説明

積層フィルム

【課題】 ボイル処理後の歪みが少なく、包装袋が含気ボイル処理に耐えることができ、該含気ボイル処理におけるボイルパンクによる破袋率であるボイルパンク率が低い積層フィルムを提供すること。
【解決手段】 少なくともポリプロピレン系無延伸フィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムよりなる積層フィルムを90℃の熱水中で、縦方向に75%伸長させたときの縦方向の応力または横方向に75%伸長させたときの横方向の応力の両方の応力が2.8×107Pa以上である積層フィルムであって、前記ポリプロピレン系無延伸フィルムシール強度が13.0N/15mm以上のであることを特徴とする積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関するものであり、詳しくは、少なくともポリプロピレン系無延伸フィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムを構成材料としてなり、該積層フィルムを成型加工して得られる包装体は、水分含有食品を含気状態で密封してボイル処理(以下、含気ボイル処理と称することもある)をした時に該含気ボイル処理に耐えることができ、該含気ボイル処理におけるボイルパンク率、すなわち、ボイルパンクによる破袋率が低い積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食文化の向上により、本物指向が強くなり、麺類のインスタント食品においても、乾麺タイプから生麺タイプへの切り換えが進んでいる。生麺タイプの場合は、生麺を含気状態で密封包装した後に、加熱殺菌が行われる。この加熱殺菌処理は含気状態で行われるため、熱により密封体内部の空気および水蒸気が膨張することによりシール部に大きな応力がかかる。このため、従来の包装材料が有していたシール強度のみでは特性的に不充分であり、含気ボイル処理により発生する内圧に耐えうるシール性、耐圧性が要求される。近年、高度な味覚要求に応えるために、含気ボイル条件もより過酷なものになってきている。該要求に耐えうる含気ボイル包装体用積層フィルムとして、ポリプロピレン系無延伸フィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムからなる積層フィルムが開示されている(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開平9−239929号公報
【0003】
上記特許文献において開示されている含気ボイル包装袋は、含気ボイル処理におけるボイルパンク率を抑制することに関しては、市場要求を満たしているが、該方法は積層フィルムを90℃の熱水中で、縦方向に75%伸長させたときの縦方向の応力または横方向に75%伸長させたときの横方向の応力のどちらかの応力が2.8×107Pa以下である必要があり、これに見合った二軸延伸ポリアミドフィルムが必要であるという課題を有する。また、該二軸延伸ポリアミドフィルムを用いた積層フィルムよりなる包装袋は、例えば、含気ボイル処理等により包装袋の歪が発生し包装袋の印刷像の歪の発生に繋がることがある等の課題があり、汎用二軸延伸ポリアミドフィルムや上記の熱水中での伸長応力が大きい二軸延伸ポリエステルフィルムや二軸延伸ポリプロピレンフィルムやこれらのフィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムの積層フィルム等とポリプロピレン系無延伸フィルムよりなる包装袋で含気ボイルパンク率を抑制する方法の確立が強く嘱望されている。
【0004】
また、近年の消費者の高級志向の強まりにより、包装された含水食品の含水率に関してもよりシビアーな管理の要求が強まってきており、包装袋を構成する積層フィルムの透湿性の抑制に対する市場要求が強まってきている。
【0005】
上記の含気ボイル用包装袋における重要特性である含気ボイル処理におけるボイルパンク率を抑制することに関しては、該積層フィルムの構成材料であるポリプロピレン系無延伸フィルムの特性が大きく影響しておりその改善が進められてきている。
【0006】
例えば、これらの要求に対し、エチレンランダム共重合ポリプロピレン重合体とエチレンとプロピレンまたはブテン−1との二元共重合体あるいはこれらと非共役ジエンとの三元共重合体の配合体よりなるポリプロピレン系無延伸フィルムにより低温ヒートシール性を改良することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献2】特開平5−262900号公報
【0007】
しかしながら、上記方法は、エチレン系ランダム共重合体とエチレンとブテンとの二元共重合体あるいはこれらと非共役ジエンとの三元共重体との相溶性が良くないため、両重合体の界面にボイドが形成され、シール強度が低下し、含気ボイル処理により発生する内圧に耐えられなくなるという欠点を有していた。
【0008】
また、熱融着層すなわちシール層に特定の融解ピーク温度、融解開始温度、融解終了温度をもつプロピレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、低温ヒートシール性を改良することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献3】特開2004−268532号公報
【0009】
しかしながら、上記特許文献3において開示された方法は、低温ヒートシール性は改良されるが、ラミネート層にエチレン・α−オレフィンを使用しており、ボイル時に層間強度が低下して剥離しやすくなったり、ラミネート層が白化したりする問題があった。
【0010】
更にエチレンランダム共重合ポリプロピレン重合体からなるベース層に、エチレンランダム共重合ポリプロピレン重合体にポリオレフィン系ランダム共重合体エラストマーを配合したシール層を積層することにより、低温シール性、含気ボイルパンク耐性を改良することが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献4】特開平10−166526号公報
【0011】
しかしながら、上記方法は、基材フィルムに変形しやすい二軸延伸ポリアミドフィルムを用いた場合には含気ボイルパンク耐性が優れるものの、高速加工を行うために有機系スリップ剤を多く添加した場合や基材フィルムに二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等のボイル時に変形しにくいものを使用した場合に、含気ボイルパンク耐性が損なわれる問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、詳しくは、ボイル処理後の歪みが少なく、包装袋が含気ボイル処理に耐えることができ、該含気ボイル処理におけるボイルパンクによる破袋率であるボイルパンク率が低い積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明の完成に到った。
すなわち、本発明は、少なくともポリプロピレン系無延伸フィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムよりなる積層フィルムを90℃の熱水中で、縦又は横方向に伸長させたとき、縦方向及び横方向の破断伸度がいずれも75%以下もしくは伸度75%における応力がいずれも2.8×107Pa以上である積層フィルムであって、前記ポリプロピレン系無延伸フィルムシール強度が13.0N/15mm以上であることを特徴とする積層フィルムである。
【0014】
この場合において、上記積層フィルムのシール強度が53N/15mm以上であることが好ましい。
【0015】
[ボイルパンク率の評価方法]
含気ボイル包装体用積層フィルムを内寸13cm13cm、外寸14cm×14cmの三方シール袋に製袋する。製袋におけるシール条件は、加圧0.2MPa、時間1秒で、温度は200℃とする。該三方シール袋の内部に水200ccと空気200ccを充填し、上記と同じシール条件でシールして密封する。この密封袋100袋を60分間ボイル処理し、該ボイル処理中に破袋した袋の数を計数し、下記式によりボイルパンク率を求める。
ボイルパンク率(%)=(破袋数/100)×100
【0016】
また、この場合において、上記積層フィルムがポリプロピレン系無延伸フィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび/または二軸延伸ポリエステルフィルムが上記順に積層されてなることが好ましい。
【0017】
また、この場合において、上記ポリプロピレン系無延伸フィルムが、少なくともラミネート層およびシール層の2層よりなり、(1)ラミネート層が、α−オレフィン含有量が2〜8質量%であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)40〜70質量%とα−オレフィン含有量が3〜10重量%であるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体樹脂(B)および/または20℃でのキシレン可溶部が5〜12質量%で、融点が130〜150℃で、かつエチレン含有量が6〜15質量%であるプロピレン・エチレンブロック共重合樹脂(C)30〜60質量%よりなり、(2)シール層が、α−オレフィン含有量が2〜8質量%であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)80〜92質量%と20℃でのキシレン可溶部が5〜12質量%で、融点が130〜150℃で、かつエチレン含有量が6〜15質量%であるプロピレン・エチレンブロック共重合樹脂(C)8〜20質量%よりなることが好ましい。
【0018】
また、この場合において、上記ラミネート層とシール層との間に中間層を積層してなり、該中間層が、α−オレフィン含有量が2〜8質量%であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)が60〜85質量%とα−オレフィン含有量が3〜10重量%であるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体樹脂(B)および/または23℃でのキシレン可溶部が5〜12質量%で、融点が130〜150℃で、かつエチレン含有量が6〜15質量%であるエチレン・プロピレンブロック共重合樹脂(C)15〜40質量%よりなり、かつラミネート層、コアー層およびシール層中に含有されるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)量をラミネート層<中間層<シール層の順に増大させることが好ましい。
【0019】
また、この場合において、上記二軸延伸ポリアミドフィルムが耐水易接着処理されてなるものであることが好ましい。
【0020】
また、この場合において、上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび二軸延伸ポリエステルフィルムが帯電防止性を有さないことが好ましい。
【0021】
また、この場合において、上記ポリプロピレン系無延伸フィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが、それぞれ20〜65μm、12〜28μm、17〜33および12〜25μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の積層フィルムを用いた含気ボイル用包装袋は、含水食品を包装袋中に含気状態で密封して含気ボイル処理した時に、包装袋が該含気ボイル処理に耐えることができ、該含気ボイル処理におけるボイルパンク率が低いので、含水食品を包装袋に含気状態で密封して、含気ボイル処理がされる含気ボイル包装体の包装袋として好適に使用できる。すなわち、含気ボイル処理におけるボイルパンク率が低いことは、含気ボイル包装体の安全性に対する信頼性を高めることができる。また、本発明における包装袋は、熱水中で評価される伸長時の応力が高いので、該包装袋を構成する基材フィルムとして従来公知であった含気ボイル用包装袋と異なり汎用の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルムおよびこれらの積層体を用いることができる。このことにより、例えば、応力を最適化された二軸延伸ポリアミドフィルムを使用した場合に起こる含気ボイル処理等により包装袋の歪が発生し包装袋の印刷像の歪に繋がる等の課題を抑制することができる。また、二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび/または二軸延伸ポリエステルフィルムとを積層した積層フィルムを用いた場合は、基材フィルムとして二軸延伸ポリアミドフィルムを用いることの特徴である包装袋の強靭性を維持し、かつ含気ボイル処理により発生する包装袋の構成材料である二軸延伸ポリアミドフィルム中に含まれる低分子量成分の包装袋表面への移行、析出による白化発生が抑制されるという効果が付加できる。該白化の発生は消費者にカビの発生や食品の汚染をイメージさせて不潔感を与えるので、該白化の発生の抑制により、商品イメージを向上させることができる。また、二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび/または二軸延伸ポリエステルフィルムとを積層した積層フィルムを用いた場合は、上記特徴に加え、透湿性が抑制されるので、包装された水分含有食品中の水分量の含気ボイル処理や経時による変化を抑制することができるので、消費者の味覚に対する高度な要求に答えることができる。従って、本発明の積層フィルムは含気ボイル包装体の包装袋として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の積層フィルムは、少なくともポリプロピレン系無延伸フィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムよりなる積層フィルムを90℃の熱水中で、縦又は横方向に伸長させたとき、縦方向及び横方向の破断伸度がいずれも75%以下もしくは伸度75%における応力がいずれも2.8×107Pa以上であって、前記ポリプロピレン系無延伸フィルムシール強度が13.0N/15mm以上であることが重要である。
【0024】
上記応力は2.9×107Pa以上がより好ましい。このことにより、前記した特許文献1で開示されている方法の課題である上記応力が最適化された二軸延伸ポリアミドフィルムを使用する必要がなく、汎用の二軸延伸ポリアミドフィルムの使用可能となり、かつ、例えば、上記応力が最適化された二軸延伸ポリアミドフィルムを使用した場合に起こる含気ボイル処理等により包装袋の歪が発生し包装袋の印刷像の歪発生に繋がる等の課題を抑制することが可能となる。また、破断伸度は60%以下がより好ましい。このことにより、二軸延伸ポリプロピレンフィルムや二軸延伸ポリエステルフィルムおよびこれらと二軸延伸ポリアミドフィルムの積層体を用いることができる。該対応により前述の発明の効果において述べたような効果を付与することができる。
【0025】
前記ポリプロピレン系無延伸フィルムのシール強度が13.0N/15mm以上のポリプロピレン系無延伸フィルムを用いることが好ましい。該含気ボイル用包装袋用積層フィルムのシール強度が13.0N/15mm未満ではボイルパンク率が増大するので好ましくない。
【0026】
また、本発明に用いられるポリプロピレン系無延伸フィルムのシール強度は13.5N/15mm以上がより好ましく、14.0N/15mm以上がさらに好ましい。
【0027】
本発明の積層フィルムのシール強度が53N/15mm以上であることが好ましい。55N/15mm以上がより好ましく、57N/15mm以上がさらにこのましい。
【0028】
〔ボイルパンク率の評価方法〕
積層フィルムを内寸13cm×13cm、外寸14cm×14cmの三方シール袋に製袋する。製袋におけるシール条件は、加圧0.2MPa、時間1秒で、温度は200℃とする。該三方シール袋の内部に水200ccと空気200ccを充填し、上記と同じシール条件でシールして密封する。この密封袋100袋を60分間ボイル処理し、該ボイル処理中に破袋した袋の数を計数し、下記式によりボイルパンク率を求める。
ボイルパンク率(%)=(破袋数/100)×100
【0029】
上記方法で評価したボイルパンク率は、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。15%を超えた場合は、水分含有食品を包装した包装体の含気ボイル処理において、熱により密封体内部の空気および食品中に含まれる水の蒸発により発生する水蒸気が膨張することによりシール部に大きな応力がかかり、該圧力によりシール部の破壊により破袋が引き起こされる確立が高くなり、包装体としての信頼性が低くなるので好ましくない。
【0030】
上記ポリプロピレン系無延伸フィルムのシール強度を満たす方法は限定されないが、ポリプロピレン系無延伸フィルムとして、少なくともラミネート層およびシール層の2層よりなり、(1)ラミネート層が、α−オレフィン含有量が2〜8質量%であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)40〜70質量%とα−オレフィン含有量が3〜10重量%であるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体樹脂(B)および/または20℃でのキシレン可溶部が5〜12質量%で、融点が130〜150℃で、かつエチレン含有量が6〜15質量%であるプロピレン・エチレンブロック共重合樹脂(C)30〜60質量%よりなり、(2)シール層が、α−オレフィン含有量が2〜8質量%であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)80〜90質量%と20℃でのキシレン可溶部が5〜12質量%で、融点が130〜150℃で、かつエチレン含有量が6〜15質量%であるプロピレン・エチレンブロック共重合樹脂(C)10〜20質量%よりなるものを用いるのが好ましい。
【0031】
また、上記ラミネート層とシール層との間に中間層を積層してなり、該コアー層が、α−オレフィン含有量が2〜8質量%であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)が60〜85質量%とα−オレフィン含有量が3〜10重量%であるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体樹脂(B)および/または23℃でのキシレン可溶部が5〜12質量%で、融点が130〜150℃で、かつエチレン含有量が6〜15質量%であるエチレン・プロピレンブロック共重合樹脂(C)15〜40質量%よりなり、かつラミネート層、中間層およびシール層中に含有されるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)量をラミネート層<中間層<シール層の順に増大させた物を用いるのが好ましい。
【0032】
以下に上記ポリプロピレン系無延伸フィルムについて言及する。
まず、上記構成において重要な要素である3種類の樹脂について言及する。
樹脂(A)
本発明に係わる樹脂(A)は、α−オレフィンの含有量が2〜8質量%の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂である。α−オレフィンの含有量は3〜7質量%がより好ましく、4〜6質量%がさらに好ましい。α−オレフィンの含有量が2質量%未満では低温シール性が劣り、8質量%を超えると、耐ブロッキング性が悪化する。α―オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等が例示できる。これらの中では、エチレン及び/又は1−ブテンとのランダム共重合体が好ましい。又、MFRはフィルムとすることができる限り特に限定はされないが、通常0.5〜20g/10分、好ましくは2〜10g/10分の範囲にあることが好ましい。また本発明に係わるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は通常、分子量分布(重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される)は、1.5〜3の範囲にあることが好ましい。3を超えると、低分子量物が増えて耐ブロッキング性が悪化する。従って、シングルサイト触媒を用いて重合されてなることが好ましい。
【0033】
樹脂(B)
本発明に係わる樹脂(B)は、α−オレフィン含有量が好ましくは2〜10質量%、より好ましくは4〜8質量%の範囲にあるプロピレン・α―オレフィンブロック共重合樹脂である。α−オレフィンの含有量が2質量%未満では耐衝撃性が劣り、8質量%を超えると、透明性や剛性が悪化する。α―オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等が例示できる。これらの中では、エチレン及び/又は1−ブテンが好ましい。又、MFRはフィルムとすることができる限り特に限定はされないが、通常0.5〜10g/10分、好ましくは1〜5g/10分の範囲にある。MFRが0.5g/10分未満の場合は生産性に劣り、10g/10分を超える場合は耐衝撃性に劣る。
【0034】
樹脂(C)
本発明に係わる樹脂(C)は、エチレン含有量が、6〜15質量%の範囲にあるプロピレン・エチレンブロック共重合樹脂である。該樹脂(C)は、20℃におけるキシレン可溶部の比率が5〜12質量%であり、かつ融点が、130〜150℃の範囲にあることが好ましい。
エチレン含有量は7〜14質量%がより好ましく、8〜13質量%さらに好ましい。エチレン含有量が6質量%未満では、柔軟性に乏しく好ましくない。逆に、15質量%を超えた場合は剛性が低下するので好ましくない。
上記キシレン可溶部の比率は6〜11質量%がより好ましく、7〜10質量%がさらに好ましい。該キシレン可溶部の比率が6質量%未満では、耐衝撃性が劣り好ましくない。逆に、12質量%を超えた場合は透明性が悪化するので好ましくない。
上記融点は135〜145℃がより好ましい。該融点が130℃未満の場合は耐ブロッキング性が悪化し、逆に、150℃以上の場合は低温シール性が悪化する。
【0035】
本発明において、ラミネート層における上記樹脂(A)、樹脂(B)および樹脂(C)の配合比率は、樹脂(A)が40〜70質量%であり、残りの60〜30質量%が樹脂(B)および/または樹脂(C)であることが好ましい。樹脂(A)の割合が45〜65質量%であることがより好ましい。樹脂(A)の割合が40重量%未満の場合透明性が悪化する。逆に70重量%を超えると含気ボイルパンク耐性が悪化する。
【0036】
本発明において、中間層における上記樹脂(A)、樹脂(B)および樹脂(C)の配合比率は、樹脂(A)が60〜85質量%であり、残りの40〜15質量%が樹脂(B)および/または樹脂(C)であることが好ましい。樹脂(A)の割合が55〜80質量%であることがより好ましい。
樹脂(A)の割合が60質量%未満の場合は透明性が悪化する。逆に、85質量%を超えると含気ボイルパンク耐性が悪化する。
【0037】
本発明において、シール層における樹脂組成は、樹脂(A)と樹脂(C)の2種類の配合が好ましい。該シール層にラミネート層や中間層に配合した樹脂(B)を配合すると低温シール性が低下するので好ましくない。該樹脂(A)と樹脂(C)の配合比率は、樹脂(A)が80〜92質量%であるのが好ましい。82〜90質量%がより好ましい。樹脂(A)の割合が80質量%未満の場合は耐ブロッキング性が悪化する。逆に、92質量%を超えると低温シール性が悪化する。
【0038】
本発明に係わる上記樹脂(A)、樹脂(B)および樹脂(C)には本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料等の添加剤或いは他の重合体を必要に応じて配合することができる。特に、シール層中にはシリカ、タルク、ゼオライトや硼酸アルミニウム等の無機化合物粒子、ポリメタクリル酸メチル、メラミンホルマリン樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリエステル樹脂等の有機化合物粒子等、種々公知のブロッキング防止剤を0.01〜1質量%添加しておくと、更に耐ブロッキング防止性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。これらの中でも、シリカ、ポリメタクリル酸メチルがアンチブロッキング性、透明性の面から特に好ましい。
【0039】
又、シール層、コア層中には、炭化水素系、脂肪酸系、高級アルコ−ル系、脂肪族アマイド系、金属せっけん系、エステル系等、種々公知のスリップ剤を0.01〜0.5質量%添加しておくと、更にスリップ性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。これらの中でも即効性のあるエルカ酸アミドと遅効性のベヘニン酸アミドの併用系にすると、即効性のあるエルカ酸アミドにより製膜加工時でのフィルムの巻き安定性とその後の裁断加工時、印刷、ラミネ−トの作業性を改善することができ、一方接着剤に吸着されにくい遅効性のベヘニン酸アミドによりドライラミート後の滑り性、抗ブロッキング性の改良効果を得ることができる。
【0040】
更に、シール層中には、高密度ポリエチレン、ジベンジリデンソルビト−ル、メチル置換ジベンジリデンソルビト−ル、ヒドロキシ−ジ−アルミニウム、ビスソルビシ−ル、リン酸ビスナトリウムメチレンビスアシッドホスフェ−トナトリウム塩等、種々公知の結晶化核剤を0.01〜1.0重量%添加しておくと、製膜時のロ−ル跡の発生を抑えたり、製膜直後でのスリップ性・ブロッキング性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。これらの中でも比較的添加しやすく臭い等も問題ないポリエチレン結晶化核剤を利用すると製膜加工時直後の品質と加工適性をバランス良く改善することができる。
【0041】
ラミネート層中にも種々公知のブロッキング防止剤を0.01〜1質量%添加しておくと、更にフィルム製品ロールの耐ブロッキング防止性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。
【0042】
尚、これら添加剤や重合体の添加方法としては、フィルム製膜時に直接押出機に投入する方法も可能であるが、事前に本発明に用いられる重合体をベース樹脂としたマスターバッチを作成し、このマスターバッチを製膜時に押出機に投入する方法が好ましい。
【0043】
本発明に係わる上記の樹脂(A)、樹脂(B)及び樹脂(C)の製造方法は限定されない。種々公知の方法、例えば、Ti、Mg,Cl等を主成分とするTi系チーグラー触媒等を用いて製造することができる。ただし、前述のごとく、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂体(A)は、特にはシングルサイト触媒を用いて製造された樹脂を用いるのが好ましい。シングルサイト触媒は、活性点が均一(シングルサイト)である触媒であり、例えばメタロセン触媒(いわゆるカミンスキー触媒)やブルックハート触媒などがあげられる。例えばメタロセン触媒は、メタロセン系遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物および上記メタロセン系遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されていてもよい。
【0044】
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂においては、シール開始温度を下げるためにはα−オレフィンの含有量を増やすことが一般的である。しかし、α−オレフィンの含有量を増やすと、フィルムが柔らかくなり、耐ブロッキング性が悪化する方向にある。
一方、樹脂の分子量分布(質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される)は、値が大きいほど分子量の分布が広くなるため、低分子量物が増加して耐ブロッキング性が悪化する。よって、低温ヒートシール性と耐ブロッキング性をバランスさせるためには、樹脂の分子量分布を狭めて低分子量物を減らすことが効果的である。この分子量分布を狭くするためには、活性が均一であるシングルサイト触媒を用いて重合することが有効である。
【0045】
上記プロピレン系無延伸フィルムの厚さは20〜65μmが好ましい。30〜55μmがより好ましい。また、各層の厚み比率は、2層タイプの場合は、シール層の比率が50〜80%、ラミ層の比率が20〜50%となることが望ましい。更には、シール層の比率が55〜70%、ラミ層の比率が30〜55%となることがより望ましい。シール層の比率が50%未満の場合は透明性が悪化し、70%を超えると含気ボイルパンク耐性が悪化する。
【0046】
また、3層タイプの場合の各層の厚み比率は、シール層の比率が5〜40%、中間層の比率が30〜80%、ラミ層の比率が10〜30%となることが望ましい。更には、シール層の比率は10〜35%、中間層の比率は40〜75%、ラミ層の比率は15〜25%がより好ましい。
【0047】
シール層の厚み比率が10%未満では、低温シール性が低下するので好ましくない。逆に40%を超えた場合は、耐ブロッキング性やフィルム剛性が低下するので好ましくない。
【0048】
中間層の厚み比率が30%未満では、フィルムの剛性が低下するので好ましくない。逆に80%を超えた場合は含気ボイルパンク耐性が低下するので好ましくない。
【0049】
ラミネート層の厚み比率が10%未満では、含気ボイルパンク耐性が低下する。逆に30%を超えた場合は透明性が悪化するので好ましくない。
【0050】
上記プロピレン系無延伸フィルムは、インフレーション法、T−ダイ法等の種々公知の製膜方法を採用し得る。また、かかるフィルムは夫々別個にフィルムを製膜後貼り合せてもよいが、三層構造の多層ダイを用いて共押出し成形により製膜する方法が最も好ましい。共押出し製膜する方法としては、フィードブロックによる積層、マルチマニホールドダイを用いる方法などが挙げられる。
【0051】
上記プロピレン系無延伸フィルムは、他のフィルムとの接着性を改良するために、そのラミ層側面を、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等による酸化処理を行うか、アンダーコート処理等による表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0052】
本発明の積層フィルムは、上記ボイルパンク率の評価後の包装袋表面への二軸延伸ポリアミドフィルム中に含まれる低分子量成分の移行による白化(以下白化現象と称することもある)が生じないことが好ましい。該白化の発生は消費者にカビの発生や食品の汚染をイメージさせて不潔感を与えるので、該白化の発生の抑制により、包装体の商品価値を高めることができる。
【0053】
また、本発明の積層フィルムは、透湿度が2.0g/m2・24h以下であることが好ましい。該透湿度は1.5g/m2・24h以下がより好ましく、
1.0g/m2・24h以下がさらに好ましい。
【0054】
上記、透湿度が2.0g/m2・24hを超えた場合は、上記の含気ボイル処理やその前後における経時により包装された水分含有食品中の水分量変化が大きくなり、例えば、消費者の味覚に対する高度な要求に答えることができなくなるので好ましくない。
【0055】
上記特性を付加する方法は限定されない。例えば、従来公知のポリプロピレン系無延伸フィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムよりなる積層体の二軸延伸ポリアミドフィルム表面に上記特性が付加できる被膜や層を形成するのが好ましい。該被膜としては、塩化ビニリデンやシリカ、アルミナおよびこれらの複合成分よりなる無機酸化物等よりなる酸化物被膜や、該酸化物と有機物とのハイブリッド被膜等のバリアー性を有した被膜を被覆する方法が挙げられる。
【0056】
層を形成する方法としては、二軸延伸ポリプロピレンフィルムや二軸延伸ポリエステルフィルム等の上記特性を付加することができるフィルムを積層するのが好ましい。
【0057】
上記方法のうち塩化ビニリデン被膜を被覆する方法は、環境負荷の点で好ましくない。また、酸化物系被膜を被覆する方法は、含気ボイル処理における包装袋の変形等による被膜の耐久性等の信頼性の点で課題がある。従って、後者の層を積層する方法がより好ましい実施態様である。該方法で実施する場合は、従来の特性を満たした上に上記特性を付加するという本発明の目的を達成することができればその手段は限定されないが、ポリプロピレン系無延伸フィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび/または二軸延伸ポリエステルフィルムが上記順に積層されてなる積層体とすることによる方法が好ましい実施態様である。また、この場合において、上記ポリプロピレン系無延伸無延伸フィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが、それぞれ20〜65μm、12〜28μm、17〜33および12〜25μmであることが好ましい。
【0058】
二軸延伸ポリアミドフィルムは、耐水易接着処理されてなるものであることが好ましい。
例えば、東洋紡績社製のハーデン(商標登録)フィルム、N6062、15μm等の使用が好ましい。該対応により含気ボイルパンク率の抑制効果の信頼性が向上する。
【0059】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムや二軸延伸ポリエステルフィルムは、帯電防止性を有さないものの使用が好ましい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムとしては、例えば、東洋紡績社製のパイレン(商標登録)フィルム、P2102、20μm等の使用が好ましい。また、二軸延伸ポリエステルフィルムは、例えば、東洋紡績社製の東洋紡エステル(商標登録)フィルム、E5101、12μm等の使用が好ましい。該対応により、上記の本発明の付加効果を発現することができる。
【0060】
本発明においては、上記ラミネートに用いられる接着剤がポリエステルウレタン系よりなり、その塗布量が1.5〜3.5g/m2であることが好ましい。該接着剤層の塗布量は2.0〜3.0g/m2がさらに好ましい。接着剤として、ポリエーテルウレタン系よりなるものを用いたり、あるいは、接着剤層厚みが上記範囲を満たさない時はボイルパンク率が悪化するので好ましくない。また、接着剤層厚みが厚い場合は経済性の点でも好ましくない。
【0061】
上記構成のラミネート方法は限定されないが、例えば、下記の条件でラミネートされてなることが好ましい。
二軸延伸ポリアミドフィルムと、二軸延伸ポリプロピレンフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルムとをポリエステルウレタン系接着剤(主剤:二次転移点(Tg)が−16℃の芳香族/脂肪族共重合ポリエステルポリオール、架橋剤:ヘキサメチレンジイソシアネート三量体)を用いて接着剤の固形分濃度が2.5g/m2となるように塗布し、常法に従いドライラミネートして積層体を得る。この方法で作製した積層体の二軸延伸ポリアミドフィルム側に、ポリエステルウレタン系接着剤(主剤:二次転移点(Tg)が−16℃の芳香族/脂肪族共重合ポリエステルポリオール、架橋剤:ヘキサメチレンジイソシアネート三量体)を用いて接着剤の固形分濃度が2.5g/m2となるように塗布し、常法に従いプロピレン系無延伸フィルムをラミネートする。
本願発明の積層フィルムは含気ボイル用包装体として用いるのが好適な使用方法である。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0063】
尚、本明細書中で採用した測定、評価方法は次の通りである。
【0064】
1、メルトフローレート[MFR]
(2004年版)JIS K7210に従い、条件−14の方法(荷重2.16kg、温度230℃)で測定した。
【0065】
2、融点
プロピレン系共重合体(C)約6mgを秤量し、セイコ−電子工業株式会社製の示差走査熱量計(タイプ5200)を用いて、昇温速度;10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度;100℃/分で0℃まで冷却し、再度、昇温速度;10℃/分で0℃〜200℃まで昇温したときの融解曲線を測定し、かかる融解曲線から、(2004年版)JIS−K−7121 9.1 の方法に習い、融解曲線から最も高温側にある溶融ピークの頂点の温度を融点した。
【0066】
3、20℃におけるキシレン可溶部の比率(%)
試料5gを沸騰キシレン500mlに完全溶融した後、20℃に降温し、4時間以上放置した。その後、析出物と溶液にろ別し、ろ液を乾固して減圧下70℃にて乾燥した。得られた乾燥物の質量から20℃キシレン可溶部量を測定し、その比率を求めた。
【0067】
4、エチレン含有量
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の616ページに記載されている方法により13C−NMR法で測定した。
【0068】
5、ヘイズ
(2004年版)JIS−K−6714に従い、東洋精機製作所製の「ヘーズテスターJ」を用いて測定した。
【0069】
6、耐ブロッキング性
ATM−D1893−67に従い、90Nの荷重をA4サイズの面積にかけ、60℃雰囲気下で2時間放置後に荷重を取り除いてから、φ5のアルミ棒による剥離抵抗を移動速度100mm/分の条件で測定した。
【0070】
7、シール温度
サンプルを、シール面同士が向かい合うようにし、更にその両側に二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績社製「東洋紡エステル」フィルム[E5100 12μm])を置き、熱傾斜式5点シーラーを使用して加圧0.2MPa、時間1秒でシールし、MD方向(フィルム長手方向)のシール強度を15mm幅で測定した。シール温度を120℃〜140℃の5℃ピッチの5点として温度を横軸、シール強度を縦軸としたグラフを作成し、シール強度が4.9N/15mm(500g/15mm)に達する温度をグラフ上で読み取り、この温度をシール温度とした。
【0071】
8、シール強度
ポリプロピレン系無延伸複合フィルムあるいは積層フィルムを、加圧0.2MPa、時間1秒、温度を180℃、200℃、220℃の3水準でヒートシールし、引張速度100mm/分にて引張試験機にてT型剥離し、MD方向(フィルム長手方向)のシール強度を求めた。
【0072】
9、引張弾性率
(2004年版)JIS K7127に従い、サンプル形状は1号形試験片に準拠したもの(サンプル長さ200mm、サンプル幅15mm、チャック間距離100mm)を用い、クロスヘッド速度500mm/分の条件にてMD方向(フィルム長手方向)について測定した。単位MPa。
【0073】
10、ボイルパンク率の評価方法
積層フィルムをポリプロピレン系無延伸フィルムを内面側として、内寸13cm×13cm、外寸14cm×14cmの三方シール袋に製袋した。製袋におけるシール条件は、加圧0.2MPa、時間1秒で、温度は200℃とした。該三方シール袋の内部に水200ccと空気200ccを充填し、上記と同じシール条件でシールして密封する。この密封袋100袋を60分間ボイル処理し、該ボイル処理中に破袋した袋の数を計数し、下記式によりボイルパンク率を求めた。
ボイルパンク率(%)=(破袋数/100)×100
【0074】
11、含気ボイル処理における白化現象
上記方法で評価した密封体の表面を肉眼で観察して、以下の基準で判定した。
○:白化が観察されない
×:白化が観察される
【0075】
12、透湿度
含気ボイル包装体用積層フィルムサンプルを水蒸気透過度測定装置(モダンコントロールズ社製 PARMATRAN−W)を用いて40℃、100%RHの条件で測定した。
【0076】
13、フィルム及びシール層、ラミ層の厚み測定
フィルム断面を切り出し、反射光にて光学顕微鏡を用いて測定した。
【0077】
14、熱水中での伸長応力
積層フィルムを90℃の熱水中で引張り試験機にて、引張速度100mm/分の速度で、縦方向及び横方向に伸張させ、破断伸度もしくは75%伸長させたときの応力をそれぞれ測定した。
【0078】
実施例、比較例のプロピレン系無延伸フィルムの調製において使用した樹脂は下記の通りである。
樹脂(A):メタロセン触媒で重合したプロピレン・エチレンランダム共重合体(エチレン含有量=4質量%、MFR=7)
樹脂(B):プロピレン・エチレンブロック共重合体(エチレン含有量=6質量%、MFR=2.5)
樹脂(C):プロピレン系共重合体(エチレン含有量=10質量%、20℃キシレン可溶部10%、融点140℃、MFR=3))
【0079】
(実施例1)
〔プロピレン系無延伸フィルムの調製〕
ラミネート層として、樹脂(A)60質量%、樹脂(B)20質量%、樹脂(C)20質量%、及び平均粒子径3μmの不定形シリカ(サイリシア550)600ppm、エルカ酸アミド400ppmよりなる組成物を、シール層として、樹脂(A)88質量%、樹脂(C)12質量%、及び平均粒子径3μmの不定形シリカ(サイリシア550)2000ppm、平均粒子径4μmの球状シリカ1000ppm、エルカ酸アミド600ppm、ベヘニン酸アミド200ppmよりなる組成物を、それぞれ別個の押出機を用い溶融押出しし、Tダイ出口樹脂温度250℃、速度50m/min、冷却ロール温度30℃の条件でTダイキャスティングして、ラミ層厚み15μm、シール層厚み25μmのポリプロピレン系無延伸複合フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
なお、上記無機粒子の平均粒子径は、Leeds&Northrup社製のレーザー回折粒度分布測定装置(日機装 マイクロトラックHRA model9320−X100)を用いて測定し、体積平均粒子径で表示した。
【0080】
〔含気ボイル用包装袋の調製〕
耐水易接着処理をした二軸延伸ポリアミドフィルム(東洋紡績製「ハーデン(商標登録)」フィルムN4142 15μm)と上記方法で調整したポリプロピレン系無延伸フィルムとをポリエステルウレタン系接着剤(主剤:二次転移点(Tg)が−16℃の芳香族/脂肪族共重合ポリエステルポリオール、架橋剤:ヘキサメチレンジイソシアネート三量体)を用い、接着剤の固形分濃度が2.5g/m2となるように塗布し、60〜120℃の温度で2〜5秒間予備乾燥させた後に、50〜80℃に温調した金属ロールとゴムロールの間でドライラミネートして2層構成積層体を得た。得られた2層構成積層体を、内寸13cm×13cm、外寸14cm×14cmの三方シール袋に製袋した。シール条件は、加圧0.2MPa、時間1秒で、温度は200℃とした。
得られた含気ボイル用包装袋の特性値を表3に示す。
本実施例で得られた含気ボイル用包装袋は、シール強度が高く、含気ボイルパンク率が低く含気ボイル用包装袋して高品質であった。また、ボイル処理後も歪みが少なかった。
【0081】
(実施例2)
含気ボイル用包装袋を二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルムおよびポリプロピレン系無延伸フィルムよりなる3層構成に変更する以外は、実施例1と同様にして、下記方法で調製した。
〔含気ボイル用包装袋の調製〕
耐水易接着処理をした二軸延伸ポリアミドフィルム(東洋紡績製「ハーデン(商標登録)」フィルムN4142 15μm)と無静防タイプ二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績製「パイレン(商標登録)」フィルムP2102 20μm)とをポリエステルウレタン系接着剤(主剤:二次転移点(Tg)が−16℃の芳香族/脂肪族共重合ポリエステルポリオール、架橋剤:ヘキサメチレンジイソシアネート三量体)を用い、接着剤の固形分濃度が2.5g/m2となるように塗布し、60〜120℃の温度で2〜5秒間予備乾燥させた後に、50〜80℃に温調した金属ロールとゴムロールの間でラミネートして得た積層体の二軸延伸ポリアミドフィルム側に、ポリエステルウレタン系接着剤(主剤:二次転移点(Tg)が−16℃の芳香族/脂肪族共重合ポリエステルポリオール、架橋剤:ヘキサメチレンジイソシアネート三量体)を用い、接着剤の固形分濃度が2.5g/m2となるように塗布し、60〜120℃の温度で2〜5秒間予備乾燥させた後に、50〜80℃に温調した金属ロールとゴムロールの間で、上記方法で調整したポリプロピレン系無延伸フィルムをラミネートした。得られた積層フィルムを実施例1と同様の方法で含気ボイル用包装袋とした。
得られた含気ボイル用包装袋の特性値を表3に示す。
本実施例で得られた含気ボイル用包装袋は、シール強度が高く、含気ボイルパンク率が低い上に含気ボイル処理による含気ボイル包装体用積層フィルムの白化現象が見られなかった。また、透湿度の低く、含気ボイル包装体用包装袋として高品質であった。また、ボイル処理後も歪みが少なかった。
【0082】
(実施例3)
実施例2の方法において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムに変えて、二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績製「東洋紡エステル(商標登録)」フィルムE5101 12μm)を用いるように変更する以外は、実施例2と同様にして実施例3の含気ボイル用包装袋を得た。得られた含気ボイル用包装袋の特性値を表3に示す。本実施例で得られた含気ボイル用包装袋は、実施例2で得られた含気ボイル用包装袋より透湿度がやや劣るが、実施例2で得られた含気ボイル用包装袋と同等の特性を有しており高品質であった。また、ボイル処理後も歪みが少なかった。
【0083】
(比較例1および2)
実施例2の方法において用いたポリプロピレン系無延伸フィルムの各層に用いる樹脂組成を表1に示すように変更する以外は、実施例2と同様にして比較例2および3の含気ボイル用包装袋を得た。得られた含気ボイル用包装袋の特性値を表3に示す。
これらの比較例で用いたポリプロピレン系無延伸フィルムはシール強度が低いために、該ポリプロピレン系無延伸フィルムを用いて得られた含気ボイル用包装袋はシール強度が低くかった。従って、含気ボイルパンク率が高く低品質であった。
【0084】
(実施例4)
実施例2の方法において、ポリプロピレン系無延伸フィルムを下記方法で調製した3層タイプのものに変更する以外は、実施例2と同様の方法にして、実施例4のポリプロピレン系無延伸フィルムおよび含気ボイル用包装袋を得た。得られたポリプロピレン系無延伸フィルムおよび含気ボイル用包装袋の特性値をそれぞれ表2および3に示す。本実施例で得られた含気ボイル用包装袋は、実施例2で得られた含気ボイル用包装袋と同等の特性を有しており高品質であった。
〔プロピレン系無延伸フィルムの調製〕
ラミネート層として、樹脂(A)60質量%、樹脂(B)20質量%、樹脂(C)20質量%、及び平均粒子径3μmの不定形シリカ(サイリシア550)600ppm、エルカ酸アミド400ppmよりなる組成物を、中間層として、エチレン含有量が4質量%の樹脂[A]70質量%、樹脂(B)5質量%、樹脂(C)25質量%、及びエルカ酸アミド300ppmよりなる組成物を、シール層として、樹脂(A)88質量%、樹脂(C)12質量%、及び平均粒子径3μmの不定形シリカ(サイリシア550)2000ppm、平均粒子径4μmの球状シリカ1000ppm、エルカ酸アミド600ppm、ベヘニン酸アミド200ppmよりなる組成物を、それぞれ別個の押出機を用い溶融押出しし、Tダイ出口樹脂温度250℃、速度50m/min、冷却ロール温度30℃の条件でTダイキャスティングして、ラミ層厚み10μm、中間層厚み20μm、シール層厚み10μmのポリプロピレン系無延伸複合フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
なお、上記無機粒子の平均粒子径は、実施例1と同様の方法で測定した。
また、上記不定形シリカ、球状シリカ、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミドは、事前に樹脂(A)に高濃度で添加したマスターバッチを各々作製し、溶融押出し時に添加剤濃度が所定の値となるようにマスターバッチを添加した。
【0085】
(比較例3および4)
実施例4の方法において用いたポリプロピレン系無延伸フィルムの各層に用いる樹脂組成を表2に示すように変更する以外は、実施例4と同様にして比較例3および4の含気ボイル用包装袋を得た。得られた含気ボイル用包装袋の特性値を表3に示す。
これらの比較例で用いたポリプロピレン系無延伸フィルムは比較例1および2で得られたポリプロピレン系無延伸フィルムと同様にシール強度が低いために、該ポリプロピレン系無延伸フィルムを用いて得られた含気ボイル用包装袋はシール強度が低くかった。従って、含気ボイルパンク率が高く低品質であった。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の積層フィルムを用いた含気ボイル用包装体は、含水食品を包装袋中に含気状態で密封して含気ボイル処理した時に、包装袋が該含気ボイル処理に耐えることができ、該含気ボイル処理におけるボイルパンク率が低いので、含水食品を包装袋に含気状態で密封して、含気ボイル処理がされる含気ボイル包装体の包装袋として好適に使用できる。すなわち、含気ボイル処理におけるボイルパンク率が低いことは、含気ボイル包装体の安全性に対する信頼性を高めることができる。また、本発明における包装袋は、熱水中で評価される伸長時の応力が高いので、該包装袋を構成する基材フィルムとして従来公知であった含気ボイル用包装袋と異なり汎用の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルムおよびこれらの積層体を用いることができる。このことにより、例えば、応力を最適化された二軸延伸ポリアミドフィルムを使用した場合に起こる含気ボイル処理等により包装袋の歪が発生し包装袋の印刷像の歪に繋がる等の課題を抑制することができる。また、二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび/または二軸延伸ポリエステルフィルムとを積層した積層フィルムを用いた場合は、基材フィルムとして二軸延伸ポリアミドフィルムを用いることの特徴である包装袋の強靭性を維持し、かつ含気ボイル処理により発生する包装袋の構成材料である二軸延伸ポリアミドフィルム中に含まれる低分子量成分の包装袋表面への移行、析出による白化発生が抑制されるという効果が付加できる。該白化の発生は消費者にカビの発生や食品の汚染をイメージさせて不潔感を与えるので、該白化の発生の抑制により、商品イメージを向上させることができる。また、二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび/または二軸延伸ポリエステルフィルムとを積層した積層フィルムを用いた場合は、上記特徴に加え、透湿性が抑制されるので、包装された水分含有食品中の水分量の含気ボイル処理や経時による変化を抑制することができるので、消費者の味覚に対する高度な要求に答えることができる。従って、本発明の含気ボイル用包装袋は含気ボイル包装体の包装袋として好適に使用することができるので、産業界に寄与することが大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリプロピレン系無延伸フィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムよりなり、90℃の熱水中で縦又は横方向に伸長させたとき、縦方向及び横方向の破断伸度がいずれも75%以下もしくは伸度75%における応力がいずれも2.8×107Pa以上である含気ボイル用包装袋用積層フィルムであって、前記ポリプロピレン系無延伸フィルムのシール強度が13.0N/15mm以上であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
上記積層のシール強度が53N/15mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
上記積層フィルムがポリプロピレン系無延伸フィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび/または二軸延伸ポリエステルフィルムが上記順に積層されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項4】
上記ポリプロピレン系無延伸フィルムが、少なくともラミネート層およびシール層の2層よりなり、(1)ラミネート層が、α−オレフィン含有量が2〜8質量%であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)40〜70質量%とα−オレフィン含有量が3〜10重量%であるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体樹脂(B)および/または20℃でのキシレン可溶部が5〜12質量%で、融点が130〜150℃で、かつエチレン含有量が6〜15質量%であるプロピレン・エチレンブロック共重合樹脂(C)30〜60質量%よりなり、(2)シール層が、α−オレフィン含有量が2〜8質量%であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)80〜92質量%と20℃でのキシレン可溶部が5〜12質量%で、融点が130〜150℃で、かつエチレン含有量が6〜15質量%であるプロピレン・エチレンブロック共重合樹脂(C)8〜20質量%よりなることを特徴とする特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
上記ラミネート層とシール層との間に中間層を積層してなり、該中間層が、α−オレフィン含有量が2〜8質量%であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)が60〜85質量%とα−オレフィン含有量が3〜10重量%であるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体樹脂(B)および/または23℃でのキシレン可溶部が5〜12質量%で、融点が130〜150℃で、かつエチレン含有量が6〜15質量%であるエチレン・プロピレンブロック共重合樹脂(C)15〜40質量%よりなり、かつラミネート層、コアー層およびシール層中に含有されるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)量をラミネート層<中間層<シール層の順に増大させることを特徴とする請求項6に記載の積層フィルム。
【請求項6】
上記二軸延伸ポリアミドフィルムが耐水易接着処理されてなるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
上記ポリプロピレン系無延伸無延伸フィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが、それぞれ20〜65μm、12〜28μm、17〜33および12〜25μmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルムからなる包装袋

【公開番号】特開2007−237640(P2007−237640A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65276(P2006−65276)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】