説明

積層フィルム

【課題】
アンダーコート層を工夫することにより、長期間にわたり層間密着性を確保すると同時に、耐環境試験を実施しても試験後の性能劣化が生じない積層フィルムを提供する。
【解決手段】
基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、少なくともアンダーコート層と、特定機能を付与する特定機能層と、をこの順に積層してなる積層フィルムであって、前記アンダーコート層を形成する主たる素材が、加水分解基と有機官能基とを含有するシランカップリング剤とした、積層フィルムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層フィルムに関する発明であって、具体的には、基材フィルムとその表面に積層される特定機能を付与する層との間の層間密着力を確保すると同時に耐環境性に優れた積層フィルムとなせるアンダーコート層を備えてなる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの表面に種々の金属や金属酸化物、金属窒化物などを積層することにより特定の機能をプラスチックフィルムに付与してなる積層フィルムは種々の用途において広く用いられるところである。
【0003】
例えば係る金属を銀やアルミニウムとした場合、即ち銀蒸着フィルム・アルミニウム蒸着フィルムは、その光沢を用いて反射フィルムとして用いられるし、さらに例えば液晶表示装置のバックライト装置において用いられる。
【0004】
また酸化珪素を積層した場合は、酸化珪素の有する性質よりプラスチックフィルムにガスバリア性を付与することが出来るので、酸素や水蒸気に接すると性質が劣化してしまうような物品、例えば食品や電子機械器具用部材、等の包装用材料として広く用いられるところである。
【0005】
さらにスズ−インジウム酸化物(以下「ITO」とも言う。)を積層した場合、ITOの持つ導電性を活かした導電性フィルムとして用いることが出来る。例えばタッチパネル等の透明電極部材として広く用いられるところである。
【0006】
これらのように、プラスチックフィルムの表面に種々の金属等を積層するためにはいわゆるドライコーティング法と呼ばれる一群の手法、例えば真空蒸着法やスパッタリング法等を行うことにより実行されている。
【0007】
しかし一方で単純にプラスチックフィルムの表面に金属等を積層しただけであれば、積層された金属が容易に剥離・脱落してしまい、せっかく特定機能を付与した積層フィルムであってもその機能が長期間にわたり安定的に発揮されることがなくなってしまう。
【0008】
そこで金属等を積層しようとするプラスチックフィルムの表面に対し、予めアンダーコート層と呼ばれる層を設けることが一般的に行われている。このアンダーコート層とは、極めて単純に言うならば、プラスチックフィルムとその表面に積層される層との間に存在して、これらの密着性を上げる、換言するならば積層された層がプラスチックフィルムから剥離しないようにつなぎ止める、という作用を生じるものである、と言える。
【0009】
この点につきさらに述べると、ただ単純にプラスチックフィルムの表面に特定機能を付与するために金属等を積層してなる積層フィルムを静置するのであれば積層物が剥離しやすい、という現象もさほど生じないと思われるところ、実際には使用状況に応じて剥離しやすい状況が現出されるものである。例えば前述したような例であれば、バックライト装置に用いられる反射フィルムでは、バックライト等の生じる熱が、基材となるプラスチックフィルムと積層物とを膨張させるが、同じ熱でもそれぞれの膨張率が異なるが故に積層物が剥離しやすい状況が生じる。同様に、ガスバリアフィルムであれば、包装作業を行う際、また包装された後の運搬等の状況により外部から物理的な力が加えられ、その結果積層物が剥離しやすい状況が生じる。さらにタッチパネルに用いられるような場合であれば、装置の放熱による影響と、タッチパネルを操作することによる物理的な外力が加えられることによる影響、とが合わさることにより、特段の処置を施していなければ積層物が容易に剥離するという状況が生じやすいものとなってしまう。
【0010】
そこで以上説明したような積層物が容易に剥離する、という現象が生じることを防止するために、アンカーコート層に工夫を加えることによりこれが剥離しないようにする、という発明が提案されている。
【0011】
例えば特許文献1では、基材高分子フィルム/アンダーコート層/透明導電薄膜、という構成であって、アンダーコート層がアミノ基、リン酸基のうち少なくとも1種を有する化合物を含むフィルムに関する発明が記載されている。また特許文献2では、透明プラスチックフィルム/透明導電層の界面に金属酸窒化物からなる透明薄膜層を積層してなる透明導電性フィルムに関する発明が記載されている。
【0012】
【特許文献1】特開2003−115220号公報
【特許文献2】特開平11−48388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この特許文献1に記載されたフィルムであれば、アンダーコート層にアミノ基、リン酸基のうち少なくとも1種を有する化合物を含む構成としたので、アンダーコート層と透明導電薄膜の密着性を高め、透明導電薄膜の剥離、欠落を避け、耐久性に優れたタッチパネルとすることが出来る、とされている。
【0014】
しかしこのフィルムに対しタッチパネル用途に要求される一般的な耐環境試験を実施したところ、該試験後におけるアンダーコート層と透明導電薄膜の密着性は不十分なものとなり、さらには透明導電薄膜の電気抵抗の変化率も高いものとなってしまうことが分かった。即ち、このフィルムであれば製造して得られた直後であれば好適な性能を発揮すると思われるところ、実際に例えばタッチパネル等の透明電極として長期間用いようとするならば、透明導電薄膜の剥離等が生じるため、結局好適なものとは言えない。
【0015】
また特許文献2に記載された透明導電性フィルムであれば、金属酸窒化物薄膜層を設けることにより、これが特に有機物との密着力が良好であるため、透明導電層とプラスチックフィルムとの界面に存在すると密着力が向上する、とされている。
【0016】
しかしこの金属酸窒化物薄膜層を設けるためには、真空蒸着法やイオンプレーティング法等の、いわゆるドライコーティング法によらなければならず、係る手法を用いるのであれば、いわゆるウェットコーティング法に比べて生産コストが高くなり、また生産性それ自体も低くなる可能性が非常に高くなることが考えられる。さらに金属酸窒化物薄膜層を設けることで、得られる透明導電性フィルムの可撓性が不十分であることが考えられる。例えばこれをタッチパネルに用いた場合、可撓性が不十分であるが故に、長期間これを使用すると容易に破損してしまう可能性が高い、と考えられるのであり、結局のところ必ずしも好適なものとは言えないのである。
【0017】
そこで本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、いわゆるアンダーコート層を工夫することにより、長期間にわたり層間密着性を確保すると同時に、耐環境試験を実施しても試験後の性能劣化が生じない積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本願発明の請求項1に記載の発明は、基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、少なくともアンダーコート層と、特定機能を付与する特定機能層と、をこの順に積層してなる積層フィルムであって、前記アンダーコート層を形成する主たる素材が、加水分解基と有機官能基とを含有するシランカップリング剤であること、を特徴とする。
【0019】
本願発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の積層フィルムであって、前記有機官能基が、アミノ基、エポキシ基、又はアクリル基の何れか若しくは複数であること、を特徴とする。
【0020】
本願発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の積層フィルムであって、前記特定機能層が、金属、金属酸化物又は金属窒化物の何れか若しくは複数によるものであること、を特徴とする。
【0021】
本願発明の請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムであって、前記特定機能層が、透明導電性物質による層であること、を特徴とする。
【0022】
本願発明の請求項5に記載の発明は、請求項5に記載の積層フィルムであって、前記透明導電性物質が、酸化亜鉛、スズ−インジウム酸化物、酸窒化珪素、又は酸窒化インジウムの何れか若しくは複数であること、を特徴とする。
【0023】
本願発明の請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムであって、前記特定機能層が、ガスバリア性を有する層であること、を特徴とする。
【0024】
本願発明の請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の積層フィルムであって、前記特定機能層が、珪素又はアルミニウムの、酸化物又は窒化物、の何れか若しくは複数であること、を特徴とする。
【0025】
本願発明の請求項8に記載の発明は、請求項1又は請求項3に記載の積層フィルムであって、前記特定機能層が、アルミニウム又は銀の何れか若しくは双方であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本願発明に係る積層フィルムであれば、アンダーコート層を形成する主たる素材として、加水分解基と有機官能基とを含有するシランカップリング剤を主たる素材としたものとしたので、その両側に位置する高分子樹脂フィルムと特定機能層と、の間に良好な密着力を維持することが容易に可能となる。また係る特性を有したアンダーコート層としたことで、普通のいわゆる蒸着フィルムにおいて加熱がなされると、基材フィルムと積層物との熱膨張率の違いにより容易に積層物の剥離が生じてしまうところ、本願発に係る積層フィルムにであれば、熱が加えられた場合であっても、高分子フィルムの熱膨張をアンダーコート層がある程度吸収緩和できるだけの柔軟性を有しているので、高分子フィルムの膨張がそのまま直接積層物に伝わることがなく、よって高分子フィルムの熱膨張による積層物の剥離が生じず、結果として長期間にわたり安定した性能を発揮できる積層フィルムを容易に得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
本願発明に係る積層フィルムについて第1の実施の形態として説明する。
この第1の実施の形態に係る積層フィルムは、基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、少なくともアンダーコート層と、特定機能を付与する特定機能層と、をこの順に積層してなる構成を有してなる。以下、この特定機能層が、金属、金属酸化物又は金属窒化物の何れか若しくは複数によるものであり、さらに特定機能層が透明導電性物質による層であること、即ち本実施の形態に係る積層フィルムは透明導電性フィルムであるものとして説明をする。
【0029】
まず最初に基材フィルムであるが、これは通常利用されているプラスチックフィルムであってよく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のような透明フィルムであったり、後述のように本実施の形態に係る積層フィルムを反射フィルムとして用いるならば、その反射率を向上させるために白色PETフィルムといった白色のフィルムを用いることとしてもよく、さらにはオレフィン系フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエーテルサルフォン(PES)フィルム等の利用も考えられるが、本実施の形態では従来公知のPETフィルムを用いることとする。
【0030】
またこの基材となるプラスチックフィルムの厚みは特に限定するものではなく、例えば20μm以上400μm以下であることが望ましいが、これは400μm以上であると本実施の形態に係る反射フィルム全体の厚さを必要なまでに薄くすることが出来なくなるからであり、20μm以下であると本実施の形態に係る反射フィルムとするに際して基材フィルム自身が破損する、又は得られた反射フィルムが容易に破損する、得られた反射フィルムそのものに必要な「こし」が得られないので実際の使用に際しては柔らかすぎて殆ど使えないものとなってしまう、といった問題が生じやすくなるからである。
【0031】
次にこのプラスチックフィルムの表面に設けられるアンダーコート層につき説明する。
このアンダーコート層は、前述した基材フィルムと後述する蒸着層とが容易に剥離してしまわないこと、後述の蒸着層を水分や酸素等による腐食から保護すること、さらには本実施の形態に係る透明導電性フィルムが加熱された時に基材フィルムと蒸着層とが熱膨張率の違いから蒸着層が剥離、脱落しないようにすること、等を主たる目的として設けられるものである。尚、本実施の形態におけるアンダーコートには当然、それら以外の目的も有しているが、それらについては後述することとし、ここでは省略する。
【0032】
アンダーコート層の主材料につき説明する。
従来は例えば有機珪素化合物をアンダーコート層として用いていたが、本実施の形態では加水分解基と有機官能基とを含有するシランカップリング剤を主材料として用いる。加水分解基を含有することで、本実施の形態における積層物即ち透明導電層を構成する無機成分と結合しやすいアンダーコート層となり、また有機官能基を含有することで、本実施の形態におけるプラスチックフィルムと相互作用しやすいアンダーコート層とすることが出来る。
【0033】
特に基材となるプラスチックフィルムとの密着性を良好なものにするために、有機官能基がアミノ基、エポキシ基、又はアクリル基の何れか若しくは複数であることが好適である。さらに、加熱時における基材フィルムの熱膨張率に対し、これに積層される無機成分による透明導電層の熱膨張率は低いものであることが普通であるため、本実施の形態におけるアンダーコート層は、基材フィルムの熱膨張を緩和するような柔軟性を有したものがより好適であると言える。つまり、本実施の形態に係る積層フィルムを加熱した際、基材フィルムの熱膨張率と積層物の熱膨張率との差異が大きいと、基材フィルムの熱膨張に積層物が追従しきれず、双方の密着性が劣化し、やがて積層物が剥離してしまう、という現象が生じるが、これらの間に、基材フィルムの熱膨張率と積層物の熱膨張率との間になるような熱膨張率を有した層、即ち本実施の形態におけるアンダーコート層を積層しておけば、基材フィルムが加熱されて膨張してもアンダーコート層の熱膨張率とはさほど差異が存在しないのでこれらが剥離することがなく、またアンダーコート層の熱膨張率と積層物、即ち透明導電層の熱膨張率ともさほど差異が存在しないので、アンダーコート層が熱膨張してもこれに積層されている透明導電層が追従せずに剥離する、という現象が発生することを防止できるのである。
【0034】
そして発明者が種々検討した結果、特にオリゴマータイプのアクリル系シランカップリング剤が好適であることが判明したので、本実施の形態では、加水分解基も含有したオリゴマータイプのアクリル系シランカップリング剤をアンダーコート層の主材料として用いることとした。
【0035】
具体的には、モノマータイプのアクリル系シランカップリング剤と、エタノール、及び酢酸水溶液によりpH調整した水溶液を混合して、加水分解基を含有したオリゴマータイプのアクリル系シランカップリング剤を得た。
【0036】
これを前述の基材フィルムとなるPETフィルムの表面に積層する。積層する手法については特段制限をするものではなく、従来公知の手法であってよいが、本実施の形態では以下の通りとした。即ち、前述のシランカップリング剤を、バーコーター法によりPETフィルムの表面に塗布することで、アンダーコート層を積層した。尚、その厚みとしては10nm以上300nm以下であることが好ましく、さらに前述した基材フィルムの熱膨張を緩和させる目的を効果的に達するためには、15nm以上200nm以下とすることがより好ましい。
【0037】
またここでは詳述しないが、アンダーコート層と基材フィルムとの密着性をより向上させるために、アンダーコート層を積層するのに先立ち基材フィルム表面に対しプラズマ処理、コロナ処理、又は溶剤洗浄、等の前処理を施すことも考えられるが、ここでは特にこれらの処理は行わず、PETフィルム表面にバーコーター法によりアンダーコート層を積層したものとする。
【0038】
本実施の形態に係る積層フィルム、即ち透明導電性フィルムにおいて上述したように基材フィルムの表面にアンダーコート層を積層したら、さらにその表面に透明導電性を有する透明導電性層を積層する。この透明導電性層については金属、金属酸化物又は金属窒化物の何れか若しくは複数によるものであることが考えられ、さらに具体的には酸化亜鉛、スズ−インジウム酸化物、酸窒化珪素、又は酸窒化インジウムの何れか若しくは複数であること、が考えられる。当然、ここに述べた以外のものであっても透明導電性を有する物質を積層することにより透明導電性層とすることが可能であればそれでよく、特定の物質に限定するものではないが、本実施の形態においてはAZO(アルミニウムをドーピングした酸化亜鉛)を透明導電性層として積層するものとした。
【0039】
このAZOの積層方法については従来公知の手法によるものであってよく、例えば真空蒸着法やスパッタリング法等のいわゆるドライコーティング法と呼ばれる手法によって積層されてなるものである。そして本実施の形態ではスパッタリング法により従来公知の手法、手順でこれを積層してなるものとする。
【0040】
このようにして、本実施の形態に係る、PETフィルム/加水分解基を含有したオリゴマータイプのアクリル系シランカップリング剤によるアンダーコート層/AZOによる透明導電性層、という構成を有した透明導電性フィルムが得られる。これらを積層する手順については前述した通り、特段特殊な手法を用いることはなく、従来公知の手法により積層されるものである。そして得られた透明導電性フィルムは加水分解基を含有したオリゴマータイプのアクリル系シランカップリング剤によるアンダーコート層を積層してなることより、例えばこれをタッチパネルの透明電極として用いることにより長期的に熱が加えられることとなっても透明導電性層が剥離することがなく、長期間にわたりその機能を維持することが出来る。
【0041】
またシランカップリング剤において加水分解基が透明導電性層と、アクリル基がPETフィルムと、それぞれ密着性を向上させるために作用し、またそれらにより密着した状態を安定させるので、長時間高湿度な環境にさらされたとしても、層間密着力が劣化することなく維持されるので、やはり全体として長期間にわたりその機能を維持することが出来るものとなる。
【0042】
さらに上記のようなアンダーコート層を積層していることにより、PETフィルムとアンダーコート層と透明導電性層と、それぞれの熱膨張率が、PETフィルム、アンダーコート層、透明導電性層、の順に小さくなっているので、仮に加熱されることによりPETフィルムが急激に膨張したとしてもアンダーコート層はそれに追従可能であり、さらにアンダーコート層の膨張に対し透明導電性層は充分に追従可能であるので、この点においても層間剥離が生じない構成となっている、と言えるのである。
【0043】
(実施の形態2)
次に、先に説明した実施の形態とは異なり、特定機能層をガスバリア性を有するガスバリア層とした本願発明に係る積層フィルム、即ちガスバリアフィルムを第2の実施の形態として説明する。
【0044】
尚、第1の実施の形態と同様の事柄についてはその説明を省略する。
まず本実施の形態に係るガスバリアフィルム基本的な構成は同様であり、即ち基材フィルム/アンダーコート層/ガスバリア層、である。
【0045】
そして基材フィルムは同様にPETフィルムを、アンダーコート層として、やはり先の実施の形態と同様に加水分解基を含有したオリゴマータイプのアクリル系シランカップリング剤を用いることとするが、必ずしもこれに限定されるものではないことを予め断っておく。
【0046】
さて、ガスバリア層であるが、これに用いられる材料は例えば酸化珪素等のように従来公知のもの、例えば珪素やアルミニウムの酸化物や窒化物、さらにはこれらを複数用いたものであってよく、本実施の形態では酸化珪素による層であるものとする。
【0047】
この酸化珪素もやはり金属酸化物であり、本実施の形態に係るアンダーコート層が含有する加水分解基と結合しやすいものである。即ち酸化珪素を用いた場合であっても、やはりアンダーコート層との密着性は良好なものであると言える。
【0048】
酸化珪素の積層方法についても特段制限されるものではなく、従来公知の手法であってよい。さらにその厚みについても特段制限されるものではなく、従来と同等のガスバリア性を発揮できる厚みであれば問題ない。
【0049】
このように本願発明に係る積層フィルムをガスバリアフィルムとした場合であっても。基材フィルムとアンダーコート層、アンダーコート層と酸化珪素即ち金属酸化物、それぞれの関係は先の実施の形態における説明と同様であり、よって耐環境性能という観点からみて長期間にわたり性能を維持できるガスバリアフィルムを容易に得られるのである。
【0050】
(実施の形態3)
さらに別な実施の形態として、特定機能層を金属光沢を呈することが出来る層、即ち金属光沢層とした本願発明に係る積層フィルム、即ち反射フィルムとした場合について説明する。
【0051】
この反射フィルムとして、基材フィルム/アンダーコート層のさらに表面には通常銀又はアルミニウムが積層されることが多いものであり、本実施の形態では銀を積層してなるものとする。そして基材フィルム及びアンダーコート層は先の説明と同様とする。
【0052】
このように金属そのものを積層した場合であっても、やはりアンダーコート層に含有される加水分解基が結合しやすいものであるので、結果として前述した2つの実施の形態と同様に、やはり層間密着力等の関係が成立するのである。即ち、アンダーコート層とその表面に蒸着された銀層との間にも同様の関係がはたらき、結果として長期間、熱や湿度にさらされても層間剥離が生じない、換言するならば層間密着力を長期間にわたり維持できる反射フィルムを得ることが出来るのである。
【実施例】
【0053】
以下のようにして積層フィルムを作成し、それぞれの積層フィルムに対し耐環境性試験を行った。
【0054】
基材フィルムとして厚み188μmのPETフィルムを用いた。この積層フィルムの表面に表1に示す組成の塗液をバーコーターで塗布し、次いでこれを150℃で1分間乾燥することにより、乾燥膜厚20nmのアンダーコート層を積層した。その後、マグネトロン直流スパッタ装置のターゲットとしてAZOをセットし、真空チャンバーに上記アンダーコート層を形成した積層体をセットした。そしてチャンバー内を1×10−3Paまで排気した後、アルゴンガスを60cc/minの条件でチャンバー内に導入し、0.2Paとなるように調整した。そしてAZOターゲットに電圧を印加して、アンダーコート層上に厚みが140nmのAZO層を積層した。
【0055】
得られた積層フィルムに対し、耐環境性試験として次の試験を行った。
【0056】
1) 耐熱性試験
90℃乾燥機に積層フィルムを250時間放置した。
放置前後の積層フィルムにおける電気抵抗変化率と密着性とを測定した。
尚、密着性はJIS K 5400の規格に準じた方法で測定した。
【0057】
2) 耐湿熱試験
60℃−湿度95%の高温高湿槽に積層フィルムを250時間放置した。
放置前後の積層フィルムにおける電気抵抗変化率と密着性とを測定した。
尚、密着性はJIS K 5400の規格に準じた方法で測定した。
上記それぞれの試験に対し、電気抵抗値の変化率が20%未満の場合を良好とし、20%以上変化した場合は不良とした。
【0058】
尚、アンダーコート層に用いる材料は次の通りとした。
(実施例1〜3)
モノマータイプのシランカップリング剤と、エタノール及び酢酸水溶液によりpH調整をした水溶液と、を混合し、マグネットスタラ−を用いてこれを撹拌し、オリゴマータイプのシランカップリング剤を得た。尚、シランカップリング剤として、アクリル系シランカップリング剤と、アミノ系シランカップリング剤と、エポキシ系シランカップリング剤と、を用いた。
【0059】
(比較例1〜3)
モノマータイプのシランカップリング剤をそのままアンダーコート層として用いた。
【0060】
以上、 得られた結果を表に示す。








【0061】
【表1】

















【0062】
この表から分かるように、本発明に係る積層フィルムであれば、耐環境性試験後における電気特性の劣化や密着性の劣化という問題が生じることがなく、即ち耐環境性に優れた積層フィルムを得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、少なくともアンダーコート層と、特定機能を付与する特定機能層と、をこの順に積層してなる積層フィルムであって、
前記アンダーコート層を形成する主たる素材が、加水分解基と有機官能基とを含有するシランカップリング剤であること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の積層フィルムであって、
前記有機官能基が、アミノ基、エポキシ基、又はアクリル基の何れか若しくは複数であること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の積層フィルムであって、
前記特定機能層が、金属、金属酸化物又は金属窒化物の何れか若しくは複数によるものであること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムであって、
前記特定機能層が、透明導電性物質による層であること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項5】
請求項5に記載の積層フィルムであって、
前記透明導電性物質が、酸化亜鉛、スズ−インジウム酸化物、酸窒化珪素、又は酸窒化インジウムの何れか若しくは複数であること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3に記載の積層フィルムであって、
前記特定機能層が、ガスバリア性を有する層であること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の積層フィルムであって、
前記特定機能層が、珪素又はアルミニウムの、酸化物又は窒化物、の何れか若しくは複数であること、
を特徴とする、積層フィルム。
【請求項8】
請求項1又は請求項3に記載の積層フィルムであって、
前記特定機能層が、アルミニウム又は銀の何れか若しくは双方であること、
を特徴とする、積層フィルム。

【公開番号】特開2010−5817(P2010−5817A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164963(P2008−164963)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】