積層シートおよびその製造方法
【課題】 積層シートを巻き取ったときに、積層シートの幅方向両縁部から接着性/硬化性層の接着性/硬化性材料が染み出すことを防止することのできる積層シートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 長尺の剥離シート2Aの剥離面の幅方向中央部に、エネルギー線硬化性材料からなる接着性/硬化性層31Aと基材32Aとから構成される所定の形状の目的シート301Aを設け、剥離シート2Aの剥離面の幅方向両側部に、エネルギー線硬化性材料からなる接着性/硬化性層31Aを介して基材32Aと保護材41Aとから構成される保護部を設けた積層シート1A’を作製し、その積層シート1A’を巻き取る前に、積層シート1A’の幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させる。
【解決手段】 長尺の剥離シート2Aの剥離面の幅方向中央部に、エネルギー線硬化性材料からなる接着性/硬化性層31Aと基材32Aとから構成される所定の形状の目的シート301Aを設け、剥離シート2Aの剥離面の幅方向両側部に、エネルギー線硬化性材料からなる接着性/硬化性層31Aを介して基材32Aと保護材41Aとから構成される保護部を設けた積層シート1A’を作製し、その積層シート1A’を巻き取る前に、積層シート1A’の幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の剥離シートに、接着性および/または硬化性を有する材料(以下「接着性/硬化性材料」という。)からなる層(以下「接着性/硬化性層」という。)と基材とが積層されてなる積層シートおよびその製造方法に関するものであり、特に、積層シートを巻き取ったときに、積層シートの幅方向両縁部から接着性/硬化性材料が染み出すことを防止することのできる積層シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺の剥離シートに接着剤層および基材(またはそれらからなる接着シート)が積層されてなる積層シートは、ロール状に巻き取られ、巻取体の状態で運搬・保管されるのが一般的である。かかる積層シートを巻取体にした場合、積層シートには巻圧がかかるが、通常接着剤層は他の層に比較して軟らかいため、積層シートの幅方向両縁部から接着剤が染み出すことがある。
【0003】
このように積層シートの幅方向両縁部から接着剤が染み出すと、染み出した接着剤によって巻取シャフトが汚れたり、染み出した接着剤が異物となって接着シートを汚染するという問題が発生する。
【0004】
特許文献1には、紫外線硬化型粘着シートを切断した後、ロール状に巻き取った状態で、当該粘着シートの切断部位を紫外線硬化させる発明が開示されているが、かかるロール状粘着シートにおいては、ロール状に巻き取ったときに既に粘着シートの切断部位から粘着剤が染み出している場合があり、これを硬化させたとしても、硬化した粘着剤が粘着シートを汚染するという問題は依然として残っており、さらには、染み出した粘着剤の硬化によって、巻き重なった粘着シートが相互に接着され、粘着シートのロールからの繰り出しが困難になるという問題も生じる。
【0005】
一方、上記のような積層シートにおいては、特許文献2に示すように、基材および接着剤層が所定の形状にカットされて、所定の形状を有する接着シートとして使用される場合がある。この接着シートが、例えば光ディスクのカバーシート等として使用される場合には、接着シートが巻き取られたときの巻圧によって、カバーシートに他のカバーシートの輪郭の痕(円弧状の痕)が付いたり、接着剤層が経時的に変形していわゆるゆず肌とよばれる状態になり、接着剤層に微小な厚みむらができるという問題が生じ、それらに起因して、得られる光ディスクのデータの読み書きにエラーが発生するおそれがある。
【特許文献1】特開2002−338904号公報
【特許文献2】実公平6−18383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
巻圧に起因する上記問題を解決するために、カバーシート等として使用される接着シート以外の部分(積層シートの幅方向両側部)の厚さを、接着シートの部分の厚さよりも厚くして接着シートにかかる巻圧を軽減させることが考えられる。しかしながら、その場合には、積層シートの幅方向両側部にかかる巻圧が局部的に大きくなり、積層シートの幅方向両縁部からの接着剤の染み出し量がより多くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、積層シートを巻き取ったときに、積層シートの幅方向両縁部から接着性/硬化性層の接着性/硬化性材料が染み出すことを防止することのできる積層シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、長尺の剥離シートと、前記剥離シートの剥離処理面に積層された、少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分がエネルギー線硬化性材料からなる接着性/硬化性層と、前記接着性/硬化性層上に積層された基材とを備えた積層シートを作製し、前記積層シートを巻き取る前に、前記接着性/硬化性層の幅方向両縁部に位置するエネルギー線硬化性材料を硬化させることを特徴とする積層シートの製造方法を提供する(請求項1)。なお、本明細書における「基材」は、所望の材料からなるシートであってもよいし、剥離シートであってもよい。
【0009】
接着性/硬化性材料からなる接着性/硬化性層は、通常他の層(剥離シート・基材)と比較して軟らかいため、これらの層を備えた積層シートを巻き取って積層シートに巻圧がかかった場合、接着性/硬化性材料は積層シートの幅方向両縁部から染み出そうとするが、上記発明(請求項1)に係る積層シートでは、積層シートを巻き取る前に、接着性/硬化性層の幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させるため、硬化したエネルギー線硬化性材料がストッパーとなって、上記のような接着性/硬化性材料の染み出しが防止される。
【0010】
上記発明(請求項1)においては、任意の段階で、前記基材上における前記基材の幅方向両側部または前記剥離シートの裏面における前記剥離シートの幅方向両側部に保護材を設けてもよい(請求項2)。なお、本明細書における「剥離シートの裏面」とは、剥離シートにおける剥離処理面の反対側の面をいう。
【0011】
基材および/または接着性/硬化性層の幅方向中央部が主使用部となっている場合には、上記保護材がスペーサとして機能し、接着性/硬化性層の主使用部の表面がゆず肌になること、および基材の主使用部に異物による凹みが形成されることが防止されるが、この場合、積層シートの幅方向両側部(保護材が存在する部分)にかかる巻圧が局部的に大きくなり、保護材がない場合よりも接着性/硬化性材料が染み出し易くなる。しかし、上記発明(請求項2)に係る積層シートでは、積層シートを巻き取る前に、接着性/硬化性層の幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させるため、硬化したエネルギー線硬化性材料がストッパーとなって、上記のような接着性/硬化性材料の染み出しが防止される。
【0012】
第2に本発明は、長尺の剥離シートの剥離面の幅方向中央部に、接着性/硬化性層と基材とを備えた所定の形状の目的シートが設けられ、前記剥離シートの剥離面または裏面の幅方向両側部に、接着性/硬化性層を有する保護部が設けられ、前記保護部における厚さが前記目的シートにおける厚さよりも厚く、前記保護部の接着性/硬化性層の少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分がエネルギー線硬化性材料によって形成された積層シートを作製し、前記積層シートを巻き取る前に、前記積層シートの幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させることを特徴とする積層シートの製造方法を提供する(請求項3)。
【0013】
ここで、「目的シート」とは、接着性および/または硬化性を利用して所定の目的に使用するシートをいう。また、「所定の形状の目的シート」は、それぞれ独立して複数設けられるシートであってもよいし、長尺のシートであってもよい。
【0014】
上記発明(請求項3)に係る積層シートにおいては、上記保護部が設けられていることにより、目的シートに巻圧による痕が付くこと、目的シートの接着性/硬化性層の表面がゆず肌になること、および目的シートに異物による凹みが形成されることが防止されるが、この場合、積層シートの幅方向両側部(保護部が存在する部分)にかかる巻圧が局部的に大きくなり、保護部がない場合よりも接着性/硬化性材料が染み出し易くなる。しかし、本積層シートでは、積層シートを巻き取る前に、接着性/硬化性層の幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させるため、硬化したエネルギー線硬化性材料がストッパーとなって、上記のような接着性/硬化性材料の染み出しが防止される。
【0015】
上記発明(請求項3)においては、前記目的シートの接着性/硬化性層と、前記保護部の接着性/硬化性層とを、一工程で積層するのが好ましい(請求項4)。また、上記発明(請求項3,4)においては、前記保護部を基材と当該基材上に積層された保護材とから構成し、当該保護部の基材と、前記目的シートの基材とを、一工程で積層するのが好ましい(請求項5)。これらの方法によって、効率良く積層シートを製造することができる。
【0016】
上記発明(請求項2,5)においては、保護シートを積層して前記保護シートを所定の形状にカットすることにより、前記保護材を形成してもよい(請求項6)。
【0017】
上記発明(請求項1〜6)においては、前記基材および前記接着性/硬化性層を所定の形状にカットして不要部を剥離除去し、所定の形状の目的シートを形成する工程を備えていてもよい(請求項7)。この工程により、効率良く所定の形状の目的シートを形成することができる。
【0018】
上記発明(請求項1〜7)においては、前記積層シートの厚さ方向にエネルギー線を照射することにより、前記エネルギー線硬化性材料を硬化させるのが好ましい(請求項8)。このようにエネルギー線を照射した場合、接着性/硬化性層において未硬化であるべき部分にまでエネルギー線が照射されることを防止することができる。
【0019】
上記発明(請求項1〜8)においては、前記エネルギー線硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率が106Pa以上であるのが好ましい(請求項9)。エネルギー線硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率が上記の範囲であると、硬化したエネルギー線硬化性材料は、積層シートが巻き取られたときにも積層シートの幅方向縁部から染み出さない。
【0020】
第3に本発明は、長尺の剥離シートと、前記剥離シートの剥離処理面に積層され、前記剥離シートの幅方向中央部が主使用部となっている接着性/硬化性層と、前記接着性/硬化性層に積層された基材と、前記基材上における前記基材の幅方向両側部または前記剥離シートの裏面における前記剥離シートの幅方向両側部に設けられた保護材とを備えており、前記接着性/硬化性層において、少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分が、エネルギー線硬化性材料が硬化してなるものであることを特徴とする積層シートを提供する(請求項10)。
【0021】
第4に本発明は、長尺の剥離シートと、前記剥離シートの剥離面の幅方向中央部に設けられた、接着性/硬化性層と基材とを備えた所定の形状の目的シートと、前記剥離シートの剥離面または裏面の幅方向両側部に設けられた、接着性/硬化性層を有する保護部とを備えており、前記保護部における厚さは前記目的シートにおける厚さよりも厚く、前記保護部の接着性/硬化性層において、少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分が、エネルギー線硬化性材料が硬化してなるものであることを特徴とする積層シートを提供する(請求項11)。
【0022】
上記発明(請求項11)において、前記目的シートの接着性/硬化性層と、前記保護部の接着性/硬化性層とは、同一の材料から構成されているのが好ましい(請求項12)。また上記発明(請求項11,12)において、前記保護部は、前記目的シートの基材と同一の材料からなる基材と、当該基材上に積層された保護材とから構成されているのが好ましい(請求項13)。
【0023】
上記発明(請求項10〜13)において、前記硬化したエネルギー線硬化性材料の貯蔵弾性率は106Pa以上であるのが好ましい(請求項14)。
【発明の効果】
【0024】
本発明の積層シート製造方法によれば、巻取体としたときに、積層シートの幅方向両縁部から接着性/硬化性層の接着性/硬化性材料が染み出すことを防止することのできる積層シートを製造することができる。また、本発明の積層シートによれば、巻取体としたときに、積層シートの幅方向両縁部から接着性/硬化性層の接着性/硬化性材料が染み出すことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
第1および第2の実施形態では、光ディスクの製造工程で記録層にカバーシートを接着するために、またはスタンパーの凹凸パターンを転写するために使用される積層シートを例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の積層シートに適用することができる。
【0026】
〔第1の実施形態〕
図1(a)〜(f)は本発明の第1の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図、図2は同実施形態に係る積層シート製造方法の一工程を示す積層シートの平面図、図3は本発明の第1の実施形態に係る積層シートの斜視図、図4は同実施形態に係る積層シートの巻取体の斜視図である。
【0027】
本実施形態に係る積層シート1Aを製造するには、最初に図1(a)に示すように、長尺の剥離シート2Aの剥離処理面に、接着性/硬化性層31A、基材32Aおよび保護シート4Aを順に積層する。なお、接着性/硬化性層31Aおよび基材32Aは、接着/硬化シート3Aを構成するものである。
【0028】
剥離シート2Aとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等の樹脂フィルムまたはグラシン紙、クレーコート紙、ラミネート紙(主にポリエチレンラミネート紙)等の紙をシリコーン系剥離剤等で剥離処理したものを使用することができる。剥離シート2Aの厚さは、通常10〜200μm程度であり、好ましくは20〜100μm程度である。
【0029】
接着性/硬化性層31Aは、カバーシートを接着するための接着層やスタンパーの凹凸パターンが転写されるスタンパー受容層となるものであり、接着剤または硬化性材料から構成される。それら接着剤および硬化性材料のいずれも、エネルギー線硬化性の材料からなるのが好ましい。
【0030】
エネルギー線硬化性材料の硬化前の貯蔵弾性率は、接着性(粘着性)や凹凸パターン転写性を鑑みて103Pa以上、106Pa未満であるのが好ましいが、貯蔵弾性率がこの範囲にあると、積層シートが巻き取られたときに、巻圧によってエネルギー線硬化性材料が積層シートの幅方向縁部から染み出し易い。この染み出しは、特にエネルギー線硬化性材料が後述する多官能モノマーや多官能オリゴマーを含んでいるときに顕著である。
【0031】
一方、エネルギー線硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率は106Pa以上であることが好ましく、107Pa以上であることがより好ましい。エネルギー線硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率が上記の範囲であると、硬化したエネルギー線硬化性材料は、積層シートが巻き取られたときにも積層シートの幅方向縁部から染み出さない。なお、硬化前および硬化後の貯蔵弾性率の測定温度は、積層シートの巻取時における温度、すなわち室温であるものとする。
【0032】
上記エネルギー線硬化性材料としては、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするもの、エネルギー線硬化性を有しないポリマーとエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/または多官能オリゴマーとの混合物を主成分とするもの、エネルギー線硬化性を有するポリマーとエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/または多官能オリゴマーとの混合物を主成分とするものなどが挙げられる。
【0033】
エネルギー線硬化性を有するポリマーとしては、例えば、側鎖にエネルギー線硬化性基を有するアクリル酸エステル共重合体を使用することができる。そのようなアクリル酸エステル共重合体としては、例えば、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られる、側鎖にエネルギー線硬化性基を有する重量平均分子量(Mw)100,000以上のエネルギー線硬化型アクリル酸エステル共重合体を使用することができる。
【0034】
エネルギー線硬化性を有しないポリマーとしては、例えば、アクリル酸エステル共重合体等を用いることができる。
【0035】
エネルギー線硬化性の多官能モノマー/多官能オリゴマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
接着性/硬化性層31Aは、上記エネルギー線硬化性材料によって均一に形成するのが好ましいが、かかるエネルギー線硬化性材料は、少なくとも接着性/硬化性層31Aの幅方向両側部を構成すれば足り、それ以外の部分(接着性/硬化性層31Aの幅方向中央部)は、例えばアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系等の感圧接着剤によって構成してもよい。
【0037】
接着性/硬化性層31Aを形成するには、例えば、接着性/硬化性層31Aを構成する接着性/硬化性材料と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、キスロールコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター等の塗工機によって剥離シート2Aの剥離処理面に塗布して乾燥させればよい。そして、このようにして形成した接着性/硬化性層31Aの上に基材32Aを積層し、接着性/硬化性層31Aと基材32Aとからなる接着/硬化シート3Aとする。接着性/硬化性層31Aの厚さは、通常5〜100μm程度であり、好ましくは10〜30μm程度である。
【0038】
本実施形態における基材32Aとしては、光ディスク記録層のカバーシートとして光ディスクの受光面を構成するものを例示することができる。このような基材32Aの材料としては、情報読み取りのための光の波長域に対し十分な光透過性を有するものであればよいが、光ディスクを容易に製造するために、剛性や柔軟性が適度にあるものが好ましく、光ディスクの保管のために、温度に対して安定なものであるのが好ましい。このような材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の樹脂を用いることができる。
【0039】
上記材料の線膨張係数は、高温で光ディスクが反りを起こさないよう、光ディスク基板の線膨張係数とほぼ同じであるのが好ましい。例えば、光ディスク基板がポリカーボネート樹脂からなる場合には、基材32Aも同じポリカーボネート樹脂からなるのが好ましい。
【0040】
上記の場合における基材32Aの厚さは、光ディスクの種類や光ディスクのその他の構成部位の厚さに応じて決定されるが、通常は25〜300μm程度であり、好ましくは50〜200μm程度である。
【0041】
また、本実施形態における基材32Aとして、前述した剥離シート2Aと同様の剥離シートを用いることができる。この場合、基材32Aの剥離処理面を、剥離シート2Aに積層された接着性/硬化性層31Aの表面に貼り付ける。なお、剥離シート2Aおよび基材32Aのいずれか一方を軽剥離型剥離シートとし、他方を重剥離型剥離シートとするのが好ましい。
【0042】
上記の場合における積層シートによれば、例えば、接着性/硬化性層31Aから剥離シート2Aを剥離し、露出した接着性/硬化性層31Aを光ディスクの記録層に貼り付けた後、接着性/硬化性層31Aから基材32Aを剥離して、その接着性/硬化性層31Aに他の基材(例えばカバーシート)を貼り付けることや、接着性/硬化性層31Aから剥離シート2Aを剥離し、露出した接着性/硬化性層31Aを光ディスク基板に貼り付けた後、接着性/硬化性層31Aから基材32Aを剥離して、その接着性/硬化性層31Aにスタンパーの凹凸パターンを転写・固定し、得られた凹凸面に反射膜を積層することができる。
【0043】
保護シート4Aを構成する材料は、特に限定されるものではないが、樹脂フィルム、紙、金属箔等からなる基材に、接着剤層を積層したものが好ましく用いられる。
【0044】
保護シート4Aの基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、塩化ビニル、アイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂またはそれら樹脂を架橋したものからなる樹脂フィルム、それら樹脂フィルムの積層体を使用するのが好ましい。
【0045】
保護シート4Aの接着剤層を構成する接着剤は、感圧接着剤であるのが好ましい。この場合、保護シート4Aは、上記接着/硬化シート3Aの基材32Aの上に圧着すればよい。感圧接着剤の種類としては、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系、エチレン−酢酸ビニル系等のいずれであってもよい。また、感圧接着剤は、架橋されていてもよい。
【0046】
保護シート4Aの接着剤層を構成する接着剤が感圧接着剤の場合、当該感圧接着剤は低分子量のモノマーやオリゴマーを含まないため、接着剤の染み出しは実質的に発生しない。
【0047】
保護シート4Aの厚さは、5〜100μmであるのが好ましく、特に25〜50μmであるのが好ましい。保護シート4Aの厚さが5μm未満では、保護シート4Aによる所望の効果を十分に得ることができず、保護シート4Aの厚さが100μmを超えると、積層シート1Aを巻き取ったときに、得られる巻取体の径(容積)が大きくなり過ぎる。
【0048】
図1(a)に示すように剥離シート2A、接着/硬化シート3Aおよび保護シート4Aを積層した後、図1(b)に示すように、接着/硬化シート3Aに達しないように保護シート4Aのみをカットし、保護シート4Aを幅方向両側部の保護材41A部分と幅方向中央部の残部42Aとに分割する。保護シート4Aのカットは、常法によって行えばよく、例えば、打ち抜き装置等を使用して行うことができる。なお、本実施形態では、保護材41Aの幅は、後の工程で形成する枕部302Aの最小幅よりも若干狭い幅とする。
【0049】
上記カットにより形成した保護シート4Aの残部42Aは、図1(c)に示すように剥離除去し、帯状の保護材41Aを形成する。
【0050】
次に、図1(d)に示すように、接着/硬化シート3Aをカットし、接着/硬化シート3Aを円盤部301Aと枕部302Aと残部303Aとに分割するとともに、円盤部301Aの中心部を打ち抜いてセンターホール部304Aを形成する。そして図1(e)に示すように、接着/硬化シート3Aの残部303Aを剥離除去する(この状態のものを積層シート1A’という)。接着/硬化シート3Aのカットおよび打ち抜きは、常法によって行えばよく、例えば、打ち抜き装置等を使用して行うことができる。
【0051】
円盤部301A(目的シート)は、図2および図3に示すように、光ディスクの平面形状と同じ平面形状を有し、剥離シート2A剥離処理面の幅方向中央部に複数連続的に設けられている。枕部302Aの平面形状は、図2および図3に示すように、円盤部301Aの外周に沿って、枕部302Aの外側端部に位置する保護材41A側に凹むとともに、円盤部301Aの相互間においては、円盤部301Aの相互間に入り込むように突出して、全体として波状となっている。
【0052】
最後に、図1(f)および図2に示すように、積層シート1A’の幅方向両縁部にエネルギー線を照射して、接着性/硬化性層31Aの縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させ、図3に示す積層シート1Aを得る。この積層シート1Aは、図4に示すようにロール状に巻き取って巻取体とする。
【0053】
エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で100〜500mJ/cm2程度が好ましく、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
【0054】
エネルギー線の照射は、図2に示すように、エネルギー線をスポット照射することのできる装置(例えばスポットUV照射装置)5を治具51にセットし、積層シート1A’を長手方向に移動させながら行うことができ、このような方法によって、積層シート1A’の幅方向両縁部に連続的にエネルギー線を照射することができる。
【0055】
また、エネルギー線は、積層シート1A’の厚さ方向に照射するのが好ましい。エネルギー線を積層シート1A’の縁部から積層シート1A’の中心方向に向けて照射すると、そのエネルギー線が円盤部301Aの接着性/硬化性層31Aまで達し、円盤部301Aの接着性/硬化性層31Aが硬化してしまうおそれがあるが、上記のようにエネルギー線を照射することによって、かかる問題を回避することができる。なお、本実施形態では、枕部302Aと円盤部301Aとの間に空隙があるため、かかる空隙がない場合と比較して、エネルギー線は円盤部301Aの接着性/硬化性層31Aに照射され難い。
【0056】
エネルギー線の照射によって硬化させる接着性/硬化性層31Aの幅は、保護材41Aや枕部302Aの幅によっても異なるが、通常0.1〜10mm程度であるのが好ましく、特に0.5〜3mmであるのが好ましい。
【0057】
以上のようにして製造される積層シート1Aにおいては、その幅方向両側部に保護材41Aが設けられており、保護材41Aが存在する部分が保護部を形成しており、この保護部の厚さが円盤部301Aにおける厚さよりも保護材41Aの厚さ分だけ厚くなっている。このような積層シート1Aを図4に示すように巻き取ったとき、保護部が存在する積層シート1Aの幅方向両側部には局部的に巻圧がかかることとなるが、積層シート1Aの幅方向両縁部における接着性/硬化性層31Aは硬化しているため、その部分がストッパーとなって、接着性/硬化性層31Aを構成する接着性/硬化性材料が積層シート1Aの幅方向両縁部から染み出すことが防止される。
【0058】
したがって、積層シート1Aにおいては、接着性/硬化性材料の染み出しに起因する円盤部301Aの汚染や巻取シャフトの汚れ等の問題が生じない。
【0059】
なお、上記積層シート1Aの巻取体においては、保護材41Aがスペーサとして機能し、円盤部301Aの表面とその上に巻き重なった剥離シート2Aの裏面との間にはわずかな間隙が生じる。そのため、円盤部301Aには、他の円盤部301A、枕部302Aおよび保護材41Aの輪郭部分が強く押し付けられることはなく、したがって、円盤部301Aに巻圧による痕が付くことが防止される。また、それとともに、円盤部301Aの接着性/硬化性層31Aの表面がゆず肌になることが抑制され、円盤部301Aの接着性/硬化性層31Aの表面平滑性を保持することができる。
【0060】
また、積層シート1Aを巻き取る際に、巻き重なる積層シート1Aの間に微細なゴミ等の異物を挟み込んでしまった場合であっても、円盤部301Aの表面と剥離シート2Aの裏面との間には間隙が存在するため、異物の径がその間隙の大きさよりも小さければ、円盤部301Aに異物による凹みが形成されることが防止される。さらに、従来の巻取体では、異物を1つ挟み込んだ場合であっても、その影響で、巻き重なっている複数の円盤部301Aに凹みが形成されてしまうが、本実施形態に係る積層シート1Aの巻取体においては、剥離シート2Aと円盤部301Aとが巻取体の半径方向に間隙の大きさだけ変位することができるため、間隙の大きさよりも大きい径の異物が円盤部301A上に付着しても、その影響が他の円盤部301Aに及ぶことが抑制され、複数の円盤部301Aに異物による凹みが形成されるのを防止することができる。
【0061】
〔第2の実施形態〕
図5(a)〜(e)は本発明の第2の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図である。
【0062】
本実施形態に係る積層シート1Bを製造するには、最初に図5(a)に示すように、長尺の剥離シート2Bの剥離処理面に、接着性/硬化性層31Bおよび基材32Bを順に積層する。なお、接着性/硬化性層31Bおよび基材32Bは、接着/硬化シート3Bを構成するものである。
【0063】
剥離シート2B、接着性/硬化性層31Bおよび基材32Bの材料としては、上記第1の実施形態に係る積層シート1Aの剥離シート2A、接着性/硬化性層31Aおよび基材32Aと同様のものを使用することができる。
【0064】
図5(a)に示すように剥離シート2Bおよび接着/硬化シート3Bを積層したら、図5(b)に示すように、接着/硬化シート3Bをカットし、接着/硬化シート3Bを円盤部301Bと枕部302Bと残部303Bとに分割するとともに、円盤部301Bの中心部を打ち抜いてセンターホール部304Bを形成する。そして図5(c)に示すように、接着/硬化シート3Bの残部303Bを剥離除去する。
【0065】
円盤部301B(目的シート)および枕部302Bの平面形状は、上記第1の実施形態に係る積層シート1Aにおける円盤部301Aおよび枕部302Aの平面形状と同様である(図2,図3参照)。
【0066】
次いで、図5(d)に示すように、枕部302Bの外側端部に帯状の保護材41Bを積層する(この状態のものを積層シート1B’という)。この保護材41Bは、上記第1の実施形態に係る積層シート1Aの保護シート4Aと同様のシートにより構成してもよいし、インクの印刷や塗料の塗布により形成してもよい。
【0067】
インク・塗料の種類や、印刷・塗布方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン樹脂やアクリル樹脂等のビヒクルを含むインク・塗料を、平版、凸版等の方法で印刷したり、スプレー、はけ塗り等の方法で塗布することができる。
【0068】
上記のようなインクや塗料により保護材41Bを形成する場合であっても、その乾燥膜厚は、シートの場合と同様に、5〜100μmであるのが好ましく、特に25〜50μmであるのが好ましい。
【0069】
なお、本実施形態では、上記保護材41Bの積層工程を上記の段階で行ったが、これに限定されることなく、積層シート1Bの製造工程において任意の段階で行うことができる。
【0070】
最後に、図5(e)に示すように、積層シート1B’の幅方向両縁部にエネルギー線を照射して、接着性/硬化性層31Bの縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させ、得られた積層シート1B(図3参照)をロール状に巻き取って巻取体とする(図4参照)。エネルギー線の照射は、上記第1の実施形態と同様にして行うことができる。
【0071】
上記積層シート1Bを巻取体としたとき、上記第1の実施形態に係る積層シート1Aと同様に、接着性/硬化性層31Bを構成する接着性/硬化性材料が積層シート1Bの幅方向両縁部から染み出すおそれはなく、また、円盤部301Bに巻圧による痕が付くこと、円盤部301Bの接着性/硬化性層31Bの表面がゆず肌になること、および円盤部301Bに異物による凹みが形成されることが防止される。
【0072】
なお、上記第1および第2実施形態では、保護材41A,41Bは、枕部302A,302B上(基材32A,32B上)に設けられているが、本発明はこれに限定されることなく、図6に示される積層シート1Cのように、保護材41Cは、剥離シート2Cの裏面幅方向両側部に設けられてもよい。この場合であっても、上記と同様の効果が得られる。また、上記第1および第2実施形態では、保護材41A,41Bは帯状の形状を有しているが、枕部302A,302Bの形状と同一の形状であってもよい。
【0073】
次の第3および第4の実施形態では、基材および接着性/硬化性層(接着/硬化シート)の主使用部を所望の形状にカットして使用するための積層シートについて説明する。
【0074】
〔第3の実施形態〕
図7(a)〜(g)は本発明の第3の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図、図8は本発明の第3の実施形態に係る積層シートの斜視図、図9は同実施形態に係る積層シートの巻取体の斜視図である。
【0075】
本実施形態に係る積層シート1Dを製造するには、図7(a)〜(d)に示すように、長尺の剥離シート2Dの剥離処理面に、接着性/硬化性層31D、基材32Dおよび保護シート4Dを順に積層する。なお、接着性/硬化性層31Dおよび基材32Dは、接着/硬化シート3Dを構成するものである。
【0076】
剥離シート2D、接着性/硬化性層31Dおよび保護シート4Dの材料としては、上記第1の実施形態に係る積層シート1Aの剥離シート2A、接着性/硬化性層31Aおよび保護シート4Aと同様のものを使用することができる。なお、本実施形態において、接着性/硬化性層31Dは、その幅方向中央部が主使用部(接着性/硬化性層表面が平滑性を必要とする部分)となっている。
【0077】
一方、基材32Dは、接着性/硬化性層31Dによって所定の接着対象物に接着されるものであってもよいし、接着性/硬化性層31Dから剥離される剥離シートであってもよい。前者の場合、基材32Dは、接着性/硬化性層31Dとともに接着/硬化シート3Dとして使用され、その幅方向中央部が主使用部となる。
【0078】
基材32Dが接着/硬化シート3Dとして使用される場合、基材32Dの材料としては、基材32Dの使用目的に応じて、様々な種類の材料を選択することができる。例えば、基材32Dが光ディスク記録層のカバーシートとして使用される場合には、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の樹脂を基材32Dの材料として選択することができる。また、例えば、基材32DがPDA等のディスプレイ用のフィルムとして使用される場合には、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の樹脂を基材32Dの材料として選択することができ、これらの樹脂からなる基材の表面に反射防止処理や防眩処理等を施して用いることができる。
【0079】
基材32Dが接着/硬化シート3Dとして使用される場合、基材32Dの厚さは、基材32Dの使用目的に応じて決定されるが、通常は25〜300μm程度であり、好ましくは50〜200μm程度である。
【0080】
一方、基材32Dが剥離シートである場合には、基材32Dの材料として、上記剥離シート2Dと同様の材料を選択することができる。
【0081】
次に、図7(e)に示すように、基材32Dに達しないように保護シート4Dのみをカットし、保護シート4Dを幅方向両側部の保護材41D部分と幅方向中央部の残部42Dとに分割する。そして、その保護シート4Dの残部42Dは、図7(f)に示すように剥離除去する(この状態のものを積層シート1D’という)。なお、保護材41Dの幅は、保護材41Dが接着性/硬化性層31Dの主使用部の上にかからないように設定する。
【0082】
最後に、図7(g)に示すように、積層シート1D’の幅方向両縁部にエネルギー線を照射して、接着性/硬化性層31Dの幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させ、図8に示す積層シート1Dを得る。エネルギー線の照射は、上記実施例1と同様にして行うことができる。得られた積層シート1Dは、図9に示すようにロール状に巻き取って巻取体とする。
【0083】
上記積層シート1Dを巻取体としたとき、上記第1の実施形態に係る積層シート1Aと同様に、接着性/硬化性層31Dを構成する接着性/硬化性材料が積層シート1Dの幅方向両縁部から染み出すおそれはなく、また、接着性/硬化性層31Dの主使用部の表面がゆず肌になること、および基材32Dの主使用部に異物による凹みが形成されることが防止される。
【0084】
上記のように巻取体にした積層シート1Dを使用するには、積層シート1Dを巻取体から繰り出して、接着/硬化シート3Dの主使用部を所望の形状にカットし、剥離シート2Dから剥離すればよい。カットは常法によって行えばよく、例えば、打ち抜き装置等を使用して行うことができる。
【0085】
カットされた基材32Dおよび接着性/硬化性層31Dの表面は平滑性が保持されているため、例えば、接着/硬化シート3D(または接着性/硬化性層31D)を光ディスクにおける記録層保護用のカバーシート(の接着)に使用した場合には、接着/硬化シート3D(または接着性/硬化性層31D)に起因してデータの読み書きにエラーが発生することを防止することができ、また、接着/硬化シート3D(または接着性/硬化性層31D)をディスプレイ用の反射防止フィルム(の接着)に使用した場合には、接着/硬化シート3D(または接着性/硬化性層31D)がディスプレイの透明性や画像の鮮明性を損なうおそれはない。
【0086】
〔第4の実施形態〕
図10(a)〜(e)は本発明の第4の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図である。
【0087】
本実施形態に係る積層シート1Eを製造するには、最初に図10(a)〜(c)に示すように、長尺の剥離シート2Eの剥離処理面に、接着性/硬化性層31Eおよび基材32Eを順に積層する。なお、接着性/硬化性層31Eおよび基材32Eは、接着/硬化シート3Eを構成するものである。
【0088】
剥離シート2E、接着性/硬化性層31Eおよび基材32Eの材料としては、上記第3の実施形態に係る積層シート1Dの剥離シート2D、接着性/硬化性層31Dおよび基材32Dと同様のものを使用することができる。
【0089】
次いで、図10(d)に示すように、基材32Eの幅方向両側部に保護材41Eを積層する(この状態のものを積層シート1E’という)。この保護材41Eは、上記第2の実施形態に係る積層シート1Bの保護材41Bと同様にして形成することができる。
【0090】
なお、本実施形態では、上記保護材41Eの積層工程を上記の段階で行ったが、これに限定されることなく、積層シート1Eの製造工程において任意の段階で行うことができる。
【0091】
最後に、図10(e)に示すように、積層シート1E’の幅方向両縁部にエネルギー線を照射して、接着性/硬化性層31Eの縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させ、得られた積層シート1E(図8参照)をロール状に巻き取って巻取体とする(図9参照)。エネルギー線の照射は、上記第1の実施形態と同様にして行うことができる。
【0092】
上記積層シート1Eを巻取体としたとき、上記第3の実施形態に係る積層シート1Dと同様に、接着性/硬化性層31Eを構成する接着性/硬化性材料が積層シート1Eの幅方向両縁部から染み出すおそれはなく、また、接着性/硬化性層31Eの主使用部の表面がゆず肌になること、および基材32Eの主使用部に異物による凹みが形成されることが防止される。
【0093】
なお、上記第3および第4実施形態では、保護材41D,41Eは、基材32D,32Eの幅方向両側部上に設けられているが、本発明はこれに限定されることなく、図11に示される積層シート1Fのように、保護材41Fは、剥離シート2Fの裏面幅方向両側部に設けられてもよい。この場合であっても、上記と同様の効果が得られる。
【0094】
〔その他の実施形態〕
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0095】
例えば、各積層シート1A,1B,1C,1D,1E,1Fにおいて、保護材41A,41B,41C,41D,41E,41Fは省略されてもよく、この場合であっても、接着性/硬化性層31A,31B,31C,31D,31E,31Fを構成する接着性/硬化性材料が巻圧によって積層シート1A,1B,1C,1D,1E,1Fの幅方向両縁部から染み出すことは防止される。
【実施例】
【0096】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0097】
〔実施例1〕
ブチルアクリレート62重量部と、メチルメタクリレート10重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート28重量部とを酢酸エチル中で反応させて、官能基にヒドロキシル基を有するアクリル系共重合体の酢酸エチル溶液(固形分濃度:40重量%)を得た。さらに、そのアクリル系共重合体の酢酸エチル溶液250重量部に、酢酸エチル100重量部と、置換基にイソシアナート基を有する不飽和基含有化合物としてのメタクリロイルオキシエチルイソシアナート30重量部(アクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート100当量に対し80.5当量)と、触媒としてのジブチル錫ラウレート0.12重量部とを添加し、窒素雰囲気下、室温で24時間反応させて、エネルギー線硬化型アクリル酸エステル共重合体(エネルギー線硬化性材料)を得た。このエネルギー線硬化型アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、600,000であった。
【0098】
得られたエネルギー線硬化型アクリル酸エステル共重合体溶液の固形分100重量部に対し、エネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび多官能オリゴマーからなる組成物(大日精化社製,セイカビーム14−29B(NPI))を固形分として100重量部加え、さらに光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン10.0重量部と、架橋剤としてイソシアナート系架橋剤(日本ポリウレタン社製,コロネートL)3.3重量部とを加え、固形分濃度を40重量%に調整し、エネルギー線硬化性材料の塗布剤とした。
【0099】
上記エネルギー線硬化性材料の塗布剤を、長尺の基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムの片面を重剥離型シリコーン樹脂で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,SP−PET50C,厚さ:50μm)の剥離処理面に、乾燥膜厚が25μmとなるようにナイフコーターによって塗布し、90℃で1分間乾燥させ、エネルギー線硬化性材料からなる接着性/硬化性層を形成した。
【0100】
続いて、接着性/硬化性層の表面に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面を軽剥離型シリコーン樹脂で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,SP−PET38GS,厚さ:38μm)の剥離処理面を重ね、さらに、上記重剥離型剥離シートの剥離処理面と反対側の面に、ポリエチレン基材にエチレン−酢酸ビニル系感圧接着剤層を設けた保護シート(サンエー化研株式会社製,PAC2−70,厚さ:70μm)を貼付し、幅150mm、長さ100mの長尺の積層体を作製した。
【0101】
次に、打ち抜き装置(マークアンディー社製,マークアンディー910)を用いて、図1(b)に示すように、保護シートを幅方向両側部の保護材部分(幅:10mm)と幅方向中央部の残部とに分割し、残部は図1(c)に示すように剥離除去した。
【0102】
そして、上記打ち抜き装置を用いて、図1(d)に示すように、基材および接着性/硬化性層(接着シート)を、目的シートとしての円盤状の円盤部(直径:120mm,500枚)と波状の枕部と残部とに分割するとともに、円盤部の中心部を打ち抜いてセンターホール部を形成し、残部は図1(e)に示すように剥離除去した。
【0103】
得られた積層シートを18m/minの速さで長手方向に移動させながら、積層シートの幅方向両縁部において端部から幅1mmの部分に、スポットUV照射装置(HOYA−SCHOTT社製,EXECURE3000)を使用して紫外線を照射し、その部分における接着性/硬化性層を硬化させた。紫外線は、積層シートの厚さ方向(表面側から裏面側)に照射し、その照射量は400mJ/cm2であった。
【0104】
なお、上記エネルギー線硬化性材料の硬化前の貯蔵弾性率(25℃)は7.42×104Paであり、硬化後の貯蔵弾性率(25℃)は1.62×109Paであった。また、上記積層シートにおいて、保護シートが存在する保護部の厚さは145μm、目的シートの厚さは75μmであった。
【0105】
上記のようにして製造した積層シート(図2,図3参照)を、初期の巻取張力12N、テーパー率50%として直径6インチのABS製巻芯に巻き取り、巻取体とした(図4参照)。
【0106】
〔実施例2〕
基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(幅:7.5mm,厚さ:25μm)に、アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製,M0003)を20μmの厚さになるよう塗布して粘着剤層を形成し、これを保護材用の粘着テープとした。
【0107】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤を塗布した剥離シート(リンテック株式会社製,SP−PET50C,厚さ:50μm)の剥離処理面に、実施例1で調製したエネルギー線硬化性材料の塗布剤を乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターによって塗布し、100℃で3分間乾燥させた。このようにして形成した接着性/硬化性層の上に、ポリカーボネートフィルム(帝人株式会社製,ピュアエースC110−75,厚さ:75μm)からなる基材を圧着し、幅150mm、長さ100mの長尺の積層体を作製した。
【0108】
次に、打ち抜き装置(マークアンディー社製,マークアンディー910)を用いて、図5(b)に示すように、基材および接着性/硬化性層(接着シート)を、円盤状の円盤部(直径:120mm,500枚)と波状の枕部と残部とに分割するとともに、円盤部の中心部を打ち抜いてセンターホール部を形成し、残部は図5(c)に示すように剥離除去した。
【0109】
そして、図5(d)に示すように、枕部の外側端部に保護材として上記粘着テープを貼付した後、得られた積層シートの幅方向両縁部に対して、実施例1と同様にして紫外線を照射した。ここで、この積層シートにおいて、保護材が存在する保護部の厚さは145μm、目的シートの厚さは100μmであった。
【0110】
上記のようにして製造した積層シート(図2,図3参照)を、実施例1と同様の巻取条件で巻芯に巻き取り、巻取体とした(図4参照)。
【0111】
〔実施例3〕
ポリエチレン基材にエチレン−酢酸ビニル系感圧接着剤層を設けた保護シート(サンエー化研株式会社製,PAC2−70,厚さ:70μm)を、基材としてのポリカーボネートフィルム(帝人株式会社製,ピュアエースC110−75,厚さ:75μm)の片面に貼付し、保護シート付基材を得た。
【0112】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤を塗布した剥離シート(リンテック株式会社製,SP−PET50C,厚さ:50μm)の剥離処理面に、実施例1で調製したエネルギー線硬化性材料の塗布剤を乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターによって塗布し、100℃で3分間乾燥させた。このようにして形成した接着性/硬化性層に、上記保護シート付基材のポリカーボネートフィルム側を圧着し、幅150mm、長さ100mの長尺の積層体を作製した。
【0113】
次に、打ち抜き装置(マークアンディー社製,マークアンディー910)を用いて、図7(e)に示すように、保護シートを幅方向両側部の保護材部分(幅:7mm)と幅方向中央部の残部とに分割し、残部は図7(f)に示すように剥離除去した。このようにして、基材の片面の幅方向両側部に、幅7mm、長さ100m、厚さ70μmの保護材を形成した。そして、得られた積層シートの幅方向両縁部に対して、実施例1と同様にして紫外線を照射した。ここで、この積層シートにおいて、保護シートが存在する保護部の厚さは170μm、目的シートの厚さは100μmであった。
【0114】
以上のようにして製造した幅150mm、長さ100mの長尺の積層シート(図8参照)を、実施例1と同様の巻取条件で巻芯に巻き取り、巻取体とした(図9参照)。
【0115】
〔実施例4〕
基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(幅:7.5mm,厚さ:25μm)に、アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製,M0003)を20μmの厚さになるよう塗布して粘着剤層を形成し、これを保護材用の粘着テープとした。
【0116】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤を塗布した剥離シート(リンテック株式会社製,SP−PET50C,厚さ:50μm)の剥離処理面に、実施例1で調製したエネルギー線硬化性材料の塗布剤を乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターによって塗布し、100℃で3分間乾燥させた。このようにして形成した接着性/硬化性層の上に、ポリカーボネートフィルム(帝人株式会社製,ピュアエースC110−75,厚さ:75μm)からなる基材を圧着し、幅150mm、長さ100mの長尺の積層体を作製した。
【0117】
そして、図10(d)に示すように、枕部の外側端部に保護材として上記粘着テープを貼付した後、得られた積層シートの幅方向両縁部に対して、実施例1と同様にして紫外線を照射した。ここで、この積層シートにおいて、保護材が存在する保護部の厚さは145μm、目的シートの厚さは100μmであった。
【0118】
上記のようにして製造した幅150mm、長さ100mの長尺の積層シート(図8参照)を、実施例1と同様の巻取条件で巻芯に巻き取り、巻取体とした(図9参照)。
【0119】
〔比較例1〜4〕
実施例1〜4において、紫外線を照射しない以外、実施例1〜4と同様にして積層シートを製造し、得られた積層シートを実施例1と同様の巻取条件で巻芯に巻き取り、巻取体とした。
【0120】
〔試験例〕
実施例1〜4および比較例1〜4において巻取体とした積層シートを24時間放置した後、ゴム製ロール(幅40mm,重さ2kg)を用いて、縦20mm、横20mm、厚さ12μm、重さ0.013gのアルミニウム箔を巻取体の側面に押圧し、巻取体の側面を下に向けてそのアルミニウム箔が自重で落下するか否かを確認した。
【0121】
その結果、実施例1〜4の積層シートではアルミニウム箔が落下し、接着性/硬化性層からのエネルギー線硬化性材料の染み出しがないことが確認された。それに対し、比較例1〜4の積層シートでは、アルミニウム箔は落下せずに巻取体の側面に付着しており、接着性/硬化性層からのエネルギー線硬化性材料の染み出しがみられた。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の積層シートおよびその製造方法は、巻取体としたときに、幅方向両縁部から接着性/硬化性層の接着性/硬化性材料が染み出し易い積層シートに好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図である。
【図2】同実施形態に係る積層シート製造方法の一工程を示す積層シートの平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る積層シートの斜視図である。
【図4】同実施形態に係る積層シートの巻取体の斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る積層シートの断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る積層シートの斜視図である。
【図9】同実施形態に係る積層シートの巻取体の斜視図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る積層シートの断面図である。
【符号の説明】
【0124】
1A,1B,1C,1D,1E,1F…積層シート
2A,2B,2C,2D,2E,2F…剥離シート
3A,3B,3C,3D,3E,3F…接着/硬化シート
31A,31B,31C,31D,31E,31F…接着性/硬化性層
32A,32B,32C,32D,32E,32F…基材
4A,4D…保護シート
41A,41B,41C,41D,41E,41F…保護材
5…エネルギー線スポット照射装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の剥離シートに、接着性および/または硬化性を有する材料(以下「接着性/硬化性材料」という。)からなる層(以下「接着性/硬化性層」という。)と基材とが積層されてなる積層シートおよびその製造方法に関するものであり、特に、積層シートを巻き取ったときに、積層シートの幅方向両縁部から接着性/硬化性材料が染み出すことを防止することのできる積層シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺の剥離シートに接着剤層および基材(またはそれらからなる接着シート)が積層されてなる積層シートは、ロール状に巻き取られ、巻取体の状態で運搬・保管されるのが一般的である。かかる積層シートを巻取体にした場合、積層シートには巻圧がかかるが、通常接着剤層は他の層に比較して軟らかいため、積層シートの幅方向両縁部から接着剤が染み出すことがある。
【0003】
このように積層シートの幅方向両縁部から接着剤が染み出すと、染み出した接着剤によって巻取シャフトが汚れたり、染み出した接着剤が異物となって接着シートを汚染するという問題が発生する。
【0004】
特許文献1には、紫外線硬化型粘着シートを切断した後、ロール状に巻き取った状態で、当該粘着シートの切断部位を紫外線硬化させる発明が開示されているが、かかるロール状粘着シートにおいては、ロール状に巻き取ったときに既に粘着シートの切断部位から粘着剤が染み出している場合があり、これを硬化させたとしても、硬化した粘着剤が粘着シートを汚染するという問題は依然として残っており、さらには、染み出した粘着剤の硬化によって、巻き重なった粘着シートが相互に接着され、粘着シートのロールからの繰り出しが困難になるという問題も生じる。
【0005】
一方、上記のような積層シートにおいては、特許文献2に示すように、基材および接着剤層が所定の形状にカットされて、所定の形状を有する接着シートとして使用される場合がある。この接着シートが、例えば光ディスクのカバーシート等として使用される場合には、接着シートが巻き取られたときの巻圧によって、カバーシートに他のカバーシートの輪郭の痕(円弧状の痕)が付いたり、接着剤層が経時的に変形していわゆるゆず肌とよばれる状態になり、接着剤層に微小な厚みむらができるという問題が生じ、それらに起因して、得られる光ディスクのデータの読み書きにエラーが発生するおそれがある。
【特許文献1】特開2002−338904号公報
【特許文献2】実公平6−18383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
巻圧に起因する上記問題を解決するために、カバーシート等として使用される接着シート以外の部分(積層シートの幅方向両側部)の厚さを、接着シートの部分の厚さよりも厚くして接着シートにかかる巻圧を軽減させることが考えられる。しかしながら、その場合には、積層シートの幅方向両側部にかかる巻圧が局部的に大きくなり、積層シートの幅方向両縁部からの接着剤の染み出し量がより多くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、積層シートを巻き取ったときに、積層シートの幅方向両縁部から接着性/硬化性層の接着性/硬化性材料が染み出すことを防止することのできる積層シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、長尺の剥離シートと、前記剥離シートの剥離処理面に積層された、少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分がエネルギー線硬化性材料からなる接着性/硬化性層と、前記接着性/硬化性層上に積層された基材とを備えた積層シートを作製し、前記積層シートを巻き取る前に、前記接着性/硬化性層の幅方向両縁部に位置するエネルギー線硬化性材料を硬化させることを特徴とする積層シートの製造方法を提供する(請求項1)。なお、本明細書における「基材」は、所望の材料からなるシートであってもよいし、剥離シートであってもよい。
【0009】
接着性/硬化性材料からなる接着性/硬化性層は、通常他の層(剥離シート・基材)と比較して軟らかいため、これらの層を備えた積層シートを巻き取って積層シートに巻圧がかかった場合、接着性/硬化性材料は積層シートの幅方向両縁部から染み出そうとするが、上記発明(請求項1)に係る積層シートでは、積層シートを巻き取る前に、接着性/硬化性層の幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させるため、硬化したエネルギー線硬化性材料がストッパーとなって、上記のような接着性/硬化性材料の染み出しが防止される。
【0010】
上記発明(請求項1)においては、任意の段階で、前記基材上における前記基材の幅方向両側部または前記剥離シートの裏面における前記剥離シートの幅方向両側部に保護材を設けてもよい(請求項2)。なお、本明細書における「剥離シートの裏面」とは、剥離シートにおける剥離処理面の反対側の面をいう。
【0011】
基材および/または接着性/硬化性層の幅方向中央部が主使用部となっている場合には、上記保護材がスペーサとして機能し、接着性/硬化性層の主使用部の表面がゆず肌になること、および基材の主使用部に異物による凹みが形成されることが防止されるが、この場合、積層シートの幅方向両側部(保護材が存在する部分)にかかる巻圧が局部的に大きくなり、保護材がない場合よりも接着性/硬化性材料が染み出し易くなる。しかし、上記発明(請求項2)に係る積層シートでは、積層シートを巻き取る前に、接着性/硬化性層の幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させるため、硬化したエネルギー線硬化性材料がストッパーとなって、上記のような接着性/硬化性材料の染み出しが防止される。
【0012】
第2に本発明は、長尺の剥離シートの剥離面の幅方向中央部に、接着性/硬化性層と基材とを備えた所定の形状の目的シートが設けられ、前記剥離シートの剥離面または裏面の幅方向両側部に、接着性/硬化性層を有する保護部が設けられ、前記保護部における厚さが前記目的シートにおける厚さよりも厚く、前記保護部の接着性/硬化性層の少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分がエネルギー線硬化性材料によって形成された積層シートを作製し、前記積層シートを巻き取る前に、前記積層シートの幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させることを特徴とする積層シートの製造方法を提供する(請求項3)。
【0013】
ここで、「目的シート」とは、接着性および/または硬化性を利用して所定の目的に使用するシートをいう。また、「所定の形状の目的シート」は、それぞれ独立して複数設けられるシートであってもよいし、長尺のシートであってもよい。
【0014】
上記発明(請求項3)に係る積層シートにおいては、上記保護部が設けられていることにより、目的シートに巻圧による痕が付くこと、目的シートの接着性/硬化性層の表面がゆず肌になること、および目的シートに異物による凹みが形成されることが防止されるが、この場合、積層シートの幅方向両側部(保護部が存在する部分)にかかる巻圧が局部的に大きくなり、保護部がない場合よりも接着性/硬化性材料が染み出し易くなる。しかし、本積層シートでは、積層シートを巻き取る前に、接着性/硬化性層の幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させるため、硬化したエネルギー線硬化性材料がストッパーとなって、上記のような接着性/硬化性材料の染み出しが防止される。
【0015】
上記発明(請求項3)においては、前記目的シートの接着性/硬化性層と、前記保護部の接着性/硬化性層とを、一工程で積層するのが好ましい(請求項4)。また、上記発明(請求項3,4)においては、前記保護部を基材と当該基材上に積層された保護材とから構成し、当該保護部の基材と、前記目的シートの基材とを、一工程で積層するのが好ましい(請求項5)。これらの方法によって、効率良く積層シートを製造することができる。
【0016】
上記発明(請求項2,5)においては、保護シートを積層して前記保護シートを所定の形状にカットすることにより、前記保護材を形成してもよい(請求項6)。
【0017】
上記発明(請求項1〜6)においては、前記基材および前記接着性/硬化性層を所定の形状にカットして不要部を剥離除去し、所定の形状の目的シートを形成する工程を備えていてもよい(請求項7)。この工程により、効率良く所定の形状の目的シートを形成することができる。
【0018】
上記発明(請求項1〜7)においては、前記積層シートの厚さ方向にエネルギー線を照射することにより、前記エネルギー線硬化性材料を硬化させるのが好ましい(請求項8)。このようにエネルギー線を照射した場合、接着性/硬化性層において未硬化であるべき部分にまでエネルギー線が照射されることを防止することができる。
【0019】
上記発明(請求項1〜8)においては、前記エネルギー線硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率が106Pa以上であるのが好ましい(請求項9)。エネルギー線硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率が上記の範囲であると、硬化したエネルギー線硬化性材料は、積層シートが巻き取られたときにも積層シートの幅方向縁部から染み出さない。
【0020】
第3に本発明は、長尺の剥離シートと、前記剥離シートの剥離処理面に積層され、前記剥離シートの幅方向中央部が主使用部となっている接着性/硬化性層と、前記接着性/硬化性層に積層された基材と、前記基材上における前記基材の幅方向両側部または前記剥離シートの裏面における前記剥離シートの幅方向両側部に設けられた保護材とを備えており、前記接着性/硬化性層において、少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分が、エネルギー線硬化性材料が硬化してなるものであることを特徴とする積層シートを提供する(請求項10)。
【0021】
第4に本発明は、長尺の剥離シートと、前記剥離シートの剥離面の幅方向中央部に設けられた、接着性/硬化性層と基材とを備えた所定の形状の目的シートと、前記剥離シートの剥離面または裏面の幅方向両側部に設けられた、接着性/硬化性層を有する保護部とを備えており、前記保護部における厚さは前記目的シートにおける厚さよりも厚く、前記保護部の接着性/硬化性層において、少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分が、エネルギー線硬化性材料が硬化してなるものであることを特徴とする積層シートを提供する(請求項11)。
【0022】
上記発明(請求項11)において、前記目的シートの接着性/硬化性層と、前記保護部の接着性/硬化性層とは、同一の材料から構成されているのが好ましい(請求項12)。また上記発明(請求項11,12)において、前記保護部は、前記目的シートの基材と同一の材料からなる基材と、当該基材上に積層された保護材とから構成されているのが好ましい(請求項13)。
【0023】
上記発明(請求項10〜13)において、前記硬化したエネルギー線硬化性材料の貯蔵弾性率は106Pa以上であるのが好ましい(請求項14)。
【発明の効果】
【0024】
本発明の積層シート製造方法によれば、巻取体としたときに、積層シートの幅方向両縁部から接着性/硬化性層の接着性/硬化性材料が染み出すことを防止することのできる積層シートを製造することができる。また、本発明の積層シートによれば、巻取体としたときに、積層シートの幅方向両縁部から接着性/硬化性層の接着性/硬化性材料が染み出すことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
第1および第2の実施形態では、光ディスクの製造工程で記録層にカバーシートを接着するために、またはスタンパーの凹凸パターンを転写するために使用される積層シートを例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の積層シートに適用することができる。
【0026】
〔第1の実施形態〕
図1(a)〜(f)は本発明の第1の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図、図2は同実施形態に係る積層シート製造方法の一工程を示す積層シートの平面図、図3は本発明の第1の実施形態に係る積層シートの斜視図、図4は同実施形態に係る積層シートの巻取体の斜視図である。
【0027】
本実施形態に係る積層シート1Aを製造するには、最初に図1(a)に示すように、長尺の剥離シート2Aの剥離処理面に、接着性/硬化性層31A、基材32Aおよび保護シート4Aを順に積層する。なお、接着性/硬化性層31Aおよび基材32Aは、接着/硬化シート3Aを構成するものである。
【0028】
剥離シート2Aとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等の樹脂フィルムまたはグラシン紙、クレーコート紙、ラミネート紙(主にポリエチレンラミネート紙)等の紙をシリコーン系剥離剤等で剥離処理したものを使用することができる。剥離シート2Aの厚さは、通常10〜200μm程度であり、好ましくは20〜100μm程度である。
【0029】
接着性/硬化性層31Aは、カバーシートを接着するための接着層やスタンパーの凹凸パターンが転写されるスタンパー受容層となるものであり、接着剤または硬化性材料から構成される。それら接着剤および硬化性材料のいずれも、エネルギー線硬化性の材料からなるのが好ましい。
【0030】
エネルギー線硬化性材料の硬化前の貯蔵弾性率は、接着性(粘着性)や凹凸パターン転写性を鑑みて103Pa以上、106Pa未満であるのが好ましいが、貯蔵弾性率がこの範囲にあると、積層シートが巻き取られたときに、巻圧によってエネルギー線硬化性材料が積層シートの幅方向縁部から染み出し易い。この染み出しは、特にエネルギー線硬化性材料が後述する多官能モノマーや多官能オリゴマーを含んでいるときに顕著である。
【0031】
一方、エネルギー線硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率は106Pa以上であることが好ましく、107Pa以上であることがより好ましい。エネルギー線硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率が上記の範囲であると、硬化したエネルギー線硬化性材料は、積層シートが巻き取られたときにも積層シートの幅方向縁部から染み出さない。なお、硬化前および硬化後の貯蔵弾性率の測定温度は、積層シートの巻取時における温度、すなわち室温であるものとする。
【0032】
上記エネルギー線硬化性材料としては、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするもの、エネルギー線硬化性を有しないポリマーとエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/または多官能オリゴマーとの混合物を主成分とするもの、エネルギー線硬化性を有するポリマーとエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/または多官能オリゴマーとの混合物を主成分とするものなどが挙げられる。
【0033】
エネルギー線硬化性を有するポリマーとしては、例えば、側鎖にエネルギー線硬化性基を有するアクリル酸エステル共重合体を使用することができる。そのようなアクリル酸エステル共重合体としては、例えば、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られる、側鎖にエネルギー線硬化性基を有する重量平均分子量(Mw)100,000以上のエネルギー線硬化型アクリル酸エステル共重合体を使用することができる。
【0034】
エネルギー線硬化性を有しないポリマーとしては、例えば、アクリル酸エステル共重合体等を用いることができる。
【0035】
エネルギー線硬化性の多官能モノマー/多官能オリゴマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
接着性/硬化性層31Aは、上記エネルギー線硬化性材料によって均一に形成するのが好ましいが、かかるエネルギー線硬化性材料は、少なくとも接着性/硬化性層31Aの幅方向両側部を構成すれば足り、それ以外の部分(接着性/硬化性層31Aの幅方向中央部)は、例えばアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系等の感圧接着剤によって構成してもよい。
【0037】
接着性/硬化性層31Aを形成するには、例えば、接着性/硬化性層31Aを構成する接着性/硬化性材料と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、キスロールコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター等の塗工機によって剥離シート2Aの剥離処理面に塗布して乾燥させればよい。そして、このようにして形成した接着性/硬化性層31Aの上に基材32Aを積層し、接着性/硬化性層31Aと基材32Aとからなる接着/硬化シート3Aとする。接着性/硬化性層31Aの厚さは、通常5〜100μm程度であり、好ましくは10〜30μm程度である。
【0038】
本実施形態における基材32Aとしては、光ディスク記録層のカバーシートとして光ディスクの受光面を構成するものを例示することができる。このような基材32Aの材料としては、情報読み取りのための光の波長域に対し十分な光透過性を有するものであればよいが、光ディスクを容易に製造するために、剛性や柔軟性が適度にあるものが好ましく、光ディスクの保管のために、温度に対して安定なものであるのが好ましい。このような材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の樹脂を用いることができる。
【0039】
上記材料の線膨張係数は、高温で光ディスクが反りを起こさないよう、光ディスク基板の線膨張係数とほぼ同じであるのが好ましい。例えば、光ディスク基板がポリカーボネート樹脂からなる場合には、基材32Aも同じポリカーボネート樹脂からなるのが好ましい。
【0040】
上記の場合における基材32Aの厚さは、光ディスクの種類や光ディスクのその他の構成部位の厚さに応じて決定されるが、通常は25〜300μm程度であり、好ましくは50〜200μm程度である。
【0041】
また、本実施形態における基材32Aとして、前述した剥離シート2Aと同様の剥離シートを用いることができる。この場合、基材32Aの剥離処理面を、剥離シート2Aに積層された接着性/硬化性層31Aの表面に貼り付ける。なお、剥離シート2Aおよび基材32Aのいずれか一方を軽剥離型剥離シートとし、他方を重剥離型剥離シートとするのが好ましい。
【0042】
上記の場合における積層シートによれば、例えば、接着性/硬化性層31Aから剥離シート2Aを剥離し、露出した接着性/硬化性層31Aを光ディスクの記録層に貼り付けた後、接着性/硬化性層31Aから基材32Aを剥離して、その接着性/硬化性層31Aに他の基材(例えばカバーシート)を貼り付けることや、接着性/硬化性層31Aから剥離シート2Aを剥離し、露出した接着性/硬化性層31Aを光ディスク基板に貼り付けた後、接着性/硬化性層31Aから基材32Aを剥離して、その接着性/硬化性層31Aにスタンパーの凹凸パターンを転写・固定し、得られた凹凸面に反射膜を積層することができる。
【0043】
保護シート4Aを構成する材料は、特に限定されるものではないが、樹脂フィルム、紙、金属箔等からなる基材に、接着剤層を積層したものが好ましく用いられる。
【0044】
保護シート4Aの基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、塩化ビニル、アイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂またはそれら樹脂を架橋したものからなる樹脂フィルム、それら樹脂フィルムの積層体を使用するのが好ましい。
【0045】
保護シート4Aの接着剤層を構成する接着剤は、感圧接着剤であるのが好ましい。この場合、保護シート4Aは、上記接着/硬化シート3Aの基材32Aの上に圧着すればよい。感圧接着剤の種類としては、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系、エチレン−酢酸ビニル系等のいずれであってもよい。また、感圧接着剤は、架橋されていてもよい。
【0046】
保護シート4Aの接着剤層を構成する接着剤が感圧接着剤の場合、当該感圧接着剤は低分子量のモノマーやオリゴマーを含まないため、接着剤の染み出しは実質的に発生しない。
【0047】
保護シート4Aの厚さは、5〜100μmであるのが好ましく、特に25〜50μmであるのが好ましい。保護シート4Aの厚さが5μm未満では、保護シート4Aによる所望の効果を十分に得ることができず、保護シート4Aの厚さが100μmを超えると、積層シート1Aを巻き取ったときに、得られる巻取体の径(容積)が大きくなり過ぎる。
【0048】
図1(a)に示すように剥離シート2A、接着/硬化シート3Aおよび保護シート4Aを積層した後、図1(b)に示すように、接着/硬化シート3Aに達しないように保護シート4Aのみをカットし、保護シート4Aを幅方向両側部の保護材41A部分と幅方向中央部の残部42Aとに分割する。保護シート4Aのカットは、常法によって行えばよく、例えば、打ち抜き装置等を使用して行うことができる。なお、本実施形態では、保護材41Aの幅は、後の工程で形成する枕部302Aの最小幅よりも若干狭い幅とする。
【0049】
上記カットにより形成した保護シート4Aの残部42Aは、図1(c)に示すように剥離除去し、帯状の保護材41Aを形成する。
【0050】
次に、図1(d)に示すように、接着/硬化シート3Aをカットし、接着/硬化シート3Aを円盤部301Aと枕部302Aと残部303Aとに分割するとともに、円盤部301Aの中心部を打ち抜いてセンターホール部304Aを形成する。そして図1(e)に示すように、接着/硬化シート3Aの残部303Aを剥離除去する(この状態のものを積層シート1A’という)。接着/硬化シート3Aのカットおよび打ち抜きは、常法によって行えばよく、例えば、打ち抜き装置等を使用して行うことができる。
【0051】
円盤部301A(目的シート)は、図2および図3に示すように、光ディスクの平面形状と同じ平面形状を有し、剥離シート2A剥離処理面の幅方向中央部に複数連続的に設けられている。枕部302Aの平面形状は、図2および図3に示すように、円盤部301Aの外周に沿って、枕部302Aの外側端部に位置する保護材41A側に凹むとともに、円盤部301Aの相互間においては、円盤部301Aの相互間に入り込むように突出して、全体として波状となっている。
【0052】
最後に、図1(f)および図2に示すように、積層シート1A’の幅方向両縁部にエネルギー線を照射して、接着性/硬化性層31Aの縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させ、図3に示す積層シート1Aを得る。この積層シート1Aは、図4に示すようにロール状に巻き取って巻取体とする。
【0053】
エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で100〜500mJ/cm2程度が好ましく、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
【0054】
エネルギー線の照射は、図2に示すように、エネルギー線をスポット照射することのできる装置(例えばスポットUV照射装置)5を治具51にセットし、積層シート1A’を長手方向に移動させながら行うことができ、このような方法によって、積層シート1A’の幅方向両縁部に連続的にエネルギー線を照射することができる。
【0055】
また、エネルギー線は、積層シート1A’の厚さ方向に照射するのが好ましい。エネルギー線を積層シート1A’の縁部から積層シート1A’の中心方向に向けて照射すると、そのエネルギー線が円盤部301Aの接着性/硬化性層31Aまで達し、円盤部301Aの接着性/硬化性層31Aが硬化してしまうおそれがあるが、上記のようにエネルギー線を照射することによって、かかる問題を回避することができる。なお、本実施形態では、枕部302Aと円盤部301Aとの間に空隙があるため、かかる空隙がない場合と比較して、エネルギー線は円盤部301Aの接着性/硬化性層31Aに照射され難い。
【0056】
エネルギー線の照射によって硬化させる接着性/硬化性層31Aの幅は、保護材41Aや枕部302Aの幅によっても異なるが、通常0.1〜10mm程度であるのが好ましく、特に0.5〜3mmであるのが好ましい。
【0057】
以上のようにして製造される積層シート1Aにおいては、その幅方向両側部に保護材41Aが設けられており、保護材41Aが存在する部分が保護部を形成しており、この保護部の厚さが円盤部301Aにおける厚さよりも保護材41Aの厚さ分だけ厚くなっている。このような積層シート1Aを図4に示すように巻き取ったとき、保護部が存在する積層シート1Aの幅方向両側部には局部的に巻圧がかかることとなるが、積層シート1Aの幅方向両縁部における接着性/硬化性層31Aは硬化しているため、その部分がストッパーとなって、接着性/硬化性層31Aを構成する接着性/硬化性材料が積層シート1Aの幅方向両縁部から染み出すことが防止される。
【0058】
したがって、積層シート1Aにおいては、接着性/硬化性材料の染み出しに起因する円盤部301Aの汚染や巻取シャフトの汚れ等の問題が生じない。
【0059】
なお、上記積層シート1Aの巻取体においては、保護材41Aがスペーサとして機能し、円盤部301Aの表面とその上に巻き重なった剥離シート2Aの裏面との間にはわずかな間隙が生じる。そのため、円盤部301Aには、他の円盤部301A、枕部302Aおよび保護材41Aの輪郭部分が強く押し付けられることはなく、したがって、円盤部301Aに巻圧による痕が付くことが防止される。また、それとともに、円盤部301Aの接着性/硬化性層31Aの表面がゆず肌になることが抑制され、円盤部301Aの接着性/硬化性層31Aの表面平滑性を保持することができる。
【0060】
また、積層シート1Aを巻き取る際に、巻き重なる積層シート1Aの間に微細なゴミ等の異物を挟み込んでしまった場合であっても、円盤部301Aの表面と剥離シート2Aの裏面との間には間隙が存在するため、異物の径がその間隙の大きさよりも小さければ、円盤部301Aに異物による凹みが形成されることが防止される。さらに、従来の巻取体では、異物を1つ挟み込んだ場合であっても、その影響で、巻き重なっている複数の円盤部301Aに凹みが形成されてしまうが、本実施形態に係る積層シート1Aの巻取体においては、剥離シート2Aと円盤部301Aとが巻取体の半径方向に間隙の大きさだけ変位することができるため、間隙の大きさよりも大きい径の異物が円盤部301A上に付着しても、その影響が他の円盤部301Aに及ぶことが抑制され、複数の円盤部301Aに異物による凹みが形成されるのを防止することができる。
【0061】
〔第2の実施形態〕
図5(a)〜(e)は本発明の第2の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図である。
【0062】
本実施形態に係る積層シート1Bを製造するには、最初に図5(a)に示すように、長尺の剥離シート2Bの剥離処理面に、接着性/硬化性層31Bおよび基材32Bを順に積層する。なお、接着性/硬化性層31Bおよび基材32Bは、接着/硬化シート3Bを構成するものである。
【0063】
剥離シート2B、接着性/硬化性層31Bおよび基材32Bの材料としては、上記第1の実施形態に係る積層シート1Aの剥離シート2A、接着性/硬化性層31Aおよび基材32Aと同様のものを使用することができる。
【0064】
図5(a)に示すように剥離シート2Bおよび接着/硬化シート3Bを積層したら、図5(b)に示すように、接着/硬化シート3Bをカットし、接着/硬化シート3Bを円盤部301Bと枕部302Bと残部303Bとに分割するとともに、円盤部301Bの中心部を打ち抜いてセンターホール部304Bを形成する。そして図5(c)に示すように、接着/硬化シート3Bの残部303Bを剥離除去する。
【0065】
円盤部301B(目的シート)および枕部302Bの平面形状は、上記第1の実施形態に係る積層シート1Aにおける円盤部301Aおよび枕部302Aの平面形状と同様である(図2,図3参照)。
【0066】
次いで、図5(d)に示すように、枕部302Bの外側端部に帯状の保護材41Bを積層する(この状態のものを積層シート1B’という)。この保護材41Bは、上記第1の実施形態に係る積層シート1Aの保護シート4Aと同様のシートにより構成してもよいし、インクの印刷や塗料の塗布により形成してもよい。
【0067】
インク・塗料の種類や、印刷・塗布方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン樹脂やアクリル樹脂等のビヒクルを含むインク・塗料を、平版、凸版等の方法で印刷したり、スプレー、はけ塗り等の方法で塗布することができる。
【0068】
上記のようなインクや塗料により保護材41Bを形成する場合であっても、その乾燥膜厚は、シートの場合と同様に、5〜100μmであるのが好ましく、特に25〜50μmであるのが好ましい。
【0069】
なお、本実施形態では、上記保護材41Bの積層工程を上記の段階で行ったが、これに限定されることなく、積層シート1Bの製造工程において任意の段階で行うことができる。
【0070】
最後に、図5(e)に示すように、積層シート1B’の幅方向両縁部にエネルギー線を照射して、接着性/硬化性層31Bの縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させ、得られた積層シート1B(図3参照)をロール状に巻き取って巻取体とする(図4参照)。エネルギー線の照射は、上記第1の実施形態と同様にして行うことができる。
【0071】
上記積層シート1Bを巻取体としたとき、上記第1の実施形態に係る積層シート1Aと同様に、接着性/硬化性層31Bを構成する接着性/硬化性材料が積層シート1Bの幅方向両縁部から染み出すおそれはなく、また、円盤部301Bに巻圧による痕が付くこと、円盤部301Bの接着性/硬化性層31Bの表面がゆず肌になること、および円盤部301Bに異物による凹みが形成されることが防止される。
【0072】
なお、上記第1および第2実施形態では、保護材41A,41Bは、枕部302A,302B上(基材32A,32B上)に設けられているが、本発明はこれに限定されることなく、図6に示される積層シート1Cのように、保護材41Cは、剥離シート2Cの裏面幅方向両側部に設けられてもよい。この場合であっても、上記と同様の効果が得られる。また、上記第1および第2実施形態では、保護材41A,41Bは帯状の形状を有しているが、枕部302A,302Bの形状と同一の形状であってもよい。
【0073】
次の第3および第4の実施形態では、基材および接着性/硬化性層(接着/硬化シート)の主使用部を所望の形状にカットして使用するための積層シートについて説明する。
【0074】
〔第3の実施形態〕
図7(a)〜(g)は本発明の第3の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図、図8は本発明の第3の実施形態に係る積層シートの斜視図、図9は同実施形態に係る積層シートの巻取体の斜視図である。
【0075】
本実施形態に係る積層シート1Dを製造するには、図7(a)〜(d)に示すように、長尺の剥離シート2Dの剥離処理面に、接着性/硬化性層31D、基材32Dおよび保護シート4Dを順に積層する。なお、接着性/硬化性層31Dおよび基材32Dは、接着/硬化シート3Dを構成するものである。
【0076】
剥離シート2D、接着性/硬化性層31Dおよび保護シート4Dの材料としては、上記第1の実施形態に係る積層シート1Aの剥離シート2A、接着性/硬化性層31Aおよび保護シート4Aと同様のものを使用することができる。なお、本実施形態において、接着性/硬化性層31Dは、その幅方向中央部が主使用部(接着性/硬化性層表面が平滑性を必要とする部分)となっている。
【0077】
一方、基材32Dは、接着性/硬化性層31Dによって所定の接着対象物に接着されるものであってもよいし、接着性/硬化性層31Dから剥離される剥離シートであってもよい。前者の場合、基材32Dは、接着性/硬化性層31Dとともに接着/硬化シート3Dとして使用され、その幅方向中央部が主使用部となる。
【0078】
基材32Dが接着/硬化シート3Dとして使用される場合、基材32Dの材料としては、基材32Dの使用目的に応じて、様々な種類の材料を選択することができる。例えば、基材32Dが光ディスク記録層のカバーシートとして使用される場合には、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の樹脂を基材32Dの材料として選択することができる。また、例えば、基材32DがPDA等のディスプレイ用のフィルムとして使用される場合には、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の樹脂を基材32Dの材料として選択することができ、これらの樹脂からなる基材の表面に反射防止処理や防眩処理等を施して用いることができる。
【0079】
基材32Dが接着/硬化シート3Dとして使用される場合、基材32Dの厚さは、基材32Dの使用目的に応じて決定されるが、通常は25〜300μm程度であり、好ましくは50〜200μm程度である。
【0080】
一方、基材32Dが剥離シートである場合には、基材32Dの材料として、上記剥離シート2Dと同様の材料を選択することができる。
【0081】
次に、図7(e)に示すように、基材32Dに達しないように保護シート4Dのみをカットし、保護シート4Dを幅方向両側部の保護材41D部分と幅方向中央部の残部42Dとに分割する。そして、その保護シート4Dの残部42Dは、図7(f)に示すように剥離除去する(この状態のものを積層シート1D’という)。なお、保護材41Dの幅は、保護材41Dが接着性/硬化性層31Dの主使用部の上にかからないように設定する。
【0082】
最後に、図7(g)に示すように、積層シート1D’の幅方向両縁部にエネルギー線を照射して、接着性/硬化性層31Dの幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させ、図8に示す積層シート1Dを得る。エネルギー線の照射は、上記実施例1と同様にして行うことができる。得られた積層シート1Dは、図9に示すようにロール状に巻き取って巻取体とする。
【0083】
上記積層シート1Dを巻取体としたとき、上記第1の実施形態に係る積層シート1Aと同様に、接着性/硬化性層31Dを構成する接着性/硬化性材料が積層シート1Dの幅方向両縁部から染み出すおそれはなく、また、接着性/硬化性層31Dの主使用部の表面がゆず肌になること、および基材32Dの主使用部に異物による凹みが形成されることが防止される。
【0084】
上記のように巻取体にした積層シート1Dを使用するには、積層シート1Dを巻取体から繰り出して、接着/硬化シート3Dの主使用部を所望の形状にカットし、剥離シート2Dから剥離すればよい。カットは常法によって行えばよく、例えば、打ち抜き装置等を使用して行うことができる。
【0085】
カットされた基材32Dおよび接着性/硬化性層31Dの表面は平滑性が保持されているため、例えば、接着/硬化シート3D(または接着性/硬化性層31D)を光ディスクにおける記録層保護用のカバーシート(の接着)に使用した場合には、接着/硬化シート3D(または接着性/硬化性層31D)に起因してデータの読み書きにエラーが発生することを防止することができ、また、接着/硬化シート3D(または接着性/硬化性層31D)をディスプレイ用の反射防止フィルム(の接着)に使用した場合には、接着/硬化シート3D(または接着性/硬化性層31D)がディスプレイの透明性や画像の鮮明性を損なうおそれはない。
【0086】
〔第4の実施形態〕
図10(a)〜(e)は本発明の第4の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図である。
【0087】
本実施形態に係る積層シート1Eを製造するには、最初に図10(a)〜(c)に示すように、長尺の剥離シート2Eの剥離処理面に、接着性/硬化性層31Eおよび基材32Eを順に積層する。なお、接着性/硬化性層31Eおよび基材32Eは、接着/硬化シート3Eを構成するものである。
【0088】
剥離シート2E、接着性/硬化性層31Eおよび基材32Eの材料としては、上記第3の実施形態に係る積層シート1Dの剥離シート2D、接着性/硬化性層31Dおよび基材32Dと同様のものを使用することができる。
【0089】
次いで、図10(d)に示すように、基材32Eの幅方向両側部に保護材41Eを積層する(この状態のものを積層シート1E’という)。この保護材41Eは、上記第2の実施形態に係る積層シート1Bの保護材41Bと同様にして形成することができる。
【0090】
なお、本実施形態では、上記保護材41Eの積層工程を上記の段階で行ったが、これに限定されることなく、積層シート1Eの製造工程において任意の段階で行うことができる。
【0091】
最後に、図10(e)に示すように、積層シート1E’の幅方向両縁部にエネルギー線を照射して、接着性/硬化性層31Eの縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させ、得られた積層シート1E(図8参照)をロール状に巻き取って巻取体とする(図9参照)。エネルギー線の照射は、上記第1の実施形態と同様にして行うことができる。
【0092】
上記積層シート1Eを巻取体としたとき、上記第3の実施形態に係る積層シート1Dと同様に、接着性/硬化性層31Eを構成する接着性/硬化性材料が積層シート1Eの幅方向両縁部から染み出すおそれはなく、また、接着性/硬化性層31Eの主使用部の表面がゆず肌になること、および基材32Eの主使用部に異物による凹みが形成されることが防止される。
【0093】
なお、上記第3および第4実施形態では、保護材41D,41Eは、基材32D,32Eの幅方向両側部上に設けられているが、本発明はこれに限定されることなく、図11に示される積層シート1Fのように、保護材41Fは、剥離シート2Fの裏面幅方向両側部に設けられてもよい。この場合であっても、上記と同様の効果が得られる。
【0094】
〔その他の実施形態〕
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0095】
例えば、各積層シート1A,1B,1C,1D,1E,1Fにおいて、保護材41A,41B,41C,41D,41E,41Fは省略されてもよく、この場合であっても、接着性/硬化性層31A,31B,31C,31D,31E,31Fを構成する接着性/硬化性材料が巻圧によって積層シート1A,1B,1C,1D,1E,1Fの幅方向両縁部から染み出すことは防止される。
【実施例】
【0096】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0097】
〔実施例1〕
ブチルアクリレート62重量部と、メチルメタクリレート10重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート28重量部とを酢酸エチル中で反応させて、官能基にヒドロキシル基を有するアクリル系共重合体の酢酸エチル溶液(固形分濃度:40重量%)を得た。さらに、そのアクリル系共重合体の酢酸エチル溶液250重量部に、酢酸エチル100重量部と、置換基にイソシアナート基を有する不飽和基含有化合物としてのメタクリロイルオキシエチルイソシアナート30重量部(アクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート100当量に対し80.5当量)と、触媒としてのジブチル錫ラウレート0.12重量部とを添加し、窒素雰囲気下、室温で24時間反応させて、エネルギー線硬化型アクリル酸エステル共重合体(エネルギー線硬化性材料)を得た。このエネルギー線硬化型アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、600,000であった。
【0098】
得られたエネルギー線硬化型アクリル酸エステル共重合体溶液の固形分100重量部に対し、エネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび多官能オリゴマーからなる組成物(大日精化社製,セイカビーム14−29B(NPI))を固形分として100重量部加え、さらに光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン10.0重量部と、架橋剤としてイソシアナート系架橋剤(日本ポリウレタン社製,コロネートL)3.3重量部とを加え、固形分濃度を40重量%に調整し、エネルギー線硬化性材料の塗布剤とした。
【0099】
上記エネルギー線硬化性材料の塗布剤を、長尺の基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムの片面を重剥離型シリコーン樹脂で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,SP−PET50C,厚さ:50μm)の剥離処理面に、乾燥膜厚が25μmとなるようにナイフコーターによって塗布し、90℃で1分間乾燥させ、エネルギー線硬化性材料からなる接着性/硬化性層を形成した。
【0100】
続いて、接着性/硬化性層の表面に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面を軽剥離型シリコーン樹脂で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,SP−PET38GS,厚さ:38μm)の剥離処理面を重ね、さらに、上記重剥離型剥離シートの剥離処理面と反対側の面に、ポリエチレン基材にエチレン−酢酸ビニル系感圧接着剤層を設けた保護シート(サンエー化研株式会社製,PAC2−70,厚さ:70μm)を貼付し、幅150mm、長さ100mの長尺の積層体を作製した。
【0101】
次に、打ち抜き装置(マークアンディー社製,マークアンディー910)を用いて、図1(b)に示すように、保護シートを幅方向両側部の保護材部分(幅:10mm)と幅方向中央部の残部とに分割し、残部は図1(c)に示すように剥離除去した。
【0102】
そして、上記打ち抜き装置を用いて、図1(d)に示すように、基材および接着性/硬化性層(接着シート)を、目的シートとしての円盤状の円盤部(直径:120mm,500枚)と波状の枕部と残部とに分割するとともに、円盤部の中心部を打ち抜いてセンターホール部を形成し、残部は図1(e)に示すように剥離除去した。
【0103】
得られた積層シートを18m/minの速さで長手方向に移動させながら、積層シートの幅方向両縁部において端部から幅1mmの部分に、スポットUV照射装置(HOYA−SCHOTT社製,EXECURE3000)を使用して紫外線を照射し、その部分における接着性/硬化性層を硬化させた。紫外線は、積層シートの厚さ方向(表面側から裏面側)に照射し、その照射量は400mJ/cm2であった。
【0104】
なお、上記エネルギー線硬化性材料の硬化前の貯蔵弾性率(25℃)は7.42×104Paであり、硬化後の貯蔵弾性率(25℃)は1.62×109Paであった。また、上記積層シートにおいて、保護シートが存在する保護部の厚さは145μm、目的シートの厚さは75μmであった。
【0105】
上記のようにして製造した積層シート(図2,図3参照)を、初期の巻取張力12N、テーパー率50%として直径6インチのABS製巻芯に巻き取り、巻取体とした(図4参照)。
【0106】
〔実施例2〕
基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(幅:7.5mm,厚さ:25μm)に、アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製,M0003)を20μmの厚さになるよう塗布して粘着剤層を形成し、これを保護材用の粘着テープとした。
【0107】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤を塗布した剥離シート(リンテック株式会社製,SP−PET50C,厚さ:50μm)の剥離処理面に、実施例1で調製したエネルギー線硬化性材料の塗布剤を乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターによって塗布し、100℃で3分間乾燥させた。このようにして形成した接着性/硬化性層の上に、ポリカーボネートフィルム(帝人株式会社製,ピュアエースC110−75,厚さ:75μm)からなる基材を圧着し、幅150mm、長さ100mの長尺の積層体を作製した。
【0108】
次に、打ち抜き装置(マークアンディー社製,マークアンディー910)を用いて、図5(b)に示すように、基材および接着性/硬化性層(接着シート)を、円盤状の円盤部(直径:120mm,500枚)と波状の枕部と残部とに分割するとともに、円盤部の中心部を打ち抜いてセンターホール部を形成し、残部は図5(c)に示すように剥離除去した。
【0109】
そして、図5(d)に示すように、枕部の外側端部に保護材として上記粘着テープを貼付した後、得られた積層シートの幅方向両縁部に対して、実施例1と同様にして紫外線を照射した。ここで、この積層シートにおいて、保護材が存在する保護部の厚さは145μm、目的シートの厚さは100μmであった。
【0110】
上記のようにして製造した積層シート(図2,図3参照)を、実施例1と同様の巻取条件で巻芯に巻き取り、巻取体とした(図4参照)。
【0111】
〔実施例3〕
ポリエチレン基材にエチレン−酢酸ビニル系感圧接着剤層を設けた保護シート(サンエー化研株式会社製,PAC2−70,厚さ:70μm)を、基材としてのポリカーボネートフィルム(帝人株式会社製,ピュアエースC110−75,厚さ:75μm)の片面に貼付し、保護シート付基材を得た。
【0112】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤を塗布した剥離シート(リンテック株式会社製,SP−PET50C,厚さ:50μm)の剥離処理面に、実施例1で調製したエネルギー線硬化性材料の塗布剤を乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターによって塗布し、100℃で3分間乾燥させた。このようにして形成した接着性/硬化性層に、上記保護シート付基材のポリカーボネートフィルム側を圧着し、幅150mm、長さ100mの長尺の積層体を作製した。
【0113】
次に、打ち抜き装置(マークアンディー社製,マークアンディー910)を用いて、図7(e)に示すように、保護シートを幅方向両側部の保護材部分(幅:7mm)と幅方向中央部の残部とに分割し、残部は図7(f)に示すように剥離除去した。このようにして、基材の片面の幅方向両側部に、幅7mm、長さ100m、厚さ70μmの保護材を形成した。そして、得られた積層シートの幅方向両縁部に対して、実施例1と同様にして紫外線を照射した。ここで、この積層シートにおいて、保護シートが存在する保護部の厚さは170μm、目的シートの厚さは100μmであった。
【0114】
以上のようにして製造した幅150mm、長さ100mの長尺の積層シート(図8参照)を、実施例1と同様の巻取条件で巻芯に巻き取り、巻取体とした(図9参照)。
【0115】
〔実施例4〕
基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(幅:7.5mm,厚さ:25μm)に、アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製,M0003)を20μmの厚さになるよう塗布して粘着剤層を形成し、これを保護材用の粘着テープとした。
【0116】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤を塗布した剥離シート(リンテック株式会社製,SP−PET50C,厚さ:50μm)の剥離処理面に、実施例1で調製したエネルギー線硬化性材料の塗布剤を乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターによって塗布し、100℃で3分間乾燥させた。このようにして形成した接着性/硬化性層の上に、ポリカーボネートフィルム(帝人株式会社製,ピュアエースC110−75,厚さ:75μm)からなる基材を圧着し、幅150mm、長さ100mの長尺の積層体を作製した。
【0117】
そして、図10(d)に示すように、枕部の外側端部に保護材として上記粘着テープを貼付した後、得られた積層シートの幅方向両縁部に対して、実施例1と同様にして紫外線を照射した。ここで、この積層シートにおいて、保護材が存在する保護部の厚さは145μm、目的シートの厚さは100μmであった。
【0118】
上記のようにして製造した幅150mm、長さ100mの長尺の積層シート(図8参照)を、実施例1と同様の巻取条件で巻芯に巻き取り、巻取体とした(図9参照)。
【0119】
〔比較例1〜4〕
実施例1〜4において、紫外線を照射しない以外、実施例1〜4と同様にして積層シートを製造し、得られた積層シートを実施例1と同様の巻取条件で巻芯に巻き取り、巻取体とした。
【0120】
〔試験例〕
実施例1〜4および比較例1〜4において巻取体とした積層シートを24時間放置した後、ゴム製ロール(幅40mm,重さ2kg)を用いて、縦20mm、横20mm、厚さ12μm、重さ0.013gのアルミニウム箔を巻取体の側面に押圧し、巻取体の側面を下に向けてそのアルミニウム箔が自重で落下するか否かを確認した。
【0121】
その結果、実施例1〜4の積層シートではアルミニウム箔が落下し、接着性/硬化性層からのエネルギー線硬化性材料の染み出しがないことが確認された。それに対し、比較例1〜4の積層シートでは、アルミニウム箔は落下せずに巻取体の側面に付着しており、接着性/硬化性層からのエネルギー線硬化性材料の染み出しがみられた。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の積層シートおよびその製造方法は、巻取体としたときに、幅方向両縁部から接着性/硬化性層の接着性/硬化性材料が染み出し易い積層シートに好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図である。
【図2】同実施形態に係る積層シート製造方法の一工程を示す積層シートの平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る積層シートの斜視図である。
【図4】同実施形態に係る積層シートの巻取体の斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る積層シートの断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る積層シートの斜視図である。
【図9】同実施形態に係る積層シートの巻取体の斜視図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る積層シート製造方法を示す断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る積層シートの断面図である。
【符号の説明】
【0124】
1A,1B,1C,1D,1E,1F…積層シート
2A,2B,2C,2D,2E,2F…剥離シート
3A,3B,3C,3D,3E,3F…接着/硬化シート
31A,31B,31C,31D,31E,31F…接着性/硬化性層
32A,32B,32C,32D,32E,32F…基材
4A,4D…保護シート
41A,41B,41C,41D,41E,41F…保護材
5…エネルギー線スポット照射装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の剥離シートと、前記剥離シートの剥離処理面に積層された、少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分がエネルギー線硬化性材料からなる接着性/硬化性層と、前記接着性/硬化性層上に積層された基材とを備えた積層シートを作製し、
前記積層シートを巻き取る前に、前記接着性/硬化性層の幅方向両縁部に位置するエネルギー線硬化性材料を硬化させることを特徴とする積層シートの製造方法。
【請求項2】
任意の段階で、前記基材上における前記基材の幅方向両側部または前記剥離シートの裏面における前記剥離シートの幅方向両側部に保護材を設けることを特徴とする請求項1に記載の積層シートの製造方法。
【請求項3】
長尺の剥離シートの剥離面の幅方向中央部に、接着性/硬化性層と基材とを備えた所定の形状の目的シートが設けられ、前記剥離シートの剥離面または裏面の幅方向両側部に、接着性/硬化性層を有する保護部が設けられ、前記保護部における厚さが前記目的シートにおける厚さよりも厚く、前記保護部の接着性/硬化性層の少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分がエネルギー線硬化性材料によって形成された積層シートを作製し、
前記積層シートを巻き取る前に、前記積層シートの幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させることを特徴とする積層シートの製造方法。
【請求項4】
前記目的シートの接着性/硬化性層と、前記保護部の接着性/硬化性層とを、一工程で積層することを特徴とする請求項3に記載の積層シートの製造方法。
【請求項5】
前記保護部を基材と当該基材上に積層された保護材とから構成し、当該保護部の基材と、前記目的シートの基材とを、一工程で積層することを特徴とする請求項3または4に記載の積層シートの製造方法。
【請求項6】
保護シートを積層して前記保護シートを所定の形状にカットすることにより、前記保護材を形成することを特徴とする請求項2または5に記載の積層シートの製造方法。
【請求項7】
前記基材および前記接着性/硬化性層を所定の形状にカットして不要部を剥離除去し、所定の形状の目的シートを形成する工程を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層シートの製造方法。
【請求項8】
前記積層シートの厚さ方向にエネルギー線を照射することにより、前記エネルギー線硬化性材料を硬化させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層シートの製造方法。
【請求項9】
前記エネルギー線硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率が106Pa以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の積層シートの製造方法。
【請求項10】
長尺の剥離シートと、
前記剥離シートの剥離処理面に積層され、前記剥離シートの幅方向中央部が主使用部となっている接着性/硬化性層と、
前記接着性/硬化性層に積層された基材と、
前記基材上における前記基材の幅方向両側部または前記剥離シートの裏面における前記剥離シートの幅方向両側部に設けられた保護材とを備えており、
前記接着性/硬化性層において、少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分は、エネルギー線硬化性材料が硬化してなるものであることを特徴とする積層シート。
【請求項11】
長尺の剥離シートと、
前記剥離シートの剥離面の幅方向中央部に設けられた、接着性/硬化性層と基材とを備えた所定の形状の目的シートと、
前記剥離シートの剥離面または裏面の幅方向両側部に設けられた、接着性/硬化性層を有する保護部とを備えており、
前記保護部における厚さは前記目的シートにおける厚さよりも厚く、
前記保護部の接着性/硬化性層において、少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分は、エネルギー線硬化性材料が硬化してなるものであることを特徴とする積層シート。
【請求項12】
前記目的シートの接着性/硬化性層と、前記保護部の接着性/硬化性層とは、同一の材料から構成されていることを特徴とする請求項11に記載の積層シート。
【請求項13】
前記保護部は、前記目的シートの基材と同一の材料からなる基材と、当該基材上に積層された保護材とから構成されていることを特徴とする請求項11または12に記載の積層シート。
【請求項14】
前記硬化したエネルギー線硬化性材料の貯蔵弾性率が106Pa以上であることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の積層シート。
【請求項1】
長尺の剥離シートと、前記剥離シートの剥離処理面に積層された、少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分がエネルギー線硬化性材料からなる接着性/硬化性層と、前記接着性/硬化性層上に積層された基材とを備えた積層シートを作製し、
前記積層シートを巻き取る前に、前記接着性/硬化性層の幅方向両縁部に位置するエネルギー線硬化性材料を硬化させることを特徴とする積層シートの製造方法。
【請求項2】
任意の段階で、前記基材上における前記基材の幅方向両側部または前記剥離シートの裏面における前記剥離シートの幅方向両側部に保護材を設けることを特徴とする請求項1に記載の積層シートの製造方法。
【請求項3】
長尺の剥離シートの剥離面の幅方向中央部に、接着性/硬化性層と基材とを備えた所定の形状の目的シートが設けられ、前記剥離シートの剥離面または裏面の幅方向両側部に、接着性/硬化性層を有する保護部が設けられ、前記保護部における厚さが前記目的シートにおける厚さよりも厚く、前記保護部の接着性/硬化性層の少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分がエネルギー線硬化性材料によって形成された積層シートを作製し、
前記積層シートを巻き取る前に、前記積層シートの幅方向両縁部におけるエネルギー線硬化性材料を硬化させることを特徴とする積層シートの製造方法。
【請求項4】
前記目的シートの接着性/硬化性層と、前記保護部の接着性/硬化性層とを、一工程で積層することを特徴とする請求項3に記載の積層シートの製造方法。
【請求項5】
前記保護部を基材と当該基材上に積層された保護材とから構成し、当該保護部の基材と、前記目的シートの基材とを、一工程で積層することを特徴とする請求項3または4に記載の積層シートの製造方法。
【請求項6】
保護シートを積層して前記保護シートを所定の形状にカットすることにより、前記保護材を形成することを特徴とする請求項2または5に記載の積層シートの製造方法。
【請求項7】
前記基材および前記接着性/硬化性層を所定の形状にカットして不要部を剥離除去し、所定の形状の目的シートを形成する工程を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層シートの製造方法。
【請求項8】
前記積層シートの厚さ方向にエネルギー線を照射することにより、前記エネルギー線硬化性材料を硬化させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層シートの製造方法。
【請求項9】
前記エネルギー線硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率が106Pa以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の積層シートの製造方法。
【請求項10】
長尺の剥離シートと、
前記剥離シートの剥離処理面に積層され、前記剥離シートの幅方向中央部が主使用部となっている接着性/硬化性層と、
前記接着性/硬化性層に積層された基材と、
前記基材上における前記基材の幅方向両側部または前記剥離シートの裏面における前記剥離シートの幅方向両側部に設けられた保護材とを備えており、
前記接着性/硬化性層において、少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分は、エネルギー線硬化性材料が硬化してなるものであることを特徴とする積層シート。
【請求項11】
長尺の剥離シートと、
前記剥離シートの剥離面の幅方向中央部に設けられた、接着性/硬化性層と基材とを備えた所定の形状の目的シートと、
前記剥離シートの剥離面または裏面の幅方向両側部に設けられた、接着性/硬化性層を有する保護部とを備えており、
前記保護部における厚さは前記目的シートにおける厚さよりも厚く、
前記保護部の接着性/硬化性層において、少なくとも前記剥離シートの幅方向両縁部に位置する部分は、エネルギー線硬化性材料が硬化してなるものであることを特徴とする積層シート。
【請求項12】
前記目的シートの接着性/硬化性層と、前記保護部の接着性/硬化性層とは、同一の材料から構成されていることを特徴とする請求項11に記載の積層シート。
【請求項13】
前記保護部は、前記目的シートの基材と同一の材料からなる基材と、当該基材上に積層された保護材とから構成されていることを特徴とする請求項11または12に記載の積層シート。
【請求項14】
前記硬化したエネルギー線硬化性材料の貯蔵弾性率が106Pa以上であることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の積層シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−1253(P2006−1253A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182967(P2004−182967)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
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