説明

積層フィルムおよび包装体

【課題】本発明の課題は、臭気原因物質を良好に抑制することができる積層フィルムを提供することである。
【解決手段】本発明に係る積層フィルム100は、臭気原因物質を化学的に吸着する化学吸着層160を備える。化学吸着層160は、臭気原因物質を化学的に吸着する。また、化学吸着層160は、臭気原因物質であるアルデヒド類および酸類の少なくとも一方を化学的に吸着することが好ましい。さらに、化学吸着層160は、臭気原因物質であるアルデヒド類および酸類の両方を化学的に吸着することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよび包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品および飲料などを保存する包装容器としてプラスチック容器が用いられる。このプラスチック容器で食品および飲料などを包装するとき、プラスチック容器の内部に酸素が残存するおそれがある。また、プラスチック容器は、金属容器およびガラス容器と比べると、酸素バリア性に劣る。このため、プラスチック容器の外部の酸素が、プラスチック容器の内部へと侵入しやすい。プラスチック容器の内部の酸素は、食品などの内容物を酸化させて変質させる。
【0003】
このプラスチック容器の内部の酸素を吸収する容器の材料として、例えば、酸素吸収層を備える積層フィルムがある。この積層フィルムは、プラスチック容器の内部の酸素を吸収し、内容物の酸化を抑制する。しかし、このような積層フィルムは、酸素吸収に伴って、酸素吸収層から臭気原因物質を放出する場合がある。また、内容物から臭気原因物質が放出される場合もある。酸素吸収層または内容物から放出される臭気原因物質は、ユーザを不快にさせるおそれがある。また、酸素吸収層から放出される臭気原因物質は、内容物に付着するおそれがある。
【0004】
この酸素吸収層から放出される臭気原因物質に係る問題に対して、例えば、特許文献1には、吸着性消臭剤を含有する吸着性消臭剤含有層を備えるプラスチック多層容器が開示されている。この吸着性消臭剤含有層は、酸素吸収層から放出される臭気原因物質を吸着し、臭気原因物質を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−067594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この吸着性消臭剤含有層の臭気原因物質の吸着が十分ではないおそれがある。そのため、このプラスチック多層容器は、臭気原因物質を十分に抑制することができない場合がある。
【0007】
本発明の目的は、臭気原因物質を良好に抑制することができる積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)
本発明に係る積層フィルムは、臭気原因物質を化学的に吸着する化学吸着層を備える。化学吸着層は、臭気原因物質を化学的に吸着する。臭気原因物質は、化学的に吸着されることで、化学反応をして無臭の物質に化学変化する。
【0009】
この積層フィルムは、化学吸着層によって、臭気原因物質を良好に抑制することができる。また、この積層フィルムでは、臭気原因物質を物理的に吸着する積層フィルムに比べて、吸着後の臭気原因物質の脱離が起きにくい。
【0010】
また、臭気原因物質は、化学反応によって無臭の物質に化学変化する。そのため、臭気原因物質が化学変化した物質が、たとえ積層フィルムから脱離したとしても、無臭の物質が放出されることになる。さらに、この積層フィルムは、臭気原因物質を物理的に吸着する積層フィルムに比べて、臭気原因物質の選択性の高い消臭ができ、かつ、消臭容量が大きい。
【0011】
(2)
上述(1)の積層フィルムにおいて、化学吸着層は、臭気原因物質であるアルデヒド類および酸類の少なくとも一方を化学的に吸着することが好ましい。
【0012】
例えば、この積層フィルムが、酸素を吸収して臭気原因物質を放出する酸素吸収層を備える場合、この積層フィルムは、化学吸着層がアルデヒド類および酸類の少なくとも一方を化学的に吸着することで、臭気原因物質を良好に抑制することができる。また、内容物から臭気原因物質が放出される場合であっても、この積層フィルムは、化学吸着層がアルデヒド類および酸類の少なくとも一方を化学的に吸着することで、臭気原因物質を良好に抑制することができる。
【0013】
(3)
上述(1)の積層フィルムにおいて、化学吸着層は、臭気原因物質であるアルデヒド類および酸類の両方を化学的に吸着することが好ましい。
【0014】
例えば、この積層フィルムが、酸素を吸収して臭気原因物質を放出する酸素吸収層を備える場合、この積層フィルムは、化学吸着層がアルデヒド類および酸類の少なくとも一方を化学的に吸着することで、臭気原因物質を良好に抑制することができる。また、内容物から臭気原因物質が放出される場合であっても、この積層フィルムは、化学吸着層がアルデヒド類および酸類の両方を化学的に吸着することで、臭気原因物質を良好に抑制することができる。
【0015】
(4)
上述(1)〜(3)のいずれかの積層フィルムは、酸素を吸収する酸素吸収層をさらに備えることが好ましい。
【0016】
この積層フィルムを包装体に用いた場合、酸素吸収層は、包装体内部の酸素を吸収し、内容物の酸化を抑制することができる。しかし、酸素吸収層のなかには、酸素を吸収して臭気原因物質を放出するものがある。かかる場合であっても、この積層フィルムは、化学吸着層によって、臭気原因物質を良好に抑制することができる。
【0017】
(5)
上述(4)の積層フィルムにおいて、化学吸着層は、酸素吸収層と隣接して配置されることが好ましい。
【0018】
酸素吸収層が酸素を吸収して臭気原因物質を放出する場合であっても、化学吸着層が酸素吸収層と隣接して配置されることによって、この積層フィルムは、臭気原因物質をより良好に抑制することができる。
【0019】
(6)
本発明に係る包装体は、上述(1)〜(5)のいずれかの積層フィルムを備える。
【0020】
この包装体は、積層フィルムの化学吸着層によって、臭気原因物質を良好に抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る積層フィルムおよび包装体は、臭気原因物質を良好に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る積層フィルムの断面図である。
【図2】積層フィルムを備える包装体の断面図である。
【図3】(a)消臭剤がアルデヒド類を化学的に吸着する前の状態を示した断面図であり、(b)消臭剤がアルデヒド類を化学的に吸着した後の状態を示した断面図である。
【図4】(a)消臭剤が脂肪酸類を化学的に吸着する前の状態を示した断面図であり、(b)消臭剤が脂肪酸類を化学的に吸着した後の状態を示した断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の変形例(A)に係る積層フィルムの断面図である。
【図6】包装体の内部の酸素濃度を食品用微量酸素分析計で測定している状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態に係る積層フィルム100は、図1に示されるように、主に、外層110、第1接着層120、バリア層130、第2接着層140、酸素吸収層150、化学吸着層160、シール層170が、この順に積層されて形成される。図2に示されるように、この積層フィルム100は、包装体200の底材300の材料として用いられる。また、底材300には、蓋材400がシールされる。以下、積層フィルム100の各構成について、それぞれ詳しく説明する。
【0024】
<外層>
外層110の材料として、底材300で用いることができる程度の強度を有しているものであればよく、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが用いられる。
【0025】
<第1接着層、第2接着層>
第1接着層120は、隣接する層である外層110と、バリア層130とを接着する機能を有する。第2接着層140は、隣接する層であるバリア層130と、酸素吸収層150とを接着する機能を有する。
【0026】
第1接着層120および第2接着層140の材料として、公知の接着性のオレフィン系樹脂、例えば、接着性ポリプロピレン系樹脂、接着性ポリエチレン系樹脂などが用いられる。なお、第1接着層120および第2接着層140の少なくとも一方は、包装体200の内容物(図示せず)の酸化を防止するために、酸化防止剤を含有していてもよい。第1接着層120および第2接着層140の少なくとも一方が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤として、公知の酸化防止剤、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが、単体でまたは2種類以上混合して用いられる。
【0027】
<バリア層>
バリア層130は、包装体200の外部から侵入する水蒸気、酸素、光などの透過を制限するバリア機能を有する。水蒸気をバリアするバリア層130の材料として、例えば、アルミニウム箔のような金属箔、フッ素、ポリ塩化ビニリデン、環状ポリオレフィン等の水分バリア性を有する樹脂が用いられる。酸素をバリアするバリア層130の材料として、例えば、アルミニウム箔のような金属箔、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が用いられる。水蒸気および酸素をバリアするバリア層130の材料として、例えば、バリアPET等が用いられる。光である紫外線をバリアするバリア層130の材料として、例えば、紫外線吸収剤または顔料を含有する樹脂薄膜などが用いられる。水蒸気、酸素、および光をバリアするバリア層130の材料として、例えば、透明樹脂フィルムに、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムまたはそれらの混合物などの無機酸化物からなる蒸着薄膜層が形成されたものが用いられる。なお、必要に応じて、透明樹脂フィルム上に透明プライマー層が形成されてもよいし、または蒸着薄膜層上にガスバリア被膜層が形成されてもよい。
【0028】
<酸素吸収層>
酸素吸収層150は、酸素吸収剤である酸素吸収性樹脂と、酸素吸収反応触媒とを含む。酸素吸収性樹脂として、不飽和ポリオレフィン系酸素吸収樹脂などが用いられる。具体的に、酸素吸収性樹脂として、例えば、エチレン系不飽和炭化水素ポリマー、主鎖エチレン系不飽和炭化水素ポリマー、ポリエーテルユニットポリマー、エチレンと歪んだ環状アルキレンのコポリマー、ポリアミド樹脂、酸変性ポリブタジエン、ヒドロキシアルデヒドポリマー等が、単体でまたは酸素吸収性樹脂以外の透明性に影響しないベース樹脂と混合して用いられる。
【0029】
酸素吸収反応触媒として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトナート亜鉛、アセチルアセトナートコバルトまたはアセチルアセトナート銅などの遷移金属触媒などが用いられる。
【0030】
酸素吸収層150は、酸化防止剤を含有していてもよいし、酸化防止剤を含有していなくてもよい。酸素吸収層150が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が用いられ、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが、単体でまたは2種類以上混合して用いられる。
【0031】
<化学吸着層>
化学吸着層160は、臭気原因物質を化学的に吸着し、特に、アルデヒド類および酸類の少なくとも一方を化学的に吸着するか、またはアルデヒド類および酸類の両方を化学的に吸着することが好ましい。臭気原因物質は、例えば、積層フィルム100、特に酸素吸収層150から放出されたり、内容物から放出されたりするものである。化学吸着層160に吸着される酸類は、消臭を効果的に行う観点から、有機酸類であることが好ましく、脂肪酸類であることがより好ましい。
【0032】
化学吸着層160は、化学的な消臭剤を含有するバインダー樹脂から成る。このバインダー樹脂として、公知のバインダー樹脂が用いられ、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、中密度ポリエチレン(MDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)樹脂、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)樹脂、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)樹脂、エチレン−アクリレート共重合体(EAA)樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)樹脂、アイオノマー(ION)樹脂などが、単体でまたは2種類以上混合して用いられる。
【0033】
化学的な消臭剤として、臭気原因物質を化学的に吸着する公知の物質が用いられ、ターゲットとする臭気原因物質に応じて適宜選択される。具体的に、ターゲットとする臭気原因物質がアルデヒド類の場合、消臭剤として、例えば、アミン系化合物担持二酸化珪素、アミン系有機化合物とケイ酸塩系無機化合物との複合物、層間にアミノ基を保持した層状リン酸塩などが用いられる。また、ターゲットとする臭気原因物質が酸類の場合、消臭剤として、例えば、水酸基担持ジルコニウム、アルミノケイ酸、水酸基担持酸化亜鉛などが用いられる。化学的な消臭剤は、例えば、溶融押出し時に、通常のマスターバッチ方式のブレンド法などにより、バインダー樹脂へ添加される。この積層フィルム100は、化学的な消臭剤を有することで、物理的な消臭剤を有する積層フィルムに比べて、外観(肌荒れ、透明性)が良好となる。
【0034】
ここで、臭気原因物質であるアルデヒド類を消臭する場合の消臭機構について、図3(a)、(b)を用いて説明する。図3(a)はアルデヒド類用消臭剤161がアルデヒド類510を化学的に吸着する前の状態を示した図であり、図3(b)はアルデヒド類用消臭剤161がアルデヒド類510を化学的に吸着した後の状態を示した図である。図3(a)に示されるように、アルデヒド類用消臭剤161は、アミノ基を担持している。アルデヒド類用消臭剤161のアミノ基は、アルデヒド類510のアルデヒド基と化学反応して共有結合を形成する。そして、図3(b)に示されるように、アルデヒド類用消臭剤161は、アルデヒド類510を化学的に吸着する。そのため、アルデヒド類510は、アルデヒド類用消臭剤161から脱離しにくい。また、アルデヒド類510は、化学反応によって無臭の物質に化学変化している。そのため、アルデヒド類510が化学変化した物質が、たとえアルデヒド類用消臭剤161から脱離したとしても、無臭の物質が放出されることになる。
【0035】
次に、臭気原因物質である酸類、特に脂肪酸類を消臭する場合の消臭機構について、図4(a)、(b)を用いて説明する。図4(a)は脂肪酸類用消臭剤162が脂肪酸類520を化学的に吸着する前の状態を示した図であり、図4(b)は脂肪酸類用消臭剤162が脂肪酸類520を化学的に吸着した後の状態を示した図である。図4(a)に示されるように、脂肪酸類用消臭剤162は、ヒドロキシル基を担持している。脂肪酸類用消臭剤162のヒドロキシル基は、脂肪酸類520のカルボキシル基と化学反応してイオン結合を形成する。そして、図4(b)に示されるように、脂肪酸類用消臭剤162は、脂肪酸類520を化学的に吸着する。そのため、脂肪酸類520は、脂肪酸類用消臭剤162から脱離しにくい。
【0036】
<シール層>
シール層170は、蓋材400を底材300にシール(ヒートシール、超音波シール、高周波シール、インパルスシール等)するためのシール機能を有し、包装体200に収容される内容物に対して悪影響を及ぼさないものである。シール層170の材料として、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、中密度ポリエチレン(MDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)樹脂、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)樹脂、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)樹脂、エチレン−アクリレート共重合体(EAA)樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)樹脂、アイオノマー(ION)樹脂などが、単体でまたは2種類以上混合して用いられる。
【0037】
シール層170は、酸化防止剤を含有していてもよいし、酸化防止剤を含有していなくてもよい。シール層170が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が用いられ、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが、単体でまたは2種類以上混合して用いられる。
【0038】
<包装体>
図2に示されるように包装体200は、底材300と、蓋材400とから構成される。底材300には、外層110が外側でシール層170が内側となるようにして、ポケット310が成形されている。
【0039】
蓋材400の材料として、例えば、2軸延伸したポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、金属酸化物を蒸着した2軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルム(VM−PETフィルム)、またはポリエチレン樹脂を積層したフィルム等が用いられる。内部の空気を除去した底材300のポケット310には、食品、飲料または工業用部品などの内容物が収容される。ポケット310に内容物が収容された後、蓋材400が底材300にシールされ、底材300のポケット310が密封される。
【0040】
<本実施形態における効果>
この積層フィルム100は、化学吸着層160によって、臭気原因物質を良好に抑制することができる。また、この積層フィルム100では、臭気原因物質を物理的に吸着する積層フィルムに比べて、吸着後の臭気原因物質の脱離が起きにくい。
【0041】
また、臭気原因物質は、化学反応によって無臭の物質に化学変化する。そのため、臭気原因物質が化学変化した物質が、たとえ積層フィルム100から脱離したとしても、無臭の物質が放出されることになる。さらに、この積層フィルム100は、臭気原因物質を物理的に吸着する積層フィルムに比べて、臭気原因物質の選択性の高い消臭ができ、かつ、消臭容量が大きい。
【0042】
例えば、この積層フィルム100が、酸素を吸収して臭気原因物質を放出する酸素吸収層150を備える場合、この積層フィルム100は、化学吸着層160がアルデヒド類および酸類の少なくとも一方を化学的に吸着することで、臭気原因物質を良好に抑制することができる。また、内容物から臭気原因物質が放出される場合であっても、この積層フィルム100は、化学吸着層がアルデヒド類および酸類の少なくとも一方を化学的に吸着することで、臭気原因物質を良好に抑制することができる。
【0043】
例えば、この積層フィルム100が、酸素を吸収して臭気原因物質を放出する酸素吸収層150を備える場合、この積層フィルム100は、化学吸着層160がアルデヒド類および酸類の少なくとも一方を化学的に吸着することで、臭気原因物質を良好に抑制することができる。また、内容物から臭気原因物質が放出される場合であっても、この積層フィルム100は、化学吸着層がアルデヒド類および酸類の両方を化学的に吸着することで、臭気原因物質を良好に抑制することができる。
【0044】
この積層フィルム100を包装体200に用いた場合、酸素吸収層150は、包装体200内部の酸素を吸収し、内容物の酸化を抑制することができる。しかし、酸素吸収層150のなかには、酸素を吸収して臭気原因物質を放出するものがある。かかる場合であっても、この積層フィルム100は、化学吸着層160によって、臭気原因物質を良好に抑制することができる。
【0045】
酸素吸収層150が酸素を吸収して臭気原因物質を放出する場合であっても、化学吸着層160が酸素吸収層150と隣接して配置されることによって、この積層フィルム100は、臭気原因物質をより良好に抑制することができる。
【0046】
この包装体200は、積層フィルム100の化学吸着層160によって、臭気原因物質を良好に抑制することができる。
【0047】
<変形例>
(A)
図5に示されるように、積層フィルム100aでは、積層フィルム100の化学吸着層160およびシール層170の2層に代えて、吸着シール層180が1層設けられてもよい。吸着シール層180は、化学吸着機能およびシール機能を有し、上記のシール層170の材料に、消臭剤が添加されたものである。この消臭剤は、上記の化学吸着層160で用いられるものと同様のものが用いられる。この積層フィルム100aは、臭気原因物質の吸着を目的とする化学吸着層160をシール層170とは別に設ける必要がないので、臭気原因物質に対する化学的な吸着性を有しつつ、製造コストを低減することができる。
【0048】
(B)
積層フィルム100の化学吸着層160は、酸素吸収層150と隣接していなくてもよい。具体的に、積層フィルム100には、酸素吸収層150と化学吸着層160との間に第3接着層が設けられてもよい。この第3接着層は、酸素吸収層150と化学吸着層160とを接着する機能を有する。第3接着層の材料として、第1接着層、第2接着層と同様の材料が用いられる。
【0049】
積層フィルム100,100aは、外層110、第1接着層120、バリア層130、第2接着層140、酸素吸収層150、化学吸着層160、シール層170、吸着シール層180以外の機能層をさらに備えてもよい。また、積層フィルム100,100aは、第1接着層120、バリア層130、第2接着層140、および酸素吸収層150のうちの少なくとも1層を省略してもよい。
【0050】
(C)
酸素吸収層150の酸素吸収剤は、酸素吸収性樹脂ではなく、例えば、主に鉄粉から成る鉄粉系酸素吸収剤が用いられていてもよい。この場合、鉄粉系酸素吸収剤は、公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン類、エラストマー及びこれらの変性物、あるいはこれらの混合樹脂などに添加されて用いられる。
【0051】
(D)
積層フィルム100は、シール層170に代えて、シール機能を有していない層を備えていてもよい。シール機能を有していない層とは、例えば、包装体200に収容される内容物と酸素吸収層150とが直接接触しないように酸素吸収層150を保護し、かつ、内容物に対して悪影響を及ぼさないものである。
【0052】
(E)
積層フィルム100,100aは、蓋材400に成形されてもよいし、底材300と蓋材400との両方に成形されてもよい。なお、積層フィルム100から成る蓋材400を備える包装体200においては、蓋材400のシール層170が底材300と対向するようにして配置される。同様に、積層フィルム100aから成る蓋材400を備える包装体200においては、蓋材400の吸着シール層180が底材300と対向するようにして配置される。
【実施例】
【0053】
次に、本発明の積層フィルム100aから成る底材300を備える包装体200に係る実施例と、比較例とについて説明する。なお、これら実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
<底材の作製>
外層110を構成する樹脂として、共重合ポリエステル樹脂(イーストマンケミカルジャパン株式会社製、品番:GN071)を準備した。第1接着層120を構成する樹脂として、接着性ポリオレフィン系樹脂(三井化学株式会社製、品番:SF740)を準備した。バリア層130を構成する樹脂として、EVOH樹脂(株式会社クラレ製、品番:J171B)を準備した。第2接着層140を構成する樹脂として、接着性ポリオレフィン系樹脂(三井化学株式会社製、品番:LF308)を準備した。酸素吸収層150を構成する樹脂として、ベース樹脂を80重量%、不飽和ポリオレフィン系酸素吸収樹脂を20重量%の割合で混合したものを準備した。吸着シール層180を構成する樹脂として、LDPE樹脂(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、品番:F522N)を準備した。
【0055】
酸素吸収層150のベース樹脂および不飽和ポリオレフィン系酸素吸収樹脂の混合物には、含有率が酸素吸収層150に対して重量比率で1000ppmとなるように、酸素吸収反応触媒であるステアリン酸コバルトを添加した。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して2重量%の割合で、化学的な消臭剤であるアミン系化合物担持二酸化ケイ素(東亜合成株式会社製、品番:ケスモンNS−241)を添加した。
【0056】
吸着シール層180のLDPE樹脂と、酸素吸収層150のベース樹脂および不飽和ポリオレフィン系酸素吸収樹脂の混合物と、第2接着層140の接着性ポリオレフィン系樹脂と、バリア層130のEVOH樹脂と、第1接着層120の接着性ポリオレフィン系樹脂と、外層110の共重合ポリエステル樹脂とをこの順で共押出しし、積層フィルム100aを作製した(図5参照)。得られた積層フィルム100aにおいて、吸着シール層180の厚さは10μm、酸素吸収層150の厚さは30μm、第2接着層140の厚さは20μm、バリア層130の厚さは40μm、第1接着層120の厚さは20μm、外層110の厚さは90μmであった。
【0057】
深絞り型全自動真空包装機(MULTIVAC社製、型番:R−530)を用いて、成形温度95℃、成形時間3秒の条件で、積層フィルム100aにポケット310(長辺160mm×短辺105mm×深さ15mm、表面積240cm)を成形し、底材300を作製した。
【0058】
<蓋材の作製>
LLDPE樹脂(株式会社プライムポリマー製、品番:ウルトゼックス2022L)をTダイ押出法にて製膜し、厚さ30μmのLLDPEフィルムを得た。このLLDPEフィルムと、厚さ30μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)と、アルミ蒸着を施した厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(VM−PETフィルム)をドライラミネート法により貼り合せて、多層のフィルムである蓋材400を作製した。
【0059】
<包装体の作製>
底材300と蓋材400とを、ポケット310の内部の空気を除去することなく、135℃、1.5秒の条件でヒートシールして密封し、包装体200を作製した(図2参照)。包装体200の容積は250cmであった。
【0060】
<酸素濃度の測定>
図6に示されるように、食品用微量酸素分析計600(飯島電子工業株式会社製、型番:IS−300)を用いて、底材300と蓋材400とをヒートシールしたときから、すなわち密封した状態の包装体200の保管を開始してから1日目、3日目、9日目の包装体200内部の酸素濃度をそれぞれ測定した。1〜9日目までの保管は、23℃で行った。包装体200の酸素濃度の測定は、食品用微量酸素分析計600の針610を粘着ゴム620を介して蓋材400に突き刺した状態にして、保管温度5℃、サンプリング時間7秒の条件で行った。なお、下記の1日目、3日目、9日目の各酸素濃度の値は、底材300と蓋材400とをヒートシールした直後の酸素濃度(初期濃度)の値を100としたときの相対的な値である。
【0061】
上記の測定を行った結果、本実施例に係る1日目の酸素濃度は36.7、3日目の酸素濃度は7.6、9日目の酸素濃度は3.8であった(下記表1参照)。
【0062】
<臭気の測定および評価>
次に、におい識別装置(株式会社島津製作所製、品番:FF−2A)を用いて包装体200内部の臭気を測定した。におい識別装置は、人間の官能評価と同じように、臭気の「質」および「強さ」を表現できる装置であり、臭気の「強さ」および「質」を数値化することにより、臭気を客観的に評価することができる。具体的に、基準ガス(硫化水素、硫黄系、アンモニア、アミン系、有機酸系、アルデヒド系、エステル系、芳香族系、炭化水素系)とサンプルとの比較により、臭気を数値化およびパターン化することができる。
【0063】
まず、包装体200内から抜き取ったサンプル臭気をサンプルバックの中に入れ、さらに1000mlの乾燥窒素ガスをサンプルバックの中に入れ、6倍希釈した希釈サンプルを作製した。この希釈サンプルは、におい識別装置の検出感度適正範囲のものとなっている。この希釈サンプルをにおい識別装置に取り付け、臭気指数相当値を測定した(測定条件:25℃、ガス吸引時間90秒)。この測定を3回連続で行い、2回目と3回目の平均値を測定結果とした。なお、臭気指数相当値の差が3あれば、人間の嗅覚でもその差が判り、臭気としては約2倍の差があることに相当する。
【0064】
そして、包装体200の臭気について、臭気指数相当値が27.5未満であるものを○、臭気指数相当値が27.5以上30.0未満であるものを△、臭気指数相当値が30.0以上であるものを×で評価した。
【0065】
上記の測定を行った結果、本実施例に係る臭気指数相当値は24.7であり、臭気の評価は○であった(下記表1参照)。
【0066】
<外観の評価>
積層フィルム100aの外観について、肌荒れおよび透明性で評価した。積層フィルム100aの肌荒れは曇度20%未満であり、かつ、透明性は光線透過率85%以上であるものを○、積層フィルム100aの肌荒れは曇度20%以上であり、かつ、透明性は光線透過率85%以上であるものを△、積層フィルム100aの肌荒れは曇度20%以上であり、かつ、透明性が光線透過率85%未満であるものを×で評価した。
【0067】
上記の評価を行った結果、本実施例に係る外観の評価は○であった(下記表1参照)。
【0068】
(実施例2)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100aおよび包装体200を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して2重量%の割合で、化学的な消臭剤である水酸基担持ジルコニウム(東亜合成株式会社製、品番:ケスモンNS−80E)を添加した。
【0069】
この積層フィルム100aおよび包装体200について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0070】
その結果、本実施例に係る1日目の酸素濃度は50.1、3日目の酸素濃度は15.3、9日目の酸素濃度は3.1であった。臭気指数相当値は27.4であり、臭気の評価は○であった。外観の評価は△であった(下記表1参照)。
【0071】
(実施例3)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100aおよび包装体200を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して1重量%の割合で、化学的な消臭剤であるアミン系化合物担持二酸化ケイ素(東亜合成株式会社製、品番:ケスモンNS−241)と、吸着シール層180の全重量に対して1重量%の割合で、消臭剤である水酸基担持ジルコニウム(東亜合成株式会社製、品番:ケスモンNS−80E)とを添加した。
【0072】
この積層フィルム100aおよび包装体200について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0073】
その結果、本実施例に係る1日目の酸素濃度は54.3、3日目の酸素濃度は11.5、9日目の酸素濃度は2.3であった。臭気指数相当値は25.3であり、臭気の評価は○であった。外観の評価は○であった(下記表1参照)。
【0074】
(実施例4)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100aおよび包装体200を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して0.5重量%の割合で、化学的な消臭剤であるアミン系化合物担持二酸化ケイ素(東亜合成株式会社製、品番:ケスモンNS−241)と、吸着シール層180の全重量に対して0.5重量%の割合で、化学的な消臭剤である水酸基担持ジルコニウム(東亜合成株式会社製、品番:ケスモンNS−80E)とを添加した。
【0075】
この積層フィルム100aおよび包装体200について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0076】
その結果、本実施例に係る1日目の酸素濃度は48.4、3日目の酸素濃度は9.4、9日目の酸素濃度は3.8であった。臭気指数相当値は26.0であり、臭気の評価は○であった。外観の評価は○であった(下記表1参照)。
【0077】
(実施例5)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100aおよび包装体200を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して2重量%の割合で、化学的な消臭剤であるアルミノケイ酸(株式会社シナネンゼオミック製、品番:ゼオミックAW10D)を添加した。
【0078】
この積層フィルム100aおよび包装体200について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0079】
その結果、本実施例に係る1日目の酸素濃度は31.0、3日目の酸素濃度は6.5、9日目の酸素濃度は2.6であった。臭気指数相当値は27.5であり、臭気の評価は○であった。外観の評価は○であった(下記表1参照)。
【0080】
(実施例6)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100aおよび包装体200を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して2重量%の割合で、化学的な消臭剤であるアミン系有機化合物とケイ酸塩系無機化合物との複合物(株式会社シナネンゼオミック製、品番:ダッシュライトM)を添加した。
【0081】
この積層フィルム100aおよび包装体200について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0082】
その結果、本実施例に係る1日目の酸素濃度は42.3、3日目の酸素濃度は12.9、9日目の酸素濃度は2.6であった。臭気指数相当値は25.5であり、臭気の評価は○であった。外観の評価は○であった(下記表1参照)。
【0083】
(実施例7)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100aおよび包装体200を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して1重量%の割合で、化学的な消臭剤であるアルミノケイ酸(株式会社シナネンゼオミック製、品番:ゼオミックAW10D)と、吸着シール層180の全重量に対して1重量%の割合で、化学的な消臭剤であるアミン系有機化合物とケイ酸塩系無機化合物との複合物(株式会社シナネンゼオミック製、品番:ダッシュライトM)とを添加した。
【0084】
この積層フィルム100aおよび包装体200について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0085】
その結果、本実施例に係る1日目の酸素濃度は45.8、3日目の酸素濃度は9.7、9日目の酸素濃度は1.3であった。臭気指数相当値は26.0であり、臭気の評価は○であった。外観の評価は○であった(下記表1参照)。
【0086】
(実施例8)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100aおよび包装体200を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して2重量%の割合で、化学的な消臭剤である水酸基担持酸化亜鉛(テイカ株式会社製、品番:K−FRESH MZO)を添加した。
【0087】
この積層フィルム100aおよび包装体200について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0088】
その結果、本実施例に係る1日目の酸素濃度は30.0、3日目の酸素濃度は6.3、9日目の酸素濃度は3.1であった。臭気指数相当値は27.5であり、臭気の評価は○であった。外観の評価は△であった(下記表1参照)。
【0089】
(実施例9)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100aおよび包装体200を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して2重量%の割合で、化学的な消臭剤である層間にアミノ基を保持した層状リン酸塩(テイカ株式会社製、品番:K−FRESH ZA)を添加した。
【0090】
この積層フィルム100aおよび包装体200について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0091】
その結果、本実施例に係る1日目の酸素濃度は40.9、3日目の酸素濃度は12.5、9日目の酸素濃度は3.4であった。臭気指数相当値は25.8であり、臭気の評価は○であった。外観の評価は○であった(下記表1参照)。
【0092】
(実施例10)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100aおよび包装体200を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して1重量%の割合で、化学的な消臭剤である水酸基担持酸化亜鉛(テイカ株式会社製、品番:K−FRESH MZO)と、吸着シール層180の全重量に対して1重量%の割合で、化学的な消臭剤である層間にアミノ基を保持した層状リン酸塩(テイカ株式会社製、品番:K−FRESH ZA)とを添加した。
【0093】
この積層フィルム100aおよび包装体200について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0094】
その結果、本実施例に係る1日目の酸素濃度は44.4、3日目の酸素濃度は9.4、9日目の酸素濃度は1.3であった。臭気指数相当値は26.1であり、臭気の評価は○であった。外観の評価は○であった(下記表1参照)。
【0095】
(比較例1)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルムおよび包装体を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、消臭剤を添加しなかった。また、積層フィルムには、酸素吸収層を設けなかった。
【0096】
この積層フィルムおよび包装体について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0097】
その結果、本比較例に係る1日目の酸素濃度は101.2、3日目の酸素濃度は102.9、9日目の酸素濃度は104.7であった。臭気指数相当値は25.5であり、臭気の評価は○であった。外観の評価は○であった(下記表1参照)。
【0098】
(比較例2)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルムおよび包装体を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、消臭剤を添加しなかった。
【0099】
この積層フィルムおよび包装体について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0100】
その結果、本比較例に係る1日目の酸素濃度は57.4、3日目の酸素濃度は7.6、9日目の酸素濃度は0.0であった。臭気指数相当値は30.1であり、臭気の評価は×であった。外観の評価は○であった(下記表1参照)。
【0101】
(比較例3)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルムおよび包装体を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して2重量%の割合で、物理的な消臭剤であるα‐シクロデキストリン(株式会社シクロケム製、品番:CAVAMAX(R) W6 Food)を添加した。
【0102】
この積層フィルムおよび包装体について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0103】
その結果、本比較例に係る1日目の酸素濃度の酸素濃度は48.4、3日目の酸素濃度は6.5、9日目の酸素濃度は1.9であった。臭気指数相当値は29.0であり、臭気の評価は△であった。外観の評価は×であった(下記表1参照)。
【0104】
(比較例4)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルムおよび包装体を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して2重量%の割合で、物理的な消臭剤であるヒドロキシアパタイト(丸尾カルシウム株式会社製、品番:HAP−05NP)を添加した。
【0105】
この積層フィルムおよび包装体について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0106】
その結果、本比較例に係る1日目の酸素濃度の酸素濃度は54.8、3日目の酸素濃度は8.4、9日目の酸素濃度は2.6であった。臭気指数相当値は30.0であり、臭気の評価は×であった。外観の評価は△であった(下記表1参照)。
【0107】
(比較例5)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルムおよび包装体を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、吸着シール層180の全重量に対して2重量%の割合で、物理的な消臭剤である超微粒子酸化亜鉛(石原産業株式会社製、品番:FZO−50)を添加した。
【0108】
この積層フィルムおよび包装体について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0109】
その結果、本比較例に係る1日目の酸素濃度の酸素濃度は51.6、3日目の酸素濃度は9.7、9日目の酸素濃度は1.3であった。臭気指数相当値は29.0であり、臭気の評価は△であった。外観の評価は△であった(下記表1参照)。
【0110】
(比較例6)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルムおよび包装体を得た。吸着シール層180のLDPE樹脂には、消臭剤を添加しなかった。酸素吸収層150を構成する樹脂として、ポリプロピレン樹脂を準備した。酸素吸収層150のポリプロピレン樹脂には、酸素吸収層150の全重量に対して20重量%の割合で、鉄系酸素吸収剤を添加した。なお、鉄系酸素吸収剤では、酸素の吸収反応に水分が必要となる。そのため、底材300に水6mlを入れてから、底材300と蓋材400とを、ポケット310の内部の空気を除去することなく、135℃、1.5秒の条件でヒートシールして密封し、包装体を作製した。
【0111】
この積層フィルムおよび包装体について、実施例1と同様にして、酸素濃度の測定、臭気の測定および評価、外観の評価を行った。
【0112】
その結果、本比較例に係る1日目の酸素濃度の酸素濃度は30.5、3日目の酸素濃度は0.5、9日目の酸素濃度は0.0であった。臭気指数相当値は25.8であり、臭気の評価は○であった。外観の評価は×であった(下記表1参照)。
【0113】
【表1】

【0114】
実施例1〜10に係る積層フィルム100aおよび包装体200では、保管日数が延びるにつれて酸素濃度が低下していた。また、臭気の評価が○であり、外観の評価が○または△であった。これに対して、比較例1〜6に係る積層フィルムおよび包装体では、保管日数が延びるにつれて酸素濃度が増加しているか、臭気の評価が△または×であるか、または外観の評価が×であった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明に係る積層フィルムは、消臭性に優れるので、食品または飲料などの包装材料として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0116】
100,100a 積層フィルム
110 外層
120 第1接着層
130 バリア層
140 第2接着層
150 酸素吸収層
160 化学吸着層
161 アルデヒド類用消臭剤
162 脂肪酸類用消臭剤
170 シール層
180 吸着シール層(化学吸着層)
200 包装体
300 底材
310 ポケット
400 蓋材
510 アルデヒド類
520 脂肪酸類(酸類)
600 食品用微量酸素分析計
610 針
620 粘着ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気原因物質を化学的に吸着する化学吸着層を備える積層フィルム。
【請求項2】
前記化学吸着層は、前記臭気原因物質であるアルデヒド類および酸類の少なくとも一方を化学的に吸着する請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記化学吸着層は、前記臭気原因物質であるアルデヒド類および酸類の両方を化学的に吸着する請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
酸素を吸収する酸素吸収層をさらに備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記化学吸着層は、前記酸素吸収層と隣接して配置される請求項4に記載の積層フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層フィルムを備えることを特徴とする包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−240329(P2012−240329A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113706(P2011−113706)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】