26は、処理槽25内の気体を外部へ吸引排出して、処理槽25内を減圧する手段である。具体的には、減圧手段26は、水封式の真空ポンプ32を備え、この真空ポンプ32からの流体は、排気セパレータ33を介して、排気および排水される。復圧手段27は、減圧下の処理槽25内へ外気を導入して、処理槽25内を大気圧まで復圧する手段である。具体的には、処理槽25は、真空解除弁34およびフィルタ35を介して、外気と連通可能とされており、真空解除弁34を開放することで、処理槽25内は復圧される。一方、冷却器28は、周知の構成の圧縮式冷凍機の蒸発器から構成される。
【0042】
このような構成であるから、食品23を収容した処理槽25内を減圧することで、食品23からの水分蒸発を促し、その蒸発潜熱で食品23の真空冷却を図ることができる。また、冷凍機を運転した状態でファン29を作動させることで、処理槽25内に冷風を起こし、処理槽25内に収容した食品23の冷風冷却を図ることができる。
【0043】
食品23が入れられた容器本体2は、上下に間隔を空けて積み重ねられるので、冷風冷却時には、冷風が容器本体2内まで確実に供給される。従って、食品23の冷風冷却を確実に図ることができる。また、上下に間隔を空けて積み重ねられるので、食品23からの蒸気は容器本体2外へ逃げやすい。そのため、本実施例の容器1は、冷風冷却だけでなく、真空冷却にも有効である。
【0044】
図8は、本実施例の容器1の他の積み重ね状態を示す正面視縦断面図である。上述したように、本実施例の容器1は、上下に間隔を空けて積み重ねることができるが、この図8に示すように、上下に間隔を空けずに積み重ねることもできる。この場合、図3において二点鎖線で示すように、左右の取っ手3,3を容器本体2の左右方向外側へ倒した状態で、図8に示すように容器本体2を上下に積み重ねればよい。この際、上側の容器本体2の下端部が、下側の容器本体2の上端部にはめ込まれ、下側の容器本体2の段部6に保持される。このようにして、たとえば容器1の未使用時には、コンパクトに収納することができる。
【0045】
本発明の積み重ね可能な容器1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、取っ手3は、枢軸10まわりに容器本体2の内側へ倒して、容器本体2に対し位置決めできると共に、その位置決め状態で、容器本体2の上端縁よりも上方への延出部を有し、この延出部に他の容器本体2の下端部を保持する容器保持部を備えれば足り、そのための具体的構成は適宜に変更可能である。
【0046】
前記実施例では、各取っ手3は、前後のアーム8,8同士を、第一片11、第二片12および第三片13の三つの片で連結したが、いずれか一つの片で連結すれば足り、その他の片の前後方向中途部は省略することもできる。
【0047】
また、左右の取っ手3,3には、適宜の補強材を設けてもよい。たとえば、略V字状のアーム8の中央屈曲部17の側に略三角形状の補強板を設けたり、略V字状のアーム8の一辺部15と他辺部16とを架け渡す補強材を設けたりしてもよい。
【0048】
また、前記実施例では、各取っ手3の枢軸10は、容器本体2の左右両側壁5,5の外面に保持されたが、容器本体2の前後両側壁4,4の外面に保持されてもよい。いずれの場合も、取っ手3は、その枢軸10を前後方向へ沿って配置され、枢軸10まわりに揺動可能とされる。
【0049】
また、前記実施例では、各取っ手3は、枢軸10まわりに容器本体2の左右方向内側へ倒された際、第一片(ストッパー)11が容器本体2の上端縁に当接される構成としたが、容器本体2の前後両側壁4,4の外面に設けた突部に当接されてもよい。
【0050】
さらに、前記実施例では、容器1に食品23を収容して、真空冷風複合冷却装置で冷却する例を示したが、真空冷却装置や冷風冷却装置などでも利用できる。また、冷却だけでなく、飽和蒸気調理機などの加熱調理装置でも利用できる。また、容器1に収容するのは、食品に限らず、それ以外の各種物品でもよく、物品の搬送や収納などにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の積み重ね可能な容器の一実施例を示す斜視図であり、上下二段に積み重ねた状態を示している。
【図2】図1の容器の平面図である。
【図3】図1の容器の正面図である。
【図4】図1の容器の側面図である。
【図5】図1の容器を平台車に積み重ねた状態を示す正面視縦断面図である。
【図6】図5の側面視縦断面図である。
【図7】図1の容器を用いて、真空冷風複合冷却装置で食品の冷却を図っている状態を示す図であり、一部を断面にして示している。
【図8】図1の容器の他の積み重ね状態を示す正面視縦断面図である。
【図9】従来の容器の積み重ね状態を示す斜視図である。
【図10】図9の縦断面図であり、容器に食品を入れた状態を示している。
【符号の説明】
【0052】
1 容器
2 容器本体
3 取っ手
4 容器本体の前後側壁
5 容器本体の左右側壁
8 アーム
10 枢軸
11 第一片(ストッパー)
12 第二片
13 第三片
14 開放一端部
17 中央屈曲部
18 開放他端部
19 平台車
23 食材または食品
24 冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方へ開口した有底容器から構成される容器本体と、この容器本体の左右両部に設けられる取っ手とを備え、
前記取っ手は、前後方向へ沿う枢軸まわりに揺動可能に、前記容器本体に設けられ、
前記取っ手は、前記枢軸まわりに前記容器本体の内側へ倒された際、前記容器本体に当接されて位置決めされ、
前記取っ手は、前記位置決め状態で前記容器本体より上方への延出部を有し、
この延出部に、他の容器本体の下端部の左右の角部が保持可能とされた
ことを特徴とする積み重ね可能な容器。
【請求項2】
前記容器本体は、上方へ開口した略矩形の有底容器から構成され、
前記取っ手は、
前記容器本体の左右両部において、前記容器本体の前後両側壁の外側にそれぞれ配置されるアームと、
このアームの一端部から前記容器本体の前後方向内側へ突出し、前記容器本体の左右の側壁に揺動可能に保持される枢軸と、
この枢軸まわりに前記アームが前記容器本体の左右方向内側へ倒された際、前記容器本体の上端縁に当接して、前記アームを位置決めするストッパーと、
この位置決め状態で前記容器本体より上方に離隔して前記アームに設けられ、他の容器本体の下端部の前後左右の角部がはめ込まれて、前後左右に移動規制する容器保持部とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の積み重ね可能な容器。
【請求項3】
前記容器本体は、上方へ開口した略矩形の有底容器から構成され、
前記取っ手は、
前記容器本体の左右両部において、前記容器本体の前後両側壁の外側にそれぞれ配置される略V字状のアームと、
前記略V字の開放一端部から前記容器本体の前後方向内側へ突出し、前記容器本体に揺動可能に保持される枢軸と、
前記略V字の中央屈曲部から前記容器本体の前後方向内側へ突出する第一片と、
前記略V字の開放他端部から前記容器本体の前後方向内側へ突出する第二片と、
前記中央屈曲部と前記開放他端部との中途から前後方向内側へ突出する第三片とを備え、
前記第一片、前記第二片および前記第三片の内、一または複数の片で、前後に対向する前記アームが連結され、
前記取っ手は、前記枢軸まわりに前記容器本体の内側へ倒された際、前記容器本体に前記第一片が当接されて位置決めされ、
この位置決め状態で、前記第二片および前記第三片は、前記容器本体より上方に離隔して配置され、前記第二片および前記第三片と、前記アームの前記開放他端部側の端部とで、他の容器本体の下端部の前後左右の角部が、前後左右に移動規制されて保持可能とされた
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積み重ね可能な容器。
【請求項4】
前記第一片、前記第二片および前記第三片の全ての片で、前後に対向する前記アームが連結され、
前記取っ手は、前記枢軸まわりに前記容器本体の内側へ倒された際、前記容器本体の上端縁に前記第一片が当接されて位置決めされる
ことを特徴とする請求項3に記載の積み重ね可能な容器。
【請求項5】
食材または食品が収容され、
この食材または食品に冷風を吹き付けて冷却を図る冷却装置に、上下に間隔を空けて積み重ねられた状態で、平台車に載せられて出し入れされる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積み重ね可能な容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−220838(P2009−220838A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65525(P2008−65525)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】