説明

積層されたチーズの切断方法およびその装置

【課題】層状に積層するチーズカードを積層方向に沿って切断しても層剥離を確実に防止できる積層されたチーズの切断装置を提供する。
【解決手段】層間に呈味物質や食品類などを挟み込んだ積層されたチーズカード2を積層方向の下方から上方へ向けて切断する切断刃20を設ける。切断刃20にて切断したポーションチーズ3の底面を支持する支持腕部34を備えた支持部材30を、切断刃20間に回動可能に設ける。支持部材30は、切断したポーションチーズ3を取出部材にて下方へ落とす際、支持腕部34がポーションチーズ3の底面から待避する状態に回動可能に配設する。切断したポーションチーズ3の下層側が支持部材30にて支持されて剥落しないので、後工程で包装できなくなる不都合を防止でき、安定して生産できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層されたチーズを切断する切断方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、チーズ全体に、香辛料や調味料などの呈味物質や、果物、野菜、ナッツ、獣肉製品、乳製品などの食品類などを混合した成形品が流通されている。
このチーズの成形品としては、各種製造方法が知られているが、例えば、原料となる乳に食品類を混合し、通常の製造方法と同じように乳を凝固させた後、ホエイを排除して得られた食品類含有カードを成型し、熟成工程を経て製造される。また、乳から調製したカードに食品類を混合した後、この食品類含有カードを成型し、熟成工程を経て製造される方法も知られている。
【0003】
さらに、チーズの成形品として、熟成途中でカードを水平にカットし、カード間に香辛料などの食品類を挟みこみ、ポーションにカット後、熟成によって上下のカードが結着して食品類がチーズ内に挟み込まれるようにした白カビチーズの成形品を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のような白カビチーズの成形品、いわゆるポーションチーズは、食品類が内部に保持されチーズと一体となっている。このため、製造時の食品類の飛散がなく製造適正に優れており、喫食時に食品類が白カビチーズと分離することがないため、非常に手軽に白カビチーズと食品類を同時に摂食でき、白カビチーズのバラエティーとして市場でも好まれている製品群となっている。
【0004】
そして、特許文献1に記載のようなポーションチーズは、例えば熟成途中の扁平円筒状のチーズカードを上下方向の軸に略垂直な方向で2等分し、切断面に呈味物質や食品類などを添加した後、元の状態に重ね合わせる。次いで、チーズ切断装置に供し、呈味物質や食品類などが添加されたチーズカードを円周方向で6等分するポーションカットをした後、個別包装し、呈味物質や食品類などが添加されたポーションチーズを得ることができる。
チーズ切断装置による切断の際、従来のチーズ切断装置に使用されている切断刃の幅は4mm〜5mm程度であり、チーズの高さ、すなわちチーズの天面と下面までの長さより短い。このため、例えば図1および図2に示すように、呈味物質や食品類などを添加するために切断した部分である層間Xより、切断刃Cに側面が接する上層Aのみが切断刃Cにて保持され、下層Bは保持されないため上層Aから剥がれ落ちるなどの不都合を生じるおそれがある。
【0005】
このため、特許文献1では、例えばチーズカードYを切断して呈味物質や食品類などを添加した後、ポーションカットまでに、少なくとも1日以上熟成させ、上層Aと下層Bとの接着性を増加させ、ポーションカットによる上下層の剥離を防止している。
また、例えばチーズカードYを切断して呈味物質や食品類などを添加した後、ポーションカットまでに一定温度まで冷却し、上下層A,Bの剥離を防止することが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、例えば、呈味物質や食品類などとともに糊状物質を添加し、上下層A,Bの結着力を増強することが開示されている(例えば、特許文献3)。
【0007】
また、例えば、ポーションカットする切断刃Cを、切断時に下層Bが落下しないように切断後も下層Bが切断刃Cに接触する構成を設けることが開示されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−20536号公報
【特許文献2】WO2008−047801号公報
【特許文献3】特開2007−74958号公報
【特許文献4】特開2008−200814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1や特許文献2では、熟成工程や冷却工程が必要であり、工程が複雑であるとともに、特許文献1の熟成処理や特許文献2の冷却処理などを実施したとしても、剥離の発生は抑制されるものの上下層A,Bの剥離を確実に防止することができないおそれがある。このため、後工程の包装時に、ばらばらとなった上下層A,BをポーションチーズZに包装できなくなるおそれがある。
特許文献3に記載のような糊状物質を添加する方法では、チーズ本体の味や物性に変化を与え、味や食感を損なうおそれがある。
さらに、特許文献4に記載の方法では、下層Bの落下を防止するために切断されたポーションチーズZと切断刃Cとの接触面積が広くなり、切断刃Cにチーズが付着し、良好に切断できなくなるおそれがある。
上述したように、従来の方法では、チーズカードを切断して呈味物質や食品類など層状に挟み込んだ後にポーションカットする際に、層間で分離してしまい、後工程でポーションチーズを良好に個別包装できなくなるおそれがある。
【0010】
本発明は、層状に積層するチーズカードを積層方向に沿って切断しても層剥離を確実に防止できる積層されたチーズの切断方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決すべく、本発明の以下のような積層されたチーズを切断する積層されたチーズの切断方法およびその装置を提供するものである。
(1)積層されたチーズカードを積層方向に沿って切断する積層されたチーズの切断装置であって、前記積層されたチーズカードを積層方向の下方から上方へ向けて切断して複数のポーションチーズを得る切断刃と、この切断刃に設けられ、前記ポーションチーズの積層方向における底面に当接して該ポーションチーズを支持するとともに、前記ポーションチーズを前記切断刃に対して相対的に下方へ移動させる付勢力により該ポーションチーズの底面から待避する状態に回動する支持部材と、を具備したことを特徴とする積層されたチーズの切断装置。
(2)上記(1)に記載の積層されたチーズの切断装置において、前記チーズカードは、円柱状であり、前記切断刃は、積層方向に対する垂直面で放射状に複数設けられており、前記積層されたチーズカードの外周面に当接して、前記積層されたチーズカードの中心軸を、前記複数の切断刃が交差する中心位置に案内させるガイド部材を備えている構成とする積層されたチーズの切断装置。
(3)上記(2)に記載の積層されたチーズの切断装置において、前記支持部材は、前記ガイド部材を備えている構成とする積層されたチーズの切断装置。
(4)積層されたチーズカードを積層方向に沿って切断する積層されたチーズの切断方法であって、前記積層されたチーズカードを積層方向の下方から上方へ向けて切断し、得られた複数のポーションチーズにおける積層方向の底面を支持する切断工程と、この切断工程における前記ポーションチーズを支持する支持力より大きい付勢力により前記底面の支持を押し出すように待避させてポーションチーズを下方へ移動させる取出工程と、を実施することを特徴とする積層されたチーズの切断方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の切断装置、切断方法によれば、層状に積層するチーズカードを積層方向に沿って切断しても層剥離を確実に防止できる積層されたチーズの切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を説明するための前提となるチーズ切断装置を示す切断時における断面図。
【図2】前記前提となるチーズ切断装置を示す切断したポーションチーズを取り出す時の断面図。
【図3】本発明の第一実施形態のチーズ切断装置を示す斜視図。
【図4】前記第一実施形態のチーズ切断装置を示す切断時における断面図。
【図5】前記第一実施形態の支持部材による支持状況を示す平面図。
【図6】前記第一実施形態のチーズ切断装置による切断後の取出状況を示す断面図。
【図7】前記第一実施形態のチーズ切断装置による取出状況を示す断面図。
【図8】本発明の第二実施形態のチーズ切断装置を示す断面図。
【図9】本発明の第三実施形態のチーズ切断装置を示す断面図。
【図10】本発明のさらに他の実施形態の支持部材による支持状況を示す平面図。
【図11】本発明のさらに他の実施形態の支持部材による支持状況を示す平面図。
【図12】本発明のさらに他の実施形態の支持部材による支持状況を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の積層されたチーズの切断装置は、積層されたチーズカードを積層方向に沿って切断する積層されたチーズの切断装置であって、前記積層されたチーズカードを積層方向の下方から上方へ向けて切断して複数のポーションチーズを得る切断刃と、この切断刃に設けられ、前記ポーションチーズの積層方向における底面に当接して該ポーションチーズを支持するとともに、前記ポーションチーズを前記切断刃に対して相対的に下方へ移動させる付勢力により該ポーションチーズの底面から待避する状態に回動する支持部材と、を具備したことを特徴とする。
この発明では、切断刃を用いて積層されたチーズカードを積層方向の下方から上方へ向けて切断し、切断したポーションチーズの底面を、切断刃に設けた支持部材にて支持し落下、特に先に切断される下層側のチーズカードが落下することを防止する。そして、切断したポーションチーズを切断刃に対して相対的に下方へ移動させる付勢力を作用させ、ポーションチーズにて支持部材を押し出すように底面から待避する状態に回動させ、ポーションチーズを層間で剥離することなく取り出す。
このため、ポーションチーズにおける下層側が脱落することを防止するために、従来のように切断刃の幅寸法を広くして接触面積を広くする必要はなく、切断したポーションチーズと切断刃との接触面積を小さくして付着を抑制することが容易にでき、ポーションチーズを容易に切り出すことができる。
【0015】
本発明では、前記チーズカードは、円柱状であり、前記切断刃は、積層方向に対する垂直面で放射状に複数設けられており、前記積層されたチーズカードの外周面に当接して、前記積層されたチーズカードの中心軸を、前記複数の切断刃が交差する中心位置に案内させるガイド部材を備えている構成とすることが好ましい。
この発明では、積層された円柱状のチーズカードの外周面にガイド部材を当接させ、放射状の複数の切断刃が交差する中心位置に、チーズカードの中心軸を案内させて放射状に切断する。
このため、ガイド部材を設ける簡単な構成で、円柱状のチーズカードを放射状に均等に切断できる。
【0016】
本発明では、前記支持部材は、前記ガイド部材を備えている構成とすることが好ましい。
この発明では、支持部材に設けたガイド部材が円柱状のチーズカードを切断刃の中心位置に位置決めする。この状態で、切断刃により放射状に均等に切断されたポーションチーズの底面を支持部材にて支持する
このため、支持部材とガイド部材とを一体的に構成するので、切断刃に設けられる支持部材にガイド部材を設けることで、ガイド部材を取り付けるための構成を支持部材と共通化でき、構成を簡略化できる。
【0017】
本発明の積層されたチーズの切断方法は、積層されたチーズカードを積層方向に沿って切断する積層されたチーズの切断方法であって、前記積層されたチーズカードを積層方向の下方から上方へ向けて切断し、得られた複数のポーションチーズにおける積層方向の底面を支持する切断工程と、この切断工程における前記ポーションチーズを支持する支持力より大きい付勢力により前記底面の支持を押し出すように待避させてポーションチーズを下方へ移動させる取出工程と、を実施することを特徴とする。
この発明では、本発明の積層されたチーズの切断装置を方法の発明に展開したもので、切断工程で積層されたチーズカードを積層方向の下方から上方へ向けて切断し得られたポーションチーズの積層方向における底面を支持する。切断工程で切断されたポーションチーズを支持する支持力より大きい付勢力により、ポーションチーズの底面の支持を押し出すように待避させてポーションチーズを下方へ移動させて取り出す。
このため、ポーションチーズにおける下層側が脱落することを防止するために、従来のように切断刃の幅寸法を広くして接触面積を広くする必要はなく、切断したポーションチーズと切断刃との接触面積を小さくして付着を抑制することが容易にでき、ポーションチーズを容易に切り出すことができる。
【0018】
[第一実施形態]
以下、本発明の積層されたチーズの切断装置に係る第一実施形態のチーズ切断装置を、図面を参照して説明する。
なお、第一実施形態では、円柱状のチーズカードを6個のポーションチーズに切断する構成を例示するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
{チーズ切断装置の構成}
図3において、1はチーズ切断装置で、このチーズ切断装置1は、軸方向で積層された円柱状のチーズカード2を、放射状に6個のポーションチーズ3(図4参照)に切断する装置である。
このチーズカード2は、層間2Aに香辛料や調味料などの呈味物質や、果物、野菜、ナッツ、獣肉製品、乳製品などの食品類などを挟んで軸方向で2層積層されている。
なお、切断対象のチーズカード2は、複数のチーズカード2の間に呈味物質や食品類を挟んで積層したものの他、例えば熟成途中の円柱状のチーズカード2を軸方向に対して水平に切断して、呈味物質や食品類などを挟んだ後元に戻したものなども対象となる。
【0020】
チーズ切断装置1は、図3および図4に示すように、円筒状の枠体10と、この枠体10の中心軸から放射状に設けられた6つの切断刃20と、切断刃20間にそれぞれ設けられた支持部材30と、などを備えている。
枠体10は、例えばステンレス鋼板にて円筒状に形成され、内周面に等間隔で6等分する位置に内方に向けてフランジ状に突出する取付片部11が設けられている。この枠体10は、軸方向が積層方向に沿って設けられている。また、枠体10には、取付片部11間の中間位置に、それぞれコイルばね31などを取り付けるための取付孔12が設けられている。
切断刃20は、例えばステンレス鋼板にて細長板状に形成されている。切断刃20は、長手方向の一縁に肉薄となる図示しない刃が設けられている。また、切断刃20の長手方向の一端には、枠体10の取付片部11に取り付けられる取付板部21が設けられている。そして、切断刃20は、刃が上方に向く状態で取付板部21が取付片部11にそれぞれ取り付けられ、長手方向の他端が枠体10の中心軸上でそれぞれ接続され、放射状に配設されている。
【0021】
支持部材30は、軸部32と、回動部33と、コイルばね31と、支持腕部34とを備えている。
軸部32は、ステンレス鋼棒などにて形成され、切断刃20間に架橋する状態にそれぞれ6つ設けられている。
回動部33は、ステンレス鋼板にて長手板状に形成されており、長手方向の一端側に一面側に湾曲するガイド部材としての湾曲部33Aが設けられている。回動部33の長手方向の他端側には、湾曲部33Aが湾曲する側に、軸部32を回転自在に嵌挿する軸受部33Bが設けられている。さらに、回動部33の他端部には、枠体10に取り付けられたコイルばね31が取り付けられるガイド孔33Cが設けられている。
支持腕部34は、ステンレス鋼棒などにて屈曲形成され、回動部33の湾曲部33Aに取り付けられている。支持腕部34は、回動部33の両側から側方へ延出し、さらに先端が回動部33の他端側とは反対側に延出するように屈曲形成されている。この支持腕部34は、図4および図5に示すように、チーズカード2を切断した状態で、ポーションチーズ3の底面を支持するように、水平方向に延出する状態に屈曲形成されている。
【0022】
そして、支持部材30は、湾曲部33A側が枠体10の中心軸側に位置して軸部32を回動軸として上下方向に回動可能に配設されている。
具体的には、支持部材30は、待機状態では図4中二点鎖線で示すように、コイルばね31の引張力が作用して、湾曲部33Aが切断刃20より上方に位置している。さらに、支持部材30は、チーズカード2の切断時では、図4中実線で示すように、チーズカード2を切断するために上方から付勢されることで、コイルばね31の弾性力に抗して湾曲部33A側が下方に回動する。
【0023】
{チーズ切断装置の動作}
次に、上記チーズ切断装置1によりチーズカード2を切断する動作について、図面を参照して説明する。
図6は、第一実施形態におけるチーズカードを切断した直後におけるチーズ切断装置を示す断面図である。図7は、第一実施形態における切断したポーションチーズを後工程に搬送するために取り出す状態のチーズ切断装置を示す断面図である。
【0024】
あらかじめ層間2Aに呈味物質や食品類などが挟まれた積層されたチーズカード2を、図3に示すようにチーズ切断装置1の上方に搬送し、複数の支持部材30の湾曲部33A間に位置させる。これにより、チーズカード2は、図4中の二点鎖線に示すように、底面外周縁が各支持部材30の湾曲部33Aに当接し、中心軸が枠体10の中心軸に一致するように案内され、位置決めされる。
この状態で、切断工程を実施する。この切断工程では、チーズ切断装置1の上方に配設された図示しない押圧板により、チーズカード2の下面をチーズ切断装置1に押し付けるように押圧する。押圧されたチーズカード2は、切断刃20に押し付けられてポーションカットされる。この切断刃20による切断時、支持部材30は、チーズ切断装置1に対して相対的に下方に移動されるチーズカード2とともにチーズカード2に湾曲部33Aが当接した状態で下方に回動し、チーズカード2の中心軸が枠体10の中心軸に一致する状態が維持される。
そして、押圧板が切断刃20に当接してチーズカード2が切断されると、押圧板は上方に待避し、切断工程が終了する。この切断された状態は、図4中の実線で示すように、ポーションチーズ3の底面が支持部材30の支持腕部34に支持され、落下が防止されている。すなわち、図1および図2に示す従来の切断方法では、下層側のチーズカードY(B)が切断刃Cを通過して先に下層側のチーズカードY(B)が切断されると、下層側のチーズカードY(B)は上層側のチーズカードY(A)に層間Xを介して接触するのみで、上層側につり下がる状態となるが、第一実施形態では、図4に示すように、下層側のチーズカード2は、底面が支持腕部34にて支持されているので、落下しない。
【0025】
この切断工程後、取出工程を実施する。この取出工程では、図6および図7に示すように、チーズ切断装置1の上方に配設された取出部材4にて、ポーションチーズ3を下方へ押し出すように上方から押圧する。この取出部材4による押圧は、支持部材30にてポーションチーズ3の底面を支持する支持力より大きい押圧力で押圧する。具体的には、図7に示すように、支持部材30のコイルばね31の弾性に抗して伸びる状態に支持部材30の支持腕部34を下方に回動させ、ポーションチーズ3の底面から支持腕部34を待避させる。
この取出部材4の押圧により、ポーションチーズ3は、チーズ切断装置1から取り出される。具体的には、ポーションチーズ3は、チーズ切断装置1の下方に配設された図示しないターンテーブル上に、1つずつ落とされる。
そして、ターンテーブル上に落とされたポーションチーズ3は、後工程の包装装置に搬送され、包装された後、例えば容器内に全体として円柱状となるように並べられ、製品形態となる。
【0026】
{第一実施形態の作用効果}
上記実施形態では、切断刃20を用いて、層間に呈味物質や食品類などを挟み込んだ積層されたチーズカード2を積層方向の下方から上方へ向けて切断するとともに、切断したポーションチーズ3の底面を、切断刃20の間に設けた支持部材30にて支持する。このため、先に切断され切断刃20の側面に接触していない下層側のチーズカード2が、上層側のチーズカード2から層間2Aで剥離して落下することを防止できる。この後、切断したポーションチーズ3を切断刃20に対して相対的に下方へ移動させる付勢力を作用させ、ポーションチーズ3にて支持腕部34を押し出すように底面から待避する状態に回動させ、ポーションチーズ3を層間2Aで剥離することなく取り出す。
このため、ポーションチーズ3における下層側のチーズカードが脱落することを防止できるため、従来のように脱落を防止するために切断刃Cの幅寸法を広くして接触面積を広くする必要はなく、切断したポーションチーズ3と切断刃20との接触面積を小さくして付着を抑制することが容易にでき、ポーションチーズ3を容易に切り出すことができる。したがって、従来のように、糊状物質を添加することで味や食感などが損なわれる不都合がなく、切断後に熟成や冷却するなどの特別な処理を実施する必要もなく、支持部材30を設ける簡単な構造で、安定して生産でき製造効率が低下することも防止できる。
【0027】
そして、上記実施形態では、積層された円柱状のチーズカード2の外周面に当接する湾曲部33Aを設け、放射状の複数の切断刃20が交差する中心位置に、チーズカード2の中心軸が位置する状態に案内させて放射状に切断している。
このため、チーズカード2の外周面に当接する湾曲部33Aを設ける簡単な構成で、円柱状のチーズカード2を放射状に均等に切断できる。
特に、湾曲部33Aは、ステンレス鋼板の回動部33における長手方向の一端側を湾曲してチーズカード2の外周面に当接可能に設けた簡単な構造であることから、容易に製造できる。
【0028】
さらに、上記実施形態では、支持部材30に湾曲部33Aを設け、湾曲部33Aにて円柱状のチーズカード2の中心軸を切断刃20の交差する中心位置に位置決めし、切断刃20により放射状に均等に切断したポーションチーズ3の底面を支持部材30の支持腕部34にて支持している
このため、支持部材30と湾曲部33Aとを一体的に構成しているので、支持部材30に湾曲部33Aを設けることで、湾曲部33Aを取り付けるための構成を支持部材30と共通化でき、構成を簡略化できる。
【0029】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態のチーズ切断装置を、図面を参照して説明する。
第二実施形態は、第一実施形態の回動部33の湾曲部33Aに代えて、支持腕部34の一部にチーズカード2を案内する機能を設けたものである。
図8は、本発明の第二実施形態のチーズ切断装置を示す断面図である。
なお、図8に示す第二実施形態において、上記図3から図7に示す第一実施形態と同一もしくは類似の構成には、同一の名称および符号を付して、説明を省略もしくは簡略化する。
【0030】
図8に示すように、第二実施形態のチーズ切断装置1の支持部材30は、ステンレス鋼板にて長手板状に形成され軸受部33Bが設けられた板部35を有している。板部35の長手方向の一端には、ステンレス鋼棒にて屈曲された支持腕部34が設けられている。この支持腕部34は、板部35の幅方向より長手棒状で板部35の先端縁に取り付けられる取付部34Aを有している。この取付部34Aの両端部には、板部35の一面側に屈曲されたガイド部材としてのガイド部34Bが一連に設けられている。さらに、ガイド部34Bの先端には、ガイド孔33Cとは反対側に延出する状態に屈曲形成された腕部34Cが一連に形成されている。
そして、支持腕部34は、待機状態では図8中二点鎖線で示すように、コイルばね31の引張力が作用して、ガイド部34Bが枠体10の中心軸側斜め上方に切断刃20より上方に位置する状態に配設されている。
さらに、支持腕部34は、ポーションチーズ3の底面を支持する際には、図8中実線で示すように、腕部34Cが水平方向に延出する状態となっている。
【0031】
そして、切断時には、チーズカード2は、図8中の二点鎖線に示すように、底面外周縁が各支持部材30のガイド部34Bに当接し、中心軸が枠体10の中心軸に一致するように位置決めされる。
この後、図示しない押圧板によりチーズカード2の下面がチーズ切断装置1に押し付けられて切断刃20によりポーションカットされる。切断されたポーションチーズ3の底面は、支持腕部34の腕部34Cに支持され、落下しない。
この図8に示す第二実施形態でも、第一実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、下層側のチーズカードが落下して、後工程での包装が実施できなくなるという不都合を防止するために、従来のように糊状物質を添加することで味や食感などが損なわれるという不都合がなく、切断後に熟成や冷却するなどの特別な処理を実施する必要もなく、支持部材30を設ける簡単な構造で、安定して生産でき製造効率が低下することも防止できる。
【0032】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態のチーズ切断装置を、図面を参照して説明する。
第三実施形態は、第二実施形態のガイド部34Bと腕部34Cとを共通化したものである。
図9は、本発明の第三実施形態のチーズ切断装置を示す断面図である。
なお、図9に示す第三実施形態において、上記第一実施形態および第二実施形態と同一もしくは類似の構成には、同一の名称および符号を付して、説明を省略もしくは簡略化する。
【0033】
図9に示すように、第三実施形態のチーズ切断装置1の支持部材30は、ステンレス鋼板にて長手板状に形成された板部35を有している。板部35は長手方向の中間部で一面側に屈曲されている。そして、板部35の長手方向の一端側には軸受部33Bが設けられ、他端側にはフォーク状に二股に切り欠き形成された支持腕部35Aが設けられている。
この支持部材30は、待機状態ではコイルばね31の引張力が作用して、支持腕部35Aが枠体10の中心軸側斜め上方に切断刃20より上方に位置し、投下されたチーズカード2の底面外周縁が支持腕部35Aに当接して位置決するように配設されている。さらに、支持部材30は、切断により下方に押し込まれるチーズカード2とともに回動し、支持腕部35Aに切断されたポーションチーズ3の底面外周縁が当接されて支持する状態が維持される状態に配設されている。
この図9に示す第三実施形態も、上記第一実施形態および第二実施形態と同様に、支持部材30を設ける簡単な構造で、安定して生産でき製造効率が低下することも防止できるという作用効果を奏するとともに、例えば鋼板をプレス成形により屈曲および打ち抜き形成して支持腕部35Aを設けた板部35を形成すればよく、より構造が簡略化し、一動作の成形動作で形成でき、支持部材30を容易に形成できる。
【0034】
[変形例]
なお、本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは、本発明に含まれるものである。
例えば、チーズカード2として、2層構造に限らず複数積層したものでもよい。
また、切断対象のチーズカード2は、円柱形に限らず、四角や星形、楕円形、キャラクター形状など、各種形状でもよい。また、呈味物質や食品類などを挟み込んだが、いずれも挟み込まず単にチーズカード2を積層した構成としてもよい。
【0035】
そして、切断刃20を6つ設けてチーズカード2を6等分する構成を例示したか、6等分する構成に限らず、複数に切断する場合に適用できる。
さらに、切断刃20を放射状に設けてポーションカットする場合に限らず、例えばマス目状に切断するなどしてもよい。
【0036】
また、支持部材30としては、上記実施形態の形状に限らず、ポーションチーズ3の底面を支持可能ないずれの形状に形成できる。
例えば、図10に示すように、第一実施形態の支持腕部34の長さをポーションチーズ3の底面をできるだけ保持できるように長く形成してもよい。さらに、図11に示すように、第一実施形態の棒状の支持腕部34に代えて、湾曲部33Aからさらに先端側を鍔状に突出形成させた板状の支持腕部34としてもよい。また、図12に示すように、板状の支持腕部34の形状を、ポーションチーズ3の底面形状に合わせて台形に形成するなどしてもよい。
【0037】
その他、本発明の実施における具体的な構成および形態などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
【実施例】
【0038】
次に、各種切断方法によるチーズカードの切断状況を比較検討した実験について説明する。
実験では、切断対象のチーズカード2として、通常のカマンベールチーズのチーズカードを、一次熟成期間においてカビが生えそろった時点で水平方向に切断し、呈味物質としてCSバジル(商品名:エスビー食品株式会社製)0.5gを層間2Aに均等に挟み込んで形成した。さらに、呈味物質を挟み込んだチーズカード2を、5日間発酵させたチーズカード2を形成した。
そして、実施品1として、第一実施形態のチーズ切断装置1を用いて発酵前のチーズカード2を切断し、切断状況を観察した。また、実施品1におけるチーズカード2として発酵後のものを用いて同様に切断し、切断状況を観察したものを実施品2とした。
一方、図1および図2に示す従来のチーズ切断装置Cを用い、発酵前のチーズカード2を切断したものを比較品1とし、発酵後のチーズカード2を切断したものを比較品2とした。
そして、切断状況として、上下層が剥離することなく、後工程の包装装置で適切に包装できる形状を維持したポーションチーズ3が切り出されたものを「○」、上下層が剥離したものを「×」として評価した。その結果を、以下の表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
この表1に示す結果から、呈味物質を挟み込んだ直後に切断した比較品1では、従来のチーズ切断装置Cが底面を支持しない構成のため、下層側の剥落が6割と多く、5日間発酵させて層間接着強度を高めた比較品2でも、1割強の下層側の剥落が認められた。このため、従来のチーズ切断装置Cでは、後工程の包装ができず、安定して生産できないことが認められた。
一方、第一実施形態のチーズ切断装置1では、層間2Aの接着強度がほとんど得られていないチーズカード2でも、下層側の剥落は認められなかった。
【0041】
次に、支持部材30として、第一実施形態のチーズ切断装置1のもの(治具A)の他、図10に示すもの(治具B)、図11に示すもの(治具C)、図12に示すもの(治具D)を用い、実施品1と同様に発酵前のチーズカード2を切断し、切断状況を確認した。その結果を以下の表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
この表2に示す結果から、下面を支持する構成として、いずれの形状でも下層側の剥落は認められず、切り出されるポーションチーズ3の底面を支持することで、層間2Aで剥離することなく、積層されたチーズカード2から良好にポーションチーズ3を切り出しでき、安定して生産できることが認められた。
【符号の説明】
【0044】
1……チーズ切断装置
2……チーズカード
3……ポーションチーズ
20……切断刃
30……支持部材
33A…ガイド部材としての湾曲部
34B…ガイド部材としてのガイド部
35A…ガイド部材としても機能する支持腕部35A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層されたチーズカードを積層方向に沿って切断する積層されたチーズの切断装置であって、
前記積層されたチーズカードを積層方向の下方から上方へ向けて切断して複数のポーションチーズを得る切断刃と、
この切断刃に設けられ、前記ポーションチーズの積層方向における底面に当接して該ポーションチーズを支持するとともに、前記ポーションチーズを前記切断刃に対して相対的に下方へ移動させる付勢力により該ポーションチーズの底面から待避する状態に回動する支持部材と、
を具備したことを特徴とする積層されたチーズの切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の積層されたチーズの切断装置において、
前記チーズカードは、円柱状であり、
前記切断刃は、積層方向に対する垂直面で放射状に複数設けられており、
前記積層されたチーズカードの外周面に当接して、前記積層されたチーズカードの中心軸を、前記複数の切断刃が交差する中心位置に案内するガイド部材を備えている
ことを特徴とする積層されたチーズの切断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の積層されたチーズの切断装置において、
前記支持部材は、前記ガイド部材を備えている
ことを特徴とする積層されたチーズの切断装置。
【請求項4】
積層されたチーズカードを積層方向に沿って切断する積層されたチーズの切断方法であって、
前記積層されたチーズカードを積層方向の下方から上方へ向けて切断し、得られた複数のポーションチーズにおける積層方向の底面を支持する切断工程と、
この切断工程における前記ポーションチーズを支持する支持力より大きい付勢力により前記底面の支持を押し出すように待避させてポーションチーズを下方へ移動させる取出工程と、を実施する
ことを特徴とする積層されたチーズの切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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