説明

積層フィルム

【課題】
本発明は、生分解性に優れ、かつフィルム物性に優れた積層フィルムおよび包装材を提供する。
【解決手段】
以下の表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)からなることを特徴とする積層フィルム。
表面層(i)
デンプン(A)20〜50重量%、及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)80〜50重量%
(デンプン(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の合計で100重量%とする。)からなる組成物(C1)からなる。
中間層(ii)
ポリビニルアルコール系ポリマー(D)60〜80重量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)40〜20重量%からなる組成物(C2)からなる。
裏面層(iii)
デンプン(A)1〜20重量%、及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)99〜80重量%からなる組成物(C3)からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性を有する積層フィルムに関し、地中へ埋設した場合であっても比較的短期間に分解する積層フィルムおよび包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にし、地中へ埋設された場合であっても早期に生分解する包装材が求められており、種々のフィルムが開発されている。
しかし従来の包装材では、地中に埋設しても生分解するまでに長期間を要したり、早期に生分解するが包装材として使用する際の強度が不十分である等の不十分な点があった。また、生分解性能や包装材としての物性強度にも優れているが、高価となり用途が限られる場合があった。
例えば、ポリ乳酸の層とポリビニルアルコールの層からなる積層フィルム(特開平8−244190)、ポリ乳酸とそれ以外の脂肪族ポリエステルからなる中間層、及び脂肪族ポリエステルからなる最外層と最内層からなる生分解性袋状製品が提案されている。(特開2005−313998)。
【特許文献1】特開平8−244190(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005―313998(実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、生分解性に優れた積層フィルムに関し、特にコンポスト処理をする際にフィルムとしての形状を残さない程度までに比較的短期間に崩壊し、かつ包装材としての使用時にはフィルム物性、特にシール強度に優れた積層フィルムおよび包装材に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)からなることを特徴とする積層フィルムに関する。
表面層(i)
デンプン(A)20〜50重量%、並びに脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分及び脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)が(b1)と(b2)の合計量と実質等モル量からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)80〜50重量%(デンプン(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の合計で100重量%とする。)からなる組成物(C1)からなる。
中間層(ii)
ポリビニルアルコール系ポリマー(D)60〜80重量%、並びに脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分、及び脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)が(b1)と(b2)の合計量と実質等モル量からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)20〜40重量%(ポリビニルアルコール系ポリマー(D)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の合計で100重量%とする。)からなる組成物(C2)からなる。
裏面層(iii)
デンプン(A)1〜20重量%、並びに脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分及び脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)が(b1)と(b2)の合計量と実質等モル量からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)99〜80重量%(デンプン(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の合計で100重量%とする。)からなる組成物(C3)からなる。
【0005】
本発明において、表面層(i)はデンプン(A)20〜50重量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)80〜50重量%からなる組成が分解速度が速く好適である。
また中間層(ii)はポリビニルアルコール系ポリマー(D)60〜80、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)20〜40重量%を配合した組成が、高速分解性を維持しながら層間剥離強度上げるのに好適である。
さらに表面層(iii)はデンプン(A)1〜20重量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)99〜80重量%からなる組成が分解速度を保ちながら中間層(ii)との層間強度が強く好適である。
これらの積層フィルムは共押出成形することが望ましい。またゴミ袋等に使用するときはフィルムに縦横の強度の偏りがなく、またサイドシールする必要がないのでインフレーション溶融成形法により成形することが望ましい。
これらの成形フィルムは包装材の用途に適している。
【発明の効果】
【0006】
本発明の積層フィルムは、包装材としての十分な強度物性を有しており、特に包装袋としてのシール強度に優れ、コンポスト処理装置内では比較的短期間、例えば3日間以内と生ゴミとほぼ同程度の分解速度で崩壊し、コンポスト処理装置内に堆積しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の積層フィルムは、以下の表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)を有する。
本発明の積層フィルムは、表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)がこの順で積層されて構成されている。
各層に用いられるポリマーの種類、組成等は、それぞれが規定された範囲内である限り、それぞれ同様でもよく、また異なったものとしてもよい。
各層に用いられるポリマーについて以下に説明する。
デンプン(A)
本発明に用いられるデンプン(A)は、分子式(C6105n の炭水化物(多糖類)で、多数のα−グルコース分子がグリコシキド結合によって重合した天然高分子である。構成単位であるグルコースとは異なる性質を示す。種子や球根に多く含まれている。
好ましくは工業用にOH基を有機修飾したものが成形時の劣化が小さく好ましい。
【0008】
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、その中でも好ましくは40〜60モル%と共に、芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、その中でも好ましくは60〜40モル%からなる酸成分、と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなるポリエステルである。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)と芳香族ジカルボン酸成分(b2)との合計のモル数と実質的に等しく、得られる脂肪族・芳香族ポリエステルの分子量を上げるためにイソシアネート基に代表される連結基を含んでも良い。
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、好ましくは、融点が50〜190℃、さらに好ましくは60〜180℃、その中でも好ましくは70〜170℃の範囲にある。また、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルムが成形できる限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、その中でも好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0009】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、特に4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものである。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、特に、アジピン酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%の範囲にある。脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の加水分解性や生分解性を向上させ、得られるフィルムを柔軟にする。
【0010】
芳香族ジカルボン酸成分(b2)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である芳香族ジカルボン酸成分(b2)は、特に限定はされないが、通常、8〜12個の炭素原子を有する化合物、とくに8個の炭素原子を有する化合物が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフトエ酸および1,5−ナフトエ酸並びにそのエステル形成誘導体を例示できる。芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、具体的には、芳香族ジカルボン酸のジ−C1〜C6アルキルエステル、例えばジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等を例示できる。
これら芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、特に、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の芳香族ジカルボン酸成分(b2)は80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%の範囲にある。芳香族ジカルボン酸成分(b2)を共重合することにより、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)のポリビニルアルコールと成形した際の熱劣化を抑え、かつ耐熱性を保ちながら柔軟なポリエステルが得られる。
【0011】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、とくには、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特表2002−527644公報、特表2001−501652公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)としては、例えば、BASF社からECOFLEX(商品名)として製造・販売されている。
【0012】
組成物(C1)
本発明の積層フィルムの表面層(i)を構成する組成物(C1)は、デンプン(A)20〜50重量%及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)80〜50重量%からなる。
デンプン(A)及び脂肪属・芳香族ポリエステル(B)の夫々別個に、あるいは組成物(C1)を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機化合物あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
【0013】
ポリビニルアルコール系ポリマー(D)
本発明に用いられるポリビニルアルコール系ポリマーは、ビニルアルコールの結合単位を有するポリマーであり、ビニルアルコールの結合単位の割合が、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上のものが用いられる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコールや、酢酸ビニルおよび、これと共重合体可能な単量体との共重合体の加水分解生成物などがある。
酢酸ビニルは必要な水溶性に応じてケン化度を決めるが、崩壊性を上げるにはケン化度60〜80%が望ましい。
ポリビニルアルコール系ポリマーの製造は、従来から知られている方法によって行うことができる。ポリビニルアルコールの重合度は通常200〜2,500程度であり、好ましくは、1,000〜2,000である。一般に酢酸ビニル単独重合体または共重合体の加水分解またはアルコーリシスによって製造される。好適なポリビニルアルコールは、酢酸エステル基の約50から実質的に100%、最も好ましくは80乃至99.5%が加水分解またはアルコリシスを受けている酢酸ビニル重合体である。
本発明のポリビニルアルコールは熱成形出来ることが特に好ましく、ケン化度は60〜80%であり、かつ可塑剤としてポリエチレングリコール類を10〜30%含むことが好ましい。
本用途に適したポリビニルアルコールとしてクラレ社製、商品名 クラレポバール、溶融成形用ポリビニルアルコールCPシリーズが上げられる。
ポリビニルアルコール系ポリマーには、必要に応じて前記の脂肪族ポリエステル共重合体(A)と同様のその他のポリマーや配合剤を配合される。その他のポリマーや配合剤の配合量は、本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
組成物(C2)
中間層(ii)を構成する組成物(C2)は、ポリビニルアルコール系ポリマー(D)60〜80重量%、及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)40〜20重量%(ポリビニルアルコール系ポリマー(D)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の合計で100重量%とする。)からなる組成物(C2)からなる。
組成物(C3)
本発明の積層フィルムの裏面層(iii)を構成する組成物(C3)は、デンプン(A)1〜20重量%及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)99〜80重量%からなる。
デンプン(A)及び脂肪属・芳香族ポリエステル(B)の夫々別個に、あるいは組成物(C2)を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機化合物あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
【0014】
表面層(i)
表面層(i)は、デンプン(A)20〜50重量%及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)80〜50重量%からなる組成物(C1)からなる。
また、デンプン(A)はOH基を有機修飾した工業用デンプンが成形時の熱劣化が小さく好適である。
中間層(ii)
中間層(ii)は、ポリビニルアルコール系ポリマー(D)60〜80重量%及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)20〜40重量%からなる組成物(C2)からなる。
裏面層(iii)
裏面層(iii)は、デンプン(A)1〜20重量%及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)99〜80重量%からなる組成物(C3)からなる。
また、デンプン(A)はOH基を有機修飾した工業用デンプンが成形時の熱劣化が小さく好適である。
裏面層(iii)は、表面層(i)と同じくデンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)からなるが、デンプン(A)の配合量が表面層(i)よりも小さく、ヒートシール時にシーラント層として表面層(i)よりも速やかに融解することが、また内容物からの水が中間層(ii)に浸透するのが遅いことが好ましい。
【0015】
表面層(i)、裏面層(iii)を構成するポリマーのそれぞれは、デンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、をヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等で混合する方法、混合後更に単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法等により調製することができる。
但し、ポリビニルアルコール(D)は水溶性なので水中ストランドカットが出来ないため、添加剤等入れる場合にはダイスにつながる押出機にドライブレンドで入れることが望ましい。
【0016】
積層フィルム
本発明の積層フィルムは、表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)からなり、それらの各厚さが全厚さ(表面層(i)、中間層(ii)、裏面層(iii)の厚さの合計を100%とする)の10%以上とし、中間層の厚さを50%居縦横にすることが好ましい。
本発明の積層フィルムの各層の厚さは、用途に応じて種々決めることができるが、通常、表面層(i)の厚さは3〜120μm、好ましくは5〜110μm、の範囲、中間層(ii)の厚さは5〜150μm、好ましくは10〜130μm、の範囲であり、裏面層(iii)の厚さは3〜120μm、好ましくは5〜110μmの範囲である。
積層フィルム全体としての厚さはいずれの場合も通常10〜300μm、好ましくは20〜200μmの範囲である。
【0017】
また積層フィルムの反りを減らすために表面層(i)の厚みと裏面層(iii)の厚みとはほぼ等しいことが好ましい。しかし、ヒートシール強度を上げるためには裏面層をより厚くすることが好ましい。
また、積層フィルム全体の厚さが10μm未満では製膜、スリット、製袋が難しくなり、300μmを超えるとフィルムの重量が大きくなり包装袋、ゴミ袋としてのハンディさを損ない、コストが高くなるおそれがある。
【0018】
本発明の積層フィルムは、種々公知の方法で製造することができる。例えば、表面層(i)、裏面層(iii)のそれぞれを構成するデンプン(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を夫々所定の量で配合し、中間層(ii)のポリビニルアルコール系ポリマー(D)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を夫々所定の量で配合し直接三層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形により積層フィルムを製造することができる。
また、予め、表面層(i)、裏面層(iii)のそれぞれを構成するデンプン(A)及び脂肪族・芳香族ポリエスステル(B)を夫々所定の量で配合した後、溶融混練して表面層(i)、裏面層(iii)の原料である組成物を得た後、中間層(ii)をポリビニルアルコール系ポリマー(D)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を夫々所定の量で配合し、三層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形により積層フィルムを製造することができる。
このように好ましい形態はポリビニルアルコール系ポリマー(D)として熱可塑性のものを用いることで共押出成形することである。
【0019】
あるいは夫々別個に表面層(i)、中間層(ii)、裏面層(iii)のフィルムを成形した後貼り合せて積層フィルムを製造することができる。
本発明の積層フィルムは、未延伸であることが好ましい。延伸フィルムとするとヒートシール強度、透明性、吸湿した際の形状維持力が低下するおそれがある。
また本発明の積層フィルムは、印刷性の改良のために、一方の表面を、たとえばコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行うことができる。
【0020】
包装材
本発明の積層フィルムは十分な強度とヒートシール強度を持ち包装材に適している。本発明の積層フィルムは、生分解性に優れており、コンポスト処理装置内で比較的短期間、例えば3日以内程度で崩壊しフィルム屑が堆積しないため、特にコンポスト処理装置で用いる生ゴミ用、その他のゴミ袋の用途に適している。
【0021】
次に実施例により本発明を説明する。
実施例及び比較例等で使用した原料は次の通りである。
(イ)シリカ
富士シリシア化学社製、商品名サイリシア730(平均粒径3μm)
(ロ)エルカ酸アミド
チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名ATMER SA1753
(ハ)ポリエチレングリコール
第一工業製薬社製、商品名PEG4000
【0022】
(ニ)デンプン(A)
予め脂肪族・芳香族ポリエステル(B)(アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体 BASF社製、商品名 ECOFLEX)に30%分散させた製品を用いた。
ノバモント社製 マタービー NF01U
MFR(150℃、荷重5kg):3g/10分
融点(Tm):110℃
密度:1.3g/cm
【0023】
(ホ)脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)
BASF社製、商品名 ECOFLEX
テレフタル酸:26モル%、 アジピン酸:27モル%及び 1,4−ブタンジオール:50モル%、
MFR(190℃、荷重2160g):3g/10分、
融点(Tm):112℃、
密度:1.26g/cm
(ヘ)ポリビニルアルコール系ポリマー(D)
クラレ社製、商品名 クラレポバール、溶融成形用ポリビニルアルコール CP−1210
MFR(190℃、荷重2160g):4.0g/10分、
融点(Tm):161℃、
ガラス転移温度(Tg):26℃、
密度:1.25g/cm
【0024】
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
(1)光学特性
日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)、平行光線透過率(PT:%)及びグロス(%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
(2)引張り試験
試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、破断点における強度(MPa)、伸び(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
【0025】
(3)ヒートシール強度
フィルムの熱融着層面(裏面層(iii))同士を重ね合わせた後に、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製 商品名 ルミラー)で挟み、テスター産業株式会社製TP−701−B HEATSEALTESTERを用いて、所定の温度で、シール面圧:1kg/cm、時間:1.0秒の条件下で熱融着した。尚、加熱は上側のみとした。次いで、熱融着した二軸延伸積層フィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離し、その最大強度を熱融着強度とした。
【0026】
(4)コンポスト崩壊性評価
フィルムをA4大に切り出した後に、屋外設置型コンポスト処理装置(田窪工業所製、地球の友だち、EF−5A)に入れて崩壊の様子を1日目、2日目、3日目に観察した。
観察した結果、
変化のないものを ×
中間層が膨潤し破れやすくなったものを △
中間層が溶出し皮膜層のみ残ったもの ○
とした。
【0027】
(5)耐水性評価
フィルムをA4大に切り出した後に、2つ折りにして裏面層(iii)を内面として、両端をインパルスシーラーでヒートシールして水を充填した。更に開口部をヒートシールして充填バッグ状にしたものを1日目、2日目、3日目に観察した。
観察した結果、破れて水の漏れたものを×、水の漏れのないものを○とした。
【0028】
実施例1、2、比較例1、2、3
<多層フィルムの製造>
3種3層ダイを有するキャスト成形機を用いて、温度190℃で、表−1の構成になるようにそれぞれの材料を押出機に投入し3層フィルムを得た。
但し、表面層(i)、裏面層(iii)の組成部はデンプン含有量30%のマタービーマタービー NF01UとEcoflexを混ぜて所定のデンプン量となるように調整し、また中間層(ii)の原料も所定の配合比になるように、すべてドライブレンドして3種3層ダイを有するキャスト成形機の押出機に投入した。
表面層(i)/中間層(ii)/裏面層(iii)を5/25/10μmの厚みとなるように溶融樹脂の吐出量、キャストフィルムの引き取り速度を調整した。
【0029】
【表1】

【表2】

表1及び表2に示す中間層にポリビニルアルコールを60%有する実施例1、2は袋としての耐水性を有しながら3日後のコンポストでの崩壊性に優れていた。
また裏面層(iii)にデンプンを15%含む比較例1は分解性は優れているもののヒートシールした際に中間層との間で界面剥離を起こすためヒートシール強度が小さかった。
さらに中間層にポリビニルアルコールを50%とした比較例2はコンポストで崩壊しなかった。またさらに裏面層(iii)を有しない比較例3は袋としての耐水性に劣り、ポリビニルアルコールの酢酸臭も強かった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の積層フィルムはヒートシール性に優れたており包装材に適している。更に生分解性に優れ、特にコンポスト処理をする際に比較的短期間、例えば3日間程度で崩壊してフィルムとしての形状を残さない、かつフィルム物性に優れた積層フィルムおよび包装材である。
また本発明の積層フィルムは溶断シール強度、低温ヒートシール性、十分なヒートシール強度を有するので、溶断シール、ヒートシールにより製袋でき、包装材として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)からなることを特徴とする積層フィルム。
表面層(i)
デンプン(A)20〜50重量%、並びに脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分及び脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)が(b1)と(b2)の合計量と実質等モル量からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)80〜50重量%(デンプン(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の合計で100重量%とする。)からなる組成物(C1)からなる。
中間層(ii)
ポリビニルアルコール系ポリマー(D)60〜80重量%、並びに脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分、及び脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)が(b1)と(b2)の合計量と実質等モル量からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)20〜40重量%(ポリビニルアルコール系ポリマー(D)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の合計で100重量%とする。)からなる組成物(C2)からなる。
裏面層(iii)
デンプン(A)1〜20重量%、並びに脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分及び脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)が(b1)と(b2)の合計量と実質等モル量からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)99〜80重量%(デンプン(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の合計で100重量%とする。)からなる組成物(C3)からなる。
【請求項2】
共押出溶融押出成形法により得られる請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
インフレーション溶融成形法により得られる請求項1または2のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の積層フィルムからなる包装材。
【請求項5】
請求項4記載の生分解性を有する包装材。

【公開番号】特開2009−208398(P2009−208398A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55273(P2008−55273)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】