説明

積層チューブ

アルコールガソリン透過防止性、層間接着性、低温耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性に優れた積層チューブとして、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、(B)全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単
位と、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位とからなるポリアミド(半芳香族ポリアミド)からなる(b)層、及び(C)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(c)層を有する少なくとも3層からなる積層チューブを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる層と、特定の構造を有する半芳香族ポリアミドからなる層、及びポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる層よりなる積層チューブ、特にアルコールガソリン透過防止性、層間接着性、低温耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性に優れた積層チューブに関する。
【背景技術】
自動車配管用チューブにおいては、古くは道路の凍結防止剤による発錆の問題や、近年、地球温暖化防止上、喫緊の課題である省エネルギーの要請を受けて、その主要素材としては、金属から、防錆性に優れ軽量な、樹脂への代替が進みつつある。配管用チューブとして使用される樹脂としては、通常は、ポリアミド系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂等が挙げられるが、これらを使用した単層チューブの場合、耐熱性、耐薬品性等が不十分なことから、適用可能な範囲が限定されていた。
自動車配管用チューブは、ガソリンの消費節約、高性能化の観点から、メタノール、エタノール等の沸点の低いアルコール類、あるいはメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)等のエーテル類をブレンドした含酸素ガソリン等が移送される。さらに、近年、環境汚染防止の観点から、配管用チューブ隔壁を通じての揮発性炭化水素等の拡散による大気中への漏洩防止を含めた厳しい排ガス規制が実施されている。将来においては、益々厳しい法規制が課せられ、配管用チューブ隔壁から透過して蒸散する燃料を極限まで抑制することが望まれる。かかる厳しい規制に対しては、従来から使用されている、ポリアミド系樹脂、特に、強度、靭性、耐薬品性、柔軟性に優れるポリアミド11又はポリアミド12を単独で使用した単層チューブは、上記記載の燃料に対する透過防止性は十分でなく、特にアルコールガソリン透過防止性に対する改良が求められている。
この問題を解決する方法として、アルコールガソリン透過防止性の良好な樹脂、例えばエチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(TFE/PAVE,PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)が配置された積層チューブが提案されてきた(例えば、特表平7−507739号公報等参照。)。
さらに、内層にフッ素系樹脂が配置され、これに対して外側にエチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物が配置された層を有する燃料移送用チューブが提案されている(特開平5−247478号公報参照)。しかしながら、当該技術にて使用されるエチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物は、熱安定性に欠け、フッ素系樹脂との共押出成形時、合流部ダイの温度が高い場合、熱劣化を起こす可能性がある。これを防止するために、フッ素系樹脂の融点を、その単量体組成比を制御することにより低下させ、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物の成形温度に近づけることは可能であるが、アルコールガソリン透過防止性の低下は避けられない。
一方、内層にフッ素系樹脂が配置され、これに対して外側に部分芳香族ポリアミド樹脂が配置された層を有する燃料移送用チューブが提案されている(特開平5−245988号公報参照)。しかしながら、当該技術において、部分芳香族ポリアミドとして、実施例に示されている、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)は、従来から自動車配管用チューブ用材料として使用されている、ポリアミド11及び/又はポリアミド12に対しては、接着強度が不十分であり、層間に変性ポリオレフィン等の接着層を設ける必要がある。接着層として、変性ポリオレフィンを用いた場合、耐熱老化性が劣るという欠点を有し、過酷な環境で使用できない。そのため、該燃料移送用チューブを構成する部分芳香族ポリアミド樹脂やフッ素系樹脂の特徴を最大限発揮しているとは言い難い。また、層数の増加によるコスト・管理面での煩雑を招くことがあった。
また、最内層にフッ素系樹脂、中間層にポリアルキレンナフタレート樹脂、外層に熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー、該最内層と該中間層の間に接着層が配置される燃料移送用チューブが提案されている(特開平7−96564号公報参照)。本技術による燃料移送用チューブは、アルコールガソリン透過防止性に非常に優れている。該燃料移送用チューブにおいては、かかる層間に介在させる接着性樹脂として、フッ素系樹脂及びフッ素系ゴムからなる群より選択された少なくとも1種と、結晶性ポリエステル系樹脂及びポリエステル系エラストマーからなる群より選択された少なくとも1種、及び相溶化剤を含有した接着性樹脂組成物が提案されている。しかしながら、その層間接着性は、接着性樹脂として使用される混合物のモルホロジーに影響され、押出条件や使用環境条件等により層間接着性のバラツキ、低下が大きいという課題がある。特に、燃料浸漬時における層間接着強度の耐久性(以下、層間接着強度の燃料耐性という。)に劣る。また、最内層がポリアミド系樹脂、中間層にポリアルキレンナフタレート樹脂、外層に熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー、該最内層と該中間層の間に接着層が配置される燃料移送用チューブにおいては、かかる層間に介在させる接着性樹脂として、ポリアミド系樹脂及びポリアミド系エラストマーからなる群より選択された少なくとも1種と、結晶性ポリエステル系樹脂及びポリエステル系エラストマーからなる群より選択された少なくとも1種、及び相溶化剤を含有した接着性樹脂混合物が配置されることが提案されている。しかしながら、前記した同様の理由で、押出条件や使用環境条件等により層間接着性のバラツキ、低下が大きいという課題がある。また、最内層がポリアミド系樹脂の場合、ガソリンが酸化されて生成するサワーガソリンに対する耐性(耐薬品性)が劣る場合がある。
本発明の目的は、前記問題点を解決し、アルコールガソリン透過防止性、層間接着性、低温耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性に優れた積層チューブを提供することにある。
【発明の開示】
本発明者等は、上記問題点を解決するために、鋭意検討した結果、ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる層、特定の構造を有する半芳香族ポリアミドからなる層、ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる層よりなる積層チューブが層間接着性とアルコールガソリン透過防止性を両立し、低温耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性等の諸特性に優れることを見出した。
即ち、本発明は、
(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、
(B)全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位と、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位とからなるポリアミド(半芳香族ポリアミド)からなる(b)層、及び
(C)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(c)層
を有する、少なくとも3層以上からなることを特徴とする積層チューブに関するものである。
また、好ましい様態としては、
(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、
(B)全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位と、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位とからなるポリアミド(半芳香族ポリアミド)からなる(b)層、
(C)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素重合体からなる(c)層、及び
(D)ポリアミドの末端アミノ基濃度[A](μeq/ポリマー1g)、末端カルボキシル基濃度[B](μeq/ポリマー1g)とした時、[A]>[B]+5を満たす末端変性ポリアミドからなる(d)層
を有する、少なくとも4層以上からなることを特徴とする積層チューブに関するものである。
本発明の積層チューブは、層間接着性とアルコールガソリン透過防止性を両立し、低温耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性等の諸特性を満足する。特に、チューブ隔壁から透過して蒸散するアルコール混合炭化水素を極限まで抑制することができ、厳しい環境規制への適合が可能となる。さらに、ポリアミド系樹脂とアルコールガソリン透過防止性に優れるポリエステル系、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からなる積層チューブが有する、燃料浸漬後における層間接着性の低下という欠点が見られず、層間接着強度の燃料耐性に優れる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の実施例の積層チューブの横断面図である。
図2は本発明の別の実施例の積層チューブの横断面図である。
図3は本発明のさらに別の実施例の積層チューブの横断面図である。
これらの図において、1は最外層:(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、2は中間層:(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層、3は最内層:(C)含フッ素系重合体からなる(c)層、4は内層:(D)末端変性ポリアミドからなる(d)層、5は導電層:導電性フィラーを含む含フッ素系重合体からなる層である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において使用される、(A)ポリアミド11としては、酸アミド結合(−CONH−)を有する次式:(−CO−(CH10−NH−)で示されるポリアミドが代表的なものであり、11−アミノウンデカン酸又はウンデカンラクタムを重合させて得ることができる。また、ポリアミド12としては、酸アミド結合(−CONH−)を有する次式:(−CO−(CH11−NH−)で示されるポリアミドが代表的なものであり、12−アミノドデカン酸又はドデカンラクタムを重合させて得ることができる。
(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12は、前記モノマーを主成分(60重量%以上)とする共重合体であってもよい。共重合成分としては、ラクタム、アミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩が挙げられる。
ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等、アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
ナイロン塩を構成するジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、1,19−ノナデカンジアミン、1,20−エイコサンジアミン、2/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
ナイロン塩を構成するジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4/2,6/2,7−ナフタレレジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、本発明において使用される、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12は、単独重合体であってもよいし、単独重合体の混合物、前記の共重合体との混合物、あるいは他のポリアミド系樹脂又はその他の熱可塑性樹脂との混合物であってもよい。混合物中のポリアミド11及び/又はポリアミド12の含有率は60重量%以上であることが好ましく、さらに80重量%以上であることがより好ましい。
他のポリアミド系樹脂としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)〔ポリアミド11単独は除く〕、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)〔ポリアミド12単独は除く〕、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラアミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリウンデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド11I)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド11T(H))、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))やこれらポリアミド原料モノマーを数種用いた共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、その他の熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、カルボキシル基及びその塩、酸無水物基、エポキシ基等の官能基が含有された上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、本発明において使用される(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12には、可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤としては、ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類、トルエンスルホン酸アルキルアミド類、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類等が挙げられる。
ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類としては、ベンゼンスルホン酸プロピルアミド、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、ベンゼンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等が挙げられる。
トルエンスルホン酸アルキルアミド類としては、N−エチル−o−又はN−エチル−p−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−o−又はN−エチル−p−トルエンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等が挙げられる。
ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類としては、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸エチルデシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸オクチルオクチル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸デシルドデシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸メチル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸ブチル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸デシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸ドデシル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、ベンゼンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等のベンゼンスルホン酸アルキルアミド類、N−エチル−p−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−p−トルエンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等のトルエンスルホン酸アルキルアミド類、p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシル、p−ヒドロキシ安息香酸エチルデシル等のヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類が好ましく、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシル等がより好ましい。
可塑剤の配合量は、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12成分100重量部に対して、1〜30重量部であることが好ましく、1〜15重量部であることがより好ましい。可塑剤の配合量が30重量部を超えると、積層チューブの低温耐衝撃性が低下する場合がある。
また、本発明において使用される(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12には、衝撃改良材を添加することが好ましい。衝撃改良材としては、ゴム状重合体が挙げられ、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が500MPa以下であることが好ましい。曲げ弾性率がこの値を超えると、衝撃改良効果が不十分となる場合がある。
衝撃改良材としては、(エチレン及び/又はプロピレン)・α−オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、アイオノマー重合体、芳香族ビニル化合物・共役ジエン化合物系ブロック共重合体を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。

上記の(エチレン及び/又はプロピレン)・α−オレフィン系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと炭素数3以上のα−オレフィンを共重合した重合体であり、炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,5−ノルボルナジエン等の非共役ジエンのポリエンを共重合してもよい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記の(エチレン及び/又はプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体であり、α,β−不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これら不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記のアイオノマー重合体は、オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンの中和によりイオン化されたものである。オレフィンとしてはエチレンが好ましく用いられ、α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸が好ましく用いられるが、ここに例示したものに限定されるものではなく、不飽和カルボン酸エステル単量体が共重合されていても構わない。また、金属イオンはLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の他、Al、Sn、Sb、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Cd等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、芳香族ビニル化合物・共役ジエン化合物系ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン化合物系重合体ブロックからなるブロック共重合体であり、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックを少なくとも1個と、共役ジエン化合物系重合体ブロックを少なくとも1個有するブロック共重合体が用いられる。また、上記のブロック共重合体では、共役ジエン化合物系重合体ブロックにおける不飽和結合が水素添加されていてもよい。
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロックである。その場合の芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、場合により少量の他の不飽和単量体からなる構造単位を有していてもよい。
共役ジエン化合物系重合体ブロックは、1,3−ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン系化合物の1種又は2種以上から形成された重合体ブロックであり、水素添加した芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体では、その共役ジエン化合物系重合体ブロックにおける不飽和結合部分の一部又は全部が水素添加により飽和結合になっている。
芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体及びその水素添加物の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれら任意の組み合わせのいずれであってもよい。これらの中でも、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体及び/又はその水素添加物として、1個の芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと1個の共役ジエン化合物系重合体ブロックが直鎖状に結合したジブロック共重合体、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック−共役ジエン化合物系重合体ブロック−芳香族ビニル化合物系重合体ブロックの順に3つの重合体ブロックが直鎖状に結合しているトリブロック共重合体、及びそれらの水素添加物の1種又は2種以上が好ましく用いられ、未水添又は水添スチレン/ブタジエンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/(イソプレン/ブタジエン)/スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
また、衝撃改良材として用いられる(エチレン及び/又はプロピレン)・α−オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、アイオノマー重合体、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体は、カルボン酸及び/又はその誘導体で変性された重合体が好ましく使用される。このような成分により変性することにより、ポリアミド系樹脂に対して親和性を有する官能基をその分子中に含むこととなる。
ポリアミド系樹脂に対して親和性を有する官能基としては、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩基、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基等が挙げられる。これらの官能基を含む化合物の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
衝撃改良材の配合量は、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12成分100重量部に対して、1〜35重量部であることが好ましく、5〜25重量部であることがより好ましい。衝撃改良材の配合量が35重量部を超えると、積層チューブの本来の機械的特性が損なわれる場合がある。
さらに、本発明において使用される、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、無機充填材、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤等を添加してもよい。
(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12の製造の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
また、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12のJIS K−6920に準拠して測定した相対粘度は、1.5〜4.0であることが好ましく、2.0〜3.5であることがより好ましい。相対粘度が前記の値未満であると、得られる積層チューブの機械的性質が不十分なことがあり、また、前記の値を超えると、押出圧力やトルクが高くなりすぎて、積層チューブの製造が困難となることがある。
本発明において使用される、(B)半芳香族ポリアミドは、全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位と、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位とからなる(以下、(B)半芳香族ポリアミドと呼ぶことがある。)。
(B)半芳香族ポリアミド中のテレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位の含有量としては、全ジカルボン酸単位に対して、50モル%以上であり、60モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位の含有量が50モル%未満であると、得られる積層チューブの耐熱性、耐薬品性、アルコールガソリン透過防止性等の諸物性が低下する傾向がある。ナフタレンジカルボン酸単位としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。上記ナフタレンカルボン酸単位の中でも、2,6−ナフタレンジカルボン酸から誘導される単位が好ましい。
(B)半芳香族ポリアミド中のジカルボン酸単位は、本発明の積層チューブの優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位以外の他のジカルボン酸から誘導される単位を含んでいてもよい。該他のジカルボン酸単位としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、1,3/1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、4,4−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4−ジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。上記単位の中でも、芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が好ましい。これら他のジカルボン酸単位の含有量は、50モル%以下であり、40モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸から誘導される単位を溶融成形が可能な範囲内で含有することもできる。
(B)半芳香族ポリアミド中の、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位の含有量は、全アミン単位に対して、60モル%以上であり、75モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位の含有量が60モル%未満であると、積層チューブの耐熱性、低吸水性、耐衝撃性が低下する傾向がある。また、積層チューブにおいて、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層との層間接着性が低下する傾向がある。
炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位としては、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミンから誘導される単位が挙げられる。炭素数が上記を満たす限り、直鎖状脂肪族ジアミン単位のみでなく、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐鎖状脂肪族ジアミンから誘導される単位を含有していても構わない。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位の中でも、経済性、アルコールガソリン透過防止性の観点から、1,9−ノナンジアミン及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミンから誘導される単位が好ましく、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層との層間接着性、低温耐衝撃性の観点から、1,12−ドデカンジアミンから誘導される単位が好ましい。さらに、1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比は、成形性及び耐衝撃性、共押出成形性のバランスの観点から、30:70〜98:2の範囲内であることが好ましく、40:60〜95:5の範囲内であることがより好ましい。
(B)半芳香族ポリアミド中のジアミン単位は、本発明の積層チューブの優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位以外の他のジアミンから誘導される単位を含んでいてもよい。該他のジアミン単位としては、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、1,19−ノナデカンジアミン、1,20−エイコサンジアミン、2/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンから誘導される単位を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。これら他のジアミン単位の含有量は、40モル%以下であり、25モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
(B)半芳香族ポリアミドのJIS K−6920に準拠して測定した相対粘度は、1.5〜4.0であることが好ましく、1.8〜3.5であることがより好ましく、2.0〜3.0であることがさらに好ましい。前記の値未満であると、得られる積層チューブの機械的性質が不十分なことがあり、また、前記の値を超えると、押出圧力やトルクが高くなりすぎて、積層チューブの製造が困難となることがある。
さらに、(B)半芳香族ポリアミドの製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
また、(B)半芳香族ポリアミドは、単独重合体であってもよいし、単独重合体の混合物、前記の共重合体との混合物、あるいは、他のポリアミド系樹脂又はその他の熱可塑性樹脂との混合物であってもよい。混合物中の(B)半芳香族ポリアミドの含有率は、80重量%以上であることが好ましく、さらには90重量%以上であることがより好ましい。他のポリアミド系樹脂又はその他の熱可塑性樹脂としては、前記(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12の場合と、同様の樹脂が挙げられる。さらに、本発明で使用される、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12との混合物であっても構わない。
さらに、(B)半芳香族ポリアミドには、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、無機質充填材、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、可塑剤、着色剤、潤滑剤、衝撃改良材等を添加してもよい。
本発明において使用される、(C)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体は、ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基を分子構造内に有している含フッ素系重合体を指す(以下、(C)含フッ素系重合体と称する場合がある。)。
(C)含フッ素系重合体は、少なくとも1種の含フッ素単量体から誘導される繰り返し単位を有する重合体(単独重合体又は共重合体)である。熱溶融加工可能な含フッ素系重合体であれば特に限定されるものではない。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記例示の(C)含フッ素系重合体の中でも、耐熱性、耐薬品性の面で、テトラフルオロエチレン単位を必須成分とする含フッ素系重合体、成形加工の面では、フッ化ビニリデン単位を必須成分とする含フッ素系重合体が好ましく、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)がより好ましい。
エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEと称する場合がある。)は、エチレンに基づく重合単位(以下、Eと称する場合がある。)とテトラフルオロエチレンに基づく重合単位(以下、TFEと称する場合がある。)を含有し、その重合比(モル比)が80/20〜20/80であることが好ましく、70/30〜30/70であることがより好ましく、60/40〜40/60であることがさらに好ましい。
(Eに基づく重合単位)/(TFEに基づく重合単位)のモル比が極端に大きいと、当該ETFEの耐熱性、耐候性、耐薬品性、アルコールガソリン透過防止性等が低下する場合があり、一方、モル比が極端に小さいと、機械的強度、溶融成形性等が低下する場合がある。この範囲にあると、該ETFEが、耐熱性、耐候性、耐薬品性、アルコールガソリン透過防止性、機械的強度、溶融成形性等に優れたものとなる。
(C)含フッ素系重合体には、上記E、TFEに基づく重合単位に加えて、その本質的な特性を損なわない範囲で他の単量体を1種以上含んでもよい。
他の単量体としては、プロピレン、ブテン等のα−オレフィン類、CH=CX(CFY(ここで、X及びYは独立に水素又はフッ素原子、nは2〜8の整数である。)で表される化合物、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)等の不飽和基に水素原子を有するフルオロオレフィン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)(PBVE)やその他パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等の不飽和基に水素原子を有しないフルオロオレフィン(ただし、TFEを除く。)、メチルビニルエーテル(MVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル(BVE)、イソブチルビニルエーテル(IBVE)、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)等のビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニル等のビニルエステル類、アルキル(メタ)アクリレート、(フルオロアルキル)アクリレート、(フルオロアルキル)メタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
(C)含フッ素系重合体において、前記一般式CH=CX(CFYで表される化合物(以下、FAEという。)を使用することが好ましい。FAEに基づく重合単位の含有量は、全重合単位中において、0.01〜20モル%であることが好ましく、0.1〜15モル%であることがより好ましく、1〜10モル%であることがさらに好ましい。FAEの含有量が前記の値未満であると、耐クラック性が低下や、ストレス下において破壊現象が発生する場合があり、前記の値を超えると機械的強度が低下する場合がある。
FAEは、上記のとおり、一般式CH=CX(CFY(ここで、X、Yはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、nは2〜8の整数である。)で表される化合物である。式中のnが2未満であると含フッ素系重合体の改質(例えば、共重合体の成形時や成形品のクラック発生の抑制)が十分になされない場合があり、一方、式中のnが8を超えると重合反応性の点で不利になる場合がある。
FAEとしては、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、特に、CH=CH(CFYで表される化合物が好ましく、その場合、式中のnは、n=2〜4であることが、(C)含フッ素系重合体のアルコールガソリン透過防止性と耐クラック性を両立することからより好ましい。
フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデンと、これと共重合可能な少なくとも一種の含フッ素単量体からなる共重合体である。ここでフッ化ビニリデンと共重合可能な含フッ素単量体としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロイソブチレン、ヘキサフルオロアセトン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、フルオロ(アルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。フッ化ビニリデン共重合体において、フッ化ビニリデンに基づく重合単位の含有量は、全重合単位中において少なくとも30モル%以上であることが好ましい。テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)は、好ましいフッ化ビニリデン共重合体として挙げることができる。
本発明において使用される(C)含フッ素系重合体は、重合体を構成する単量体を従来からの重合方法で(共)重合することによって得ることができる。その中でも主としてラジカル重合による方法が用いられる。すなわち重合を開始するには、ラジカル的に進行するものであれば手段は何ら制限されないが、例えば有機、無機ラジカル重合開始剤、熱、光あるいは電離放射線等によって開始される。
(C)含フッ素系重合体の製造方法は特に制限はなく、一般に用いられているラジカル重合開始剤を用いる重合方法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合等、公知の方法を採用できる。
また、重合は、一槽ないし多槽式の攪拌型重合装置、管型重合装置を使用して、回分式又は連続式操作とすることができる。
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である分解温度が0℃〜100℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましい。具体例としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2′−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4′−アゾビス(4−シアノペンテン酸)等のアゾ化合物、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の非フッ素系ジアシルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル、tert−ブチルヒドロパーオキサイド等のヒドロパーオキシド、(Z(CFCOO)(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルパーオキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、(C)含フッ素系重合体の製造に際しては、分子量調整のために、通常の連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のクロロハイドロカーボンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
重合条件については特に限定されず、重合温度は、0℃〜100℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量及び蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、0.1〜10MPaであることが好ましく、0.5〜3MPaであることがより好ましい。重合時間は1〜30時間であることが好ましい。
また、(C)含フッ素系重合体の分子量は特に限定されないが、室温で固体の重合体であり、それ自体熱可塑性樹脂、エラストマー等として使用できるものが好ましい。また、分子量は、重合に用いる単量体の濃度、重合開始剤の濃度、連鎖移動剤の濃度、温度によって制御される。
(C)含フッ素系重合体を、前記(A)、(B)等のポリアミド系樹脂と共押出する場合、相手材の著しい劣化を伴わない混練温度及び成形温度範囲で、充分な溶融流動性を確保することが好ましい。(C)含フッ素重合体の融点より50℃高い温度、及び5kg荷重におけるメルトフローレートが、0.5〜200g/10minであることが好ましく、1〜100g/10minであることがより好ましい。
また、(C)含フッ素系重合体は、含フッ素単量体及びその他の単量体の種類、組成比等を選ぶ事によって、重合体の融点、ガラス転移点を調節することができる。
(C)含フッ素系重合体の融点は、目的、用途、使用方法により適宜選択されるが、前記(A)、(B)等のポリアミド系樹脂と共押出する場合、当該ポリアミド系樹脂の成形温度に近いことが好ましい。そのため、前記含フッ素単量体及びその他の単量体及び後述の官能基含有単量体の割合を適宜調節し、(C)含フッ素重合体の融点を最適化することが好ましい。
本発明の(C)含フッ素系重合体は、ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基を分子構造内に有しており、官能基は、(C)含フッ素系重合体の分子末端又は側鎖又は主鎖のいずれに含有されていても構わない。また、官能基は、(C)含フッ素系重合体中に単独、又は2種類以上のものが併用されていてもよい。その官能基の種類、含有量は、(C)含フッ素系重合体に、積層される相手材の種類、形状、用途、要求される層間接着性、接着方法、官能基導入方法等により適宜決定される。
ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホ基もしくはスルホン酸塩、エポキシ基、シアノ基、カーボネート基及びカルボン酸ハライド基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。特に、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、エポキシ基、カーボネート基及びカルボン酸ハライド基から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
(C)含フッ素系重合体に、前記反応性を有する官能基を導入する方法としては、(i)(C)含フッ素系重合体の製造時、官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤、連鎖移動剤等により、重合時に(C)含フッ素系重合体の分子末端に官能基を導入する方法、(iii)反応性を有する官能基とグラフト化が可能な官能基とを有する化合物(グラフト化合物)を(C)含フッ素系重合体にグラフトさせる方法等が挙げられる。これらの導入方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。積層チューブにおける層間接着強度の燃料浸漬時の耐久性を考慮した場合、上記(i)、(ii)から製造される(C)含フッ素系重合体であることが好ましい。(iii)については、特開平7−18035号公報、特開平7−25952号公報、特開平7−25954号公報、特開平7−173230号公報、特開平7−173446号公報、特開平7−173447号公報、特表平10−503236号公報による製造法を参照されたい。以下、(i)含フッ素系重合体の製造時、官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤、連鎖移動剤等により含フッ素系重合体の分子末端に官能基を導入する方法について説明する。
(i)(C)含フッ素系重合体の製造時、官能基を有する共重合可能な単量体(以下、官能基含有単量体と略記する場合がある。)を共重合する方法において、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホ基もしくはスルホン酸塩、エポキシ基、シアノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基含有単量体を重合単量体して用いる。官能基含有単量体としては、官能基含有非フッ素単量体、官能基含有含フッ素単量体等が挙げられる。
官能基含有非フッ素単量体としては、アクリル酸、ハロゲン化アクリル酸(但し、フッ素は除く)、メタクリル酸、ハロゲン化メタクリル酸(但し、フッ素は除く)、マレイン酸、ハロゲン化マレイン酸(但し、フッ素は除く)、フマル酸、ハロゲン化フマル酸(但し、フッ素は除く)、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸やそのエステル等誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等のカルボキシル基含有単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、ヒドロキシルアルキルビニルエーテル等のヒドロキシル基含有単量体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
前記官能基含有含フッ素単量体の具体例としては:
CF=CFOCFCFCOOH
CF=CFO(CFCOOH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCOOH
CF=CFCFCOOH
CF=CFCFCFCOOH
CF=CFOCFCFCOONH
CF=CFO(CFCOONa
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOONH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCOONa
CF=CFCFCOONH
(CF=CFCFCFCOO)Zn
CF=CFOCFCFCHOH
CF=CFO(CFCHOH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCHOH
CF=CFCFCHOH
CF=CFCFCFCHOH
CF=CFOCFCFSO
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSO
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN
CF=CFCFOCFCFCFCOOH
CF=CFCFOCFCF(CF)COOH
CF=CFCFOCFCFCFCOONH
CF=CFCFOCFCF(CF)COONH
CF=CFCFOCFCFCFCOONa
(CF=CFCFOCFCF(CF)COO)Zn
CF=CFCFOCFCFCFCHOH
CF=CFCFOCFCF(CF)CHOH
CF=CFCFOCFCFCFSO
CF=CFCFOCFCFCFCN
CH=CFCFCFCHCOOH
CH=CFCFCFCOOH
CH=CF(CFCOOH
CH=CF(CFCHCOOH
CH=CFCFOCF(CF)COOH
CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH
CH=CFCFCFCHCOONH
CH=CFCFCFCOONa
(CH=CF(CFCHCOO)Zn
CH=CFCFOCF(CF)COONH
CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COONH
(CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COO)Zn
CH=CFCFCFCHCHOH
CH=CFCFCFCHOH
CH=CF(CFCHCHOH
CH=CFCFOCF(CF)CHOH
CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CHOH
CH=CHCFCFCHCOOH
CH=CH(CFCHCHCOOH
CH=CH(CFCHCHCOOH
CH=CH(CFCHCOOH
CH=CH(CFCHCOONH
CH=CH(CFCHCHCOONa
(CH=CH(CFCHCOO)Zn
CH=CHCFCFCHCHOH
CH=CH(CFCHCHCHOH
CH=CH(CFCHCHOH
等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
(C)含フッ素系重合体中の官能基含有単量体の含有量は、全重合単位中、0.05〜20モル%であることが好ましく、0.05〜10モル%であることがより好ましく、0.1〜5モル%であることがさらに好ましい。
官能基含有単量体の含有量が0.05モル%未満であると、層間接着性が充分得られにくく、使用環境条件により、層間接着性の低下、特に、層間接着強度の燃料耐性に劣る場合がある。また、含有量が20モル%を超えると、耐熱性を低下させ、高温での加工時の接着不良や着色や発泡、高温での使用時の分解による、剥離や着色・発泡、溶出等を起こす場合がある。また、上記含有量を満たす限りにおいて、官能基が導入された含フッ素系重合体と、官能基が導入されていない含フッ素系重合体の混合物であって構わない。
(ii)重合開始剤等により含フッ素系重合体の分子末端に官能基を導入する方法において、(C)含フッ素系重合体の分子末端に官能基を有するとは、重合体分子鎖の片末端又は両末端に官能基をもつ重合体であり、末端に導入される官能基としては、カーボネート基、カルボン酸ハライド基が好ましい。
(C)含フッ素系重合体の末端基として導入されるカーボネート基は、一般に−OC(=O)O−の結合を有する基であり、具体的には、−OC(=O)O−R基[Rは水素原子、有機基(例えば、C1〜C20アルキル基、エーテル結合を有するC2〜C20アルキル基等)又はI、II、VII族元素である。]の構造のもので、−OC(=O)OCH、−OC(=O)OC、−OC(=O)OC17、−OC(=O)OCHCHCHOCHCH等が挙げられる。カルボン酸ハライド基は、具体的には−COY[Yはハロゲン元素]の構造のもので、−COF、−COCl等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、重合体の分子末端にカーボネート基を導入するためには、重合開始剤や連鎖移動剤を使用した種々の方法を採用できるが、パーオキサイド、特にパーオキシジカーボネートを重合開始剤として用いる方法が、経済性の面、耐熱性、耐薬品性等の品質の面で好ましく採用できる。また、パーオキシジカーボネートを用いると、重合温度を低くする事が可能であり、開始反応に副反応を伴わないことから好ましい。
重合体の分子末端にカルボン酸ハライド基を導入するためには、種々の方法を採用できるが、例えば、前述のカーボネート基を末端に有する含フッ素系重合体のカーボネート基を加熱させ熱分解(脱炭酸)させることにより得ることができる。
パーオキシジカーボネートとしては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−イソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルジカーボネート、t−ブチルパーオキシメタクリロイロキシエチルジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
パーオキシジカーボネートの使用量は、目的とする重合体の種類(組成等)、分子量、重合条件、使用する開始剤の種類によって異なるが、重合によって得られる全重合体100重量部に対して0.05〜20重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましい。重合体の分子末端のカーボネート基含有量は、重合条件を調整することによって制御できる。重合開始剤の使用量が前記の値を超えると、重合速度の制御が困難な場合があり、使用量が前記の値未満であると、重合速度が遅くなる場合がある。重合開始剤の添加法は特に限定されず、重合開始時に一括添加してもよいし、重合中に連続添加しても良い。添加方法は、重合開始剤の分解反応性と重合温度により適宜選択される。
(C)含フッ素系重合体中の主鎖炭素数10個に対する末端官能基数は、150〜3000個であることが好ましく、200〜2000個であることがより好ましく、300〜1000個であることがさらに好ましい。官能基数が150個未満であると、層間接着性が充分得られにくく、使用環境条件により、層間接着性の低下、特に、層間接着強度の燃料耐性に劣る場合がある。また、官能基数が3000個を超えると、耐熱性を低下させ、高温での加工時の接着不良や着色や発泡、高温での使用時の分解による、剥離や着色・発泡、溶出等を起こす場合がある。また、上記官能基数を満たす限りにおいて、官能基が導入された含フッ素系重合体と、官能基が導入されていない含フッ素系重合体の混合物であって構わない。
以上のように、本発明において使用される(C)含フッ素系重合体は、ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が導入された含フッ素系重合体である。上述の通り、官能基が導入された(C)含フッ素系重合体は、それ自体、(C)含フッ素系重合体特有の耐熱性、耐水性、低摩擦性、耐薬品性、耐候性、防汚性、アルコールガソリン透過防止性等の優れた特性を維持することが可能であり、生産性、コストの面で有利である。
さらに、官能基が分子鎖中に含有することにより、積層チューブにおいて、層間接着性が不充分又は不可能であった種々の材料に対し、表面処理等特別な処理や接着性樹脂の被覆等を行なわず、直接優れた他の基材との層間接着性を付与することができる。
本発明において使用される(C)含フッ素系重合体は、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素繊維、金属酸化物、あるいはカーボン等の種々の充填剤を配合できる。また、充填剤以外に、顔料、紫外線吸収剤、その他任意の添加剤を混合できる。添加剤以外にまた他のフッ素系樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂、合成ゴム等を配合することもでき、機械特性の改善、耐候性の改善、意匠性の付与、静電防止、成形性改善等が可能となる。
本発明において使用される、(D)末端変性ポリアミドは、該ポリアミドの末端アミノ基濃度[A](μeq/ポリマー1g)、末端カルボキシル基濃度[B](μeq/ポリマー1g)とした時、[A]>[B]+5を満たす(以下、末端変性ポリアミドと呼ぶ。)。[A]>[B]+10であることが好ましく、[A]>[B]+15であるであることがより好ましい。[A]<[B]+5であると、積層される相手材との層間接着性に劣るため、好ましくない。さらに、[A]>20であることが好ましく、30<[A]<80であることがより好ましい。
なお、末端アミノ基濃度[A](μeq/ポリマー1g)は、該ポリアミドをフェノール/メタノール混合溶液に溶解し、0.05Nの塩酸で滴定して測定することができる。末端カルボキシル基濃度[B](μeq/ポリマー1g)は、該ポリアミドをベンジルアルコールに溶解し、0.05Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定して測定することができる。
(D)末端変性ポリアミドは、ラクタム、アミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩を原料として、重合、又は共重合することにより製造される。
ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられる。アミノカルボン酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
ナイロン塩を構成するジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
ナイロン塩を構成するジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4/2,6/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
具体例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラアミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド11I)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド11T(H))、ポリウンデカメチレンナフタラミド(ポリアミド11N)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)や、これらポリアミドの原料モノマーを数種用いた共重合体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
得られる積層チューブの耐熱性、機械的強度、入手の容易さ、あるいはアルコールガソリン透過防止性、及び(B)半芳香族ポリアミドや(C)含フッ素系重合体等との層間接着性を考慮して、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド9T、ポリアミド9N、ポリアミド12T、ポリアミド12Nである。
(D)末端変性ポリアミドは、上記したモノマーを原料とし、溶融重合、溶液重合や固相重合等公知の重合方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。
これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。重合に使用できる装置は、例えば、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続重合装置、管状連続重合装置、混練反応押出機等が挙げられる。
例えば、(D)末端変性ポリアミドは、前記ポリアミド原料を、アミン類の存在下に、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合する事により製造される。
あるいは、重合後、アミン類の存在下に、溶融混練することにより製造される。このように、アミン類は、重合時の任意の段階、あるいは、重合後、溶融混練時の任意の段階において添加できるが、積層チューブにおける層間接着強度の燃料耐性を考慮した場合、重合時の段階で添加することが好ましい。
上記アミン類としてはモノアミン、ジアミン、トリアミンが挙げられる。また、アミン類の他に、上記の末端基濃度の条件の範囲を外れない限り、必要に応じて、モノカルボン酸,ジカルボン酸、トリカルボン酸等のカルボン酸類を添加しても良い。これら、アミン類、カルボン酸類は、同時に添加しても、別々に添加しても良い。また、下記例示のアミン類、カルボン酸類は、1種又は2種以上を用いることができる。
添加するモノアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシレンアミン、エイコシルアミン、ドコシルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、アニリン、ベンジルアミン、β−フエニルメチルアミン等の芳香族モノアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジオクチルアミン等の対称第二アミン、N−メチル−N−エチルアミン、N−メチル−N−ブチルアミン、N−メチル−N−ドデシルアミン、N−メチル−N−オクタデシルアミン、N−エチル−N−ヘキサデシルアミン、N−エチル−N−オクタデシルアミン、N−プロピル−N−ヘキサデシルアミン、N−プロピル−N−ベンジルアミン等の混成第二アミンが挙げられる。
添加するジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、2/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
添加するトリアミンの具体例としては、ジエチレントリアミン、ビス(ペンタメチレン)トリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ビス(ヘプタメチレン)トリアミン、ビス(オクタメチレン)トリアミン、ビス(ノナメチレン)トリアミン、ビス(デカメチレン)トリアミン、ビス(ウンデカメチレン)トリアミン、ビス(ドデカメチレン)トリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミンが挙げられる。
一方、添加するカルボン酸類としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイン酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸や、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカジカルボン酸、ヘキサデセンジカルボン酸、オクタデカジカルボン酸、オクタデセンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸、エイコセンジカルボン酸、ドコサンジカルボン酸、ジグリコール酸、2,2,4/2,4,4−トリメチルアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メタキシリレンジカルボン酸、パラキシリレンジカルボン酸、1,4/2,6/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,6/1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、トリメシン酸等のトリカルボン酸が挙げられる。
添加されるアミン類の使用量は、製造しようとする(D)末端変性ポリアミドの末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度及び相対粘度を考慮して、公知の方法により適宜決められる。アミン類の添加量は、通常、ラクタム、アミノカルボン酸、又はナイロン塩等のポリアミド原料に対して(繰り返し単位を構成するモノマー又はモノマーユニット1モル)、0.5〜20meq/モルであることが好ましく、1.0〜10meq/モルの割合で添加する(アミノ基の当量は、カルボキシル基と1:1で反応してアミド基を形成するアミノ基の量を1当量とする。)。この量が前記の値未満であると十分な層間接着性が得られなくなる場合があり、逆に前記の値を超えると、所望の粘度を有するポリアミドの製造が困難となる場合がある。
(D)末端変性ポリアミドにおいては、上記例示のアミン類のうち、末端基濃度の条件を満たすために、ジアミンを重合時に添加することが好ましく、該ジアミンが、ゲル発生抑制という観点から、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンよりなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
(D)末端変性ポリアミドのJIS K−6920に準じて測定した相対粘度は、2.0〜4.5であることが好ましく、2.5〜4.0であることがより好ましい。相対粘度が前記の値未満であると、得られる積層チューブの機械的性質が不十分な場合があり、また、前記の値を超えると、押出圧力やトルクが高くなりすぎて、積層チューブの製造が困難となる場合がある。
また、(D)末端変性ポリアミドは、上記末端基濃度を満たす限りにおいては、末端基濃度の異なる2種類以上のポリアミドの混合物でも構わない。この場合、ポリアミド混合物の末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度は、混合物を構成するポリアミドの末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度及び配合割合により決まる。
また、本発明において使用される(D)末端変性ポリアミドは、他のポリアミド又はその他の熱可塑性樹脂との混合物であってもよい。混合物中の末端変性ポリアミドの含有率は、60重量%以上であることが好ましく、さらに80重量%以上であることがより好ましい。前記(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12の場合と、同様の樹脂が挙げられる。さらに、本発明で使用される、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12や、(B)半芳香族ポリアミドとの混合物であっても構わない。
さらに、(D)末端変性ポリアミドには、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、無機充填材、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、衝撃改良材等を添加してもよい。特に、耐衝撃性を改良する目的で、前記(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12と同様に、衝撃改良材を添加することが好ましい。
本発明に係わる積層チューブは、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層、及び(C)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体((C)含フッ素系重合体)からなる(c)層を有する、少なくとも3層以上から構成される。
好ましい実施様態としては、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層、(C)含フッ素系重合体からなる(c)層、及び(D)末端変性ポリアミドからなる(d)層を有する、少なくとも4層以上から構成される。
本発明の積層チューブにおいて、さらに好ましい実施様態としては、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層は、積層チューブの最外層に配置される。(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる層が最外層に配置されると、凍結防止剤等により環境応力亀裂が発生しない。
本発明の積層チューブにおいて、(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層を含むことは必須であり、積層チューブの(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、及び(C)含フッ素系重合体からなる(c)層の間に配置されることが好ましい。(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層が含まれる積層チューブはアルコールガソリン透過防止性、特に炭化水素透過防止性に優れる。また、(C)含フッ素系重合体からなる(c)層が含まれる積層チューブはアルコールガソリン透過防止性に優れる。
本発明の積層チューブにおいて、好ましくは、(D)末端変性ポリアミドからなる(d)層を含み、積層チューブの(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層と(C)含フッ素系重合体からなる(c)層の間に配置されることがより好ましい。(D)末端変性ポリアミドからなる(d)層を含むことにより、(C)含フッ素系重合体からなる(c)層との層間接着性、特に、長期に亘って層間接着強度の燃料耐性に優れる。
また、本発明の積層チューブにおいて、導電性フィラーを含有させた含フッ素系重合体組成物からなる導電層が、積層チューブの最内層に配置されると、耐薬品性、アルコールガソリン透過防止性に優れるとともに、燃料配管チューブ等として使用された場合、配管内を循環する燃料の内部摩擦あるいは管壁との摩擦によって発生した静電気によるスパークの発生を防止することが可能となる。その際、導電性を有しない含フッ素系重合体からなる層が、前記導電層に対して外側に配置されることにより、低温耐衝撃性、導電性を両立することが可能であり、また経済的にも有利である。さらに、ここでいう、含フッ素系重合体とは、本発明において規定した、分子鎖中に官能基を有する(C)含フッ素系重合体も包含し、後述の官能基を有さない含フッ素系重合体も指す。
導電性とは、例えば、ガソリンのような引火性の流体が樹脂のような絶縁体に連続的に接触した場合、静電気が蓄積してスパークが発生し、燃料が引火する可能性があるが、この静電気が蓄積しない程度の電気特性を有することを言う。これにより、燃料等の流体の搬送時に発生する静電気によるスパークの発生を防止可能となる。
導電性フィラーとは、樹脂に導電性能を付与するために添加されるすべての充填材が包含され、粒状、フレーク状及び繊維状フィラー等が挙げられる。
粒状フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。フレーク状フィラーとしては、アルミフレーク、ニッケルフレーク、ニッケルコートマイカ等が挙げられる。また、繊維状フィラーとしては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭素繊維、炭素被覆セラミック繊維、カーボンウィスカー、アルミ繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維といった金属繊維等が挙げられる。これらの中では、カーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックは、導電性付与に一般的に使用されているカーボンブラックはすべて包含される。好ましいカーボンブラックとしては、アセチレンガスを完全燃焼して得られるアセチレンブラックや、原油を原料にファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、カーボンブラックは、その粒子径、表面積、DBP吸油量、灰分等の特性の異なる種々のカーボン粉末が製造されている。該カーボンブラックの特性に制限は無いが、良好な鎖状構造を有し、凝集密度の大きいものが好ましい。カーボンブラックの多量配合は耐衝撃性の面で好ましくなく、より少量で優れた電気伝導度を得る観点から、平均粒径は500nm以下であることが好ましく、5〜100nmであることがより好ましく、10〜70nmであることがさらに好ましく、また表面積(BET法)は10m/g以上であることが好ましく、300m/g以上であることがより好ましく、500〜1500m/gであることがさらに好ましく、更にDBP(ジブチルフタレート)吸油量は50ml/100g以上であることが好ましく、100ml/100g以上であることがより好ましく、300ml/100g以上であることがさらに好ましい。また、灰分は0.5重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以下であることがより好ましい。ここでいうDBP吸油量は、ASTM D−2414に定められた方法で測定した値である。また、カーボンブラックは、揮発分含量が1.0重量%未満であることがより好ましい。
これら、導電性フィラーはチタネート系、アルミ系、シラン系等の表面処理剤で表面処理を施されていても良い。また溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
導電性フィラーの配合量は、用いる導電性フィラーの種類により異なるため、一概に規定はできないが、導電性と流動性、機械的強度等とのバランスの点から、(C)含フッ素系重合体成分100重量部に対して、一般に3〜30重量部が好ましく選択される。
また、かかる導電性フィラーは、十分な帯電防止性能を得る意味で、それを配合した含フッ素系重合体組成物を溶融押出して得られる成形品の表面固有抵抗値が10Ω/square以下、特に10Ω/square以下であることが好ましい。但し上記導電性フィラーの配合は強度、流動性の悪化を招きやすい。そのため目標とする導電レベルが得られれば、上記導電性フィラーの配合量はできるだけ少ない方が望ましい。
本発明の積層チューブでは、各層の厚さは特に制限されず、各層を構成する重合体の種類、積層チューブにおける全体の層数、用途等に応じて調節し得るが、それぞれの層の厚みは、積層チューブのアルコールガソリン透過防止性、低温耐衝撃性、柔軟性等の特性を考慮して決定され、一般には、(a)層、(b)層、(c)層、及び必要に応じて配置される(d)層の厚さは、積層チューブ全体の厚みに対してそれぞれ3〜90%であることが好ましい。アルコールガソリン透過防止性を考慮して、(b)、(c)層の厚みは積層チューブ全体の厚みに対して、5〜80%であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましい。
また、本発明の積層チューブにおける全体の層数は特に制限されず、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層、(C)含フッ素系重合体からなる(c)層とを含む、少なくとも3層、好ましくは、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる層、(B)半芳香族ポリアミドからなる層、(C)含フッ素系重合体からなる(c)層、及び(D)末端変性ポリアミドからなる(d)層を含む、少なくとも4層である限り、特に限定されない。さらに本発明の積層チューブは、(a)層、(b)層、(c)層、(d)層の4層以外に、更なる機能を付与、あるいは経済的に有利な積層チューブを得るために、他の熱可塑性樹脂からなる層を1層又は2層以上を有していてもよい。
図1〜3に本発明の積層チューブの好適な構造例を示す。図1において、最外層1は(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、中間層2は(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層、最内層3は(C)含フッ素系重合体からなる(c)層から構成されている。図2では、図1と同様に、最外層1は(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、中間層2は(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層、最内層3は(C)含フッ素系重合体からなる(c)層から構成されているが、この実施例では中間層2と最内層3の間に(D)末端変性ポリアミドからなる(d)層が内層4として配置されている。内層4は最外層1と中間層2の間に配置することもできる。図3は、図2と同様に、最外層1は(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、中間層2は(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層、内層4は(D)末端変性ポリアミドからなる(d)層、最内層3は(C)含フッ素系重合体からなる(c)層から構成されているが、この実施例では最内層3のさらに内側に導電性フィラーを含有させた含フッ素系重合体組成物からなる導電層5が配置されている。
他の熱可塑性樹脂としては、本発明において規定された以外のポリアミド系樹脂(ここで、本発明において規定された以外とは、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12、(B)全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位と、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位とからなるポリアミド(半芳香族ポリアミド)、特定の末端基濃度の条件を満たす(D)末端変性ポリアミド以外のポリアミド系樹脂を指す。)として、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラアミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリウンデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド11I)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド11T(H))、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))やこれらポリアミド原料モノマーを数種用いた共重合体等が挙げられる。
また、本発明において規定された以外の含フッ素系重合体(ここで、本発明において規定された以外とは、官能基を有しない含フッ素系重合体を指す。)として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テドラフルオロエチレン/フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等が挙げられる。
さらに、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された、上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等が挙げられる。
なお、本発明の積層チューブは、層間接着性に優れるため、通常接着層として配置される変性ポリオレフィン系樹脂を使用する必要がなく、上記例示の熱可塑性樹脂のうち、好ましくは、融点が165℃以上の、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリチオエーテル系樹脂、含フッ素系重合体が使用される。ここで、融点とは、示差走査熱量測定装置を用いて、試料を予想される融点以上の温度に加熱し、次に、この試料を1分間あたり10℃の速度で降温し、30℃まで冷却、そのまま約1分間放置したのち1分間あたり10℃の速度で昇温することにより測定される融解曲線のピーク値の温度を融点と定義するものとする。
また、熱可塑性樹脂以外の任意の基材、例えば、紙、金属系材料、無延伸、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿、木材等を積層することも可能である。金属系材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、鉛、錫、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルト等の金属や金属化合物及びこれら2種類以上からなるステンレス鋼等の合金鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅等の銅合金、ニッケル合金等の合金類等が挙げられる。
本発明の積層チューブの層数は3層以上であるが、チューブ製造装置の機構から判断して8層以下であることが好ましく、4層〜7層であることがより好ましく、4層〜6層であることがさらに好ましい。
積層チューブの製造法としては、層の数もしくは材料の数に対応する押出機を用いて、溶融押出し、ダイ内あるいは外において同時に積層する方法(共押出法)、あるいは、一旦、単層チューブあるいは、上記の方法により製造された積層チューブを予め製造しておき、外側に順次、必要に応じては接着剤を使用し、樹脂を一体化せしめ積層する方法(コーティング法)が挙げられる。
また、得られる積層チューブが複雑な形状である場合や、成形後に加熱曲げ加工を施して成形品とする場合には、成形品の残留歪みを除去するために、上記の積層チューブを形成した後、前記チューブを構成する樹脂の融点のうち最も低い融点未満の温度で、0.01〜10時間熱処理して目的の成形品を得る事も可能である。
積層チューブにおいては、波形領域を有するものであってもよい。波形領域とは、波形形状、蛇腹形状、アコーディオン形状、又はコルゲート形状等に形成した領域である。波形領域は、積層チューブ全長にわたり有するものだけではなく、途中の適宜の領域に部分的に有するものであってもよい。波形領域は、まず直管状のチューブを成形した後に、引き続いてモールド成形し、所定の波形形状等とすることにより容易に形成することができる。かかる波形領域を有することにより、衝撃吸収性を有し、取り付け性が容易となる。さらに、例えば、コネクター等の必要な部品を付加したり、曲げ加工によりL字、U字の形状等にする事が可能である。
このように成形した積層チューブの外周の全部又は一部には、石ハネ、他部品との摩耗、耐炎性を考慮して、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)、NBRとポリ塩化ビニルの混合物、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン/プロピレンゴム(EPR)、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、NBRとEPDMの混合物ゴム、塩化ビニル系、オレフィン系、エステル系、アミド系等の熱可塑性エラストマー等から構成するソリッド又はスポンジ状の保護部材(プロテクター)を配設することができる。保護部材は既知の手法によりスポンジ状の多孔体としてもよい。多孔体とすることにより、軽量で断熱性に優れた保護部を形成できる。また、材料コストも低減できる。あるいは、ガラス繊維等を添加してその強度を改善してもよい。保護部材の形状は特に限定されないが、通常は、筒状部材又は積層チューブを受け入れる凹部を有するブロック状部材である。筒状部材の場合は、予め作製した筒状部材に積層チューブを後で挿入したり、あるいは積層チューブの上に筒状部材を被覆押出しして両者を密着して作ることができる。両者を接着させるには、保護部材内面あるいは前記凹面に必要に応じ接着剤を塗布し、これに積層チューブを挿入又は嵌着し、両者を密着することにより、積層チューブと保護部材の一体化された構造体を形成する。また、金属等で補強する事も可能である。
積層チューブの外径は、燃料(例えばガソリン)等の流量を考慮し、肉厚はガソリンの透過性が増大せず、また、通常のチューブの破壊圧力を維持できる厚さで、かつ、チューブの組み付け作業容易性及び使用時の耐振動性が良好な程度の柔軟性を維持することができる厚さに設計されるが、限定されるものではない。好ましくは、外径は4〜30mm、内径3〜25mm、肉厚は0.5〜5mmである。
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における分析及び物性の測定は次のように行った。
ポリアミド系樹脂の特性は、以下の方法で測定した。
[相対粘度]
JIS K−6920に準じて、96%の硫酸中、ポリアミド濃度1%、温度25℃の条件下で測定した。
[末端カルボキシル基濃度]
三つ口ナシ型フラスコに所定量のポリアミド試料を入れ、ベンジルアルコール40mLを加えた後、窒素気流下、180℃に設定したオイルバスに浸漬する。上部に取り付けた攪拌モーターにより攪拌溶解し、指示薬にフェノールフタレインを用いてN/20の水酸化ナトリウム溶液で滴定を行い、末端カルボキシル基濃度を求めた。
[末端アミノ基濃度]
活栓付三角フラスコに所定量のポリアミド試料を入れ、あらかじめ調整しておいた溶媒フェノール/メタノール(体積比9/1)の40mLを加えた後、マグネットスターラーで攪拌溶解し、指示薬にチモールブルーを用いてN/20の塩酸で滴定を行い、末端アミノ基濃度を求めた。
また、含フッ素系重合体の特性は、以下の方法で測定した。
[含フッ素系重合体の組成]
溶融NMR分析、フッ素含有量分析により測定した。
[含フッ素系重合体中のカルボキシル基含有量]
含フッ素系重合体中の無水イタコン酸(IAN)に基づく重合単位の含有量は、赤外吸収スペクトル分析により、当該重合単位におけるC=O伸縮振動の吸収ピークはいずれも1870cm−1に現れるので、その吸収ピークの吸光度を測定し、M=aLの関係式を用いて、IANに基づく重合単位の含有量M(モル%)を決定した。ここでLは、1870cm−1における吸光度で、aは係数である。aとしては、IANをモデル化合物として決定したa=0.87を用いた。
[含フッ素系重合体中の末端カーボネート基数]
含フッ素系重合体中の末端カーボネート基数は、赤外吸収スペクトル分析により、カーボネート基(−OC(=O)O−)のカルボニル基が帰属するピークが1809cm−1の吸収波長に現われ、吸収ピークの吸光度を測定し、次式によって含フッ素系重合体中の主鎖炭素数10個に対するカーボネート基の個数を算出した。
[含フッ素系重合体中の主鎖炭素数10個に対するカーボネート基の個数]=500AW/εdf
A:カーボネート基(−OC(=O)O−)のピークの吸光度
ε:カーボネート基(−OC(=O)O−)のモル吸光度係数[cm−1・mol−1]。モデル化合物よりε=170とした。
W:モノマー組成から計算される組成平均分子量
d:フィルムの密度[g/cm
f:フィルムの厚さ[mm]
また、積層チューブの各物性は、以下の方法で測定した。
[低温耐衝撃性]
SAE J−2260 7.5に記載の方法で評価した。
[含アルコールガソリン透過防止性]
200mmにカットしたチューブの片端を密栓し、内部にFuelC(イソオクタン/トルエン=50/50体積比)とエタノールを90/10体積比に混合したアルコール/ガソリンを入れ、残りの端部も密栓した。その後、全体の重量を測定し、次いで試験チューブを60℃のオーブンに入れ、一日毎に重量変化を測定した。一日当たりの重量変化を、チューブ1mあたりの内層表面積で除して含アルコールガソリン透過係数(g/m・day)を算出した。
[層間接着性]
200mmにカットしたチューブをさらに縦方向に半分にカットし、テストピースを作成した。テンシロン万能試験機を用い、50mm/minの引張速度にて180°剥離試験を実施した。S−Sカーブの極大点から剥離強度(層間接着強度)を読み取り、層間接着性を評価した。
[層間接着強度の燃料耐性]
積層チューブを200mm長に切断したものを試料として使用する。この試料にFuelC(イソオクタン/トルエン=50/50体積比)とメタノールを85/15体積比に混合したアルコール/ガソリンを封入して両端を密封する。これを60℃の恒温槽内にセットし、1000時間保持した。その後、封入物を完全に除去した後、チューブを乾燥し、上記の方法にて、層間接着強度を測定し、層間接着強度の燃料耐性を評価した。
[耐サワーガソリン性(耐薬品性)]
SAE J−2260 7.8に記載の方法で耐サワーガソリンテストを実施した。テスト後のチューブの低温耐衝撃性を前述の方法により評価し、試験本数10本に対して、破断本数が0本の場合、耐サワーガソリン性(耐薬品性)に優れていると判断した。
[耐熱性]
VOLKSWAGEN AG TL−52435 3.5に準拠して熱処理を実施した。熱処理後のチューブを用いて、23℃における耐衝撃性をVOLKSWAGENAG PV−3905に準拠した測定方法で評価し、試験本数10本に対して、破断本数が0本の場合、耐熱性が良好であると判断した。
[実施例及び比較例で用いた材料]
(A)ポリアミド12
(A−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造
ポリアミド12(宇部興産(株)製、UBESTA3030U、相対粘度2.27)に衝撃改良材として、無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体(JSR(株)製、JSRT7712SP)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給する一方、該二軸溶融混練機のシリンダーの途中から、可塑剤として、ベンゼンスルホン酸ブチルアミドを定量ポンプにより注入し、シリンダー温度180〜260℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド12樹脂85重量%、衝撃改良材10重量%、可塑剤5重量%よりなるポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド樹脂組成物を(A−1)という)。
(B)半芳香族ポリアミド
(B−1)半芳香族ポリアミドの製造
テレフタル酸32927g(198.2モル)、1,9−ノナンジアミン15829g(100モル)、2−メチル−1,8−オクタンジアミン15829g(100モル)、安息香酸439.6g(3.6モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物60g(原料に対して0.1重量%)及び蒸留水40Lをオートクレーブに入れ、窒素置換した。
100℃で30分間攪拌し、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、オートクレーブは2.2MPaまで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2.2MPaに保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を1MPaまで下げ、更に1時間反応させて、プレポリマーを得た。これを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。これを230℃、0.013kPa下にて、10時間固相重合し、融点が265℃、相対粘度が2.80の半芳香族ポリアミドを得た(以下、この半芳香族ポリアミドを(B−1)という)。
(B−2)半芳香族ポリアミドの製造
(B−1)半芳香族ポリアミドの製造において、テレフタル酸32927g(198.2モル)を、2,6−ナフタレンジカルボン酸42848g(198.2モル)に変えた以外は、(B−1)半芳香族ポリアミドの製造法と同様の方法にて、融点が275℃、相対粘度が2.40の半芳香族ポリアミドを得た(以下、この半芳香族ポリアミドを(B−2)という)。
(B−3)半芳香族ポリアミドの製造
(B−1)半芳香族ポリアミドの製造において、1,9−ノナンジアミン15829g(100モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン15829g(100モル)を、1,12−ドデカンジアミン40073g(200モル)に変えた以外は、(B−1)半芳香族ポリアミドの製造法と同様の方法にて、融点が301℃、相対粘度が2.55の半芳香族ポリアミドを得た(以下、この半芳香族ポリアミドを(B−3)という)。
(B−4)半芳香族ポリアミドの製造
(B−3)半芳香族ポリアミドの製造において、テレフタル酸32927g(198.2モル)を、2,6−ナフタレンジカルボン酸42848g(198.2モル)に変えた以外は、(B−3)半芳香族ポリアミドの製造法と同様の方法にて、融点が311℃、相対粘度が2.42の半芳香族ポリアミドを得た(以下、この半芳香族ポリアミドを(B−4)という)。
(B−5)半芳香族ポリアミドの製造
アジピン酸29230g(200モル)、m−キシリレンジアミン27376g(201モル)、安息香酸122.1g(1.0モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物57g(原料に対して0.1重量%)及び蒸留水40Lをオートクレーブに入れ、窒素置換した。
100℃で30分間攪拌し、2時間かけて内部温度を220℃に昇温した。この時、オートクレーブは1.9MPaまで昇圧した。そのまま3時間反応を続けた後、1時間かけて、常圧に戻すと同時に265℃まで昇温し、内部温度が265℃に到達した時点で、減圧を開始し、27kPaにて2時間反応させた。その後、復圧し、オートクレーブ底部より溶融ポリマーを抜き出し、冷却しペレット化し、融点が237℃、相対粘度が2.42の半芳香族ポリアミドを得た(以下、この半芳香族ポリアミドを(B−5)という)。
(C)含フッ素系重合体
(C−1)含フッ素系重合体の製造
内容積が94Lの撹拌翼付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン71.3kg、連鎖移動剤である1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子製AK225cb、以下、AK225cbと呼ぶ)20.4kg、CH=CH(CFF562g、無水イタコン酸(IAN)4.45gを仕込み、当該重合槽内を66℃に昇温し、TFE/E(モル比:89/11)のガスで1.5MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレートの0.7%−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の1Lを仕込み重合を開始させた。
重合中圧力を一定になるようにTFE/E(モル比:59.5/40.5)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して3.3モル%に相当する量のCH=CH(CFF及び0.8モル%に相当する量のIANを4.45をAK225cbの1%溶液で連続的に仕込んだ。重合開始9.9時間後、モノマー混合ガス7.28kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
得られたスラリ状の含フッ素系重合体を、水77kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、撹拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で15時間乾燥することにより、6.9kgの含フッ素系重合体の造粒物が得られた。
当該含フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/IANに基づく重合単位/CH=CH(CFFに基づく重合単位のモル比で57.2/38.5/0.48/3.5であった。また、融点は230℃であった。
この造粒物を押出機を用いて、280℃、滞留時間2分で溶融し、含フッ素系重合体のペレットを得た(以下、この含フッ素系重合体を(C−1)という。)。
(C−2)含フッ素系重合体の製造
内容積が94Lの撹拌翼付き重合槽を脱気し、イオン交換水19.7kg、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン77.3kg、AK225cb 20.4kg、CH=CH(CFF427g、テトラフルオロエチレン(TFE)3.36kg、エチレン(E)127gを圧入し、当該重合槽内を45℃に昇温した。このときの圧力は、0.65MPaであった。重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシジカーボネート72gを仕込み、重合を開始させた。
重合中圧力を一定になるようにTFE/E(モル比:60/40)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して6.0モル%に相当する量のCH=CH(CFFを連続的に仕込んだ。重合開始から5.6時間後、モノマー混合ガス11.5kgを仕込まれた時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
得られた含フッ素系重合体を、水100kgを仕込んだ300Lの造粒槽に投入し、撹拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を135℃で3時間乾燥することにより、12.1kgの含フッ素系重合体の造粒物が得られた。この造粒物を押出機を用いて、270℃、滞留時間2分で溶融し、含フッ素系重合体のペレットを作成した(以下、この含フッ素系重合体を(C−2)という。)。
当該含フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/CH=CH(CFFに基づく重合単位のモル比で57.2/37.0/6.0であった。また、融点は204℃であった。重合開始剤に由来するカーボネート末端基数は重合体中の主鎖炭素数10個あたり672個であった。
(C−3)含フッ素系重合体の製造
内容積が94Lの撹拌翼付き重合槽を脱気し、イオン交換水40kg、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン16kg、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)4kg、テトラフルオロエチレン(TFE)0.95kg、フッ化ビニリデン(VDF)0.3kgを圧入し、当該重合槽内を35℃に昇温した。重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシジカーボネート250gを仕込み、重合を開始させた。
重合中圧力を一定になるようにTFE/VDF/HFP(モル比:50/40/10)のモノマー混合ガスを連続的に供給し、系内圧力を一定に保った。重合開始から30時間後、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
得られた含フッ素系重合体を、水100kgを仕込んだ300Lの造粒槽に投入し、撹拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を135℃で3時間乾燥することにより、10.0kgの含フッ素系重合体の造粒物が得られた。
この造粒物を押出機を用いて、260℃、滞留時間2分で溶融し、含フッ素系重合体のペレットを作成した(以下、この含フッ素系重合体を(C−3)という。)。
当該含フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/VDFに基づく重合単位/HPFに基づく重合単位のモル比で51.3/38.9/9.8であった。また、融点は170℃であった。重合開始剤に由来するカーボネート末端基数は重合体中の主鎖炭素数10個あたり311個であった。
(C−4)導電性含フッ素系重合体の製造
(C−1)含フッ素系重合体100質量部、及びカーボンブラック(電気化学(株)製)13質量部をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機(東芝機械(株)製、型式:TEM−48SS)に供給し、シリンダー温度240〜300℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、吐出したストランドを水冷し、ペレタイザーでストランドを切断し、水分除去のために120℃の乾燥機で10時間乾燥し、導電性含フッ素系重合体のペレットを得た。(以下、この導電性含フッ素系重合体を(C−4)という。)。
(C−5)含フッ素系重合体の製造
(C−1)含フッ素系重合体の製造において、IANを仕込まないこと以外は、(C−1)含フッ素系重合体の製造と同様の方法にて、7.0kgの含フッ素系重合体の造粒物を得た。
当該含フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/CH=CH(CFFに基づく重合単位のモル比で57.6/38.7/3.7であった。また、融点は232℃であった。
この造粒物を押出機を用いて、280℃、滞留時間2分で溶融し、含フッ素系重合体のペレットを作成した(以下、この含フッ素系重合体を(C−5)という。)。
(C−6)導電性含フッ素系重合体の製造
(C−5)含フッ素系重合体100質量部、及びカーボンブラック(電気化学(株)製)13質量部をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機(東芝機械(株)製、型式:TEM−48SS)に供給し、シリンダー温度240〜300℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、吐出したストランドを水冷し、ペレタイザーでストランドを切断し、水分除去のために120℃の乾燥機で10時間乾燥し、導電性含フッ素系重合体のペレットを得た。(以下、この導電性含フッ素系重合体を(C−6)という。)。
(D)末端変性ポリアミド
(D−1)末端変性ポリアミド12の製造
70リットルのオートクレーブに、ドデカンラクタム20kg、水0.5kgと5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(以下、イソホロンジアミンと呼ぶ。)49.3g(1/350eq/molドデカンラクタム)を仕込み、重合槽内を窒素置換した後、100℃まで加熱し、この温度で反応系内が均一な状態になるように攪拌した。次いで重合槽内温度を260℃まで昇温させ、槽内圧力を3.5MPaに調圧しながら、2時間攪拌下に重合した。その後、約2時間かけて常圧に放圧し、次いで、53kPaまで減圧し、減圧下において4時間重合を行なった。次いで、窒素をオートクレーブ内に導入し、常圧に復圧後、反応容器の下部ノズルからストランドとして抜き出し、カッティングしてペレットを得た。このペレットを熱水中に浸漬し、未反応モノマーを抽出、除去した後、減圧乾燥した。当該ポリマーの相対粘度は、2.26、末端アミノ基濃度47μeq/g、カルボキシル基濃度20μeq/gであった(以下このポリアミド樹脂を(D−1)という)。ポリアミドの末端アミノ基濃度[A](μeq/ポリマー1g)、末端カルボキシル基濃度[B](μeq/ポリマー1g)とした時、[A]>[B]+5を満たす。
(D−2)末端変性ポリアミド6の製造
70リットルのオートクレーブに、カプロラクタム20kg、水0.5kgとイソホロンジアミン37.6g(1/800eq/molカプロラクタム)を仕込み、重合槽内を窒素置換した後、100℃まで加熱し、この温度で反応系内が均一な状態になるように攪拌した。次いで重合槽内温度を260℃まで昇温させ、槽内圧力を2.5MPaに調圧しながら、2時間攪拌下に重合した。その後、約2時間かけて常圧に放圧し、次いで、53kPaまで減圧し、減圧下において4時間重合を行なった。次いで、窒素をオートクレーブ内に導入し、常圧に復圧後、反応容器の下部ノズルからストランドとして抜き出し、カッティングしてペレットを得た。このペレットを熱水中に浸漬し、未反応モノマーを抽出、除去した後、減圧乾燥した。当該ポリマーの相対粘度は、3.36、末端アミノ基濃度55μeq/g、カルボキシル基濃度35μeq/gであった(以下このポリアミド樹脂を(D−2)という)。ポリアミドの末端アミノ基濃度[A](μeq/ポリマー1g)、末端カルボキシル基濃度[B](μeq/ポリマー1g)とした時、[A]>[B]+5を満たす。
(D−3)ポリアミド12の製造
(D−1)末端変性ポリアミド12の製造において、イソホロンジアミン49.3g(1/350eq/molドデカンラクタム)を使用せず、減圧を53kPaから93kPaに変えた以外は、(D−1)末端変性ポリアミド12の製造と同様の方法にてポリマーを得た。当該ポリマーの相対粘度は、2.26、末端アミノ基濃度32μeq/g、末端カルボキシル基濃度35μeq/gであった(以下このポリアミド樹脂を(D−3)という)。ポリアミドの末端アミノ基濃度[A](μeq/ポリマー1g)、末端カルボキシル基濃度[B](μeq/ポリマー1g)とした時、[A]<[B]+5であった。
(D−4)ポリアミド6の製造
(D−2)末端変性ポリアミド6の製造において、イソホロンジアミン37.6g(1/800eq/molカプロラクタム)を使用せず、減圧を53kPaから93kPaに変えた以外は、(D−2)末端変性ポリアミド6と同様の方法にてポリマーを得た。当該ポリマーの相対粘度は、3.35、末端アミノ基濃度41μeq/g、末端カルボキシル基濃度42μeq/gであった(以下このポリアミド樹脂を(D−4)という)。ポリアミドの末端アミノ基濃度[A](μeq/ポリマー1g)、末端カルボキシル基濃度[B](μeq/ポリマー1g)とした時、[A]<[B]+5であった。
(E)エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)
(E−1)EVOH(株)クラレ製 エバールF101A
(F)ポリブチレンナフタレート(PBN)
(F−1)PBN東洋紡(株)製 ペルプレンEN−16000
(G)ポリフェニレンスルフィド(PPS)
(G−1)PPS東レ(株)製 トレリナA670X01
(H)接着性樹脂
(H−1)無水マレイン酸変性ポリエチレン 宇部興産(株)製 UBond F1100
(H−2)接着性樹脂組成物の製造
(A)ポリアミド12(宇部興産(株)製、UBESTA3030U、相対粘度2.27)に、(F)PBN(F−1)(東洋紡(株)製、ペルプレンEN−16000)、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体(日本ポリオレフィン(株)製、レクスパーRA3150)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給し、シリンダー温度180〜260℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド12/PBN/変性ポリオレフィン=40/55/5(重量比)よりなる接着性樹脂組成物のペレットを得た(以下、この接着性樹脂組成物を(H−2)という)。
(H−3)接着性樹脂組成物の製造
(H−2)接着性樹脂組成物の製造において、(A)ポリアミド12(宇部興産(株)製、UBESTA3030U、相対粘度2.27)を、(C)含フッ素系重合体(C−5)に変え、シリンダ温度を200〜290℃に変えた以外は(H−2)接着性樹脂組成物の製造と同様の方法にて、含フッ素系重合体/PBN/変性ポリオレフィン=40/55/5(重量比)よりなる接着性樹脂組成物のペレットを得た(以下、この接着性樹脂組成物を(H−3)という)。
(H−4)接着性樹脂組成物の製造
(H−2)接着性樹脂組成物の製造において、(F)PBN(F−1)(東洋紡(株)製、ペルプレンEN−16000)を、(G)PPS(G−1)(東レ(株)製、トレリナA670X01)に変え、シリンダ温度を200〜290℃に変えた以外は、(H−2)接着性樹脂組成物の製造と同様の方法にて、ポリアミド12/PPS/変性ポリオレフィン=40/55/5(重量比)よりなる接着性樹脂組成物のペレットを得た(以下、この接着性樹脂組成物を(H−4)という)。
(H−5)接着性樹脂組成物の製造
(H−2)接着性樹脂組成物の製造において、(A)ポリアミド12(宇部興産(株)製、UBESTA3030U、相対粘度2.27)と(F)PBN(F−1)(東洋紡(株)製、ペルプレンEN−16000)を、それぞれ(G)PPS(G−1)(東レ(株)製、トレリナA670X01)、(C)含フッ素系重合体(C−5)に変え、シリンダ温度を200〜290℃に変えた以外は、(H−2)接着性樹脂組成物の製造と同様の方法にて、PPS/含フッ素系重合体/変性ポリオレフィン=55/40/5(重量比)よりなる接着性樹脂組成物のペレットを得た(以下、この接着性樹脂組成物を(H−5)という)。
[実施例1]
上記に示す(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)、(B)半芳香族ポリアミド(B−1)、(C)含フッ素系重合体(C−1)、(D)末端変性ポリアミド(D−1)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)4層チューブ成形にて、(A)を押出温度250℃、(B)を押出温度300℃、(C)を押出温度290℃、(D)を押出温度250℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミド12樹脂組成物からなる(a)層(最外層)、(B)半芳香族ポリアミド組成物からなる(b)層(中間層)、(D)末端変性ポリアミド(D−1)からなる(d)層(内層)、(C)含フッ素系重合体(C−1)からなる(c)層(最内層)としたときの、層構成が(a)/(b)/(d)/(c)=0.60/0.15/0.10/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、(B)半芳香族ポリアミド(B−1)を(B−2)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例2において、(C)含フッ素系重合体(C−1)を(C−2)に変え、(C)を押出温度250℃にて溶融させた以外は、実施例2と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例2において、(C)含フッ素系重合体(C−1)を(C−3)に変え、(C)を押出温度230℃にて溶融させた以外は、実施例2と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例2において、(C)含フッ素系重合体(C−1)を導電性含フッ素系重合体(C−4)に変え、(C)を押出温度300℃にて溶融させた以外は、実施例2と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
また、当該積層チューブの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
[実施例6]
実施例1において、(B)半芳香族ポリアミド(B−1)を(B−3)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例1において、(B)半芳香族ポリアミド(B−1)を(B−4)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例7において、(D)末端変性ポリアミド(D−1)を(D−2)に変えた以外は、実施例7と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
[実施例9]
実施例7において、(D)末端変性ポリアミド(D−1)を(D−3)に変えた以外は、実施例7と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
[実施例10]
実施例2において、(D)末端変性ポリアミド(D−1)を(D−4)に変えた以外は、実施例2と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
[実施例11]
実施例2において、(D)末端変性ポリアミド(D−1)を使用しない以外は、実施例2と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
[実施例12]
上記に示す(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)、(B)半芳香族ポリアミド(B−2)、(C)含フッ素系重合体(C−1)、(C−5)、(D)末端変性ポリアミド(D−1)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)5層チューブ成形機にて、(A)を押出温度250℃、(B)を押出温度300℃、(C)を押出温度280℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミド12樹脂組成物からなる(a)層(最外層)、(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層(外層)、(C)含フッ素系重合体(C−1)からなる(c)層(内層)、(C)含フッ素系重合体(C−5)からなる(c’)層(最内層)、(D)末端変性ポリアミドからなる(d)層(中間層)としたときの、層構成が(a)/(b)/(d)/(c)/(c’)=0.60/0.15/0.10/0.05/0.10mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
[実施例13]
実施例12において、最内層に配置された(C)含フッ素系重合体(C−5)を導電性含フッ素系重合体(C−6)に変え、(C−6)を押出温度300℃にて溶融させた以外は、実施例12と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層チューブの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
[実施例14]
上記に示す(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)、(B)半芳香族ポリアミド(B−2)、(C)含フッ素系重合体(C−1)、(C−5)、(C−6)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)5層チューブ成形機にて、(A)を押出温度250℃、(B)を押出温度300℃、(C−1)、(C−5)を押出温度280℃、(C−6)を押出温度300℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミド12樹脂組成物からなる(a)層(最外層)、(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層(外層)、(C)含フッ素系重合体(C−1)からなる(c)層(中間層)、(C)含フッ素系重合体(C−5)からなる(c’)層(内層)、(C)導電性含フッ素系重合体(C−6)からなる(c’’)層(最内層)としたときの、層構成が(a)/(b)/(c)/(c’)/(c’’)=0.70/0.15/0.05/0.05/0.05mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層チューブの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
比較例1
実施例1において、(B)半芳香族ポリアミド(B−1)、(C)含フッ素系重合体(C−1)、(D)末端変性ポリアミド(D−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成のチューブを得た。当該チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例2
実施例1において、(C)含フッ素系重合体(C−1)を(C−5)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例3
実施例1において、(B)半芳香族ポリアミド(B−1)を(B−5)に変え、(B)の押出温度280℃にて溶融させた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例4
実施例1において、最内層に配置された(C)含フッ素系重合体(C−1)を(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例5
上記に示す(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)、(B)半芳香族ポリアミド(B−5)、(C)含フッ素系重合体(C−1)、(H)接着性樹脂(H−1)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)4層チューブ成形機にて、(A)を押出温度250℃、(B)を押出温度280℃、(C)を押出温度290℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミド12樹脂組成物からなる(a)層(最外層)、(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層(中間層)、(C)含フッ素系重合体からなる(c)層(最内層)、(H)接着性樹脂からなる(h)層(外層)としたときの、層構成が(a)/(h)/(b)/(c)=0.60/0.10/0.15/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例6
比較例5において、(B)半芳香族ポリアミド(B−5)を(E)エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)(E−1)、(C)含フッ素系重合体(C−1)を(C−3)に変え、(C)の押出温度230℃、(E)の押出温度230℃にて溶融させた以外は、比較例5と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例7
上記に示す(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)、(C)含フッ素系重合体(C−5)、(F)ポリブチレンナフタレート(PBN)(F−1)、(H)接着性樹脂(H−2)、(H−3)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)5層チューブ成形機にて、(A)を押出温度250℃、(C)を押出温度290℃、(F)を押出温度260℃、(H)を押出温度280℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミド12樹脂組成物からなる(a)層(最外層)、(F)ポリブチレンナフタレート(PBN)からなる(f)層(中間層)、(C)含フッ素系重合体からなる(c)層(最内層)、(H)接着性樹脂(H−2)からなる(h)層(外層)、(H)接着性樹脂(H−3)からなる(h’)層(内層)としたときの、層構成が(a)/(h)/(f)/(h’)/(c)=0.55/0.10/0.10/0.10/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例8
比較例7において、(F)ポリブチレンナフタレート(PBN)(F−1)を(G)ポリフェニレンスルフィド(PPS)、(H)接着性樹脂(H−2)、(H−3)を(H−4)、(H−5)に変え、(F)を押出温度300℃、(H)を押出温度280℃にて別々に溶融させさせた以外は、比較例7と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。

【産業上の利用可能性】
本発明の積層チューブの用途は、自動車部品、内燃機関用途、電動工具ハウジング類等の機械部品を始め、工業材料、産業資材、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品等各種用途が挙げられる。
また、本発明の積層チューブは、薬液搬送配管に好適である。薬液としては、例えば、ガソリン、灯油、ディーゼルガソリン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、含アルコールガソリン、メチル−t−ブチルエーテル、含酸素ガソリン、含アミンガソリン、サワーガソリン、ひまし油ベースブレーキ液、グリコールエーテル系ブレーキ液、ホウ酸エステル系ブレーキ液、極寒地用ブレーキ液、シリコーン油系ブレーキ液、鉱油系ブレーキ液、パワーステアリングオイル、ウインドウオッシャ液、エンジン冷却液、医薬剤、インク、塗料等が挙げられる。本発明の積層チューブは、上記薬液を搬送するチューブとして好適であり、具体的には、フィードチューブ、リターンチューブ、エバポチューブ、フューエルフィラーチューブ、ORVRチューブ、リザーブチューブ、ベントチューブ等の燃料チューブ、オイルチューブ、ブレーキチューブ、ウインドウオッシャー液用チューブ、ラジエーターチューブ、冷却水、冷媒等用クーラーチューブ、エアコン冷媒用チューブ、床暖房チューブ、消火器及び消火設備用チューブ、医療用冷却機材用チューブ、インク、塗料散布チューブ、その他薬液チューブが挙げられる。
特に、アルコールガソリン透過防止性に優れるため、燃料チューブとして好適である。さらに、本発明の積層チューブは、耐熱性に優れるため、高温薬液あるいはガス搬送用チューブとしても有用である。
よって、本発明の積層チューブは、あらゆる環境下においても使用可能であり、かつ信頼性が高く、産業上利用価値は極めて大きい。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、
(B)全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位と、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位とからなるポリアミド(半芳香族ポリアミド)からなる(b)層、及び
(C)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(c)層
を有する、少なくとも3層からなることを特徴とする積層チューブ。
【請求項2】
(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層、
(B)全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位と、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位とからなるポリアミド(半芳香族ポリアミド)からなる(b)層、
(C)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(c)層、及び
(D)ポリアミドの末端アミノ基濃度[A](μeq/ポリマー1g)、末端カルボキシル基濃度[B](μeq/ポリマー1g)とした時、[A]>[B]+5を満たす末端変性ポリアミドからなる(d)層
を有する、少なくとも4層からなることを特徴とする積層チューブ。
【請求項3】
前記(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層が、最外層に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の積層チューブ。
【請求項4】
前記(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層が、前記(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなる(a)層と前記(C)含フッ素系重合体からなる(c)層の間に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項5】
前記(D)末端変性ポリアミドからなる(d)層が、前記(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層と前記(C)含フッ素系重合体からなる(c)層の間に配置されることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項6】
前記(B)半芳香族ポリアミドが、全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位と、全ジアミン単位に対して、1,9−ノナンジアミン及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン、又は、1,12−ドデカンジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位とからなるポリアミドであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項7】
前記(C)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体が、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体よりなる群より選ばれる少なくとも一種の含フッ素系重合体に基づくものであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項8】
前記(D)末端変性ポリアミドが、重合時にジアミンを添加して製造されたポリアミドであることを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項9】
積層チューブにおける最内層に、導電性フィラーを含有させた含フッ素系重合体組成物からなる導電層が配置されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項10】
前記各層が共押出成形品であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項11】
燃料チューブであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の積層チューブ。

【国際公開番号】WO2005/071301
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517343(P2005−517343)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001563
【国際出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】