説明

積層したドラム缶の固定具

【課題】 簡単な取り扱い作業により、確実かつ強固にドラム缶同士を連結し、互いに固定して耐震性を高めて転倒を防止するドラム缶の連結具を提供する。
【解決手段】 ドラム缶の上下部外周面に当接する外側面と、上方ドラム缶7Aの下突縁71A又は下方ドラム缶7Bの上突縁71Bに係止する下端面32又は上端面42を有する二枚の挟持片3、4を、ロッド2の上下位置に配設する。該ロッド2を軸として少なくとも一方の挟持片4が回動可能とする。上下の挟持片3、4の間隔を広狭可能に位置決めできるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起立して上下に積層したドラム缶同士を連結し、地震時や輸送時の揺れ・振動に上方のドラム缶がズレて落ちたり、或いは転倒しないようにするドラム缶の固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドラム缶を保管する倉庫等では、ドラム缶を横に並べると転がったり、収容物が流出したり、ドラム缶の損傷や窪みが生じるため、起立して保管するのが一般的で、スペースの有効利用を図るため数段に積み上げて保管している。
そして、積層したドラム缶を通常は、ロープで固縛しておくのであるけれど、何もせずにそのままの状態としている場合もある。
【0003】
また、積層したドラム缶のズレ落ちや転倒を防止するため、例えば特開2009−126632号公報では、円筒状物の配列方向と並行に延びる第1レール溝を有する天井に取り付けられた第1レールに、それぞれが第1レールと連結可能であり第1レールを移動する一様な厚さと縦長状の平坦な面とを有し、可動板の平坦な面が、前記配列方向と並行に配置されたときに、前記円筒状物の少なくとも一部に接触するようにし、さらに、前記配列方向と直交する方向に延びる第2レール溝を有する第2レールを有し、第2レール溝には、前記可動板を支持し移動可能に回転する車輪が配置され、移動する方向を前記配列方向又は前記配列方向に直交する方向いずれかの一方向から他方向へ変更して前記車輪の上を移動するようにしたものが開示されている。
【0004】
また、特開2009−73597号公報では、一定数の定型容器を格納する矩形の有蓋ボックスが多段に積層された状態で、少なくとも上下に隣接する有蓋ボックス同士が連結手段によって連結されて一体に固定されたボックス集合体が形成され、該ボックス集合体が、所定の間隔を空けて前後左右に複数配置され、更に、隣接するボックス集合体の上端部同士が連結杆によって連結されて、複数のボックス集合体が一体に固定されてなることを特徴とする定型容器の格納棚が開示されている。
【0005】
さらに、実開昭61−157536号公報では、横に並べて積層するための固定枠体具を開示したものであり、実開昭64−14663号公報では、不燃性伸縮部材と不燃性ベルトとより成り、両端に建築物等の固定部分に係止する係止具を設けたベルトでドラム缶を建築物に縛り付けて転倒を防止せんとするものがある。
【0006】
そして、配設して立設した複数本のドラム缶の胴部を、ベルト等の紐状体で固縛して全体の一体化を図って安定感を高める方法も採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−126632号公報
【特許文献2】特開2009−73597号公報
【特許文献3】実開昭61−157536号公報
【特許文献4】実開昭64−14663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特開2009−126632号公報や特開2009−73597号公報では、装置を特定空間内に設置するため、特別の家屋や新たな設備投資が必要であって、簡単に利用できない問題がある。
また、実開昭61−157536号公報は横積を基本とするものであり、実開昭64−14663号公報では係止するための建築物等の固定部に近いことの制約があり、一本のベルトで起立の維持は困難である。
【0009】
更に、複数本のドラム缶にベルト等を掛けまわして固定することは、一人で行うのは困難であり、例え締め付けることが出来たとしても、ドラム缶の上下端に突縁が形成されているため、確実且つ安定した固縛を成す事は事実上困難である。
そして、空のドラム缶や収容物が軽量な場合は、運搬中の振動でベルトが緩んで荷崩れが発生するおそれもある。
【0010】
そこで、本発明は、簡単な取り扱い作業により、確実かつ強固にドラム缶同士を連結し、互いに固定して耐震性を高めて転倒を防止するドラム缶の固定具を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に記載した積層したドラム缶の固定具は、ドラム缶の上下部外周面に当接する外側面と、上方ドラム缶の下突縁又は下方ドラム缶の上突縁に係止する下端面又は上端面を有する二枚の挟持片が、ロッドの上下位置に配設され、該ロッドを軸として少なくとも一方の挟持片が回動可能であると共に、上下の挟持片の間隔を広狭可能に位置決めできるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項2に記載した積層したドラム缶の固定具は、請求項1において、上方ドラム缶の下突縁に係止する上方の挟持片の下端面と、下方ドラム缶の上突縁に係止する下方の挟持片の上端面が、互いに交差する位置関係で位置決めされることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項3に記載した積層したドラム缶の固定具は、請求項1及び2において、一方の挟持片がロッドに固定され、他方の挟持片がロッドに回動可能に挿通され、該ロッドの挿通側に形成した螺軸部に螺合したナットで他方の挟持片を昇降させ、上下の挟持片の間隔を広狭可能に位置決めすることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項4に記載した積層したドラム缶の固定具は、請求項1及び2において、ロッドを伸縮可能にしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明は、ドラム缶に形成されている上下端部の突縁を利用して、上下二枚の挟持片の下端面又は上端面をドラム缶に形成されている上下端部の突縁に係止すると共に挟持して固定するものである。
そして、ドラム缶の積層は下段の隣接する二個のドラム缶に跨って上段のドラム缶が載置されるものであるから、その載置した上下面の交差する周端突縁の交差部に本願固定具の挟持片を設置すれば確実に固定できる効果がある。
【0016】
また、ドラム缶の上下部外周面に挟持片の外側面が当接して突縁への係止を確実とし、少なくとも一方の挟持片が回動可能であるから、異方向となるドラム缶の上下部外周面に各挟持片の外側面が確実に当接して係止できる効果を有する。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の効果に加えて、上方ドラム缶の下突縁に係止する上方の挟持片の下端面と、下方ドラム缶の上突縁に係止する下方の挟持片の上端面が、互いに交差する位置関係で位置決めされることは、挟持片が幅を有する面で形成され、ドラム缶への当接面も広くなって係止が安定化すると共に、他方の挟持片の前後左右への振動が、ロッド介して、一方の挟持片へはドラム缶に圧着する方向に作用するため、互いの挟持片がドラム缶の突縁から外れることなく、係止固定が維持できる効果を発揮する。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1又は2の効果に加えて、ロッドに挿通した挟持片を、係止するドラム缶の面に当接するように回動して、螺軸部に螺合したナットで当該挟持片を昇降させ、上下の挟持片の間隔を狭めて、本願固定具を上下のドラム缶に挟持固定するものであり、極めて簡単で、ナットの締め付け作業で、容易に行うことができる効果を有する。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1又は2の効果に加えて、ロッドを伸縮可能な構成とすることでも同様の効果を得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の固定具の一実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1の縦断側面図である。
【図3】図1のX‐X線横断平面図である。
【図4】本発明の固定具の使用の状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の固定具の他の実施の形態を示す正面図である。
【図6】図6の縦断側面図である。
【図7】本発明の固定具の他の実施の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の固定具の一実施の形態を示す正面図、図2は同縦断側面図、図3は同横断平面図であり、固定具1は、ロッド2、二枚の挟持片3、4及び昇降用ナット6より構成されている。
【0022】
二枚の挟持片3、4は、ロッド2の上下位置に配設され、上方の挟持片3は内側面の中央部上下方向でスリーブ33を介してロッド2に溶着固定され、一方、下方の挟持片4は内側面の中央部上下方向にスリーブ43を有し、このスリーブ43がロッド2に緩挿し、ロッド2を軸として回動可能に且つ昇降可能に設けられている。
したがって、挟持片3,4のロッド2に対する角度が異なる場合は、上方の挟持片3の下端面と下方の挟持片4の上端面が、互いに交差する位置関係となる。
【0023】
一方、ロッド2の下部外周にはネジが刻設してあり、この螺軸部21に螺合した昇降用ナット6が下方の挟持片4を昇降させ、上方の挟持片3との間隔を広狭可能に位置決めできるように成っている。
図面では上方の挟持片3がロッド2に固定して連結しているけれど、逆に下方の挟持片4の方をロッド2へ固定して配置してもよい。
【0024】
また、挟持片3、4は外側に湾曲31、41して成り、挟持する積層したドラム缶7A、7Bの上下部外周面72A、72Bに当接するようなっている。
更に、上方の挟持片3の下端面32及び下方の挟持片4の上端面42は、外側に尖った切り込みが成され、上方ドラム缶7Aの下突縁71A又は下方ドラム缶7Bの上突縁71Bへ確実に係止するようにしてある。
【0025】
そこで、本発明の固定具1の使用状態を図4に基づいて説明する。
ドラム缶は下段の隣接する二個のドラム缶7B、7Bに跨って上段のドラム缶7Aを載置して積層されており、その積層した上下段のドラム缶7A、7Bの外周面72A、72Bが交差する上下突縁71A、71Bの交差部に、本願固定具1の挟持片3、4を設置するものである。
【0026】
先ず、上方の挟持片3の外側面を上段のドラム缶7Aの外周面72Aに当てると共に、挟持片3の下端面32をドラム缶7Aの下突縁71Aに引っ掛ける。
さすれば、外側に湾曲31した挟持片3はドラム缶7Aの外周72Aに当着すると共に、挟持片3の外側に尖った下端面32は、ドラム缶7Aの下突縁71Aへ確実に係止する。
【0027】
次に、ロッド2に挿通した下方の挟持片4を回動して、外側に湾曲41した挟持片4を下段のドラム缶7Bの外周面72Bに当接させた状態で、ロッド2の螺軸部21に螺合した調節用ナット6を操作し、挟持片4の外側に尖った下端面42がドラム缶7Bの上突縁71Bに引っ掛かって強く係止するまで挟持片4を上昇させる。
【0028】
さすれば、ドラム缶7A、7Bに形成されている上下端部の突縁71A、71Bを利用して、上下の挟持片3、4の間隔を狭めた挟持片3、4の下端面32又は上端面42が、ドラム缶7A、7B上下端部の突縁71A又は71Bに係止すると共に挟持して、積層した上下のドラム缶を固定できるのである。
【0029】
この様に本願の固定具1を、積層した上下段のドラム缶7A、7Bの外周面が交差する上下突縁71A、71Bの各交差部に、又は適宜の交差部に設置固定することで、強固にドラム缶同士を連結し、互いに固定して耐震性を高めて転倒を防止することができる。
【0030】
図4ではロッド2に固定した挟持片3を上位置で使用しているけれど、逆に下位置で使用して、上位置となった挟持片4を調節用ナット6で下降させて上下のドラム缶7A,7Bを挟持固定しても良い。
【0031】
図5は本発明の固定具の他の実施の形態を示す正面図、図6は同縦断側面図である。
上下に配置した挟持片3、4のスリーブ33、34が共にロッド2に挿通され、ロッド2に対して回動及び昇降可能としたものであり、ロッド2の上端にストッパー22を冠着して挟持片3の脱落を阻止し、係止するドラム缶7Aの挟持を可能としている。
何れの挟持片3、4も自由に回動してドラム缶の突縁部への係止を容易にできるものとなる。
【0032】
スリーブ33、34間には弾性体8を巻着してもよく、弾性体8が緩んでいるときは、挟持片3、4の回動に支承はなく、挟持固定時には、異変時の振動等で挟持片3、4の回動を阻止するものである。
弾性体8は、例えばゴム等を用い、スリーブ33、43の滑り止め加工を施しておくも望ましい。
【0033】
図7は本発明の固定具の他の実施の形態を示す正面図である。
ロッド2の上部に軸着51した回動ロッド5の先部に、上方の挟持片3を上下方向に首振り可能に軸着52し、下方の挟持片4はロッド2を軸として回動可能に挿通され、ロッド2の下部に刻設した螺軸部23にストッパー用ナット24を螺合して挟持片4の脱落を阻止すると共に、挟持時の位置決めを調節可能としている。
【0034】
したがって、操作部53で回動ロッド5を回動させることによってトグル作用を奏し、上方の挟持片3と下方の挟持片4は相対的に上下位置が広狭して当接及び係止させた上下のドラム缶の突縁部を挟持固定することとなる。
回動ロッド5の操作によって、挟持片3、4の上下の広狭距離は一定となるためストッパー用ナット24により、距離の調節を行い強固な挟持とするものである。
【0035】
この実施の形態では、表示した図7の上下位置関係で使用した場合での説明をしたけれど、挟持片の上下位置を逆にして使用した場合も何ら支障は無い。
即ち、回動ロッド5を下方へ回動させ、上下が逆の位置となった両挟持片で上下のドラム缶の突縁部を挟持固定するようにしても同様の作用効果を得られるのである。
【0036】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、さらに、ロッド2にターンバックル等を介在させて挟持片3、4間の長さ調節をするようにしても良く、発明の思想を逸脱することなく、本発明の特徴を有し同等の作用効果を発揮する固定具にも適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 固定具
2 ロッド
21、23 螺軸部
22 ストッパー
24 ストッパー用ナット
3、4 挟持片
31、41 湾曲
32 下端面
42 上端縁
33、43 スリーブ
5 回動ロッド
51、52 軸着
53 操作部
6 調節用ナット
7A、7B ドラム缶
71A、71B 突縁
72A、72B 外周面
8 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム缶の上下部外周面に当接する外側面と、上方ドラム缶の下突縁又は下方ドラム缶の上突縁に係止する下端面又は上端面を有する二枚の挟持片が、ロッドの上下位置に配設され、該ロッドを軸として少なくとも一方の挟持片が回動可能であると共に、上下の挟持片の間隔を広狭可能に位置決めできるようにしたことを特徴とする積層したドラム缶の固定具。
【請求項2】
上方ドラム缶の下突縁に係止する上方の挟持片の下端面と、下方ドラム缶の上突縁に係止する下方の挟持片の上端面が、互いに交差する位置関係で位置決めされることを特徴とする請求項1記載の積層したドラム缶の固定具。
【請求項3】
一方の挟持片がロッドに固定され、他方の挟持片がロッドに回動可能に挿通され、該ロッドの挿通側に形成した螺軸部に螺合したナットで他方の挟持片を昇降させ、上下の挟持片の間隔を広狭可能に位置決めすることを特徴とする請求項1又は2記載の積層したドラム缶の固定具。
【請求項4】
ロッドを伸縮可能にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の積層したドラム缶の固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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