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積層フィルム
説明

積層フィルム

【課題】従来の接合方法では、ラミネート等の加工工程が煩雑であり、生産性が低く、高分子圧電膜の分極方向を同一にすることが困難であり、電圧を印加したときの変位量が不十分であるため、ラミネート工程等の煩雑な工程を必要とせずに、電圧印加時に十分な大きさの変位を生じる積層フィルムを提供する。
【解決手段】導電性を有する層Bの両面に、ポリ乳酸を主たる成分とする層Aを有し、各々の層Aを構成するポリ乳酸がいずれもL体であるか、またはいずれもD体である積層フィルムを、共押出法により得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。さらに詳しくは、電圧を印加することにより変位を生じる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子圧電材料としては、ポリγベンジルLグルタメート等のポリペプチド型のもの、ポリ塩化ビニル等のエレクトレット型のもの、ポリ弗化ビニリデン、弗化ビニリデン三弗化エチレン共重合体、ビニリデンシアナイド酢酸ビニル共重合体等の強誘電体型のものなど種々ある。最も代表的なものは強誘電体型のポリ弗化ビニリデンのフィルムであり、既に超音波探触子などに使用されている。また、ポリ乳酸の延伸物も、高分子圧電材料として知られている(特許文献1、2)。
このような高分子圧電材料を用いてバイモルフ構造を形成し、マイクロホン、ピックアップ、ブザー、スピーカー、光スイッチ、ファン等の振動体として用いられることが知られている(特許文献3)。
しかしながら、特許文献3に記載の発明は、高分子圧電膜を、接着剤を介して接合するものであり、ラミネート等の加工工程が煩雑であり、生産性が低いという問題がある。また、このような接合方法では、高分子圧電膜の分極方向を同一にすることが困難であり、電圧を印加したときの変位量が不十分であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−152638号公報
【特許文献2】特開2005−213376号公報
【特許文献3】特開昭59−115580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の目的は、電圧印加時に大きな変位を生じる積層フィルムを提供することにある。また本発明の目的は、ラミネート工程等の煩雑な工程を必要とせずに、該積層フィルムを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成を採用する。
1.導電性を有する層Bの両面に、ポリ乳酸を主たる成分とする層Aを有する積層フィルムであって、各々の層Aを構成するポリ乳酸がいずれもL体であるか、またはいずれもD体である、共押出法により得られた積層フィルム。
2.主配向方向の屈折率が1.45以上である上記1に記載の積層フィルム。
3.層Aの密度が1.24〜1.27g/cmである上記1または2に記載の積層フィルム。
4.層Bが、導電剤を含有する熱可塑性樹脂である上記1〜3のいずれか1に記載の積層フィルム。
5.導電剤がカーボン化合物である上記4に記載の積層フィルム。
6.カーボン化合物が、気相法によって得られるカーボン化合物である上記5に記載の積層フィルム。
また本発明は、以下の製造方法を包含する。
7.上記1に記載の積層フィルムを製造する方法であって、層Aを形成するためのポリ乳酸を主たる成分とする樹脂Aと、層Bを形成するための導電剤と熱可塑性樹脂とからなる樹脂Bとを、それぞれ別の押出機にて溶融し、次いで樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態にて、樹脂A/樹脂B/樹脂Aの層構成で積層し、ダイより押し出す積層フィルムの製造方法。
8.ダイより押し出した後、少なくとも一軸方向に1.1〜10倍に延伸し、ポリ乳酸の融点未満の温度で熱処理する上記7に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の積層フィルムは、電圧印加時に大きな変位を生じる。本発明の製造方法によれば、ラミネート工程等の煩雑な工程を経ずに、電圧印加時に十分な大きさの変位を生じる積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムは、ポリ乳酸を主たる成分とする層A、および導電性を有する層Bとを有し、層Bの両面に層Aが配置された積層構成を有する。また、層Bの両面に配置された各々の層Aを構成するポリ乳酸の立体配置は、いずれもL体であるか、またはいずれもD体である。かかる構成によって、電圧を印加した際に積層フィルムが湾曲し、変位が生じる。
【0008】
本発明においては、上記のような積層構成を有すれば、本発明の目的を阻害しない範囲において、さらに層Aや層Bを有していてもよいし、その他の層を有していても良い。例えば、片方または両方の層Aの外側に、かかる層Aとは立体配置の異なるポリ乳酸を主たる成分とする層を有することができ、変位量の向上効果を高くすることができる。また、片方または両方の層Aの外側に、さらに層Bを有することができ、さらにその外側に、層Aとは立体配置の異なるポリ乳酸を主たる成分とする層を有することができ、変位量の向上効果を高くすることができる。また、層Aと層Bとの間に、例えば層Aと層Bの密着力を高めるための層を有することができる。さらに、片方または両方の層Aの外側や、層Aと層Bとの間に、積層フィルムの剛性を高めるための、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのような芳香族ポリエステル層を有することができる。
なお、ここで「主たる」とは、各層全体の質量に対して、各層が含有するポリ乳酸が60質量%以上、好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であることを示す。
【0009】
本発明においては、上記のごとく電圧印加時に同方向に湾曲するように任意の積層構成にすることができるが、積層数を増やすことにより、変位の際に発生する応力が高くなる傾向にある。さらに、各層の厚みを薄くして積層数を増やすと、変位による応力がさらに高くなる傾向にある。
【0010】
[積層フィルムの特性]
(変位量)
本発明の積層フィルムは、電圧を印加することにより湾曲し、そのため片方の端部が固定されている場合においては反対側のもう片方の端部が変位する。本発明においては、後述する測定方法により求められる変位量が1mm以上であることが好ましい。変位量が大きいと、上述したような用途における振動体として用いた場合に、より性能に優れた振動体を得ることができる。このような観点から、変位量は、より好ましくは1.3mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上、特に好ましくは3mm以上である。
このような変位量を達成するためには、本発明の積層フィルムを共押出法により製造すればよい。共押出法を採用することにより、層Bの両面に配置する各々の層Aの主配向方向の同一性を高くすることができ、それにより変位量を大きくすることができる。また、変位量をより大きくするためには、さらに各層の厚み、配向の態様、結晶化度、密度等を適宜調整すればよい。例えば、配向、結晶化度、密度を高くすることによって、変位量は増加する傾向にある。また、層Bの導電性を高くすることによって、変位量を大きくすることができる。
【0011】
(各層の厚み)
本発明の積層フィルムにおいては、層Aの厚み(T(A))は、好ましくは1〜200μm、さらに好ましくは2〜150μm、特に好ましくは5〜60μmである。層Aの厚みが上記数値範囲にあると、変位量の向上効果を高くすることができる。
また、層Bの厚み(T(B))は、好ましくは1〜50μmである。層Bの厚みが上記数値範囲にあると変位量の向上効果を高くすることができる。また、積層フィルムとしての強度を高くすることができる。厚みが薄すぎる場合は、フィルムに腰がなくなる傾向にあり、他方、厚すぎる場合は、変位量の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、層Bの厚みは、さらに好ましくは5〜30μm、特に好ましくは10〜20μmである。
また、層Aと層Bの厚みの比率(T(A)/T(B))は、0.05〜19であることが好ましい。厚みは、各層が複数層の場合は、それぞれの合計の厚みを示す。厚みの比率が上記数値範囲にあると、変位量の向上効果を高くすることができる。このような観点から、厚みの比率は、0.2〜5がさらに好ましく、0.5〜2が特に好ましい。
【0012】
(主配向方向)
本発明の積層フィルムは、層Bの両面に配置する2つの層Aの主配向方向が実質的に同じである。ここで「主配向方向」とは、層Aの面内方向における最大配向方向のことを示す。また、「実質的に同じ」とは、各々の層Aの主配向方向の成す角度が10度以下、好ましくは5度以下、さらに好ましくは3度以下、特に好ましくは1度以下であることを示し、理想的には0度であることを示す。2つの層Aの主配向方向が実質的に同じであると、変位量を大きくすることができる。本発明においては、共押出法により積層フィルムを得ることにより、容易に、上記のような主配向方向の態様とすることができ、変位量が大きな積層フィルムを得ることができる。
【0013】
(屈折率)
本発明の積層フィルムは、主配向方向の屈折率が1.45以上であることが好ましい。屈折率が上記数値範囲にあると、変位量の向上効果を高くすることができる。屈折率が低い場合は、変位量の向上効果が低くなる傾向にあり、他方、屈折率が高い場合は変位量の向上効果は高くなる傾向にあるが、高すぎるとフィルムの機械特性に劣る傾向にある。このような観点から、主配向方向の屈折率は、より好ましくは1.45〜1.48、さらに好ましくは1.45〜1.47である。
【0014】
(密度)
本発明の積層フィルムにおいては、層Aの密度が1.24〜1.27g/cmであることが好ましい。密度が上記数値範囲にあると、変位量の向上効果を高くすることができる。密度が低い場合は、変位量の向上効果が低くなる傾向にあり、他方、密度が高い場合は、変位量の向上効果は高いもののフィルムの機械特性に劣る傾向にある。このような観点から、密度は、より好ましくは1.24〜1.26g/cm、さらに好ましくは1.245〜1.255g/cmである。
以下、本発明の積層フィルムを構成する各成分について説明する。
【0015】
[層A]
(ポリ乳酸)
本発明における層Aを構成するポリ乳酸(以下、PLAと省略する場合がある。)は、実質的にL−乳酸単位のみから構成されるポリL−乳酸(以下、PLLAと省略する場合がある。)や、L−乳酸とその他のモノマーとの共重合体や、実質的にD−乳酸単位のみから構成されるポリD−乳酸(以下、PDLAと省略する場合がある。)や、D−乳酸とその他のモノマーとの共重合体等であるが、特に、実質的にL−乳酸単位だけで構成されるポリL−乳酸、または実質的にD−乳酸単位だけで構成されるポリD−乳酸であることが好ましい。ここで「実質的に」とは、ポリL−(D―)乳酸におけるL−(D−)乳酸単位の量が90モル%以上であることを示す。
ポリL−(D−)乳酸におけるL−(D−)乳酸単位の量は、結晶性の観点、また変位量の向上効果を高くするという観点、およびフィルム耐熱性などの観点より、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%である。すなわち、L−(D−)乳酸単位以外の単位の含有量は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
【0016】
かかるポリ乳酸は、結晶性を有していることが好ましく、前述のような配向・結晶の態様とすることが容易となり、変位量の向上効果を高くすることができる。またその融点は150℃以上190℃以下であることが好ましく、160℃以上190℃以下であることがさらに好ましい。このような態様であるとフィルムの耐熱性に優れる。
本発明におけるポリ乳酸は、その重量平均分子量(Mw)が8万から25万の範囲であることが好ましく、10万から25万以下であることがより好ましい。とりわけ好ましくは12万から20万の範囲である。重量平均分子量Mwが上記数値範囲にあると、フィルムの剛性に優れ、またフィルムの厚み斑が良好になる。
【0017】
(共重合成分)
本発明で用いられるポリL−乳酸、ポリD−乳酸には、本発明の目的を損なわない範囲で所望により、L−乳酸、D−乳酸以外の共重合成分を含有させることができる。このとき、ポリ乳酸の結晶性を大きく損なわない範囲で含有させることが好ましい。かかる共重合成分は、特に限定されるものではないが、例えば、グリコール酸、カプロラクトン、ブチロラクトン、プロピオラクトンなどのヒドロキシカルボン酸類、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−プロパンジオール、1,5−プロパンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、炭素数が2から30の脂肪族ジオール類、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、炭素数2から30の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキノンなど芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸などから選ばれる1種以上のモノマーを選ぶことが出来る。
【0018】
(ポリ乳酸の製造方法)
ポリL−乳酸およびポリD−乳酸を製造する方法は特別に限定されるものではなく、従来公知の方法が好適に使用できる。例えば、L−乳酸またはD−乳酸を直接脱水縮合する方法、L−またはD−乳酸オリゴマーを固相重合する方法、L−またはD−乳酸を一度脱水環化してラクチドとした後、溶融開環重合する方法等が例示される。
なかでも、直接脱水縮合方法、あるいはラクチド類の溶融開環重合法により得られるポリ乳酸が、品質、生産効率の観点から好ましく、中でもラクチド類の溶融開環重合法が特に好ましく選択される。
これらの製造法において使用する触媒は、ポリ乳酸が前述した所定の特性を有するように重合させることができるものであれば特に限定されない。例えば、ラクチドの溶融開環重合触媒として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモンなどの脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート等が挙げられる。これらのうち、スズ、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、チタン、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウムおよび稀土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する触媒が好ましい(以下、かかる触媒を特定金属含有触媒と呼称する場合がある。)。
【0019】
かかる特定金属含有触媒としては、従来公知であり以下の化合物が例示される。すなわち、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ、スズメトキシド、スズエトキシド、スズブトキシド、酸化アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−イミン錯体四塩化チタン、チタン酸エチル、チタン酸ブチル、チタン酸グリコール、チタンテトラブトキシド、塩化亜鉛、酸化亜鉛、ジエチル亜鉛、三酸化アンチモン、三臭化アンチモン、酢酸アンチモン、酸化カルシウム、酸化ゲルマニウム、酸化マンガン、炭酸マンガン、酢酸マンガン、酸化マグネシウム、イットリウムアルコキシドなどが例示される。
これらのうち、触媒活性が良好であり、また副反応が少ないという観点から、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ等のスズ含有化合物、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムブトシキド、アルミニウム−イミン錯体等のアルミニウム含有化合物が好ましい。さらに好ましくは、ジエトキシスズ、ジノニルオキシスズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、塩化スズ、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムイソプロポキシドなどである。
【0020】
触媒の使用量は、ラクチド類1kgあたり0.42×10−4から100×10−4モルであり、さらに反応性、得られるポリラクチド類の色調、安定性の観点から、好ましくは1.68×10−4から42.1×10−4モル、特に好ましくは2.53×10−4から16.8×10−4モルである。
得られたポリL−乳酸およびポリD−乳酸は、従来公知の方法により、重合触媒を除去したり、失活剤を用いて重合触媒の触媒活性を失活、不活性化したりするのが、フィルムの溶融安定性、湿熱安定性のために好ましい。
失活剤を用いる場合、その使用量は、特定金属含有触媒の金属元素1当量あたり0.3から20当量、より好ましくは0.5から15当量、さらに好ましくは0.5から10当量、特に好ましくは0.6から7当量とすればよい。失活剤の使用量が少なすぎると、触媒金属の活性を十分に低下させることができないし、また過剰に使用すると、失活剤が樹脂の分解を引き起こす可能性があり好ましくない。
【0021】
[導電層(層B)]
本発明における層Bは導電性を有する。ここで「導電性を有する」とは、層Bの両面における表面抵抗値が、それぞれ10Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下であることを示す。
【0022】
本発明における導電性を有する層B(以下、導電層と呼称する場合がある。)は、その構成は特に限定されず、例えば、金属を主たる成分とする層であってもよいし、導電性を有する非金属を主たる成分とする層であってもよいし、導電性を有しない非金属を主たる成分として導電剤を有する層であってもよい。導電性を有しない非金属と導電剤とからなる層としては、例えば、樹脂と導電剤とからなる層が例示でき好ましく、本発明においては、熱可塑性樹脂と導電剤とからなる層であることが好ましく、フィルムの製造がより容易である。なお、ここで「主たる」とは、層B全体の質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であることを示す。このような範囲においては、金属を主たる成分とする層や、導電性を有する非金属を主たる成分とする層にも、導電剤や樹脂を添加することもできる。製膜性の観点からは、樹脂を、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜25質量%添加するとよい。
【0023】
熱可塑性樹脂としては、特に限定はされないが、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等を好ましく挙げることができる。中でも層Aとの共押出が容易であり、また耐熱性や熱寸法安定性のごとく熱特性や、強度や剛性のごとく機械特性に優れ、薄膜フィルムとしてもフィルムの腰が強く、またポリ乳酸との親和性に優れるという観点からアクリル樹脂が好ましく、アクリルエラストマーが好ましい。アクリルエラストマーを用いると層Aとの密着性に優れる。また、層Aとの密着性をより高めるという観点において、ポリ乳酸を、例えば5〜90質量%添加することができる。このようなアクリルエラストマーとしては、市販品を用いることもでき、例えばクラレプラスチックス株式会社製AC002を好ましく例示することができる。
これら樹脂の層Bにおける含有量は、好ましくは50〜99.9質量%、より好ましくは70〜99質量%、さらに好ましくは80〜97質量%、特に好ましくは90〜95質量%である。
【0024】
また、導電剤としては、樹脂に添加して導電性を示すものであれば限定はされないが、例えば、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンブラック、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、フラーレンなどのカーボン化合物、金、銀、銅、アルミニウムの等の金属、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、ITO等の金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン(またはそれにポリスチレンスルホン酸をドープしたもの)等の導電性高分子等を好ましく挙げることができる。金属や金属酸化物は、粒子の態様であると樹脂に添加しやすく好ましい。カーボン化合物は、気相法によって得られるカーボン化合物であることが好ましい。
【0025】
層Bにおける導電剤の含有量は、層Bの質量を基準として、0.1〜50質量%であることが好ましい。含有量が上記数値範囲にあると導電性に優れる。含有量が少なすぎる場合は、導電性に劣る傾向にある。他方、多すぎる場合は、導電性は高くなる傾向にあるものの、樹脂の粘度が高くなりすぎて押し出しが困難となる傾向にある。このような観点から、導電剤の含有量は、より好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは5〜10質量%である。
【0026】
[積層フィルムの製造方法]
本発明の積層フィルムは、層Aを形成するための樹脂Aと、層Bを形成するための金属を主たる成分とする組成物、金属酸化物を主たる成分とする組成物、または樹脂と導電剤とからなる組成物とを、それぞれ別々の押出機にて溶融し、それぞれの溶融樹脂や溶融金属を押出機内やダイ内において積層して押し出しする、いわゆる共押出法によって製造される。このような製造方法を採用することにより、層Bの両面に配置された各々の層Aの主配向方向が成す角度を小さくでき、それによって変位量を大きくすることができ、また生産性に優れる。
以下、層Bが熱可塑性樹脂と導電剤とからなる場合について、本発明の積層フィルムを共押出法により製造する好ましい方法の一例について説明する。なお、層Bが金属や金属酸化物を主たる成分とする場合においても、溶融条件や延伸条件を適宜調整することにより製造することができる。
【0027】
(押出工程)
まず、所望により後述するカルボキシル基封止剤、滑剤、その他の添加剤等を含有する、ポリL−乳酸またはポリD−乳酸を主たる成分とする樹脂A、および熱可塑性樹脂と導電剤とからなる樹脂Bを、それぞれ別々の押出機において溶融し、溶融状態で、樹脂A/樹脂B/樹脂Aの層構成で積層し、ダイから冷却ドラム上に押し出す。尚、押出機に供給する樹脂は、溶融時の分解を抑制するため、押出機供給前に乾燥処理を行い、水分含有量を100ppm以下程度にすることが好ましい。
押出機における樹脂温度は、樹脂が十分に流動性を有する温度、すなわち、樹脂Aの融点や樹脂Bの融点をTmとすると、それぞれ(Tm+20)から(Tm+50)(℃)の範囲で実施されるが、樹脂が分解しない温度で溶融押し出しするのが好ましく、かかる温度としては、好ましくは240〜300℃、さらに好ましくは245〜280℃、特に好ましくは250〜275℃である。上記温度範囲であると流動斑が発生しにくい。
【0028】
溶融樹脂は、従来公知の方法、例えばフィードブロックを用いる方法やマルチマニホールドダイを用いる方法等により積層される。かかる積層においては、層Aと層Bとかが必ずしも隣り合わせで接触している態様に限定されるものではない。例えば、層Aと層Bとの間にその他の層を有していても良いが、本発明においては、層Aを形成するための樹脂Aと、層Bを形成するための樹脂Bとが溶融状態で接触している態様を好ましい態様として挙げることができる。このような態様であると、層Aと層Bとの密着性が向上し、それにより変位量の向上効果を高くすることができる。
【0029】
(キャスティング工程)
ダイから押し出した後、フィルムを冷却ドラムにキャスティングして未延伸フィルムを得る。その際、静電密着法により電極より静電荷を印加させることによって冷却ドラムに十分に密着させて冷却固化するのが好ましい。この時、静電荷を印加する電極はワイヤー状或いはナイフ状の形状のものが好適に使用される。該電極の表面物質は白金であることが好ましく、フィルムより昇華する不純物が電極表面に付着するのを抑制することができる。また、高温空気流を電極或いはその近傍に噴きつけ電極の温度を170〜350℃に保ち、電極上部に排気ノズルを設置することにより不純物の付着を防ぐこともできる。
【0030】
(延伸工程)
前記で得られた未延伸フィルムは、必要に応じて一軸方向あるいは二軸方向に延伸して一軸延伸フィルムあるいは二軸延伸フィルムとする。かかる一軸延伸フィルムあるいは二軸延伸フィルムを得るには、未延伸フィルムを延伸可能な温度、例えば樹脂Aや樹脂Bのガラス転移点温度(Tg)以上(Tg+80)℃以下の温度に加熱して延伸する。
一軸延伸フィルムの場合は、機械軸方向(以下、縦方向または長手方向またはMDと呼称する場合がある。)に一軸延伸してもよいし、機械軸方向と垂直な方向(以下、横方向または幅方向またはTDと呼称する場合がある。)に一軸延伸してもよい。延伸倍率は、好ましくは1.1〜10倍、より好ましくは1.1〜7倍である。延伸倍率を上記数値範囲とすることによって変位量の向上効果を高くすることができる。延伸倍率が高い場合は、フィルムの機械特性が劣る傾向にあり、他方低い場合は、変位量の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、延伸倍率は、さらに好ましくは1.2〜6、特に好ましくは2〜5である。
【0031】
また、二軸延伸フィルムの場合は、縦方向の延伸倍率(以下、縦延伸倍率と呼称する場合がある。)は、好ましくは1.1〜10倍、より好ましくは1.1〜7倍である。また、横方向の延伸倍率(以下、横延伸倍率と呼称する場合がある。)は1.1〜10倍、好ましくは1.1〜7倍である。延伸倍率を上記数値範囲とすることによって、本発明における好ましい配向の態様とすることができ、変位量の向上効果を高くすることができる。縦および/または横方向の延伸倍率が高い場合は、フィルムが破断しやすくなる傾向にあり、生産性に劣る場合があり、他方、低い場合は、好ましい配向の態様とすることが困難となる傾向にあり、変位量の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、縦延伸倍率は、さらに好ましくは1.1〜6倍、特に好ましくは1.1〜4.5倍である。また、横延伸倍率は、さらに好ましくは1.1〜5.5倍、特に好ましくは1.1〜4.5倍である。さらに、縦延伸倍率と横延伸倍率の差が、好ましくは1倍以上、さらに好ましくは2倍以上、特に好ましくは2.5倍以上であると、本発明における好ましい配向の態様とすることが容易となり、変位量の向上効果を高くすることができる。
なお、二軸延伸は、逐次二軸延伸であってもよいし、同時二軸延伸であってもよい。また、二軸延伸後に、さらに縦方向あるいは横方向の一軸方向に、あるいは縦方向および横方向の二軸方向に再延伸することもできる。
【0032】
(熱処理工程)
上記で得られた未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムは、熱処理することが好ましい。熱処理温度は、樹脂Aまたは樹脂Bの融点未満の温度であり、好ましくは50〜160℃であり、変位量の向上効果を高くすることができる。熱処理温度が低い場合は、変位量の向上効果が低くなる傾向にあり、他方、高い場合は、フィルムの平面性や機械特性に劣る傾向にあり、また変位量の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、熱処理温度は、さらに好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜130℃である。また、熱処理時間は、好ましくは1〜120秒、さらに好ましくは2〜60秒であり、変位量の向上効果を高くすることができる。
【0033】
さらに本発明においては、熱処理工程において弛緩処理して、熱寸法安定性を調整することも可能である。
かくして得られた本発明の積層フィルムは、所望により従来公知の方法で、例えば表面活性化処理、例えばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施すことも可能である。また、フィルムを製造する工程において所謂インラインコーティング法により、あるいはフィルムを製造した後に所謂オフラインコーティング法により、易滑層、易接着層、離型層等のコーティング層を設けても良い。
【0034】
[層Aおよび/または層Bに添加しても良い成分]
(カルボキシル基封止剤)
本発明の積層フィルムは、カルボキシル基量は10当量/10g以下であることが、フィルムキャスティング時の安定性、加水分解抑制、重量平均分子量低下抑制の観点から好ましく、このような観点から、カルボキシル基量は5当量/10g以下であることがさらに好ましく、2当量/10g以下であることが特に好ましい。このような態様とするために、本発明においては、用途に応じて層Aおよび/または層Bにカルボキシル基封止剤を配合することが好ましい。カルボキシル基封止剤は、ポリ乳酸等のポリエステルの末端カルボキシル基の封止に加え、ポリエステルや各種添加剤の分解反応で生成するカルボキシル基、乳酸、ギ酸などの低分子化合物のカルボキシル基を封止し樹脂を安定化することができ、フィルム化時の樹脂温度を、流動斑を抑えるに足る温度まで昇温できる利点ももたらす。
【0035】
かかるカルボキシル基封止剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、イソシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、なかでもカルボジイミド化合物が好ましい。
カルボキシル基封止剤の使用量は、層Aまたは層Bの各層を構成するポリ乳酸100質量部あたり、0.01〜10質量部が好ましく、0.03〜5質量部がさらに好ましい。本発明においては、さらに封止反応触媒を使用してもよい。
【0036】
(滑剤)
本発明の積層フィルムにおいては、フィルムの巻き取りや走行性を改良する目的で積層フィルム中に滑剤を含有することができる。
かかる滑剤としては、例えば乾式法で製造されたシリカ、湿式法で製造されたシリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、カオリナイト、クレイ、タルク、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、水酸化アルミニウム、酸化カルシウム、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、炭化珪素、酸化スズ等の無機粒子や、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等の有機微粒子を好ましく挙げることができる。
滑剤としては、平均粒径が0.001〜5.0μmの微粒子が好ましく、1種類で使用することもできるし2種類以上併用することも可能である。また滑剤は、層Aまたは層Bの各層の質量に対して、0.01〜0.5質量%の範囲で配合することができる。
【0037】
(樹脂成分)
本発明における層Aには、耐熱性を付与する目的において、ポリ乳酸よりも高融点の樹脂成分を含有することができる。
かかる樹脂成分は、ポリ乳酸よりも、融点が3℃以上高いことが好ましく、耐熱性の向上効果を高くすることができる。このような観点から、樹脂成分の融点は、ポリ乳酸よりも5℃以上高いことがさらに好ましく、10℃以上高いことが特に好ましい。
かかる樹脂成分としては、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリスチレン等を好ましく挙げることができる。
【0038】
樹脂成分の含有量は、各層の質量を基準として、10〜50質量%であることが好ましい。含有量が上記数値範囲にあると、優れた変位量を保持したまま、優れた耐熱性を付与することができる。含有量が少なすぎる場合は、耐熱性の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、樹脂成分の含有量は、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。他方、含有量が多すぎる場合は、各層の圧電性が低くなる傾向にあり、変位量の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、樹脂成分の含有量は、さらに好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
層Aに樹脂成分を含有させる方法は特に限定されず、例えば層Aを構成するポリ乳酸のペレットと、樹脂成分のペレットとをあらかじめ混合したペレットの混合体を得て、かかる混合体を押出機に投入して、押出機内でポリ乳酸と樹脂成分とを溶融混練することができる。
【0039】
(その他の添加剤)
また、層Aおよび/または層Bには、本発明の趣旨に反しない範囲において、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、蛍光蒼白剤、可塑剤、架橋剤、紫外線吸収剤、その他の樹脂等を必要に応じて添加することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。なお、実施例中の各値は以下の方法に従って求めた。
【0041】
(1)変位量
サンプルの両面に、表面抵抗値が約100Ω/□となるような厚みでアルミ蒸着を施して電極を形成し、10mm(主配向方向に垂直方向)×40mm(主配向方向)に切り出した。次いで、切り出したサンプルを水平に、短辺の片方を固定し、両表面と層Bにそれぞれ電極を接続して、両表面とB層の電荷が逆になるように25V(Vpp)周波数15Hzで電圧印加し、スケールを用いてもう一辺の短辺の変位量を実測した。
(2)屈折率
Metricon社製のレーザー屈折率測定装置を用い、プリズムカプラ(633nm)波長で測定した。プリズムに密着させたサンプルに、プリズムを通じてレーザー光を入射し、プリズムを回転させてサンプルへの入射角を変える。サンプル表面で反射した光を測定し、光量の入射角依存をモニターし臨界角に相当する屈折率を求めた。
(3)密度
積層フィルムから層Aの樹脂をナイフで削り取り、JIS規格 C2151に準じて測定した。
(4)ガラス転移点温度(Tg)、融点(Tm)
サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(TAinstruments社製商品名「DSC2920」)に装着し、25℃から20℃/分の速度で250℃まで昇温させ、250℃で5分間保持した後、取出し、直ちに氷の上に移して急冷する。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から10℃/分の速度で昇温させてガラス転移点温度(Tg:℃)および融点(Tm:℃)を測定した。
(5)主配向方向
フィルムの面内において、0°(MD)〜90°(TD)〜180°として、5°ピッチで、上記(2)で記載の方法で面内の屈折率を測定し、最も屈折率の高い方向を主配向方向とした。これを両面について測定し、それぞれの面における主配向方向の角度差を「なす角度」とした。
(6)導電性(表面抵抗値)
三菱化学社製、商品名:Lorester MCP−T600を用いて、JIS K7194に準拠して測定した。測定は、1つのフィルムから3つの測定用サンプル片を採取し、それぞれ任意の5箇所について実施し、それらの平均値を表面抵抗値(単位:Ω/□)とした。これをフィルムの表裏について実施した。
【0042】
[参考例1]ラクチドの溶融開環重合によるポリL−乳酸(PLLA)の合成
真空配管および窒素ガス配管、触媒、L−ラクチド溶液添加配管、アルコール開始剤添加配管を具備したフルゾーン翼具備縦型攪拌槽(40L)を窒素置換した。その後、L−ラクチド30Kg、ステアリルアルコール0.90kg(0.030モル/kg)、オクチル酸スズ6.14g(5.05×10−4モル/1kg)を仕込み、窒素圧106.4kPaの雰囲気下、150℃に昇温した。内容物が溶解した時点で、攪拌を開始、内温をさらに190℃に昇温した。内温が180℃を超えると反応が始まるため、冷却しながら内温を185℃から190℃に保持し1時間反応を継続した。さらに攪拌しつつ、窒素圧106.4kPa、内温200℃から210℃で1時間反応を行なった後、攪拌を停止しリン系の触媒失活剤を添加した。
【0043】
さらに20分間静置して気泡除去をおこなった後、内圧を窒素圧で2から3気圧に昇圧し、プレポリマーをチップカッターに押し出し、重量平均分子量13万、分子量分散1.8のプレポリマーをペレット化した。
さらに、ペレットを押出機で溶解させ、無軸籠型反応装置に15kg/hrで投入し、10.13kPaに減圧して残留するラクチドを低減処理し、それを再度チップ化した。得られたポリL−乳酸(PLLA)は、ガラス転移点温度(Tg)55℃、融点(Tm)175℃、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005質量%であった。
【0044】
[参考例2]ラクチドの溶融開環重合によるポリD−乳酸(PDLA)の合成
また、L−ラクチドの代わりにD−ラクチドを使用する以外は上記と同様にして、ガラス転移点温度(Tg)55℃、融点(Tm)175℃、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005質量%のポリD−乳酸(PDLA)を得た。
【0045】
[参考例3]ステレオコンプレックスポリ乳酸(scPLA)樹脂の製造
参考例1で得られたポリL−乳酸と、参考例2で得られたポリD−乳酸とを、各50質量部とリン酸エステル金属塩((株)ADEKA製「アデカスタブ」NA−71)0.1質量部をブレンダーで混合し、温度110℃で5時間真空乾燥した後、シリンダー温度250℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練後、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化して、ステレオコンプレックス結晶化度100%、融点(Tm)216℃の、ステレオコンプレックスポリ乳酸(scPLA)樹脂を得た。
【0046】
[実施例1]
参考例1で得られたPLLAを、乾燥機を用いて十分に乾燥させた後、押出機に投入し、210℃で溶融して、溶融状態の樹脂Aとした。また、アクリルエラストマー(クラレプラスチックス製、商品名AC002)93質量部に、気相法により製造されたカーボンファイバー(昭和電工製、商品名VGCF−X)を7質量部添加した混合物を、乾燥機を用いて十分に乾燥させた後、別の押出機に投入し、230℃で溶融して、溶融状態の樹脂Bとした。次いで、それぞれの溶融樹脂をフィードブロックを用いてダイ内部にて合流させ、樹脂A/樹脂B/樹脂Aの積層構成で積層し、ダイより押し出して3層シート状に成形し、かかるシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムを得た。
【0047】
得られた未延伸フィルムを、75℃に加熱したロール群に導き、縦方向に1.1倍に延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、80℃に加熱された雰囲気中で横方向に4.0倍に延伸した。その後テンター内で110℃の温度条件で30秒間の熱処理を行い、次いで100℃で1%幅方向に熱弛緩した後、均一に徐冷して室温まで冷やして15μm厚みの二軸配向3層積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を表1に示す。
【0048】
[実施例2〜6]
用いる樹脂、導電剤、製膜条件、フィルムの厚みを表1に示すとおりとした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を表1に示す。
【0049】
[実施例7]
実施例1において、層Aを形成する樹脂として、参考例1で得られたPLLA90質量部に、参考例3で得られたステレオコンプレックスポリ乳酸(scPLA)樹脂を10質量部添加した混合物を用いた以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの物性を表1に示す。
実施例1〜7で得られた積層フィルムを、85℃のオーブンにて30分保管したところ、実施例1〜6で得られた積層フィルムは若干シワの発生が見られたが、実施例7で得られた積層フィルムはよりシワの発生が少なく、耐熱性が良好であった。
【0050】
[比較例1]
参考例1で得られたPLLAを、乾燥機を用いて十分に乾燥させた後、押出機に投入し、210℃で溶融し、溶融樹脂をダイより押し出して単層のシート状に成形し、かかるシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、75℃に加熱したロール群に導き、縦方向に1.1倍に延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、80℃に加熱された雰囲気中で横方向に4倍に延伸した。その後テンター内で110℃の温度条件で30秒間の熱処理を行い、次いで100℃で1%幅方向に熱弛緩した後、均一に徐冷して室温まで冷やして12μm厚みの二軸配向ポリL−乳酸単層フィルムを得た。
【0051】
次に、アクリルエラストマー(クラレプラスチックス製、商品名AC002)93質量部に、気相法により製造されたカーボンファイバー(昭和電工製、商品名VGCF−X)を7質量部添加した混合物を、乾燥機を用いて十分に乾燥させた後、押出機に投入し、230℃で溶融し、溶融樹脂をダイより押し出して単層シート状に成形し、かかるシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、バッチ延伸機により、80℃で縦方向に1.1倍、横方向に4倍に同時に延伸した。その後、延伸後のフィルムを木枠を用いて固定して、オーブンに投入し110℃の温度条件で30秒間の熱処理を行い、次いで室温まで冷やして15μm厚みの二軸配向導電性単層フィルムを得た。
得られたこれらのフィルムを用いて、エポキシ系粘着剤を20μm厚みで塗布し、温度120℃、圧力2atmで1分間の条件にてラミネート処理により貼り合わせ、二軸配向ポリL−乳酸単層フィルム/二軸配向導電性単層フィルム/二軸配向ポリL−乳酸単層フィルムの3層構成の積層フィルムを得た。この際、表裏それぞれのポリL−乳酸単層フィルムの主配向方向の成す角度が15度となるようにした。得られた積層フィルムの特性を表1に示す。
【0052】
[比較例2]
実施例1において、樹脂A、および樹脂Bに加えて、さらに参考例2で得られたPDLAを、乾燥機を用いて十分に乾燥させた後、押出機に投入し、210℃で溶融して、溶融状態の樹脂A’として、ドラム側面に樹脂A/内層に樹脂B/空気側面に樹脂A’の積層構成とする以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を表1に示す。なお、ここでドラム側面は、ダイより押し出して冷却ドラムに接触する側の面を示し、空気側面は、その反対側の面を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
層Bの導電性については、比較例1で得られた二軸配向導電性単層フィルムの表裏について表面抵抗値を測定し、その値を各実施例および比較例における層Bの導電性評価結果とした。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、電圧印加により湾曲して変位を示すような積層フィルムを容易に得ることができる。また、かかる積層フィルムは変位量が大きいため、マイクロホン、ピックアップ、ブザー、スピーカー、光スイッチ、ファン等の振動体として用いた場合は、より優れた性能のものとすることができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する層Bの両面に、ポリ乳酸を主たる成分とする層Aを有する積層フィルムであって、各々の層Aを構成するポリ乳酸がいずれもL体であるか、またはいずれもD体である、共押出法により得られた積層フィルム。
【請求項2】
主配向方向の屈折率が1.45以上である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
層Aの密度が1.24〜1.27g/cmである請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
層Bが、導電剤を含有する熱可塑性樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
導電剤がカーボン化合物である請求項4に記載の積層フィルム。
【請求項6】
カーボン化合物が、気相法によって得られるカーボン化合物である請求項5に記載の積層フィルム。
【請求項7】
請求項1に記載の積層フィルムの製造方法であって、層Aを形成するためのポリ乳酸を主たる成分とする樹脂Aと、層Bを形成するための導電剤と熱可塑性樹脂とからなる樹脂Bとを、それぞれ別の押出機にて溶融し、次いで樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態にて、樹脂A/樹脂B/樹脂Aの層構成で積層し、ダイより押し出す積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
ダイより押し出した後、少なくとも一軸方向に1.1〜10倍に延伸し、ポリ乳酸の融点未満の温度で熱処理する請求項7に記載の製造方法。


【公開番号】特開2012−153023(P2012−153023A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14350(P2011−14350)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【Fターム(参考)】