説明

積層フィルム及びその用途

【課題】高いガスバリア性を有するものの,処理に際して無害である包装用の積層フィルム及び該積層フィルムから成る包装体を提供することを目的とする。
【解決手段】
基材層と,ポリオレフィンから成るシーラント層,バリア層から成り,前記基材層と前記シーラント層間に,有機高分子化合物及び/又は無機化合物がコーティングされ,又は無機物が蒸着されたバリア層を有し,酸素透過度が100ml/m・24hrs・MPa未満,突刺し強度が7N以上で,動摩擦係数が0.5未満であり,塩素化合物を含まない,常温で24ヶ月間にわたって前記シーラント層の添加剤のブリードが視認できない程小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,合成樹脂を積層して成る積層フィルム及びその用途に関し,より詳細には,シール袋等の包装体とすることができ,特に,衣料品や皮革製品等の包装に適した袋体とすることが可能な積層フィルム及び該積層フィルムから成る包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料品あるいは皮革製品等については,これを使用した後,ドライクリーニング等の洗浄及び乾燥や,汚れの拭き取り等の手入れが行われて収納場所へと収納されるが,収納場所の適切な管理が行われていない場合,虫食いやカビが発生し,使用できない状態となったり,外観が著しく損なわれた状態となることがある。
【0003】
そこで従来からクリーニング業者のサービスの一環として,クリーニング済みの衣料や皮革製品を包装用の積層フィルムで包装し,中に吸湿剤や脱酸素材等を入れて密閉することで内容物の外観を保護することが行われている。
【0004】
前記包装用の積層フィルムは,例えば数ヶ月から数年,具体的には6ヶ月以上24ヶ月以内といったような長期間にわたって前記衣料品や皮革製品を保護する必要があることから,防湿性,防カビ性及び強度が必要とされるほか,ガスバリア性や非ブリード性及び耐ピンホール性が要求される。また,速やかに衣料品や皮革製品等を包装する為に,前記包装用積層フィルムは内面の滑り性も要求される。さらに,前記包装用積層フィルムや該フィルムから成る包装体を使用後に焼却等して廃棄処分する場合には,環境対応も考慮する必要がある。
【0005】
上述するようなガスバリア性の考慮されたフィルムとしては,塩化ビニリデン系樹脂を主体とする樹脂を押出成形して成り,酸素透過度を所定範囲内としたフィルムを挙げることができる(例えば特許文献1等)。
【0006】
本発明の先行技術文献としては,下記のものを挙げることができる。
【特許文献1】特開平6−312452号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記包装用積層フィルムにあっては,ガスバリア性や非ブリード性及び耐ピンホール性,滑り性等,各種の条件を満たす必要がある為,高価であったり,特許文献1に記載のフィルムのように処分に際して有毒な物質を放出する可能性のあるフィルムが使用されてきた。
【0008】
そこで,本発明は,高いガスバリア性(非酸素透過性)や,その他の包装用資材として用いるために必要な性質を有するものの,焼却等の廃棄処理に際して無害である包装用の積層フィルム及び該積層フィルムから成る包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく,本発明の積層フィルム1は,
基材層11と,バリア層15と,ポリオレフィンから成るシーラント層12とから成り,前記基材層11表面又は該基材層11と前記シーラント層12間に,有機高分子化合物及び/又は無機化合物がコーティングされ,又は無機物が蒸着されて成るバリア層15を有し,酸素透過度が100ml/m・24hrs・MPa未満,突刺し強度が7N以上で,動摩擦係数が0.5未満であり,PVC等塩素化合物を含まないことを特徴とし,これにより,常温で24ヶ月間にわたって前記シーラント層の添加剤のブリードが視認できないものである。
【0010】
上記基材は,一層又は多層とすることができ,又,上記バリア層は基材のどちらの面に形成しても良く,シーラント層の積層面でも良い(請求項1)。
【0011】
前記基材層11は,一軸延伸又は二軸延伸ポリアミドフィルム又はポリエステルフィルム又はポリオレフィンフィルムであることが好ましい(請求項2)。
【0012】
また,前記基材層11にコーティングされ前記バリア層15を形成するコート剤は,有機高分子化合物と無機化合物とが複合されて成るハイブリットコート剤又はアクリル酸系有機高分子化合物であることが好ましく(請求項3),前記基材層に蒸着され前記バリア層15を形成する無機物は,アルミニウム,アルミナ,シリカのいずれかであることが好ましい(請求項4)。
【0013】
前記シーラント層12は直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましく(請求項5),該シーラント層12は,滑剤の濃度が500ppm未満又は無添加であることが好ましい(請求項6)。また,前記シーラント層の厚みは40μm以上,120μm以下であることが好ましい(請求項7)。
【0014】
なお,前述する本発明の積層フィルム1は,既知の各種接着剤又はアンカーコート剤を介してそれぞれドライラミネート加工又は押出ラミネート加工等の各種加工法によって前記基材層11と前記シーラント層12とを積層して製造することができる。
【0015】
また,本発明の包装体は,前記本発明の前記積層フィルム1を,前記シーラント層12同士を重ね合わせてヒートシールすることで密閉可能な袋体としたことを特徴とする(請求項8)。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の積層フィルム1によれば,酸素透過度が低く,高いガスバリア性を有していることから,前記積層フィルム1を用いて製造された包装体によってドライクリーニング後の衣料を脱酸素剤や乾燥剤と共に密閉することにより,高温多湿の環境下においても虫食いやカビの繁殖を防ぐことが出来る。
【0017】
また,前記積層フィルム1は突刺し強度が高く,耐ピンホール性に優れていることから,前記包装体内部あるいは外部からの応力によって該包装体にピンホールが発生してガスバリア性が損なわれることを好適に防ぐことができる。
【0018】
さらに,前記積層フィルム1は好適な滑り性を有することから,前記積層フィルム1を用いて製造された包装体に内容物となる布製品や皮革製品を収容する際等,好適に包装を行なうことができる。
【0019】
なお,耐ブリード性を達成する為に,シーラントは,滑剤の濃度が500ppm以下で,より好ましくは200ppm以下あるいは無添加とし,酸素透過度を達成する為に基材あるいはシーラントの少なくとも一方に上記バリア層を成す,コートあるいは蒸着処理がされていることが必要となる。又,突刺し強度を達成する為にシーラントは厚みが40μm以上120μm未満であることが好ましい。
【0020】
さらに,本発明の積層フィルム1のシーラント層12同士を重ね合わせ,ヒートシールを行なうことで,容易に袋体を形成することができ,この袋体を各種内容物を包装するための包装体として使用することができる。内容物としては,衣料品等の布製品,皮革製品のほか,粉状の薬剤や紙類等,保存にあたってガスバリア性等が必要とされる各種製品を挙げることができる。
【0021】
前記シーラント層12は,適度な強度を有するほか,良好なヒートシール性を有しているため,該シーラント層12をヒートシールして得られた袋体は密閉状態を長期間にわたって好適に維持することができる。
【0022】
また,本発明の積層フィルム1は,塩素化合物等の塩素成分を含んでいないことから,該積層フィルム及び該積層フィルムから成る包装体を使用した後,廃棄する際,焼却を行なった場合にも塩素系化合物等の有害物質の発生はなく,環境面でも好ましいといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の積層フィルム1は,基材層11と,バリア層15と,ポリオレフィンから成るシーラント層12とから成り,基材層11と,バリア層15と,ポリオレフィンから成るシーラント層とから成り,前記基材層11表面又は該基材層11と前記シーラント層12間に,有機高分子化合物及び/又は無機化合物がコーティングされ,又は無機物が蒸着されて成るバリア層15から成る。
【0024】
以下,本発明の積層フィルム1及び該積層フィルムから成る包装体につき説明する。
【0025】
〔基材層〕
基材層11は,前記積層フィルムの基材となり,前記積層フィルムを包装体として使用する際,該包装体の外層を成すもので,前記包装体の内部に収容した衣料品や皮革製品等の内容物を長期間にわたって好適な状態に保つべく,各種の性質を備える必要がある。
【0026】
具体的には,前記基材層11は,前記積層フィルムから成る包装体が外部からの応力に対して耐久性等を有するよう,適度な強度を備えるほか,外部からの刺激によってピンホール等が発生し,前記ガスバリア性を損なうことのないよう,突き刺し強度の高い材質を使用するものとする。
【0027】
前記基材層11を形成可能な材質としては,一軸延伸又は二軸延伸のポリアミドフィルム又はポリエステルフィルム又はポリオレフィンフィルムを挙げることができる。なお,廃棄の際に焼却することにより有害物質が発生することを防止する観点から,前記基材層11には塩素化合物を含まないものとする。
【0028】
また,前記包装体の内部に酸素等を透過させることのないよう,ガスバリア性をもたせるべく,前記基材層11には,例えば,前記基材層11表面又は該基材層11と前記シーラント層12間に,有機高分子化合物及び/又は無機化合物がコーティングされるか,又は無機物が蒸着されて成るバリア層15を形成している。
【0029】
前記バリア層15を成すコート剤としては,有機高分子化合物と無機化合物とが複合されて成るハイブリットコート剤を挙げることができる。特に,日本エコラップ社製の「セービックス」は,屈曲に強い高靱性有機ポリマーと酸素不透過性の無機化合物との複合体で,ポリマー層中に無機化合物をナノオーダー単位で分散させたコート剤であり,使用に好適である。なお,興人社製「コーバリア」も使用可能である。
【0030】
また,前記コート剤として有機高分子化合物を単独で使用することもでき,該有機高分子化合物としてはアクリル酸系樹脂を挙げることができる。
【0031】
これら,ハイブリットコート剤や有機系樹脂を前記基材層11の表面にコーティングする方法としては,グラビアロールコーティングなどの一般的な方法を用いることができる。
【0032】
この他,前記バリア層15を成す無機物としては,アルミニウム,アルミナ,シリカ等を挙げることができ,基材層11に蒸着される。
【0033】
また,前記基材層の厚みは10〜30μmとすることが好ましい。
【0034】
〔シーラント層〕
シーラント層12は,積層フィルム1を包装体として使用する際に該包装体の内層を成すもので,前記包装体の加工にあたってヒートシール層として機能する。
【0035】
そのため,前記シーラント層12は,ヒートシール適性を有し,かつヒートシール強度の高いものが好適であり,また,包装体内部からの応力に対して耐久性を有するよう,適度な強度や突き刺し強度を備える材質を使用するものとする。
【0036】
一例としては,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を挙げることができ,特に直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用することができる。
【0037】
なお,前記シーラント層12についても,前記基材層11と同様,有害物質の発生を防止する観点から含塩素ポリマーを含まないものとする。
【0038】
また,前記シーラント層12の添加物が内容物を汚染しないよう,該シーラント層12に含まれる滑剤の濃度は500ppm未満又は無添加であることが好ましい。
【0039】
前記シーラント層12の厚みは,突刺し強度維持の観点から40μm以上,また,加工性を考慮して120μm以下とすることが好ましい。
【0040】
〔中間層〕
本発明の積層フィルム1は前記基材層11及び前記シーラント層12の2層を積層して構成することができるが,前記2層のほかにさらに層を有していてもよく,例えば前記基材層11と前記シーラント層12の間に中間層を備えるよう構成することとしてもよい。前記中間層としては,前記基材層11に使用可能な材質を使用することができる。
【0041】
〔製造方法〕
前記基材層11及び前記シーラント層12,また前記中間層を備える場合には該中間層は,既知の各種ラミネート加工法,加工装置を用いて積層することができ,一例としては,ドライラミネート加工法や,押出ラミネート加工法が挙げられる。
【0042】
前記積層の際に用いられる接着剤についても,各ラミネート加工法において用いられる既知の各種接着剤を使用することができ,例えば,ドライラミネート加工にあっては,ポリエステル系やポリエーテル系等のドライラミネート用接着剤を,押出ラミネート加工の場合には,押出ラミネート加工用の各種アンカーコート剤を使用することができる。なお,前記接着剤,アンカーコート剤についても,廃棄時の有害物質の発生を防止する観点から含塩化ポリマーを含まないものとする。
【0043】
これらの接着剤,アンカーコート剤によって前記基材層11及び前記シーラント層12が積層されて成る積層フィルム1は,好ましくはこれを20℃〜70℃の温度で6〜48時間,より好ましくは40℃〜60℃で12〜48時間エージングを行ない,接着状態を安定化させる。
【0044】
〔積層フィルム〕
上述のようにして得られた積層フィルム1は,酸素透過度が100ml/m・24hrs・MPa未満,突刺し強度が7N以上を有し,動摩擦係数が0.5未満であり,常温で24ヶ月間にわたって前記シーラント層の添加剤のブリードが視認できない程小さくすることができるものとする。
【0045】
これはすなわち,酸素透過度が100ml/m・24hrs・MPa以上の積層フィルムであると,該積層フィルムから成る包装体を用いた場合,脱酸素剤を同梱していても該包装体内の酸素濃度が好気性のカビ等の生育が可能な状況となってしまう恐れがあり,また,突刺し強度が7N以下では前記包装体外部又は内部からの刺激によってピンホールが発生し,脱酸素効果が得られなくなるためである。さらに,動摩擦係数が0.5以上となると,内容物の充填が困難となるためである。
【0046】
〔包装体〕
前記本発明の積層フィルム1は,前記シーラント層12が内側となるよう重ね合わせてヒートシールすることにより,所定形状,所定サイズの袋体に形成することができる。
【0047】
前記ヒートシールによって袋体を形成する方法についても,既知の各種方法,装置を使用することができ,前記積層フィルムも所定の大きさに切断した後,これを2枚重ね合わせてヒートシールしたり,原反となる一連の積層フィルム1を折り返して重ね合わせた上でヒートシールするなど,各種方法により形成可能である。
【0048】
これにより形成された袋体は,高いガスバリア性を有することから,内部に収容した物を密閉状態で長期間にわたって保管することが可能な包装体として使用することができ,例えばこの中に洗浄済みの,あるいは汚れを拭き取った布製品(衣料品等)や皮革製品を脱酸素剤と共に入れて密閉することができる。
【0049】
前記衣料品や皮革製品のほか,粉末の薬品や紙等,保存する際に酸素等のガスバリア性を必要とし,比較的軽量な物についての包装袋としても好適に使用することができる。
【実施例】
【0050】
本発明の包装用積層フィルム1につき,酸素透過度,添加剤のブリード検査,摩擦係数測定,突刺し強度測定を行った。
【0051】
なお,本発明の積層フィルム及び包装体は以下に示す実施例に限定されるものではなく,本発明の目的の範囲において種々の変更が可能である。
【0052】
(実施例1)
基材層11としてハイブリッドコートされた二軸延伸ポリアミドフィルム:日本エコラップ製「セービックスYON-H2」(厚さ15μm)を,シーラント層12として直鎖状低密度ポリエチレンフィルム:東セロ製「FCS」(厚さ80μm)を,ドライラミネート用接着剤として,ポリエステル系接着剤を実施に応じて適宜用いて,ドライラミネート加工により積層フィルム1を製造した。
【0053】
(実施例2)
基材層11として有機系樹脂(アクリル酸)がコートされた二軸延伸ポリアミドフィルム:呉羽化学工業製「ベセーラRA」(厚さ16μm)を,シーラント層12として滑剤の濃度を200ppm〜400ppm程度にした直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(厚さ80μm)を,上記接着剤を用い,ドライラミネート加工により積層フィルム1を製造した。
【0054】
(実施例3)
基材層11としてアルミニウムを蒸着したポリエステルフィルム:尾池工業製「テトライトJC」(厚さ12μm)を,中間層(第2の基材層)として二軸延伸ポリアミドフィルム:東洋紡績製「東洋紡ハーデンフィルムN1200」(厚さ15μm)を,シーラント層12として直鎖状低密度ポリエチレンフィルム:東セロ製「FCS」(厚さ80μm)を,上記接着剤を用い,ドライラミネート加工により積層フィルム1を製造した。
【0055】
(実施例4)
基材層11としてハイブリッドコートされた二軸延伸ポリアミドフィルム:日本エコラップ製「セービックスYON-H2」(厚さ15μm)を,シーラント層12として押出ラミネート用直鎖状低密度ポリエチレン樹脂:住友化学製「スミカセンHiα」(厚さ60μm)を,接着剤として押出ラミネート用アンカーコート剤:三井武田ケミカル製「タケラック」を用い,押出しラミネート加工により積層フィルム1を製造した。
【0056】
上記実施例1〜4に対し,比較例として,下記の積層フィルムを製造した。
【0057】
(比較例1)
基材層11として二軸延伸ポリアミドフィルム:東洋紡績製「東洋紡ハーデンフィルムN1102」(厚さ15μm)を用いた点以外については実施例1と同様の積層フィルムを製造した。
【0058】
(比較例2)
基材層11としてポリ塩化ビニリデンコートされた二軸延伸ポリアミドフィルム:ダイセル化学工業製「セネシKON#1000」(厚さ15μm)を用いた点以外については実施例1と同様の積層フィルムを製造した。
【0059】
(比較例3)
シーラント層12として直鎖状低密度ポリエチレンフィルム:サーモ製「LS10C」(厚さ80μm)を用いた点以外については実施例1と同様の積層フィルムを製造した。
【0060】
(比較例4)
基材層11として二軸延伸ポリエステルフィルム:東洋紡績製「東洋紡エステルフィルムE5100」(厚さ15μm)を用いた点以外については実施例1と同様の積層フィルムを製造した。
【0061】
上記実施例1〜4及び比較例1〜4の構成をまとめると以下のようになる。
【表1】

【0062】
これら実施例1〜4の積層フィルム1及び比較例1〜4の積層フィルムを40℃で24時間保持してエージングを行ない,これを試料として,下記の試験を行なった。
【0063】
〔酸素透過度測定〕
JIS K 7126に従い,23℃で湿度65%RHにおいて一定面積の積層フィルムを透過する酸素の量を測定した。
【0064】
その結果,下記のような結果が得られた。
【表2】

【0065】
以上の結果から,比較例1及び比較例4は多量の酸素を透過させてしまうことから酸素バリア性がなく,このような積層フィルムによって布製品や皮革製品を包装した場合には,保管場所や内容物の状態によってはカビが発生してしまい,該カビの繁殖を抑制することができないものと考えられる。これは,基材層11に有機系樹脂や無機化合物等によるコーティングがなされておらず,酸素の透過を防止することができないためということができる。
【0066】
他方,実施例1〜4並びに比較例2,3については,本発明の目的に十分対応し得る酸素バリア性を有することが確認された。
【0067】
〔添加剤ブリード試験〕
上記積層フィルムを用いて,大きさ10cm×10cm,シール巾10mmで三辺ヒートシールされた包装袋を作成し,該包装袋の中に約8cm×8cm黒色の綿布(約2g)を入れた後,口を10mm巾でヒートシールして密閉し,これを40℃で湿度80%RHの恒温恒湿槽に3ヶ月間静置した。
【0068】
その後,積層フィルムからの添加剤のブリードにより黒色綿布が汚染されていないか,前記黒色綿布を取り出してその色を観察した。
【0069】
その結果,下記のような結果が得られた。
【表3】

【0070】
以上の結果から,比較例3の積層フィルムでは,1年以内に該積層フィルムからブリードした添加物が包装対象である内容物に付着し,該内容物を汚染してしまうため,包装体として使用することができない。なお,LS10のブリード性が×であるのは,特に,フィルム添加剤の処方,ここでは,滑剤の量が多いために内容物汚染が生じたことによる。
【0071】
また,実施例1〜4及び比較例1,2,4にあっては,常温で1年間保管した後でも添加剤のブリードによる内容物汚染の心配はないことが確認された。
【0072】
〔動摩擦係数測定〕
JIS K 7125に従い,200gのスレッドを用いた平板法によって測定した。
【0073】
全ての実施例及び比較例において動摩擦係数が0.3〜0.4であり,本発明の要求する滑り性を満たしていることが確認された。
【0074】
〔突刺し強度測定〕
JIS K 1707に従い,先端の形状が1mmφのピンを用いて,500mm/minの速度で突刺した際の強度を測定した。
【0075】
全ての実施例及び比較例において突刺し強度が10〜20Nあり,本発明で要求する突刺し強度,耐ピンホール性を満たしていることが確認された。
【0076】
〔総合結果〕
以上のように,実施例1〜4及び比較例2については,酸素バリア性,非ブリード性,滑り性,耐ピンホール性の全てにおいて本発明の要求する物性を満たすといえる。
【0077】
しかし,比較例2にあっては,基材層11のコーティング剤として塩素化合物を用いているため,比較例2の積層フィルムを低温で焼却処分すると人体に有害なダイオキシン類を発生してしまうおそれがあり,環境面での問題がある。
【0078】
一方,実施例1〜4では,塩素化合物を一切含んでいないことから,ダイオキシン類の発生が懸念されることもなく,環境負荷を小さくすることができる。
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0079】
したがって,本発明の積層フィルムによれば,布製品(衣料品)や皮革製品,また,保存において酸素バリア性を必要とする薬品や紙等の包装に好適に使用することができる包装体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の積層フィルムの一実施例を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0081】
1 積層フィルム
11 基材層
12 シーラント層
15 バリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と,バリア層と,ポリオレフィンから成るシーラント層とから成り,
前記基材層表面又は該基材層と前記シーラント層間に,有機高分子化合物及び/又は無機化合物がコーティングされ,又は無機物が蒸着されて成るバリア層を有し,
酸素透過度が100ml/m・24hrs・MPa未満,突刺し強度が7N以上で,動摩擦係数が0.5未満であり,樹脂構造中に塩素化合物を含まないことを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記基材層が,一軸延伸又は二軸延伸のポリアミドフィルム又はポリエステルフィルム又はポリオレフィンフィルムであることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記基材層にコーティングされバリア層を形成するコート剤が,有機高分子化合物と無機化合物とが複合されて成るハイブリットコート剤又は有機高分子化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記バリア層を形成する無機物が,アルミニウム,アルミナ,シリカのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記シーラント層が直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記シーラント層は,滑剤の濃度が500ppm未満又は無添加であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記シーラント層の厚みが40μm以上,120μm以下であることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記請求項1〜7いずれか1項記載の積層フィルムを,前記シーラント層同士を重ね合わせてヒートシールすることで密閉可能な袋体としたことを特徴とする包装体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−95893(P2006−95893A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285314(P2004−285314)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(390004709)カイト化学工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】