説明

積層シート及び発泡積層シート

【課題】基材上に、発泡樹脂層及び光触媒層を順に形成した発泡積層シートであって、光触媒層側からエンボス加工を施した場合でも光触媒機能の低下が抑制されている発泡積層シート、並びに、当該発泡積層シートの製造に有用な積層シートを提供する。
【解決手段】基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層、(メタ)アクリレート基を有する電離放射線硬化型樹脂を含有する電離放射線硬化型樹脂層及び光触媒層が順に形成されていることを特徴とする積層シート、並びに、当該積層シートの発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得られる発泡積層シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート及び発泡積層シートに関する。前記発泡積層シートは、発泡樹脂層を有しており、発泡壁紙、各種装飾材等として有用である。また、前記積層シートは、前記発泡積層シートの発泡前の状態であり、いわゆる未発泡原反を意味する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅部材から生じるホルムアルデヒド等の有機ガスによるシックハウスの問題、ペット臭、生活臭等の問題への対策として、揮発性有機化合物(VOC)を分解する光触媒機能を有する建築用内装材のニーズが高まってきている。光触媒は、紫外光領域で触媒活性を発揮するものが多いが、建築用内装材に適用することを考慮し、室内の可視光でも触媒活性を発揮する光触媒の開発も進められてきている。
【0003】
光触媒機能を有する建築用内装材としては、例えば、壁材、天井材、床材等があるが、内装材として最も大きな面積を有する壁材として用いることがVOC分解のために有効と考えられており、光触媒機能を有する壁紙が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、シート状基材の表面に、光触媒を含有し、かつ活性酸素に対して安定な合成樹脂を主成分とするコーティング液を塗工し、コーティング層を形成してなる積層シートが開示されており(請求項2)、シート状基材として、紙類や布帛類の上に発泡合成樹脂層を形成したものが例示されている([0008]段落)。即ち、基材上に、発泡樹脂層及び光触媒層を順に積層した発泡積層シートが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のような従来の発泡積層シートには次のような問題がある。つまり、発泡積層シートにエンボス加工(エンボス版を用いた凹凸賦型)を施した場合に、光触媒層に含まれる光触媒粒子が基材側の発泡樹脂層に深く押し込まれて埋没し、光触媒機能が低下するという問題がある。
【0006】
従って、基材上に、発泡樹脂層及び光触媒層を順に形成した発泡積層シートであって、光触媒層側からエンボス加工を施した場合でも、光触媒機能の低下が抑制されている発泡積層シートの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-10802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、基材上に、発泡樹脂層及び光触媒層を順に形成した発泡積層シートであって、光触媒層側からエンボス加工を施した場合でも、光触媒機能の低下が抑制されている発泡積層シートを提供することを目的とする。また、当該発泡積層シートの製造に有用な、積層シート(未発泡原反)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、発泡剤含有樹脂層と光触媒層との間に特定の電離放射線硬化型樹脂層を形成した積層シート及び当該積層シートの発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得られる発泡積層シートによれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の積層シート及び発泡積層シートに関する。
1. 基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層、(メタ)アクリレート基を有する電離放射線硬化型樹脂を含有する電離放射線硬化型樹脂層及び光触媒層が順に形成されていることを特徴とする積層シート。
2. 前記発泡剤含有樹脂層は、電子線照射により樹脂架橋されている、上記項1に記載の積層シート。
3. 前記発泡剤含有樹脂層と前記電離放射線硬化型樹脂層との間に絵柄模様層を有する、上記項1又は2に記載の積層シート。
4. 前記発泡剤含有樹脂層は、その片面又は両面に非発泡樹脂層を有する、上記項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
5. 前記発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分がオレフィン系樹脂である、上記項1〜4のいずれかに記載の積層シート。
6. 前記基材は、繊維質シートである、上記項1〜5のいずれかに記載の積層シート。
7. 上記項1〜6のいずれかに記載の積層シートの前記発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得られる発泡積層シート。
8. 最表面層の上からエンボス加工が施されている、上記項7に記載の発泡積層シート。
9. 基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層、(メタ)アクリレート基を有する電離放射線硬化型樹脂を含有する電離放射線硬化型樹脂層及び光触媒層を順に形成した後、前記電離放射線硬化型樹脂層を硬化させ、次に前記発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより発泡樹脂層を得ることを特徴とする発泡積層シートの製造方法。
【0011】
以下、本発明の積層シート及び発泡積層シートについて詳細に説明する。
≪積層シート≫
本発明の積層シートは、基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層、(メタ)アクリレート基を有する電離放射線硬化型樹脂を含有する電離放射線硬化型樹脂層及び光触媒層が順に形成されていることを特徴とする。なお、上記(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0012】
上記特徴を有する本発明の積層シートは、発泡剤含有樹脂層と光触媒層との間に特定の電離放射線硬化型樹脂層が形成されている。そのため、積層シートの発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得られる発泡積層シートに対して、光触媒層側からエンボス加工(エンボス版を用いた凹凸賦型)を施した場合でも、光触媒層に含まれる光触媒粒子が基材側に深く押し込まれて埋没することが抑制されているため、エンボス加工後でも光触媒機能の低下が抑制されている。
【0013】
基材
基材としては限定されず、公知の繊維質シート(裏打紙)などが利用できる。
【0014】
具体的には、壁紙用一般紙(パルプ主体のシートを既知のサイズ剤でサイズ処理したもの);難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
【0015】
基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m2程度が好ましく、50〜120 g/m2程度がより好ましい。
【0016】
発泡剤含有樹脂層
本発明で用いる発泡剤含有樹脂層は、樹脂成分としてオレフィン系樹脂を含有することが好ましく、具体的には、エチレン系樹脂を含有することが好ましい。エチレン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)だけでなく、エチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体(以下、「エチレン共重合体」と略記する)が挙げられる。
【0017】
ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が広く使用できる。
【0018】
エチレン共重合体は融点及びMFRの観点で押出し製膜に適している。エチレン共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。これらのエチレン共重合体は単独又は2種以上を混合して使用できる。これらのエチレン共重合体の中でも特にエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体が好ましく、これらのいずれか1種と他の樹脂の1種以上とを併用する場合には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体の含有量は、それぞれ70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。
【0019】
また、エチレン共重合体は、エチレン以外のモノマーの含有量としては、5〜25重量%が好ましく、9〜20重量%がより好ましい。このような共重合比率を採用することにより、押出し製膜性がより高まる。具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルの共重合比率(VA量)としては9〜25重量%が好ましく、9〜20重量%がより好ましい。また、エチレン−メチルメタクリレート共重合体は、メチルメタクリレートの共重合比率(MMA量)としては5〜25重量%が好ましく、5〜15重量%がより好ましい。また、エチレン−メタクリル酸共重合体は、アクリル酸の共重合比率(MAA量)としては2〜15質量%が好ましく、5〜11質量%がより好ましい。
【0020】
本発明では、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分は、JIS K 6922に記載の190℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFR(メルトフローレート)が10〜25g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲内の場合には、発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する際の温度上昇が少なく、非発泡状態で製膜できるため、後に絵柄模様層を形成する場合には、平滑な面に印刷処理をすることができて柄抜け等が少ない。MFRが大きすぎる場合は、樹脂が軟らかすぎることにより、形成される発泡樹脂層の耐傷性が不十分となるおそれがある。
【0021】
発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物としては、例えば、上記樹脂成分、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤、発泡助剤、架橋助剤等を含む樹脂組成物を好適に使用できる。その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として使用できる。
【0022】
熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率の観点からは、7倍以上、好ましくは7〜10倍程度であり、熱分解型発泡剤は、樹脂成分100質量部に対して、1〜20質量部程度とすることが好ましい。
【0023】
発泡助剤は、金属酸化物及び/又は脂肪酸金属塩が好ましく、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を使用することができる。これらの発泡助剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.3〜10質量部程度が好ましく、1〜5質量部程度がより好ましい。
【0024】
なお、これらの発泡助剤とEMAAとADCA発泡剤とを組み合わせて用いる場合には、発泡工程において、EMAAのアクリル酸部と金属系発泡助剤の反応により、発泡助剤としての効果が損なわれるという問題がある。そのため、EMAAとADCA発泡剤とを組み合わせて用いる場合には、特開2009-197219号公報に説明されている通り、発泡助剤としてカルボン酸ヒドラジド化合物を用いることが好ましい。このとき、カルボン酸ヒドラジド化合物はADCA発泡剤1質量部に対して0.2〜1質量部程度用いることが好ましい。
【0025】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果、燃焼時発熱抑制効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0〜100質量部程度が好ましく、20〜70質量部程度がより好ましい。
【0026】
顔料については、無機顔料として、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。また、有機顔料として、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して10〜50質量部程度が好ましく、15〜30質量部程度がより好ましい。
【0027】
本発明では、発泡剤含有樹脂層は電子線照射により樹脂架橋されていてもよい。発泡剤含有樹脂層に電子線を照射する方法及び発泡させる方法としては、後記の製造方法に記載された方法に従って実施すればよい。なお、発泡剤含有樹脂層の厚さは40〜100μm程度が好ましく、発泡後の発泡樹脂層の厚さは300〜700μm程度が好ましい。
【0028】
非発泡樹脂層A及びB
発泡剤含有樹脂層は、その片面又は両面に非発泡樹脂層を有していてもよい。
【0029】
例えば、発泡剤含有樹脂層の裏面(基材が積層される面)には、基材との接着力を向上させる目的で非発泡樹脂層B(接着樹脂層)を有してもよい。
【0030】
接着樹脂層の樹脂成分としては、特に限定はないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。EVAは公知又は市販のものを使用することができる。特に、酢酸ビニル成分(VA成分)が10〜46質量%であるものが好ましく、15〜41質量%であるものがより好ましい。
【0031】
接着樹脂層の厚さは限定的ではないが、5〜50μm程度が好ましい。
【0032】
発泡剤含有樹脂層の上面には、主として発泡剤含有樹脂層を保護するとともに、発泡剤含有樹脂層が発泡する過程で生じるガス等の揮発成分による光触媒機能の低下を防止するために非発泡樹脂層Aを形成してもよい。
【0033】
非発泡樹脂層Aの樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、その中でもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0034】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)又は高密度ポリエチレン(HDPE))、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の樹脂単体、炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン(LLDPE))、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、アイオノマー等の少なくとも1種が挙げられる。
【0035】
非発泡樹脂層Aの厚さは限定的ではないが、5〜50μm程度が好ましい。
【0036】
本発明では、後記製造上の観点からも、基材上に非発泡樹脂層B、発泡剤含有樹脂層及非泡樹脂層Aが順に形成された態様が好ましい。
【0037】
電離放射線硬化型樹脂層
発泡剤含有樹脂層上(又は非発泡樹脂層A上)には、電離放射線硬化型樹脂層が形成されている。本発明では、特に電離放射線硬化型樹脂層として、(メタ)アクリレート基を有する電離放射線硬化型樹脂を含有するものを用いる。以下、本明細書において、「電離放射線硬化型樹脂層」は、略記した場合でも、(メタ)アクリレート基を有する電離放射線硬化型樹脂を含有する電離放射線硬化型樹脂層を意味する。なお、かかる電離放射線硬化型樹脂は紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂であり、紫外線又は電子線により架橋硬化する。
【0038】
(メタ)アクリレート基を有する電離放射線硬化型樹脂としては、当該基を有する重合性モノマー、オリゴマー及びプレポリマーから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。以下に、その代表例を記載する。
【0039】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1, 4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1, 6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート等が挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは単独又は2種以上で用いることができる。
【0040】
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、中でもラジカル重合性不飽和基を持つアクリレート系オリゴマーが好ましく、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮合によって得られる、両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0041】
更に、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基を有する疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合を有するシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー等がある。
【0042】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、官能基数の異なる2種を組み合せて用いることが好ましい。ここで、異なる2種の官能基数をM、N(但しM<N)と表記すると、官能基数Mのウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーと官能基数Nのウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーとの質量比は6:4〜0.5:9.5が好ましく、5:5〜1:9がより好ましい。官能基数M及びNは、2〜4の範囲が好ましく、M<Nであるため、官能基数MとNとの組合せは、2と3、2と4、及び3と4である。
【0043】
電離放射線硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して光重合用開始剤を0.1〜5質量部程度添加することが好ましい。光重合用開始剤としては特に限定されず、例えば、重合性モノマー又は重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2, 2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2, 2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4, 4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2, 4−ジメチルチオキサントン、2, 4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール等が挙げられる。また、これらと併用可能な光増感剤としては、例えば、p−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等が挙げられる。
【0044】
電離放射線硬化型樹脂には、必要に応じて熱可塑性樹脂を添加してもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂)、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン,α−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0045】
熱可塑性樹脂を添加する場合には、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を80:20〜20:80の比率(質量比)で含むことが好ましく、75:25〜20:80の比率(質量比)で含むことがより好ましい。80:20〜20:80の比率範囲で熱可塑性樹脂を含有することにより、柔軟性が得られ、加工性向上の効果が得られる。
【0046】
電離放射線硬化型樹脂層には、必要に応じて各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば、耐候性改善剤、光触媒層埋没抑制剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、カップリング剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。
【0047】
耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等を好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステル等が挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0048】
光触媒層埋没抑制剤としては、例えば、無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の10〜200%程度とする。これらを含有することにより、光触媒層の埋没をより効果的に抑制することができる。
【0049】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコール等が、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物等が用いられる。
【0050】
充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が用いられる。
【0051】
着色剤としては、例えば、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラック等の公知の着色用顔料等が用いられる。
【0052】
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
【0053】
電離放射線硬化型樹脂層の厚さは限定的ではないが、発泡積層シートに対して、光触媒層側からエンボス加工を施した場合に光触媒層に含まれる光触媒粒子が基材側への埋没を効果的に抑制する点では、0.1〜20μm程度が好ましく、0.1〜5μm程度がより好ましい。
【0054】
光触媒層
電離放射線硬化型樹脂層上には光触媒層が形成されている。この光触媒層は、有機ガスによるシックハウスの問題、ペット臭、生活臭等の問題に対して、原因物質を光触媒作用により分解する作用を有しており通常最表面層である。
【0055】
光触媒粒子としては限定的ではないが、発泡積層シートの室内での使用を考慮し、可視光線により光触媒作用を発揮するものが好ましい。具体的には、蛍光灯の光照射に対して光触媒作用を発揮するものが好ましく、特に波長約430〜830nmの光照射に対して光触媒作用を発揮するものが好ましい。
【0056】
光触媒粒子の具体例としては、例えば、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ce等の金属元素の1種又は2種以上の酸化物、窒化物、硫化物、酸窒化物、酸硫化物、窒弗化物、酸弗化物、酸窒弗化物等が挙げられる。これらの光触媒粒子の中でも、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタンが好ましく、可視光線又は蛍光灯の照射で効率よく触媒作用を発揮する点ではアナターゼ型酸化チタンが好ましい。
【0057】
光触媒粒子の平均一次粒子径は限定されないが、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、180nm以下が最も好ましい。また、その平均二次粒子径は15μm以下が好ましい。
【0058】
光触媒層は、光触媒粒子を保持するバインダーを通常含有する。ここで、バインダーとして樹脂組成物(有機バインダー)を使用すると、光触媒粒子が樹脂組成物に分散するか、樹脂によりコートされた状態で存在することになるため、光触媒粒子が十分に露出せず、光触媒作用が十分に発揮されない可能性がある。そのため、バインダーとしては無機バインダーを使用し、多孔質層中で光触媒粒子の表面を多く露出させることが好ましい。
【0059】
無機バインダーの具体例としては、アルコキシシラン類の縮合物、オルガノポリシロキサン、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、加水分解物、シリコンワニス等のシリカ化合物;リン酸亜鉛、重リン酸塩、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩;シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、セメント、石灰、セッコウ、ほうろう用フリット、グラスライニング用の上薬、プラスターなどの無機系バインダーを挙げることができる。
【0060】
光触媒層中の光触媒粒子の含有量は限定的ではないが、5〜95質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。
【0061】
光触媒層中のバインダーの含有量は限定的ではないが、1〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
【0062】
光触媒層の厚さは限定的ではないが、0.1〜10μm程度が好ましく、0.1〜5μm程度がより好ましい。また、塗布量(乾燥重量)に換算すると、0.2〜5g/m2の範囲が好ましい。
【0063】
絵柄模様層
発泡剤含有樹脂層上(又は非発泡樹脂層A上)と光触媒層との間には、必要に応じて絵柄模様層を形成してもよい。
【0064】
絵柄模様層は、発泡積層シートに意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、目的に応じて選択できる。
【0065】
絵柄模様層は、例えば、絵柄模様を印刷することで形成できる。印刷手法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用してもよい。
【0066】
着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
【0067】
結着材樹脂は、基材シートの種類に応じて設定できる。例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0068】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は混合物の状態で使用できる。
【0069】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0070】
プライマー層
発泡剤含有樹脂層上(又は非発泡樹脂層A上)と光触媒層との間には、必要に応じてプライマー層を形成してもよい。プライマー層を形成する位置は限定的ではないが、光触媒層の下面や、絵柄模様層を形成する場合には、絵柄模様層の下面に好適に形成できる。
【0071】
プライマー層に含有される樹脂としては、例えば、アクリル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等を使用することができるが、特にアクリル、塩素化ポリプロピレン等が望ましい。
【0072】
アクリルとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなるアクリル樹脂が挙げられる。
【0073】
ポリウレタンとはポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする組成物である。
【0074】
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が用いられる。
【0075】
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2−4トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4−4ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが用いられる。
【0076】
プライマー層の厚さは限定的ではないが、0.1〜10μm程度が好ましく、0.1〜5μm程度がより好ましい。
≪発泡積層シート≫
本発明の発泡積層シートは、上記積層シートの発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得られる。発泡時の加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
【0077】
本発明の発泡積層シートは、最表面層の上からエンボス加工が施されていてもよく、電離放射線硬化型樹脂が形成されていることにより、光触媒層側からエンボス加工(エンボス版を用いた凹凸賦型)を施した場合でも、光触媒層に含まれる光触媒粒子が基材側に深く押し込まれて埋没することが抑制されているため、エンボス加工後でも光触媒機能の低下が抑制されている。エンボス模様としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
≪発泡積層シートの製造方法≫
発泡積層シートの製造方法としては、例えば、基材及び発泡剤含有樹脂層上に絵柄模様層を形成後、更に電離放射線硬化型樹脂層及び光触媒層を形成して積層シートとし、次に熱処理して発泡剤含有樹脂層を発泡樹脂層にすることにより製造できる。なお、電離放射線硬化型樹脂層は一般に粘性を有しているため、光触媒層を形成する前に電離放射線硬化型樹脂層に電離放射線を照射して硬化させる必要がある。しかしながら、電離放射線硬化型樹脂の中でも粘性の抑えられた(いわゆるタックフリー)の電離放射線硬化型樹脂を用いる場合には、絵柄模様層、電離放射線硬化型樹脂層及び光触媒層の形成を一連の印刷工程により行うことができ、光触媒層の形成後に電離放射線を照射して電離放射線硬化型樹脂を硬化させることができる。つまり、タックフリーの電離放射線硬化型樹脂を用いる場合には、発泡積層シートの製造工程数を減らすことができる点で好ましい。
【0078】
即ち、タックフリーの電離放射線硬化型樹脂を用いる場合には、基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層、電離放射線硬化型樹脂層及び光触媒層を順に形成した後、前記電離放射線硬化型樹脂層を硬化させ、次に前記発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより発泡樹脂層を得ることを特徴とする製造工程により、簡便に発泡積層シートを製造できる。なお、一連の印刷工程により発泡剤含有樹脂層と電離放射線硬化型樹脂層との間に絵柄模様層を形成しても良いことは前記の通りである。
【0079】
上記タックフリーの電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、重量平均分子量が7000〜200000であり、ガラス転移温度が40℃以上である、(メタ)アクリレート基を有する電離放射線硬化型樹脂が挙げられる。
【0080】
発泡剤含有樹脂層がその片面又は両面に非発泡樹脂層を有する場合には、Tダイ押出し機による同時押出し製膜が好適である。例えば、両面に非発泡樹脂層を有する場合には、3つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより3層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。
【0081】
なお、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合であって、発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する場合には、押出し機の押出し口(いわゆるダイス)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これが発泡剤含有樹脂層表面の異物となり易い。そのため、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合には、上記のように3層同時押出し製膜することが好ましい。即ち、発泡剤含有樹脂層を非発泡樹脂層によって挟み込んだ態様で同時押出し製膜することにより、前記目やにの発生を抑制することができる。
【0082】
発泡剤含有樹脂層を製膜後は、電子線照射を行ってもよい。これにより樹脂成分を架橋して発泡樹脂層の表面強度、発泡特性等を調整することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましく、175〜200kV程度がより好ましい。照射量は、10〜100kGy程度が好ましく、10〜50kGy程度がより好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
【0083】
発泡剤含有樹脂層上には、必要に応じて、絵柄模様層及びプライマー層を任意の順序で形成した後、電離放射線硬化型樹脂層及び光触媒層を形成する。ここで、プライマー層は電離放射線硬化型樹脂層と光触媒層との間に形成してもよい。これらの各層は、印刷、塗布などのコーティング、押出し製膜等を組み合わせることにより積層することができる。印刷、塗布等のコーティングは常法に従って行うことができる。
【0084】
電離放射線硬化型樹脂層を架橋硬化する電離放射線の照射条件については、例えば、電子線を用いる場合のエネルギーは、50〜300kV程度が好ましく、150〜250kV程度がより好ましい。照射量は、5〜300kGy程度が好ましく、10〜100Gy程度がより好ましい。また、紫外線を用いる場合には波長190〜380nmの紫外線を含むものを照射する。
【0085】
次いで、発泡剤含有樹脂層を加熱することにより発泡樹脂層を形成する。加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
【発明の効果】
【0086】
本発明の積層シートは、発泡剤含有樹脂層と光触媒層との間に特定の電離放射線硬化型樹脂層が形成されている。そのため、積層シートの発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得られる発泡積層シートに対して、光触媒層側からエンボス加工(エンボス版を用いた凹凸賦型)を施した場合でも、光触媒層に含まれる光触媒粒子が基材側に深く押し込まれて埋没することが抑制されているため、エンボス加工後でも光触媒機能の低下が抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の積層シートの層構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0089】
実施例1
公知のTダイ押出機を用いて、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層Bの順に、各層の厚みが15μm/100μm/10μmになるように製膜して3層からなる積層体を得た。各層の形成に用いた樹脂又は樹脂組成物は以下の通りである。
(a)非発泡樹脂層A及び非発泡樹脂層Bに用いた樹脂:
・エチレン−酢酸ビニル系共重合体(住友化学(株)製、商品名:スミテートCV5053)、100質量部
(b)発泡剤含有樹脂層に用いた樹脂組成物:
・エチレン−酢酸ビニル系共重合体(住友化学(株)製、商品名:スミテートCV5053)、100質量部
・発泡剤(永和化成工業(株)製、商品名:ADCA#3)、4質量部
・炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名:ホワイトンH)、30質量部
・二酸化チタン(顔料)(デュポン(株)製、商品名:タイピュアR-108)、20質量部
・光安定剤((株)ADEKA製、商品名:OF-101)、1質量部
・架橋剤(JSR(株)製、商品名:オブスターJUA-702)、1質量部
次に、前記3層からなる積層体の非発泡層樹脂B面に裏打紙(米秤量60g/m2、興人(株)製、WK-FKKD)を積層して積層シートを得た。次いで、グラビア印刷により、非発泡樹脂層A面に水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)を用いて布目模様を印刷して絵柄層を形成し、該絵柄層の上に下記組成の電離放射線硬化型樹脂組成物を塗工量2.0g/m2で、グラビアダイレクトコーター法で電離放射線硬化型樹脂層を形成した。なお、電離放射線硬化型樹脂組成物を塗工後、加速電圧200kV、照射線量30kGyの電子線を照射した。
(電離放射線硬化型樹脂組成物)
・6官能ウレタンアクリレートオリゴマー:80質量部
・3官能ウレタンアクリレートオリゴマー:20質量部
・シリカ(平均粒径約3〜4μm):8質量部
・耐候剤:1質量部
電離放射線硬化型樹脂層上に可視光型光触媒コーティング液(住友化学(株)製、商品名:TC-4115)を乾燥後の重量が1μmとなるように塗工乾燥し、光触媒層を形成した。
【0090】
その後、230℃の加熱発熱炉内で、発泡剤含有樹脂層を発泡させ発泡樹脂層を形成後、冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する発泡積層シートを作製した。
【0091】
実施例2
電離放射線硬化型樹脂組成物中のシリカを0質量部とした以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを作製した。
【0092】
実施例3
電離放射線硬化型樹脂組成物中のウレタンアクリレートオリゴマーの組成を、
・3官能ウレタンアクリレートオリゴマー:70質量部
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマー:30質量部
とした以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを作製した。
【0093】
実施例4
電離放射線硬化型樹脂組成物中のウレタンアクリレートオリゴマー組成を、
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマー:60質量部
・ポリメタクリル酸メチル(熱可塑性樹脂):30質量部
とした以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを作製した。
【0094】
実施例5
電離放射線硬化型樹脂組成物中のウレタンアクリレートオリゴマーの組成を、
・6官能ウレタンアクリレートオリゴマー:100質量部
とし、光触媒層を形成した後に加速電圧200kV、照射線量30kGyの電子線を照射した以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを作製した。
【0095】
実施例6
非発泡樹脂層AにLDPE「ペトロセン202、東ソー製」を用いた以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを作製した。
【0096】
実施例7
非発泡樹脂層Aを、LDPE「ペトロセン202、東ソー製」により形成するとともに、発泡剤含有樹脂層を、LDPE「ぺトロセン208、東ソー製」100質量部、炭酸カルシウム「ホワイトンH、白石工業製」30質量部、着色剤「タイピュアR350、デュポン製」20質量部、発泡剤「ビニホールAC♯3、永和化成工業製」5質量部、発泡助剤「アデカスタブOF-010、ADEKA製」5質量部、架橋助剤「オプスターJUA702 JSR製」1質量部により形成した以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを作製した。
【0097】
比較例1
実施例1と同様にして積層シートを得た。次に、積層シートに対して加速電圧200kV、照射線量30kGyの電子線を照射した。次いで、グラビア印刷により、非発泡樹脂層A面に水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)を用いて布目模様を印刷して絵柄層を形成した。次いで、絵柄層の上に可視光型光触媒コーティング液(住友化学(株)製、商品名:TC-4115)を乾燥後の重量が1μmとなるように塗工乾燥し、光触媒層を形成した。
【0098】
その後、230℃の加熱発熱炉内で、発泡剤含有樹脂層を発泡させ発泡樹脂層を形成後、冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する発泡積層シートを作製した。
【0099】
比較例2
実施例1と同様にして3層からなる積層体を得た。次に、3層からなる積層体に対して加速電圧200kV、照射線量30kGyの電子線を照射した。次いで、グラビア印刷により、非発泡樹脂層A面に水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)を用いて布目模様を印刷して絵柄層を形成した。該絵柄層の上に下記組成のウレタン系樹脂組成物を塗工量2.0g/m2で、グラビアダイレクトコーター法で塗工した。
【0100】
ウレタン系樹脂組成物
・ウレタンアクリル共重合体樹脂:100質量部
・シリカ(平均粒径約3〜4μm):10質量部
ウレタン系樹脂層の上に可視光型光触媒コーティング液(住友化学(株)製、商品名:TC-4115)を乾燥後の重量が1μmとなるように塗工乾燥し、光触媒層を形成した。
【0101】
その後、230℃の加熱発熱炉内で、発泡剤含有樹脂層を発泡させ発泡樹脂層を形成後、冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する発泡積層シートを作製した。
【0102】
試験例1
実施例及び比較例で得られた壁紙の光触媒活性及び耐汚染性を調べた。各試験方法及び評価方法は、下記の通りである。
≪光触媒活性≫
試験片(10cm×10cm)をブラックライト1.5mW/cm2で4時間初期化処理を施した後、内容量5リットル(L)のテドラーバック内に挿入した。99.5%アセトアルデヒド液と合成空気〔(窒素:酸素)容積比:4/1、RH50%〕を用いてアセトアルデヒド濃度20ppmのガスを調整し、テドラーバック内に1リットル(L)送り込んだ。
【0103】
その後、蛍光灯6000 lxを照射して、アセトアルデヒドの分解試験を実施した。テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度の経時変化はガスクロマトクラフィーにより測定した。評価は、6Hrの時点で濃度が5ppm以下で「4」、10ppm以下なら「3」、15ppm以下なら「2」、15ppmを超える場合は「1」とし、「2」以上を光触媒活性ありと評価した。
≪耐汚染性≫
汚染物質(中性洗剤、醤油、コーヒー、クレヨン、水性ペン)をサンプル上に乗せたガーゼに各々滴下、または直に線を描き、24時間後に水及び中性洗剤を用いて拭き取った。目視評価にて。拭き取り不可のものがある場合は「×」、拭き取り後の外観変化が軽微である場合は「△」、拭き取り可能であれば「○」と評価した。
【0104】
各試験の評価結果を下記表1に示す。
【0105】
【表1】

【符号の説明】
【0106】
1. 基材
2. 非発泡樹脂層B
3. 発泡剤含有樹脂層
4. 非発泡樹脂層A
5. 絵柄模様層
6. 電離放射線硬化型樹脂層
7. 光触媒層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層、(メタ)アクリレート基を有する電離放射線硬化型樹脂を含有する電離放射線硬化型樹脂層及び光触媒層が順に形成されていることを特徴とする積層シート。
【請求項2】
前記発泡剤含有樹脂層は、電子線照射により樹脂架橋されている、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記発泡剤含有樹脂層と前記電離放射線硬化型樹脂層との間に絵柄模様層を有する、請求項1又は2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記発泡剤含有樹脂層は、その片面又は両面に非発泡樹脂層を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
【請求項5】
前記発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分がオレフィン系樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層シート。
【請求項6】
前記基材は、繊維質シートである、請求項1〜5のいずれかに記載の積層シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の積層シートの前記発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得られる発泡積層シート。
【請求項8】
最表面層の上からエンボス加工が施されている、請求項7に記載の発泡積層シート。
【請求項9】
基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層、(メタ)アクリレート基を有する電離放射線硬化型樹脂を含有する電離放射線硬化型樹脂層及び光触媒層を順に形成した後、前記電離放射線硬化型樹脂層を硬化させ、次に前記発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより発泡樹脂層を得ることを特徴とする発泡積層シートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−52544(P2013−52544A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190769(P2011−190769)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】