説明

積層フィルム及びそれからなる包装材

【課題】
本発明は、生分解性に優れ、かつフィルム物性に優れた積層フィルムおよび包装材を提供する。
【解決手段】
生分解性ポリマーからなる表面層(i)、水崩壊性ポリマーからなる中間層(ii)及びヒートシール性を有する生分解性ポリマーからなる裏面層(iii)からなることを特徴とする積層フィルム、好適には、以下の表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)からなることを特徴とする積層フィルム。
表面層(i)
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)からなる組成物(E1)からなる。
中間層(ii)
水崩壊性ポリマー(D)と共に、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)からなる組成物(E2)からなる。
裏面層(iii)
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)からなる組成物(E3)からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性を有する積層フィルムに関し、地中へ埋設した場合であっても比較的短期間に分解する積層フィルムおよびそれからなる包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にし、地中へ埋設された場合であっても早期に生分解する包装材が求められており、それに対応した種々のフィルムが開発されている。
しかしながら、包装材として使用し得るフィルムは、使用後、地中に埋設しても生分解するまでに長期間を要し、一方、生分解性が速いフィルムは、包装材として使用した場合には強度が不十分である等の問題点があった。
また、ポリビニルアルコールを含む生分解性フィルムはヒートシール強度がオレフィン系樹脂等からなる非生分解性フィルムよりも劣っており、また、ポリビニルアルコールには酢酸臭がある場合があり、その改善が求められている。
かかる問題点を解決する方法として、例えば、ポリ乳酸の層とポリビニルアルコールの層からなる積層フィルム(特許文献1)、ポリ乳酸とそれ以外の脂肪族ポリエステルからなる中間層、及び脂肪族ポリエステルからなる最外層と最内層からなる生分解性袋状製品が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−244190(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005―313998(実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、包装材として使用するのに十分な機械的強度を有し、且つ、ヒートシール強度に優れ、しかも、フィルムの素材に由来する異臭を発せず、使用後にコンポスト処理した際には、比較的短期間でフィルムとしての形状を残さない程度まで崩壊する包装材に好適な積層フィルムを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、生分解性ポリマーからなる表面層(i)、水崩壊性ポリマーを含む中間層(ii)及び生分解性ポリマーからなる裏面層(iii)からなることを特徴とする積層フィルムに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の積層フィルムは、表面層及び裏面層が共に、生分解性ポリマーからなり、中間層が水崩壊性ポリマーを含む層からなるので、包装材して使用するのに十分な機械的強度をし、且つ、裏面層がヒートシール強度に優れ、しかも、フィルムの素材に由来する異臭を発する虞がない。そして、使用後にコンポスト処理した際には、比較的短期間、例えば3日間以内と生ゴミとほぼ同程度の分解速度で崩壊し、包装材がコンポスト処理装置内に堆積しない。
本発明の積層フィルムとして、表面層及び裏面層に用いる生分解性ポリマーとして、ポリ乳酸及び/又はポリグリコール酸を含む生分解性ポリマーを用いた積層フィルムは、より、低温ヒートシール性に優れ、且つ、ヒートシール可能な温度範囲が広く包装材として用いた場合に、高速包装することができる。しかも、使用後にコンポスト処理した際には、分解速度が顕著に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について、用いられる原材料から逐次詳述する。
生分解性ポリマー
本発明の積層フィルムの表面層(i)及び裏面層(iii)に用いる生分解性ポリマーは、公知の生分解性ポリマーであって、具体的には、デンプン、脂肪族・芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル共重合体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクトン、脂肪族ポリエステルなどの脂肪族系ポリエステルなどが挙げられる。本発明に係わる生分解性ポリマーはその機能を損なわない範囲で他のポリマー、添加剤などを含んでもいてもよい。
デンプン(A)
本発明の積層フィルムの表面層(i)及び裏面層(iii)に用いる生分解性ポリマー、あるいは生分解性ポリマーの一成分として用いることが望ましいデンプン(A)は、分子式(C6105nの炭水化物(多糖類)で、多数のα−グルコース分子がグリコシキド結合によって重合した天然高分子である。構成単位であるグルコースとは異なる性質を示す。種子や球根に多く含まれている。好ましくはデンプンの分子中に存在するOH基をアセチル化、エーテル化等有機修飾したものが成形時の熱劣化が小さく好ましい。
また、デンプン(A)は均一に分散させる観点から、溶媒に分散させて使用することが好ましい。
また、デンプン(A)はOH基を有機修飾した工業用デンプンが成形時の熱劣化が小さく好適である。
本発明の積層フィルムの表面層(i)及び裏面層(iii)に、生分解性ポリマーの一成分として、デンプンを用いる場合は、デンプンの粒子径が100μm以下、より好ましくは50μm以下の粒子径で分散させておくことが好ましい。デンプンの粒子径が100μmを越える場合は、積層フィルムの成形時に焦げを生じたり、フィッシュアイ(点状異物)となる虞がある。
【0008】
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
本発明の積層フィルムの表面層(i)及び裏面層(iii)に用いることが望ましい生分解性ポリマーあるいは生分解性ポリマーの一成分及び中間層(ii)に用いる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、その中でも好ましくは40〜60モル%と共に、芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、その中でも好ましくは60〜40モル%からなる酸成分、と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)、からなるポリエステルである。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)と芳香族ジカルボン酸成分(b2)との合計のモル数と実質的に等しく、得られる脂肪族・芳香族ポリエステルの分子量を上げるためにイソシアネート基に代表される連結基を含んでも良い。
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、好ましくは、融点が50〜190℃、さらに好ましくは60〜180℃、その中でも好ましくは70〜170℃の範囲にある。また、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)のメルトフローレート(MFR:ASTMD−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルムが成形できる限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、その中でも好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)
本発明に係わる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、特に4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものである。また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、特に、アジピン酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%の範囲にある。脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の加水分解性や生分解性を向上させ、得られるフィルムを柔軟にする。
芳香族ジカルボン酸成分(b2)
本発明に係わる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である芳香族ジカルボン酸成分(b2)は、特に限定はされないが、通常、8〜12個の炭素原子を有する化合物、とくに8個の炭素原子を有する化合物が挙げられる。芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフトエ酸および1,5−ナフトエ酸並びにそのエステル形成誘導体を例示できる。芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、具体的には、芳香族ジカルボン酸のジ−C〜Cアルキルエステル、例えばジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等を例示できる。
これら芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、単独または2種以上からなる混合物として使用することもできる。
芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、特に、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の芳香族ジカルボン酸成分(b2)は80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%の範囲にある。芳香族ジカルボン酸成分(b2)を共重合することにより、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)のポリビニルアルコールと成形した際の熱劣化を抑え、かつ耐熱性を保ちながら柔軟なポリエステルが得られる。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリ
エチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、とくには、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特表2002−527644公報、特表2001−501652公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)としては、例えば、BASF社からEcoflex(商品名)として製造・販売されている。
【0009】
脂肪族ポリエステル共重合体(C)
本発明の積層フィルムの表面層(i)及び裏面層(iii)に用いる生分解性ポリマーあるいは生分解性ポリマーの一成分として、さらには中間層(ii)に用いるポリマーとして用いる脂肪族ポリエステル共重合体(C)には、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(c1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(c3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(C−1)、ポリラクトン(C−2)がある。
本発明において脂肪族ポリエステル共重合体(C−1)を用いることが望ましく、好ましくは2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(c3)の含有量が0.1〜25モル%、より好ましくは1〜10モル%〔脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(c1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(c3)で、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(c1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c2)量は実質的に等しく、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(c1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(c3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(C)のメルトフローレート(MFR:ASTMD−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0010】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(c1)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(C−1)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(c1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものが好ましい。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(c1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(c1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(c1)としては、特に、コハク酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましく、融点(Tm)が低い脂肪族ポリエステル共重合体(C−1)を得るために、コハク酸を主成分とし、副成分としてアジピン酸を併用してもよい。
【0011】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c2)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(C−1)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c2)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状の脂肪族ジヒドロキシ化合物が挙げられ、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c2)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリ
エチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、特には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
これらの中では1,4−ブタンジオールが好ましい。
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(c3)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(C−1)を構成する成分である2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(c3)は、特に限定はされないが、通常、1〜10個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状の二価脂肪族基を有する化合物が挙げられる。
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(c3)としては、具体的には、例えば、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸等があり、これらの2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、シクロヘキシルエステル等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステル形成誘導体を挙げることができる。

これらの中では、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸などの乳酸を主成分とするものが好適であり、L−乳酸を主成分とするものが望ましい。
【0012】
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(C−1)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特開平8−239461号公報、特開平9−272789号公報に記載されている。本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(C−1)としては、前記脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(c1)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(c3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体である。具体的には、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、PHBなどを例示することができる。これらは例えば三菱化学株式会社からGSPla(商品名)として製造、販売されているものがある。
【0013】
ポリラクトン(C−2)
本発明の積層フィルムの表面層(i)及び裏面層(iii)に用いる生分解性ポリマーあるいは生分解性ポリマーの一成分、さらには中間層(ii)に用いる脂肪族系ポリエステル共重合体(C)の一種であるポリラクトン(C−2)としては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等のラクトンの1種類若しくは2種以上を重合して得られるポリラクトン及びラクトンと他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマーである。かかるポリラクトン(C−2)の具体例としては、例えば、ε−カプロラクトンの開環重合によって得られたもの、6−ヒドロキシカプロン酸の脱水重縮合によって得られたもの、あるいは両者を重合させて得られるポリε−カプロラクトン、ポリδ−バレロラクトン等が挙げられる。又、ラクトンと共重合される他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、グリコライド、乳酸、ラクタイド、各種ヒドロキシ酪酸、各種ヒドロキシ吉草酸、各種ヒドロキシカプロン酸またはそれらの環状無水物等が挙げられる。これらポリラクトンの中でも、好ましくは該ラクトン類のみからなる重合体であり、特に好ましくはポリカプロラクトンである。
【0014】
ポリ乳酸(F)
本発明の積層フィルムの表面層(i)及び裏面層(iii)に用いる生分解性ポリマーあるいは生分解性ポリマーの一成分及び中間層(ii)に用いる脂肪族系ポリエステルの一種であるポリ乳酸(F)は、ポリL−乳酸、若しくはポリD−乳酸のいずれか一方、又ポリL−乳酸とD−乳酸の混合物からなる。前記ポリL−乳酸(以下、「PLLA」という。)はPLLAを主たる構成成分、好ましくは85モル%以上を含む重合体である。PLLAの含有量が85モル%未満の重合体は、分子量が低いため液状、ゴム状となり耐熱性が乏しいおそれがある。
PLLAの分子量はフィルム形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6万〜100万の範囲にある。重量平均分子量が6万未満のものは得られるフィルムの強度が劣る虞があり、一方、100万を越えるものは溶融粘度が大きく成形加工性が劣る虞がある。
また、前記ポリ−D−乳酸(PDLA)は、PDLAを主たる構成成分、好ましくは85モル%以上を含む重合体である。PDLAの含有量が85モル%未満の重合体は、分子量が低いため液状、ゴム状となり耐熱性が乏しいおそれがある。また、PDLAの分子量は、通常、重量平均分子量(Mw)は6万〜100万の範囲にある。重量平均分子量が6万未満のものは得られるフィルムの強度が劣る虞があり、一方、100万を越えるものは溶融粘度が大きく成形加工性が劣る虞がある。
ポリ乳酸(F)を構成するPLLA及びPDLAには、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他の共重合成分、例えば、多価カルボン酸若しくはそのエステル、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類等を共重合させておいてもよい。
多価カルボン酸としては、具体的には、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、ケトピメリン酸、マロン酸及びメチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル及びメチルマロン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル並びにテレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。
多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール及び分子量1000以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β又はγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、L−ラクチド、D−ラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル等が挙げられる。
また、本発明に係わるPLLA及びPDLAには、それぞれD−乳酸若しくはL−乳酸を前記範囲以下であれば少量含まれていてもよい。
本発明の積層フィルムの表面層(i)及び裏面層(iii)に、生分解性ポリマーの一成分ポリ乳酸(F)を用いる場合は、ポリ乳酸(F)の粒子径が10μm以下、より好ましくは1μm以下の粒子径で分散させておくことが好ましい。ポリ乳酸(F)の粒子径が10μmを越える場合は、積層フィルムの機械的強度が低下する虞がある。
【0015】
ポリグリコール酸(G)
本発明の積層フィルムの表面層(i)及び裏面層(iii)に用いる生分解性ポリマーあるいは生分解性ポリマーの一成分及び中間層(ii)に用いる脂肪族系ポリエステルの一種であるポリグリコール酸(G)は、例えば、グリコリド(すなわち、グリコール酸の環状2量体エステル)を、触媒(例えば、有機カルボン酸錫、ハロゲン化錫、ハロゲン化アンチモン等のカチオン触媒)の存在下に加熱して、塊状開環重合または溶液開環重合することにより得ることができる。ポリグリコール酸を得る際のモノマーとしては高純度のグリコリドを使用することが好ましい。
本発明に係わるポリグリコール酸(G)は−(−O−CH2−C(=O)−)−で表わされる繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステルの重合体である。ポリグリコール酸(G)は、グリコール酸繰り返し単位のみからなるグリコール酸の単独重合体(グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリドの開環重合物を含む)を含む。また、本発明に係わるポリグリコール酸(G)は、上記のグリコール酸繰り返し単位を主要な構成とするポリグリコール酸共重合体を含む。ポリグリコール酸共重合体は上記のグルコール酸繰り返し単位を55質量%ないし99質量%、好ましくは70質量%ないし99質量%、さらに好ましくは80質量ないし99質量%含むことが望ましい。
ポリグリコール酸共重合体のコモノマーとしては、シュウ酸エチレン(即ち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド類、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、カーボネート類(例えばトリメチリンカーボネート等)、エーテル類(例えば1,3−ジオキサン等)、エーテルエステル類(例えばジオキサノン等)、アミド類(εカプロラクタム等)などの環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;またはこれらの2種以上が例示される。
本発明に係わるポリグリコール酸(G)は結晶性の重合体であることが望ましく、通常、その融点が150℃以上、好ましくは180〜225℃、さらに好ましくは210〜225℃の範囲にある。また、融解熱量(ΔHm)は、通常、20J/g以上、より好ましくは30〜75J/g以上、さらに好ましくは40〜75J/gの範囲にある。
本発明に係わるポリグルコール酸(G)は、へキサフルオロイソプロパノール溶媒を用いるGPC測定における重量平均分子量(ポリメチルメタクリレート換算)が5万ないし60万、中でも15万ないし30万の範囲であることが好ましい。この範囲であれば生分解性ポリエステルとの溶融混合性に優れており、溶融不良による成形物のフローマークなどが発生して外観不良になることもない。
本発明の積層フィルムの表面層(i)及び裏面層(iii)に、生分解性ポリマーの一成分としてポリグルコール酸(G)を用いる場合は、ポリグルコール酸(G)の粒子径が10μm以下、より好ましくは1μm以下の粒子径で分散させておくことが好ましい。ポリグルコール酸(G)の粒子径が10μmを越える場合は、積層フィルムの機械的強度が低下する虞がある。
【0016】
水崩壊性ポリマー
本発明の積層フィルムの中間層(ii)に用いる水崩壊性ポリマーは、水の存在下に、膨潤、分解等によりその物理的強度が極度に低下するポリマーであり、膨潤、溶解その他によりその物理的強度が低下するものであれば、特に限定されることなく用いることができる。水溶解性ポリマ−、水膨潤性ポリマ−などが例示される。従って、これらのポリマ−は本発明に使用する態様において、水によってその物理的強度が低下するものであればよく、必ずしもその形状がなくなるようになるまで用いられることを必須とするものではない。具体的には、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールなどのエーテル系高分子化合物、これらエーテル系高分子化合物と脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られるポリエステル等が挙げられる。これら水崩壊ポリマーの中でも、エーテル系高分子化合物及びエーテル系高分子化合物と脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られるポリエステルが好適である。本発明に係わる水崩壊性ポリマーにはその機能を損なわない範囲で他のポリマー、添加剤などを含んでもいてもよい。
【0017】
エーテル系高分子化合物(D)
本発明に係わる水崩壊性ポリマーの一種であるエーテル系高分子化合物(D)は、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールなどのエーテル基含有高分子化合物及び当該エーテル基含有高分子化合物をイソシアネートで共重合したエーテル基含有高分子化合物の誘導体などである。具体的にはポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールフェニルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールフェニルエーテル、ポリオキシテトラメチレングリコールブチルエーテルポリオキシプロピレングリコールブチルエーテル、ポリオキシエチレングリコールブチルエーテルなどが挙げられる。
また、エーテル系高分子化合物(D)としては、例えばポリオキシエチレングリコールを原料として、ポリエチレンオキシド、若しくはそのカップリング重合体又はそれらの2種以上の混合物などが均質のフィルムが得られる等の観点から特に好ましい。また、生ゴミ用袋としての耐水性及びフィルム成形時のフィルム延展性を目的としてエーテル系高分子化合物(D)は分子量を上げるためにイソシアネート基に代表される連結基を含んでも良い。尚、エーテル系高分子化合物及(D)の平均分子量は10,000g/mol以上であることがフィルムの機械的強度を確保する観点から好ましい。
【0018】
積層フィルム
本発明の積層フィルムは、表面層(i)及び裏面層(iii)が前記生分解性ポリマーからなり、中間層(ii)が前記水崩壊性ポリマーを含む層からなる。
<表面層(i)>
[請求項2に対応する態様]
本発明の積層フィルムの表面層(i)は、好ましくは、前記生分解性ポリマーが、前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び/又は前記脂肪族ポリエステル共重合体(C)からなる。
表面層(i)に用いる生分解性ポリマーとして、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び/又は前記脂肪族ポリエステル共重合体(C)を用いることにより、生分解性及び低温ヒートシール性等の加工性の観点から好ましい。生分解性の観点からは生分解性ポリマーとして脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)の何れか一方のみ又は双方の混合物を用いることで優れた生分解性を付与することができる。また、各々異なる融点の脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)を適宜混合することにより表面層(i)の融点を適切なヒートシール温度等加工条件に合わせて制御することもできる。
【0019】
[請求項3に対応する態様]
本発明の積層フィルムの表面層(i)として、表面層(i)を形成する生分解性ポリマーが、デンプン(A)0〜50質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜100質量%及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)0〜100質量%〔デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び脂肪族ポリエステル共重合体(C)の合計が100質量%とする。〕を含む組成物を用いることがより好ましい。表面層に用いる生分解性ポリマーとして、かかる組成物を用いることにより、優れたヒートシール性と生分解性を具備する積層フィルムを得ることができる。
デンプン(A)については、必ずしも含有させる必要はないが、含有させることにより、生分解性菌による細孔の形成が促進されるため、生分解速度をより早くすることができる。デンプン(A)は生分解性の向上及びフィッシュアイの防止等加工性の観点から0〜50質量%含有させることが好ましい。一方、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)については、ヒートシール温度の調整等加工性の見地から含有させてもよいが必ずしも含有させる必要はない。具体的には、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)の何れか一方又は双方の混合物0〜100質量%含有させることが好ましい。
【0020】
[請求項4に対応する態様]
本発明の積層フィルムの表面層(i)として、表面層(i)を形成する生分解性ポリマーが、デンプン(A)20〜50質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜80質量%及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)0〜80質量%〔デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び脂肪族ポリエステル共重合体(C)の合計が100質量%とする。〕を含む組成物を用いることがより好ましい。表面層に用いる生分解性ポリマーとして、かかる組成物を用いることにより、生分解性をさらに向上させることができる。
表面層(i)にデンプン(A)を含有させることにより、生分解性菌による細孔の形成が促進されるため、生分解速度をより早くすることができる。表面層(i)に含有させるデンプン(A)は生分解性の向上、加工性の劣化防止の見地から20〜50質量%が好ましく、25〜40質量%がさらに好ましい。
【0021】
〔請求項6に対応する態様〕
本発明の積層フィルムの表面層(i)として、表面層(i)を形成する生分解性ポリマーが、デンプン(A)20〜50質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜79質量%、脂肪族ポリエステル共重合体(C)0〜79質量%、ポリ乳酸(F)及び/又はポリグリコール酸(G)1〜50質量%〔(デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)、ポリ乳酸(F)及びポリグリコール酸(G)の合計が100質量%とする。〕を含む組成物を用いることがより好ましい。
表面層に用いる生分解性ポリマーとして、かかる組成物を用いることにより、微生物による生分解が促進し、生分解性を向上させることができる。具体的にはデンプン(A)が20〜50質量%、より好ましくは25〜40質量%であり、ポリ乳酸(F)、ポリグリコール酸(G)の何れか一方又は双方の混合物1〜50質量%、より好ましくは5〜45質量%である。また、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)は加工性の見地から含有させてもよいが必ずしも含有させる必要はない。具体的には、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)の何れか一方又は双方の混合物0〜79質量%、好ましくは30〜59質量%である。
【0022】
本発明の積層フィルムの表面層(i)に用いるデンプン、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)などの生分解性ポリマーあるいはそれらの組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機化合物あるいは有機化合物の微粒子などの充填材等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
特に、有機化合物あるいは無機化合物の微粒子からなる添加剤を配合することが生分解性ポリマーの分解性を速めるため望ましい。無機化合物からなる微粒子には、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、酸化チタン、中空ガラスバルーン、ガラスビーズ、カーボンブラック、水酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、モンモリロナイト、マイカ等などがあり、中でもシリカの微粒子が好適である。かかる添加剤の配合量は、生分解性ポリマーあるいはそれらの組成物中に、0.1〜5質量%、中でも0.5〜3質量%の割合となるように配合することが望ましい。
【0023】
<裏面層(iii)>
〔請求項2に対応する態様〕
本発明の積層フィルムの裏面層(iii)は、好ましくは、前記生分解性ポリマーが、前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び/又は前記脂肪族ポリエステル共重合体(C)からなる。
裏面層に用いる生分解性ポリマーとして、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び/又は前記脂肪族ポリエステル共重合体(C)を用いることにより、生分解性及び低温ヒートシール性等の加工性の観点から好ましい。生分解性の観点からは生分解性ポリマーとして脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)の何れか一方のみ又は双方の混合物を用いることで優れた生分解性を付与することができる。
また、各々異なる融点の脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)を適宜混合することにより裏面層(iii)の融点を適切なヒートシール温度等加工条件に合わせて制御することもできる。
【0024】
[請求項3に対応する態様]
本発明の積層フィルムの裏面層(iii)として、裏面層(iii)を形成する生分解性ポリマーが、デンプン(A)0〜50質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜100質量%及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)0〜100質量%〔デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び脂肪族ポリエステル共重合体(C)の合計が100質量%とする。〕を含む組成物を用いることがより好ましい。裏面層に用いる生分解性ポリマーとして、かかる組成物を用いることにより、優れたヒートシール性と生分解性を具備する積層フィルムを得ることができる。
デンプン(A)については、必ずしも含有させる必要はないが、含有させることにより、生分解性菌による細孔の形成が促進されるため、生分解速度をより早くすることができる。デンプン(A)は生分解性の向上及びフィッシュアイの防止等加工性の観点から0〜50質量%含有させることが好ましい。
一方、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)については、ヒートシール温度の調整等加工性の見地から含有させてもよいが必ずしも含有させる必要はない。具体的には、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)の何れか一方又は双方の混合物0〜100質量%含有させることが好ましい。
【0025】
〔請求項5に対応する態様〕
本発明の積層フィルムの裏面層(iii)として、裏面層(iii)を形成する生分解性ポリマーが、デンプン(A)1〜20質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)80〜99質量%及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)80〜99質量%(デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び脂肪族ポリエステル共重合体(C)の合計が100質量%とする。)を含む組成物を用いることがより好ましい。裏面層に用いる生分解性ポリマーとして、かかる組成物を用いることにより、裏面層(i)にデンプン(A)を20〜50質量%の割合で脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)のいずれか一方、又は双方の混合物に添加することにより、生分解性をさらに向上させることができる。裏面層(iii)にデンプン(A)を含有させることにより、生分解性菌による細孔の形成が促進されるため、生分解速度をより早くすることができる。裏面層(iii)に含有させるデンプン(A)は生分解性の向上、ヒートシール性等の加工性の劣化防止の見地から1〜20質量%が好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。
【0026】
〔請求項7に対応する態様〕
本発明の積層フィルムの裏面層(iii)として、裏面層(iii)を形成する生分解性ポリマーが、デンプン(A)0〜20質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)80〜99質量%及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)80〜98質量%、ポリ乳酸(F)及び/又はポリグリコール酸(G)1〜50質量%〔デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)、ポリ乳酸(F)及びポリグリコール酸(G)の合計が100質量%とする。〕を含む組成物を用いることがより好ましい。裏面層に用いる生分解性ポリマーとして、かかる組成物を用いることにより、微生物による生分解が促進し、生分解性を向上させることができる。
デンプン(A)については生分解性向上の見地からは含有させることが望ましいが、一方で製袋等の際の低温ヒートシール性やヒートシール強度を低下させる可能性もあるため、含有量は20質量%を上限とすることが好ましい。また、特に低温ヒートシール性やヒートシール強度が本発明の積層フィルムの用途により要求される場合には、デンプン(A)を含有させないことが好ましい。デンプン(A)を含有させるか否か、又は含有量については積層フィルムの用途によって適宜選択することができる。具体的にはデンプン(A)は0〜20質量%であり、好ましくは5〜15質量%である。
また、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)の何れか一方又は双方の混合物については、80〜98質量%、好ましくは65〜92質量%である。さらに、ポリ乳酸(F)、ポリグリコール酸(G)の何れか一方又は双方の混合物については、1〜50質量%、好ましくは3〜20質量%である。
【0027】
本発明の積層フィルムの裏面層(iii)に用いるデンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)などの生分解性ポリマーあるいはそれらの組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機化合物あるいは有機化合物の微粒子などの充填材等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
特に、有機化合物あるいは無機化合物の微粒子からなる添加剤を配合することが生分解性ポリマーの分解性を速めるため望ましい。無機化合物からなる微粒子には、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、酸化チタン、中空ガラスバルーン、ガラスビーズ、カーボンブラック、水酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、モンモリロナイト、マイカ等などがあり、中でもシリカの微粒子が好適である。かかる添加剤の配合量は、生分解性ポリマーあるいはそれらの組成物中に、0.1〜5質量%、中でも0.5〜3質量%の割合となるように配合することが望ましい。
【0028】
本発明の積層フィルムの表面層(i)及び裏面層(iii)に用いる生分解性ポリマーとして、デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)などの組成物を用いる場合は、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等で混合する方法、混合後更に単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法等により調製することができる。
【0029】
<中間層(ii)>
本発明の積層フィルムは、好ましくは中間層(ii)が、水分解性ポリマー、より好ましくは水分解ポリマーが60〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%、前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、より好ましくは脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を0〜100質量%、さらに好ましくは0〜50質量%、前記脂肪族ポリエステル(C)を0〜100質量%、さらに好ましくは0〜50質量%〔水崩壊性ポリマー、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び脂肪族ポリエステル共重合体(C)の合計が100質量%とする。〕含む組成物からなる。
本発明の積層フィルムの中間層(ii)に用いる水分解性ポリマーあるいはそれらの組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機化合物あるいは有機化合物の微粒子などの充填材等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
特に、有機化合物あるいは無機化合物の微粒子からなる添加剤を配合することが生分解性ポリマーの分解性を速めるため望ましい。無機化合物からなる微粒子には、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、酸化チタン、中空ガラスバルーン、ガラスビーズ、カーボンブラック、水酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、モンモリロナイト、マイカ等などがあり、中でもシリカの微粒子が好適である。かかる添加剤の配合量は、生分解性ポリマーあるいはそれらの組成物中に、0.1〜5質量%、中でも0.5〜3質量%の割合となるように配合することが望ましい。
【0030】
本発明の積層フィルムを構成する裏面層(iii)の融点は表面層(i)の融点より低く調整することが、ヒートシール性等製袋時の加工性の観点から好ましい。前記融点の調整は裏面層(iii)、表面層(i)に各々互いに異なる融点の脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)を適宜混合比を選択することができる。
【0031】
本発明の積層フィルムの製造方法については、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等で混合する方法、混合後更に単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法等により調製することができる。
表面層(i)、裏面層(iii)を構成するポリマーのそれぞれは、デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル(C)、ポリ乳酸(F)、ポリグリコール酸(G)をヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等で混合する方法、混合後更に単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法等により調製することができる。
【0032】
本発明の積層フィルムは、表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)からなり、それらの各層の厚さが全厚さ(表面層(i)、中間層(ii)、裏面層(iii)の厚さの合計を100%とする)の10%以上とし、崩壊性の高い中間層の厚さを50〜80%にすることが好ましい。
本発明の積層フィルムの各層の厚さは、用途に応じて種々決めることができるが、通常、表面層(i)の厚さは3〜120μm、好ましくは5〜110μm、の範囲、中間層(ii)の厚さは5〜150μm、好ましくは10〜130μm、の範囲であり、裏面層(iii)の厚さは3〜120μm、好ましくは5〜110μmの範囲にある。積層フィルム全体としての厚さはいずれの場合も通常、10〜300μm、好ましくは20〜200μmの範囲にある。
積層フィルム全体の厚さが10μm未満では製膜、スリット、製袋が難しくなり、一方、300μmを超えるとフィルムの重量が大きくなり包装袋、ゴミ袋としてのハンディさを損ない、コストが高くなるおそれがある。
また、本発明の積層フィルムを包装材に用いる場合は、表面層(i)の厚さを3〜30μm、さらには5〜20μm、中間層(ii)の厚さを5〜150μm、さらには10〜130μm、裏面層(iii)の厚さは3〜30μm、さらには5〜20μmの範囲にすることが好ましく、積層フィルム全体としての厚さは10〜180μm、さらには20〜170μmにすることが好ましい。
本発明の積層フィルムは、積層フィルムの反りを低減させるために表面層(i)の厚さと裏面層(iii)の厚さとが、ほぼ等しいことが好ましい。一方、ヒートシール強度を上げるためには裏面層(iii)を表面層(i)より厚くすることが好ましい。
【0033】
本発明の積層フィルムは、種々公知の方法で製造することができる。例えば、表面層(i)、裏面層(iii)に用いるデンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)などの生分解性ポリマーを夫々所定の量で配合し、中間層(ii)に用いるエーテル系高分子化合物(D)などの水崩壊性ポリマー、あるいは脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を夫々所定の量で配合し直接三層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形により積層フィルムを製造することができる。
また、予め、表面層(i)、裏面層(iii)に用いるデンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエスステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)、ポリ乳酸(F)、ポリグリコール酸(G)などの生分解性ポリマーを夫々所定の量で配合した後、溶融混練して表面層(i)、裏面層(iii)の原料である組成物を得た後、中間層(ii)に用いるエーテル系高分子化合物(D)などの水崩壊性ポリマー、あるいは脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)を夫々所定の量で配合し、三層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形により積層フィルムを製造することができる。
あるいは夫々別個に表面層(i)、中間層(ii)、裏面層(iii)を構成するフィルムを成形した後貼り合せて積層フィルムを製造することができる。
本発明の積層フィルムは、未延伸であることが好ましい。延伸フィルムとするとヒートシール強度、透明性、吸湿した際の形状維持力が低下するおそれがある。
また本発明の積層フィルムは、印刷性の改良のために、一方の表面を、たとえばコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行うことができる。
【0034】
包装材
本発明の積層フィルムは十分な強度とヒートシール強度を持ち包装材に適している。本発明の積層フィルムは、生分解性に優れており、コンポスト処理装置内で比較的短期間、例えば3日以内程度で崩壊しフィルム屑が堆積しないため、特にコンポスト処理装置で用いる生ゴミ用、その他のゴミ袋の用途に適している。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を説明する。
実施例及び比較例で使用した原料は次の通りである。
(イ)無機充填剤
富士シリシア化学社製、商品名サイリシア730(平均粒径3μm)
富士シリシア化学社製、商品名サイリシア710(平均粒径2.8μm)
タルク(平均粒径 5μm)
(ロ)エルカ酸アミド
チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名ATMERSA1753
(ハ)ポリエチレングリコール
第一工業製薬社製、商品名PEG4000
【0036】
(ニ)デンプン分散体(A−1)
ノバモント社製:商品名 マタービーNF01U、デンプン含有量:30質量%、MFR(150℃、荷重5kg):3g/10分、融点(Tm):110℃、密度:1.3g/cm
マタービーNF01Uは、予め脂肪族・芳香族ポリエステル(アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体−BASF社製、商品名Ecoflex)にデンプンを30質量%、分散粒径10〜100μmで分散させたものである。
【0037】
(ホ)脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
i)BASF社製:Eco−vio、ポリ乳酸配合量:45質量%、MFR(190℃、荷重2160g):1.5g/10分、融点(Tm):110、145℃、 密度:1.25g/cm
Eco−vioは、予め脂肪族・芳香族ポリエステル(アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体−BASF社製、商品名 Ecoflex)にポリ乳酸を45質量%、分散粒径0.1〜2μmで分散させたものである。
ii)アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)(BASF社製:商品名Ecoflex)、テレフタル酸:26モル%、アジピン酸:27モル%、1,4−ブタンジオール:50モル%、MFR(190℃、荷重2160g):3g/10分、融点(Tm):112℃、密度:1.26g/cm
(ヘ)エーテル系高分子化合物(D)
ポリエチレングリコールカップリング重合体(D)
(第一工業製薬株式会社製:商品名パオゲンPP−15)、溶融粘度:約200(Pa・s)(200℃)、約2000(Pa・s)(100℃)、融点(Tm):55℃、ガラス転移温度(Tg):−36℃、密度:1.07g/cm
(ト)ポリビニルアルコール系ポリマー溶融成形用ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製:商品名クラレポバールCP−1210)、MFR(190℃、荷重2160g):4.0g/10分、MFR(190℃、荷重2160g):4.0g/10分、融点(Tm):161℃、密度:1.25g/cm
(チ)脂肪族ポリエステル共重合体(C)
コハク酸・アジピン酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体、三菱化学社製、商品名 GS−Pla AD92W MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):86.9℃、結晶化温度(Tc):40.4℃、密度:1.25g/cm
(リ)ポリカプロラクトン(C2)
ダイセル化学工業社製、商品名PH7、MFR(190℃、荷重2160g):2.0g/10分、融点60℃。
【0038】
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
(1)光学特性
日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)、平行光線透過率(PT:%)及びグロス(%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
(2)引張り試験
試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、破断点における強度(MPa)、伸び(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
【0039】
(3)ヒートシール強度
フィルムの熱融着層面(裏面層(iii))同士を重ね合わせた後に、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製商品名ルミラー)で挟み、テスター産業株式会社製TP−701−BHEATSEALTESTERを用いて、所定の温度で、シール面圧:1kg/cm、時間:1.0秒の条件下で熱融着した。尚、加熱は上側のみとした。次いで、熱融着した二軸延伸積層フィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離し、その最大強度を熱融着強度とした。
【0040】
(4)コンポスト崩壊性評価
フィルムをA4大に切り出した後に、屋外設置型コンポスト処理装置(田窪工業所製、商品名:地球の友だちEF−5A)に入れて崩壊の様子を1日目、2日目、3日目に観察した。観察した結果、
変化のないものを×、中間層が膨潤し破れやすくなったものを△、中間層が溶出し皮膜層のみ残ったものを○とした。
【0041】
(5)耐水性評価
フィルムをA4大に切り出した後に、2つ折りにして両端を富士インパルス社製インパルスシーラー(型番:300)でヒートシール温度の制御目盛り8でヒートシールして水を充填した。更に開口部をヒートシールして充填バッグ状にしたものを1日目、2日目、3日目に観察した。
観察した結果、破れて水の漏れたものを×、水の漏れのないものを○とした。
【0042】
(6)臭気評価
フィルムに鼻を10cmまで近付け臭気の有無を3人の評価者が以下の基準で判断した。
酢酸臭等強い臭気のあるものを×、上記強い臭気のないものを○とした。3人の評価者の過半数の結果を最終結果とした。
(7)分解率
評価フィルム4辺端をセロハンテープで2cm幅(表裏面とも)止めた後、更にホッチキスで各辺5箇所ずつ止めて、テープで枠を作り、屋外設置型コンポスト処理装置(田窪工業所製、商品名:地球の友だちEF−5A)にコンポスト処理機に5日間入れた。なお、実施例7,11では20日間入れた。
その後、取り出しフィルムが崩壊することでテープの欠落した量を重量変化より求めた。
即ち、枠内の重量を予め測定し、崩壊後未だ枠に残っているフィルムの重量を測定することで欠落した量を求めた。欠落したフィルムはほぼ3cm角以下の大きさになっており、生ゴミの分解を妨げないのは明らかなので、フィルムとして問題ないレベルまで分解したとして、本崩壊量を分解率とした。
【0043】
実施例1、2、3、比較例1、2、3
<積層フィルムの製造>
3種3層ダイを有するキャスト成形機を用いて、実施例1、2、3、比較例2、3は温度150℃で、比較例1は温度190℃で表1の構成になるようにそれぞれの原材料を前記キャスト成形機の押出機に投入し3層フィルムを得た。但し、表面層(i)、裏面層(iii)の組成部はデンプン(A)が表1に示す所定の濃度になるようにデンプン30質量%分散型脂肪族・芳香族ポリエステル(A−1)(商品名:マタービーNF01U−ノバモント社製−)を必要に応じて脂肪族・芳香族ポリエステル(商品名:Ecoflex−BASF社製)で希釈することによって調整した。
また、中間層(ii)の原料も表1に示す所定の配合比になるように、すべてドライブレンドして3種3層ダイを有するキャスト成形機の押出機に投入し成形した。
表面層(i)/中間層(ii)/裏面層(iii)を実施例1、2、3、比較例2、3では各層が5μm/30μm/5μmの厚さとなるように、比較例1では5μm/25μm/10μmの厚さとなるように溶融樹脂の吐出量、キャストフィルムの引き取り速度を調整した。
表1に各実施例、及び比較例の配合組成、層構成を示し、表2に上記各試験結果を示す。
【0044】
【表1】

【表2】




(注):臭気評価については、○については評価者全員が○、×については評価者全員が×という評価だった。
表1に示す中間層(ii)にポリエチレングリコールカップリング重合体を60%以上有する実施例1、2、3は表2に示すように袋として耐水性(以下、「耐水性」という。)が良好であるとともに3日後のコンポスト崩壊性にも優れており、ヒートシール強度も剥離できないほど強く極めて良好であった。
また、中間層(ii)にポリビニルアルコールを60%有する比較例1は表2に示すように耐水性、コンポスト崩壊性に優れるものの遊離酢酸に由来する臭気が強かった。
比較例2では中間層(ii)のポリエチレングリコールカップリング重合体を50%としたが耐水性は良好であったがコンポスト崩壊性は不十分であった。
比較例3では中間層(ii)のポリエチレングリコールカップリング重合体を実施例1と同じ60%としたが、裏面層(iii)を有しないため袋の素材として耐水性に乏しく、特に100℃〜120℃の所謂高温域のヒートシール強度が実施例と比較して劣っていた。この結果から、裏面層(iii)は耐水性とともにヒートシール強度、特に高温域のヒートシール強度の向上にも寄与していることがわかる。
【0045】
実施例4、5及び比較例4
各層の構成を表3とすること以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを成形した。その結果を表3に示す。
なお、シリカ(富士シリシア化学社製、商品名サイリシア710)の分散性を高めるためにシリカ配合割合の高いマスターバッチを用いた。
【0046】
表3

【0047】
実施例7〜12
<積層フィルムの成形>
3種3層ダイを有するキャスト成形機を用いて、実施例7〜12は温度150℃で、表4記載の配合及び構成になるようにそれぞれの材料を押出機に投入し厚さ約24μmの3層フィルムを得た。但し、表面層(i)、裏面層(iii)はデンプン(A)、ポリ乳酸(F)が表4に示す所定の濃度になるようにデンプン30質量%分散型脂肪族・芳香族ポリエステル(A−1)(商品名:マタービーNF01U−ノバモント社製−)、ポリ乳酸45質量%分散型脂肪族・芳香族ポリエステル(A−1)(商品名:Eco−vio−BASF社製)、脂肪族・芳香族ポリエステル(商品名:Ecoflex−BASF社製)、脂肪族ポリエステル共重合体(C−1)(商品名:AD92W−三菱化学社製)をポリカプロラクトン(商品名:セルグリーンPH7−ダイセル化学社製)で希釈することによって調整した。また、無機充填剤として平均粒径5μmのタルクを添加した。
また、中間層(ii)も表4に示す所定の配合になるように、ドライブレンドして3種3層ダイの押出機を有するキャスト成形機により成形した。
表面層(i)/中間層(ii)/裏面層(iii)を各層が1/1/1の厚さ構成となるように、溶融樹脂の吐出量、キャストフィルムの引き取り速度を調整した。
表4に示す表面層(i)にポリ乳酸を配合した実施例8〜12は、ポリ乳酸を含まない実施例7に比べて5日間のコンポスト試験後の引っ張り試験においてMD、TD方向の破断伸度が全て50%以下になっており、伸びのない状態、即ちもろい状態となっている。かかるもろい状態のフィルムは、コンポスト処理機内において攪拌子に絡まることもなく、均一に分散性し生分解性が向上することを意味する。
更に実施例7、11のみコンポスト処理を続けたところ、20日目には分解率がそれぞれ46.9%、92.4%となり、ほとんど残っていない状態となった。
【0048】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の積層フィルムはヒートシール性に優れており包装材に適している。更に生分解性に優れ、特にコンポスト処理をする際に比較的短期間、例えば3日間程度で崩壊してフィルムとしての形状を残さない、かつフィルム物性に優れ、フィルムの素材由来の異臭を発しない積層フィルムおよび包装材である。
また本発明の積層フィルムは溶断シール強度、低温ヒートシール性、十分なヒートシール強度を有するので、溶断シール、ヒートシールにより製袋でき、包装材として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリマーからなる表面層(i)、水崩壊性ポリマーを含む中間層(ii)及び生分解性ポリマーからなる裏面層(iii)からなることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
表面層(i)及び/又は裏面層(iii)を形成する生分解性ポリマーが、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)であることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
表面層(i)及び/又は裏面層(iii)を形成する生分解性ポリマーが、デンプン(A)0〜50質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜100質量%及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)0〜100質量%〔デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び脂肪族ポリエステル共重合体(C)の合計が100質量%とする。〕を含む組成物からなることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項4】
表面層(i)を形成する生分解性ポリマーが、デンプン(A)20〜50質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜80質量%及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)0〜80質量%〔デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び脂肪族ポリエステル共重合体(C)の合計が100質量%とする。〕を含む組成物からなることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項5】
裏面層(iii)を形成する生分解性ポリマーが、デンプン(A)1〜20質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)80〜99質量%及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)80〜99質量%(デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び脂肪族ポリエステル共重合体(C)の合計が100質量%とする。)を含む組成物からなることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項6】
表面層(i)を形成する生分解性ポリマーが、デンプン(A)20〜50質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜79質量%、脂肪族ポリエステル共重合体(C)0〜79質量%、ポリ乳酸(F)及び/又はポリグリコール酸(G)1〜50質量%〔(デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)、ポリ乳酸(F)及びポリグリコール酸(G)の合計が100質量%とする。〕を含む組成物からなることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項7】
裏面層(iii)を形成する生分解性ポリマーが、デンプン(A)0〜20質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)80〜99質量%及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)80〜98質量%、ポリ乳酸(F)及び/又はポリグリコール酸(G)1〜50質量%〔デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、脂肪族ポリエステル共重合体(C)、ポリ乳酸(F)及びポリグリコール酸(G)の合計が100質量%とする。〕を含む組成物からなることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項8】
中間層(ii)が、水崩壊性ポリマー、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び/又は脂肪族ポリエステル共重合体(C)〔水崩壊性ポリマー、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び脂肪族ポリエステル共重合体(C)の合計が100質量%とする。〕を含む組成物からなることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項9】
中間層(ii)が、水崩壊性ポリマー60〜100質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜100質量%、脂肪族ポリエステル共重合体(C)0〜100質量%〔水崩壊性ポリマー、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び脂肪族ポリエステル共重合体(C)の合計が100質量%とする。〕を含む組成物からなることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項10】
中間層(ii)が、水崩壊性ポリマー50〜100質量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜50質量%、脂肪族ポリエステル共重合体(C)0〜50質量%〔水崩壊性ポリマー、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及び脂肪族ポリエステル共重合体(C)の合計が100質量%とする。〕を含む組成物からなることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項11】
水崩壊性ポリマーが、エーテル系高分子化合物であることを特徴とする請求項1、8、9又は10の何れかに記載の積層フィルム。
【請求項12】
表面層(i)及び/又は裏面層(iii)に含まれるデンプンが、粒子径100μm以下で分散されてなることを特徴とする請求項3〜7の何れかに記載の積層フィルム。
【請求項13】
表面層(i)及び/又は裏面層(iii)に含まれるポリ乳酸(F)及び/又はポリグリコール酸(G)が、粒子径10μm以下で分散されてなることを特徴とする請求項6又は7に記載の積層フィルム。
【請求項14】
表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)の少なくとも一層に、有機化合物あるいは無機化合物の微粒子を0.1〜5質量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の積層フィルム。
【請求項15】
積層フィルムが、共押出し成形により得られてなる請求項1〜14の何れかに記載の積層フィルム。
【請求項16】
共押出し成形が、インフレーション成形である請求項15に記載の積層フィルム。
【請求項17】
請求項1〜16の何れかに記載の積層フィルムからなる包装材。

【公開番号】特開2010−42655(P2010−42655A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37777(P2009−37777)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】