説明

積層シート状製剤

【課題】
口溶け性に優れ、嚥下が容易であり、かつ塩基性薬物の苦味が抑制された積層シート状製剤を提供する。
【解決手段】
塩基性薬物(A)、崩壊剤(B1)、及び非イオン性水溶性高分子(C)を含有する薬物含有層と、塩基性基含有化合物(d1)及び/又はアニオン性高分子(d2)を含むマスキング剤(D)、及び崩壊剤(B2)を含有する被覆層と、を有することを特徴とする積層シート状製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口溶け性に優れ、嚥下が容易であり、かつ塩基性薬物の苦味が抑制された積層シート状製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品や医薬品等の包装材や担体等として可食性フィルムが用いられるようになってきている。例えば、香料等を含有させた口中清涼フィルムや消臭成分等を含有させた口臭予防フィルムとして可食性フィルムが使用されている。また、医薬活性成分を含有させたフィルム状製剤についても開発が行われている。
【0003】
従来、可食性フィルムとしてオブラートが知られている。これは、α化デンプンを薄膜状にしたものであり、薬を服用する際における補助製品として使用されているものである。また、このα化デンプンを利用して、袋状の容器として食品や医薬品を包装することが特許文献1に開示されている。さらに、セルロース系の高分子物質等を用いた速溶性フィルム状製剤が特許文献2に開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の可食性フィルムで嚥下物を包みこんだものを服用した場合においては、口腔内において可食性フィルムが崩壊するまでに時間を要し、口腔内が粘ついて不快感を与える場合があった。
【0005】
この問題を解決するフィルムとして、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する水溶性フィルムの内部に、水溶性微粒子が分散状態で存在する可食性フィルムが特許文献3に開示されている。当該フィルムは、口腔内崩壊時間が短く、良好な口溶け性を有するものであるが、特許文献3には、薬物等に起因する苦味を抑制する方法について記載されていない。
【0006】
一般に、口腔内崩壊時間が短い速溶性フィルムを食品や医薬品等の包装材や担体等として使用する場合、味覚成分が口腔内で溶出しやすくなる。このため、速溶性フィルムを、苦味を有する薬物の包装材や担体として使用すると、当該薬物に起因する苦味を強く感じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平4−12217号公報
【特許文献2】特開2004−43450号公報
【特許文献3】特開2010−158173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、口溶け性に優れ、嚥下が容易であり、かつ、塩基性薬物の苦味が抑制された積層シート状製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、塩基性薬物(A)、崩壊剤(B1)、及び非イオン性水溶性高分子(C)を含有する薬物含有層と、塩基性基含有化合物(d1)及び/又はアニオン性高分子(d2)を含むマスキング剤(D)、並びに、崩壊剤(B2)を含有する被覆層とを有する積層シート状製剤は、口溶け性に優れ、嚥下が容易であり、かつ塩基性薬物の苦味が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明によれば、下記〔1〕〜〔7〕の積層シート状製剤が提供される。
〔1〕塩基性薬物(A)、崩壊剤(B1)、及び非イオン性水溶性高分子(C)を含有する薬物含有層と、
塩基性基含有化合物(d1)及び/又はアニオン性高分子(d2)を含むマスキング剤(D)、並びに、崩壊剤(B2)を含有する被覆層と、
を有することを特徴とする積層シート状製剤。
〔2〕前記塩基性基含有化合物(d1)として、アミノ酸及び/又はアミノ糖を含有する〔1〕に記載の積層シート状製剤。
〔3〕前記アニオン性高分子(d2)として、カラギーナン及び/又はアルギン酸を含有する〔1〕又は〔2〕に記載の積層シート状製剤。
〔4〕前記マスキング剤(D)が、さらに、高甘味度甘味料(d3)を含有する〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の積層シート状製剤。
〔5〕前記崩壊剤(B1)及び/又は崩壊剤(B2)として、酵素変性デキストリン及び/又はマンニトールを含有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の積層シート状製剤。
〔6〕前記非イオン性水溶性高分子(C)として、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の積層シート状製剤。
〔7〕薬物含有層全体に対して、塩基性薬物(A)の含有量が5〜70質量%、崩壊剤(B1)の含有量が5〜70質量%、非イオン性水溶性高分子(C)の含有量が25〜60質量%である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の積層シート状製剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層シート状製剤は、口溶け性に優れ、嚥下が容易であり、服用に際して口腔内が粘ついて不快感を与えることがない。さらに、塩基性薬物の苦味が抑制されるため、快適に服用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の積層シート状製剤の層構成断面図である。
【図2】本発明の積層シート状製剤を製造する工程断面図である。
【図3】本発明の積層シート状製剤を製造する工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の積層シート状製剤について説明する。
本発明の積層シート状製剤は、
(i)塩基性薬物(A)、崩壊剤(B1)、及び非イオン性水溶性高分子(C)を含有する薬物含有層と、
(ii)塩基性基含有化合物(d1)及び/又はアニオン性高分子(d2)を含むマスキング剤(D)、並びに崩壊剤(B2)を含有する被覆層と、
の少なくとも2種の層を有することを特徴とする。
なお、本明細書において、「〜及び/又は〜」の記載は、「〜及び〜」又は「〜若しくは〜」の意味で用いるものとする。
【0014】
(i)薬物含有層
本発明の積層シート状製剤における薬物含有層は、塩基性薬物(A)、崩壊剤(B1)、及び非イオン性水溶性高分子(C)を含有する。
【0015】
〈塩基性薬物(A)〉
本発明において、「塩基性薬物」とは、遊離体が塩基性を示す化合物又はその塩であって、薬効を有するものをいう。したがって、塩基性薬物(A)には、塩を形成したときには塩基性を示さないものも含まれる。
【0016】
塩基性薬物(A)は、1又は2以上の塩基性基を有する。塩基性基としては、例えば、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、及び塩基性窒素含有複素環基等が挙げられる。塩基性薬物(A)は、これらの塩基性基を一種又は二種以上含有してもよい。
【0017】
本発明で用いる塩基性薬物(A)は上記性質を有するものであれば特に限定はなく、従来から用いられている苦味を呈する薬物が挙げられる。
塩基性薬物(A)の具体例としては、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、アムロジピンベシル酸塩、塩酸セフォチアムヘキセチル、塩酸セフキャネルダロキセート、塩酸レナンピシリン、塩酸バカンピシリン、塩酸タランピシリン、塩化ベルベリン、ジギトキシン、スルピリン、塩酸アゼラスチン、塩酸エチレフリン、塩酸ジルチアゼム、塩酸プロプラノロール、塩酸プロメタジン、塩酸パパベリン、塩酸チクロピジン、アミノフィリン、フェノバルビタール、パントテン酸カルシウム、塩酸ドネベジル、塩酸アミノグアニジン、アルカロイド類等が挙げられる。
塩基性薬物(A)は、薬効を妨げない限り、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
塩基性薬物(A)の含有量は、薬物含有層全体に対して、5〜70質量%含有することが好ましい。
【0018】
〈崩壊剤(B1)〉
本発明の積層シート状製剤における薬物含有層は崩壊剤(B1)を含有する。
崩壊剤(B1)としては、常温(23℃)において固体の水溶性物質であれば、特に制限はないが、後述するように、崩壊剤(B1)が分散状態で存在する薬物含有層を効率よく形成する観点から、脂肪族アルコール系溶媒に難溶性又は不溶性であるものが好ましい。
また、崩壊剤(B1)としては、その5質量%水溶液の37℃における粘度が、10mPa・s以下であるものが好ましく、5mPa・s以下であるものがより好ましい。
これにより、口溶け性をより良好にすることができる。
なお、本明細書において粘度は、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド形回転粘度計)に準拠して測定されたものである(以下にて同じ。)。
【0019】
崩壊剤(B1)を構成する材料としては、例えば、酵素変性デキストリン(マルトデキストリン)、D−マンニトール、D−ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、デオキシリトール、マルチトール、ラクトース、ラクチトール等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、口溶け性に優れ、後味が良いことから、酵素変性デキストリン及び/又はマンニトールが好ましい。
【0020】
崩壊剤(B1)は、薬物含有層中で、溶解(均一に存在)していてもよいし、分散状態で存在していてもよいが、口溶け性が格別に良くなることから、分散状態で存在しているのが好ましい。ここで、「分散状態で存在」とは、薬物含有層の内部に崩壊剤(B1)が微粒子状で存在することを意味する。
水溶性微粒子として存在している場合、崩壊剤(B1)の平均粒径は、コールカウンター法による測定で、通常1〜300μm、好ましくは5〜50μmである。
【0021】
崩壊剤(B1)の含有量は、薬物含有層全体に対して、通常5〜70質量%、好ましくは20〜60質量%である。このような範囲で崩壊剤(B1)を用いることにより、口溶け性に優れる積層シート状製剤を得ることができる。
一般的に、崩壊剤(B1)の添加量を多くすれば、口腔内における積層シート状製剤の崩壊時間を短くでき、崩壊剤(B1)の添加量を少なくすれば、口腔内における積層シート状製剤の崩壊時間を長くすることができる。
【0022】
〈非イオン性水溶性高分子(C)〉
本発明の積層シート状製剤における薬物含有層は、さらに、非イオン性水溶性高分子(C)を含有する。
非イオン性水溶性高分子(C)としては、非イオン性で水溶性の高分子であれば特に制限はないが、後述する脂肪族アルコール系溶媒に易溶性であるものが好ましい。
また、非イオン性水溶性高分子(C)としては、その5質量%水溶液の37℃における粘度が、1,000〜100,000mPa・sであるものが好ましい。
これにより、薬物含有層のフィルム強度を十分に保ちつつ良好な口溶け性を得ることができる。
【0023】
非イオン性水溶性高分子(C)の具体例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、ローカストビーンガム、α化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
【0024】
非イオン性水溶性高分子(C)の含有量は、薬物含有層全体に対して、25〜60質量%であるのが好ましい。非イオン性水溶性高分子(C)の含有量をこのような範囲にすることにより、薄いシート状の薬物含有層であっても取り扱い時に破れたりしない十分な強度を持たせることができる。
【0025】
前記薬物含有層は、上記成分の他、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤を添加することにより、薬物含有層の口溶け性及びヒートシール性をさらに向上させることができる。
用いる可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール、トリアセチレン、ポリソルベート80等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
薬物含有層が可塑剤を含む場合、その含有量は、薬物含有層全体に対して、1〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。
【0026】
また、薬物含有層は、前記可塑剤以外に、本発明の目的を阻害しない範囲で、増量剤、香料、着色剤、湿潤剤等のその他の成分を含有していてもよい。これらの成分の配合量は、薬物含有層全体に対して、通常0質量%超10質量%以下である。
【0027】
(ii)被覆層
本発明の積層シート状製剤は、前記薬物含有層に加えて被覆層を有する。
被覆層は、マスキング剤(D)及び崩壊剤(B2)を含有する層である。
【0028】
〈マスキング剤(D)〉
マスキング剤(D)は、塩基性基含有化合物(d1)及び/又はアニオン性高分子(d2)を含む。マスキング剤(D)は、前記塩基性薬物(A)の苦味を抑制するために添加される。
【0029】
塩基性基含有化合物(d1)は、薬学的に許容されるものであれば特に制限なく使用でき、例えば、1又は2以上の塩基性基を含有する有機化合物、又は水に溶解した時に塩基性を呈する無機化合物が挙げられる。
【0030】
塩基性基含有化合物(d1)が塩基性基含有有機化合物の場合、通常、分子量が30〜400、好ましくは40〜300の化合物が好ましい。塩基性基としては、例えば、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、塩基性窒素含有複素環基、水酸基、炭酸基(CO)、炭酸水素基(HCO)等が挙げられる。塩基性基含有有機化合物は、これらの塩基性基を一種又は二種以上含有してもよい。
【0031】
このような塩基性基含有有機化合物の好ましい具体例としては、例えば、アミノ酸やアミノ糖が挙げられる。
アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、シスチン、システイン、アセチルシステイン、グルタミン酸、グルタミン酸エチルアミド、グルタミン酸グルコース、グルタミン、グルタチオン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ε−アミノカプロン酸、γ‐アミノ酪酸、グリシン、グリシルグリシン、メチオニン、カルニチン及びスレオニン等が挙げられる。
アミノ糖としては、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン及びメグルミン等が挙げられる。
【0032】
塩基性基含有化合物(d1)が無機化合物の場合、分子量は特に制限はなく、例えば、水酸化物や炭酸水素塩、炭酸塩等が挙げられる。
このような無機化合物の好ましい具体例としては、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
本発明の積層シート状製剤においては、塩基性基含有化合物(d1)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、塩基性基含有化合物(d1)として、アミノ酸及び/又はアミノ糖を含有することが好ましく、アルギニン及び/又はメグルミンを含有することがより好ましい。
【0034】
本発明においては、塩基性基含有化合物(d1)を使用することで、口溶け性を低下させることなく苦味を抑制することができる。
【0035】
アニオン性高分子(d2)は、1又は2以上のアニオン性基を含有する高分子(その塩も含む)であり、5質量%水溶液の37℃における粘度が、1000〜100000mPa・sのものが好ましく、1000〜10000mPa・sのものがより好ましい。
これにより、塩基性薬物(A)をアニオン性高分子中に効率よく取り込むことができ、良好なマスキング効果を発揮させることができる。
【0036】
アニオン性基とは、酸性基や、酸性基が脱プロトン化した基をいう。
酸性基としては、硫酸基、カルボキシル基、リン酸基等が挙げられる。
硫酸基を有するアニオン性高分子としては、例えば、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸等が挙げられる。
カルボキシル基を有するアニオン性高分子としては、例えば、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ジェランガム、キサンタンガム、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。
【0037】
本発明の積層シート状製剤においては、アニオン性高分子(d2)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アニオン性高分子(d2)として、硫酸基を有するアニオン性高分子及び/又はカルボキシル基を有するアニオン性高分子を含有することが好ましく、カラギーナン及び/又はアルギン酸を含有することがより好ましい。
【0038】
本発明の積層シート状製剤において、マスキング剤(D)は、上記(d1)、(d2)のいずれか一方を用いるものであっても、両者を併用するものであってもよい。但し、(d1)のみを使用する場合は、口溶け性や口腔内崩壊時間の面では優れるものの、十分なマスキング効果が得られにくい。また、(d2)のみを使用する場合は、良好なマスキング効果が得られる場合があるが、口溶け性を低下させる原因になる。そのため、(d2)を使用する場合には、そのマスキング効果に優れ、かつ、口溶け性においても優れる積層シート状製剤が得る観点から、(d1)を併用するのが好ましい。(d2)を使用する場合、塩基性基含有化合物(d1)とアニオン性高分子(d2)の質量比は、(d1)/(d2)=60/40〜90/10であることが好ましく、65/35〜85/15であることがより好ましい。
【0039】
また、前記マスキング剤(D)は、上記塩基性基含有化合物(d1)やアニオン性高分子(d2)以外に、マスキング効果を有するその他の化合物を含有してもよい。
マスキング効果を有するその他の化合物としては、例えば、矯味剤が挙げられる。矯味剤としては、高甘味度甘味料;グリチルリチン酸、白糖、果糖、マンニトール等の甘味料;クエン酸、酒石酸、フマル酸等の酸味料;等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、より優れたマスキング効果を得る観点から、前記マスキング剤(D)は、高甘味度甘味料(d3)を含むことが好ましい。
高甘味度甘味料(d3)は、砂糖の100倍以上の甘味度を有するものであれば特に限定されない。
高甘味度甘味料(d3)としては、例えば、アセスルファムカリウム(甘味度:砂糖の約200倍)、サッカリンナトリウム(甘味度:砂糖の約400倍)、ステビア抽出物(甘味度:砂糖の約300倍)、アスパルテーム(甘味度:砂糖の約200倍)、スクラロース(甘味度:砂糖の約600倍)、ネオテーム(甘味度:砂糖の約7000〜13000倍)及びタウマチン(甘味度:砂糖の約3000〜5000倍)等が挙げられる。
高甘味度甘味料(d3)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
マスキング剤(D)の使用量は、被覆層全体に対して、1〜50質量%であることが好ましい。
また、塩基性基含有化合物(d1)及び/又はアニオン性高分子(d2)の総使用量は、マスキング剤(D)全体に対して、70〜100質量%であることが好ましく、特に、高甘味度甘味料(d3)を含有する場合は、(d1)及び/又は(d2)の総使用量は、70〜99.9質量%であることが好ましく、高甘味度甘味料(d3)の含有量は、0.1〜30質量%であることが好ましい。
これにより、被覆層のフィルム強度を十分に保ちつつ良好なマスキング効果を得ることができる。
【0042】
〈崩壊剤(B2)〉
被覆層は、さらに、崩壊剤(B2)を含有する。
崩壊剤(B2)としては、前記崩壊剤(B1)と同様のものが挙げられる。崩壊剤(B2)と崩壊剤(B1)は、同一であっても相異なっていてもよい。
崩壊剤(B2)の使用量は、被覆層全体に対して、通常5〜70質量%、好ましくは、5〜40質量%である。
これにより、被覆層のフィルム強度を十分に保ちつつ良好な口溶け性を得ることができる。
一般的に、崩壊剤(B2)の添加量を多くすれば、口腔内における積層シート状製剤の崩壊時間を短くでき、崩壊剤(B2)の添加量を少なくすれば、口腔内における積層シート状製剤の崩壊時間を長くすることができる。
【0043】
崩壊剤(B2)は、被覆層中で、溶解(均一に存在)していてもよいし、分散状態で存在していてもよいが、口溶け性が格別に良くなることから、分散状態で存在しているのが好ましい。ここで、「分散状態で存在」とは、薬物含有層の内部に崩壊剤(B2)が微粒子上で存在することを意味する。
水溶性微粒子として存在している場合、崩壊剤(B2)の平均粒径は、コールカウンター法による測定で、通常1〜300μm、好ましくは5〜50μmである。
【0044】
被覆層は、上記マスキング剤(D)、崩壊剤(B2)の他、非イオン性水溶性高分子を含有していてもよい。用いる非イオン性水溶性高分子としては、前記非イオン性水溶性高分子(C)と同様のものが挙げられる。
非イオン性水溶性高分子を用いる場合、その含有量は、被覆層全体の25〜60質量%であるのが好ましい。
これにより、取扱い性が良好なフィルム強度を得ることが出来る。
【0045】
被覆層は、上記成分の他、さらに、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤を添加することにより、被覆層の口溶け性及びヒートシール性をさらに向上させることができる。
用いる可塑剤としては、前記薬物含有層に含有してもよいものとして例示したのと同様のものが挙げられる。
被覆層が可塑剤を含む場合、その含有量は、被覆層全体に対して、1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
これにより、被覆層のフィルム強度を十分に保ちつつしなやかなフィルムを形成することができる。
【0046】
また、被覆層は、前記非イオン性水溶性高分子、可塑剤以外に、本発明の目的を阻害しない範囲で、増量剤、香料、着色剤、湿潤剤等のその他の成分を含有していてもよい。これらの成分の総配合量は、被覆層全体に対して、0質量%超10質量%以下である。
【0047】
(iii)積層シート状製剤
本発明の積層シート状製剤は、少なくとも、前記薬物含有層及び被覆層を有するものであれば、その層構成に特に制約されない。例えば、図1(a)に示すごとき、被覆層1a/薬物含有層2aの2層からなるもの(積層シート状製剤10A)、図1(b)に示すごとき、被覆層1a/薬物含有層2a/被覆層1bの3層からなるもの(積層シート状製剤10B)、図1(c)に示すごとき、被覆層1a/第1の薬物含有層2b/被覆層1b/第2の薬物含有層2c/被覆層1cの5層からなるもの(積層シート状製剤10C)等が挙げられる。
また、本発明の積層シート状製剤が、薬物含有層及び/又は被覆層をそれぞれ2層以上有する場合、薬物含有層同士及び/又は被覆層同士は同一であっても相異なっていてもよい。
【0048】
これらの中でも、生産性の観点から、被覆層1a/薬物含有層2aの2層からなるもの(積層シート状製剤10A)、及び、被覆層1a/薬物含有層2a/被覆層1bの3層からなるもの(積層シート状製剤10B)が好ましく、より苦味抑制効果が得られることから、被覆層1a/薬物含有層2a/被覆層1bの3層からなるもの(積層シート状製剤10B)がより好ましい。
【0049】
また、本発明の積層シート状製剤が、被覆層/薬物含有層/被覆層の3層からなるものである場合、薬物の苦味を抑制する効果をより得るために、薬物含有層の端部が製剤から露出しないように、被覆層を薬物含有層よりも大きくして、被覆層が端部を覆うように形成することも好ましい。
【0050】
本発明の積層シート状製剤の製造方法としては、特に制約はないが、(α)保持基材上に、被覆層と薬物含有層を順次積層していく方法や、後述するように、(β)保持基材上に薬物含有層を有する積層体と、保持基材上に被覆層を有する積層体を使用する方法が挙げられる。本発明においては、熱履歴がより少ない(β)の方法が好ましい。また、(β)の方法によれば、各層が強固にシールされた本発明の積層シート状製剤を短時間で簡便に得ることができる。
以下、(β)の方法について詳述する。
【0051】
保持基材上に薬物含有層を有する積層体は、前記塩基性薬物(A)、崩壊剤(B1)、非イオン性水溶性高分子(C)、及び所望によりその他の成分からなる薬物含有層形成用組成物を保持基材上に塗布し、得られた塗膜を乾燥することにより得ることができる。
【0052】
薬物含有層形成用組成物は、例えば、炭素数2〜4の脂肪族アルコール系溶媒(以下、「脂肪族アルコール系溶媒」という。)に、脂肪族アルコール系溶媒に難溶性又は不溶性である崩壊剤(B1)を分散させた液に、塩基性薬物(A)、非イオン性水溶性高分子(C)、及び、所望によりその他の成分を添加し、混合することにより得ることができる。
【0053】
崩壊剤(B1)が脂肪族アルコール系溶媒に難溶性又は不溶性であり、非イオン性水溶性高分子(C)が脂肪族アルコール系溶媒に易溶性であると、得られる薬物含有層の内部に、容易に崩壊剤(B1)を分散状態で存在させることができるため好ましい。
【0054】
炭素数2〜4の脂肪族アルコール系溶媒としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が挙げられ、エタノールが特に好ましい。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
分を添加し、混合することにより得ることができる。
【0055】
用いる保持基材としては、本発明の薬物含有層を担持することができるものであれば、特に制限されない。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルム;グラシン紙、クレーコート紙、ポリエチレンラミネート紙等の紙類;等および、これらのプラスチックフィルム等に必要に応じてシリコーン系剥離剤等で剥離処理したものが挙げられる。
用いる保持基材の厚みは、通常5〜200μm、好ましくは25〜100μmである。
【0056】
薬物含有層形成用組成物を保持基材上に塗工する方法としては、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター、アプリケーター等の公知の塗工装置を用いて塗布する方法が挙げられる。
【0057】
形成された薬物含有層形成用組成物の塗膜からは、溶媒が乾燥除去される。
溶媒を乾燥除去する温度は、通常50〜100℃、好ましくは60〜90℃である。
乾燥時間は、通常数十秒から数分間である。
【0058】
薬物含有層の坪量は、特に限定されないが、通常20〜400g/m、好ましくは30〜200g/mである。
【0059】
保持基材上に被覆層を有する積層体は、マスキング剤(D)、崩壊剤(B2)、及び所望によりその他の成分からなる被覆層形成用組成物を調製し、そのものを保持基材上に塗布し、得られた塗膜を乾燥することにより得ることができる。
【0060】
被覆層形成用組成物は、例えば、脂肪族アルコール系溶媒に、該溶媒に難溶性又は不溶性である崩壊剤(B2)を分散させた液に、マスキング剤(D)、及び、所望によりその他の成分を添加し、混合することにより得ることができる。
【0061】
被覆層形成用組成物を保持基材上に成膜する方法は、前記薬物含有層を形成する方法と同様である。
なお、崩壊剤(B2)が脂肪族アルコール系溶媒に難溶性又は不溶性であると、得られる被覆層の内部に、容易に崩壊剤(B2)を分散状態で存在させることができるため好ましい。
【0062】
得られる被覆層の坪量は、特に限定されないが、通常5〜400g/m、好ましくは10〜200g/mである。
【0063】
本発明の積層シート状製剤のうち、被覆層1a/薬物含有層2aの層構成を有する積層シート状製剤10Aは、図2に示すように、保持基材3b上に薬物含有層2aを有する積層体20aと、保持基材3a上に被覆層1aを有する積層体20bとを、保持基材3a側を外側にして、両者をヒートシールして積層した後、保持基材3aを剥離除去することにより得ることができる。
【0064】
本発明の積層シート状製剤のうち、被覆層1a/薬物含有層2a/被覆層1bの層構成を有する積層シート状製剤10Bは、図3に示すようにして製造することができる。
先ず、上記と同様にして、保持基材3b/薬物含有層2a/被覆層1a/保持基材3aの構成を有する積層体20cを形成し、保持基材3bを剥離する。このものを二枚用意し、両者の薬物含有層2a同士を重ね合わせ、ヒートシールする。そして、結果として、保持基材3a/被覆層1a/薬物含有層2a’/被覆層1a/保持基材3aの構成を有する積層体を得る。最後に、このものから保持基材3a、3bを剥離する除去ことによって、目的とする積層シート状製剤10Bを得ることができる。
【0065】
また、保持基材上に被覆層を有する積層体は、第1の保持基材付き被覆層、保持基材付き薬物含有層から保持基材を剥離した薬物含有層、及び、第2の保持基材付き被覆層を、保持基材が両外側になるように重ね合わせた後、全体をヒートシールし、保持基材/被覆層/薬物含有層/被覆層/保持基材の構成を有する積層体を得、次いで、両外側の保持基材を剥離することによっても得ることもできる。この方法によれば、ヒートシールの回数を減らすことができ、熱履歴による薬物の変質をより効果的に防止することができる。
【0066】
いずれの方法においても、ヒートシールは、温度60〜200℃、好ましくは80〜150℃、圧力0.1〜5MPa、好ましくは0.3〜1MPaで行う。
なお、前記ヒートシールは、保持基材を除去してから行ってもよい。
また、得られた積層シート状製剤は、所望の形状に裁断して用いてもよい。裁断は、保持基材を除去する前に行ってもよい。
【0067】
本発明の積層シート状製剤は、内部に崩壊剤(B1)及び(B2)が存在(好ましくは分散状態で存在)するため、口溶け性に優れ、嚥下が容易である。本発明の積層シート状製剤を服用した場合、口腔内崩壊時間は30秒以内であることが好ましい。
また、本発明の積層シート状製剤においては、塩基性基含有化合物(d1)及び/又はアニオン性高分子(d2)を含むマスキング剤(D)を使用することで、塩基性薬物(A)の溶出に起因する苦味が抑えられる。
このとき塩基性基含有化合物(d1)とアニオン性高分子(d2)を併用することで、口溶け性を低下させることなく、優れたマスキング効果が得られる。
【実施例】
【0068】
次に実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
エタノール203質量部に、可塑剤としてグリセリン6.0質量部、崩壊剤(B1)として酵素変性デキストリン(商品名:アミコールNo.19、日澱化学社製、5質量%水溶液の37℃における粘度:1mPa・s未満)38.4質量部、非イオン性水溶性高分子(C)としてヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC、日本曹達社製、5質量%水溶液の37℃における粘度:5500mPa・s)28.1質量部、マスキング剤としてスクラロース0.2質量部、及び、塩基性薬物(A)として塩酸ジフェンヒドラミン27.3質量部を、ネオミキサーを用い攪拌しながら順次添加して分散させ、薬物含有層形成用組成物を調製した。
【0070】
次に、得られた薬物含有層形成用組成物を、乾燥後の坪量が60g/mとなるようにギャップを調整し、アプリケータを用いて、保持基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(SP−PET381031、リンテック社製)上に展延塗布した。得られた塗膜を80℃で5分間乾燥して、保持基材上に薬物含有層を有する積層体(a)を得た。
【0071】
精製水426.3質量部に、可塑剤としてグリセリン3.0質量部、崩壊剤(B2)としてマンニトール10.9質量部、塩基性基含有化合物(d1)としてアルギニン37.6質量部、及び、非イオン性水溶性高分子としてヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC、日本曹達社製、5質量%水溶液の37℃における粘度:5500mPa・s)48.5質量部を、ディスパーを用い攪拌しながら順次添加して分散させ、被覆層形成用組成物を調製した。
【0072】
次に、得られた被覆層形成用組成物を、乾燥後の坪量が15g/mとなるようにギャップを調整し、アプリケータを用いて、保持基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(SP−PET381031、リンテック社製)上に展延塗布した。得られた塗膜を80℃で5分間乾燥して、保持基材上に被覆層を有する積層体(b)を得た。
【0073】
次いで、得られた積層体(a)と積層体(b)とを保持基材側を外側にして両者を重ね合わせ、ヒートシール(温度120℃、圧力0.5MPa)して、保持基材/薬物含有層/被覆層/保持基材の構成を有する保持基材付き積層シート状製剤1aを作製した。
【0074】
次いで、保持基材付き積層シート状製剤1aを2枚用意し、それぞれの薬物含有層側の保持基材を除去し、薬物含有層同士を重ね合わせてヒートシール(温度120℃、圧力0.5MPa)し、結果的に、保持基材/被覆層/薬物含有層/被覆層/保持基材の構成を有する保持基材付き積層シート状製剤1bを得た。
このものを、14.3mm×21.4mmの長方形状に裁断した後、両外側の保持基材を剥離除去し、積層シート状製剤1(坪量150g/m)を得た。
なお、得られた積層シート状製剤1を裁断した断面を電子顕微鏡で観察したところ、配合した崩壊剤が元の粒径のままで薬物含有層中に分散状態で存在していた。
【0075】
(実施例2〜5)
被覆層形成用組成物を、下記第2表に記載した成分配合で調製した以外は、実施例1と同様にして積層シート状製剤2〜5を得た。
なお、高甘味度甘味料(d3)としては、スクラロースを用いた。
カラギーナンは、5質量%水溶液の37℃における粘度が5000mPa・sのものを使用した。
【0076】
(実施例6)
実施例1と同様にして、保持基材上に薬物含有層を有する積層体(a)を得た。
次いで、エタノール203質量部に、可塑剤としてグリセリン3.0質量部、崩壊剤(B2)として酵素変性デキストリン(商品名:アミコールNo.19、日澱化学社製、5質量%水溶液の37℃における粘度:1mPa・s未満)31.2質量部、塩基性基含有化合物(d1)としてアルギニン37.6質量部、及び、非イオン性水溶性高分子としてヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC、日本曹達社製、5質量%水溶液の37℃における粘度:5500mPa・s)28.2質量部を、ネオミキサーを用い攪拌しながら順次添加して分散させ被覆層形成用組成物を調製した。
【0077】
次に、得られた被覆層形成用組成物を、乾燥後の坪量が40g/mとなるようにギャップを調整し、アプリケータを用いて、保持基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(SP−PET381031、リンテック社製)上に展延塗布した。得られた塗膜を80℃で5分間乾燥して、保持基材上に被覆層を有する積層体(c)を得た。
次に、得られた積層体(a)と積層体(c)を用いて、実施例1と同様にして積層シート状製剤6(坪量200g/m)を得た。
【0078】
(実施例7〜9)
被覆層形成用組成物を、下記第2表に記載した成分配合で調製した以外は、実施例6と同様にして積層シート状製剤7〜9を得た。
【0079】
(実施例10〜17)
薬物含有層形成用組成物及び被覆層形成用組成物を、下記第1表、第2表に記載した成分配合で調製した以外は、実施例1と同様にして積層シート状製剤10〜17を得た。
なお、カラギーナンは、5質量%水溶液の37℃における粘度が5000mPa・sのものを使用した。
【0080】
(比較例1〜5)
薬物含有層形成用組成物及び被覆層形成用組成物を、下記第1表、第2表に記載した成分配合で調製した以外は、実施例1と同様にして積層シート状製剤18〜22を得た。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
実施例1〜17及び比較例1〜5で得られた積層シート状製剤1〜22につき、以下のマスキング効果試験、口溶け性試験、及び口腔内崩壊時間測定を行った。評価結果等を下記第2表に示す。
【0084】
[マスキング効果試験]
各実施例及び比較例の積層シート状製剤を水なしで口腔内に含ませ、積層シート状製剤が口腔内で唾液により崩壊した後、吐き出し、服用感を、下記の4段階の基準で評価した。
◎:苦くない。
○:やや苦い。
△:苦い。
×:非常に苦い。
【0085】
[口溶け性試験]
各実施例及び比較例の積層シート状製剤を水なしで口腔内に含ませ、積層シート状製剤が口腔内で唾液により崩壊した後、吐き出し、口の中の感覚を、下記の4段階の基準で評価した。
◎:口腔内がさっぱりとしていた。
○:口腔内がはじめは粘ついたがすぐにさっぱりとした。
△:口腔内がやや粘つく感じがした。
×:口腔内が粘ついて感触が悪かった。
【0086】
[口腔内崩壊時間]
各実施例及び比較例の積層シート状製剤を、それぞれ水なしで口腔内に含ませ、積層シート状製剤が口腔内の唾液で崩壊するまでの時間を測定した。試験は3回行い、その平均値を算出した。
【0087】
[総合評価]
上記すべての試験結果を総合して、下記の4段階の基準で評価した。
◎:すべての評価項目で満足する結果が得られた。
○:すべての評価項目でほぼ満足する結果が得られた。
△:いずれか一つ以上の評価項目でやや不十分な結果が得られた。
×:いずれか一つ以上の評価項目で不十分な結果が得られた。
【0088】
【表3】

【0089】
実施例1〜17の積層シート状製剤1〜17は、マスキング効果に優れ、かつ良好な口溶け性を有し、口腔内崩壊時間が短かった。
【0090】
一方、被覆層に、マスキング剤(D)及び崩壊剤(B2)を用いなかった比較例1の積層シート状製剤18は、マスキング効果、口溶け性の両方に劣り、口腔内崩壊時間が長く、総合評価が低かった。
薬物含有層に崩壊剤(B1)を用いなかった比較例2の積層シート状製剤19は、口溶け性に劣り、マスキング効果、口腔内崩壊時間ともに、満足する結果は得られず、総合評価の低いものであった。
被覆層に、マスキング剤(D)を用いなかった比較例3の積層シート状製剤20は、マスキング効果に劣り総合評価が低かった。
被覆層に、崩壊剤(B2)を用いなかった比較例4の積層シート状製剤21は、マスキング効果、口溶け性の両方に劣り、総合評価が低かった。
また、薬物含有層に崩壊剤(B1)を用いなかった比較例5の積層シート状製剤22は、口溶け性に劣り、マスキング効果、口腔内崩壊時間ともに、満足する結果は得られず、総合評価の低いものであった。
【符号の説明】
【0091】
1a・・・被覆層
2a、2a’・・・薬物含有層
2b・・・第1薬物含有層
2c・・・第2薬物含有層
3a、3b・・・保持基材
10A、10B、10C・・・積層シート状製剤
20a、20b、20c・・・積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性薬物(A)、崩壊剤(B1)、及び非イオン性水溶性高分子(C)を含有する薬物含有層と、
塩基性基含有化合物(d1)及び/又はアニオン性高分子(d2)を含むマスキング剤(D)、並びに崩壊剤(B2)を含有する被覆層と
を有することを特徴とする積層シート状製剤。
【請求項2】
前記塩基性基含有化合物(d1)として、アミノ酸及び/又はアミノ糖を含有する請求項1に記載の積層シート状製剤。
【請求項3】
前記アニオン性高分子(d2)として、カラギーナン及び/又はアルギン酸を含有する請求項1又は2に記載の積層シート状製剤。
【請求項4】
前記マスキング剤(D)が、さらに、高甘味度甘味料(d3)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート状製剤。
【請求項5】
前記崩壊剤(B1)及び/又は崩壊剤(B2)として、酵素変性デキストリン及び/又はマンニトールを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の積層シート状製剤。
【請求項6】
前記非イオン性水溶性高分子(C)として、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する請求項1〜5のいずれかに記載の積層シート状製剤。
【請求項7】
薬物含有層全体に対して、塩基性薬物(A)の含有量が5〜70質量%、崩壊剤(B1)の含有量が5〜70質量%、非イオン性水溶性高分子(C)の含有量が25〜60質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の積層シート状製剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−211123(P2012−211123A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−36130(P2012−36130)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】