説明

積層フィルムおよび包装袋

【課題】内容物に含まれる有機成分に対する非吸着性と、ヒートシール性及び耐衝撃性を向上することが可能なシーラントを有する積層フィルムおよび包装袋を提供する。
【解決手段】基材と、積層フィルムの一方の最表面となるシーラント層とを含む複数の層を有する積層フィルムにおいて、シーラント層は、シクロオレフィンポリマーと、ポリエチレン系樹脂と、無水マレイン酸変性ポリエチレンを含有する樹脂組成物からなる。好ましいシーラント層は、シクロオレフィンポリマーを85〜95質量%、ポリエチレンまたはエチレン−α−オレフィン共重合体を2.5〜7.5質量%、無水マレイン酸変性ポリエチレンを2.5〜7.5質量%の範囲内で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子量の有機化合物に対する非吸着性およびバリア性に優れ、かつ安定したヒートシールが可能なシーラント層を有する積層フィルムおよび包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポリオレフィン系樹脂をシーラントとした包装フィルムは低分子量の有機化合物に対する非吸着性およびバリア性が劣り、飲食物や化粧品等の香気成分が吸着して風味が変化したり、化粧品や薬剤等の微量な有効成分が浸透あるいは吸着して効能が低下したりする欠点がある。また、包装フィルムに対する影響としては、内容品に含まれる香味成分やアルコール類、界面活性剤などの有機成分が浸透することにより、包装フィルム内部の接着剤層やアンカー剤層、印刷層等に悪影響を及ぼして層間のラミネート強度を低下させ、デラミネーション(剥離)を起こすおそれがあるという問題もある。
【0003】
特許文献1には、シクロオレフィンコポリマー(COC)を特定のエチレン−α−オレフィン共重合体にブレンドした樹脂組成物が記載されている。
特許文献2には、シクロオレフィンコポリマー(COC)に無水マレイン酸等の重合性不飽和カルボン酸で変性したポリプロピレンからなるヒートシール用樹脂組成物をアルミニウム箔に被覆したヒートシール層が設けられているイージーピール性の蓋材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−291364号公報
【特許文献2】特開平9−104464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の場合、エチレン−α−オレフィン共重合体がベース樹脂(主成分となる樹脂)であるため、包装フィルムを袋としたときに内容物に含まれる上記有機成分がシーラントに吸着しやすいという問題がある。
特許文献2の場合、無水マレイン酸変性ポリプロピレンのブレンドではヒートシール強度が向上しないため、包装袋のシーラントとしては使用できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内容物に含まれる有機成分に対する非吸着性と、ヒートシール性及び耐衝撃性を向上することが可能なシーラントを有する積層フィルムおよび包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、基材と、積層フィルムの一方の最表面となるシーラント層とを含む複数の層を有する積層フィルムにおいて、前記シーラント層は、シクロオレフィンポリマーと、ポリエチレン系樹脂と、無水マレイン酸変性ポリエチレンを含有する樹脂組成物からなることを特徴とする積層フィルムを提供する。
前記シーラント層は、シクロオレフィンポリマーを85〜95質量%、ポリエチレンまたはエチレン−α−オレフィン共重合体を2.5〜7.5質量%、無水マレイン酸変性ポリエチレンを2.5〜7.5質量%の範囲内で含有することが好ましい。
また、本発明は、上述の積層フィルムからなり、前記シーラント層をヒートシールしてなるヒートシール部を有することを特徴とする包装袋を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内容物に含まれる有機成分に対する非吸着性と、ヒートシール性及び耐衝撃性を向上することが可能なシーラントを有する積層フィルムおよび包装袋を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、好適な実施の形態に基づき、本発明を説明する。
本形態例の積層フィルムは、基材とシーラント層、必要に応じて他の中間層を積層したものである。すなわち、積層フィルムの一方の最表面となるシーラント層と基材、必要に応じて他の中間層、接着剤層やアンカー剤層などの複数の層を有する。そして、シーラント層は、シクロオレフィンポリマー(A)と、ポリエチレン系樹脂(B)と、無水マレイン酸変性ポリエチレン(C)を含有する樹脂組成物からなる。
ここで、シーラント層とは、ヒートシールに用いられる層であり、包装材料としては内容品に接する最内層に配置されるものである。
基材または他の中間層とシーラント層との積層は、接着剤層又はアンカー剤層を介しても良いし、基材に直接積層されていても良い。前記中間層としては、補強層、ガスバリア層、遮光層、印刷層など、適宜、一層または複数層を選択することができる。
【0010】
本発明のシーラント層に用いられるシクロオレフィンポリマー(A)は、例えば環状オレフィンの単独重合体もしくは2種以上の環状オレフィンの共重合体であり、通常COP(Cycloolefin polymer)と称されるものである。
【0011】
シクロオレフィンポリマー(A)の構成モノマーとして使用される環状オレフィンとしては、例えば、炭素原子数が3〜20のシクロアルカンを有するビニルシクロアルカンおよびその誘導体、あるいは下記化学式に示すように、炭素原子数が3〜20のモノシクロアルケンおよびその誘導体、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(ノルボルネン)およびその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセンおよびその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセンおよびその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセンおよびその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]−5−ペンタコセンおよびその誘導体等が挙げられる。
【0012】
【化1】

【0013】
本発明のシーラント層に用いられるシクロオレフィンポリマー(A)は、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、メタセシス等による環状オレフィンの開環重合体あるいはその水素添加物である。シクロオレフィンポリマー(COP)は、COC等に比べて脂環式構造を含有する比率が高く、非吸着性に優れるため、好ましい。
【0014】
本発明のシーラント層に用いられるポリエチレン系樹脂(B)は、実用的なヒートシール温度(例えば180℃程度)で強いヒートシール強度を得るために配合される。
ポリエチレン系樹脂(B)としては、ポリエチレン(PE)、エチレンと炭素数が4個のα−オレフィン(1−ブテン等)を共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(C4−LLDPE)、エチレンと炭素数が6個のα−オレフィン(1−ヘキセン等)を共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(C6−LLDPE)、エチレンと炭素数が8個のα−オレフィン(1−オクテン等)を共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(C8−LLDPE)、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)などが挙げられる。
ポリエチレン系樹脂(B)は、エチレンの単独重合体(ポリエチレン)またはエチレンとエチレン以外の非環状オレフィン(例えばα−オレフィン)との共重合体が好ましい。
ポリエチレン系樹脂(B)は、該樹脂自身の融点や組成物中の配合量を適宜選択することが好ましい。PPのような比較的高融点のポリオレフィン系樹脂に比べると、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE。メタロセン触媒により重合したLLDPE)等のポリエチレン(PE)、あるいは、C4−LLDPE、C6−LLDPE、C8−LLDPE等のエチレン−α−オレフィン共重合体は、シーラント層の融点を適度なものとすることができるので、好ましい。
【0015】
本発明のシーラント層に用いられる無水マレイン酸変性ポリエチレン(C)は、無水マレイン酸(MAH)をエチレンと共重合したエチレン−無水マレイン酸共重合体や、ポリエチレンに無水マレイン酸をグラフト重合したもの等が挙げられる。
【0016】
シーラント層は、シクロオレフィンポリマー(A)と、ポリエチレン系樹脂(B)と、無水マレイン酸変性ポリエチレン(C)を含有する樹脂組成物からなる。外樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤等が挙げられる。
【0017】
本発明では、非吸着性であるシクロオレフィンポリマー(A)をベース樹脂(主成分)とするシーラントにおいて、改質剤としてポリエチレン系樹脂(B)を、これと共に、中間剤として無水マレイン酸変性ポリエチレン(C)を使用することにより、低温でも十分なヒートシール強度が得られ、また、耐衝撃性が劣化しにくい製品が得られる。
シーラント層は、シクロオレフィンポリマー(A)を85〜95質量%、ポリエチレン系樹脂(B)を2.5〜7.5質量%、無水マレイン酸変性ポリエチレン(C)を2.5〜7.5質量%の範囲内で含有することが好ましい。
【0018】
積層フィルムの基材としては、耐熱性や強度などの機械的特性、印刷適性に優れた延伸フィルムが好ましく、具体的には、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(O−PET)フィルム、2軸延伸ナイロン(O−Ny)フィルム、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム等を挙げることができる。前記基材の厚さは通常10〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。
【0019】
シーラント層の内側には、シーラント層を基材または他のフィルムと接着するため、アンカー剤層または接着剤層が介在されることが好ましい。シーラント層を押出ラミネート法で形成する場合には、シーラント層の内側に接するアンカー剤層が形成される。基材としてO−PETを用いる場合にはアンカー剤層を用いなくとも良い。予め単層フィルムとして作製したシーラント層をドライラミネート法によって基材または他のフィルムと接着する場合には、シーラント層の内側に接する接着剤層が形成される。また、共押出法を用いる場合は酸変性ポリオレフィンなどの接着性樹脂を用いても良い。
前記アンカー剤層を構成するアンカー剤としては、ポリウレタン系、ポリエーテル系、アルキルチタネート(有機チタン化合物)系等、一般的に押出ラミネート法に使用されるアンカー剤が使用でき、積層フィルムの用途に合わせて選択可能である。
前記接着剤層を構成する接着剤としては、ポリウレタン系、ポリエーテル系等、一般的にドライラミネート法に使用される接着剤を使用でき、積層フィルムの用途に合わせて選択可能である。
【0020】
前記シーラント層の内側のアンカー剤層または接着剤層と前記基材との間には、中間層としてガスバリア層や補強層などが存在していても構わない。
補強層は積層フィルムの強度特性を補完する役割であって、補強層を構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(O−PET)、2軸延伸ナイロン(O−Ny)、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)等を挙げることができる。補強層の厚みは、通常5〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。
【0021】
ガスバリア層は、酸素や水蒸気等のガスが積層フィルムを透過することを遮断するためガスバリア性を付与する機能を有する。このようなガスバリア層としては、金属箔、アルミニウムや無機酸化物の蒸着層、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン等のガスバリア性樹脂層が挙げられる。なお、バリア層を補強層として共用しても構わない。これらのガスバリア層は、基材または補強層を構成するフィルムの片面に設けることができ、一般には基材とシーラント層との間の中間層として設けられる。無機酸化物蒸着層の場合は、基材よりも外側の最外層(積層フィルムにおいてシーラント層の反対側の最表層)としても利用できる。
ガスバリア層の厚みは、金属箔またはガスバリア性樹脂層による場合は通常5〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。ガスバリア層として金属蒸着層または無機酸化物蒸着層を用いる場合には、これより薄くすることができる。
【0022】
本発明の積層フィルムを製造する方法としては、特に限定されることなく、押出ラミネート法、ドライラミネート法、共押出法またはこれらの併用により、積層フィルムを構成する各層を適宜積層すればよい。
本形態例の積層フィルムにおいて、シーラント層の厚さは、包装材料の用途にも依存し、特に限定されるものではないが、通常は5〜150μm程度であり、好ましくは15〜80μmである。
【0023】
本形態例の積層フィルムは、ヒートシール性と加工適性がともに優れるので、通常の製袋機や製袋充填機を用いた製袋に適している。
本形態例の包装袋は、上述の積層フィルムを前記シーラント層によりヒートシールしてなるものであり、低分子量成分の非吸着性およびバリア性にも優れているから、飲食物や化粧品、薬剤等の包装袋として好適に利用できる。包装袋の形態は、三方袋、四方袋、合掌貼り袋、ガゼット袋、自立袋等の包装袋(パウチ)のほか、例えばバッグインボックス用の内袋やドラム缶内装袋などの大型の袋等、特に限定なく適用可能である。
【0024】
本発明の包装袋に注出口を設ける場合、注出口としては、包装袋を構成する積層フィルムのシーラント層と接合して密封性が確保できれば好適に使用できるが、より好ましくは、前記積層フィルムのシーラント層とヒートシール可能な樹脂からなる注出口を用いて、注出口と積層フィルムとをヒートシールによって接合することが望ましい。積層フィルムと注出口をヒートシールする場合、シーラント層を内側として積層フィルムを重ね合わせた間に注出口を挿入してヒートシールしてもよいし、注出口の一端にフランジ部や舟形形状の融着基部を設け、このフランジ部や融着基部を積層フィルムに設けた穴の周縁や包装袋の開口部内面とヒートシールしてもよい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0026】
(シーラント材)
表1に示す組成により、各実施例および比較例のシーラント材を製造した。シーラント材の製造は、各材料を溶融混練後、押出成形により、所定の厚さのフィルム状に成形する方法により実施した。
【0027】
【表1】

【0028】
なお、表1において用いた略語の意味は、次のとおりである。
「COP」・・・シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン株式会社製、商品名ZEONOR(登録商標)1020R)
「PO(1)」・・・メタロセン触媒LLDPE(ρ=0.937、Tm=126℃、MFR=4.0)
「PO(2)」・・・オクテン−1共重合LLDPE(ρ=0.923、Tm=121℃、MFR=2.0)
「PO(3)」・・・メタロセン触媒LLDPE(ρ=0.90、Tm=111℃、MFR=6.0)
「MAH−PE(1)」・・・無水マレイン酸変性LLDPE(ρ=0.90、Tm=119℃、MFR=1.0)
「MAH−PE(2)」・・・無水マレイン酸変性LLDPE(ρ=0.90、Tm=111℃、MFR=6.0)
【0029】
(積層フィルムの製造)
厚み30μmのシーラント材をPETフィルムおよびAl箔とドライラミネートにより貼り合わせ、PET12μm/Al箔9μm/シーラント材30μmの層構成を有する積層フィルムを得た。
【0030】
(評価方法)
上記積層フィルムからパウチを作製し、下記に説明する評価を行った。ただし(2)の引張特性は、シーラント材から作製した試験片を評価した。
【0031】
(1)シール強度
JIS Z 1526に準じて、パウチのヒートシール部のシール強度を引張速度300mm/分、幅15mmにて測定した。ヒートシール条件は、140℃、160℃、180℃、200℃、220℃のうちのいずれかの温度において、圧力0.2MPaで1秒間加熱および加圧するものである。
【0032】
(2)引張特性
シーラント材の引張強度及び引張伸度は、JIS K 7127「プラスチック−引張特性の試験方法」に規定された測定方法に準じて測定した。試験片の幅は15mm、引張速度は300mm/minとした。
【0033】
(3)酢酸α−トコフェロールの残存率
有効成分として酢酸α−トコフェロール(ビタミンEアセテート)を含む市販の化粧水2.5mlをパウチに入れ、パウチの開口部を圧力0.2MPa、時間1秒、温度180℃でヒートシールして密封した。密封したパウチを40℃で1ヶ月ないし3ヶ月保管した後に開封し、化粧水中の酢酸α−トコフェロールの残存量を高速液体クロマトグラフィ法で定量し、前記残存量をもとに有効成分の残存率を算出した。
【0034】
(4)静耐圧
三方シール(液体小袋充填機)により50mm×80mmの寸法で、ヒートシール条件を、縦シール部:温度220℃,圧力0.1MPa,シール幅10mm、横シール部:温度190〜220℃,圧力0.09MPa,シール幅10mm、製袋ショット数:30ショット/分とし、各パウチに内容物(水)を2.5cc充填しながらパウチを作製した。パウチを水平で平坦な載置台の上に平置きにし、さらにパウチの上にパウチ寸法より大きい押圧板を乗せ、押圧板を載置台に向けて荷重80kgf(784N)で1分間押圧し、パウチに均等な圧力を印加した後、パウチのシール部の状態(最小幅)を確認した。横シール温度を、190℃、200℃、210℃、220℃の4通りとし、それぞれにつき20個のサンプルを作製して試験に供した。
シール部に異常が認められないものを「○」(良)、シール幅が後退する(内側からの圧力によりシール部が狭くなる)箇所が認められたもの(内容物の漏れがないもの)を「△」(可)、シール部に剥がれ(内容物の漏れ)が認められたものを「×」(不可)と評価した。
【0035】
評価結果を以下の表に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
以上の結果より、本発明(実施例1,2)によれば、非吸着性であるシクロオレフィンポリマーをベース樹脂(主成分)とするシーラントにおいて、ポリエチレン系樹脂と共に、中間剤として無水マレイン酸変性ポリエチレンを使用したことにより、200℃以下の低温でも十分なヒートシール強度(表2)が得られた。シクロオレフィンポリマーのみをシーラントとする比較例1は、220℃という高温でも、ヒートシール強度はあまり高くならなかった。
シクロオレフィンポリマーにポリエチレン系樹脂または無水マレイン酸変性ポリエチレンの一方のみをブレンドした場合、180℃ないし200℃程度でのヒートシール強度が比較的低い結果となった。
【0041】
実施例1,2は、シクロオレフィンポリマーのみ(比較例1)と比べ、酢酸トコフェロール残存率がほぼ同等の結果(表3)となった。
また、実施例1,2は、シクロオレフィンポリマーのみ(比較例1)や、シクロオレフィンポリマーとポリエチレン系樹脂の2種ブレンド(比較例2〜4)に比べて引張伸度(表3)も大きく向上した。
比較例4として、実施例2に使用した無水マレイン酸変性LLDPEと密度、融点、MFRが同じメタロセン触媒LLDPEを使用したが、低温でのヒートシール強度が得られなかった。
実施例2によるパウチは、静耐圧試験(表4,5)においても、ブレンドしない場合(比較例1)に比べて、シール部の異常が少ないことを確認できた。これにより、ヒートシール時に制御のばらつき等のためにシール温度が200℃以下となることがあっても、耐衝撃性が劣化しにくい製品が得られるので、歩留まりを向上することができる。
なお、無水マレイン酸変性ポリエチレンの代わりに、無水マレイン酸変性ポリプロピレンを使用した場合は、この効果が確認できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、特に、飲食物や化粧品、薬剤等、香料や有効成分を含有する内容品の包装に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、積層フィルムの一方の最表面となるシーラント層とを含む複数の層を有する積層フィルムにおいて、
前記シーラント層は、シクロオレフィンポリマーと、ポリエチレン系樹脂と、無水マレイン酸変性ポリエチレンを含有する樹脂組成物からなることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記シーラント層は、シクロオレフィンポリマーを85〜95質量%、ポリエチレンまたはエチレン−α−オレフィン共重合体を2.5〜7.5質量%、無水マレイン酸変性ポリエチレンを2.5〜7.5質量%の範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の積層フィルムからなり、前記シーラント層をヒートシールしてなるヒートシール部を有することを特徴とする包装袋。

【公開番号】特開2012−187809(P2012−187809A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53140(P2011−53140)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】