説明

積層フィルム、太陽電池用バックシートおよび積層フィルムの製造方法

【課題】 密着性に優れた積層フィルムを提供する。
【解決手段】カルボキシル末端基濃度が15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下のポリエステルフィルムと、該ポリエステルフィルムの表面の少なくとも一方に設けられた易接着層を有し、該易接着層が無機微粒子を含有する、積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性および密着性に優れた積層フィルム、該積層フィルムを含む、太陽電池用保護シート、太陽電池用バックシートおよび太陽電池モジュールに関する。さらに、前記積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエステルフィルムを用いた太陽電池用バックシートが検討されている(特許文献1〜4)。
太陽電池関係は20〜30年間に亘って製品保証を行う必要があることから、その製品性能を過酷条件下で保存評価することが行われている。この過酷条件下の保存評価は、85℃、85%相対湿度下に2000〜5000時間保管することで行われるものであり、ポリエステルフィルム基材の耐候性やバックシートの耐候性等を本環境で促進試験することで検討されている。しかし、このような過酷条件下では、ポリエステルフィルム基材の劣化と太陽電池用バックシート層間の密着不良に伴い、外観不良及び太陽電池の発電効率の低下などが発生していた。そのため、このような過酷条件下においても密着不良による外観不良及び太陽電池の発電効率の低下を抑制できる太陽電池裏面封止用シートが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−248492号公報
【特許文献2】国際公開WO2010/110119号公報
【特許文献3】特開2010−235824号公報
【特許文献4】特開2006−100527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる状況のもと、本願発明者は、ポリエステルフィルムの耐候性を高めるため、ポリエステルのカルボキシ末端基濃度を減らし、微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が低いポリエステルを採用することを試みた。この方法の場合、耐候性は高まるが、該ポリエステルフィルムの他の層との密着性が著しく劣ることが分かった。特に、この種の分野において、他の層との貼り合わせに使われる接着剤との密着性が著しく劣ることが分かった。密着性の低下は、太陽電池の発電効率の低下を引き起こしてしまう。本発明は、問題点を解決することを目的としたものであって、耐候性と密着性を両立できる、ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述のとおり、本発明では高い耐候性を有するポリエステルフィルムが、各機能層との密着性に問題があるという新課題を見つけたことに基づくものであるが、この新課題を、表面粗さをコントロールすることによって、達成できることを見出した。具体的には、ポリエステルフィルムの表面に、易接着層を設け、該易接着層に無機微粒子を含ませて、表面粗さを調整したものである。従来の太陽電池バックシートでは、カルボキシル末端基濃度が30eq/トン程度のポリエステル(表面粗さ2nm程度)を使用していた。また、このようなポリエステルフィルムの表面に水蒸気バリア層として無機層を蒸着することは知られているが、得られる無機蒸着層の表面粗さも、2nm程度であった。これに対し、ポリエステルフィルムの表面に、易接着層を設け、かかる、易接着層に無機微粒子を含めることにより、他層との密着性に優れたポリエステルフィルムであって、耐候性に優れたポリエステルフィルムが得られることを見出し、発明を完成するに至った。具体的には、以下の手段により、上記課題は達成された。
(1)カルボキシル末端基濃度が15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下のポリエステルフィルムと、該ポリエステルフィルムの表面の少なくとも一方に設けられた易接着層を有し、該易接着層がバインダーと無機微粒子を含有する、積層フィルム。
(2)易接着層がポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびポリアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、(1)に記載の積層フィルム。
(3)易接着層が、少なくとも一種のシランカップリング剤またはその加水分解物を含有する、(1)または(2)に記載の積層フィルム。
(4)前記シランカップリング剤とその加水分解物が下記一般式(1)および下記一般式(2)で表されるシランカップリング剤とその加水分解物である、(3)に記載の積層フィルム。
一般式(1)
Si(OR14
一般式(2)
2(Si(OR33n
(上記式中、R1およびR3は、それぞれ、−CH3、−C25またはC24OCH3であり、R2は官能基を含む有機基を表す。nは正の整数である。)
(5)易接着層に含まれる無機微粒子がSnO2、TiO2、SiO2、CaCO3およびMgCO3からなる群より選択される少なくとも1種を含む、(1)〜(4)のいずれかの1項に記載の積層フィルム。
(6)易接着層の上に、さらに、フッ素樹脂層を有する、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の積層フィルム。
(7)易接着層の表面に接着層を有する、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の積層フィルム。
(8)前記フッ素樹脂層が、接着層を介して、易接着層と貼りあわされている、(6)または(7)に記載の積層フィルム。
(9)前記フッ素樹脂層が、四フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル樹脂またはポリフッ化ビニリデン樹脂を含む、(6)〜(8)のいずれか1項に記載の積層フィルム。
(10)ポリエステルフィルムの表面にコロナ処理、火炎処理またはプラズマ処理を行った後、易接着層を設けてなる、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の積層フィルム。
(11)ポリエステルフィルムについて縦延伸後に、塗布によって易接着層を設けてなる、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の積層フィルム。
(12)ポリエステルフィルムについて、縦延伸した後であって横延伸をする前に、塗布によって易接着層を設けてなる、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の積層フィルム。
(13)(1)〜(12)のいずれか1項に記載の積層フィルムを含む、太陽電池用保護シート。
(14)(1)〜(12)のいずれか1項に記載の積層フィルムを含む、太陽電池用バックシート。
(15)(1)〜(12)のいずれか1項に記載の積層フィルムを含む、太陽電池モジュール。
(16)カルボキシル末端基濃度が15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下のポリエステルフィルムの表面に無機微粒子を含む易接着層を設けることを特徴とする、積層フィルムの製造方法。
(17)前記ポリエステルフィルムの表面にコロナ処理、火炎処理またはプラズマ処理を行い、該処理後の表面に、無機微粒子を含む易接着層を設けることを特徴とする、(16)に記載の積層フィルムの製造方法。
(18)ポリエステルフィルムについて縦延伸後に、塗布によって易接着層を設けることを特徴とする、(16)または(17)に記載の積層フィルムの製造方法。
(19)ポリエステルフィルムについて、縦延伸後であって横延伸前に、塗布によって易接着層を設けることを特徴とする、(16)または(17)に記載の積層フィルムの製造方法。
(20)前記積層フィルムが、(1)〜(12)のいずれか1項に記載の積層フィルムである、(16)〜(19)のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、密着性と耐候性の両方に優れた積層フィルムが得られた。この結果、ポリエステルフィルムにおいて、他の機能性層を貼り付けても密着性を高く保つことが可能になり、太陽電池に用いる場合にも、好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の積層フィルムの好ましい形態の一例を示す。
【図2】本発明の積層フィルムの好ましい形態の他の一例を示す。
【図3】本発明の積層フィルムの好ましい形態の他の一例を示す。
【図4】本発明の太陽電池モジュールの形態の一例を示す。
【図5】本願実施例で作成した易接着層の表面の電子顕微鏡による観察の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明の積層フィルムは、カルボキシル末端基濃度が15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下のポリエステルフィルムと、該ポリエステルフィルムの表面の少なくとも一方に設けられた易接着層を有し、該易接着層が無機微粒子を含有することを特徴とする。このように易接着層に、無機微粒子を添加することにより、易接着層の表面に凹凸を形成でき、この結果、カルボキシル末端基濃度が15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下のポリエステルフィルムのように耐候性の高いポリエステルフィルムを用いても、高い密着性を維持することが可能になる。
【0010】
以下、図面に従って、本発明の好ましい積層構成を示すが、本発明はこれらに限定されるものではないことは言うまでも無い。
図1は、本発明の好ましい態様の一例を示したものであって、1はポリエステルフィルムを、2は易接着層を、3は接着層を、4はフッ素樹脂フィルムを、それぞれ示している。ここで、易接着層2、接着層3、フッ素樹脂フィルム4は、それぞれ、両面に設けられているが、片面にのみ設けられていてもよい。また、フッ素樹脂フィルムに代えて、他の機能性フィルムを貼り合わせても良い。さらに、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の構成層を有していても良い。
【0011】
図2は、本発明の他の好ましい態様の一例を示したものである。この態様では、ポリエステルフィルム1の両面に易接着層2を設け、その表面に、フッ素樹脂コーティング層5をコーティングにより設けている。上記図1の実施形態では、フッ素樹脂フィルムを設けているため、接着層が必要であったが、フッ素樹脂層をコーティングによって設ける場合、易接着層の表面に直接コーティングすることができる。また、フッ素樹脂層に代えて、他のコーティング層を設けても良い。さらに、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の機能性層を有していても良い。
【0012】
図3は、本発明の他の好ましい形態の一例を示したものであって、この態様では、ポリエステルフィルム1の両面に易接着層2を設け、その表面に、一方は、ポリオレフィンフィルム等の他の機能性フィルム6を、他方は、フッ素樹脂フィルム4を貼り合わせたものである。本発明の易接着層は、後述するとおり、無機微粒子によって、隣接する層との密着性を高めているため、隣接する層の材料がフッ素樹脂や接着層以外のものであっても、密着性を向上させることができる。
【0013】
上記の態様の中でも、本発明の易接着層は、前記フッ素樹脂フィルム4が、接着層3を介して、易接着層2と貼り合わされている場合に、特に効果を奏する。
【0014】
<ポリエステルフィルム>
本発明で用いるポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分とし、通常は、その90質量%以上がポリエステルであるフィルムをいう。ポリエステルとしては、PETが好ましい。また、1種類のポリエステルから構成されていてもよいし、2種類以上のポリエステルから構成されていても良い。
本発明で用いるポリエステルフィルムは、カルボキシル末端基濃度が15eq/ton以下である。本発明で用いるポリエステルフィルムのカルボキシル末端基濃度は、より好ましくは2eq/ton〜13eq/ton、さらに好ましくは3eq/ton〜9eq/tonである。末端カルボン酸はエチレンビニルアセテート(EVA)の水酸基と水酸基と水素結合を形成し密着力を向上させる働きがある。そのため、範囲末端では密着力が低下し好ましくない。実際、従来は、カルボキシル末端基濃度が30eq/ton程度のものが用いられていた。本発明では、この密着性の低下を、易接着層を設けることによって回避している。
【0015】
本発明で用いるポリエステルフィルムの示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)は220℃以下である。TmetaはDSCに於いてTgとTmの間に発現する微小吸熱ピークを差す。この温度が220℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃〜218℃、さらに好ましくは200℃〜215℃である。この温度はフィルム中の結晶が再編成(部分融解→再結晶化)される温度を示し、これが低いほど融解し易い不安定な結晶構造が存在していることを示す。即ち結晶になりかけている結晶(半結晶)が多く存在していることを示す。ポリエステルは「非晶」と「半結晶」と「結晶」からなり、「結晶」は分子の運動性が完全に拘束されており反応性が低く加水分解し難い。一方、「非晶」は分子が拘束されておらず運動性(反応性)が高く加水分解し易い。これが、フィルム表面で起ると分子量低下を引起し(上述のように)密着低下を引起す。この非晶部の加水分解を抑制するために、非晶部の運動性を低下させることが有効であり、これが「半結晶」構造を形成することである。これが形成されると、TmetaピークがDSCで観測される。即ちDSCで測定中に昇温に伴い、「半結晶」が融解し「結晶」に構造変化する温度が観測され、これがTmetaである。従って、Tmetaは分子が運動し始めるTg以上に発現し、より強い構造である結晶が融解する温度(Tm)より低い温度に現れる。Tmetaが本発明の上限を超えると「半結晶」が「結晶」に近づき、「半結晶」の量が減少し加水分解し易くなりサーモ後の密着力が低下し易く好ましくない。一方、Tmetaが本発明の下限を下回ると「半結晶」が「非晶」に近くづき、「半結晶」の量が減少し加水分解し易くなりサーモ後の密着力が低下し易く好ましくない。
このようなTmetaすなわち「半結晶」の形成は「配向係数」と延伸後に実施する熱固定の温度を150℃〜230℃、より好ましくは160℃〜220℃、さらに好ましくは170℃〜210℃で実施することにより達成できる。
【0016】
本発明で用いるポリエステルフィルムの固有粘度(IV)は、製膜後のポリエステルフィルムの固有粘度が0.6〜1.2dl/gの範囲にあることが好ましい。より好ましくは0.65〜1.0でdl/gあり、さらに好ましくは0.70〜0.95dl/gである。この範囲未満では分子の易動性が大きく、上述の熱収縮や面配向の分布が緩和(解消)され易く好ましくない。一方、この範囲を超えると、溶融押出しの際に剪断発熱し易く、これがポリエステル樹脂の熱分解を促し、この結果、ポリエステル中のカルボン酸量(AV)が増加し易い。これがサーモ中の加水分解を促し密着不良を発現しやすく好ましくない。
このようなIVは固相重合により達成される。即ちポリエステルペレットを180℃〜250℃、より好ましくは190℃〜240℃、さらに好ましくは195℃〜230℃で、5時間〜50時間、より好ましくは10時間〜50時間、よりさらに好ましくは14時間〜40時間、特に好ましくは18時間〜30時間、窒素気流中あるいは真空中で熱処理することで達成できる。これらは一定温度で実施しても良く、変動しながら実施しても良い。
【0017】
(末端封止剤)
本発明では、ポリエステル樹脂に対して、末端封止剤(例えば、特開2007−231137号公報の[0008]〜[0092]段落に記載のエポキシ系化合物、特開2007−23444号公報に記載の単官能〜3官能のイソシアヌレート系グリシジルエーテル化合物、特開2005−82642号公報と特開平6−322082号公報に記載カルポジイミド系化合物、特開2006−77249号公報と特開2007−302878号公報に記載の脂肪酸グリセリンエステル化合物、特開2007−154210号公報と特開2002−220454号公報に記載のグリシジルエーテルとアルカリ土類金属の炭素数6以上の有機酸塩など)を好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.2〜3質量%を含有させることもできる。これにより、溶融押出製膜後のフィルムのカルボキシル末端基濃度が本発明の好ましい範囲2eq/ton〜13eq/tonに調整できる。
末端封止剤としては、下記の単官能のエポキシ化合物と下記のホスホニウム化合物の混合物を使用することが特に好ましい。
【0018】
【化1】

【0019】
【化2】

【0020】
(表面処理)
本発明で用いるポリエステルフィルムは、易接着層を設ける側について、表面処理をすることが好ましい。表面処理としては、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、火炎処理およびシラン化合物を導入した火炎を用いる火炎処理が例示される。このような表面処理方法により、表面処理を施されたポリエチレンテレフタレート基材表面に、フッ素樹脂を含む塗布層を塗布して形成した場合の、湿熱経時後の層間の密着性を改善することができる。これらの表面処理方法は従来から知られていたが、そのような表面処理をした表面に易接着層を塗布した例は知られていなかった。そして、本発明ではこれらの表面処理方法を採用すると大幅にポリエステルフィルムと易接着層との間の密着性が高まることを見出した。
【0021】
表面処理は、ポリエステルフィルムの一方の面に施されていても、両表面に前記表面処理が施されていてもよく、例えば本発明の太陽電池用バックシートに後述の機能層(易接着層)を塗布により形成する場合は両表面に前記表面処理が施されていることが好ましい。その中でも、本発明ではコロナ処理を用いることが好ましい。前記コロナ処理の好ましい態様は、ポリマー基材に対して、0.1〜3.0kw/電極1m(電極1m当たりの出力を表す)の出力で、150〜500J/m2の処理強度範囲でコロナ処理を施す態様であるした。
前記コロナ処理は、出力が 0.5〜3.5kw/電極1mであることがより好ましく、
1.0〜 2.5kw/電極1mであることが特に好ましい。処理強度範囲は150〜500J/m2であることが好ましく、170〜400J/m2であることがより好ましい。
【0022】
本発明におけるポリエステルを重合する際には、カルボキシル基含量を所定の範囲以下に抑える観点から、Sb系、Ge系、Ti系の化合物を触媒として用いることが好ましく、中でも特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いる場合、Ti系化合物を1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で触媒として用いることにより重合する態様が好ましい。Ti系化合物の割合が前記範囲内であると、末端カルボキシル基を下記範囲に調整することが可能であり、樹脂フィルム基材の耐加水分解性を低く保つことができる。
【0023】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624号、特許第3335683号、特許第3717380号、特許第3897756号、特許第3962226号、特許第3979866号、特許第3996871号、特許第4000867号、特許第4053837号、特許第4127119号、特許第4134710号、特許第4159154号、特許第4269704号、特許第4313538号各公報等に記載の方法を適用できる。
【0024】
本発明におけるポリエステルは、重合後に固相重合されていてもよい。これにより、好ましいカルボキシル基含量を達成することができる。固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、送り出す方法)でもよいし、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固相重合には、特許第2621563号、特許第3121876号、特許第3136774号、特許第3603585号、特許第3616522号、特許第3617340号、特許第3680523号、特許第3717392号、特許第4167159号各公報等に記載の方法を適用することができる。
【0025】
固相重合の温度は、170℃〜240℃が好ましく、より好ましくは180℃〜230℃であり、さらに好ましくは190℃〜220℃である。また、固相重合時間は、5時間〜100時間が好ましく、より好ましくは10時間〜75時間であり、さらに好ましくは15時間〜50時間である。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0026】
ポリエステフィルムは、生産性の観点から、ロールトゥロールで生産されることが好ましい。ポリエステルフィルムは、例えば、上記のポリエステルをフィルム状に溶融押出を行なった後、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムを延伸したものであってもよい。延伸は、通常、縦延伸、横延伸の順に行われる。縦延伸および横延伸の温度は、ポリエステルフィルムのガラス転移温度をTg℃としたとき、Tg〜(Tg+60)℃であることが好ましい。また、延伸倍率は、縦方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後横方向に倍率が3〜5倍になるように延伸した2軸延伸フィルムであることが好ましい。横延伸を行った後は、通常、ロールに巻き取られる。さらに、必要に応じて熱処理されていてもよい。
【0027】
ポリエステルフィルムの厚みは、25〜300μm度が好ましく、50〜250μmがより好ましい。厚みを25μm以上とすることにより力学強度が向上する傾向にあり、300μm以下とすることによりコスト的に有利である。
【0028】
<易接着層>
本発明における易接着層は、バインダーおよび無機微粒子を用いて構成することができ、必要に応じて、さらに添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。本発明における易接着層は、無機微粒子を含むことにより、表面に凹凸を形成している。このため、易接着層の表面粗さ(Ra)は、例えば、10〜1000nmであり、好ましくは20〜800nm、さらに好ましくは30〜500nmである。
易接着層の厚みには、特に制限はないが、0.01〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmの範囲であり、さらに好ましくは、0.1〜2μmの範囲である。易接着層の厚みは、0.01μm以上であると必要な易接着性を好適に得ることができ、5μm以下であると面状がより良好になる。
【0029】
バインダー
易接着層は、バインダーの少なくとも一種を含有することができる。
易接着層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびポリアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましく、ポリエステル樹脂またはポリアクリル樹脂が好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。
【0030】
好ましいバインダーの例としては、ポリエステル樹脂の具体例としてバイロナールMD−1200(東洋紡(株)製)、ポリオレフィンの具体例としてケミパールS−120、S−75N(ともに三井化学(株)製)、アクリル樹脂の具体例としてジュリマーET−410、SEK−301(ともに日本純薬(株)製)、アクリルとシリコーンとの複合樹脂の具体例としてセラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)とH7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0031】
易接着層は、その10質量%以上がバインダーであり、20〜90質量%がバインダーであることがより好ましく、40〜80質量%がバインダーであることがさらに好ましい。
バインダーの易接着層中における含有量は、0.05〜5g/m2の範囲とすることが好ましい。中でも、0.08〜3g/m2の範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、0.05g/m2以上であると所望とする接着力が得られやすく、5g/m2以下であるとより良好な面状が得られる。
【0032】
無機微粒子
易接着層は、無機微粒子の少なくとも一種を含有する。
無機微粒子としては、例えば、SnO2、TiO2、SiO2、CaCO3およびMgCO3からなる群より挙げられるものが好ましく、SnO2、TiO2およびSiO2がより好ましい。
【0033】
無機微粒子の粒径は、平均粒径で10〜700nmが好ましく、より好ましくは20〜300nmである。粒径がこの範囲内であると、より良好な易接着性を得ることができる。粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
無機微粒子の形状には、特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のいずれのものを用いることができる。
【0034】
無機微粒子の含有量は、易接着層中のバインダーに対して、1〜400質量%が好ましく、5 〜200質量%がより好ましく、10〜100質量%がさらに好ましい。
【0035】
シランカップリング剤とその加水分解物
本発明における易接着層は、少なくとも一種のシランカップリング剤またはその加水分解物を含有することが好ましい。シランカプリング剤を含むことにより、隣接する層との密着性が向上する傾向にある。下記に示すとおり、PET等のポリエステルフィルムは、その表面に水酸基を有する。一方、シランカップリング剤は、加水分解することにより、シラノール基を形成する。そして、ポリエステルフィルムの水酸基とシランカップリング剤のシラノール基の水素結合で密着力が向上する。さらに、脱水縮合することによって、さらに密着性を高めることも可能である。特に、本発明で用いるポリエステルについては、カルボキシル末端基量が少ないため、層間の密着性が低下しやすいが、本発明では、シランカップリング剤を添加することにより、この点を効果的に回避することができる。
【化3】

【0036】
本発明で用いるシランカップリング剤とその加水分解物としては、ビニル系、エポキシ系、(メタ)アクリロキシ系、アミノ系およびイソシアネート系が好ましい。
【0037】
本発明で用いるシランカップリング剤とその加水分解物は、より好ましくは、下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤および下記一般式(2)で表されるシランカップリング剤である。
一般式(1)
Si(OR14
一般式(2)
2(Si(OR33n
(上記式中、R1およびR3は、それぞれ、−CH3、−C25またはC24OCH3であり、R2は官能基を含む有機基を表す。nは正の整数である。)
2は、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基およびイソシアネート基のいずれかを含む、官能基を含む有機基が好ましく、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、アミノ基およびイソシアネート基のいずれかを含む官能基を含む有機基がより好ましい。
シランカップリング剤とその加水分解物は単量体に限られず、構造によっては二量体、三量体等の多量体といった誘導体であってもよい。1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0038】
シランカップリング剤の配合量は、易接着層中のバインダーに対して、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましく、0.7〜2質量%がさらに好ましい。
上記のシランカップリング剤とその加水分解物以外に、チタンカップリング剤とその加水分解物、アルミニウムカップリング剤とその加水分解物も、好ましい用いることができる。
【0039】
本発明の易接着層には、上記の成分以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分が添加されていてもよい。
【0040】
架橋剤
本発明における易接着性層は、架橋剤の少なくとも1種を含有することができる。
架橋剤の例としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。湿熱経時後の接着性を確保する観点から、これらの中でも特にオキサゾリン系架橋剤が好ましい。
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例として、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく利用することができる。
また、オキサゾリン基を有する化合物として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS500、同WS700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
架橋剤の易接着性層中における好ましい添加量は、易接着性層のバインダー当たり5〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。架橋剤の添加量は、5質量%以上であることで良好な架橋効果が得られ、反射層の強度低下や接着不良が起こりにくく、50質量%以下であることで塗布液のポットライフをより長く保てる。
【0041】
その他添加剤
本発明における易接着性層には、必要に応じて、更にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アニオン系やノニオン系などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
【0042】
(易接着層の形成方法)
易接着層の形成は、易接着性を有するポリマーシートを支持体に貼合する方法や、塗布による方法が挙げられる。中でも、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の塗布法を利用することができる。塗布液の調製に用いる塗布溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
本発明では、特に、ポリエステルフィルムを縦延伸した後に、塗布によって設けることが好ましく、ポリエステルフィルムを縦延伸した後横延伸前に、塗布によって設けることがより好ましい。縦延伸をした後横延伸前に設けることにより、横延伸によって、易接着層が薄くなって、無機微粒子が突出し、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
また、フィルムの搬送中において、無機微粒子がマット剤としての役割を果たし、ハンドリング性が向上する傾向にある。
【0043】
<フッ素樹脂層>
本発明の積層フィルムは、好ましくは、フッ素樹脂層を有する。フッ素樹脂層を設けることにより、耐候性がさらに向上する傾向にある。フッ素樹脂層は、フッ素樹脂フィルムであってもよいし、フッ素樹脂を含む塗布液を塗布して硬化したフッ素樹脂コーティング層であってもよい。
本発明におけるフッ素樹脂層は、1種または2種以上のフッ素樹脂を主成分として含む層である。
フッ素樹脂層の厚さは、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましく、50μm以下であることがよりさらに好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。また、フッ素樹脂層の厚さは、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましく、15μm以上であることが特に好ましい。
【0044】
本発明におけるフッ素樹脂は、−(CFX1−CX23)−で表される繰り返し単位を有するポリマーのことを言う(ただしX1、X2、X3は水素原子、フッ素原子、塩素原子又は炭素数1から3のパーフルオロアルキル基を示す。)。
【0045】
本発明で用いることができるフッ素樹脂としては、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂が例示され、四フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル樹脂またはポリフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。特に、耐侯性、高度の物理的靭性、化学的不活性、良好な耐摩耗性、耐汚れ性の点からポリフッ化ビニル(PVF)(例えば、デュポン社製の「テドラー(登録商標)」)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)フィルムが好適に使用される。
【0046】
フッ素樹脂フィルムを用いる場合、後述の接着剤を用いて、易接着層と貼り合わせることが好ましい。フッ素樹脂フィルムは、前述の市販のフィルムを広く採用できる。
【0047】
フッ素系ポリマーを含む塗布液を用いて、塗布によりフッ素樹脂コーティング層を設ける場合、ポリマーを有機溶剤に溶解して用いるものでも、ポリマー微粒子を水に分散して用いるものでもよい。環境負荷が小さい点から後者が好ましい。フッ素樹脂の水分散物については例えば特開2003−231722号公報、特開2002−20409号公報、特開平9−194538号公報等に記載されている。
また、前記フッ素樹脂は商業的に入手してもよく、例えば、オブリガートSW0011F(フッ素系バインダー、AGCコーテック(株)製)の他、ダイキン工業(株)製 ゼッフルなどを本発明では好ましく用いることができる。
【0048】
前記フッ素樹脂を含む塗布層のバインダーとしては上記のフッ素樹脂を単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。また、全バインダーの50質量%を超えない範囲でアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂などのフッ素樹脂以外の樹脂を併用してもよい。ただし、フッ素樹脂以外の樹脂が50質量%を超えるとバックシートに用いた場合に耐候性が低下する場合がある。フッ素樹脂を含む塗布液には、必要に応じて、架橋剤、界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。
フッ素含有樹脂層におけるバインダーであるフッ素樹脂の含有量は、0.05〜5g/m2の範囲とすることが好ましく、0.1〜4g/m2の範囲がより好ましい。
【0049】
<接着層>
本発明では、上述のとおり、易接着層の表面に直接に塗布してコーティング層を設けても良いが、好ましくは、易接着層の表面に接着層を設け、他の構成フィルムを貼り合わせる構成である。
接着層は、好ましくはその90質量%以上が接着剤から構成される層である。接着剤としては、ウレタン系接着剤(ウレタン系2液硬化型接着剤や、ウレタン系湿気硬化型接着剤など)、エステル系接着剤、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等の接着剤が使用可能である。これらの接着剤は、単一種類を用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。本発明では屋外に設置されて長期にわたって使用することが想定されるから、ウレタン系接着剤の使用が好ましい。接着剤の長期耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤や酸化防止剤等の紫外線による接着剤の劣化を防止する材料の添加も可能である。
【0050】
ウレタン系接着剤
本発明に用いるウレタン系接着剤としては、ポリエステルポリオール又はポリエステルポリオールのイソシアネート伸長物を主剤とし、硬化剤として多官能ポリイソシアネートを用いる接着剤が挙げられる。しかし、このポリエステルポリオール由来の成分は、上述の過酷環境において加水分解を引き起こし、接着力の低下を伴う可能性がある。そのため、用いるポリウレタン系接着剤は、耐候性に優れるポリウレタン系接着剤であることが好ましい。
【0051】
高耐候性ポリウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール、もしくは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリエステルウレタンポリオール、又はそれらの混合物に架橋剤を配合した組成物に対し、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を配合した接着剤組成物が挙げられる。
高温多湿下における促進環境下で加水分解が起きたエステル結合部位は、カルボキシ基とヒドロキシ基に開裂するが、このカルボキシ基が酸触媒として作用してさらにエステル結合部位の加水分解を促進してしまう。これに対し接着剤組成物では、加水分解により発生したカルボキシ基を、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物により封鎖することができる。
【0052】
接着剤の塗布方法は特に限定されず公知の方法を適宜援用してよい。いくつかの例として、グラビアコーター、各種ロールコーター、各種スプレー塗布等による塗布が挙げられる。接着剤の塗布量は、接着剤の種類などによって適宜設定することができる。固形分塗布量は3〜100g/m2が好適である。
【0053】
<積層フィルムの製造方法>
本発明の積層フィルムの製造方法は、特に定めるものではないが、一例としては、ロールトゥロールで製造することができる。ロールトゥロールの場合、原料ポリエステルをTダイ口より、シート状に押出して溶融単層フィルムとする。得られた溶融単層フィルムを、ドラム上に密着冷却固化させて未延伸単層フィルムを得る。得られた未延伸単層フィルムを、縦延伸し、易接着層を塗布により形成し、ポリエステルフィルムを横延伸し、接着層を塗布により設け、フッ素樹脂フィルムを積層した後、ロールに巻き取られる。このような工程を得ることにより、易接着層が延伸によって、薄くなり、結果として、無機微粒子を突出させることができ、易接着層に所望のRaを付与することができる。また、フッ素樹脂フィルムを積層するための搬送時には、易接着層に含まれる無機微粒子が滑剤として働き、積層フィルムの生産効率を向上させることができる。
【0054】
<太陽電池用保護シート>
本発明の太陽電池用保護シートは、本発明の積層フィルムを含むことを特徴とする。本発明の太陽電池保護シートは、120℃、相対湿度100%の雰囲気下に48時間保存した後、かつ130℃、相対湿度100%の雰囲気下に240時間保存した後の封止材との接着力が、保存前の封止材との接着力に対し、75%以上であることが好ましい。本発明の太陽電池用保護シートを太陽電池用バックシートとして用いる場合は、EVA系封止材に対して10N/cm以上の接着力を持つ易接着層をさらに有することが、保存後にも保存前の75%以上の接着力が得られる観点から好ましい。これにより、作製された太陽電池モジュールは、バックシートの剥がれやそれに伴う発電性能の低下が抑制され、長期耐候性がより向上する。
【0055】
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池モジュールは、本発明の積層フィルムを含むことを特徴とする。図4は、本発明の太陽電池モジュールの一例を示したものであって、10は太陽電池モジュールを、11は易接着層を、12はフッ素樹脂層を、14は易接着層を、16は接着層を、18はポリエステルフィルムを、それぞれ示している。そして、20が太陽電池用バックシートになる。さらに、本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池素子22、封止材24、透明性の基板26を有している。
太陽電池モジュールについては、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
また、本発明においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2010−248492号公報、国際公開WO2010/110119号公報、特開2010−235824号公報および特開2006−100527号公報に記載の技術を採用できる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
平均粒子径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕を用いて測定した。
【0057】
実施例1
ポリエステルフィルムの調整
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成し、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更にクエン酸がTi金属に配位したクエン酸キレートチタン錯体(VERTEC AC−420、ジョンソン・マッセイ社製)のエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃で攪拌下、平均滞留時間を約3.2時間として反応を行なった。このとき、クエン酸キレートチタン錯体は、Ti添加量が元素換算値で9ppmとなるように連続的に添加した。このとき、得られたオリゴマーの酸価は、600当量/トンであった。
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃、平均滞留時間1.2時間にて反応させ、酸価が200当量/トンのオリゴマーを得た。第二エステル化反応槽は、内部が3ゾーンに仕切られており、第1ゾーンでは上記反応を行ない、第2ゾーンから酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、Mg添加量が元素換算値で75ppmになるように連続的に供給し、続いて第3ゾーンからリン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、P添加量が元素換算値で65ppmになるように連続的に供給して、エステル化反応生成物を得た。
次に、得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力2.67×10-3MPa(20torr)とし、平均滞留時間を約1.8時間として重縮合させた。その後さらに、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力6.67×10-4MPa(5torr)、滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。次いで、さらに第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽においては、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力2.0×10-4MPa(1.5torr)、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、反応物(ポリエチレンテレフタレート;PET)を得た。得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてPETペレット(断面:長径約2〜5mm、短径約2〜3mm、長さ:約4〜7mm)を作製した。
得られたポリエステル樹脂について、高分解能型高周波誘導結合プラズマ−質量分析(HR−ICP−MS;SIIナノテクノロジー社製のAttoM)を用いて測定したところ、Ti=9ppm、Mg=75ppm、P=60ppmであった。また、得られたPETは、固有粘度(IV)=0.55、末端カルボキシル基の濃度(AV)=20当量/トン、融点=257℃、溶液ヘイズ=0.3%であった。なお、IV及びAVの測定は以下に示す方法により行った。
【0058】
(固相重合)
作製した各PETペレットを、長さ/直径=20のサイロに投入し、150℃で予備結晶化処理した後、窒素雰囲気下、210℃の温度で、50時間の固相重合反応を行った。固相重合後PETペレットは、末端カルボキシル基の濃度(AV)=11当量/トン、IV=0.78である。
【0059】
(溶融押出)
得れらたた固相重合ポリエステル原料ペレットを含水率50ppm以下に乾燥させた後、2箇所にベントが設けられたシリンダー内に下記構成のスクリュを備え、シリンダーの周囲には長手方向に温度制御を行うことができるヒータ(温度制御手段)を備えたダブルベント式同方向回転噛合型の二軸押出機を用いた。二軸機内の最高温度290℃でポリエステル樹脂を溶融押出した。
スクリュ径D:180mm
長さL[mm]/スクリュ径D[mm]:31.5(1ゾーンの幅:3.5D)
ベント配置:第1ベント直前に可塑化混練部、第2ベント直前に脱気促進混練部
【0060】
二軸押出機の押出機出口以降には、下記構成のギアポンプ、金属繊維フィルタおよびダイを接続し、ダイを加熱するヒータの設定温度は285℃とし、平均滞留時間は10分とした。
ギアポンプ:2ギアタイプ
フィルタ:金属繊維焼結フィルタ(孔径10μm)
ダイ:リップ間隔4mm
【0061】
(延伸方法)
上記押出方法で冷却ロール上にポリエステル樹脂を押出し、固化した未延伸フィルムに対し、以下の方法で逐次2軸延伸を施し、厚さが250μmのフィルムを得た。
(a)縦延伸
未延伸フィルムを周速の異なる2対のニップロールの間に通し、縦方向(搬送方向)に延伸した。なお、予熱温度を95℃、延伸温度を95℃、延伸倍率を3.8倍、延伸速度を3000%/秒として実施した。
(b)横延伸
縦延伸した前記フィルムに対し、テンターを用いて下記条件にて横延伸した。
<条件>
・予熱温度:110℃
・延伸温度:130℃
・延伸倍率:4.0倍
・延伸速度:150%/秒
【0062】
(熱固定・熱緩和)
続いて、縦延伸及び横延伸を終えた後の延伸フィルムを下記条件で熱固定した。更に、熱固定した後、テンター幅を縮め下記条件で熱緩和した。
<熱工程条件>
・熱固定温度:215℃
・熱固定時間:5秒
<熱緩和条件>
(1)幅方向の熱緩和は以下の条件にて行なった。
・熱緩和温度:210℃
・熱緩和率 :6%
(2)長手方向の熱緩和は、以下の条件にて行なった。
長手方向の緩和処理は、複数のチェンリンクが環状に連結された屈曲可動な一対のクリップチェンに取り付けられたクリップで前記延伸フィルムの幅方向両端部を把持し、クリップを案内レールに沿って走行させてチェンリンクの屈曲角度が変位することでクリップ走行方向におけるクリップ間距離を収縮させることにより、前記延伸フィルムの長手方向を緩和処理した。
・熱緩和温度:210℃
・熱緩和率 :5%
【0063】
(巻き取り)
ポリエステルフィルムの両端を10cmずつトリミングした。その後、両端に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行った後、張力80kg/mで巻き取った。なお、幅は4.8m、巻長は2000mであった。製膜したフィルムの厚みは250μmであった。厚みのムラは、巻き取り前に設置された自動厚み計により測定した。
【0064】
ポリエステルフィルムの表面処理
得られたフィルムの表面を以下の方法によって、表面処理し、下記表に記載した。
コロナ処理:ポリエステルフィルムの両面にコロナー処理強度250J/m2で行った。
プラズマ処理:電極に周波数13.56MHzの高周波電源から電極に電力を供給して低温プラズマを発生させ、自己バイアス値が800V、Ed値が450V・s/m2の条件下で、処理ガスにアルゴンガスを用い、RIEモードによりプラズマ処理を行った。
火炎処理:都市ガスのバーナーを用い、ポリエステルフィルムの両面に火炎を当てる時間は0.3秒で行った。
【0065】
易接着層の設置
上記表面処理したポリエステルフィルムの両方の表面に、下記の塗布液を塗布した。塗布は、表に記載されている段階で、延伸工程のインラインにて行った。塗布液はバインダー量が0.3g/m2になるように塗布し、180℃で1.5分間乾燥させて、乾燥厚みが約0.3μmの易接着層を形成した。
【0066】
<塗布液>
ポリエステル系易接着層樹脂組成
・ポリエステル樹脂 ・・・1.7質量%
(バイロナールMD−1200、東洋紡(株)製、固形分:17質量%)
・ポリエステル樹脂 ・・・3.8質量%
(ペスレジンA−520、高松油脂(株)製、固形分:30質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・1.5質量%
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・無機酸化物フィラー(下記種類から選択し、下記表に記載) ・・・1.6質量%
(アエロジルOX−50、日本アエロジル(株)製、体積平均流径=0.15μm、固形分:10質量%)
(二酸化チタン、タイペークR780−2、石原産業(株)製、体積平均流径=0.42μm)
・カルボジイミド化合物 ・・・4.3質量%
(カルボジライトV−02−L2、日清紡(株)製、固形分:10質量%、架橋剤)
・シランカップリング剤とその加水分解物 ・・・1質量%
(信越シリコーン製、表1に記載)
・蒸留水 ・・・86.1質量%
【0067】
ポリアクリル系易接着層樹脂組成
・ポリアクリル樹脂 ・・・5.2質量%
(バインダー:ジュリマーET410、日本純薬(株)製、固形分:30質量%)
・アクリル/シリコン系バインダー樹脂 ・・・4.1質量%
(セラネートWSA−1070、DIC(株)製、固形分:40質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・3.0質量%
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・オキサゾリン化合物 ・・・6.9質量%
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%、架橋剤)
・酸化物フィラー (表1に記載) ・・・1.6質量%
・シランカップリング剤とその加水分解物 ・・・1質量%
・蒸留水 ・・・78.2質量%
【0068】
フッ素フィルムとの貼り合わせ
上記延伸後、易接着層の表面に、接着剤(ウレタン系接着剤、東洋インキ製造株式会社製の製品名LIS−073−50(100重量部)と製品名CR−001(10重量部)とを混合した2成分ウレタン系接着剤)を、厚さが8μmとなるように塗布し、その上に、下記表に示すフッ素樹脂フィルムを貼り合わせた。
PVF(25μm厚): DuPont社製、白色TedlarR
PVF(20μm厚): DuPont社製、白色TedlarR
PVF(30μm厚): DuPont社製、白色TedlarR
PVDF(20μm厚): Arkema社製、白色Kynar R
PP(125μm厚):富士フィルム社製
また、実施例9については、接着剤を用いずに、ETFE(AGCコーティング社、
オブリカートSW0011F)を20μmの厚さとなるように塗布した。
【0069】
<ポリエステルフィルムの特性の評価方法>
(1)固有粘度(IV)
ポリエステルフィルムをオルトクロロフェノールに溶解し、25℃で測定した溶液粘度から、下式より固有粘度を得た。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量であり(本測定では1g/100mlとする)、Kはハギンス定数(0.343とする)であり。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0070】
(2)カルボキシル末端基濃度
PET樹脂をベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、これを基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その滴定量から末端カルボン酸基量(eq/ton(当量/トン))を算出した。
【0071】
(3)示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)
微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)は、JIS K7122−1987(JISハンドブック1999年版を参照した)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて測定した。サンプルパンにフィルムを5mg秤量し、25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で昇温を行って測定を行った。得られた示差走査熱量測定チャートにおける結晶融解ピーク前の微少吸熱ピーク温度でもってTmeta(℃)とした。微小な吸熱のピークが観測しにくい場合は、データ解析部にてピーク付近を拡大して、ピークを読みとった。
【0072】
微小吸熱ピークのグラフ読み取り方法は、JISに記載されていないが、以下の方法に基づいて実施した。まず135℃の値と155℃の値で直線を引き、グラフの曲線との吸熱側の面積を求めた。同様に140℃と160℃、145℃と165℃、150℃と170℃、155℃と175℃、160℃と180℃、165℃と185℃、170℃と190℃、175℃と195℃、180℃と200℃、185℃と205℃、190℃と210℃、195℃と215℃、200℃と220℃、205℃と225℃、210℃と230℃、215℃と235℃、220℃と240℃の17点についても面積を求めた。微小ピークの吸熱量は、通常、0.2〜5.0J/gであることから、面積が0.2J/g以上5.0J/g以下であるデータのみを有効データとして取り扱うものとした。合計18個の面積データの中から、有効データでありかつ最も大きい面積を示すデータの温度領域おける吸熱ピークのピーク温度をもってTmeta(℃)とした。有効データがない場合、Tmeta(℃)はなしとした。
【0073】
(4)電子顕微鏡写真
実施例1のサンプルについて、PETフィルムの表面に易接着層を設けた状態のものについて、電子顕微鏡による観察後行った。結果を図4に示した。
図4の写真から明らかなとおり、本発明における易接着層の表面には、凹凸が形成されていることが分かった。
(5)表面粗さの測定
各実施例および比較例のPETフィルムの表面に易接着層を設けた状態のものについて、表面粗さ(Ra)の測定を行った。Raの測定は、東京精密株式会社製、JIS94に準拠して、触針式粗度計Handysurf E−35Aを用い、フィルムの幅方向及び長手方向それぞれの20箇所を測定し、その平均値を結果としてを下記表に示した。
【0074】
<積層フィルムの評価>
(1)密着性
得られた太陽電池用バックシートを85℃85%RH環境下で3000時間促進試験を行った後、テンシロン(ORIENTEC製 RTC−1210A)にてASTM−1876測定法に準じ、剥離角度180°で引っ張り試験を行い、バックシートの層間の密着力を測定した。以下の評価基準にしたがってランク付けした。
<評価基準>
◎:密着が非常に良好であった(7N/10mm以上)
○:密着は良好であった (4N/10mm以上7N/10mm未満)
△:密着がやや不良であった (2N/10mm以上4N/10mm未満)
×:密着不良が顕著であった (2N/10mm未満)
【0075】
(2)ハンドリング性
通常の製膜速度の基準条件での搬送速度に対して、1.5倍の搬送速度の高速条件で作製した各実施例と比較例のポリエステルフィルムについて、2000mを巻き直した。巻き取られたフィルムを目視観察した。巻皺、凹凸、突起状に見える押され欠陥、及び傷状に見える欠陥の有無により、以下のランクにて評価した。
◎:巻皺、押され欠陥、凹凸、すり傷、巻ズレが全く見られない。
○:巻皺、凹凸、押され欠陥は極僅かに見られたが、すり傷、巻ズレが確認できなかった。
△:巻皺、押され欠陥、凹凸、すり傷、巻ズレが低頻度で見られたが、実用上許容できるレベルであった。
×:巻皺、押され欠陥、凹凸、すり傷、巻ズレが多発しており、目視で顕著に観察され、実用上許容できない程度であった。
【0076】
(3)耐候性
得た太陽電池用バックシートを、85℃85%RH環境下で5000時間サーモ促進試験を行った前後、テンシロン(ORIENTEC製 RTC−1210A)にてUL746Aに準じ、破断伸度を測定した。以下の評価基準にしたがってランク付けした。 破断伸度保持率[%]=(サーモ処理後の破断伸度)/(サーモ処理前の破断伸度)×100
◎:破断伸度保持率が70%以上
○:破断伸度保持率が50%以上70%未満であった。
△:破断伸度保持率が30%以上50%未満であった。
×:破断伸度保持率が30%未満であった。
【0077】
<太陽電池モジュールへの実装時の発電効率の評価>
厚さ3mmの強化ガラスと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のSC50B)と、結晶系太陽電池セルと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のSC50B)と、各種実施例および比較例で得られた太陽電池用バックシートと、をこの順に重ね合わせ、真空ラミネータ(日清紡(株)製、真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることにより、バックシートとEVAシートとを接着させた。
EVAの接着条件は、以下の通りである。
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンにて150℃で30分間、本接着処理を施した。
このようにして得られた太陽電池用バックシートを備えた結晶系の太陽電池モジュール(シャープ社製)を作製した。その後、85℃85%RH環境下で5000時間促進試験を行った後、IEC61215に準じた発電効率試験を行い、初期の発電効率に対する保持率を測定し、以下のとおり評価した。
◎:太陽電池の発電効率の保持率が97%以上であった。
○:太陽電池の発電効率の保持率が95%以上97%未満であった。
△: 太陽電池の発電効率の保持率が90%以上95%未満であった。
×: 太陽電池の発電効率の保持率が90%未満であった。
実施例2〜10、比較例1〜4 実施例1の製造方法に準じして、ポリエステル樹脂のAV、IV、熱固定温度の調整(微小ピーク温度の調整)、易接着層の処方などの工程条件を適宜変更し、表1に記載の条件に従い、同様に製造した。
【0078】
【表1】

【0079】
上記表の結果から明らかなとおり、本発明の積層フィルムは、密着性および耐候性に優れたものであることが分かった。さらに、ハンドリング性にも優れている。また、本発明の積層フィルムを太陽電池用バックシートに用いた太陽電池モジュールについては、優れた発光効率を奏することが分かった。
【符号の説明】
【0080】
1 ポリエステルフィルム
2 易接着層
3 接着層
4 フッ素樹脂フィルム
5 フッ素樹脂コーティング層
6 機能性フィルム
10 太陽電池モジュール
11 易接着層
12 フッ素含有樹脂層
14 易接着層
16 接着性樹脂層
18 支持体
20 太陽電池用バックシート
22 太陽電池素子
24 封止材
26 透明性の基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル末端基濃度が15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下のポリエステルフィルムと、該ポリエステルフィルムの表面の少なくとも一方に設けられた易接着層を有し、該易接着層がバインダーと無機微粒子を含有する、積層フィルム。
【請求項2】
易接着層がポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびポリアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
易接着層が、少なくとも一種のシランカップリング剤またはその加水分解物を含有する、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記シランカップリング剤とその加水分解物が下記一般式(1)および下記一般式(2)で表されるシランカップリング剤とその加水分解物である、請求項3に記載の積層フィルム。
一般式(1)
Si(OR14
一般式(2)
2(Si(OR33n
(上記式中、R1およびR3は、それぞれ、−CH3、−C25またはC24OCH3であり、R2は官能基を含む有機基を表す。nは正の整数である。)
【請求項5】
易接着層に含まれる無機微粒子がSnO2、TiO2、SiO2、CaCO3およびMgCO3からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれかの1項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
易接着層の上に、さらに、フッ素樹脂層を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
易接着層の表面に接着層を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記フッ素樹脂層が、接着層を介して、易接着層と貼りあわされている、請求項6または7に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記フッ素樹脂層が、四フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル樹脂またはポリフッ化ビニリデン樹脂を含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項10】
ポリエステルフィルムの表面にコロナ処理、火炎処理またはプラズマ処理を行った後、易接着層を設けてなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項11】
ポリエステルフィルムについて縦延伸後に、塗布によって易接着層を設けてなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項12】
ポリエステルフィルムについて、縦延伸した後であって横延伸をする前に、塗布によって易接着層を設けてなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の積層フィルムを含む、太陽電池用保護シート。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の積層フィルムを含む、太陽電池用バックシート。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の積層フィルムを含む、太陽電池モジュール。
【請求項16】
カルボキシル末端基濃度が15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下のポリエステルフィルムの表面に無機微粒子を含む易接着層を設けることを特徴とする、積層フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記ポリエステルフィルムの表面にコロナ処理、火炎処理またはプラズマ処理を行い、該処理後の表面に、無機微粒子を含む易接着層を設けることを特徴とする、請求項16に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項18】
ポリエステルフィルムについて縦延伸後に、塗布によって易接着層を設けることを特徴とする、請求項16または17に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項19】
ポリエステルフィルムについて、縦延伸後であって横延伸前に、塗布によって易接着層を設けることを特徴とする、請求項16または17に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項20】
前記積層フィルムが、請求項1〜12のいずれか1項に記載の積層フィルムである、請求項16〜19のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200981(P2012−200981A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67410(P2011−67410)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】