説明

積層ガスバリアフィルム

【課題】
ガスバリア性能に優れた複数のフィルムを接着層を介して積層することによる高度なガスバリア性能を発揮するシートの作成にあたり、接着剤そのものが高度なガスバリア性能を有している場合に、接着剤の硬化時に発生する水分、炭酸ガス、接着剤成分であるモノマー、塗剤中の有機溶媒などがガスとして発生した際に、接着層中の気泡の発生を抑え、気泡によるフィルムの変形のない、ガスバリア性能に極めて優れた積層ガスバリアフィルムを提供することにある。
【解決手段】
基材フィルムの片面に金属酸化物層が設けられたフィルム(A)、ゼオライトが1〜20重量%含有された芳香族系の架橋樹脂接着剤層(B)、基材フィルムの片面に金属酸化物層が設けられたフィルム(C)が、(A)および(C)のそれぞれの金属酸化物層を(B)側に向けて積層された積層ガスバリアフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパーや太陽電池等の封止材料に用いることができる高度なガスバリア性能が要求される積層ガスバリアフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスバリアフィルムは食品包装材料として、内容物の保存性を高めるために広範に用いられている。このための材料として、プラスチックフィルム上に金属酸化物の透明な薄膜を形成し、透明性とガスバリア性能を両立させた透明ガスバリアフィルムが代表的なものとして知られている。
【0003】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)や電子ペーパー、太陽電池といった機能素子に軽量化、低コスト化のためにプラスチック材料が用いられるようになっており、これら機能素子の長期の性能を保証するために、外部からの水蒸気や酸素の浸入を阻止し、内部の材料の劣化を防ぐための高度のガスバリア性能がこれらプラスチック材料には要求されるようになってきている。
【0004】
ガスバリア性能の向上を目的としてプラスチックフィルムからなる基体の少なくとも片面に金属酸化物層がスパッタリングにより形成された透明ガスバリアフィルムの金属酸化物層が互いに向き合うように接着積層されたフィルムがある(特許文献1)。
【0005】
また金属、ガラスおよび無機酸化物から選ばれた少なくとも1つの無機化合物が蒸着された熱可塑性樹脂層を少なくとも1層含むガスバリア性積層フィルムであって、該積層フィルムを構成する各層を積層するに際し、少なくとも1個所の層間が、特定構造を有する成分を含むラミネート用接着剤で接着されることにより、高度なガスバリア性能を有する積層フィルムが開示されている(特許文献2)。
【0006】
しかし、このこれら積層ガスバリアフィルムにおいては、積層する際に、接着剤中に含有される水分や、硬化反応による二酸化炭素、未硬化の低分子モノマーなどによるガスがガスバリアフィルム間に閉じ込められ気泡が残留する現象があり、気泡部分に空隙が生じることでガスバリア性能が悪化し、また外観上も気泡によりフィルム表面が凸型に変形し、いわゆるゆず肌状の欠点となる問題があった。
【0007】
特許文献3には、接着剤組成を考慮することにより、これまでのドライあるいはノンソルベントラミネート法をそのまま用いることができ、ガスバリア性を有する基材どうしを貼り合わせた場合でも、水分の影響により発泡白化しないことを特徴とするガスバリアフィルム積層体が開示されている。
【0008】
さらに特許文献4には、ガスバリアフィルム層間の気泡及び異物の発生を著しく低減するとともにガスバリア性及び層間の密着性にも優れたガスバリアフィルム積層体に関し、接着剤層を介して積層された少なくとも2層のガスバリアフィルム層を有するガスリアフィルム積層体であって、上記ガスバリアフィルム層が、基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の面に順次形成されたアンカーコート層及び無機薄膜層からなる少なくとも一層の構成単位層とを有し、かつ上記ガスバリアフィルム層の間に存在する直径0.5mm以上の気泡及び直径0.5mm以上の異物の数が100cm当り合計で3個以下である、積層ガスバリアフィルムが開示されている。
【0009】
しかし、これら従来の技術によっては、ガスバリア性能に優れた複数のフィルムを接着層を介して積層することによる高度なガスバリア性能を発揮するシートの作成にあたり、接着剤そのものが高度なガスバリア性能を有している場合に、接着剤の硬化時に発生する水分、炭酸ガス、接着剤成分であるモノマー、塗剤中の有機溶媒などがガスとして発生した際に周囲の各部材のガスバリア性能が優れるが故に発生したガスを逃がして気泡の発生を抑えるための対策が立てられていなかった。
【0010】
なお、本願発明の目的、用途とは異なるものであるが、特許文献5には、高ガスバリア性を有する2層のガスバリア性層間に特定の中間層樹脂を配し、該樹脂中に無機化合物をプラスチック成分100重量部に対して1〜100重量部含有するものであって、食品包装時に食品に近い側の高ガスバリア性層を破壊し、無機化合物に水分を吸着させる食品包装材料の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63−265626号公報
【特許文献2】特開2003−300271号公報
【特許文献3】特開2006−51751号公報
【特許文献4】国際公開第2008/059925号パンフレット
【特許文献5】特開2004−331079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、ガスバリア性能に優れた複数のフィルムを接着層を介して積層することによる高度なガスバリア性能を発揮するシートの作成にあたり、接着剤そのものが高度なガスバリア性能を有している場合に、接着剤の硬化時に発生する水分、炭酸ガス、接着剤成分であるモノマー、塗剤中の有機溶媒などがガスとして発生した際に、接着層中の気泡の発生を抑え、気泡によるフィルムの変形のない、ガスバリア性能に極めて優れた積層ガスバリアフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、本願発明は基材フィルムの片面に金属酸化物層が設けられたフィルム(A)、ゼオライトが1〜20重量%含有された芳香族系の架橋樹脂接着剤層(B)、基材フィルムの片面に金属酸化物層が設けられたフィルム(C)が、(A)および(C)のそれぞれの金属酸化物層を(B)側に向けて積層された積層ガスバリアフィルムである。
【0014】
また、上記積層ガスバリアフィルムは、フィルム(A)の基材フィルムあるいはフィルム(C)の基材フィルムの一方あるいはその両方が二軸延伸ポリエステルフィルムであるものが積層ガスバリアフィルムの強靭性を付与できるため好ましく、あるいは、フィルム(A)の基材フィルムあるいはフィルム(C)の基材フィルムの一方が無延伸ポリプロピレンフィルムであるものがヒートシール性を付与できるため好ましい。
【0015】
さらに、上記積層ガスバリアフィルムは、芳香族系の架橋樹脂接着剤層(B)が芳香族系ポリエポキシ樹脂からなる層であるか、芳香族系ウレタン樹脂からなる層であるものが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接着剤層中に顕著な気泡の発生がなく、0.2g/mday以下の水蒸気バリア性能および0.1cc/mday以下の酸素バリア性能を有す積層ガスバリアフィルムを実現することができる。その結果、極めて高いガスバリア性能が要求される電子ペーパーや有機EL、太陽電池、さらには真空断熱材の外装フィルムとして特に有用な積層ガスバリアフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本願発明の1例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を詳しく説明する。
【0019】
図1に本発明の実施の1形態を示す。本発明の積層ガスバリアフィルムは、基材フィルム(1)の片面に金属酸化物層(2)が設けられたフィルム(A)(7)、ゼオライト(3)が1〜20重量%含有された芳香族系の架橋樹脂(4)からなる接着剤層(B)(8)、基材フィルム(6)の片面に金属酸化物層(5)が設けられたフィルム(C)(9)が、フィルム(A)およびフィルム(C)のそれぞれの金属酸化物層を(B)側に向けて積層された積層ガスバリアフィルムである。
【0020】
フィルム(A)およびフィルム(C)は共に、基材フィルムの片面に金属酸化物層を設けたフィルムである。金属酸化物層は例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズなどの材料を示すことができるが、これらに限定されることはない。これら金属酸化物層は、金属酸化物を直接加熱して蒸発・蒸着する方法、酸素を含む雰囲気下で金属を蒸着する反応性蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、化学気相蒸着法など公知の方法によって形成される。金属酸化物層の厚さは、5〜50nmの範囲であることが、ガスバリア性能と、折り曲げに対する耐性のために好ましい。
【0021】
フィルム(A)およびフィルム(C)の基材フィルムは、ポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルムなど公知のフィルムを用いることができるが、中でも機械的強度、耐熱性、化学的安定性に優れ、基材フィルムそのもののガスバリア性能に優れた二軸延伸されたポリエステルフィルムが好ましく、特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムや二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリ乳酸フィルムなどが商業ベースで入手しやすく好ましい。これら基材フィルムの厚さは目的に応じ、フィルムのハンドリング性と経済性の点から9〜125μmの範囲で選択される。
【0022】
また、本発明の積層ガスバリアフィルムを外装材として用いる際に、フィルム(A)、フィルム(C)のいずれか一方の基材フィルムが熱接着性を有することが好ましく、このための基材フィルムとしては無延伸のポリプロピレンフィルムであることが、無延伸のポリプロピレンフィルム面同士を強固に熱接着できることから好ましい。またポリプロピレンフィルムは水蒸気バリア性能に優れるため、積層ガスバリアフィルムの高度な水蒸気バリア性能を発現するために好ましい。
【0023】
フィルム(A)とフィルム(C)のいずれかが、酸素透過率が3.0cc/mday以下、あるいは水蒸気透過率が3.0g/mday以下、またはその両方の性能を有することが積層ガスバリアフィルムのガスバリア性能が発現できるため、好ましい。積層ガスバリアフィルムのガスバリア性能は、水蒸気透過率が0.2g/mday以下あるいは酸素透過率が0.1cc/mday以下であることが好ましく、さらにこの両方を満足することが好ましい。
【0024】
接着剤層(B)は、ゼオライトが1〜20重量%含有された芳香族系の架橋樹脂からなる接着剤層である。芳香族系とは、樹脂の主鎖部分に芳香族環すなわちベンゼン環を有していることを指し、この構成により分子鎖の熱運動が拘束されガスバリア性能が向上する。
【0025】
一方、架橋樹脂とは、主剤および硬化剤からなる成分を混合し架橋反応を行うことで硬化させるタイプの樹脂であり、架橋されることでやはり分子鎖の熱運動が拘束され、ガスバリア性能が向上する。架橋樹脂としては、末端にエポキシ基を有するプレポリマー(エポキシ樹脂)を主剤とし、アミン類を硬化剤とする構成が代表的なポリエポキシ系樹脂あるいは、各種ポリオールを主剤とし、ジイソシアネートを硬化剤とするウレタン系樹脂が接着剤としての機能およびガスバリア性能の点から好ましい。
【0026】
芳香族系の架橋樹脂としてのポリエポキシ樹脂とは、主剤であるプレポリマー鎖が芳香族系であることが重要である。主剤としてのプレポリマー(エポキシ樹脂)にベンゼン環を含むものとしては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。これらの中でもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0027】
硬化剤のアミンとしては、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンが好ましい。
【0028】
芳香族系の架橋樹脂としてのウレタン樹脂とは、主剤であるポリオールあるいは硬化剤のいずれかが芳香族系であることが必要である。ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、エチレンジアミンポリオール、トリメチロールプロパンポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。またこれらのポリオールの一部をイソシアネートで架橋したプレポリマーも使用することができる。中でもガスバリア性能の点からポリエステルポリオールが好ましく、芳香族系ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸であるイソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、コハク酸などと、多価アルコールであるエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリンなどとの反応で得られるポリエステルポリオールを挙げることができる。
【0029】
また、ウレタン樹脂の硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート(HMDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、m−キシリレンジイソシアネート(XDI)などが挙げられるが、これらのイソシアネート基(NCO基)の一部をポリオールで架橋したプレポリマーも使用することができる。MDI、TDI、XDIはベンゼン環構造を持っており、中でもXDIが分子量が小さく架橋密度が高くでき、より高いバリア性が発現できることからより好ましい。
【0030】
これら架橋樹脂による接着剤は、主剤および硬化剤を酢酸エチル、メチルエチルケトン、メタノール等任意の希釈溶媒に溶解し、フィルム(A)あるいはフィルム(C)の一方にグラビア法などの公知の塗布方法で目的とする厚さに塗布し、溶媒を乾燥させた上で、他方のフィルムと貼り合わせ、エージングにより硬化させるが、この過程で塗液中に混入した水分や残留希釈溶媒、硬化反応による二酸化炭素ガス、接着剤成分のモノマーがガス化する。これらのガスを吸着し、気泡の発生を抑えるためにゼオライトを接着剤層(B)中に含有させる。
【0031】
本発明におけるゼオライトとは、結晶性のアルミノケイ酸塩の総称である。SiおよびAlのまわりに4つの酸素が規則正しく三次元的に連結した結晶構造を持つ規則性多孔体であり、ナノレベルの細孔を有し、ガスや溶媒中の水分や臭い、微量成分の分子を吸着する機能を持っていることが知られている。Al(+3価)とSi(+4価)が酸素(−2価)を互いに共有するため、Siの周りは電気的に中性となり、Alの周りは−1価となる。この負電荷を補償するために、細孔内に陽イオンを保持している。ゼオライトの結晶構造としてはモルデナイト型、A型、X型、Y型、ベータ型、フェリエライト、L型、ZSM−5型などが代表的なものであり、かつ細孔中の陽イオンはカリウム、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、水素、リチウム等である。細孔径および細孔中に担持する陽イオンのイオン半径で細孔内に吸着できる分子の大きさが決まり、担持された陽イオンが極性分子の負電荷を引き付けるので水分や二酸化炭素等の極性分子の吸着に有効である。吸着効果により接着剤層の気泡が減少し酸素や水蒸気が通り抜けにくくなるため、バリア性向上に有効である。またゼオライトの水分吸着効果によって水蒸気を吸着するため、バリア性が向上する。
【0032】
また前記ゼオライトの平均粒子径は0.15mm以下が積層ガスバリアフィルムの透明性を維持できるため好ましい。平均粒子径は公知のレーザー回折法によって測定可能である。
【0033】
本発明において接着剤層(B)は、上記芳香族系の架橋樹脂の重量に対してゼオライトを1〜20重量%含有させる必要がある。含有量が1重量%未満であれば、気泡抑制効果が小さい。20重量%より多く含有する場合は、フィルムが白濁し外観上問題となる。より好ましくは1〜10重量%である。
また前記接着剤の溶媒は酢酸エチル、メチルエチルケトン、メタノール等の任意の溶媒が使用できるが、沸点が低い溶媒を選択することで、残留溶媒が少なくなり気泡抑制効果が高くなるため好ましい。
【0034】
接着剤層(B)の厚さは1〜10μmが好ましく、より好ましくは2〜7μmが望ましい。接着剤層(B)の厚さが1μm以上の場合は十分なガスバリア性能を得られ、10μm以下の場合接着剤層(B)内の溶媒が揮発しやすいため、気泡抑制効果が高くなる。
【0035】
本発明における接着剤層(B)には、シランカップリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で添加したものも用いることができる。
【0036】
本発明の積層ガスバリアフィルムはフィルム(A)の金属酸化物形成面にゼオライトを混合した接着剤塗剤を塗布し、フィルム(C)の金属酸化物形成面を接着剤層(B)と対向させて貼り合わせ積層することで、極めて高いガスバリア性能を必要とする電子ペーパーや有機EL、太陽電池、さらには真空断熱材の外装フィルムとして特に有用な積層ガスバリアフィルムを製造できる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例を用いて、更に詳細に説明する。なお実施例及び比較例中の物性は次のようにして測定した。
【0038】
(1)水蒸気透過率(g/mday)
本発明の積層ガスバリアフィルムを、温度40℃、湿度90%RHの条件で、Technolox社製の水蒸気透過率測定装置(機種名、DELTAPERMタイプ)を使用して、差圧法に基づいて2回測定した平均値を算出した。
【0039】
(2)酸素透過率(cc/mday)
積層ガスバリアフィルムを温度23℃、湿度0%RHの条件で、MOCON社製の酸素透過率測定装置(機種名、OXTRAN2/21MHタイプ)を使用して、JIS K7126(2000年版)に記載のB法(等圧法)に基づいて2回測定した平均値を算出した。
【0040】
(3)接着剤層厚さ(μm)
フィルムの断面ミクロトームにて切り出し、その断面を電界放出形走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製S−4800)を用いて1000倍に拡大観察して撮影した断面写真を用いて、接着剤層の厚み方向の長さを計測し、拡大倍率から逆算して接着剤層の厚みを求めた。尚、接着剤層の厚みを求めるに当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真計5枚を使用し、それらの平均値として算出した。
【0041】
(4)気泡評価(ゆず肌外観評価)
積層ガスバリアフィルムをモニター付落射型実体顕微鏡(ニコン株式会社製SMZ―10)により表面観察し、100cm当たりの気泡の個数を求めn=3で平均化した個数を判定し、ゆず肌外観を評価した。判定基準は次の通りとした。
積層ガスバリアフィルムの大きさ:10cm×10cm
観察倍率:5倍
○:直径0.1mm以上の気泡が100cm当りなきこと。
△:直径0.1mm〜0.5mmの気泡が100cm当り1〜3個であり、0.5mm以上の気泡がなきこと。
×:直径0.1mm〜0.5mmの気泡が100cm当たり4個以上、または0.5mm以上の気泡が1個以上であること。
【0042】
・ 、○を合格レベルと判定した。
【0043】
(5)白化外観評価
日本電色工業(株)製ヘイズメーターNDH2000を用い、JISK7136(2000年)に準拠して積層ガスバリアフィルムのヘイズを測定した。
○:ヘイズが2%未満
△:ヘイズが2%以上〜5%未満
×:ヘイズが5%以上
△、○を合格レベルと判定した。
【0044】
(実施例1)
メタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの共重合物でありグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂の三菱ガス化学(株)製“マクシーブ”M−100(固形分濃度100%)4.9重量部、芳香族系アミンである硬化剤C−93(固形分濃度65%)16.0重量部、東ソー(株)製カリウムイオンを含有するA型結晶性ゼオライト“ゼオラム”A−3粉末タイプ0.15重量部、メタノール28.7重量部を10分間攪拌して固形分濃度31%の接着剤の塗液を調製した。ゼオライトの含有量は1.0重量%であった。
【0045】
フィルム(A)として、水蒸気透過率1.5g/mday、酸素透過率1.5cc/mdayである、東レフィルム加工(株)製アルミナ蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムVM−PET1011HG(12μm)の蒸着面上に、上述にて調製した接着剤の塗液を岡崎機械工業製ドライラミネーター機(DL−130)を用い、ダイレクトグラビアで塗工し、80℃で20秒間乾燥し、厚さ3.0μmの接着剤層を形成した。フィルム(C)として、同じくVM−PET1011HGの蒸着面が前記接着剤層と向かい合うように重ね、岡崎機械工業製ドライラミネーター機(DL−130)を用いて貼り合わせた。このラミネートフィルムを40℃に加熱したオーブン内で2日間エージングし、フィルム(A)/接着剤層(B)/フィルム(C)の積層ガスバリアフィルムを作製した。
【0046】
(実施例2)
実施例1において、接着剤の塗液のゼオライトを東ソー(株)製ナトリウムイオンを含有するA型結晶性ゼオライト“ゼオラム”A−4粉末タイプに変更した以外は実施例1と同一の方法により積層ガスバリアフィルムを得た。
【0047】
(実施例3)
実施例1において、接着剤の塗液のゼオライトを東ソー(株)製カルシウムイオンを含有するA型結晶性ゼオライト“ゼオラム”A−5粉末タイプに変更した以外は実施例1と同一の方法により積層ガスバリアフィルムを得た。
【0048】
(実施例4)
実施例1において、接着剤の塗液の処方として“ゼオラム”A−3粉末タイプを0.08重量部とした以外は実施例1と同一の方法により積層ガスバリアフィルムを得た。ゼオライトの含有量は0.5重量%であった。
【0049】
(実施例5)
実施例1において、接着剤の塗液の処方として“ゼオラム”A−3粉末タイプを3.8重量部とした以外は実施例1と同一の方法により積層ガスバリアフィルムを得た。ゼオライトの含有量は20重量%であった。
【0050】
(実施例6)
実施例1において、接着剤の塗液の処方として“ゼオラム”A−3粉末タイプを1.7重量部とした以外は実施例1と同一の方法により積層ガスバリアフィルムを得た。ゼオライトの含有量は10重量%であった。
【0051】
(実施例7)
実施例1において、接着剤の塗剤をポリウレタン接着剤に変更した。DIC(株)製のウレタン接着剤の主剤であり、脂肪族ポリエステルポリオールを脂肪族ジイソシアネートで一部架橋したポリエステルポリオールLX−510(固形分50%)51.3重量部、とDIC(株)製の芳香族系イソシアネートTDIである硬化剤KW−75(固形分濃度75%)5.7重量部、酢酸エチル42.85重量部を用いた以外は実施例1と同一の方法で積層ガスバリアフィルムを得た。
【0052】
(実施例8)
実施例1において、フィルム(A)、フィルム(C)の基材フィルムとしてユニチカ(株)製二軸延伸ポリ乳酸フィルム“テラマック”TF(15μm)を、アルバック(株)製巻取り式蒸着機でアルミ金属を抵抗加熱方式の蒸発源により蒸発させ、酸素を導入しながら反応性蒸着により膜厚20nmのアルミナ膜を形成した。水蒸気透過率は1.5g/mday、酸素透過率は2.5cc/mdayのアルミナ/ポリ乳酸フィルムを得た。このアルミナ蒸着ポリ乳酸フィルムをフィルム(A)およびフィルム(B)とした以外は実施例1と同様の方法で積層ガスバリアフィルムを得た。
【0053】
(実施例9)
実施例1において、フィルム(C)の基材フィルムとして東レフィルム加工(株)製無延伸ポリプロピレンフィルム「トレファン」(登録商標)NO9021T(25μm)を用い、実施例7と同様にアルミナ膜を反応性蒸着により形成した。酸素透過率は10cc/mday、水蒸気透過率は0.5g/mdayのアルミナ/無延伸ポリプロピレンフィルムを得た。フィルム(A)にはVM−PET1011HGを用い、フィルム(C)として上記のフィルムを用いた以外は実施例1と同様の方法で積層ガスバリアフィルムを得た。
【0054】
(実施例10)
実施例1において、接着剤層(B)の厚さを0.8μmしたこと以外は実施例1と同様にして積層ガスバリアフィルムを得た。
【0055】
(実施例11)
実施例1において、接着剤層(B)の厚さを12.0μmしたこと以外は実施例1と同様にして積層ガスバリアフィルムを得た。
【0056】
(比較例1)
実施例1において、接着剤層(B)にゼオライトを含有しない以外は実施例1と同一の方法で積層ガスバリアフィルムを得た。
【0057】
(比較例2)
実施例1において、接着剤の塗液の処方として“ゼオラム”A−3粉末タイプを5.1重量部とした以外は実施例1と同一の方法により積層ガスバリアフィルムを得た。ゼオライトの含有量は25重量%であった。
【0058】
(比較例3)
実施例1において、フィルム(A)、フィルム(C)として、水蒸気透過率が6.9g/mday、酸素透過率が19cc/mdayである二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム東レ(株)製「ルミラー」(登録商標)P60(12μm)を使用した以外は実施例1と同一の方法で積層ガスバリアフィルムを得た。
【0059】
(比較例4)
実施例1において、ゼオライトの代わりに日揮触媒化成(株)製シリカゾル“OSCAL”(粒径5nm)に変更し、シリカゾル溶液の固形分濃度を考慮して実施例1と同じ含有量と固形分濃度とした接着剤の塗液とした以外は実施例1と同一の方法で積層ガスバリアフィルムを得た。
【0060】
(比較例5)
実施例1において、ゼオライトの代わりに日本アエロジル(株)製フュームドシリカ“AEROSIL”380を、1.7重量部とした以外は実施例1と同一の方法で積層ガスバリアフィルムを得た。フュームドシリカの含有量は10重量%であった。
【0061】
(比較例6)
実施例1において、接着剤の塗剤を脂肪族系のポリウレタン接着剤に変更した。DIC(株)製のウレタン接着剤の主剤である脂肪族ポリエステルポリオールを脂肪族ジイソシアネートで一部架橋したポリエステルポリオールLX−500(固形分60%)27重量部、とDIC(株)製の脂肪族系硬化剤KO−55(固形分濃度55%)5重量部、酢酸エチル69.25重量部を用い、実施例1と同一の方法で積層ガスバリアフィルムを得た。
これら実施例、比較例の評価結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
本願発明の積層ガスバリアフィルムは、極めて優れたガスバリア性能と、気泡の発生が顕著でなく、白化もない実用性に優れたものとなった。
【0064】
比較例1では、接着剤層(B)にゼオライトを添加しなかったため気泡の発生によりゆず肌欠点のあるフィルムとなった。比較例2では、ゼオライトの含有量が多すぎ、ゆず肌欠点の発生はなかったが、フィルムが白っぽく、ディスプレー用途には使えないものとなった。比較例3では金属酸化物層が積層されないフィルムを貼り合わせたため、ガスバリア性能が不十分であった。比較例4、5ではゼオライトの代わりにシリカ系のフィラーを添加したが、ゆず肌欠点の発生があった。比較例6では、芳香族系の架橋樹脂を接着剤層(B)に使用しなかったため、ガスバリア性能が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の積層ガスバリアフィルムによれば、接着剤層中に顕著な気泡の発生がなく、0.2g/mday以下の水蒸気バリア性能および0.1cc/mday以下の酸素バリア性能を有する積層ガスバリアフィルムを実現することができる。その結果、極めて高いガスバリア性能が要求される電子ペーパーや有機EL、太陽電池、さらには真空断熱材の外装フィルムとして特に有用な積層ガスバリアフィルムを提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1、6 基材フィルム
2、5 金属酸化物層
3 ゼオライト
4 芳香族系の架橋樹脂
7、9 フィルム(A)あるいはフィルム(C)
8 接着剤層(B)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの片面に金属酸化物層が設けられたフィルム(A)、ゼオライトが1〜20重量%含有された芳香族系の架橋樹脂接着剤層(B)、基材フィルムの片面に金属酸化物層が設けられたフィルム(C)が、(A)および(C)のそれぞれの金属酸化物層を(B)側に向けて積層された積層ガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記フィルム(A)の基材フィルムあるいはフィルム(C)の基材フィルムの一方あるいはその両方が二軸延伸ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の積層ガスバリアフィルム。
【請求項3】
前記フィルム(A)の基材フィルムあるいはフィルム(C)の基材フィルムの一方が無延伸ポリプロピレンフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の積層ガスバリアフィルム。
【請求項4】
前記芳香族系の架橋樹脂接着剤層(B)が芳香族系ポリエポキシ樹脂からなる層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層ガスバリアフィルム。
【請求項5】
前記芳香族系の架橋樹脂接着剤層(B)が芳香族系ウレタン樹脂からなる層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層ガスバリアフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−75413(P2013−75413A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216263(P2011−216263)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】