説明

積層フィルム及び該積層フィルムを用いた物品

【課題】時間が経過しても銀蒸着層が劣化することなく、また銀蒸着層が容易に剥離することのない、即ち反射性能を長期間にわたり維持できる積層フィルム、及び該積層フィルムを用いた各種物品を提供する。
【解決手段】基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、樹脂を積層してなるアンダーコート層と、金属を積層してなる金属層と、トップコート層と、をこの順に積層してなる積層フィルムであって、前記金属が銀であり、前記樹脂にメラミン系樹脂が含有されてなる積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層フィルム、及び該積層フィルムを用いてなる種々の物品に関する発明であって、具体的には、銀層の耐久性を向上させてなる積層フィルム及び該積層フィルムを用いてなる物品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの表面に種々の金属を積層してなる積層フィルムは種々の用途において広く用いられるところである。例えばかかる金属を銀とした場合、即ち銀蒸着フィルムは、その銀の光沢を用いて反射フィルムとして用いたり、また銀を蒸着したフィルムをマイクロスリットすることにより得られるスリット糸(銀糸)として用いたりされている。
【0003】
そして例えば反射フィルムとして用いられる場合について考えると、これはいわゆるバックライト装置の部材として用いられることが多い。そこでこのバックライト装置とそこにおいて用いられる反射フィルム、即ち銀を積層してなる積層フィルム、につき説明をする。
【0004】
昨今、携帯電話やコンピューター、テレビなどの画像表示装置として液晶表示装置が用いられているが、これは従来用いられていたブラウン管表示装置に比べてはるかに薄型に出来る、また容易に小型にすることが出来る、という利点がある。特に昨今著しく見られる軽薄短小化への要求の高まりに伴い、この液晶表示装置の利用が求められる場面は急増していると言える。
【0005】
さて、このような液晶表示装置では液晶表示部分が明瞭に視認出来るように通常バックライト装置が備えられているものであるが、このバックライト装置における光源から発せられる光線が最終的には効率的に液晶表示素子に到達する仕組みが必要である。なぜなら液晶表示装置において表示部分を背面からより強く照らすことで、液晶表示部分がより鮮明になるからである。
【0006】
例えば冷陰極管を光源に用いるバックライト装置における光源から発せられる光線を効率よく液晶表示装置に到達させるために、バックライト装置には光源から発する光線を全て液晶表示装置に向かわせるために、光源の周囲に略半包囲状態で光源用反射体が設置されている。この光源用反射体により、光源から発せられた光線が一方向に向かうのである。そして光線が向かう先に導光板が設置されており、この導光板に入射した光線が液晶板方向に向けて放出されるのである。しかしこの際においても、全ての光線が同一方向に向けて放出されるのではなく、中には本来不必要な方向に向けて光線が放出されてしまう。つまり、光源から発せられた光線が直接液晶表示装置に向かえばよいが、導光板からあたかもこぼれ落ちてしまった、即ち不要方向に向かってしまった光線を再び導光板に戻す必要がある。そのために、光線が放出されるのに不要な向きに該当する箇所に光線を反射する反射フィルムを設置しておき、不要な方向に放出されてしまった光線を再び導光板に戻す、という構成を備えたバックライト装置が液晶表示装置において採用されている。
【0007】
以上説明したように、現在の液晶表示装置において反射フィルムから反射される光を有効に利用するためには、反射フィルムから反射される光が正しく導光板をへて液晶表示装置に到達しなければならず、また反射フィルムの光線反射性能が経時変化により極力低下することの無いものが望ましいと言える。そしてそのために例えば特許文献1に記載されたような反射フィルムが提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−305510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この特許文献1に記載された反射フィルムは、プラスチックフィルム上に銀蒸着層を設けた反射フィルムであって、銀蒸着層の表裏に珪素化合物樹脂層を設けることにより、銀蒸着層に耐久性を付与したものとなっている。このように銀層を珪素化合物樹脂で挟み込むことにより、銀蒸着層面上の吸着水分が珪素化合物樹脂と反応して除去され、結果として銀蒸着層に耐久性が付与される、とされている。
【0010】
しかし実際にこのように構成した場合、確かに銀蒸着層面上の吸着水分が珪素化合物樹脂と反応して銀蒸着層面上から水分は除去され、よって銀蒸着層が水分により劣化することを防ぐことが出来るようになるのであるが、その一方で銀蒸着層面上の吸着水分と反応した珪素化合物樹脂層は、水分と反応した箇所から珪素化合物自体が劣化してしまい、その結果銀蒸着層と珪素化合物樹脂層との層間密着力が急速に低下し、即ち該箇所から容易に剥離してしまう現象が生じてしまい、結果として反射フィルムの性能が経時変化により劣化する、という現象が生じてしまい問題であった。
【0011】
以上はバックライト装置における反射フィルムとして用いられる銀蒸着フィルムの説明であったが、反射フィルム以外、例えば銀蒸着フィルムをマイクロスリットして得られる銀糸の場合でも銀蒸着層とアンダーコート層との層間密着力低下に伴う剥離の問題が生じる、等のように、昨今では銀を蒸着してなるフィルム全般において同様の問題が指摘されるに至ったのである。
【0012】
そこで本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、時間が経過しても銀蒸着層が劣化することなく、また銀蒸着層が容易に剥離することのない、即ち反射性能を長期間にわたり維持できる積層フィルム、及び該積層フィルムを用いた各種物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本願発明の請求項1に記載の発明は、基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、樹脂を積層してなるアンダーコート層と、金属を積層してなる金属層と、トップコート層と、をこの順に積層してなる積層フィルムであって、前記金属が銀であり、前記樹脂にメラミン系樹脂が含有されてなること、を特徴とする。
【0014】
本願発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の積層フィルムであって、前記樹脂に含有されるメラミン系樹脂の割合が、前記樹脂に対し1重量%以上50重量%以下であること、を特徴とする。
【0015】
本願発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の積層フィルムであって、前記樹脂がポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、又はウレタン系樹脂の何れか若しくは複数であること、を特徴とする。
【0016】
本願発明の請求項4に記載の半透過半反射フィルムに関する発明は、請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムを用いてなること、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項5に記載の反射フィルムに関する発明は、請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムを用いてなること、を特徴とする。
【0018】
本願発明の請求項6に記載のバックライト装置に関する発明は、請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムを画像表示装置用バックライト装置における反射フィルムとして用いてなること、を特徴とする。
【0019】
本願発明の請求項7に記載のスリット糸に関する発明は、請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムをマイクロスリットしてなること、を特徴とする。
【0020】
本願発明の請求項8に記載のグリッターに関する発明は、請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムを微粉砕してなること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本願発明に係る積層フィルムであれば、アンダーコート層に用いる樹脂がメラミン樹脂を含有しているので、層間密着力を維持したまま銀蒸着層が腐食することを防止することができるようになる。この点をさらに詳細に述べると、アンダーコート層の樹脂をポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、又はウレタン系樹脂とすることで、これらの樹脂にメラミン樹脂が含有されていても、これらの樹脂が乾燥する程度の温度でアンダーコート層が形成されるので基材フィルムにダメージを与えることがない。またこの状態ではメラミン樹脂は硬化しきっていないが、それにもかかわらず本願発明にかかる積層フィルムにおいてはメラミン樹脂による銀の腐食防止効果が発現する。そして本願発明にかかる積層フィルムにおいては同時にアンダーコート層と銀蒸着層との層間密着力は維持されたままである。そしてこの積層フィルムを半透過半反射フィルム、反射フィルム、銀スリット糸、グリッターなどに用いる事で、それぞれの部材における銀蒸着層が時間を経ても劣化せず、積層フィルム完成当初における銀蒸着層により得られる効果を持続することが出来るものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
本願発明に係る積層フィルムについて第1の実施の形態として説明する。
本実施の形態に係る反射フィルムは、基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、樹脂を積層してなるアンダーコート層と、金属を積層してなる金属層と、トップコート層と、をこの順に積層してなる構成を有してなる。
以下各部につき順次説明をするが、ここでは本実施の形態にかかる積層フィルムを反射フィルムとして用いることを想定して説明を行うこととする。
【0024】
まず最初に基材フィルムであるが、これは通常利用されているプラスチックフィルムであってよく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のような透明フィルムであったり、後述のように本実施の形態にかかる積層フィルムを反射フィルムとして用いるならば、その反射率を向上させるために白色PETフィルムといった白色のフィルムを用いることとしてもよく、さらにはオレフィン系フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエーテルサルフォン(PES)フィルム等の利用も考えられるが、本実施の形態では従来公知のPETフィルムを用いることとする。
【0025】
またこの基材となるプラスチックフィルムの厚みは特に限定するものではなく、例えば20μm以上400μm以下であることが望ましいが、これは400μm以上であると本実施の形態に係る反射フィルム全体の厚さを必要なまでに薄くすることが出来なくなるからであり、20μm以下であると本実施の形態に係る反射フィルムとするに際して基材フィルム自身が破損する、又は得られた反射フィルムが容易に破損する、得られた反射フィルムそのものに必要な「こし」が得られないので実際の使用に際しては柔らかすぎて殆ど使えないものとなってしまう、といった問題が生じやすくなるからである。
【0026】
次にこのプラスチックフィルムの表面に設けられるアンダーコート層につき説明する。
このアンダーコート層は、前述した基材フィルムと後述する金属蒸着層とが容易に剥離してしまわないために設けられるものであるが、本実施の形態においてはそれ以上に後述の金属蒸着層、特に銀を蒸着してなる銀蒸着層を水分や酸素等による腐食から保護することが主たる目的である。
【0027】
まずこのアンダーコート層の原材料となる樹脂につき説明する。
従来は銀蒸着層を腐食から保護するためにメラミン樹脂やシロキサン樹脂をアンダーコート層として用いていたが、これらの樹脂を単体で用いるには問題があった。即ちメラミン樹脂の場合は硬化温度が高いため、これを積層した高分子樹脂フィルムをメラミン樹脂硬化温度に曝すと高分子樹脂フィルム自体に熱じわが発生してしまい、積層フィルムの基材として用いることが出来ないものとなってしまう。またシロキサン樹脂を単体で用いた場合、これが水分を吸収して加水分解を起し、やがてはシロキサン樹脂によるアンダーコート層自体が破損し、それが層間剥離を引き起こしていた。
【0028】
そこで本願発明にかかる発明者はこれらの問題点を解消すべく、本実施の形態においてアンダーコート層に用いる樹脂として、ポリエステル系樹脂にメラミン系樹脂を含有させてなる混合樹脂を用いたのである。
【0029】
まずポリエステル系樹脂を用いることで、基材となる高分子樹脂フィルム、特にPETフィルムとの密着性を良好なものとし、同時に銀蒸着層との密着性をも良好なものとするので、結果として基材フィルムと銀蒸着層との密着性を確保することが出来るのである。さらにポリエステル系樹脂を主とすることで、その乾燥温度が低いことより、アンダーコート層を完成させるための熱処理も基材フィルムが外観不良を生じてしまうほどには高温にする必要がなくなり、好適なものと出来る。さらには、積層フィルムを反射シートとして用いる場合において必要とされる耐環境性を有し、前述の珪素化合物における層間密着力の低下といったような問題が生じないものとなる。
【0030】
そしてこのポリエステル系樹脂にメラミン系樹脂を含有させることで、メラミン系樹脂による効果も発揮できるようになる。即ち、メラミン系樹脂を含有させた樹脂をアンダーコート層とすることで、銀が腐食することを防ぐ、即ち耐腐食性を備えた物とすることが出来るのである。
【0031】
ここで注目すべきは、アンダーコート層の樹脂をポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、又はウレタン系樹脂とすることで、これらの樹脂にメラミン樹脂が含有されていても、これらの樹脂が乾燥する程度の温度でアンダーコート層が形成されるので基材フィルムにダメージを与えることがないことである。つまりメラミン樹脂を含有するポリエステル樹脂等を硬化させようとすると、ポリエステル樹脂等が硬化する温度でアンダーコート層が形成されるが、かかる温度ではメラミン樹脂は硬化しきっていないはずであるが、それにもかかわらず本願発明にかかる積層フィルムにおいてはメラミン樹脂による銀の腐食防止効果が発現することを本願発明にかかる発明者は見いだしたのである。尚、本願発明にかかる積層フィルムにおいては同時にアンダーコート層と銀蒸着層との層間密着力は維持されたままである。
【0032】
以上の通り、本実施の形態においてアンダーコート層を、ポリエステル系樹脂にメラミン系樹脂を混合させてなる樹脂により形成されるものとしたことで、ポリエステル系樹脂の乾燥温度でアンダーコート層が形成されると同時に金属蒸着層、特に銀蒸着層と基材フィルム、特にPETフィルムとの密着性を良好なものとし、さらにメラミン系樹脂がアンダーコート層を形成するポリエステル系樹脂に含有されることで、アンダーコート層が金属蒸着層、特に銀蒸着層の腐食を防止することが出来るのである。
【0033】
尚、ポリエステル系樹脂にメラミン系樹脂を含有させるその割合についてであるが、これは上述した効果を発揮するものであれば特に限定することもないのであるが、本実施の形態ではポリエステル系樹脂に対しメラミン系樹脂が1重量%以上50重量%以下であればより効果的である。またさらに5%以上30%以下とするとより好適であり、15%以上25%以下とするとさらに最適である。
【0034】
またこの樹脂によるアンダーコート層の積層方法については従来公知の手法でよく、例えばグラビアコーティング法やリバースコーティング法、ダイコーティング法等のいわゆるウェットコーティング法とすればよい。そして本実施の形態ではグラビアコーティング法により形成されるものとする。さらにその厚みは20nm以上300nm以下とすることが好ましいが、これは本実施の形態にかかる積層フィルムを反射フィルムとして用いる場合においてかかる範囲内とすることが好適なのであって、その他の目的の為に本実施の形態にかかる積層フィルムを用いる場合、それぞれの用途に応じた最適の厚みとすればよいことをここで断っておく。
【0035】
以上、本実施の形態においてポリエステル系樹脂を主とし、これにメラミン系樹脂を含有させた樹脂によりアンダーコート層を形成したが、例えばポリエステル系樹脂に変えてアクリル系樹脂やウレタン系樹脂を主とすることも考えられる。これらの場合について、例えばアクリル系樹脂やウレタン系樹脂ではポリエステル系樹脂を主とした場合に比して乾燥温度が高くなってしまうものの、メラミン系樹脂を単体で用いる場合程には高くならず、即ち基材フィルムを破損するほどに高温とする必要はなく、さらにこれらの樹脂であれば金属蒸着層、特に銀蒸着層とした場合に密着性が良好なものとすることができるので、これらの樹脂とすることも可能であるが、ここではこれ以上の詳述は省略する。
【0036】
本実施の形態にかかる積層フィルムでは前述した基材フィルムの表面にアンダーコート層を積層しており、さらにその表面には金属蒸着層を積層している。そこで次にこの金属蒸着層につき簡単に説明する。
【0037】
本実施の形態における金属蒸着層は特に銀を蒸着してなるものとするが、これは本実施の形態にかかる積層フィルムを反射フィルムとして用いることを想定して説明しているからであり、反射フィルムに用いられる金属蒸着層としては銀を用いることが最も普遍的であるからである。
【0038】
銀蒸着層の積層方法は従来公知の手法でよく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法等のいわゆるドライコーティング法によればよく、本実施の形態では真空蒸着法であるものとする。またその厚みについても600Å以上1500Å以下であれば好適であると言えるが、これは反射フィルムとして用いる場合を想定しての範囲であり、即ち前述道用、他の目的に対して用いる場合、かかる目的に応じた効果的な厚みとすればよいことを断っておく。
【0039】
尚、銀以外の金属又は金属化合物による金属蒸着層とした場合であっても、特に銀を主体とした蒸着層であるならば、前述したアンダーコート層による効果を期待できるが、必ずしも銀に限定するものではないことも付言しておく。
【0040】
また特に制限をするものではないが、本実施の形態では金属蒸着層のさらに表面にトップコート層を積層してなるものとする。このトップコート層については特に金属蒸着層の表面を保護する効果が期待できるが、それ以外にも、例えば前述したアンダーコート層に用いたものと同等の樹脂を用いてトップコート層とした場合、さらなる銀蒸着層の腐食防止効果を得ることが考えられる。即ち、トップコート層として用いるアクリル系樹脂にメラミン系樹脂を含有させることにより、より一層効果的に銀蒸着層の耐腐食性を向上させることが出来るのである。この場合のメラミン系樹脂の含有割合は、主となる樹脂に対しメラミン系樹脂が1重量%以上50重量%以下であれば好ましいと言え、5重量%以上30重量%以下であれば好適である。さらに10重量%以上20重量%以下であれば最適であると言える。
【0041】
尚、本実施の形態におけるトップコート層は、アンダーコート層の場合と同様の手法によって積層されれば良く、即ち、例えばグラビアコーティング法やリバースコーティング法、ダイコーティング法等のいわゆるウェットコーティング法とすればよい。そして本実施の形態ではグラビアコーティング法により形成されるものとする。さらにその厚みは0.5μm以上5μm以下とすることが好ましいが、これは本実施の形態にかかる積層フィルムを反射フィルムとして用いる場合においてかかる範囲内とすることが好適なのであって、その他の目的の為に本実施の形態にかかる積層フィルムを用いる場合、それぞれの用途に応じた最適の厚みとすればよいことをここで断っておく。
【0042】
さらに傷つき防止のための耐擦傷性を有したトップコート層とすることや、その他特定の機能を有した機能層としての作用を兼ねたトップコート層とすることも考えられるが、これらは全て公知のものであってよく、ここではこれ以上の詳述を省略するものとする。
【0043】
以上説明した積層フィルムであるが、特に金属蒸着層を銀とすることで、得られる積層フィルムは銀の腐食が殆ど生じない反射フィルム又は半透過半反射フィルムとして用いることが可能となる。またかかる反射フィルム又は半透過半反射フィルムを用いたバックライト装置であるならば、このバックライト装置を例えば液晶表示装置のバックライト装置として用いれば、従来のものに比して長期間性能劣化の生じない、即ち長期間にわたり反射率を好適な状態で維持できるバックライト装置とすることができる。
【0044】
さらには、金属蒸着層を銀蒸着層とした場合の本実施の形態にかかる積層フィルムをマイクロスリットして銀糸とした場合、このスリット糸における銀層は腐食しにくいものとできるので、銀による高級な光沢を長期間維持できるスリット糸を得られるし、また同様に本実施の形態にかかる積層フィルムにおける金属蒸着層を銀蒸着層とした積層フィルムを微細な状態となるまで破砕し、化粧料などにも用いられるいわゆるグリッターとした場合も同様に銀が腐食しにくいものとなるので、長期にわたり銀の光沢を維持したグリッターを得ることが出来る。
【実施例】
【0045】
以下のようにして積層フィルムを作成し、それぞれの積層フィルムにおける銀蒸着層の腐食性を比較してみた。
【0046】
基材フィルムとして厚み38μmのPETフィルムを用いた。この積層フィルムの表面にアンダーコート層をグラビアコーティング法により厚みが50nmとなるように積層した。その表面に銀蒸着層を真空蒸着法により厚みが1000Åとなるように積層した。その表面にアクリル系樹脂によるトップコート層をグラビアコーティング法により厚みが1μmとなるように積層した。
【0047】
得られた積層フィルムにつき、反射特性、密着性、及び外観につき次のようにして調べた。
【0048】
(反射特性)
積層フィルムを得られた直後(初期)と、60℃・湿度95%の環境下で250時間放置した後(耐環境性)と、ぞれぞれの場合につき調べた。
まず目視により外観を判断し、それと同時に株式会社島津製作所製UV3100PCにより全光線反射率を調べた。
◎:目視による反射性が良好であり全光線反射率が92%以上であった。また耐環境性の観点からも良好であった。
○:目視による反射性が良好であり全光線反射率が92%以上であった。また耐環境性の観点から実用性には全く問題がないものの外観上若干腐食によると思われる曇りがわずかながら見られた。
△:目視による反射性がやや良好であり全光線反射率が92%以下であった。また耐環境性の観点から、外観上、実用には適さない程に腐食によると思われる曇りが見られた。
×:目視による反射性が不良であり全光線反射率が92%以下であった。また耐環境性の観点から、外観上腐食によると思われる曇りが大量に見られた。
【0049】
(密着性)
積層フィルムを得られた直後(初期)と、60℃・湿度95%の環境下で250時間放置した後(耐環境性)と、ぞれぞれの場合につき調べた。
密着性について碁盤目密着試験を行った。即ち1mm幅で100のマス目を作り(10×10)、市販のセロハンテープを100のマス目に貼着した後、これを引き剥がすことによって引き剥がされたマス目の数を調べた。
◎:剥がされたマス目の数が5以下
○:剥がされたマス目の数が6〜10
△:剥がされたマス目の数が11〜20
×:剥がされたマス目の数が21以上
【0050】
(外観)
得られた直後の積層フィルムの外観、主にいわゆる「熱じわ」の有無を目視により判断した。
◎:目視による外観が大変良好である
○:目視による外観が良好である
△:目視による外観がやや良好である
×:目視による外観が不良である
ここで良好か否かという判断は見た目で皺が入っているかどうか、入っているならばどの程度入っているのか、等を基準とした。即ち全く皺が見えない場合は「大変良好」、ごくわずかしか見えない場合は「良好」とした。
【0051】
尚、各実施例及び比較例の積層フィルムにおいて、アンダーコート層の原料となる混合樹脂を以下の通りとした。
【0052】
(実施例1)
ポリエステル系樹脂19gにメラミン系樹脂を1g含有させた。アンダーコート層の硬化温度は100℃であった。
【0053】
(実施例2)
ポリエステル系樹脂15gにメラミン系樹脂を5g含有させた。アンダーコート層の硬化温度は100℃であった。
【0054】
(実施例3)
ポリエステル系樹脂10gにメラミン系樹脂を10g含有させた。アンダーコート層の硬化温度は100℃であった。
【0055】
(実施例4)
ウレタン系樹脂10gにメラミン系樹脂を5g含有させた。アンダーコート層の硬化温度は150℃であった。
【0056】
(実施例5)
アクリル系樹脂10gにメラミン系樹脂を10g含有させた。アンダーコート層の硬化温度は150℃であった。
【0057】
(比較例1)
メラミン系樹脂20gのみとした。アンダーコート層の硬化温度は200℃であった。
【0058】
(比較例2)
シロキサン系樹脂20gのみとした。アンダーコート層の硬化温度は180℃であった。
【0059】
(比較例3)
ポリエステル系樹脂20gのみとした。アンダーコート層の硬化温度は100℃であった。
【0060】
得られた結果を表に示す。
【0061】
【表1】












【0062】
この表から分かるように、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、又はウレタン系樹脂に含有されるメラミン系樹脂の割合が1重量%以上50重量%以下である場合、その硬化温度がメラミン樹脂単体の場合に比して高くなくともアンダーコート層が形成されると同時に銀の腐食が防止されていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、樹脂を積層してなるアンダーコート層と、金属を積層してなる金属層と、トップコート層と、をこの順に積層してなる積層フィルムであって、
前記金属が銀であり、
前記樹脂にメラミン系樹脂が含有されてなること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の積層フィルムであって、
前記樹脂に含有されるメラミン系樹脂の割合が、前記樹脂に対し1重量%以上50重量%以下であること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の積層フィルムであって、
前記樹脂がポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、又はウレタン系樹脂の何れか若しくは複数であること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムを用いてなること、
を特徴とする、半透過半反射フィルム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムを用いてなること、
を特徴とする、反射フィルム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムを画像表示装置用バックライト装置における反射フィルムとして用いてなること、
を特徴とする、バックライト装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムをマイクロスリットしてなること、
を特徴とする、スリット糸。
【請求項8】
請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムを微粉砕してなること、
を特徴とする、グリッター。

【公開番号】特開2009−286100(P2009−286100A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144380(P2008−144380)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】