説明

積層フィルム

【課題】
半透過半反射型液晶ディスプレイに用いた時に光線反射率及び光線透過率が共に適度なものとすることが出来る、半透過半反射拡散フィルムとして利用できる積層フィルムを提供する。
【解決手段】
基材フィルムの少なくとも片面に、低屈折率層と、高屈折率層と、を積層してなる積層フィルムであって、前記低屈折率層がシラン系樹脂よりなり、かつ屈折率が1.30以上1.46以下であり、かつ膜厚が50nm以上150nm以下であり、前記高屈折率層が金属酸化物よりなり、かつ屈折率が1.55以上2.40以下であり、かつ膜厚が20nm以上100nm以下であり、前記積層フィルムの可視光線反射率が25%以上50%以下であり、かつ可視光線透過率が50%以上75%以下であり、かつ透過a*値が−5.0以上5.0以下であり、かつ透過b*値が−5.0以上5.0以下である、という構成を有する積層フィルムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層フィルムに関する発明であって、具体的には、半透過半反射型液晶ディスプレイ装置用の半透過半反射フィルムとして利用可能な積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今液晶ディスプレイが急激に普及している。これは、単にテレビジョン受信装置としての液晶ディスプレイだけではなく、パソコンや携帯電話の表示画面など、生活の中のあらゆる場面に用いられるようになってきている。
【0003】
さて、この液晶ディスプレイには、主にバックライトを使用する透過型液晶ディスプレイと、バックライトを用いない反射型液晶ディスプレイと、の2種類があった。
【0004】
まず透過型液晶ディスプレイに関して説明すると、これは液晶表示画面の背面に蛍光灯(冷陰極管)を光源として表示を行うタイプのものであり、採度が高く、暗い室内で見やすい、という特徴があるが、消費電力が大きく、また明るい屋外では表示が暗くなってしまう、という欠点がある。
【0005】
一方反射型液晶ディスプレイに関して説明すると、これは外光の反射によって表示を行うタイプのものであり、太陽光など自然の光のみを利用する製品のほかに、画面前面に光源を配置するフロントライト型や、画面横に光源を配置するサイドライト型の製品がある。そして前述の透過型液晶ディスプレイに比べて、消費電力が少なく、明るい屋外で見やすいという特徴があるが、一方で彩度が低く、暗いところでは表示できなくなるという欠点があった。
【0006】
そこで最近では、透過型液晶ディスプレイの持つ、消費電力が大きく、明るい屋外では表示が暗くなるという欠点と、反射型液晶ディスプレイの持つ、彩度が低く、暗いところでは表示できなくなるという欠点を解消するものとして、反射型と透過型を融合して、暗いところではバックライトを、明るいところでは外光を利用する半透過半反射型液晶ディスプレイが登場してきた。そしてこの透過型液晶ディスプレイは、暗いところではバックライトを、明るいところでは外光を利用することで、前述の2つのタイプの液晶ディスプレイの持つそれぞれの利点を生かしている。そしてこの半透過型液晶ディスプレイは、液晶パネルの裏にマジックミラーのような素材を挟むことで両者の方式を融合することを実現しているものであり、この液晶パネルの裏のマジックミラーのような素材が、即ち半透過半反射拡散フィルムと呼ばれるものである。
【0007】
この半透過半反射拡散フィルムとは、透過型液晶ディスプレイで用いられている拡散フィルムと、反射型液晶ディスプレイで用いられている反射フィルムと、それぞれの性能が必要である。即ち、拡散フィルムであればバックライトの光を有効利用するために光源の光を効率的に拡散させることができるという性質があり、一方反射フィルムであれば取り入れた外光を効率よく利用するために光線反射率が高いという性質があるが、半透過半反射拡散フィルムは光源の光を効率よく拡散させ、かつ外光を効率的に利用できる、という性質が必要とされるのである。
【0008】
この拡散フィルムと反射フィルムとであるが、拡散フィルムとしては、酸化チタンや酸化ケイ素を練り込んだプラスチックフィルムや白顔料をコーティングしたプラスチックフィルムに、薬品処理等の化学的処理を施して表面に凹凸を設けたもの、又はサンドブラストなどの物理的処理を施して表面に凹凸を設けたもの、等が用いられ、また反射フィルムとしては、アルミニウム蒸着フィルム、銀蒸着フィルム、アルミニウム箔、ステンレス箔、等が用いられている。
【0009】
しかし拡散フィルムに用いられる酸化チタン、酸化ケイ素、白顔料には反射性能がなく、またそれ自体透明性がないために充分な光線透過率や光線反射率を確保することが困難であり、一方反射フィルムでは光線反射率は良好であるものの、光線透過率が悪く、さらに透過した光の色目も青色になってしまうため、これらのフィルムを単体で半透過半反射フィルムとして用いることはできなかった。
【0010】
そこで、拡散フィルムの性質と反射フィルムの性質とを併せ持つ、つまり光源の光を効率よく拡散させ、かつ外光を効率的に利用できる半透過半反射フィルムが新たに開発される必要が生じ、例えばその要望に応じて特許文献1に記載されたような半透過半反射フィルムが提案されている。
【0011】
【特許文献1】特開2001−116907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この特許文献1に記載の半透過半反射拡散フィルムは、光錯乱加工されたプラスチックフィルム基板の表面に、半透過性で半反射性を有する無機薄膜層を設けた構成となっている。そして得られる半透過半反射拡散フィルムの光線透過率が3〜50%、光線反射率が50〜97%となるようにすれば、光線透過率を落とすことなく、反射率も高い、半透過半反射拡散フィルムを得ることができる、とされている。
【0013】
しかし得られる半透過半反射フィルムの光線透過率は最大でも50%であるところ、実際に半透過半反射型液晶ディスプレイに用いる場合に必要な光線透過率は最低でも50%であり、即ちこれを用いても光線透過率は充分であるとは言えなかった。またこの特許文献1に記載された構成の半透過半反射フィルムを実際に用いると、透過色相が青色側に偏重してしまい、問題であった。
【0014】
また、特許文献1に記載された半透過半反射フィルムを、単色の、いわゆるモノクロ画像表示装置に用いた場合は充分に効果を発揮するものの、これを最新のカラー液晶表示装置に用いた場合、画像の色目が偏光する、輝度が充分ではない、といった問題が生じることがわかった。
【0015】
そこで本発明はこのような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、透過型液晶ディスプレイで用いられている拡散フィルムと、反射型液晶ディスプレイで用いられている反射フィルムと、それぞれの良い性能を兼ね備えた、即ち半透過半反射型液晶ディスプレイに用いた時に光線反射率及び光線透過率が共に適度なものとし、また透過色相も特に青色や黄色に偏重することなく、その結果いわゆる半透過半反射型のカラー液晶ディスプレイに用いても自然な色相を提供することが出来る、ひいてはカラー液晶表示装置に用いても問題を生じることなく、良好な半透過半反射拡散フィルムとして利用できる積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載の発明は、透明なプラスチックフィルムによる基材フィルムの少なくとも片面に、低屈折率層と、高屈折率層と、を積層してなる積層フィルムであって、前記低屈折率層がシラン系樹脂よりなり、かつその光線屈折率が1.30以上1.46以下であり、かつその膜厚が50nm以上150nm以下であり、前記高屈折率層が金属酸化物よりなり、かつその光線屈折率が1.55以上2.40以下であり、かつその膜厚が20nm以上100nm以下であり、前記積層フィルムの可視光線反射率が25%以上50%以下であり、かつ可視光線透過率が50%以上75%以下であり、かつ透過a*値が−5.0以上5.0以下であり、かつ透過b*値が−5.0以上5.0以下であること、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の積層フィルムにおいて、前記基材フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムであること、を特徴とする。
【0018】
本願発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の積層フィルムにおいて、前記低屈折率層が、加水分解基含有シランの加水分解縮重合物からなること、を特徴とする。
【0019】
本願発明の請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の積層フィルムにおいて、前記金属酸化物が、酸化ニオブ又は酸化チタンの何れか若しくは双方であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本願発明に係る積層フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の透明なプラスチックフィルム基材の表面に、低屈折率層と、高屈折率層と、を積層した構成を有することで光線反射性の性質を所望のものと設計しやすくなる、また低屈折率層がシラン系樹脂であることとすることで、膜がもろくなくなり、また製造にかかるコストも抑制でき、また併せて膜厚が50nm以上150nm以下とすることにより、全体の厚みも所望の厚み(薄さ)に設定しやすくなる。そして高屈折率層が金属酸化物よりなるものとすることで、光線屈折率が1.55以上2.40以下の範囲に調整しやすくなり、ひいては低屈折率の設計の容易さと併せて目標の反射特性を設計しやすく、また実現しやすい物とすることが出来る。
【0021】
そして積層フィルムの可視光線反射率が25%以上50%以下であり、かつ可視光線透過率が50%以上75%以下であり、かつ透過a*値が−5.0以上5.0以下であり、かつ透過b*値が−5.0以上5.0以下である構成とすることで、従来のものに比してはるかに透過した光が特定の色目に偏ることがない、換言すれば透過した光が限りなく自然光のままである状態を実現することが出来るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
本願発明に係る積層フィルムについて第1の実施の形態として説明する。
本実施の形態に係る積層フィルムは、透明なプラスチックフィルムによる基材フィルムの少なくとも片面に、低屈折率層と、高屈折率層と、を積層してなる構成を有する。以下、各部材につき順次説明をする。
【0024】
まず基材となる透明なプラスチックフィルムであるが、これは特段何らかの制限を要するものではなく、従来公知の積層フィルムに好適に利用される透明プラスチックフィルムであってよく、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「PETフィルム」とも言う。)や、ポリエステルフィルム等が挙げられる。そして本実施の形態ではPETフィルムを用いる事とするが、本発明は必ずしもこのフィルムに限定するものではないことを断っておく。
【0025】
この基材となるPETフィルムの厚みは6μm以上300μm以下であることが好ましく、12μm以上150μm以下であるとより好適である。これは、6μm以下の厚みであると、後述の低屈折率層と高屈折率層とをこれに積層する際に、または積層が完了した後に基材フィルム自体が破損する可能性が高いためであり、また300μm以上の厚みとすると、得られる本実施の形態に係る積層体全体の厚さを所望の厚み以下に薄くすることが殆どできなくなってしまい、特に後述するような利用方法において望まれる薄さを実現することがほぼ不可能となってしまう可能性が高いので、6μm以上300μm以下の厚みとすることが望ましいのである。さらには、後述するような利用方法の場合であれば、より一層薄くすることが望まれるので、さらに12μm以上150μmの基材フィルムとすることで、積層体を製造しやすいものとなり、かつ容易に破損しない程度には厚みがある、全体としても適度に利便性のある積層体とすることができる基材フィルムとなるのでより一層好適である。
【0026】
次にこの基材となるPETフィルムの表面に積層される低屈折率層につき説明する。
本実施の形態に係る積層フィルムを構成する低屈折率層はシラン系樹脂よりなるが、特に加水分解基含有シランの加水分解縮重合物により構成されることが好適であり、より具体的にはテトラエトキシシラン又はテトラメトキシシランである。さらに中空シリカを加えることにより、より一層屈折率を好適なものに調整しやすくなる。ここで用いる物質は特段これらに限定される必要はないが、これらの物質であれば安価で入手できるにもかかわらず所望の性能を発揮するので、製造コストの抑制に寄与することが出来る。
【0027】
またこの低屈折率層はグラビアコーティング法により基材フィルムの表面に積層されるが、必ずしもこの手法に限定されるものではなく、その他、リバースロールコーティング、スピンコーティング、又はディップコーティング、等の手法によってでも積層することが考えられるし、これらの手法で積層されてあっても構わない。
【0028】
またこのような物質により構成されるかつその膜厚が50nm以上150nm以下であることが好ましい。膜厚が50nm以下であると低屈折率層が薄すぎるために屈折率が充分ではない、等のように充分にその機能を発揮できなくなり、150nm以上であると、同様に屈折率を好適なものにしにくくなると同時に、本実施の形態に係る積層フィルム全体の厚みを薄くすることが困難となるので、50nm以上150nm以下であることが望ましいのである。
【0029】
そして本実施の形態に係る積層フィルムではこの低屈折率層の表面に高屈折率層が積層されるので、この高屈折率層につき説明する。
【0030】
本実施の形態に係る積層フィルムを構成する高屈折率層は金属酸化物よりなるが、中でも酸化ニオブ又は酸化チタンの何れか若しくは双方より構成されてなることが好ましい。これらの金属酸化物であると、本実施の形態で求められる高い屈折率を容易に実現できるからである。
【0031】
またこの高屈折率層はスパッタリングにより基材フィルムの表面に積層されるが、必ずしもこの手法に限定されるものではなく、その他、一般的な蒸着と広く呼ばれる手法によってでも積層することが考えられる。
【0032】
そしてこのような金属酸化物により構成される高屈折率層の膜厚が20nm以上100nm以下であること、が好ましい。これは膜厚が20nm以下であると高屈折率層が薄すぎるために充分にその機能を発揮できなくなり、100nm以上であると、屈折率を好適なものにしにくくなると同時に、本実施の形態に係る積層フィルム全体の厚みを薄くすることが困難となるので、20nm以上100nm以下であることが望ましいのである。
【0033】
さらに、低屈折率層と高屈折率層との光線屈折率は、低屈折率層では1.3以上1.46以下であり、高屈折率層では1.55以上2.40以下であることが好ましい。そしてこれらの条件を同時に満足することで、本実施の形態における目標とすべき光学特性を得ることができる。即ち、本実施の形態に係る積層フィルムが反射する光線は必要な量だけの光線量を反射することが可能となるのである。
【0034】
そして、以上説明した部材によって得られる、基材フィルム/低屈折率層/高屈折率層という構成を有する本実施の形態に係る積層フィルムは、可視光線反射率が25%以上50%以下であり、かつ可視光線透過率が50%以上75%以下であり、かつ透過a*値が−5.0以上5.0以下であり、かつ透過b*値が−5.0以上5.0以下、という物性値を有することが重要である。
【0035】
まず可視光線反射率について説明すると、本実施の形態に係る積層フィルムでは25%以上50%以下となるが、このような範囲とすることで、例えば本実施の形態にかかる積層フィルムをノートパソコンの液晶ディスプレイに用いると、これを屋外などで使用する場合、液晶ディスプレイの視認性を充分確保するのに足りるだけの光線量を得ることが可能となる。また、可視光線透過率が50%以上75%以下とすれば、同様にノートパソコンの液晶ディスプレイに用いてなり、それを屋外等で使用する場合、可視光線が充分に透過する、還元すれば可視光線が必要以上に反射しないので、液晶ディスプレイの視認性を十分確保することが可能となるのである。
【0036】
例えば、可視光線の反射率が50%以下であり、かつ透過率が50%以上であるならば、これを用いた半透過半反射型液晶ディスプレイでは、バックライトが必要な状況であっても可視光線の反射量が50%以下であるので、バックライトの無駄な利用がなく、即ちバックライトの光量を補うには充分の光線反射量を得られ、また大量の反射光を生じることがないので、不要なまでにまぶしすぎるということが生じなくなり、また可視光線透過率が50%以上あることより、充分な光線量を透過することでやはり不要なまでにまぶしすぎるということが生じなくなる。
【0037】
また発明者が種々検討してみた結果、カラー液晶表示装置を有する半透過半反射型液晶ディスプレイに用いる半透過半反射フィルムでは、可視光線反射率と可視光線透過率とを比較すると、従来のように可視光線透過率よりも可視光線反射率の方が高いフィルムを用いても画像が鮮明にならない、特定の色目へ偏光する、といった問題が生じた一方で、可視光線反射率よりも可視光線透過率の方が高い数値である、とすると、鮮明であり視認性も充分確保できるカラー表示を実現することが出来ることが判った。そしてその好適な数値範囲を調査した結果、やはり可視光線反射率が25%以上50%以下であり、かつ可視光線透過率が50%以上75%以下であることとするのがもっとも適切な数値であることがわかったので、本実施の形態でもこの数値範囲を満足できるようになされているのである。
【0038】
また本実施の形態に係る積層フィルムを透過した光線のa*値である透過a*値が−5.0以上5.0以下であることで、積層フィルムを透過した光が赤を帯びたり緑っぽく見えることがなくなり、同様に本実施の形態に係る積層フィルムを透過した光線のb*値である透過b*値が−5.0以上5.0以下であることで、積層フィルムを透過した光が黄を帯びたり青っぽく見えることがなくなるので、全体として本実施の形態に係る積層フィルムを透過した光線が、特段特定の色目に偏重することなく自然なままの光線とすることができる。
【0039】
このようにして得られた積層フィルムであれば、この積層フィルムを透過する光は特定の色目に偏重することがなく、また可視光線反射率及び可視光線透過率が共に適度なものである、半透過半反射フィルムとすることが出来る。そしてこれを例えば半透過半反射型液晶ディスプレイに用いれば、屋外においては外光を効率的に利用し、また室内においてはバックライトの光源を効率的に使用することが出来るようになり、ひいては不要なまでの巨大な電力消費を招く、といったことがなくなる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明に係る積層フィルムにつき、さらに実施例により説明する。
【0041】
以下説明する事例において、基材フィルムはポリエチレンテレフタレートフィルム(株式会社帝人製、製品名「OXC」)、低屈折率層に用いるシラン系樹脂はテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名「KBE−04」)、であるものとする。また積層フィルムは全て「基材フィルム/低屈折率層/高屈折率層」の構成を有するものとし、低屈折率層は、基材フィルムに対してウェットコーティング法により、また高屈折率層はスパッタリングにより、それぞれ積層されてなるものとする。尚、スパッタリングの条件は以下の通りであるものとする。
・原材料として高屈折率層を形成する金属酸化物の板状ターゲットを用いる。
・スパッタガスには純度99%以上のアルゴンを用いる。
【0042】
(実施例1)
厚み50μmのPETフィルムを基材フィルムとした。その表面にテトラエトキシシランの加水分解物を膜厚が95nmとなるように積層した。そしてさらにその表面に酸化ニオブを膜厚が55nmとなるように積層した。
【0043】
(実施例2)
厚み50μmのPETフィルムを基材フィルムとした。その表面にテトラエトキシシランの加水分解物を膜厚が125nmとなるように積層した。そしてさらにその表面に酸化ニオブを膜厚が50nmとなるように積層した。
【0044】
(実施例3)
厚み75μmのPETフィルムを基材フィルムとした。その表面にテトラエトキシシランの加水分解物を膜厚が95nmとなるように積層した。そしてさらにその表面に酸化ニオブを膜厚が55nmとなるように積層した。
【0045】
(実施例4)
厚み50μmのPETフィルムを基材フィルムとした。その表面にテトラエトキシシランの加水分解物を膜厚が95nmとなるように積層した。そしてさらにその表面に酸化チタンを膜厚が55nmとなるように積層した。
【0046】
(実施例5)
厚み75μmのPETフィルムを基材フィルムとした。その表面にテトラエトキシシランの加水分解物を膜厚が125nmとなるように積層した。そしてさらにその表面に酸化チタンを膜厚が50nmとなるように積層した。
【0047】
(比較例1)
厚み6μmのPETフィルムを基材フィルムとした。その表面にテトラエトキシシランの加水分解物を膜厚が90nmとなるように積層した。そしてさらにその表面に酸化ニオブを膜厚が60nmとなるように積層した。
【0048】
(比較例2)
厚み50μmのPETフィルムを基材フィルムとした。その表面にテトラエトキシシランの加水分解物を膜厚が40nmとなるように積層した。そしてさらにその表面に酸化ニオブを膜厚が10nmとなるように積層した。
【0049】
(比較例3)
厚み350μmのPETフィルムを基材フィルムとした。その表面にテトラエトキシシランの加水分解物を膜厚が40nmとなるように積層した。そしてさらにその表面に酸化ニオブを膜厚が10nmとなるように積層した。
【0050】
以上のようにして得られた実施例1〜5及び比較例1〜3の積層フィルムそれぞれに関し、可視光線反射率、可視光線透過率、透過a*値、透過b*値、を測定した。
これらの値は以下の通りにして測定した。そしてその結果を以下に示す。
・(株)島津製作所製分光光度計に60φの積分球を設置して測定する。
・波長範囲は300nmから800nmまでとする。
・ここでいう反射率は硫化バリウム標準白色板の反射率を100%として換算したものである。



【0051】
【表1】

【0052】
このように、本願発明に係る実施例1〜5の積層フィルムであれば、得られる可視光線反射率が25%以上50%以下であると同時に可視光線透過率が50%以上75%以下である、という適度なバランスに収めることが可能であるので、これらのフィルムを例えば半透過半反射型液晶ディスプレイに用いても効率のよい光源利用が可能であると同時に、さらに透過a*値、透過b*値がそれぞれ−5.0以上5.0以下という範囲に収まることから透過光も自然色を呈することがわかる一方、本願発明に係らない比較例1〜3の積層フィルムであれば、可視光線反射率と可視光線透過率のバランスが不適当であるため、例えばこれらのフィルムを半透過半反射型液晶ディスプレイに用いても光源を効率よく利用できず、そのために不必要なまでに大きな消費電力を要する結果を招いたり、また透過光も特定の色目に偏光するため、不自然な画像表示しか得られなくなることが言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なプラスチックフィルムによる基材フィルムの少なくとも片面に、
低屈折率層と、高屈折率層と、
を積層してなる積層フィルムであって、
前記低屈折率層がシラン系樹脂よりなり、かつその光線屈折率が1.30以上1.46以下であり、かつその膜厚が50nm以上150nm以下であり、
前記高屈折率層が金属酸化物よりなり、かつその光線屈折率が1.55以上2.40以下であり、かつその膜厚が20nm以上100nm以下であり、
前記積層フィルムの可視光線反射率が25%以上50%以下であり、かつ可視光線透過率が50%以上75%以下であり、かつ透過a*値が−5.0以上5.0以下であり、かつ透過b*値が−5.0以上5.0以下であること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の積層フィルムにおいて、
前記基材フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムであること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の積層フィルムにおいて、
前記低屈折率層が、加水分解基含有シランの加水分解縮重合物からなること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の積層フィルムにおいて、
前記金属酸化物が、酸化ニオブ又は酸化チタンの何れか若しくは双方であること、
を特徴とする、積層フィルム。

【公開番号】特開2007−256702(P2007−256702A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81988(P2006−81988)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】