説明

積層フィルムおよび粘着テープ

【課題】長手方向の像鮮明度と幅方向の像鮮明度との差が小さくて透過光のゆがみが少なく、かつ、所望の機械的物性が実質的に低下しない、積層フィルムおよび粘着テープを提供すること。
【解決手段】本発明の積層フィルムは、基材層と表面層とを有する積層フィルムであって、該基材層が熱可塑性樹脂を含み、該表面層がポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体を含み、該積層フィルムの長手方向の像鮮明度と該積層フィルムの幅方向の像鮮明度との差の絶対値が10%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよび粘着テープに関する。より詳細には、長手方向の像鮮明度と幅方向の像鮮明度との差が小さい積層フィルムおよび粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フィルムおよび粘着テープは、その目的(例えば、外観調整)に応じたヘイズ値および表面粗さに調整される。ヘイズ値および表面粗さを調整する方法としては、Tダイ押出しタッチロール成形法、すなわち凹凸パターンを有する金属ロールにTダイ押出しされた溶融樹脂を接触させ、樹脂表面(フィルム表面)に当該凹凸パターンを転写させる方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
しかし、Tダイ押出しタッチロール成形法では、高速成形を行おうとすると樹脂の冷却不足により溶融樹脂が金属ロール側に巻き付くという加工不良の問題が生じたり、金属ロールの凹凸パターンが樹脂に十分転写されないという問題が生じたりする。
【0004】
さらに、Tダイ押出しタッチロール成形法では、フィルムの剥離性を良くする目的でタッチロールゴム面にも凹凸加工が施されることが一般的であり、この凹凸がフィルムのヘイズ値に影響を及ぼすことから、所望のヘイズ値(特に、中・低ヘイズ値)を有するフィルムが得難いという問題が生じる。
【0005】
Tダイ押出しタッチロール成形法以外のフィルムの成形法として、Tダイエアナイフ成形法やインフレーション空冷成形法などが挙げられる。しかし、これらの方法は、樹脂の溶融時から冷却固化時に至るまでの流動変形のみによりフィルム表面に凹凸を形成させるため、フィルム表面への精巧な凹凸形成が困難である。
【0006】
空冷成形時であっても、フィルム形成樹脂として、相溶しにくい樹脂を2成分以上用いて、意図的に海島の相分離構造を形成させることにより、ヘイズ値を調整することが試みられている。しかし、フィルム全体の海島構造をコントロールし、ヘイズ値および表面粗さを調整するには、それに応じたフィルムの厚みの確保が必要であり、フィルムの薄膜化が困難である。また、所望のヘイズ値および表面粗さによって、フィルム形成に用いる材料の組成をその都度調整する必要がある。その結果、ヘイズ値および表面粗さの調整に伴い、フィルム全体の機械的物性が大きく変動する。このため、フィルム全体の機械的物性と、フィルムのヘイズ値および表面粗さとをそれぞれ独立して調整することが困難である。
【0007】
フィルムおよび粘着テープは、フィルム形成材料を急激にかつ大きく伸長変形させて成形することが一般的である。伸長変形により成形したフィルムは長手方向と幅方向との間に物性の差が生じやすい。特に、光の透過特性は伸長変形の影響を受けやすく、伸長変形により成形したフィルムは長手方向と幅方向との間で像鮮明度の差が生じやすい。このような像鮮明度の差を有するフィルムは、透過光のゆがみが生じさせるので、例えば、保護フィルムとして用いた場合、保護フィルム越しに被着体の外観検査を行うことが困難である。
【0008】
上記像鮮明度の差は、フィルム形成材料やフィルム形成条件等に依存する。このため、上記像鮮明度の差を小さくすることとフィルム全体に要求される機械的物性を発現することとの両立が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−181962号公報
【特許文献2】特開2004−149639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、長手方向の像鮮明度と幅方向の像鮮明度との差が小さくて透過光のゆがみが少なく、かつ、所望の機械的物性が実質的に低下しない、積層フィルムおよび粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の積層フィルムは、基材層と表面層とを有する積層フィルムであって、該基材層が熱可塑性樹脂を含み、該表面層がポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体を含み、該積層フィルムの長手方向の像鮮明度と該積層フィルムの幅方向の像鮮明度との差の絶対値が10%以下である。
好ましい実施形態においては、上記積層フィルムの長手方向の像鮮明度は20%以下であり、幅方向の像鮮明度は20%以下である。
好ましい実施形態においては、上記積層フィルムのヘイズ値は30%〜80%である。
好ましい実施形態においては、上記表面層の算術平均表面粗さRaが0.5μm〜2.0μmである。
好ましい実施形態においては、上記表面層の厚みが、2μm〜10μmである。
好ましい実施形態においては、上記ポリエチレンと上記エチレン−酢酸ビニル共重合体との重量比が、ポリエチレン:エチレン−酢酸ビニル共重合体=20:80〜80:20である。
好ましい実施形態においては、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体中における、酢酸ビニル由来の構成単位の含有割合が、10重量%以上である。
好ましい実施形態においては、上記表面層が、示差走査熱量測定における融解温度Tmを2点以上有する。
好ましい実施形態においては、上記ポリエチレンのメルトフローレートが、8g/10min〜100g/10minである。
好ましい実施形態においては、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが、0.1g/10min〜7g/10minである。
本発明の別の局面によれば、粘着テープが提供される。この粘着テープは、上記積層フィルムの片側に粘着剤層を有する。
好ましい実施形態においては、上記粘着テープの長手方向の像鮮明度と幅方向の像鮮明度との差の絶対値が10%以下である。
好ましい実施形態においては、上記粘着テープの長手方向の像鮮明度が20%以下であり、幅方向の像鮮明度が20%以下である。
好ましい実施形態においては、上記粘着テープのヘイズ値は、30%〜80%である。
好ましい実施形態においては、上記表面層が、長鎖アルキル系剥離剤を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定の樹脂を含む表面層を有することにより、長手方向の像鮮明度と幅方向の像鮮明度との差が小さくて透過光のゆがみの少ない積層フィルムおよび粘着テープを得ることができる。また、本発明の積層フィルムおよび粘着テープにおける表面層は非常に薄いので、積層フィルムまたは粘着テープ全体として要求される機械的物性が実質的に低下することなく長手方向の像鮮明度と幅方向の像鮮明度との差を小さくすることができる。さらに、本発明の積層フィルムおよび粘着テープは、生産性に優れるため、安価に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好ましい実施形態による積層フィルムの概略断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による粘着テープの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.積層フィルム
本発明の積層フィルムは、基材層と表面層とを有する。図1は、本発明の好ましい実施形態による積層フィルムの概略断面図である。積層フィルム10は、基材層1と、基材層1の片側または両側(図示例では片側)に配置された表面層2とを備える。本発明の積層フィルムは、必要に応じて、任意の適切な他の層をさらに有していてもよい(図示せず)。他の層は、表面層2の基材層1の配置されていない側以外であれば、いずれの位置に備えられていてもよい。
【0015】
本発明の積層フィルムの厚みは、用途に応じて、任意の適切な厚みに設定し得る。好ましくは10μm〜200μm、より好ましくは10μm〜180μm、さらに好ましくは12μm〜170μmである。
【0016】
本発明の積層フィルムにおいては、該積層フィルムの長手方向の像鮮明度と該積層フィルムの幅方向の像鮮明度との差の絶対値は、10%以下であり、好ましくは8%以下であり、より好ましくは5%以下である。本発明の積層フィルムにおいて、該積層フィルムの長手方向の像鮮明度と該積層フィルムの幅方向の像鮮明度との差の絶対値がこのような範囲であれば、積層フィルムを透過する光のゆがみを低減させることができる。その結果、例えば、本発明の積層フィルムを保護フィルムとして用い、該積層フィルム越しに該積層フィルムが貼り付けられた被着体を外観検査する場合、被着体の欠点を容易にかつ効率的に検出することができる。また、本発明の積層フィルムを意匠性が要求される用途に用いた場合、優れた意匠を発現することができる。なお、本明細書において、「長手方向」とはフィルム成形時のフィルム搬送方向をいい、「幅方向」とは上記長手方向に直交する方向をいう。また、本明細書において、「長手方向の像鮮明度」とは、像鮮明度を測定する際に用いる光学くしの透過部分の線方向がフィルムの長手方向に並行となるようにして測定した場合の像鮮明度をいい、「幅方向の像鮮明度」とは、上記光学くしの透過部分の線方向がフィルムの長手方向に直交するようにして測定した場合の像鮮明度をいう。像鮮明度は、JISK7105に準じた方法により測定することができる。
【0017】
本発明の積層フィルムの長手方向の像鮮明度は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは8%以下であり、最も好ましくは4%〜8%である。本発明の積層フィルムの幅方向の像鮮明度は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは8%以下であり、最も好ましくは4%〜8%である。本発明の積層フィルムにおいて、該積層フィルムの長手方向の像鮮明度と該積層フィルムの幅方向の像鮮明度が20%より大きい場合、例えば、本発明の積層フィルムを保護フィルムとして用いて、該積層フィルム越しに該積層フィルムが貼り付けられた被着体を外観検査する場合、被着体に起因しない欠点(例えば、積層フィルム中の欠点、積層フィルムを貼り付けた際に混入した異物)まで検出されやすくなってしまい、本来検出すべき被着体の欠点の検査効率が低下するおそれがある。
【0018】
本発明の積層フィルムのヘイズ値は、好ましくは30%〜80%であり、より好ましくは35%〜75%である。積層フィルムのヘイズ値がこのような範囲であれば、該積層フィルムは保護フィルム用途および外観調整用途に適した外観を有する。積層フィルムのヘイズ値が30%より小さい場合、上記所望の像鮮明度が得られないおそれがある。ヘイズ値は、JISK7136(2000)に準じた方法により測定することができる。
【0019】
A−1.基材層
上記基材層の厚みは、用途に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。上記基材層の厚みは、好ましくは10μm〜150μmであり、さらに好ましくは20μm〜100μmである。
【0020】
上記基材層のヘイズ値は、好ましくは1%〜80%であり、より好ましくは10%〜60%である。基材層のヘイズ値がこのような範囲であれば、保護フィルム用途および外観調整用途に適した外観を有する積層フィルムを得ることができる。基材層のヘイズ値が30%より小さい場合、上記所望の像鮮明度を有する積層フィルムが得られないおそれがある。
【0021】
上記基材層は、熱可塑性樹脂を含む。上記熱可塑性樹脂としては、溶融押出によりフィルム成形し得る限りにおいて、任意の適切なものを採用し得る。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、プロピレン系ポリマー、ポリエチレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等のポリオレフィン樹脂およびその変性物;α−オレフィンとビニル化合物(例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル)との共重合体;ポリアミド;ポリエステル;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリ塩化ビニル;等が挙げられる。プロピレン系ポリマーとしては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどが挙げられる。
【0022】
上記熱可塑性樹脂としてホモポリプロピレンを用いる場合、該ホモポリプロピレンの構造は、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックのいずれであってもよい。
【0023】
上記熱可塑性樹脂としてポリエチレンを用いる場合、該ポリエチレンは、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのいずれであってもよい。
【0024】
上記基材層において、上記熱可塑性樹脂は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。併用形態としては、ブレンドおよび共重合を含む。
【0025】
上記熱可塑性樹脂は市販品を用いてもよい。市販品の熱可塑性樹脂の具体例としては、サンアロマー社製の商品名「PF380A」(ブロックポリプロピレン)等が挙げられる。
【0026】
上記基材層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含有し得る。基材層に含有され得る添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、耐熱安定化剤、充填剤、滑剤等が挙げられる。上記基材層に含有される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0027】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。上記紫外線吸収剤の含有量は、積層フィルムの成形時にブリードアウトしない限りにおいて、任意の適切な含有量を採用し得る。代表的には、基材層中の熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部である。
【0028】
上記耐熱安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物およびシアノアクリレート系化合物等が挙げられる。上記耐熱安定化剤の含有量は、積層フィルムの成形時にブリードアウトしない限りにおいて、任意の適切な含有量を採用し得る。代表的には、基材層中の熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部である。
【0029】
上記充填剤としては、例えば、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、硫酸バリウム、ウィスカー、水酸化マグネシウム等の無機充填剤が挙げられる。充填剤の平均粒径は、好ましくは、0.1μm〜10μmである。充填剤の含有量は、基材層中の熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは、1重量部〜200重量部である。
【0030】
A−2.表面層
上記表面層の厚みは、好ましくは2μm〜10μmであり、さらに好ましくは2μm〜8μmであり、特に好ましくは2μm〜5μmである。表面層の厚みが2μmより薄い場合、所望の表面粗さが得難くなるおそれ、およびヘイズ値の高い積層フィルムが得難くなるおそれがある。表面層の厚みが10μmより厚い場合、表面層の機械的物性が、該表面層を有する積層フィルムや粘着テープ全体の機械的物性に影響してしまい、積層フィルムや粘着テープ全体の機械的物性が低下したり、積層フィルムや粘着テープのハンドリングが悪くなったりするおそれがある。
【0031】
上記表面層のヘイズ値は、好ましくは30%〜80%であり、より好ましくは35%〜75%である。表面層のヘイズ値がこのような範囲であれば、保護フィルム用途および外観調整用途に適した外観を有する積層フィルムを得ることができる。表面層のヘイズ値が30%より小さい場合、上記所望の像鮮明度を有する積層フィルムが得られないおそれがある。
【0032】
上記表面層の算術平均表面粗さRaは、好ましくは0.5μm〜2.0μmであり、より好ましくは0.8μm〜1.9μmであり、さらに好ましくは1.0μm〜1.9μmである。表面層の算術平均表面粗さRaがこのような範囲であれば、保護フィルム用途および外観調整用途に適した外観を有する積層フィルムを得ることができる。
【0033】
上記表面層は、ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む。上記ポリエチレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体との重量比は、所望のヘイズ値および/または表面粗さに応じて任意の適切な重量比を採用し得る。当該重量比(ポリエチレン:エチレン−酢酸ビニル共重合体)は、好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは30:70〜80:20であり、特に好ましくは30:70〜70:30である。
【0034】
好ましくは、上記ポリエチレンと上記エチレン−酢酸ビニル共重合体とは異なるメルトフローレートを示す。上記ポリエチレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体とが異なるメルトフローレートを示せば、表面層形成材料を熱溶融状態で伸長挙動させて成形する際に、メルトフローレートの高い樹脂は伸長されやすく、低い樹脂は伸長されにくいので、メルトフローレートの高い樹脂が海部分を形成し、メルトフローレートの低い樹脂が島部分を形成する海島構造を有する表面層を得ることができる。表面層が、伸長応力がかかりにくく伸長変形が少ない上記島部分を有することにより、長手方向の像鮮明度と幅方向の像鮮明度との差が小さい積層フィルムを得ることができる。
【0035】
上記ポリエチレンのメルトフローレートは、好ましくは8g/10min〜100g/10minであり、さらに好ましくは9g/10min〜80g/10minであり、特に好ましくは9g/10min〜50g/10minであり、最も好ましくは15g/10min〜50g/10minである。ポリエチレンのメルトフローレートが、このような範囲であれば、保護フィルム用途および外観調整用途に適したヘイズ値および表面粗さを有する積層フィルムを得ることができる。ポリエチレンのメルトフローレートが、8g/10minより小さい場合、ポリエチレンと上記エチレン−酢酸ビニル共重合体とのメルトフローレートの差が小さくなり、積層フィルムの長手方向の像鮮明度と幅方向の像鮮明度との差が大きくなりすぎるおそれがある。メルトフローレートは、JISK7210に準じた方法により測定することができる。
【0036】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートは、好ましくは0.1g/10min〜7g/10minであり、さらに好ましくは0.2g/10min〜5g/10minであり、特に好ましくは0.2g/10min〜3g/10minであり、最も好ましくは0.4g/10min〜2.8g/10minである。エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートがこのような範囲であれば、保護フィルム用途および外観調整用途に適したヘイズ値および表面粗さを有する積層フィルムを得ることができる。エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが7g/10minより大きい場合、上記ポリエチレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体とのメルトフローレートの差が小さくなり、積層フィルムの長手方向の像鮮明度と幅方向の像鮮明度との差が大きくなりすぎるおそれがある。
【0037】
上記ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが、上記のような範囲であれば、ポリエチレンが海部分を形成し、エチレン−酢酸ビニル共重合体が島部分を形成する海島構造を有する表面層を得ることができる。
【0038】
低粘度樹脂(高いメルトフローレートを示す)と高粘度樹脂(低いメルトフローレートを示す)の粘度差が小さい場合は、明確な変形流動差が得られにくく、海島構造を得ることができず、低ヘイズで表面粗さが平滑な積層フィルムを得ることができる。他方、低粘度樹脂(高いメルトフローレートを示す)と高粘度樹脂(低いメルトフローレートを示す)の粘度差が大きい場合は、明確な変形流動差を得ることができるため、海島構造が明確となり、高ヘイズで表面粗さが粗い積層フィルムを得ることができる。用いる樹脂の粘度差により、目的とするヘイズや表面粗さをコントロールすることができる。また高ヘイズで粗い表面粗さを得るには、島構造である高粘度樹脂の融点が海構造である低粘度樹脂の融点より高いことが好ましい。伸長流動時に島構造が先に冷却固化し、海形成樹脂の高粘度樹脂が固化時には冷却固化していないため、明確な海島構造を形成するからである。
【0039】
上記表面層は、好ましくは、示差走査熱量測定(DSC)における融解温度Tmを2点以上有する。このような表面層は、融点の異なるポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることにより得ることができる。融点の異なるポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体を表面層に用いることにより、当該融点差により積層フィルムのヘイズ値および表面粗さを調整して、積層フィルムの外観をコントロールすることができる。より具体的には、フィルム成形時において熱溶融後に冷却固化させる際に、高融点のポリエチレンが先に固化し、その後、低融点のエチレン−酢酸ビニル共重合体が固化するので、当該融点差が大きい場合は、上記表面層において明確な海島構造を得ることができ、その結果、ヘイズ値および表面粗さの大きい積層フィルムを得ることができる。一方、当該融点差が小さい場合は、明確な海島構造を有する表面層が得られにくいので、ヘイズ値および表面粗さの小さい積層フィルムを得ることができる。なお、上記融解温度TmはJISK7121に準じた方法により測定することができる。本明細書において「融解温度Tmを2点以上有する」とはDSC曲線において、2つ以上の融解吸熱ピークが生じることをいう。
【0040】
ポリエチレンの融点は、好ましくは100℃〜125℃であり、より好ましくは105℃〜125℃であり、さらに好ましくは110〜125℃であり、特に好ましくは115℃〜120℃である。
【0041】
エチレン−酢酸ビニル共重合体の融点は、好ましくは50℃〜120℃であり、より好ましくは60℃〜120℃であり、さらに好ましくは70〜120℃であり、特に好ましくは80〜115℃であり、最も好ましくは100〜115℃である。
【0042】
上記ポリエチレンの融点と上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の融点との差は、好ましくは5℃〜65℃であり、さらに好ましくは10℃〜60℃であり、特に好ましくは15℃〜50℃である。ポリエチレンの融点とエチレン−酢酸ビニル共重合体の融点との差がこのような範囲であれば、保護フィルム用途および外観調整用途に適したヘイズ値および表面粗さを有する積層フィルムを得ることができる。
【0043】
本発明の積層フィルムのヘイズ値および表面粗さは、上記表面層における上記ポリエチレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体との相溶性によっても調整することができる。ポリエチレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体との相溶性が低い場合は、上記表面層において明確な海島構造を得ることができるので、ヘイズ値および表面粗さの大きい積層フィルムを得ることができる。一方、相溶性が高い場合は、明確な海島構造が得られにくいので、ヘイズ値および表面粗さの小さい積層フィルムを得ることができる。当該相溶性は、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体中における、酢酸ビニル由来の構成単位の含有割合により調整することができる。
【0044】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体中における、酢酸ビニル由来の構成単位の含有割合は、好ましくは10重量%以上であり、さらに好ましくは15重量%以上であり、特に好ましくは20重量%以上であり、最も好ましくは20重量%〜30重量%である。酢酸ビニル由来の構成単位の含有割合がこのような範囲であれば、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は上記ポリエチレンに対して適切な相溶性を示し、保護フィルム用途および外観調整用途に適したヘイズ値および表面粗さを有する積層フィルムを得ることができる。
【0045】
上記ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体は市販品を用いてもよい。市販品のポリエチレンの具体例としては、東ソー社製の商品名「ペトロセン209」、日本ポリエチレン社製の商品名「ノバテックLD LJ803」、「ノバテックLD LC701」、「ノバテックLD LC720」等が挙げられる。市販品のエチレン−酢酸ビニル共重合体の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社製の「エバフレックスEV270」等が挙げられる。
【0046】
上記表面層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含有し得る。表面層に含有され得る添加剤としては、例えば、A−1項で説明した添加剤が用いられ得る。
【0047】
A−3.他の層
本発明の積層フィルムは、必要に応じて任意の適切な、他の層をさらに有していてもよい(図示せず)。他の層は、表面層の基材層の配置されていない側以外であれば、いずれの位置に備えられていてもよい。
【0048】
上記他の層の厚みは、好ましくは2μm〜12μmであり、さらに好ましくは5μm〜10μmである。
【0049】
上記他の層のヘイズ値は、本発明の積層フィルムのヘイズ値に応じて、任意の適切な値を採用し得る。
【0050】
上記他の層としては、例えば、平滑層が挙げられる。平滑層は、例えば、上記積層フィルムが基材層の片側に表面層を有する場合に、基材層の表面層が配置されていない側に配置して用いられ得る。
【0051】
上記平滑層を構成する材料としては、任意の適切な材料を採用し得る。平滑層を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、TPOなどのポリオレフィン樹脂を採用し得る。具体的には、低密度から高密度の各種ポリエチレンや、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックの各種ポリプロピレンなどの、各種熱可塑性樹脂が挙げられる。また、ポリオレフィン樹脂に限らず、α−オレフィンの変性物、α−オレフィンと酢酸ビニルやメタクリレート等の各種ビニル化合物との共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等を主成分とするような熱可塑性樹脂を採用しても良い。これらの材料は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0052】
A−4.積層フィルムの形成方法
上記積層フィルムは、任意の適切な形成方法により得ることができる。代表的には、上記基材層と、上記表面層と、必要に応じて他の層とを共押出しする方法が挙げられる。共押出し法は、各層の形成材料についてそれぞれ押出し機および共押出し用ダイを用いて、インフレーション法、Tダイ法などに準じて行うことができる。その他の製造方法として、例えば、カレンダー成形法により、それぞれ形成された基材層と、表面層と、必要に応じて他の層とを任意の適切な接着剤を用いて貼り合わせる方法が挙げられる。
【0053】
B.粘着テープ
本発明の粘着テープは、本発明の積層フィルムと、当該積層フィルムの片側に配置された粘着剤層とを有する。図2は、本発明の好ましい実施形態による粘着テープの概略断面図である。粘着テープ100は、積層フィルム10と、積層フィルム10の表面層2が配置されていない側に配置された接着剤層20とを備える。本発明の粘着テープを構成する積層フィルム10は、上記で説明した本発明の積層フィルムであり、A−1項で説明した基材層1とA−2項で説明した表面層2とを備える。
【0054】
本発明の粘着テープに用いられる表面層は、好ましくは、長鎖アルキル系剥離剤をさらに含む。表面層が長鎖アルキル系剥離剤を含めば、例えばロール形態で保管するなどの、粘着テープ同士が重なっている状態における、表面層と粘着剤層との貼り付きを防止することができる。また、表面層をセパレーター層で覆う必要もないので、所望のヘイズ値および表面粗さを有する粘着テープを容易に得ることができる。
【0055】
上記長鎖アルキル系剥離剤は、長鎖アルキル系高分子を含む。長鎖アルキル系高分子は、任意の適切な加熱溶媒中で、反応性基を有する高分子と、当該反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。当該反応時には、必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、スズ化合物や三級アミン等が挙げられる。
【0056】
上記反応性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、無水マレイン酸基等が挙げられる。当該反応性基を有する高分子としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも好ましくはエチレン−ビニルアルコール共重合体である。なお、エチレン−ビニルアルコール共重合体とはエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分けん化物も含む概念である。ポリビニルアルコールとはポリ酢酸ビニルの部分けん化物も含む概念である。
【0057】
上記アルキル基の炭素数は、好ましくは8個〜30個、さらに好ましくは12個〜22個である。上記アルキル基の炭素数が、このような範囲であれば、優れた剥離性を有する表面層を得ることができる。このようなアルキル基の具体例としては、ラウリル基、ステアリル基、ベヘニル基等が挙げられる。このようなアルキル基を有する化合物(すなわち、上記反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物)としては、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、ステアリルイソシアネート等のイソシアネート;酸クロライド、アミン、アルコール等が挙げられる。中でも好ましくは、イソシアネートである。
【0058】
上記長鎖アルキル系高分子の重量平均分子量は、好ましくは10000〜1000000であり、さらに好ましくは20000〜1000000である。長鎖アルキル系高分子の重量平均分子量がこのような範囲であれば、優れた剥離性を有する表面層を得ることができる。
【0059】
上記長鎖アルキル系剥離剤は、積層フィルムまたは粘着テープを共押出しする際に、表面層に練り込まれる。上記表面層中における長鎖アルキル系剥離剤の含有割合としては、好ましくは1重量%〜50重量%であり、さらに好ましくは2重量%〜30重量%であり、特に好ましくは5重量%〜20重量%である。含有割合が1重量%より少ない場合、長鎖アルキル系剥離剤を添加した効果が得られないおそれがある。含有割合が50重量%より多い場合、ブリード物が発生するおそれがある。
【0060】
本発明の粘着テープの厚みは、用途に応じて、任意の適切な厚みに設定し得る。代表的には、15μm〜450μmである。
【0061】
本発明の粘着テープの長手方向の像鮮明度は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは8%以下であり、最も好ましくは4%〜8%である。本発明の粘着テープの幅方向の像鮮明度は、好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは8%以下であり、最も好ましくは4%〜8%である。本発明の粘着テープにおいて、該粘着テープの長手方向の像鮮明度と該粘着テープの幅方向の像鮮明度が20%より大きい場合、例えば、本発明の粘着テープを保護フィルムとして用いて、該粘着テープ越しに該粘着テープが貼り付けられた被着体を外観検査する場合、被着体に起因としない欠点(例えば、粘着テープ中の欠点、粘着テープを貼り付けた際に混入した異物)まで検出されやすくなってしまい、本来検出すべき被着体の欠点の検査効率が低下するおそれがある。このような像鮮明度を示す粘着テープは、該粘着テープが本発明の表面層を備えることにより得ることができる。
【0062】
本発明の粘着テープにおいては、該粘着テープの長手方向の像鮮明度と該粘着テープの幅方向の像鮮明度との差の絶対値は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。本発明の粘着テープにおいて、該粘着テープの長手方向の像鮮明度と該粘着テープの幅方向の像鮮明度との差の絶対値がこのような範囲であれば、粘着テープを透過する光のゆがみを低減させることができる。その結果、例えば、本発明の粘着テープを保護フィルムとして用い、該粘着テープ越しに該粘着テープが貼り付けられた被着体を外観検査する場合、被着体の欠点を容易にかつ効率的に検出することができる。また、本発明の粘着テープを意匠性が要求される用途に用いた場合、優れた意匠を発現することができる。このような像鮮明度の差を示す粘着テープは、該粘着テープが本発明の表面層を備えることにより得ることができる。
【0063】
本発明の粘着テープのヘイズ値は、好ましくは30%〜80%であり、より好ましくは35%〜75%である。粘着テープのヘイズ値がこのような範囲であれば、該粘着テープは保護フィルム用途および外観調整用途に適した外観を有する。粘着テープのヘイズ値が30%より小さい場合、上記所望の像鮮明度が得られないおそれがある。このようなヘイズ値を示す粘着テープは、該粘着テープが本発明の表面層を備えることにより得ることができる。
【0064】
B−1.粘着剤層
上記粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜300μmであり、さらに好ましくは4μm〜100μmであり、特に好ましくは5μm〜50μmである。
【0065】
上記粘着剤層のヘイズ値は、好ましくは1%〜80%であり、より好ましくは10%〜60%である。粘着剤層のヘイズ値がこのような範囲であれば、保護フィルム用途および外観調整用途に適した外観を有する粘着テープを得ることができる。粘着剤層のヘイズ値が1%より小さい場合、上記所望の像鮮明度を有する粘着テープが得られないおそれがある。
【0066】
上記粘着剤層を構成する粘着剤は、任意の適切な粘着剤を採用し得る。上記粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
【0067】
上記粘着剤として、熱可塑性粘着剤を用いることもできる。熱可塑性粘着剤を構成する材料としては、例えば、粘着剤材料として、任意の適切な、スチレン系ブロック共重合体、アクリル系熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0068】
上記スチレン系ブロック共重合体の具体例としては、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(SEB)等のスチレン系AB型ジブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS))、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS))、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)等のスチレン系ABA型トリブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン(SBSB)等のスチレン系ABAB型テトラブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレン(SBSBS)等のスチレン系ABABA型ペンタブロック共重合体;これら以上のAB繰り返し単位を有するスチレン系マルチブロック共重合体、;スチレン−ブタジエンラバー(SBR)等のスチレン系ランダム共重合体のエチレン性二重結合を水素添加した水素添加物;等が挙げられる。市販品としては、例えば、クレイトンポリマー社製の「G1657」(スチレン系エラストマー)などが挙げられる。上記共重合体は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0069】
上記スチレン系ブロック共重合体中におけるスチレンブロック構造の含有割合は、好ましくは5重量%〜40重量%であり、さらに好ましくは7重量%〜30重量%であり、特に好ましくは9重量%〜20重量%である。スチレンブロック構造の含有割合が5重量%より少ない場合、粘着剤層の凝集力不足による糊残りが発生しやすくなる。スチレンブロック構造の含有割合が40重量%より多い場合、粘着剤層が硬くなり、粗面に対して良好な接着性を得ることができないおそれがある。
【0070】
上記スチレン系ブロック共重合体がエチレン−ブチレンブロック構造を有する場合、エチレン−ブチレンブロック構造中におけるブチレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは70重量%〜90重量%である。ブチレン由来の構成単位の含有割合がこのような範囲であれば、濡れ性および接着性に優れ、粗面に対しても良好に接着し得る粘着剤層を得ることができる。
【0071】
上記アクリル系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸ブチル−ポリメタクリル酸メチル共重合体(PMMA−PBA−PMMA共重合体);ポリアクリル酸ブチルに官能基としてカルボン酸を有するタイプのPMMA−官能基含有PBA−PMMA共重合体;等が挙げられる。アクリル系熱可塑性樹脂は市販品を用いてもよい。市販品のアクリル系熱可塑性樹脂の具体例としては、株式会社カネカ製の商品名「NABSTAR」、クラレ株式会社製の商品名「LAポリマー」等が挙げられる。
【0072】
上記粘着剤層は、必要に応じて、他の成分を含有し得る。他の成分としては、例えば、オレフィン系樹脂;シリコーン系樹脂;液状アクリル系共重合体;ポリエチレンイミン;脂肪酸アミド;リン酸エステル;一般的な添加剤;等が挙げられる。上記粘着剤層に含有される他の成分の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。上記添加剤としては、例えば、粘着付与剤;軟化剤;老化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;紫外線吸収剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤または顔料;等が挙げられる。
【0073】
粘着付与剤の配合は接着力の向上に有効である。粘着付与剤の配合量は凝集力の低下による糊残り問題の発生を回避するため、被着体に応じて任意の適切な配合量に適宜決定される。通常、粘着剤を形成する樹脂材料100重量部に対し、好ましくは0〜40重量部、より好ましくは0〜30重量部、さらに好ましくは0〜10重量部である。
【0074】
粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体系や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルぺン系樹脂、テルぺンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂またはこれらの水添物などが挙げられる。粘着付与剤は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0075】
粘着付与剤としては、剥離性や耐候性などの点から、例えば、荒川化学工業社製の「アルコンP−125」などの、水添系の粘着付与剤が好ましい。なお、粘着付与剤は、オレフィン樹脂や熱可塑性エラストマーとのブレンド物として市販されているものを使用することもできる。
【0076】
軟化剤の配合は接着力の向上に有効である。軟化剤としては、例えば、低分子量のジエン系ポリマー、ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエンやそれらの誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、片末端または両末端にOH基やCOOH基を有するものを例示できる。具体的には、水添ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンモノオール、水添ポリイソプレンジオール、水添ポリイソプレンモノオールなどが挙げられる。被着体に対する接着性の向上をより抑制するためには、水添ポリブタジエンや水添ポリイソプレン等のジエン系ポリマーの水添物やオレフィン系軟化剤等が好ましい。具体的には、クラレ社製の「クラプレンLIR−200」等が挙げられる。これら軟化剤は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0077】
軟化剤の分子量は、任意の適切な量に適宜設定できる。軟化剤の分子量が小さくなりすぎると粘着層からの被着体への物質移行や重剥離化等の原因となるおそれがあり、一方、軟化剤の分子量が大きくなりすぎると接着力の向上効果に乏しくなる傾向があることから、軟化剤の数平均分子量は、好ましくは5000〜100000、より好ましくは10000〜50000である。
【0078】
軟化剤を使用する場合、その添加量は、任意の適切な量を採用し得る。軟化剤の添加量が多くなりすぎると、高温や屋外暴露時での糊残りが増加する傾向にあることから、粘着剤を形成する樹脂材料100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。粘着剤を形成する樹脂材料100重量部に対して軟化剤の添加量が40重量部を超えると、高温環境下、屋外暴露下での糊残りが顕著となる。
【0079】
上記粘着剤層は、必要に応じて、片面または両面が表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、紫外線照射処理、火炎処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理等が挙げられる。
【0080】
B−2.粘着テープの製造方法
本発明の粘着テープは、任意の適切な製造方法により得ることができる。本発明の粘着テープは、例えば、本発明の積層フィルムを構成する上記基材層および上記表面層、ならびに上記粘着剤層を共押出しする方法(製造方法1)、上記積層フィルムの上記表面層が配置されていない側に、上記粘着剤をホットメルト塗工する方法(製造方法2)、上記積層フィルムの上記表面層が配置されていない側に、粘着剤が溶解した有機溶媒塗布液または粘着剤が水分散したエマルション液を塗工する方法(製造方法3)等が挙げられる。なお、製造方法2および3における積層フィルムは、A−3項で説明した方法により得ることができる。
【0081】
上記製造方法1または2により粘着テープを製造する場合、粘着剤層を構成する粘着剤としては、上記熱可塑性粘着剤が好ましく用いられる。
【0082】
上記製造方法1において、上記共押出しの方法は、基材層形成材料、表面層形成材料および粘着剤層形成材料をそれぞれ押出し機および共押出し用ダイを用いて、インフレーション法、Tダイ法などに準じて行うことができる。
【0083】
上記製造方法2または3により粘着テープを製造する場合、好ましくは、粘着剤が塗工される表面、すなわち上記積層フィルムの上記表面層が配置されていない側の表面に易接着処理が施される。易接着処理としては、例えば、コロナ放電処理、イトロ処理(ケイ酸化炎処理)、アンカーコート処理等が挙げられる。
【0084】
上記製造方法3により粘着テープを製造する場合、上記粘着剤層を構成する粘着剤としては、上記ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。
【0085】
上記製造方法3により粘着テープを製造する場合、上記有機溶媒は、任意の適切なものを採用し得る。上記有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。上記有機溶媒は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0086】
上記製造方法3により粘着テープを製造する場合、有機溶媒塗布液中に架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン架橋剤等が挙げられる。
【0087】
上記製造方法3により粘着テープを製造する場合の塗工方法は、任意の適切な塗工方法を採用し得る。塗工方法としては、例えば、バーコーター、グラビアコーター、スピンコーター、ロールコーター、ナイフコーター、アプリケーター等を用いる方法が挙げられる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。
【0089】
(1)像鮮明度
JISK7105に準拠したスガ試験機社製:「ICM−1」を用いて、透過式、光学くし2mmにて測定した。なお、長手方向の像鮮明度は、積層フィルムまたは粘着テープの長手方向と光学くしの透過部分の線方向とが並行となるようにして測定した。幅方向の像鮮明度は、積層フィルムまたは粘着テープの長手方向と光学くしの透過部分の線方向とが直交するようにして測定した。像鮮明度は、像鮮明度(%)=(M−m)/(M+m)×100(M:最高波高,m:最低波高)により算出される。
(2)算術平均表面粗さRa
積層フィルムまたは粘着テープをスライドガラスに貼り合わせた後、表面層の表面粗さについて、光学式プロファイラーNT9100(Veeco社製)を使用して、Measurement Type:VSI(Infinite Scan)、Objective:2.5X、FOV:1.0X、Modulation Threshold:0.1%の条件で、n=3で測定した。測定後、Terms Removal:Tilt Only(Plane Fit)、Window Filtering:Noneにてデータ解析を行い、算術平均表面粗さRaを求めた。
(3)ヘイズ値
ヘイズメーターHM−150((株)村上色彩技術研究所社製)を使用して測定した。ヘイズは、JISK7136に準拠し、ヘイズ(%)=Td/Tt X 100(Td:拡散透過率、Tt:全光線透過率)により算出した。
【0090】
[実施例1]
表面層形成材料、基材層形成材料および平滑層形成材料として、以下の化合物を準備した。
表面層形成材料: 低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209;メルトフローレート(MFR)=45(190℃、2.16kgf))50部と、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270;MFR=1.0(190℃、2.16kgf);酢酸ビニル(VA)含有量28重量%)50部との混合物
基材層形成材料: ブロックポリプロピレン(サンアロマー製:PF380A)
平滑層形成材料: 低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:ノバテックLD LC720)
上記の材料をTダイ溶融共押出しにより成形して、表面層、基材層および平滑層をこの順に備える積層フィルム(1)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、平滑層の厚みは7μmであった。得られた積層フィルム(1)についての評価結果を表1に示す。
【0091】
[実施例2]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部とエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)50部との混合物に代えて、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)80部とエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)20部との混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム(2)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、平滑層の厚みは7μmであった。得られた積層フィルム(2)についての評価結果を表1に示す。
【0092】
[実施例3]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部とエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)50部との混合物に代えて、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)70部とエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)30部との混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム(3)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、平滑層の厚みは7μmであった。得られた積層フィルム(3)についての評価結果を表1に示す。
【0093】
[実施例4]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部とエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)50部との混合物に代えて、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)60部とエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)40部との混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム(4)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、平滑層の厚みは7μmであった。得られた積層フィルム(4)についての評価結果を表1に示す。
【0094】
[実施例5]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部に代えて、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:ノバテックLD LJ803;MFR=22(190℃、2.16kgf))50部を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム(5)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、平滑層の厚みは7μmであった。得られた積層フィルム(5)についての評価結果を表1に示す。
【0095】
[実施例6]
表面層形成材料、基材層形成材料および粘着剤層形成材料として、以下の化合物を準備した。
表面層形成材料: 低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)50部、および長鎖アルキル系剥離剤(アシオ産業(株)社製:アシオレジンRA95HS(完全けん化ポリビニルオクタデシルカルバメート系剥離剤))10部の混合物
基材層形成材料: ブロックポリプロピレン(サンアロマー製:PF380A)
粘着剤層形成材料: スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)(クレイトンポリマー社製:G1657)75部と、粘着付与剤(荒川化学工業社製:アルコンP−125)25部との混合物
上記の材料をTダイ溶融共押出しにより成形して、表面層、基材層および粘着剤層をこの順に備える粘着テープ(1)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、粘着剤層の厚みは7μmであった。得られた粘着テープ(1)についての評価結果を表2に示す。
【0096】
[実施例7]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部に代えて、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)80部を用い、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)50部に代えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)20部を用いた以外は、実施例6と同様にして、粘着テープ(2)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、粘着剤層の厚みは7μmであった。得られた粘着テープ(2)についての評価結果を表2に示す。
【0097】
[実施例8]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部に代えて、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)70部を用い、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)50部に代えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)30部を用いた以外は、実施例6と同様にして、粘着テープ(3)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、粘着剤層の厚みは7μmであった。得られた粘着テープ(3)についての評価結果を表2に示す。
【0098】
[実施例9]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部に代えて、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)60部を用い、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)50部に代えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)40部を用いた以外は、実施例6と同様にして、粘着テープ(4)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、粘着剤層の厚みは7μmであった。得られた粘着テープ(4)についての評価結果を表2に示す。
【0099】
[実施例10]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部に代えて、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:ノバテックLD LJ803)50部を用いた以外は、実施例6と同様にして、粘着テープ(5)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、粘着剤層の厚みは7μmであった。得られた粘着テープ(5)についての評価結果を表2に示す。
【0100】
[比較例1]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部とエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)50部との混合物に代えて、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)10部とエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)90部との混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム(C1)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、平滑層の厚みは7μmであった。得られた積層フィルム(C1)についての評価結果を表1に示す。
【0101】
[比較例2]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部に代えて、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:ノバテックLD LC720;MFR=9.4(190℃、2.16kgf))50部を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム(C2)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、平滑層の厚みは7μmであった。得られた積層フィルム(C2)についての評価結果を表1に示す。
【0102】
[比較例3]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部に代えて、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン217;MFR=4.5(190℃、2.16kgf))50部を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム(C3)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、平滑層の厚みは7μmであった。得られた積層フィルム(C3)についての評価結果を表1に示す。
【0103】
[比較例4]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部に代えて、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:ノバテックLD LC701;MFR=14(190℃,2.16kgf))50部を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム(C4)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、平滑層の厚みは7μmであった。得られた積層フィルム(C4)についての評価結果を表1に示す。
【0104】
[比較例5]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部とエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)50部との混合物に代えて、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:ノバテックLD LC720)50部とエチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン(株)社製:ノバテックEVA LV211;MFR=0.3(190℃、2.16kgf);VA含有量6重量%)50部との混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム(C5)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、平滑層の厚みは7μmであった。得られた積層フィルム(C5)についての評価結果を表1に示す。
【0105】
[比較例6]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部とエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)50部との混合物に代えて、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:ノバテックLD LC720)50部とエチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)社製:ウルトラセン627;MFR=0.8(190℃,2.16kgf);VA含有量20重量%)50部との混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム(C6)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、平滑層の厚みは7μmであった。得られた積層フィルム(C6)についての評価結果を表1に示す。
【0106】
[比較例7]
表面層形成材料のエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム(C7)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、平滑層の厚みは7μmであった。得られた積層フィルム(C7)についての評価結果を表1に示す。
【0107】
[比較例8]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部に代えて、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)10部を用い、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)50部に代えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)90部を用いた以外は、実施例6と同様にして、粘着テープ(C1)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、粘着剤層の厚みは7μmであった。得られた粘着テープ(C1)についての評価結果を表2に示す。
【0108】
[比較例9]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部に代えて、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:ノバテックLD LC720)50部を用いた以外は、実施例6と同様にして、粘着テープ(C2)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、粘着剤層の厚みは7μmであった。得られた粘着テープ(C2)についての評価結果を表2に示す。
【0109】
[比較例10]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部に代えて、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン217)50部を用いた以外は、実施例6と同様にして、粘着テープ(C3)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、粘着剤層の厚みは7μmであった。得られた粘着テープ(C3)についての評価結果を表2に示す。
【0110】
[比較例11]
表面層形成材料として、低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製:ペトロセン209)50部に代えて、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:ノバテックLD LC720)50部を用い、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製:エバフレックスEV270)50部に代えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン(株)社製:ノバテックEVA LV211)50部を用いた以外は、実施例6と同様にして、粘着テープ(C4)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、粘着剤層の厚みは7μmであった。得られた粘着テープ(C4)についての評価結果を表2に示す。
【0111】
[比較例12]
表面層形成材料のエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いなかった以外は、実施例6と同様にして、粘着テープ(C5)を得た。表面層の厚みは2μm、基材層の厚みは38μm、粘着剤層の厚みは7μmであった。得られた粘着テープ(C5)についての評価結果を表2に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
表1および表2から明らかなように、本発明の積層フィルムおよび粘着テープは、長手方向の像鮮明度と幅方向の像鮮明度との差の絶対値が小さい。また、表面層は非常に薄いため、積層フィルムまたは粘着テープ全体の機械的物性に影響を及ぼさない。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の積層フィルムおよび粘着テープは、電子部品製造用、構造用、自動車用等において、例えば、保護用途、外観調整用途、装飾用途、ラベル用途等に広く用いられ得る。
【符号の説明】
【0116】
1 基材層
2 表面層
10 積層フィルム
20 粘着剤層
100 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と表面層とを有する積層フィルムであって、
該基材層が熱可塑性樹脂を含み、
該表面層がポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体を含み、
該積層フィルムの長手方向の像鮮明度と該積層フィルムの幅方向の像鮮明度との差の絶対値が10%以下である、
積層フィルム。
【請求項2】
長手方向の像鮮明度が20%以下であり、幅方向の像鮮明度が20%以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
ヘイズ値が30%〜80%である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記表面層の算術平均表面粗さRaが0.5μm〜2.0μmである、請求項1から3までのいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記表面層の厚みが、2μm〜10μmである、請求項1から4までのいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記ポリエチレンと前記エチレン−酢酸ビニル共重合体との重量比が、ポリエチレン:エチレン−酢酸ビニル共重合体=20:80〜80:20である、請求項1から5までのいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体中における、酢酸ビニル由来の構成単位の含有割合が、10重量%以上である、請求項1から6までのいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記表面層が、示差走査熱量測定における融解温度Tmを2点以上有する、請求項1から7までのいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記ポリエチレンのメルトフローレートが、8g/10min〜100g/10minである、請求項1から8までのいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが、0.1g/10min〜7g/10minである、請求項1から9までのいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれかに記載の積層フィルムの片側に粘着剤層を有する、粘着テープ。
【請求項12】
長手方向の像鮮明度と幅方向の像鮮明度との差の絶対値が10%以下である、請求項11に記載の粘着テープ。
【請求項13】
長手方向の像鮮明度が20%以下であり、幅方向の像鮮明度が20%以下である、請求項11または12に記載の粘着テープ。
【請求項14】
ヘイズ値が、30%〜80%である、請求項11から13までのいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項15】
前記表面層が、長鎖アルキル系剥離剤を有する、請求項11から14までのいずれかに記載の粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−25668(P2011−25668A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67738(P2010−67738)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】