説明

積層フィルム

【課題】本発明の目的は、液晶表示装置の表示均一性を改善し得る積層フィルムを提供することである。さらに、液晶セルとの接着性に優れ、且つ、軽剥離性に優れる積層フィルムを提供することである。
【解決手段】偏光板と、位相差フィルムと、第1の粘着剤層とを少なくともこの順に備え、該偏光板は、偏光子と、該偏光子の位相差フィルムを備える側に配置された第1の保護層と、該偏光子の位相差フィルムを備える側とは反対側に配置された第2の保護層とを含み、該位相差フィルムは、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムであり、該第1の粘着剤層は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、ジアリルパーオキサイド類の過酸化物を主成分とする架橋剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含む、積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板と位相差フィルムと粘着剤層とを有する積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型、軽量、低消費電力などの特徴が注目され、携帯電話や時計などの携帯機器、パソコンモニターやノートパソコンなどのOA機器、ビデオカメラや液晶テレビなどの家庭用電気製品等に広く普及している。従来、液晶表示装置には、偏光板と位相差フィルムとを積層した積層フィルムが用いられている。例えば、インプレーンスイッチング(IPS)方式の液晶セルの片側に、偏光板と、屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を有する位相差フィルムとが積層された積層フィルムを配置して、斜め方向のコントラスト比を向上させる方法が開示されている(特許文献1参考)。しかしながら、従来の積層フィルムを用いて得られる液晶表示装置は、例えば、黒画像を表示した画面を斜め方向から見た場合に、見る方向によって色が大きく変化したり(カラーシフト量が大きいともいう)、ある時間バックライトを点灯していると、画面に光学的なムラが発生したりするという不具合が発生していた。
【0003】
通常、積層フィルムは、粘着剤層を介して、液晶セルに貼着される。ところが、従来の積層フィルムは、液晶セルから積層フィルムを剥離することが困難であったり、積層フィルムを剥離した後、積層フィルムを構成する部材(位相差フィルムや粘着剤層)が液晶セルの表面に残留したりするという不具合が発生していた。一般的に、液晶表示装置は、出荷前に検査が行われる。このとき、積層フィルム自体に欠陥があったり、積層フィルムと液晶セルとの間に異物が混入していたりする場合、液晶セルを再利用するために、当該積層フィルムは剥離される(リワークともいう)。理想的には、積層フィルムは、高温,多湿の環境下でも、剥がれや気泡が発生しないように、液晶セルに接着しなければならないが、一方で、液晶セルを再利用する場合には、セルギャップが変化したり、破損したりすることがないように、液晶セルから剥がれやすくしなければならない。従来の技術においては、このような、相反する性質を両立させることは困難であった。このため、かかる課題が解決された積層フィルムが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−305217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、液晶表示装置の表示均一性を改善し得る積層フィルムを提供することである。さらに、液晶セルとの接着性に優れ、且つ、軽剥離性に優れる積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示す積層フィルムにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の積層フィルムは、偏光板と、位相差フィルムと、第1の粘着剤層とを少なくともこの順に備え、
該偏光板は、偏光子と、該偏光子の位相差フィルムを備える側に配置された第1の保護層と、該偏光子の位相差フィルムを備える側とは反対側に配置された第2の保護層とを含み、
該位相差フィルムは、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムであり、
該第1の粘着剤層は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、過酸化物を主成分とする架橋剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含む。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記第1の保護層および/または前記第2の保護層が、セルロース系樹脂を含有する高分子フィルムである。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記第1の保護層が、実質的に光学的に等方性を有する。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記第1の保護層の屈折率楕円体が、nx≒ny≧nzの関係を有する:
ただし、上記nx、nyおよびnzは、それぞれ遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率、および厚み方向の屈折率である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記位相差フィルムの屈折率楕円体が、nx>nz>nyの関係を有する:
ただし、上記nx、nyおよびnzは、それぞれ遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率、および厚み方向の屈折率である。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記位相差フィルムのRe[590]が80nm〜350nmである:
ただし、上記Re[590]は、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値である。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記位相差フィルムのNz係数が0.1〜0.7である:
ただし、上記Nz係数は、式;Rth[590]/Re[590]から算出される値であり、Re[590]およびRth[590]は、それぞれ、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値および厚み方向の位相差値である。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記位相差フィルムの23℃における波長590nmの光で測定した光弾性係数の絶対値が1×10-12〜10×10-12である。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記第1の粘着剤層の23℃におけるガラス板に対する接着力(F1A)が、2N/25mm〜10N/25mmである:
ただし、上記接着力は、ガラス板に25mm幅の積層フィルムを、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養生後、かかる積層フィルムを90度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度である。
【0016】
好ましい実施形態においては、上記第1の粘着剤層の23℃における位相差フィルムに対する投錨力(F1B)が、10N/25mm〜40N/25mmである:
ただし、上記投錨力は、インジウムスズ酸化物を蒸着処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの処理面に、25mm幅の粘着剤層と位相差フィルムとの積層体を、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養成後、かかるポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層ごと180度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度である。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記第1の粘着剤層の23℃における位相差フィルムに対する投錨力(F1B)と、該第1の粘着剤層の23℃におけるガラス板に対する接着力(F1A)との差(F1B−F1A)が、5N/25mm以上である:
ただし、上記投錨力は、インジウムスズ酸化物を蒸着処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの処理面に、25mm幅の粘着剤層と位相差フィルムとの積層体を、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養成後、かかるポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層ごと180度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度であり、上記接着力は、ガラス板に25mm幅の積層フィルムを、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養生後、かかる積層フィルムを90度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度である。
【0018】
好ましい実施形態においては、上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーが、炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーと、少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとの共重合体である。
【0019】
好ましい実施形態においては、上記過酸化物を主成分とする架橋剤の配合量(重量比)が、前記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対して0.01〜1.0である。
【0020】
好ましい実施形態においては、上記第1の粘着剤層が、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、過酸化物を主成分とする架橋剤と、イソシアネート基を有する化合物と、シランカップリング剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含み、
該イソシアネート基を有する化合物の配合量(重量比)が、該(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対して0.005〜1.0であり、
該シランカップリング剤の配合量(重量比)が、該(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対して0.001〜2.0である。
【0021】
好ましい実施形態においては、上記粘着剤のガラス転移温度(Tg)が−70℃〜−10℃である。
【0022】
好ましい実施形態においては、上記粘着剤の水分率が1.0%以下である。
【0023】
好ましい実施形態においては、上記偏光板と前記位相差フィルムとの間に第2の粘着剤層をさらに備え、
該第2の粘着剤層が、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤と、シランカップリング剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含む。
【0024】
本発明の別の局面によれば、液晶パネルが提供される。この液晶パネルは、上記積層フィルムと液晶セルとを少なくとも備える。
【0025】
本発明の別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、上記液晶パネルを含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明の積層フィルムは、位相差フィルムとして、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムを用いることによって、歪によって光学的なムラが生じ難く、表示均一性に優れた液晶表示装置を得ることができる。上記位相差フィルムの屈折率楕円体が、nx>nz>nyの関係を有する場合には、斜め方向の光漏れと斜め方向のカラーシフトが、従来の液晶表示装置に比べて格段に小さい液晶表示装置を得ることができる。さらに、本発明の積層フィルムは、粘着剤層として、特定の組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を用いることによって、位相差フィルムと強固に接着させることができる。また、液晶セルの基板(ガラス板)に対しては、高温,多湿の環境下でも剥がれや気泡が発生することなく、実用上十分な接着力と接着時間を得ることができる。一方、本発明の積層フィルムは、液晶セルから剥離して液晶セルを再利用するときは、液晶セルの表面に粘着剤層や位相差フィルムが残留することもなく、軽い力で剥離することができる。したがって、液晶セルのセルギャップが変化したり、基板が破損したりすることがなく、液晶表示装置の生産性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の好ましい実施形態による積層フィルムの概略断面図である。
【図2】本発明に用いられる偏光子の代表的な製造工程の概念を示す模式図である。
【図3】本発明に用いられる位相差フィルムの代表的な製造工程の概念を示す模式図である。
【図4】本発明に用いられる第1の粘着剤層の代表的な製造工程の概念を示す模式図である。
【図5】本発明の1つの実施形態による積層フィルムの概略断面図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。
【図7】本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。
【図8】参考例1〜12で得られた位相差フィルムの面内の位相差値Re([590])と、Nz係数との関係を示すグラフである。
【図9】参考例1〜12で得られた位相差フィルムの面内の位相差値Re([590])と、厚み方向の位相差値(Rth[590])との関係を示すグラフである。
【図10】実施例3および比較例3の液晶表示装置の極角60°、方位角0°〜360°のY値を示すグラフである。
【図11】実施例3および比較例3の液晶表示装置の極角60°、方位角0°〜360°のΔa**値を示すグラフである。
【図12】実施例4の積層フィルムを剥離した後の、ガラス板の表面の写真である。
【図13】比較例4の積層フィルムを剥離した後の、ガラス板の表面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
A.積層フィルム全体の概略
図1は、本発明の好ましい実施形態による積層フィルムの概略断面図である。なお、見やすくするために、図1における、各構成部材の縦、横および厚みの比率は実際とは異なって記載されていることに留意されたい。この積層フィルム10は、偏光板20と、位相差フィルム30と、第1の粘着剤層41とを少なくともこの順に備える。偏光板20は、偏光子21と、偏光子21の位相差フィルム30を備える側に配置された第1の保護層22と、偏光子21の位相差フィルム30を備える側とは反対側に配置された第2の保護層23とを含む。位相差フィルム30は、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムである。第1の粘着剤層41は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、過酸化物を主成分とする架橋剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含む。このような積層フィルムは、液晶表示装置に用いた際に、歪によって光学的なムラが生じ難く、優れた表示均一性を得ることができる。また、高温,多湿の環境下でも、剥がれや気泡が発生することなく、実用上十分な接着力と接着時間を得ることができる。一方で、液晶セルから剥離する際には、軽剥離性(リワーク性ともいう)に優れるという特徴を有する。
【0029】
本発明において、位相差フィルム30と第1の保護層22との間、第1の保護層22と偏光子21との間、および偏光子21と第2の保護層23との間には、任意の接着層(図示せず)が配置され得る。本明細書において「接着層」とは、隣り合う光学部材の面と面とを接合し、実用上十分な接着力と接着時間で、一体化させるものをいう。上記接着層の具体例としては、接着剤層、粘着剤層、およびアンカーコート層などが挙げられる。上記接着層は、被着体の表面にアンカーコート層が形成され、その上に接着剤層または粘着剤層が形成されたような多層構造であってもよいし、肉眼的に認知できないような薄い層(ヘアーラインともいう)であってもよい。
【0030】
実用的には、第1の粘着剤層41の位相差フィルム30を備える側とは反対側には、剥離ライナー(図示せず)が配置され得る。また、第2の保護層23の偏光子21を備える側とは反対側には、表面保護フィルム(図示せず)が配置され得る。上記剥離ライナーおよび表面保護フィルムは、積層フィルムが、製造工程や搬送中に、汚れたり傷ついたりするのを防ぐために使用される。したがって、上記剥離ライナーおよび表面保護フィルムは、積層フィルムが実用に供される前に、通常、剥離される。
【0031】
上記積層フィルムの厚みは、好ましくは100μm〜600μmであり、さらに好ましくは200μm〜400μmである。積層フィルムの厚みを上記の範囲とすることによって、機械的強度に優れるものが得られ得る。
【0032】
なお、本発明の積層フィルムは、上記の実施形態に限定されない。例えば、図1に示した各構成部材の間には、他の構成部材が配置され得る。以下、本発明の積層フィルムの構成する各部材および各層の詳細について説明する。
【0033】
B.偏光板
図1を参照すると、本発明に用いられる偏光板20は、偏光子21と、偏光子21の位相差フィルム30を備える側に配置された第1の保護層22と、偏光子21の位相差フィルム30を備える側とは反対側に配置された第2の保護層23を含む。なお、上記偏光板20の、第1の保護層22および第2の保護層23は、それぞれ同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0034】
好ましくは、上記偏光板20は、偏光子21と第1の保護層22との間、および偏光子21と第2の保護層23との間に、それぞれ接着層(図示せず)を設け、それぞれの保護層と偏光子とが貼着される。このように偏光子を保護層で挟持することによって、機械的強度に優れる偏光板が得られ得る。さらに、高温,多湿の環境下でも、偏光子が膨張または収縮するのを防ぎ、結果として、光学特性に優れる偏光板が得られ得る。
【0035】
上記偏光板の厚みは、好ましくは45μm〜250μmであり、さらに好ましくは70μm〜220μmである。偏光板の厚みを上記の範囲とすることによって、機械的強度に優れるものが得られ得る。
【0036】
上記偏光板の23℃で測定した波長550nmの透過率(単体透過率ともいう)は、好ましくは40%以上、さらに好ましくは42%以上である。なお、単体透過率の理論上の上限は50%であり、実現可能な上限は46%である。
【0037】
上記偏光板の偏光度は、好ましくは99.8%以上、さらに好ましくは99.9以上である。なお、偏光度の理論上の上限は100%である。単体透過率および偏光度を上記の範囲とすることによって、正面方向の光漏れが小さい(結果として、コントラストが高い)液晶表示装置が得られ得る。
【0038】
上記偏光板のナショナルビューローオブスタンダーズ(NBS)による色相;a値(単体a値)は、好ましくは−2.0以上であり、さらに好ましくは−1.8以上である。なお、上記a値の理想的な値は0である。また、上記偏光板のナショナルビューローオブスタンダーズ(NBS)による色相;b値(単体b値)は、好ましくは4.2以下であり、さらに好ましくは4.0以下である。なお、上記b値の理想的な値は0である。偏光板のa値およびb値は、0に近い数値とすることによって、表示画像の色彩の鮮やかな液晶表示装置が得られ得る。
【0039】
上記単体透過率、偏光度および色相は、分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製製品名「DOT−3」]を用いて測定することができる。上記偏光度の具体的な測定方法としては、上記偏光板の平行透過率(H0)および直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H0−H90)/(H0+H90)}1/2×100より求めることができる。上記平行透過率(H0)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光板の透過率の値である。また、上記直交透過率(H90)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光板の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JlSZ 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
【0040】
B−1.偏光子
上記偏光子は、自然光又は偏光を直線偏光に変換するものであれば、適宜、適切なものが採用され得る。上記偏光子は、好ましくは、ヨウ素または二色性染料を含有するポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする延伸フィルムである。なお、本明細書において「延伸フィルム」とは、適切な温度で未延伸のフィルムに張力を加え、引張方向にそって分子の配向を高めた高分子フィルムをいう。
【0041】
上記偏光子の厚みは、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。上記偏光子の厚みは、好ましくは5μm〜50μmであり、さらに好ましくは10μm〜30μmである。
【0042】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することによって得ることができる。上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等が挙げられる。
【0043】
上記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、好ましくは95.0モル%〜99.9モル%である。上記ケン化度は、JISK 6726−1994に準じて求めることができる。ケン化度が上記の範囲であるポリビニルアルコール系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子が得られ得る。
【0044】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。上記平均重合度は、好ましくは1200〜3600である。なお、平均重合度は、JISK 6726−1994に準じて求めることができる。
【0045】
上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。上記成形加工法としては、例えば、特開2000−315144号公報[実施例1]に記載の方法が挙げられる。
【0046】
上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムは、好ましくは、可塑剤として多価アルコールを含有する。上記多価アルコールは、偏光子の染色性や延伸性をより一層向上させる目的で使用される。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて使用され得る。上記多価アルコールの含有量(重量比)は、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂の全固形分100に対して、0を超え30である。
【0047】
上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムは、界面活性剤をさらに含有し得る。界面活性剤は、偏光子の染色性や延伸性をより一層向上させる目的で使用される。上記界面活性剤は、好ましくは、非イオン界面活性剤である。上記非イオン界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノアタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、オレイン酸モノイソプロパノールアミド等が挙げられる。上記界面活性剤の含有量(重量比)は、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂100に対して、0を超え5以下である。
【0048】
上記二色性物質は、任意の適切なものが採用され得る。本明細書において「二色性」とは、光学軸方向とそれに直交する方向との2方向で光の吸収が異なる光学的異方性をいう。上記二色性染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、エロー3G、エローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラック等が挙げられる。
【0049】
本発明に用いられるポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムは、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製 商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製 商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
【0050】
偏光子の製造方法の一例について、図2を参照して説明する。図2は、本発明に用いられる偏光子の代表的な製造工程の概念を示す模式図である。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム301は、繰り出し部300から繰り出され、ヨウ素水溶液浴310中に浸漬され、速比の異なるロール311及び312でフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤および染色工程に供される。次に、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液の浴320中に浸漬され、速比の異なるロール321及び322でフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理に供される。架橋処理されたフィルムは、ロール331および332によって、ヨウ化カリウムを含む水溶液浴330中に浸漬され、水洗処理に供される。水洗処理されたフィルムは、乾燥手段340で乾燥されることにより水分率が、例えば10%〜30%に調節され、巻き取り部360にて巻き取られる。偏光子350は、これらの工程を経て、上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを元長の5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
【0051】
B−2.第1の保護層
図1を参照すると、第1の保護層22は、偏光子21と位相差フィルム30との間に配置される。上記第1の保護層は、第2の保護層と共に、偏光子が収縮や膨張することを防いだり、紫外線による劣化を防いだりする目的で使用される。
【0052】
上記第1の保護層の厚みは、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。上記保護層の厚みは、好ましくは、20μm〜100μmである。第1の保護層の厚みを上記の範囲とすることによって、機械的強度や耐久性に優れた偏光板が得られ得る。
【0053】
上記第1の保護層の23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは90%以上である。上記透過率の理論上の上限は100%であり、実現可能な上限は96%である。
【0054】
上記第1の保護層の光弾性係数の絶対値(C[590](m2/N))は、好ましくは1×10-12〜100×10-12であり、さらに好ましくは1×10-12〜60×10-12である。光弾性係数の絶対値が上記の範囲であるものを用いることによって、歪によって光学的なムラが生じにくい偏光板が得られ得る。
【0055】
本発明の液晶パネルに用いられる第1の保護層は、偏光子と液晶セルとの間に配置されるため、その光学特性が液晶表示装置の表示特性に影響を与える場合がある。したがって、上記第1の保護層は、適切な位相差値を有するものを用いることが好ましい。
【0056】
1つの実施形態において、好ましくは、上記第1の保護層は、実質的に光学的に等方性を有する。本明細書において、実質的に光学的に等方性を有する場合とは、面内の位相差値(Re[590])が10nm未満であり、且つ、厚み方向の位相差値の絶対値(|Rth[590]|)が10nm未満であるものを包含する。
【0057】
本明細書において、Re[590]とは、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値をいう。ここで「面内の位相差値」とは、測定対象物が単独のフィルムである場合には当該フィルム面内の位相差値を意味し、測定対象物が積層体である場合には、積層体全体の面内の位相差値を意味する。Re[590]は、波長590nmにおける遅相軸方向、および進相軸方向の屈折率を、それぞれnx、nyとし、d(nm)を測定対象物の厚みとしたとき、式:Re[590]=(nx−ny)×dによって求めることができる。なお、遅相軸とは面内の屈折率の最大となる方向をいう。
【0058】
上記第1の保護層が実質的に光学的に等方性を有する場合、上記第1の保護層のRe[590]は10nm未満であり、好ましくは8nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下である。Re[590]を上記の範囲とすることによって、後述する特定の光学特性を有する位相差フィルムと組み合わせた場合に、斜め方向の光漏れとカラーシフトが極めて小さい液晶表示装置が得られ得る。
【0059】
本明細書において、Rth[590]は、23℃における波長590nmの光で測定した厚み方向の位相差値をいう。ここで「厚み方向の位相差値」とは、測定対象物が単独のフィルムである場合には当該フィルムの厚み方向の位相差値を意味し、測定対象物が積層体である場合には、積層体全体の厚み方向の位相差値を意味する。Rth[590]は、波長590nmにおける遅相軸方向、厚み方向の屈折率を、それぞれnx、nzとし、d(nm)を測定対象物の厚みとしたとき、式:Rth[590]=(nx−nz)×dによって求めることができる。なお、遅相軸とは面内の屈折率の最大となる方向をいう。
【0060】
上記第1の保護層が実質的に光学的に等方性を有する場合、上記第1の保護層のRth[590]の絶対値(|Rth[590]|)は、10nm未満であり、好ましくは8nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下である。|Rth[590]|を上記の範囲とすることによって、後述する特定の光学特性を有する位相差フィルムと組み合わせた場合に、斜め方向の光漏れとカラーシフトが極めて小さい液晶表示装置が得られ得る。
【0061】
Re[590]、ならびにRth[590]は、王子計測機器(株)製商品名「KOBRA21−ADH」〕を用いて測定することができる。23℃における波長590nmの面内の位相差値(Re)、遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定した位相差値(R40)、測定対象物の厚み(d)及び測定対象物の平均屈折率(n0)を用いて、以下の式(i)〜(iii)からコンピュータ数値計算によりnx、ny及びnzを求め、次いで式(iv)によりRthを計算できる。ここで、φ及びny’はそれぞれ以下の式(v)及び(vi)で示される。
Re=(nx−ny)×d …(i)
R40=(nx−ny’)×d/cos(φ) …(ii)
(nx+ny+nz)/3=n0 …(iii)
Rth=(nx−nz)×d …(iv)
φ =sin-1[sin(40°)/n0] …(v)
ny’=ny×nz[ny2×sin2(φ)+nz2×cos2(φ)]1/2…(vi)
【0062】
別の実施形態において、好ましくは、上記第1の保護層は、屈折率楕円体がnx≒ny>nzの関係を有する。ここで、nx、nyおよびnzは、それぞれ遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率、および厚み方向の屈折率である。理想的には、上記屈折率楕円体がnx≒ny>nzの関係を有する保護層は、法線方向に光学軸を有する。なお、本明細書においてnx≒nyとは、nxとnyが完全に同一である場合だけでなく、nxとnyが実質的に同一である場合も包含する。ここで、「nxとnyが実質的に同一である場合」とは、面内の位相差値(Re[590])が10nm未満であるものを包含する。
【0063】
上記屈折率楕円体;nx≒ny>nzの関係をRe[590]およびRth[590]で表現した場合、上記第1の保護層は、下記式(1)および(2)を満足する。
Re[590]<10nm …(1)
10nm≦Rth[590] …(2)
ただし、Re[590]およびRth[590]は、それぞれ、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値および厚み方向の位相差値である。
【0064】
上記第1の保護層の屈折率楕円体がnx≒ny>nzの関係を有する場合、上記第1の保護層のRe[590]は、10nm未満であり、好ましくは8nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下である。Re[590]を上記の範囲とすることによって、後述する特定の光学特性を有する位相差フィルムと組み合わせた場合に、斜め方向の光漏れとカラーシフトが極めて小さい液晶表示装置が得られ得る。
【0065】
上記第1の保護層の屈折率楕円体がnx≒ny>nzの関係を有する場合、上記第1の保護層のRth[590]は、10nm以上であり、好ましくは20nm〜100nmであり、さらに好ましくは30nm〜80nmである。Rth[590]を上記の範囲とすることによって、後述する特定の光学特性を有する位相差フィルムと組み合わせた場合に、斜め方向の光漏れとカラーシフトが極めて小さい液晶表示装置が得られ得る。
【0066】
上記第1の保護層を形成する材料としては、適宜、適切なものが採用され得る。好ましくは、上記第1の保護層は、セルロース系樹脂を含有する高分子フィルムである。セルロース系樹脂は、上記偏光子との接着性に優れるため、高温,多湿の環境下でも、各構成部材に剥がれが生じない偏光板を得ることができる。
【0067】
上記セルロース系樹脂は、任意の適切なものが採用され得る。上記セルロース系樹脂は、好ましくは、セルロースの水酸基の一部または全部がアセチル基、プロピオニル基および/またはブチル基で置換された、セルロース有機酸エステルまたはセルロース混合有機酸エステルである。上記セルロース有機酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等が挙げられる。上記セルロース混合有機酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。上記セルロース系樹脂は、例えば、特開平2001−188128号公報[0040]〜[0041]に記載の方法により得ることができる。
【0068】
上記セルロース系樹脂は、市販のものをそのまま用いることができる。あるいは、市販の樹脂に任意の適切なポリマー変性を施したものを用いることができる。上記ポリマー変性の例としては、共重合、架橋、分子末端、立体規則性等の変性が挙げられる。市販のセルロース系樹脂としては、例えば、ダイセルファインケミカル(株)製セルロースアセテートプロピオネート樹脂、EASTMAN社製 セルロースアセテート、EASTMAN社製 セルロースブチレート、EASTMAN社製セルロースアセテートプロピオネート等が挙げられる。
【0069】
上記セルロース系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した値が、好ましくは20,000〜1,000,000、さらに好ましくは25,000〜800,000である。なお、上記重量平均分子量は、実施例に記載の方法で測定した値である。重量平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものができる。
【0070】
上記セルロース系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは110℃〜185℃である。Tgが110℃以上あれば、熱安定性の良好なフィルムが得られやすくなり、185℃以下であれば、成形加工性に優れる。なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に準じたDSC法により求めることができる。
【0071】
上記セルロース系樹脂を含有する高分子フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。成形加工法としては、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、およびソルベントキャスティング法等が挙げられる。好ましくは、上記成形加工法は、ソルベントキャスティング法である。平滑性、光学均一性に優れた高分子フィルムを得ることができるからである。
【0072】
上記ソルベントキャスティング法は、具体的には、主成分となる樹脂、添加剤等を含む樹脂組成物を溶剤に溶解した濃厚溶液(ドープ)を脱泡し、エンドレスステンレスベルトまたは回転ドラムの表面に、シート状に均一に流延し、溶剤を蒸発させてフィルムを成形する方法である。フィルム形成時に採用される条件は、目的に応じて、適宜、適切な条件が選択され得る。
【0073】
上記セルロース系樹脂を含有する高分子フィルムは、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、および増粘剤等が挙げられる。上記添加剤の含有量(重量比)は、目的に応じて、適宜、適切な値が設定され得る。好ましくは、上記添加剤の含有量(重量比)は、上記セルロース系樹脂100重量部に対し、0を超え20以下である。
【0074】
上記第1の保護層は、市販のフィルムをそのまま用いることができる。あるいは、市販のフィルムに延伸処理および/または収縮処理などの2次的加工を施したものを用いることができる。市販のセルロース系樹脂を含有する高分子フィルムとしては、例えば、富士写真フィルム(株)製フジタックシリーズ(商品名;ZRF80S,TD80UF,TDY−80UL)、コニカミノルタオプト(株)製商品名「KC8UX2M」等が挙げられる。
【0075】
B−3.第2の保護層
図1を参照すると、第2の保護層23は、偏光子21の第1の保護層22を備える側とは反対側に配置される。上記第2の保護層は、第1の保護層と共に、偏光子が収縮や膨張することを防いだり、紫外線による劣化を防いだりする目的で使用される。
【0076】
上記第2の保護層としては、任意の適切なものが採用され得る。好ましくは、上記C−1項に記載した範囲の、厚み、透過率、および光弾性係数を有するものが用いられる。
【0077】
上記第2の保護層を形成する材料としては、適宜、適切なものが採用され得る。好ましくは、上記第2の保護層は、セルロース系樹脂を含有する高分子フィルムである。上記セルロース系樹脂を含有する高分子フィルムは、好ましくは、上記B−2項に記載したものと同様のものが用いられる。
【0078】
本発明の液晶パネルに用いられる第2の保護層は、液晶セルの外側(視認側、またはバックライト側)に配置される。例えば、第1の偏光板においては、上記第2の保護層は、視認側の最外面に配置され得る。あるいは、第2の偏光板においては、上記第2の保護層は、凹凸加工が施されたプリズムシートの上部に配置され得る。したがって、上記第2の保護層は、好ましくは、外側(偏光子を備える側とは反対側)の表面に表面処理層をさらに備える。
【0079】
上記表面処理層は、目的に応じて、適宜、適切な処理が採用され得る。上記表面処理層としては、例えば、ハードコート処理、帯電防止処理、反射防止処理(アンチリフレクション処理ともいう)、拡散処理(アンチグレア処理ともいう)などの処理層が挙げられる。これらの表面処理層は、画面の汚れや傷つきを防止したり、室内の蛍光灯や太陽光線が画面に写り込むことによって、表示画像が見え難くなることを防止したりする目的で使用される。上記表面処理層は、一般的には、ベースフィルムの表面に上記の処理層を形成する処理剤を固着させたものが用いられる。上記ベースフィルムは、上記第2の保護層を兼ねていてもよい。さらに、上記表面処理層は、例えば、帯電防止処理層の上にハードコート処理層を積層したような多層構造であってもよい。
【0080】
上記第2の保護層は、表面処理層が施された市販の高分子フィルムをそのまま用いることができる。あるいは、市販の高分子フィルムに任意の表面処理を施して用いることもできる。市販の拡散処理(アンチグレア処理)としては、例えば、日東電工(株)製AG150、AGS1、AGS2、AGT1等が挙げられる。市販の反射防止処理(アンチリフレクション処理)としては、日東電工(株)製ARS、ARC等が挙げられる。ハードコート処理および帯電防止処理が施された市販のフィルムとしては、例えば、コニカミノルタオプト(株)製商品名「KC8UX−HA」が挙げられる。反射防止処理が施された市販の表面処理層としては、例えば、日本油脂(株)製ReaLookシリーズが挙げられる。
【0081】
B−4.接着層
上記偏光板において、第1の保護層および第2の保護層と偏光子とをそれぞれ接着するために設けられる接着層は、任意の適切な接着剤、粘着剤、および/またはアンカーコート剤が採用され得る。
【0082】
上記接着層の厚みは、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。上記接着層の厚みは、好ましくは0.01μm〜50μmである。接着層の厚みを上記の範囲とすることによって、接合される偏光子および保護層に浮きや剥がれが生じず、実用上十分な接着力と接着時間が得られ得る。
【0083】
上記接着層を形成する材料としては、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤である。偏光子と保護層との接着性に優れ、且つ、作業性、生産性、経済性に優れるからである。上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤は、市販の接着剤をそのまま用いることもできる。あるいは、市販の接着剤に溶剤や添加剤を混合して用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤としては、例えば、日本合成化学工業(株)製ゴーセノールシリーズ(商品名「NH−18S,GH−18S,T−330等」)、同社製ゴーセファイマーシリーズ(商品名「Z−100,Z−200,Z−210等」)等が挙げられる。
【0084】
上記接着剤層は、上記の水溶性接着剤にさらに架橋剤を配合して得られる組成物を、架橋させたものであってもよい。上記架橋剤は、目的に応じて、適宜、適切なものが採用され得る。上記架橋剤としては、例えば、アミン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、および多価金属塩等が挙げられる。上記架橋剤は、市販のものをそのまま用いることもできる。市販の架橋剤としては、三菱ガス化学(株)製アミン化合物 商品名「メタシキレンジアミン」、日本合成化学工業(株)製アルデヒド化合物 商品名「グリオキザール」、大日本インキ(株)製メチロール化合物 商品名「ウォーターゾール」等が挙げられる。
【0085】
C.位相差フィルム
本発明に用いられる位相差フィルムは、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムである。上記ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムは、光弾性係数の絶対値が小さいため、例えば、偏光子の膨張,収縮による応力によって積層フィルムに歪が発生しても、位相差値の変動や、光学的なムラが生じにくい。結果として、表示均一性に優れる液晶表示装置を得ることができる。
【0086】
上記位相差フィルムの屈折率楕円体は、好ましくは、nx>nz>nyの関係を有する。このような屈折率楕円体の関係を有する位相差フィルムは、液晶セルの片側または両側に配置することによって、液晶表示装置の斜め方向の光漏れと斜め方向のカラーシフトを大幅に小さくすることができる。一般的に、2枚の偏光板を、互いの吸収軸方向が直交するように液晶セルの両側に配置した液晶表示装置は、斜め方向から光漏れが生じる。具体的には、液晶パネルの長辺を0°とした場合に、斜め方向の45°方位および135°方位で光漏れ量が最大となる傾向がある。本発明の積層フィルムに、上記の屈折率楕円体の関係を有する位相差フィルムを用いた場合には、従来の液晶表示装置に比べて、斜め方向の光漏れが格段に小さい、液晶表示装置を得ることができる。
【0087】
上記屈折率楕円体;nx>nz>nyの関係をRe[590]およびRth[590]で表現した場合、上記位相差フィルムは、下記式(3)を満足する。
10nm≦Rth[590]<Re[590] …(3)
ただし、Re[590]およびRth[590]は、それぞれ、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値および厚み方向の位相差値である。
【0088】
従来、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムで、屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を有する位相差フィルムは得られていなかった。これは、ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムが、他の樹脂に比べて、延伸によって位相差値が生じにくかったり、フィルム自体が脆いため、延伸が困難であったりしたからである。さらに、フィルムの厚み方向の屈折率(nz)を、面内の一方の屈折率(ny)よりも大きくするためには、フィルムに大きな応力を加えなければならず、かかる位相差フィルムの製造をより困難にしていた。本発明によれば、特定の収縮性フィルムを用いた製造方法により、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムを用いて、nx>nz>nyの関係を有する位相差フィルムを実際に得ることができる。
【0089】
図1を参照すると、位相差フィルム30は、偏光板20の一方の側に配置された第1の保護層22と、第1の粘着剤層41との間に配置される。好ましくは、上記位相差フィルム30の遅相軸方向は、偏光子21の吸収軸方向と、実質的に平行、実質的に直交、または実質的に45°である。さらに好ましくは、上記位相差フィルム30の遅相軸方向は、偏光子21の吸収軸方向と、実質的に直交である。このように、位相差フィルムを特定の位置関係で用いることによって、より一層、斜め方向の光漏れが小さい液晶表示装置が得られ得る。なお、本明細書において「実質的に平行」とは、位相差フィルム30の遅相軸方向と偏光子21の吸収軸方向とのなす角度が、0°±2.0°である場合を包含し、好ましくは0°±1.0°であり、さらに好ましくは0°±0.5°である。「実質的に直交」とは、位相差フィルム30の遅相軸方向と偏光子21の吸収軸方向とのなす角度が、90°±2.0°である場合を包含し、好ましくは90°±1.0°であり、さらに好ましくは90°±0.5°である。また、「実質的に45°」とは、位相差フィルム30の遅相軸方向と偏光子21の吸収軸方向とのなす角度が、45°±2.0°である場合を包含し、好ましくは45°±1.0°であり、さらに好ましくは45°±0.5°である。位相差フィルムの遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向との角度のズレ(0°、90°、または45°からのズレ)は、小さければ小さいほど、斜め方向の光漏れが小さい液晶表示装置が得られ得る。
【0090】
上記位相差フィルムの厚みは、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。上記位相差フィルムの厚みは、好ましくは、20μm〜200μmである。位相差フィルムの厚みを上記の範囲とすることによって、目的とする位相差値を得ることができ、且つ、機械的強度や耐久性に優れた位相差フィルムが得られ得る。
【0091】
上記位相差フィルムの23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは90%以上である。上記透過率の理論上の上限は100%であり、実現可能な上限は96%である。
【0092】
上記位相差フィルムの光弾性係数の絶対値(C[590](m2/N))は、好ましくは1×10-12〜10×10-12であり、さらに好ましくは1×10-12〜8×10-12であり、特に好ましくは1×10-12〜6×10-12である。光弾性係数の絶対値が上記の範囲であるものを用いることによって、歪によって光学的なムラが生じにくい位相差フィルムが得られ得る。
【0093】
本発明に用いられる位相差フィルムの片面または両面は、表面改質処理が施されていてもよい。上記表面改質処理としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、表面改質処理は、乾式処理でもよく、湿式処理でもよい。乾式処理の具体例としては、コロナ処理やグロー放電処理などの放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理および電子線処理などの電離活性線処理等が挙げられる。上記位相差フィルムに好適な表面改質処理(乾式処理)は、好ましくは、コロナ処理である。本明細書において「コロナ処理」とは、接地された誘電体ロールと絶縁された電極との間に高周波、高電圧を印加することにより、電極間の空気が絶縁破壊してイオン化し発生するコロナ放電内へ、フィルムを通過させることによって、フィルム表面を改質処理するものをいう。
【0094】
湿式処理としては、例えば、アルカリ処理、アンカーコート処理等が挙げられる。本明細書において「アルカリ処理」とは、塩基性物質を水または有機溶剤に溶解したアルカリ処理液に、フィルムを浸漬し、フィルム表面を改質処理するものをいう。「アンカーコート処理」とは、フィルムと粘着剤層の接着性を向上される目的でフィルムの積層面に予めアンカーコート剤を塗工する処理をいう。上記位相差フィルムに好適な表面改質処理(湿式処理)は、好ましくは、アンカーコート処理である。上記アンカーコート処理に用いられるアンカーコート剤は、好ましくは、分子中にアミノ基を含むポリマー類を含み、特に好ましくは、ポリエチレンイミンを含む。
【0095】
C−1.位相差フィルムを形成する材料
上記位相差フィルムとしては、任意の適切なノルボルネン系樹脂が採用され得る。上記ノルボルネン系樹脂は、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れ、且つ、歪によって光学的なムラの生じにくいものが好ましい。
【0096】
本明細書において、ノルボルネン系樹脂とは、出発原料(モノマー)の一部または全部に、ノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。なお、本明細書において「(共)重合体」とは、ホモポリマーまたは共重合体(コポリマー)を意味する。
【0097】
上記ノルボルネン系樹脂は、出発原料としてノルボルネン環(ノルボルナン環に二重結合を有するもの)を有するノルボルネン系モノマーが用いられる。上記ノルボルネン系樹脂は、(共)重合体の状態では、構成単位にノルボルナン環を有していても、有していなくてもよい。(共)重合体の状態で構成単位にノルボルナン環を有するノルボルネン系樹脂は、例えば、テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン、8−メチルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン等が挙げられる。(共)重合体の状態で構成単位にノルボルナン環を有さないノルボルネン系樹脂は、例えば、開裂により5員環となるモノマーを用いて得られる(共)重合体である。上記開裂により5員環となるモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−フェニルノルボルネン等やそれらの誘導体等が挙げられる。上記ノルボルネン系樹脂が共重合体である場合、その分子の配列状態は、特に制限はなく、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
【0098】
上記ノルボルネン系樹脂としては、市販のものをそのまま用いることができる。あるいは、市販のノルボルネン系樹脂に任意の適切なポリマー変性を施したものを用いることができる。市販のノルボルネン系樹脂としては、例えば、JSR(株)製アートンシリーズ(商品名;ARTON FLZR50,ARTON FLZR70,ARTONFLZL100,ARTON F5023,ARTONFX4726,ARTON FX4727,ARTOND4531,ARTON D4532等)、日本ゼオン(株)製ゼオノアシリーズ(商品名;ZEONOR 750R,ZEONOR 1020R,ZEONOR1600等)、三井化学(株)製 アペルシリーズ(APL8008T,APL6509T,APL6011T,APL6013T,APL6015T,APL5014T等)、TICONA社製COC樹脂(商品名;TOPAS)等が挙げられる。
【0099】
上記ノルボルネン系樹脂としては、例えば、(A)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を水素添加した樹脂、(B)ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂などが挙げられる。上記ノルボルネン系モノマーの開環共重合体は、1種以上のノルボルネン系モノマーと、α−オレフィン類、シクロアルケン類、および/または非共役ジエン類との開環共重合体を水素添加した樹脂を包含する。上記ノルボルネン系モノマーを付加共重合させた樹脂は、1種以上のノルボルネン系モノマーと、α−オレフィン類、シクロアルケン類および/または非共役ジエン類との付加型共重合させた樹脂を包含する。上記ノルボルネン系樹脂は、好ましくは(A)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を水素添加した樹脂である。成形加工性に優れ、低い延伸倍率で大きな位相差値を有する位相差フィルムを得ることができるからである。
【0100】
上記ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を水素添加した樹脂は、ノルボルネン系モノマー等をメタセシス反応させて、開環(共)重合体を得、さらに、当該開環(共)重合体を水素添加して得ることができる。具体的には、例えば、(株)エヌ・ティー・エス出版「オプティカルポリマー材料の開発・応用技術」p.103〜p.111(2003年版)に記載の方法、特開平11−116780号公報の段落[0059]〜[0060]に記載の方法、特開2001−350017号公報の段落[0035]〜[0037]に記載の方法、特開2005−008698号公報の段落[0053]に記載の方法等が挙げられる。上記ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂は、例えば、特開昭61−292601号公報の実施例1に記載の方法により得ることができる。
【0101】
上記ノルボルネン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した値が、好ましくは、20,000〜500,000であり、さらに好ましくは30,000〜200,000である。上記重量平均分子量は、実施例に記載の方法によって測定した値である。重量平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものを得ることができる。
【0102】
上記ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは110℃〜185℃であり、さらに好ましくは120℃〜170℃であり、特に好ましくは125℃〜150℃である。Tgが110℃以上あれば、熱安定性の良好なフィルムが得られやすくなり、185℃以下であれば、延伸によって面内及び厚み方向の位相差値を制御しやすくなる。なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じたDSC法により求めることができる。
【0103】
上記ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。成形加工法としては、B−2項に記載した方法が挙げられる。好ましくは、上記成形加工法は、ソルベントキャスティング法である。平滑性、光学均一性に優れた高分子フィルムを得ることができるからである。
【0104】
上記ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムは、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、および増粘剤等が挙げられる。上記添加剤の含有量(重量比)は、好ましくは、上記ノルボルネン系樹脂100に対し、0を超え10以下である。
【0105】
上記ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムは、ノルボルネン系樹脂と他の樹脂とを含む樹脂組成物から得られるものであってもよい。上記他の樹脂は、任意の適切なものが選択され得る。上記他の樹脂として好ましくは、スチレン系樹脂である。上記スチレン系樹脂は、位相差フィルムの波長分散値や光弾性係数を調整するために、用いられ得る。上記他の樹脂の含有量(重量比)は、好ましくは、上記ノルボルネン系樹脂100に対し、0を超え30以下である。
【0106】
上記ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムは、市販のフィルムをそのまま用いることができる。あるいは、市販のフィルムに延伸処理および/または収縮処理などの2次的加工を施したものを用いることができる。市販のノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムとしては、例えば、JSR(株)製アートンシリーズ(商品名;ARTON F,ARTON FX,ARTON D)や、(株)オプテス製ゼオノアシリーズ(商品名;ZEONOR ZF14,ZEONOR ZF16)等が挙げられる。
【0107】
C−2.位相差フィルムの光学特性
上記位相差フィルムのRe[590]は、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。上記位相差フィルムのRe[590]は、10nm以上であり、好ましくは80nm〜350nmであり、さらに好ましくは120nm〜350nmであり、さらに好ましくは160nm〜280nmである。Re[590]を上記の範囲とすることによって、斜め方向の光漏れと斜め方向のカラーシフトが極めて小さい液晶表示装置が得られ得る。
【0108】
上記位相差フィルムのRe[590]は、上記第1の保護層のRth[590]の値によって、適切な値が選択され得る。好ましくは、上記位相差フィルムのRe[590]は、当該Re[590]と第1の保護層のRth[590]との合計(Re[590]+Rth[590])が、220nm〜300nmとなるように設定される。例えば、第1の保護層が実質的に光学的に等方性を有し、|Rth[590]|が10nm未満である場合は、上記位相差フィルムのRe[590]は、好ましくは250nm〜310nmである。第1の保護層のRth[590]が40nmである場合は、上記位相差フィルムのRe[590]は、好ましくは180nm〜260nmである。第1の保護層のRth[590]が60nmである場合は、上記位相差フィルムのRe[590]は、好ましくは160nm〜240nmである。第1の保護層のRth[590]が100nmである場合は、上記位相差フィルムのRe[590]は、好ましくは120nm〜200nmである。
【0109】
上記位相差フィルムの波長分散値(D)は、好ましくは0.90〜1.10であり、さらに好ましくは0.95〜1.05であり、特に好ましくは0.98〜1.02である。上記波長分散値(D)は、式;Re[480]/Re[590]から算出される値であり、Re[480]およびRe[590]は、それぞれ、23℃における波長480nmおよび590nmの光で測定した面内の位相差値である。上記の範囲の波長分散値(D)を有する位相差フィルムを用いることによって、従来の液晶表示装置に比べて、斜め方向のカラーシフトが格段に小さい、液晶表示装置を得ることができる。
【0110】
上記位相差フィルムのNz係数は、好ましくは0.1〜0.7であり、さらに好ましくは0.2〜0.6であり、特に好ましくは0.25〜0.55である。最も好ましくは0.35〜0.55である。上記Nz係数は、式;Rth[590]/Re[590]から算出される値であり、Re[590]およびRth[590]は、それぞれ、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値および厚み方向の位相差値である。Nz係数を上記の範囲とすることによって、斜め方向の光漏れと斜め方向のカラーシフトが極めて小さい液晶表示装置が得られ得る。
【0111】
上記位相差フィルムのNz係数は、上記第1の保護層のRth[590]の値によって、適切な値が選択され得る。例えば、第1の保護層が実質的に光学的に等方性を有し、|Rth[590]|が10nm未満である場合は、上記位相差フィルムのNz係数は、好ましくは0.4〜0.6である。第1の保護層のRth[590]が40nmである場合は、上記位相差フィルムのNz係数は、好ましくは0.3〜0.5である。あるいは、第1の保護層のRth[590]が60nmである場合は、上記位相差フィルムのNz係数は、好ましくは0.2〜0.4である。あるいは、第1の保護層のRth[590]が100nmである場合は、上記位相差フィルムのNz係数は、好ましくは0.1〜0.3である。
【0112】
上記位相差フィルムのRth[590]は、上記Nz係数に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。好ましくは、上記位相差フィルムのRth[590]は、Re[590]よりも小さく、好ましくは10nm〜200nmであり、さらに好ましくは20nm〜180nmであり、さらに好ましくは30nm〜140nmである。Rth[590]を上記の範囲とすることによって、斜め方向の光漏れと斜め方向のカラーシフトが極めて小さい液晶表示装置が得られ得る。
【0113】
C−3.位相差フィルムの製造方法
上記位相差フィルムは、例えば、ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムの両面に収縮性フィルムを貼り合せて、ロール延伸機にて縦一軸延伸法で加熱延伸して得ることができる。当該収縮性フィルムは、加熱延伸時に延伸方向と直交する方向の収縮力を付与し、厚み方向の屈折率(nz)を高めるために用いられる。上記高分子フィルムの両面に上記収縮性フィルムを貼り合せる方法としては、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記高分子フィルムと上記収縮性フィルムとの間に、アクリル系粘着剤を含む粘着剤層を設けて接着する方法が、生産性、作業性および経済性に優れる点から好ましい。
【0114】
上記位相差フィルムの製造方法の一例について、図3を参照して説明する。図3は、本発明に用いられる位相差フィルムの代表的な製造工程の概念を示す模式図である。例えば、ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルム402は、第1の繰り出し部401から繰り出され、ラミネートロール407、408により、当該高分子フィルム402の両面に、第2の繰り出し部403から繰り出された粘着剤層を備える収縮性フィルム404と、第3の繰り出し部405から繰り出された粘着剤層を備える収縮性フィルム406とが貼り合わされる。両面に収縮性フィルムが貼着された高分子フィルムは、加熱手段409によって一定温度に保持されながら、速比の異なるロール410、411、412、および413でフィルムの長手方向の張力を付与され(同時に収縮性フィルムによって、厚み方向への張力を付与される)ながら、延伸処理に供される。延伸処理されたフィルム418は、第1の巻き取り部414および第2の巻き取り部415にて、収縮性フィルム404、406が粘着剤層と共に剥離され、第3の巻き取り部419で巻き取られる。
【0115】
上記収縮性フィルムは、好ましくは、二軸延伸フィルムおよび一軸延伸フィルム等の延伸フィルムである。上記収縮性フィルムは、例えば、押出法によりシート状に成形された未延伸フィルムを同時二軸延伸機等で所定の倍率に縦および/または横方向に延伸して得ることができる。なお、成形および延伸条件は、用いる樹脂の組成や種類や目的に応じて、適宜選択され得る。
【0116】
上記収縮性フィルムに用いられる材料としては、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。好ましくは、上記収縮性フィルムは、ポリプロピレンを含有する二軸延伸フィルムである。このような収縮性フィルムは、収縮均一性および耐熱性に優れるため、目的とする位相差値が得ら得られると共に、光学均一性に優れた位相差フィルムが得られ得る。
【0117】
1つの実施形態においては、好ましくは、上記収縮性フィルムは、140℃におけるフィルム長手方向の収縮率:S140[MD]が5.0%〜7.7%であり、且つ、140℃におけるフィルム幅方向の収縮率:S140[TD]が10.0%〜15.5%である。さらに好ましくは、上記収縮性フィルムは、S140[MD]が5.5%〜7.0%であり、且つ、S140[TD]が11.5%〜14.5%である。
【0118】
別の実施形態においては、好ましくは、上記収縮性フィルムは、160℃におけるフィルム長手方向の収縮率:S160[MD]が15.5%〜23.5%であり、且つ、140℃におけるフィルム幅方向の収縮率:S160[TD]が36.5%〜54.5%である。さらに好ましくは、上記収縮性フィルムは、S160[MD]が17.5%〜21.5%であり、且つ、S160[TD]が40.0%〜50.0%である。収縮性フィルムの各温度における収縮率を上記の範囲とすることによって、目的とする位相差値を有し、且つ、均一性に優れた位相差フィルムが得られ得る。
【0119】
1つの実施形態においては、上記収縮性フィルムの140℃における幅方向の収縮率と長手方向の収縮率の差:ΔS140=S140[TD]−S140[MD]は、好ましくは5.0%〜7.7%であり、さらに好ましくは5.7%〜7.0%である。別の実施形態においては、上記収縮性フィルムの160℃における幅方向の収縮率と長手方向の収縮率の差:ΔS160=S160[TD]−S160[MD]は、好ましくは20.5%〜31.5%であり、さらに好ましくは23.0%〜28.5%である。MD方向の収縮率が大きいと、延伸張力に加え、上記収縮性フィルムの収縮力が、延伸機に加わり均一な延伸が困難となる場合がある。収縮性フィルムの収縮率を上記の範囲とすることによって、延伸機等の設備に過度の負荷をかけることなく、均一な延伸を行うことができる。
【0120】
上記収縮性フィルムの140℃における幅方向の収縮応力:T140[TD]は、好ましくは0.50N/2mm〜0.80N/2mmであり、さらに好ましくは0.58N/2mm〜0.72N/2mmである。上記収縮性フィルムの150℃における幅方向の収縮応力:T150[TD]は、好ましくは0.60N/2mm〜0.90N/2mmであり、さらに好ましくは0.67N/2mm〜0.83N/2mmである。収縮性フィルムの収縮率を上記の範囲とすることによって、目的とする位相差値を有し、且つ、光学均一性に優れた位相差フィルムが得られ得る。
【0121】
上記収縮率S[MD]およびS[TD]は、JISZ 1712−1997の加熱収縮率A法に準じて求めることができる(ただし、加熱温度は120℃に代えて140℃(または160℃)とし、試験片に荷重3gを加えたことが異なる)。具体的には、幅20mm、長さ150mmの試験片を縦[MD]、横[TD]方向から各5枚採り、それぞれの中央部に約100mmの距離において標点をつけた試験片を作製する。該試験片は、温度140℃±3℃(または160℃±3℃)に保持された空気循環式乾燥オーブンに、荷重3gをかけた状態で垂直につるし、15分間加熱した後、取り出す。さらに、標準状態(室温)に30分間放置してから、JISB 7507に規定するノギスを用いて、標点間距離を測定して、5個の測定値の平均値を求める。収縮率は、次式;S(%)=[[加熱前の標点間距離(mm)−加熱後の標点間距離(mm)]/加熱前の標点間距離(mm)]×100より算出することができる。
【0122】
上記収縮性フィルムとしては、上記収縮率等の特性を満足するものであれば、一般包装用、食品包装用、パレット包装用、収縮ラベル用、キャップシール用、および電気絶縁用等の用途に使用される市販の収縮性フィルムも適宜、選択して用いることができる。これら市販の収縮性フィルムは、そのまま用いてもよく、延伸処理や収縮処理などの2次加工を施してから用いてもよい。市販の収縮性フィルムとしては、例えば、王子製紙(株)製
アルファンシリーズ(商品名;アルファンP,アルファンS,アルファンH等)、グンゼ(株)製 ファンシートップシリーズ(商品名;ファンシートップEP1, ファンシートップEP2等)、東レ(株)製 トレファンBOシリーズ(商品名;2570,2873,2500,2554,M114,M304等)、サントックス(株)サントックス−OPシリーズ(商品名;PA20,PA21,PA30等)、東セロ(株)トーセロOPシリーズ(商品名;OPU−0, OPU−1, OPU−2等)等が挙げられる。
【0123】
上記ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムと上記収縮性フィルムとの積層体を加熱延伸する際の延伸オーブン内の温度(延伸温度ともいう)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。延伸温度として好ましくは、上記高分子フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg+1℃〜Tg+30℃である。上記の温度範囲とすることによって、位相差フィルムの位相差値が均一になり易く、かつ、フィルムが結晶化(白濁)しにくくなる。具体的には、上記延伸温度は、通常、110℃〜185℃である。なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121−1987に準じたDSC法により求めることができる。
【0124】
さらに、ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムと収縮性フィルムとの積層体を延伸する際の延伸する倍率(延伸倍率)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて、適宜選択され得る。上記延伸倍率は、通常、元長に対し、1倍を超え2倍以下である。延伸時の送り速度は、延伸装置の機械精度や安定性の点より、通常、1m/分〜20m/分である。上記の延伸条件であれば、目的とする位相差値が得られ、且つ、光学的均一性に優れた位相差フィルムが得られ得る。
【0125】
D.第1の粘着剤層
本発明に用いられる第1の粘着剤層は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、過酸化物を主成分とする架橋剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含む。本発明において「粘着剤」とは、加圧接触で感知し得る接着力を常温で示す粘弾性物質をいう。
【0126】
図1を参照すると、第1の粘着剤層41は、位相差フィルム30の偏光板20を備える側とは反対側に配置される。上記第1の粘着剤層は、本発明の積層フィルムを、例えば、液晶表示装置の液晶セルに固定するために用いられる。このような粘着剤層は、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルム(位相差フィルム)と強固に接着させることができる。また、液晶セルの基板(ガラス板)に対しては、高温,多湿の環境下でも、剥がれや気泡が発生することなく、実用上十分な接着力と接着時間を得ることができる。一方、液晶セルから剥離するときは、液晶セルの表面に粘着剤層や位相差フィルムが残留することもなく、軽い力で剥離することができる。
【0127】
従来、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムに対しては、強固な接着性を示し、液晶セルの基板(ガラス板)に対しては、適度な接着性と軽剥離性を示す粘着剤層は得られていなかった。これは、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムが、ポリカーボネート系樹脂等の他の樹脂に比べて、粘着剤に作用し得る極性基が少ないためである。さらに、上述したように、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムは、フィルム自体が脆いため、剥離することをより困難にしていた。本発明によれば、特定の組成物を架橋させることによって得られ得る粘着剤を用いることによって、接着性と軽剥離性に優れた積層フィルムを得ることができる。
【0128】
D−1.第1の粘着剤層の諸物性
上記第1の粘着剤層の厚みは、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。上記第1の粘着剤層の厚みは、好ましくは2μm〜50μmであり、さらに好ましくは2μm〜40μmであり、特に好ましくは5μm〜35μmである。第1の粘着剤層の厚みを上記の範囲とすることによって、適切な接着力を有し、軽剥離性に優れた積層フィルムを得ることができる。
【0129】
上記第1の粘着剤層の23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは90%以上である。上記透過率の理論上の上限は100%であり、実現可能な上限は96%である。
【0130】
上記第1の粘着剤層のRe[590]は、好ましくは2nm未満であり、さらに好ましくは1nm未満である。上記第1の粘着剤層のRth[590]は、好ましくは2nm未満であり、さらに好ましくは1nm未満である。
【0131】
上記第1の粘着剤層の23℃におけるガラス板に対する接着力(F1A)は、好ましくは2N/25mm〜10N/25mmであり、さらに好ましくは3N/25mm〜9N/25mmであり、特に好ましくは3N/25mm〜8N/25mmであり、最も好ましくは4N/25mm〜6N/25mmである。上記接着力は、ガラス板に25mm幅の積層フィルムを、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養生後、かかる積層フィルムを90度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度である。
【0132】
上記第1の粘着剤層の23℃における位相差フィルムに対する投錨力(F1B)は、好ましくは10N/25mm〜40N/25mmであり、さらに好ましくは14N/25mm〜40N/25mmであり、特に好ましくは17N/25mm〜35N/25mmである。上記投錨力は、インジウムスズ酸化物(ITO)を蒸着処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの処理面に、25mm幅の粘着剤層と位相差フィルムとの積層体を、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養成後、かかるポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層ごと180度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度である。
【0133】
本発明の積層フィルムにおいては、上記第1の粘着剤層の23℃におけるガラス板に対する接着力(F1A)と、23℃における位相差フィルムに対する投錨力(F1B)との関係は、好ましくはF1A<F1Bである。さらに、上記第1の粘着剤層の投錨力と接着力との差;(F1B−F1A)は、好ましくは5N/25mm以上であり、さらに好ましくは5N/25mm〜37N/25mmであり、特に好ましくは8N/25mm〜31N/25mmであり、最も好ましくは16N/25mm〜30N/25mmである。F1AおよびF1Bの関係を上記のようにすることによって、液晶セルの表面に粘着剤層や位相差フィルムが残留することもなく、軽剥離性に優れた積層フィルムを得ることができる。
【0134】
上記第1の粘着剤層は、さらに任意の適切な添加物を含でいてもよい。上記添加物は、例えば、金属粉、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ、充填剤等が挙げられる。また、上記第1の粘着剤層は、隣接する層からの移行物質(例えば、残留溶剤、添加剤、オリゴマーなど)を含んでいてもよい。上記添加物の含有量(重量比)は、好ましくは、上記第1の粘着剤層の全固形分100に対し、0を超え10以下である。また、上記移行物質の含有量(重量比)は、好ましくは、上記第1の粘着剤層の全固形分100に対し、0を超え5以下である。
【0135】
D−2.第1の粘着剤層を形成する粘着剤
第1の粘着剤層を形成する粘着剤は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、過酸化物を主成分とする架橋剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得るものである。本明細書において「架橋させる」とは、ポリマーを化学的に橋かけされて、3次元的な網目構造を形成することをいう。
【0136】
D−3.原料組成物の調製(第1の粘着剤層)
上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーは、目的に応じて、適宜、適切なものが採用され得る。上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーは、(メタ)アクリレート系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。当該ポリマーが共重合体である場合、その分子の配列状態は、特に制限はなく、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーの分子配列状態としては、好ましくは、ランダム共重合体である。
【0137】
本明細書において「(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー」とは、当該ポリマーがホモポリマーである場合は、アクリレート系ポリマーまたはメタクリレート系ポリマーを意味し、当該ポリマーが共重合体である場合は、2種以上のアクリレート系モノマーから合成されるアクリルレート系コポリマー、2種以上のメタクリレート系モノマーから合成されるメタクリレート系コポリマー、または1種以上のアクリレート系モノマーと1種以上のメタクリレート系モノマーとから合成されるコポリマーを意味する。また、「(メタ)アクリレート系モノマー」は、アクリレート系モノマーまたはメタクリレート系モノマーを意味する。
【0138】
上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーは、任意の適切な重合方法によって得ることができる。上記重合方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法等が挙げられる。本発明において、重合方法として好ましくは、溶液重合法である。上記溶液重合法は、具体的には、例えば、モノマーを溶剤に溶解させた溶液に、アゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤を、該モノマー100重量部に対して0.01〜0.2重量部添加し、窒素雰囲気下で、溶液の温度を50℃〜70℃に設定し、8時間〜30時間反応させる方法である。このような重合方法は、重合温度の調節が高精度に行えるという利点がある。さらに、重合後のポリマー溶液を反応容器から取り出しやすいという利点もある。
【0139】
上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、適宜、適切な値に設定され得る。好ましくは、上記重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した値が、好ましくは1,000,000以上であり、さらに好ましくは1,200,000〜3,000,000であり、特に好ましくは1,200,000〜2,500,000である。上記重量平均分子量(Mw)は、溶剤の種類、重合温度、添加剤等によって、適宜、適切に調整することができる。
【0140】
好ましくは、上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーは、炭素数1〜10の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーを用いて得られる(共)重合体である。炭素数1〜10の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、iso−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、iso−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、iso−ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、iso−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、iso−デシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0141】
さらに好ましくは、上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーは、炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーと、少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとの共重合体である。このような共重合体は、過酸化物を主成分とする架橋剤との反応性に優れるため、優れた粘着特性を有する粘着剤が得られ得る。
【0142】
上記直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマー(水酸基で置換されていないアルキル基を有するユニット)の、アルキル基の炭素数;C1は、好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜6であり、特に好ましくは4〜6である。上記少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマー(水酸基で置換されているアルキル基を有するユニット)の、アルキル基の炭素数;C2は、好ましくは上記C1と同じか、または上記C1よりも多く、さらに好ましくは2〜8であり、特に好ましくは4〜6である。このように、アルキル基の炭素数を調整することによって、架橋剤との反応性を向上させることができ、より一層、優れた粘着特性を有する粘着剤が得られ得る。
【0143】
特に好ましくは、上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーは、炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーと、少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとの共重合体であり、少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマー由来のユニットを、0.1モル%〜10.0モル%含む。少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマー由来のユニットは、さらに好ましくは0.2モル%〜5.0モル%であり、特に好ましくは0.3モル%〜1.1モル%である。
【0144】
少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7−ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0145】
上記架橋剤は、過酸化物を主成分とするものであれば、適宜、適切なものが採用され得る。上記過酸化物は、熱的な分解によりラジカルを発生させて、上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーを架橋させるために用いられる。上記過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類等が挙げられる。上記過酸化物の具体例としては、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシブチレート、ベンゾイル−m−メチルベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等が挙げられる。これらの過酸化物は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0146】
上記架橋剤は、好ましくは、ジアシルパーオキサイド類の過酸化物を含み、さらに好ましくは、ジベンゾイルパーオキサイドおよび/またはベンゾイルm−メチルベンゾイルパーオキサイドを含む。このような過酸化物は、例えば、1分間半減期が90℃〜140℃であるため、保存安定性に優れ、且つ、架橋反応を高精度に制御することが可能である。
【0147】
上記架橋剤は、市販のものをそのまま用いることもできる。あるいは、市販のものに溶剤や添加剤を混合して用いることもできる。市販の過酸化物を主成分とする架橋剤としては、例えば、日本油脂(株)製パーロイルシリーズ(商品名「IB,335,L,SA,IPP,NPP,TCP等」、同社ナイパーシリーズ(商品名「FF,BO,NS,E,BMT−Y,BMT−K40,BMT−M等」等が挙げられる。
【0148】
上記架橋剤の配合量は、目的に応じて、適宜、適切な量が選択され得る。上記架橋剤の配合量(重量比)は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対して、好ましくは0.01〜1.0であり、さらに好ましくは0.05〜0.8であり、特に好ましくは0.1〜0.5であり、最も好ましくは0.15〜0.45である。架橋剤の配合量を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有し、且つ、水分率が小さい粘着剤層を得ることができ、結果として、接着性と軽剥離性に優れた積層フィルムを得ることができる。
【0149】
1つの実施形態においては、上記組成物には、さらにイソシアネート基を有する化合物および/またはシランカップリング剤が配合される。上記イソシアネート基を有する化合物は、第1の粘着剤層と位相差フィルムとの界面の密着強さ(投錨力ともいう)を向上させるために用いられる。上記シランカップリング剤は、液晶セルの基板との密着性を向上させるために用いられる。
【0150】
上記イソシアネート基を有する化合物は、適宜、適切なものが選択され得る。上記イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、トリレジンイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンイソシアネート、テトラメチレンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、トリメチロールプロパンキシレンジイソシアネート等が挙げられる。あるいは、これらのイソシアネート基を有する化合物を使ったアダクト系イソシアネート化合物、イソシアヌレート化物、ビウレット型化合物等が挙げられる。これらのイソシアネート基を有する化合物は、単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、第1の粘着剤層に用いられるイソシアネート基を有する化合物は、トリメチロールプロパンキシレンジイソシアネートである。
【0151】
上記イソシアネート基を有する化合物は、市販のものをそのまま用いることもできる。あるいは、市販のものに溶剤や添加剤を混合して用いることもできる。市販のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、三井武田ケミカル(株)製タケネートシリーズ(商品名「500,600,700等」)、日本ポリウレタン工業(株)コロネートシリーズ(商品名「L,MR,EH,HL等」等が挙げられる。
【0152】
上記イソシアネート基を有する化合物の配合量は、目的に応じて、適宜、適切な量が選択され得る。上記イソシアネート基を有する化合物の配合量(重量比)は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対して、好ましくは0.005〜1.0であり、さらに好ましくは0.008〜0.8であり、特に好ましくは0.01〜0.5であり、最も好ましくは、0.015〜0.2である。上記イソシアネート基を有する化合物の配合量を上記の範囲とすることによって、より一層過酷な高温,多湿の環境下でも、第1の粘着剤層と位相差フィルムとの界面が剥がれにくい積層フィルムを得ることができる。
【0153】
上記シランカップリング剤は、適宜、適切な官能基を有するものが選択され得る。上記官能基としては、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、アクリロキシ基、アセトアセチル基、イソシアネート基、スチリル基、ポリスルフィド基等が挙げられる。上記シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。好ましくは、第1の粘着剤層に用いられるシランカップリング剤は、アセトアセチル基を有するシランカップリング剤である。
【0154】
上記シランカップリング剤は、市販のものをそのまま用いることもできる。あるいは、市販のものに溶剤や添加剤を加えて用いることもできる。市販のシランカップリング剤としては、例えば、信越シリコーン(株)製KAシリーズ(商品名「KA−1003等」)、同社製 KBMシリーズ(商品名「KBM−303,KBM−403,KBM−503等」、同社製 KBEシリーズ(商品名「KBE−402,KBE−502,KBE−903等」)、東レ(株)製 SHシリーズ(商品名「SH6020,SH6040,SH6062等」、同社製 SZシリーズ(商品名「SZ6030,SZ6032,SZ6300等」が挙げられる。
【0155】
上記シランカップリング剤の配合量は、目的に応じて、適宜、適切な量が選択され得る。上記配合量(重量比)は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対して、好ましくは0.001〜2.0であり、さらに好ましくは0.005〜2.0であり、特に好ましくは0.01〜1.0であり、最も好ましくは0.02〜0.5である。上記シランカップリング剤の配合量を上記の範囲とすることによって、より一層過酷な高温,多湿の環境下でも、剥がれや気泡が発生しない積層フィルムを得ることができる。
【0156】
1つの実施形態においては、上記組成物は、以下の工程1−Aおよび工程1−Bを含む方法により調製される。
工程1−A:(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーを溶剤で希釈してポリマー溶液(1−A)を調製する工程、
工程1−B:工程1−Aで得られるポリマー溶液(1−A)に、過酸化物を主成分とする架橋剤、イソシアネート基を有する化合物、およびシランカップリング剤を配合してポリマー溶液(1−B)を調整する工程。
【0157】
上記工程1−Aおよび工程1−Bは、配合した物質を均一に分散または溶解して、均一な組成物を得るために行なわれる。上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーが溶液重合法で重合される場合には、得られる反応溶液を上記ポリマー溶液(1−A)としてそのまま用いてもよい。あるいは、得られる反応溶液に、さらに溶剤を加え、希釈して用いてもよい。
【0158】
上記溶剤は、上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーを均一に希釈して溶液とするものが好ましく用いられる。上記溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、フェノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘキサノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、n−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2−メチル−2,4−ペンタンジオールジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ブチロニトリル、メチルセロソルブ、酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。上記溶剤は、好ましくは、トルエンまたは酢酸エチルである。これらの溶剤は、生産性、作業性、経済性に優れる。
【0159】
上記ポリマー溶液(1−B)の全固形分濃度は、好ましくは1重量%〜40重量%であり、さらに好ましくは5重量%〜30重量%である。全固形分濃度を上記の範囲とすることによって、基材への塗工性に優れるものが得られ、結果として、表面均一性に優れる粘着剤層を得ることができる。
【0160】
上記組成物には、この他にも、任意の適切な添加剤が配合され得る。上記添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、および増粘剤等が挙げられる。上記添加剤の配合量(重量比)は、目的に応じて、適宜、適切な値が設定され得る。好ましくは、上記添加剤の配合量(重量比)は、上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対し、0を超え5以下である。
【0161】
上記組成物を調製する際の各材料の配合方法としては、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記組成物は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーに、過酸化物を主成分とする架橋剤、イソシアネート基を有する化合物、シランカップリング剤をこの順に加えて、調製される。なお、イソシアネート基を有する化合物およびシランカップリング剤のいずれか、または両方を配合しない場合は、その配合工程は省略される。
【0162】
D−4.組成物の架橋方法(第1の粘着剤層)
上記組成物を架橋させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記組成物を50℃〜200℃で加熱する方法が用いられる。加熱温度は、好ましくは70℃〜190℃であり、さらに好ましくは100℃〜180℃であり、特に好ましくは120℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、副反応を起こすこともなく、過酸化物とポリマーとの架橋反応が速やかに生じ、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0163】
上記組成物を架橋させるために、加熱する方法が採用される場合、加熱時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記加熱時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜10分、特に好ましくは10秒〜5分である。加熱時間を上記の範囲とすることによって、過酸化物とポリマーとの架橋反応が効率良く行なわれる。
【0164】
1つの実施形態においては、上記組成物は、上記工程1−Aおよび工程1−Bの後に、次の工程1−Cおよび工程1−Dを含む方法によって架橋される。
工程1−C:工程1−Bで得られるポリマー溶液(1−B)を基材に塗工する工程、
工程1−D:工程1−Cで得られる塗工物を50℃〜200℃で乾燥し、基材の表面に粘着剤層を形成する工程。
【0165】
上記工程1−Cは、ポリマー溶液を基材の上に薄く展開し、薄膜状の塗工物を得るために行なわれる。上記工程1−Dは、塗工物の溶剤を蒸発させ、且つ、過酸化物とポリマーとを架橋させるために行なわれる。なお、上記の乾燥は、例えば、異なる温度が設定された複数の温度制御手段を用いて、多段階に行ってもよい。このような方法によれば、厚みバラツキの小さい粘着剤層を効率よく得られるとともに、過酸化物とポリマーとの架橋反応が適切に行なわれて、粘着特性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0166】
上記ポリマー溶液(1−B)を基材に塗工する方法としては、適宜、適切なコータを用いた塗工方式が採用される。上記コータとしては、例えば、リバースロールコータ、正回転ロールコータ、グラビアコータ、ナイフコータ、ロッドコータ、スロットオリフィスコータ、カーテンコータ、ファウンテンコータ、エアドクタコータ、キスコータ、ディップコータ、ビードコータ、ブレードコータ、キャストコータ、スプレイコータ、スピンコータ、押出コータ、ホットメルトコータ等が挙げられる。好ましくは、リバースロールコータ、グラビアコータ、スロットオリフィスコータ、カーテンコータ、およびファウンテンコータである。上記のコータを用いた塗工方式であれば、表面均一性に優れる塗工物が得られ得る。
【0167】
上記基材としては、目的に応じて、適宜、適切なものが選択され得る。好ましくは、上記基材は、ポリマー溶液(1−B)が塗工される側の表面に、剥離処理されたものが用いられる。上記基材として好ましくは、高分子フィルムが用いられる。ロール作製が可能で、生産性を大幅に向上し得るからである。上記基材は、本発明に用いられる位相差フィルムであってもよく、他の高分子フィルムであってもよい。好ましくは、上記基材は、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである。このような形態によれば、当該フィルムを積層フィルムの剥離ライナーとして用いることができる。上記剥離ライナーは、積層フィルムが実用に供される前に、通常、剥離される。
【0168】
上記組成物を加熱または乾燥するための、温度制御手段としては、適宜、適切なものが選択され得る。上記温度制御手段は、例えば、熱風又は冷風が循環する空気循環式恒温オーブン、マイクロ波もしくは遠赤外線などを利用したヒーター、温度調節用に加熱されたロール、ヒートパイプロール又は金属ベルト等方法が挙げられる。
【0169】
1つの実施形態においては、上記粘着剤層は、上記工程1−A〜工程1−Dの後に、さらに次の工程1−Eを含む方法によって積層される。
工程1−E:工程1−Dで得られる基材の表面に形成された粘着剤層を、位相差フィルムに転写して、積層物を得る工程。
【0170】
このような方法によれば、位相差フィルムの光学特性が変化しにくく、優れた光学特性を有する積層フィルムを得ることができる。なお、上記粘着剤層は、基材から剥離してから位相差フィルムに転写してもよいし、基材から剥離しながら位相差フィルムに転写してもよいし、位相差フィルムに転写したのち基材から剥離してもよい。このようにすることによって、表面均一性に優れた積層物が得られ得る。
【0171】
本発明に用いられる第1の粘着剤層が、イソシアネート基を有する化合物を含む組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含む場合、好ましくは、上記第1の粘着剤層は、工程1−Eの後に、さらに工程1−Fを含む方法によって、熟成される。
工程1−F:工程1−Eで得られる積層物を少なくとも3日間保存する工程。
【0172】
上記工程1−Fは、上記粘着剤層を熟成させるために行なわれる。本明細書において「熟成(エージングともいう)」とは、粘着剤層を適切な条件下で一定時間放置(保存)することによって、当該粘着剤層に含まれる物質の拡散や化学反応を進行させ、好ましい性質、状態を得ることをいう。
【0173】
上記粘着剤層を熟成させる温度(熟成温度)としては、ポリマーや架橋剤の種類、熟成時間等により、適宜、適切な温度が選択され得る。上記熟成温度は、好ましくは10℃〜80℃であり、さらに好ましくは20℃〜60℃であり、特に好ましくは20℃〜40℃である。上記の温度範囲を選択することによって、安定した粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。
【0174】
上記粘着剤層を熟成させる時間(熟成時間)としては、ポリマーや架橋剤の種類、熟成温度等により、適宜、適切な時間が選択され得る。上記熟成温度は、好ましくは3日間以上であり、さらに好ましくは5日間以上であり、特に好ましくは7日間以上である。上記の時間を選択することによって、安定した粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。
【0175】
第1の粘着剤層の、製造方法の一例について、図4を参照して説明する。図4は、本発明に用いられる第1の粘着剤層の代表的な製造工程の概念を示す模式図である。例えば、
基材として、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム502が、第1の繰り出し部501から繰り出され、コータ部503にて、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーを溶剤で希釈して得られるポリマー溶液(1−A)に、過酸化物を主成分とする架橋剤、イソシアネート基を有する化合物、およびシランカップリング剤を配合して調製されたポリマー溶液(1−B)が塗工される。基材の表面に塗工された塗工物は、温度制御手段(乾燥手段)504に送られ、例えば、50℃〜200℃で乾燥,架橋されて、粘着剤層となる。位相差フィルム506が、第2の繰り出し部506から繰り出されて、ラミネートロール507,508にて上記粘着剤層に転写される。このようにして得られた位相差フィルムと第1の粘着剤層とシリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム502との積層物509は、巻き取り部510にて巻き取られる。なお、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム502は、そのまま剥離ライナーとして用いられ得る。
【0176】
D−5.第1の粘着剤層の物理的および化学的性質
上記の方法によって得られ得る粘着剤(結果として、第1の粘着剤層)は、好ましくは、以下の物理的および化学的性質によって特徴付けられる。
【0177】
上記粘着剤のゲル分率は、好ましくは40%〜90%であり、さらに好ましくは50%〜90%であり、特に好ましくは60%〜85%である。ゲル分率を上記の範囲とすることによって、良好な粘着特性を有する粘着剤層が得られ得る。一般的に、粘着剤のポリマーが橋かけされて3次元的な網目構造が形成された部分(ゲル部分ともいう)は、溶剤中に浸漬した場合は、溶剤を吸収して体積を増加させる。この現象を膨潤という。上記ゲル分率は、実施例に記載の方法によって測定された値である。
【0178】
上記粘着剤のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−70℃〜−10℃であり、さらに好ましくは−60℃〜−20℃であり、特に好ましくは−50℃〜−30℃である。ガラス転移温度を上記の範囲とすることによって、位相差フィルム対しては、強固な接着性を有し、且つ、液晶セルの基板(ガラス板)に対しては、適度な接着性を有し、軽剥離性に優れる粘着剤層を得ることができる。
【0179】
上記粘着剤の水分率は、好ましくは1.0%以下であり、さらに好ましくは0.8%以下であり、特に好ましくは0.6%以下である。最も好ましくは0.4%以下である。水分率の理論上の下限値は0である。水分率は、を上記の範囲とすることによって、高温環境下でも、発泡の生じにくい粘着剤層を得ることができる。なお、上記水分率は、150℃の空気循環式恒温オーブンに粘着剤層を投入し、1時間経過後の重量減少率から求めた値である。
【0180】
E.第2の粘着剤層
本発明の積層フィルムは、好ましくは、偏光板と位相差フィルムとの間に第2の粘着剤層がさらに配置され得る。図5は、本発明の1つの実施形態による積層フィルムの概略断面図である。なお、図5における各構成部材の縦、横および厚みの比率は実際とは異なっていることに留意されたい。この積層フィルム11は、偏光板20と、第2の粘着剤層42と、位相差フィルム30と、第1の粘着剤層41とを少なくともこの順に備える。偏光板20は、偏光子21と、該偏光子21の位相差フィルム30を備える側に配置された第1の保護層22と、該偏光子21の位相差フィルム30を備える側とは反対側に配置された第2の保護層23とを含む。位相差フィルム30は、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムである。第1の粘着剤層41は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、過酸化物を主成分とする架橋剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含む。第2の粘着剤層42は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤と、シランカップリング剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含む。
【0181】
E−1.第2の粘着剤層の諸物性
上記第2の粘着剤層の厚みは、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。上記第2の粘着剤層の厚みは、好ましくは2μm〜50μmであり、さらに好ましくは2μm〜40μmであり、特に好ましくは5μm〜35μmである。第2の粘着剤層の厚みを上記の範囲とすることによって、粘着特性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0182】
上記第2の粘着剤層の23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは90%以上である。上記透過率の理論上の上限は100%であり、実現可能な上限は96%である。
【0183】
上記第2の粘着剤層のRe[590]は、好ましくは2nm未満であり、さらに好ましくは1nm未満である。上記第2の粘着剤層のRth[590]は、好ましくは2nm未満であり、さらに好ましくは1nm未満である。
【0184】
上記第2の粘着剤層の23℃における位相差フィルムに対する接着力(F2A)は、好ましくは6N/25mm〜40N/25mmであり、さらに好ましくは8N/25mm〜40N/25mmであり、特に好ましくは10N/25mm〜35N/25mmである。
【0185】
上記接着力は、ガラス板に25mm幅の粘着剤層付偏光板を、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養生後、かかる粘着剤層付偏光板を90度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度である。
【0186】
上記第2の粘着剤層の23℃における偏光板(第1の保護層)に対する投錨力(F2B)は、好ましくは10N/25mm〜40N/25mmであり、さらに好ましくは13N/25mm〜40N/25mmであり、特に好ましくは16N/25mm〜35N/25mmである。上記投錨力は、インジウムスズ酸化物を蒸着処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの処理面に、25mm幅の粘着剤層と偏光板との積層体を、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養成後、かかるポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層ごと180度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度である。
【0187】
本発明の積層フィルムにおいては、上記第1の粘着剤層の23℃ガラス板に対する接着力(F1A)と、上記第1の粘着剤層の23℃における上記位相差フィルムに対する投錨力(F1B)と、上記第2の粘着剤層の23℃における位相差フィルムに対する接着力(F2A)と、上記第2の粘着剤層の23℃における偏光板(第1の保護層)に対する投錨力(F2B)との関係は、F1Aが最も小さくなるように設定され、例えば、F1A<F2A≦F2B≦F1Bである。
【0188】
1つの実施形態においては、上記第1の粘着剤層の23℃ガラス板に対する接着力(F1A)と、上記第2の粘着剤層の23℃における位相差フィルムに対する接着力(F2A)との差(F2A−F1A)は、好ましくは3N/25mm以上であり、さらに好ましくは3N/25mm〜37N/25mmであり、特に好ましくは4N/25mm〜37N/25mmであり、最も好ましくは5N/25mm〜31N/25mmである。F2AおよびF1Aの関係を上記の範囲とすることによって、液晶セルの表面に粘着剤層や位相差フィルムが残留することもなく、軽剥離性に優れた積層フィルムを得ることができる。
【0189】
別の実施形態においては、上記第1の粘着剤層の23℃ガラス板に対する接着力(F1A)と、上記第2の粘着剤層の23℃における偏光板(第1の保護層)に対する投錨力(F2B)との差(F2B−F1A)は、好ましくは5N/25mm以上であり、さらに好ましくは5N/25mm〜40N/25mmであり、特に好ましくは6N/25mm〜37N/25mmであり、最も好ましくは6N/25mm〜31N/25mmである。F2BおよびF1Aの関係を上記の範囲とすることによって、液晶セルの表面に粘着剤層や位相差フィルムが残留することもなく、軽剥離性に優れた積層フィルムを得ることができる。
【0190】
上記第2の粘着剤層は、さらに任意の適切な添加物を含でいてもよい。上記添加物は、例えば、金属粉、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ、充填剤等が挙げられる。また、上記第2の粘着剤層は、隣接する層からの移行物質(例えば、残留溶剤、添加剤、オリゴマーなど)を含んでいてもよい。上記添加物の含有量(重量比)は、好ましくは、上記第2の粘着剤層の全固形分100に対し、0を超え10以下である。また、上記移行物質の含有量(重量比)は、好ましくは、上記第2の粘着剤層の全固形分100に対し、0を超え5以下である。
【0191】
E−2.第2の粘着剤層を形成する粘着剤
第2の粘着剤層を形成する粘着剤は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤と、シランカップリング剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得るものである。
【0192】
E−3.原料組成物の調製(第2の粘着剤層)
上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーは、目的に応じて、適宜、適切なものが採用され得る。上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーは、(メタ)アクリレート系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。当該ポリマーが共重合体である場合、その分子の配列状態は、特に制限はなく、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーの分子配列状態としては、好ましくは、ランダム共重合体である。上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーは、例えば、D−3項に記載の方法によって得ることができる。
【0193】
上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、適宜、適切な値に設定され得る。好ましくは、上記重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した値が、好ましくは1,000,000以上であり、さらに好ましくは1,200,000〜3,000,000であり、特に好ましくは1,200,000〜2,000,000である。上記重量平均分子量(Mw)は、溶剤の種類、重合温度、添加剤等によって、適宜、適切に調整することができる。
【0194】
上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーとしては、例えば、D−3項に記載のものが挙げられる。好ましくは、上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーは、炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーと、(メタ)アクリレート系モノマーと、少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとの共重合体である。このような共重合体を用いることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤が得られ得る。
【0195】
上記直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマー(水酸基で置換されていないユニット)の、アルキル基の炭素数;C1は、好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜6であり、特に好ましくは4〜6である。上記少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマー(水酸基で置換されているユニット)の、アルキル基の炭素数;C2は、好ましくは上記C1よりも少なく、さらに好ましくは2〜4であり、特に好ましくは2である。このように、アルキル基の炭素数を調整することによって、架橋剤との反応性を向上させることができ、より一層、優れた粘着特性を有する粘着剤が得られ得る。
【0196】
特に好ましくは、上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーは、炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーと、(メタ)アクリレート系モノマーと、少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとの共重合体であり、少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマー由来のユニットを、0.05モル%〜0.25モル%含む。少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマー由来のユニットは、さらに好ましくは0.10モル%〜0.22モル%であり、特に好ましくは0.14モル%〜0.20モル%である。
【0197】
少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7−ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0198】
上記架橋剤は、イソシアネート基を有する化合物を主成分とするものであれば、適宜、適切なものが採用され得る。上記イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、D−3項に記載のものが挙げられる。
【0199】
上記架橋剤の配合量は、適宜、適切な量が選択され得る。上記架橋剤の配合量(重量比)は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対して、好ましくは0.15〜1.0であり、さらに好ましくは0.30〜0.90であり、特に好ましくは0.39〜0.81であり、最も好ましくは0.48〜0.72である。上記架橋剤の配合量を上記の範囲とすることによって、より一層過酷な高温,多湿の環境下でも、第2の粘着剤層と位相差フィルムとの界面が剥がれにくい積層フィルムを得ることができる。
【0200】
上記シランカップリング剤としては、例えば、D−3項に記載のものが挙げられる。第2の粘着剤層に用いられるシランカップリング剤は、好ましくは、エポキシ基を有するシランカップリング剤であり、さらに好ましくはγ−グリドキシプロピルトリメトキシシランである。
【0201】
上記シランカップリング剤の配合量は、目的に応じて、適宜、適切な量が選択され得る。上記配合量(重量比)は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対して、好ましくは0.01〜0.20であり、さらに好ましくは0.037〜0.113であり、特に好ましくは0.049〜0.101であり、最も好ましくは0.060〜0.090である。上記シランカップリング剤の配合量を上記の範囲とすることによって、より一層過酷な高温,多湿の環境下でも、剥がれや気泡が発生しない積層フィルムを得ることができる。
【0202】
1つの実施形態においては、上記組成物は、以下の工程2−Aおよび工程2−Bを含む方法により調製される。
工程2−A:(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーを溶剤で希釈してポリマー溶液(2−A)を調製する工程、
工程2−B:工程2−Aで得られるポリマー溶液(2−A)に、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤、およびシランカップリング剤を配合してポリマー溶液(2−B)を調整する工程。
【0203】
上記工程2−Aおよび工程2−Bは、配合した物質を均一に分散または溶解して、均一な組成物を得るために行なわれる。上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーが溶液重合法で重合される場合には、得られる反応溶液を上記ポリマー溶液(2−A)としてそのまま用いてもよい。あるいは、得られる反応溶液に、さらに溶剤を加え、希釈して用いてもよい。
【0204】
上記溶剤としては、例えば、D−3項に記載したものが挙げられる。好ましくは、上記溶剤は、トルエンまたは酢酸エチルである。これらの溶剤は、生産性、作業性、経済性に優れる。
【0205】
上記ポリマー溶液(2−B)の全固形分濃度は、好ましくは5重量%〜50重量%であり、さらに好ましくは10重量%〜40重量%である。全固形分濃度を上記の範囲とすることによって、基材への塗工性に優れるものが得られ、結果として、表面均一性に優れる粘着剤層を得ることができる。
【0206】
上記組成物には、この他にも、任意の適切な添加剤が配合され得る。上記添加剤としては、例えば、D−3項に記載したものが挙げられる。上記添加剤の配合量(重量比)は、好ましくは、上記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対し、0を超え5以下である。
【0207】
上記組成物を調製する際の各材料の配合方法としては、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記組成物は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーに、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤を加えた後に、シランカップリング剤を加えて調製される。
【0208】
E−4.組成物の架橋方法(第2の粘着剤層)
上記組成物を架橋させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記組成物を20℃〜200℃で加熱する方法が用いられる。加熱温度は、好ましくは50℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、表面均一性に優れる粘着剤層が得られ得る。
【0209】
加熱時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記加熱時間は、好ましくは10秒〜20分、さらに好ましくは20秒〜10分、特に好ましくは30秒〜5分である。加熱時間を上記の範囲とすることによって、表面均一性に優れる粘着剤層が得られ得る。
【0210】
1つの実施形態においては、上記組成物は、上記工程2−Aおよび工程2−Bの後に、次の工程2−Cおよび工程2−Dを含む方法によって架橋される。
工程2−C:工程2−Bで得られるポリマー溶液(2−B)を基材に塗工する工程、
工程2−D:工程2−Cで得られる塗工物を20℃〜200℃で乾燥し、基材の表面に粘着剤層を形成する工程。
【0211】
上記工程2−Cは、厚みバラツキの小さい塗工物を得るために行なわれる。上記工程2−Dは、塗工物の溶剤を蒸発させるために行なわれる。なお、上記の乾燥は、例えば、異なる温度が設定された複数の温度制御手段を用いて、多段階に行ってもよい。このような方法によれば、厚みバラツキの小さい粘着剤層を効率よく得ることができる。
【0212】
上記ポリマー溶液(2−B)を基材に塗工する方法、基材の種類、および温度制御手段は、例えば、D−4項に記載したコータを用いた塗工方式、基材、および温度制御手段が採用される。
【0213】
1つの実施形態においては、上記粘着剤層は、上記工程2−A〜2−Dの後に、さらに次の工程2−Eおよび工程2−Fを含む方法によって、積層,熟成される。
工程2−E:工程2−Dで得られる基材の表面に形成された粘着剤層を、位相差フィルムに転写して、積層物を得る工程、
工程2−F:工程2−Eで得られる積層物を少なくとも3日間保存する工程。
【0214】
このような方法によれば、位相差フィルムの光学特性が変化しにくく、優れた光学特性を有する積層フィルムを得ることができる。なお、粘着剤層は、基材から剥離してから位相差フィルムに転写してもよいし、基材から剥離しながら位相差フィルムに転写してもよいし、位相差フィルムに転写したのち基材から剥離してもよい。このようにすることによって、表面均一性に優れた積層物が得られ得る。上記工程2−Fは、上記粘着剤層を熟成させるために行なわれる。
【0215】
上記粘着剤層を熟成させる温度(熟成温度)としては、ポリマーや架橋剤の種類、熟成時間等により、適宜、適切な温度が選択され得る。上記熟成温度は、好ましくは10℃〜80℃であり、さらに好ましくは20℃〜60℃であり、特に好ましくは20℃〜40℃である。上記の温度範囲を選択することによって、安定した粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。
【0216】
上記粘着剤層を熟成させる時間(熟成時間)としては、ポリマーや架橋剤の種類、熟成温度等により、適宜、適切な時間が選択され得る。上記熟成温度は、好ましくは3日間以上であり、さらに好ましくは5日間以上であり、特に好ましくは7日間以上である。上記の時間を選択することによって、安定した粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。
【0217】
E−5.第2の粘着剤層の物理的および化学的性質
上記の方法によって得られ得る粘着剤(結果として、第2の粘着剤層)は、好ましくは、以下の物理的および化学的性質によって特徴付けられる。
【0218】
上記粘着剤のゲル分率は、好ましくは60%〜96%であり、さらに好ましくは70%〜94%であり、特に好ましくは78%〜92%である。ゲル分率を上記の範囲とすることによって、位相差フィルム対しては、強固な接着性を有し、且つ、液晶セルの基板(ガラス板)に対しては、粘着特性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0219】
上記粘着剤のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−42℃〜−14℃であり、さらに好ましくは−37℃〜−18℃であり、特に好ましくは−34℃〜−21℃である。ガラス転移温度を上記の範囲とすることによって、良好な粘着特性を有する粘着剤層が得られ得る。
【0220】
上記粘着剤の水分率は、好ましくは0.4%以上であり、さらに好ましくは0.4%〜0.8%である。水分率の理論上の下限値は0である。水分率を上記の範囲とすることによって、位相差フィルムとの接着性に優れた粘着剤層を得ることができる。なお、上記水分率は、150℃の空気循環式恒温オーブンに粘着剤層を投入し、1時間経過後の重量減少率から求めた値である。
【0221】
F.液晶パネル
図6(a)および(b)は、本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。なお、見やすくするために、図6(a)および(b)の各構成部材の縦、横および厚みの比率は、実際とは異なっていることに留意されたい。
【0222】
図6(a)を参照すると、液晶パネル100は、液晶セル50の一方の片側に本発明の積層フィルム10を備える。好ましくは、液晶セル50の他方の側には、反射フィルム(図示せず)または第2の偏光板(図示せず)が配置され得る。第2の偏光板が配置される場合、好ましくは、上記第2の偏光板は、その吸収軸方向が偏光子21の吸収軸方向と実質的に直交となるように配置される。本明細書において、「実質的に直交」とは、偏光子21の吸収軸方向と第2の偏光板(偏光子)の吸収軸方向とのなす角度が、90°±2.0°である場合を包含し、好ましくは90°±1.0°であり、さらに好ましくは90°±0.5°である。なお、本発明において、液晶セルの両側に配置される偏光子は、それぞれ同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0223】
図6(b)を参照すると、液晶パネル101は、液晶セル50の一方の側に本発明の積層フィルム10を備え、液晶セル50の他方の側に本発明の積層フィルム10’を備える。好ましくは、上記積層フィルム10および10’は、偏光子21の吸収軸方向が、偏光子21’の吸収軸方向と実質的に直交するように配置される。「実質的に直交」とは、偏光子21の吸収軸方向と第2の偏光板(偏光子)の吸収軸方向とのなす角度が、90°±2.0°である場合を包含し、好ましくは90°±1.0°であり、さらに好ましくは90°±0.5°である。なお、本発明において、積層フィルム10および10’は、それぞれ同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0224】
図6を参照すると、本発明に用いられる液晶セル50は、一対の基板51、51’と、基板51、51’の間に挟持された表示媒体としての液晶層52とを有する。一方の基板(アクティブマトリクス基板)51’には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このアクティブ素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方の基板(カラーフィルター基板)51には、カラーフィルターが設けられる。なお、カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板51’に設けてもよい。あるいは、例えば、フィールドシーケンシャル方式のように液晶表示装置の照明手段にRGB3色光源が用いられる場合は、上記カラーフィルターは省略され得る。基板51と基板51’との間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御される。基板51および基板51’の液晶層52と接する側には、例えばポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。
【0225】
F.液晶表示装置
図7は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。なお、見やすくするために、図7の各構成部材の縦、横および厚みの比率は、実際とは異なっていることに留意されたい。この液晶表示装置200は、液晶パネル100(または101)と、液晶パネル100の一方の側に配置されたバックライトユニット80とを備える。図示例では、バックライトユニットとして、直下方式が採用された場合を示しているが、これは例えば、サイドライト方式のものであってもよい。直下方式が採用される場合、上記バックライトユニット80は、バックライト81と、反射フィルム82と、拡散板83と、プリズムシート84と、輝度向上フィルム85とを少なくとも備える。サイドライト方式が採用される場合、バックライトユニットは、上記の構成に加え、さらに導光板と、ライトリフレクターとを少なくとも備える。これらの光学部材を用いることによって、液晶表示装置は、さらに優れた表示特性が得られ得る。なお、図7に例示した光学部材は、本発明の効果が得られる限りにおいて、液晶表示装置の照明方式や液晶セルの駆動モードなど、用途に応じてその一部が省略され得るか、または、他の光学部材に代替され得る。
【0226】
上記液晶表示装置は、液晶パネルの背面から光を照射して画面を見る、透過型であっても良いし、液晶パネルの視認側から光を照射して画面を見る、反射型であっても良い。あるいは、上記液晶表示装置は、透過型と反射型の両方の性質を併せ持つ、半透過型であっても良い。好ましくは、本発明の液晶表示装置は、透過型である。斜め方向の光漏れが小さい液晶表示装置が得られ得るからである。
【0227】
上記バックライトは、任意の適切な構造のものが採用され得る。上記バックライトの構造としては、代表的には、液晶パネルの真下から光を照射する「直下方式」、および液晶パネルの横端から光を照射する「エッジライト方式」が挙げられる。好ましくは、上記照明手段の構造は、直下方式である。直下方式のバックライトは、高い輝度が得られるからである。
【0228】
上記バックライトとしては、目的に応じて、適宜、適切なものが採用され得る。上記バックライトとしては、例えば、冷陰極蛍光管(CCFL)、発光ダイオード(LED)、有機EL(OLED)、電界放出型素子(FED)等が挙げられる。バックライトに発光ダイオードが採用される場合、その光源の色は、白色でも良いし、RGB3色でも良い。上記発光ダイオードにRGB3色光源を用いる場合、カラーフィルターを用いずにカラー表示が可能な、フィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置が得られ得る。
【0229】
上記反射フィルムは、液晶パネルの視認側とは反対側に光が抜けるのを防ぎ、さらに、バックライトの光を効率的に導光板に入射させるために用いられる。上記反射フィルムとしては、例えば、銀を蒸着させたポリエチレンテレフタレートフィルムや、ポリエステル系樹脂を多層に積層した積層フィルムが用いられる。上記反射フィルムの反射率は、好ましくは波長410nm〜800nmの全域で90%以上である。上記反射フィルムの厚みは、通常、50μm〜200μmである。上記反射フィルムは、市販の反射フィルムをそのまま用いることもできる。市販の反射フィルムとしては、例えば、(株)きもと製レフホワイトシリーズや、住友スリーエム(株)製 ビキュイティESRシリーズ等が挙げられる。
【0230】
上記導光板は、バックライトからの光を画面全体に行き渡らせるために使用される。上記導光板としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等を、光源から離れるほど厚さが薄くなるようにテーパ形状に成形したものが用いられる。
【0231】
上記拡散板は、導光板から出た光を広角に導き、画面を均一な明るさにするために使用される。上記拡散板としては、例えば、凹凸処理が施された高分子フィルムや、拡散剤を含有した高分子フィルムが用いられる。上記拡散板のヘーズは、好ましくは85%〜92%である。さらに上記拡散板の全光線透過率は、好ましくは90%以上である。上記拡散板は、市販の拡散板をそのまま用いることもできる。市販の拡散板としては、例えば、恵和(株)製OPLUSシリーズや、(株)きもと製 ライトアップシリーズ等が挙げられる。
【0232】
上記プリズムシートは、導光板により広角にされた光を特定の方向に集め、液晶表示装置の正面方向の輝度を向上させるために使用される。上記プリズムシートとしては、例えば、ポリエステル系樹脂からなるベースフィルムの表面に、アクリル系樹脂または感光性樹脂からなるプリズム層を積層したものが用いられる。上記プリズムシートは、市販のプリズムシートをそのまま用いることもできる。市販のプリズムシートとしては、例えば、三菱レイヨン(株)ダイヤアートシリーズが挙げられる。
【0233】
上記輝度向上フィルムは、液晶表示装置の正面および斜め方向の輝度を向上させるために使用される。上記輝度向上フィルムは、市販のものをそのまま用いることができる。市販の輝度向上フィルムとしては、例えば、日東電工(株)製NIPOCS PCFシリーズや住友スリーエム(株)製ビキュイティDBEFシリーズ等が挙げられる。
【0234】
G.液晶表示装置の表示特性
本発明の積層フィルムを備える液晶表示装置の黒画像を表示させた場合の極角60°、全方位(0°〜360°)におけるY値の最大値は、好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.4以下であり、特に好ましくは0.3以下である。さらに、上記液晶表示装置の黒画像を表示させた場合の極角60°、全方位(0°〜360°)におけるY値の平均値は、好ましくは0.3以下であり、さらに好ましくは0.2以下であり、特に好ましくは0.1以下である。上記Y値は、CIE1931XYZ表示系で定義される三刺激値Yであり、理論上の下限値は0である。この値は小さければ小さいほど、黒画像を表示させた液晶表示装置の画面の、斜め方向の光漏れ量が小さいことを示す。
【0235】
本発明の液晶表示装置は、黒画像を表示させた場合の極角60°、全方位(0°〜360°)におけるカラーシフト量(Δa**)の最大値は、好ましくは8.0以下であり、さらに好ましくは6.0以下であり、特に好ましくは4.0以下である。さらに、上記液晶表示装置の黒画像を表示させた場合の極角60°、全方位(0°〜360°)におけるカラーシフト量(Δa**)の平均値は、好ましくは4.0以下であり、さらに好ましくは3.0以下であり、特に好ましくは2.0以下である。ここで、Δa**は、式;{(a*2+(b*21/2から算出される値であり、a*,b*は、CIE1976L***色空間で定義される色座標であり、このΔa**の理論上の下限値は0である。この値は小さければ小さいほど、黒画像を表示させた液晶表示装置の画面の、斜め方向の色変化が小さいことを示す。
【0236】
H.本発明の液晶表示装置の用途
本発明の液晶表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機などのOA機器、携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯情報端末(PDA),携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ,テレビ,電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター,カーナビゲーションシステム用モニター,カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター,医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
【0237】
好ましくは、本発明の液晶表示装置の用途は、テレビである。特に、大型のテレビに好ましく使用される。上記テレビの画面サイズは、好ましくはワイド17型(373mm×224mm)以上であり、さらに好ましくはワイド23型(499mm×300mm)以上であり、特に好ましくはワイド26型(566mm×339mm)以上であり、最も好ましくはワイド32型(687mm×412mm)以上である。
【実施例】
【0238】
本発明について、以上の実施例および比較例を用いて更に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
(1)偏光板の単体透過率、偏光度、色相a値、色相b値の測定方法:
分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製製品名「DOT−3」]を用いて、23℃で測定した。
(2)分子量の測定方法:
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法よりポリスチレンを標準試料として算出した。具体的には、以下の装置、器具および測定条件により測定した。なお、サンプルは、
・測定サンプル:試料をテトラヒドフランに溶解して0.1重量%の溶液とし、一晩静置した後、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したろ液を用いた。
・分析装置:TOSOH製「HLC−8120GPC」
・カラム:TSKgelSuperHM−H/H4000/H3000/H2000
・カラムサイズ:各6.0mmI.D.×150mm
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流量:0.6ml/min.
・検出器:RI
・カラム温度:40℃
・注入量:20μl
(3)厚みの測定方法:
厚みが10μm未満の場合、薄膜用分光光度計[大塚電子(株)製 製品名「瞬間マルチ測光システム MCPD−2000」]を用いて測定した。厚みが10μm以上の場合、アンリツ製デジタルマイクロメーター「KC−351C型」を使用して測定した。
(4)フィルムの平均屈折率の測定方法:
アッベ屈折率計[アタゴ(株)製製品名「DR−M4」]を用いて、23℃における波長589nmの光で測定した屈折率より求めた。
(5)位相差値(Re[480]、Re[590]、Rth[590])の測定方法:
王子計測機器(株)製 商品名「KOBRA21−ADH」を用いて、23℃における波長480nmおよび590nmの光で測定した。
(6)透過率(T[590])の測定方法:
紫外可視分光光度計[日本分光(株)製製品名「V−560」]を用いて、23℃における波長590nmの光で測定した。
(7)光弾性係数の絶対値(C[590])の測定方法:
分光エリプソメーター[日本分光(株)製製品名「M−220」]を用いて、サンプル(サイズ2cm×10cm)の両端を挟持して応力(5〜15N)をかけながら、サンプル中央の位相差値(23℃/波長590nm)を測定し、応力と位相差値の関数の傾きから算出した。
(8)収縮性フィルムの収縮率の測定方法:
JIS Z 1712−1997の加熱収縮率A法に準じて求めた(ただし、加熱温度は120℃に代えて140℃(または160℃)とし、試験片に荷重3gを加えたことが異なる)。具体的には、幅20mm、長さ150mmの試験片を縦[MD]、横[TD]方向から各5枚採り、それぞれの中央部に約100mmの距離において標点をつけた試験片を作製する。該試験片は、温度140℃±3℃(または160℃±3℃)に保持された空気循環式乾燥オーブンに、荷重3gをかけた状態で垂直につるし、15分間加熱した後、取り出し、標準状態(室温)に30分間放置してから、JISB 7507に規定するノギスを用いて、標点間距離を測定して、5個の測定値の平均値を求め、S(%)=[[加熱前の標点間距離(mm)−加熱後の標点間距離(mm)]/加熱前の標点間距離(mm)]×100より算出した。
(9)収縮性フィルムの収縮応力の測定方法:
以下の装置を用い、TMA法にて140℃および150℃における幅[TD]方向の収縮応力T140[TD]および収縮応力T150[TD]を測定した。
・装置:セイコーインスツルメンツ(株)製「TMA/SS6100」
・データ処理:セイコーインスツルメンツ(株)製「EXSTAR6000」
・測定モード:等速昇温測定(10℃/分)
・測定雰囲気:大気中(23℃)
・荷重:20mN
・サンプルサイズ:15mm×2mm(長辺が幅[TD]方向)
(10)粘着剤層の接着力の測定方法:
ガラス板に25mm幅のサンプルを、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養生後、かかるサンプルを90度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度を測定した。
(11)粘着剤層の投錨力の測定方法:
インジウムスズ酸化物を蒸着処理したポリエチレンテレフタレートフィルム[尾池工業(株)製商品名「125テトライトOES」(厚み125μm)]の処理面に、25mm幅の粘着剤層と位相差フィルムとの積層体を、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養成後、かかるポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層ごと180度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度を測定した。
(12)粘着剤のガラス転移温度(Tg)の測定方法:
セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計 製品名「DSC220C」を用いて、JISK 7121に準じたDSC法により求めた。
(13)粘着剤の水分率の測定方法:
150℃の空気循環式恒温オーブンに粘着剤層を投入し、1時間経過後の重量減少率[(W1−W2)/W1×100]から求めた。ここで、W1は空気循環式恒温オーブンに投入前の粘着剤層の重量であり、W2は空気循環式恒温オーブンに投入後の粘着剤層の重量である。
(14)粘着剤のゲル分率の測定方法:
予め重量を測定した粘着剤のサンプルを、酢酸エチルを満たした容器に入れ、23℃で7日間放置した後、粘着剤を取り出して、溶剤をふき取った後、重量を測定した。ゲル分率は、次式:[(WA−WB)/WA×100]から求めた。ここで、WAは酢酸エチルに投入前の粘着剤層の重量であり、WBは酢酸エチルに投入後の粘着剤層の重量である。
(15)液晶表示装置の光漏れ量(Y)の測定方法:
23℃の暗室でライトを点灯させてから30分経過した後、ELDIM社製 製品名「EZ Contrast160D」を用いて、黒画像を表示した画面の方位角0°〜360°、極角60°におけるCIE1931XYZ表示系で定義される三刺激値Y値を測定した。なお、液晶パネルの長辺方向を方位角0°とし、法線方向を極角0°とした。
(16)液晶表示装置のカラーシフト量(Δa**)の測定方法:
23℃の暗室でライトを点灯させてから30分経過した後、ELDIM社製 製品名「EZ Contrast160D」を用いて、黒画像を表示した画面の方位角0°〜360°、極角60°におけるCIE1976L***色空間で定義される色座標a*およびb*を測定した。斜め方向の、カラーシフト量(Δa**)は、次式;{(a*2+(b*21/2からを算出した。
【0239】
<位相差フィルムの作製>
[参考例1]
厚み100μmのノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加した樹脂(ノルボルネン系樹脂)を含有する高分子フィルム[(株)オプテス製商品名「ゼオノアZF−14−100」(平均屈折率=1.52、Tg=136℃、Re[590]=3.0nm、Rth[590]=5.0nm)]の両側に、収縮性フィルムA(厚み60μmのポリプロピレンを含有する二軸延伸フィルム[東レ(株)製 商品名「トレファンBO2873」])をアクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合わせた。その後、ロール延伸機でフィルム長手方向を保持して、146℃の空気循環式オーブン内で1.38倍に延伸し、延伸後、上記収縮性フィルムAを上記アクリル系粘着剤層と共に剥離して、位相差フィルムを作製した。上記位相差フィルムを位相差フィルムAとし、その特性を表1に示す。この位相差フィルムは、屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を示し、波長分散値(D)は1.00であった。上記収縮性フィルムAの物性は、表2に示す。
【0240】
【表1】

【0241】
【表2】

【0242】
[参考例2〜4,6,7]
表2に示す延伸条件を採用した以外は、参考例1と同様の方法で、位相差フィルムB〜D,F,Gを作製した。これら位相差フィルムの特性を表1に示す。これらの位相差フィルムは、いずれも屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を示し、波長分散値(D)は1.00であった。
【0243】
[参考例5]
厚み130μmのノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加した樹脂(ノルボルネン系樹脂)を含有する高分子フィルム[JSR(株)製商品名「アートンFLZU130D0」(重量平均分子量=78,200、平均屈折率=1.53、Tg=135℃、Re[590]=3.0nm、Rth[590]=5.0nm)]の両側に、収縮性フィルムAを、アクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合わせた。その後、ロール延伸機でフィルム長手方向を保持して、146℃の空気循環式オーブン内で1.38倍に延伸し、延伸後、上記収縮性フィルムAを上記アクリル系粘着剤層と共に剥離して、位相差フィルムEを作製した。その特性を表1に示す。この位相差フィルムは、屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を示し、波長分散値(D)は1.00であった。
【0244】
[参考例8]
延伸倍率を1.43倍とし、収縮性フィルムB(厚み60μmのポリプロピレンを含有する二軸延伸フィルム)を用いた以外は、参考例5と同様の方法で位相差フィルムHを作製した。その特性を表1に示す。この位相差フィルムは、屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を示し、波長分散値(D)は1.00であった。上記収縮性フィルムBの物性は、表2に示す。
【0245】
[参考例9]
延伸倍率を1.42倍とし、収縮性フィルムC(厚み60μmのポリプロピレンを含有する二軸延伸フィルム)を用いた以外は、参考例5と同様の方法で位相差フィルムIを作製した。その特性を表1に示す。この位相差フィルムは、屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を示し、波長分散値(D)は1.00であった。上記収縮性フィルムCの物性は、表2に示す。
【0246】
[参考例10]〜[参考例12]
厚み40μmのノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加した樹脂(ノルボルネン系樹脂)を含有する高分子フィルム[(株)オプテス製商品名「ゼオノアZF−14−40」(平均屈折率=1.52、Tg=136℃、Re[590]=1.0nm、Rth[590]=3.0nm)]を用いたことと、延伸条件を表1に示すように設定したこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差フィルムJ〜Lを作製した。これら位相差フィルムの特性を表1に示す。これらの位相差フィルムは、いずれも屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を示し、波長分散値(D)は1.00であった。
【0247】
[参考例13]
厚み55μmのポリカーボネート系樹脂を含有する高分子フィルム[(株)カネカ製商品名「エルメック」(重量平均分子量=60,000、平均屈折率=1.53、Tg=136℃、Re[590]=1.0nm、Rth[590]=3.0nm)]の両側に、収縮性フィルムD(厚み60μmのポリプロピレンを含有する二軸延伸フィルム[東レ(株)製 商品名「トレファンBO2570A」])をアクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合わせた。その後、ロール延伸機でフィルム長手方向を保持して、147℃の空気循環式オーブン内で1.27倍に延伸し、延伸後、上記収縮性フィルムDを上記アクリル系粘着剤層と共に剥離して、位相差フィルムMを作製した。その特性を表1に示す。この位相差フィルムは、屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を示し、波長分散値(D)は1.08であった。上記収縮性フィルムDの物性は、表2に示す。
【0248】
図8は、参考例1〜12で得られた位相差フィルムの面内の位相差値Re([590])と、Nz係数との関係を示すグラフである。図9は、参考例1〜12で得られた位相差フィルムの面内の位相差値Re([590])と、厚み方向の位相差値(Rth[590])との関係を示すグラフである。このように、特定の収縮性フィルム、延伸方法、および特定の延伸条件を採用することによって、屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を有し、様々な位相差値とNz係数を有する位相差フィルムを実際に得ることができた。
【0249】
<偏光板の作製>
[参考例14]
市販の偏光板[日東電工(株)商品名「SIG1423DU」]を、偏光板Aとしてそのまま用いた。この偏光板は、偏光子と、該偏光子の液晶セル側に配置される第1の保護層と、該液晶セル側とは反対側に配置される第2の保護層とを含む。上記偏光板Aの第1の保護層は、実質的に等方性を有し、Re[590]は0.5nmであり、Rth[590]は1.0nmである。
【0250】
[参考例15]
市販の偏光板[日東電工(株)商品名「TEG1425DU」]を、偏光板Bとして、そのまま用いた。この偏光板は、偏光子と、該偏光子の液晶セル側に配置される第1の保護層と、該液晶セル側とは反対側に配置される第2の保護層とを含む。上記偏光板Bの第1の保護層は、屈折率楕円体がnx≒ny>nzの関係を有し、Re[590]は1.3nmであり、Rth[590]は39.8nmである。
【0251】
【表3】

【0252】
<粘着剤の作製>
[参考例16]
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えた反応容器に、ブチルアクリレート99重量部と、4−ヒドロキシブチルアクリレート1.0重量部と、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.3重量部、酢酸エチルを加え、溶液を調製した。次に、この溶液に窒素ガスを吹き込みながら攪拌して、60℃で4時間重合反応を行い、重量平均分子量165万のブチルアクリレートと4−ヒドロキシブチルアクリレートのアクリレート系コポリマーを得た。
【0253】
このアクリレート系コポリマーに、さらに酢酸エチルを加えて希釈し、全固形分濃度30重量%のポリマー溶液(1−A)を調製した。次に、このポリマー溶液(1−A)に、上記アクリレート系コポリマー100重量部に対して0.2重量部のジベンゾイルパーオキシドを含む架橋剤[日本油脂(株)製商品名「ナイパーBO−Y」]と、上記アクリレート系コポリマー100重量部に対して0.02重量部のトリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート[三井武田ケミカル(株)製商品名「タケネートD110N」]と、上記アクリレート系コポリマー100重量部に対して0.2重量部のアセトアセチル基を含むシランカップリング剤[総研化学(株)製商品名「A−100」]とをこの順に配合して、ポリマー溶液(1−B)を調製した。
【0254】
このポリマー溶液(1−B)を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(基材)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで70秒間乾燥し、基材の表面に粘着剤層を形成した。次に、基材の表面に形成された粘着剤層を、コロナ処理(1.2kW/15m/分)された位相差フィルムEの処理面に積層して、積層物を得た。この積層物は、70℃の空気循環式恒温オーブンで7日間熟成させた。このようにして得られた粘着剤層を粘着剤層A(厚み21μm)とし、その特性を表4に示す。なお、本発明においては、上記位相差フィルムEに変えて、表2に示す位相差フィルムA〜Lや表3に示す偏光板にも、ここに記載した同様の方法で、上記粘着剤層Aを形成することができ、同等の粘着特性を得ることができる。
【0255】
【表4】

【0256】
[参考例17]
トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート[三井武田ケミカル(株)製商品名「タケネートD110N」]を、上記アクリレート系コポリマー100重量部に対して0.12重量部用いたこと以外は、参考例16と同様の方法で、粘着剤層B(厚み21μm)を作製した。粘着剤層Bの特性を表4に示す。なお、本発明においては、上記位相差フィルムEに変えて、表2に示す位相差フィルムA〜Lや表3に示す偏光板にも、ここに記載した同様の方法で、上記粘着剤層Bを形成することができ、同等の粘着特性を得ることができる。
【0257】
[参考例18]
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えた反応容器に、ブチルアクリレート100重量部と、アクリル酸5重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.075重量部と、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.3重量部、酢酸エチルを加え、溶液を調製した。次に、この溶液に窒素ガスを吹き込みながら攪拌して、60℃で4時間重合反応を行い、重量平均分子量220万のブチルアクリレートとアクリル酸と2−ヒドロキシエチルアクリレートのアクリレート系コポリマーを得た。
【0258】
このアクリレート系コポリマーに、さらに酢酸エチルを加えて希釈し、全固形分濃度30重量%のポリマー溶液(2−A)を調製した。次に、このポリマー溶液(2−A)に、上記アクリレート系コポリマー100重量部に対して0.6重量部のイソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤[日本ポリウレタン(株)商品名「コロネートL」]と、上記アクリレート系コポリマー100重量部に対して0.075重量部のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン[信越化学工業(株)製 商品名「KBM−403」]とをこの順に配合して、ポリマー溶液(2−B)を調製した。
【0259】
このポリマー溶液(2−B)を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(基材)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで70秒間乾燥し、基材の表面に粘着剤層を形成した。次に、基材の表面に形成された粘着剤層を、コロナ処理(1.2kW/15m/分)された位相差フィルムEの処理面に積層して、積層物を得た。この積層物は、23℃の空気循環式恒温オーブンで7日間熟成させた。このようにして得られた粘着剤層を粘着剤層C(厚み21μm)とし、その特性を表4に示す。なお、本発明においては、上記位相差フィルムEに変えて、表2に示す位相差フィルムA〜Lや表3に示す偏光板にも、ここに記載した同様の方法で、上記粘着剤層Cを形成することができ、同等の粘着特性を得ることができる。
【0260】
<液晶セルの作製>
[参考例19]
IPSモードの液晶セルを含む液晶表示装置[(株)東芝製32V型ワイド液晶テレビ 商品名「FACE(型番:32LC100)」、画面サイズ:697mm×392mm)]から、液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた光学フィルムを全て取り除いて、上記液晶セルのガラス面(表裏)を洗浄した。このようにして作製した液晶セルを液晶セルAとした。
【0261】
<積層フィルムの作製>
[実施例1]
参考例1で得られた位相差フィルムAの一方の面に、参考例16と同様の方法で、粘着剤層Aを形成した。また、参考例14で得られた偏光板Aの一方の面に、参考例18と同様の方法で、粘着剤層Cを形成した。上記偏光板Aと上記位相差フィルムAとを、粘着剤層Cを備える偏光板Aの剥離ライナーを剥離して、位相差フィルムAの粘着剤層Aを備える側とは反対側に、ラミネーターを用いて貼着した。このとき、上記位相差フィルムAの遅相軸方向が、偏光板Aの吸収軸方向と実質的に直交するように積層した。このようにして作製した積層フィルムAは、偏光板Aと、粘着剤層C(第2の粘着剤層)と、位相差フィルムAと、粘着剤層A(第1の粘着剤層)とをこの順に備える。
【0262】
[実施例2]
参考例5で得られた位相差フィルムEの一方の面に、参考例16と同様の方法で、粘着剤層Aを形成した。また、参考例15で得られた偏光板Bの一方の面に、参考例18と同様の方法で、粘着剤層Cを形成した。上記偏光板Bと上記位相差フィルムEとを、粘着剤層Cを備える偏光板Bの剥離ライナーを剥離して、位相差フィルムEの粘着剤層Aを備える側とは反対側に、ラミネーターを用いて貼着した。このとき、上記位相差フィルムEの遅相軸方向が、偏光板Bの吸収軸方向と実質的に直交するように積層した。このようにして作製した積層フィルムBは、偏光板Bと、粘着剤層C(第2の粘着剤層)と、位相差フィルムEと、粘着剤層A(第1の粘着剤層)とをこの順に備える。
【0263】
[比較例1]
参考例13で得られた位相差フィルムMの一方の面に、参考例16と同様の方法で、粘着剤層Aを形成した。また、参考例14で得られた偏光板Aの一方の面に、参考例18と同様の方法で、粘着剤層Cを形成した。上記偏光板Aと上記位相差フィルムMとを、粘着剤層Cを備える偏光板Aの剥離ライナーを剥離して、位相差フィルムMの粘着剤層Aを備える側とは反対側に、ラミネーターを用いて貼着した。このとき、上記位相差フィルムMの遅相軸方向が、偏光板Aの吸収軸方向と実質的に直交するように積層した。このようにして作製した積層フィルムXは、偏光板Aと、粘着剤層C(第2の粘着剤層)と、位相差フィルムMと、粘着剤層A(第1の粘着剤層)とをこの順に備える。
【0264】
[比較例2]
参考例1で得られた位相差フィルムAの一方の面に、参考例18と同様の方法で、粘着剤層Cを形成した。また、参考例14で得られた偏光板Aの一方の面に、参考例18と同様の方法で、粘着剤層Cを形成した。上記偏光板Aと上記位相差フィルムAとを、粘着剤層Cを備える偏光板Aの剥離ライナーを剥離して、位相差フィルムAの粘着剤層Cを備える側とは反対側に、ラミネーターを用いて貼着した。このとき、上記位相差フィルムAの遅相軸方向が、偏光板Aの吸収軸方向と実質的に直交するように積層した。このようにして作製した積層フィルムYは、偏光板Aと、粘着剤層C(第2の粘着剤層)と、位相差フィルムAと、粘着剤層C(第1の粘着剤層)とをこの順に備える。
【0265】
<液晶表示装置の光学特性の評価>
[実施例3]
実施例1で得られた積層フィルムAを、参考例19で得られた液晶セルの視認側に、偏光板Aの吸収軸方向が液晶セルAの長辺方向と実質的に平行になるように、粘着剤層Aを介して貼着した。続いて、上記液晶セルAのバックライト側に、参考例14で得られた偏光板A’を、該偏光板A’の吸収軸方向が液晶セルAの長辺方向と実質的に直交するように、粘着剤層Aを介して貼着した。この液晶パネルAをバックライトユニット[(株)アルゴ製商品名「プロ用LIGHT−BOX 35H」]と結合し、液晶表示装置Aを作製した。バックライトを点灯して30分経過した後、液晶表示装置Aの斜め方向のカラーシフト量(Δa**)、および斜め方向の光漏れ量(Y値)を測定した。その特性を表5に示す。図10は、実施例3と、後述する比較例3の液晶表示装置の極角60°、方位角0°〜360°のY値を示すグラフである。図11は、実施例3と、後述する比較例3の液晶表示装置の極角60°、方位角0°〜360°のΔa**値を示すグラフである。
【0266】
バックライトを点灯し続けて3時間後の、液晶表示装置Aの表示画面の均一性を観察した。その結果、光学的なムラは観察されなかった。パネル全面で良好な表示均一性を有するものであった(表5中、「表示均一性」“○”と表記した)。なお、本実施例では、積層フィルムAを用いたが、これに代えて、実施例2で得られた積層フィルムBを用いても、同等の優れた表示特性と、優れた表示均一性が得られ得る。
【0267】
[比較例3]
上記積層フィルムAに代えて、比較例1で得られた積層フィルムXを用いた以外は、実施例4と同様の方法で、液晶パネルXおよび液晶表示装置Xを作製した。バックライトを点灯して30分経過した後、液晶表示装置Aの斜め方向のカラーシフト量(Δa**)、および斜め方向の光漏れ量(Y値)を測定した。その特性を表5に示す。バックライトを点灯し続けて3時間後の液晶表示装置Xの、表示画面の均一性を観察した。その結果、液晶表示装置Xには、光学的なムラが観察された(表5中、「表示均一性」“×”と表記した)。
【0268】
【表5】

【0269】
<軽剥離性および耐久性の評価>
[実施例4]
実施例2で得られた積層フィルムBを、粘着剤層Aを介して無アルカリガラス板[コーニング社製商品名「1737」]の表面に、ラミネーターを用いて貼着した。続いて、上記粘着剤層Aを上記無アルカリガラス板に密着させるために、50℃,5気圧で15分間オートクレーブ処理を施した。このようにして作製したサンプルを、1時間後、人の手によって、上記積層フィルムBを剥離しようとしたところ、軽い力で剥がすことができた(表6中、「軽剥離性」“○”と表記した)。また、ガラス板の表面には、粘着剤層や位相差フィルムが残留することもなかった。図12は、実施例3の積層フィルムを剥離した後の、ガラス板の表面の写真である。剥離試験の結果を、積層フィルムBの各層の接着力および投錨力の結果と併せて、表6に示す。なお、本実施例では、液晶セルの代替として無アルカリガラス板を使用したが、無アルカリガラス板に代えて液晶セルを用いても同様の結果を得ることができる。
【0270】
同様の方法で作製した別のサンプルを、80℃,90%RHの恒温槽で500時間放置した後、上記恒温槽から取り出して、サンプルを観察した。その結果、サンプルには、剥がれや気泡は発生していなかった(表6中、「剥がれ,気泡の発生」“○”と表記した)。
【0271】
[比較例4]
比較例2で得られた積層フィルムYを、粘着剤層Cを介して無アルカリガラス板[コーニング社製商品名「1737」]の表面に、ラミネーターを用いて貼着した。続いて、上記粘着剤層Cを上記無アルカリガラス板に密着させるために、50℃,5気圧で15分間オートクレーブ処理を施した。このようにして作製したサンプルを、1時間後、人の手によって、上記積層フィルムYを剥離しようとしたところ、軽い力では剥離することができなかった(表6中、軽剥離性“×”と表記した)。強い力で積層フィルムを剥離しようとしたところ、積層フィルムは、偏光板と位相差フィルムとの界面で剥離し、ガラス板の表面に、粘着剤層と位相差フィルムが残留した。図13は、比較例4の積層フィルムを剥離した後の、ガラス板の表面の写真である。
【0272】
【表6】

【0273】
[評価]
図10および図11からも明らかなように、実施例1の積層フィルムを備える液晶表示装置は、斜め方向の光漏れ量と斜め方向のカラーシフト量とが、いずれも極めて小さく、良好な表示特性を示した。さらに、この液晶表示装置は、歪による光学的なムラは観察されず、良好な表示均一性を示した。一方、比較例1の積層フィルムを備える液晶表示装置は、斜め方向の光漏れ量と斜め方向のカラーシフト量が、いずれも大きかった。さらに、この液晶表示装置は、光学的なムラが観察された。
【0274】
また、実施例2の積層フィルムは、無アルカリガラス板に対して、高温,多湿の環境下でも、剥がれや気泡が発生することなく、優れた接着性と軽剥離性とを示した。一方、比較例2の積層フィルムは、無アルカリガラス板からは、容易に剥離することができず、剥離した後のガラス板の表面には、粘着剤層と位相差フィルムが残留した。
【産業上の利用可能性】
【0275】
以上のように、本発明の積層フィルムは、液晶表示装置の表示特性の向上と、生産性の向上に、極めて有用であるといえる。本発明の積層フィルムを備える液晶表示装置は、液晶テレビに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0276】
10 積層フィルム
20 偏光板
21 偏光子
22 第1の保護層
23 第2の保護層
30 位相差フィルム
41 第1の粘着剤層
42 第2の粘着剤層
50 液晶セル
51、51’ 基板
52 液晶層
100 液晶パネル
80 バックライトユニット
81 バックライト
82 反射フィルム
83 拡散板
84 プリズムシート
85 輝度向上フィルム
200 液晶表示装置
300 繰り出し部
310 ヨウ素水溶液浴
320 ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液の浴
330 ヨウ化カリウムを含む水溶液浴
340 乾燥手段
350 偏光子
360 巻き取り部
401、403、405 繰り出し部
414、416、419 巻き取り部
404、406 収縮性フィルム
407、408 ラミネートロール
409 加熱手段
501、506 繰り出し部
503 コータ
504 温度制御手段
507、508 ラミネートロール
511 巻き取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板と、位相差フィルムと、第1の粘着剤層とを少なくともこの順に備え、
該偏光板は、偏光子と、該偏光子の位相差フィルムを備える側に配置された第1の保護層と、該偏光子の位相差フィルムを備える側とは反対側に配置された第2の保護層とを含み、
該位相差フィルムは、ノルボルネン系樹脂を含有する延伸フィルムであり、
該第1の粘着剤層は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、ジアシルパーオキサイド類の過酸化物を主成分とする架橋剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含む、積層フィルム。
【請求項2】
前記第1の保護層および/または前記第2の保護層が、セルロース系樹脂を含有する高分子フィルムである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記第1の保護層が、実質的に光学的に等方性を有する、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記第1の保護層の屈折率楕円体が、nx≒ny≧nzの関係を有する、請求項1または2に記載の積層フィルム:
ただし、上記nx、nyおよびnzは、それぞれ遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率、および厚み方向の屈折率である。
【請求項5】
前記位相差フィルムの屈折率楕円体が、nx>nz>nyの関係を有する、請求項1から4のいずれかに記載の積層フィルム:
ただし、上記nx、nyおよびnzは、それぞれ遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率、および厚み方向の屈折率である。
【請求項6】
前記位相差フィルムのRe[590]が80nm〜350nmである、請求項1から5のいずれかに記載の積層フィルム:
ただし、上記Re[590]は、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値である。
【請求項7】
前記位相差フィルムのNz係数が0.1〜0.7である、請求項1から6のいずれかに記載の積層フィルム:
ただし、上記Nz係数は、式;Rth[590]/Re[590]から算出される値であり、Re[590]およびRth[590]は、それぞれ、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値および厚み方向の位相差値である。
【請求項8】
前記位相差フィルムの23℃における波長590nmの光で測定した光弾性係数の絶対値が1×10-12〜10×10-12である、請求項1から7のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記第1の粘着剤層の23℃におけるガラス板に対する接着力(F1A)が、2N/25mm〜10N/25mmである、請求項1から8のいずれかに記載の積層フィルム:
ただし、上記接着力は、ガラス板に25mm幅の積層フィルムを、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養生後、かかる積層フィルムを90度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度である。
【請求項10】
前記第1の粘着剤層の23℃における位相差フィルムに対する投錨力(F1B)が、10N/25mm〜40N/25mmである、請求項1から9のいずれかに記載の積層フィルム:
ただし、上記投錨力は、インジウムスズ酸化物を蒸着処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの処理面に、25mm幅の粘着剤層と位相差フィルムとの積層体を、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養成後、かかるポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層ごと180度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度である。
【請求項11】
前記第1の粘着剤層の23℃における位相差フィルムに対する投錨力(F1B)と、該第1の粘着剤層の23℃におけるガラス板に対する接着力(F1A)との差(F1B−F1A)が、5N/25mm以上である、請求項1から10のいずれかに記載の積層フィルム:
ただし、上記投錨力は、インジウムスズ酸化物を蒸着処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの処理面に、25mm幅の粘着剤層と位相差フィルムとの積層体を、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養成後、かかるポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層ごと180度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度であり、上記接着力は、ガラス板に25mm幅の積層フィルムを、2kgローラーで1往復圧着し、23℃で1時間養生後、かかる積層フィルムを90度方向に300mm/分で引き剥がす際の接着強度である。
【請求項12】
前記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーが、炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーと、少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1〜8の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとの共重合体である、請求項1から11のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項13】
前記過酸化物を主成分とする架橋剤の配合量(重量比)が、前記(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対して0.01〜1.0である、請求項1から12のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項14】
前記第1の粘着剤層が、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、ジアシルパーオキサイド類の過酸化物を主成分とする架橋剤と、イソシアネート基を有する化合物と、シランカップリング剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含み、
該イソシアネート基を有する化合物の配合量(重量比)が、該(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対して0.005〜1.0であり、
該シランカップリング剤の配合量(重量比)が、該(メタ)アクリレート系(コ)ポリマー100に対して0.001〜2.0である、請求項1から13のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項15】
前記粘着剤のガラス転移温度(Tg)が−70℃〜−10℃である、請求項1から14のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項16】
前記粘着剤の水分率が1.0%以下である、請求項1から15のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項17】
前記粘着剤のゲル分率が40%〜90%である、請求項1から16のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項18】
前記偏光板と前記位相差フィルムとの間に第2の粘着剤層をさらに備え、
該第2の粘着剤層が、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤と、シランカップリング剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含む、請求項1から17のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかに記載の積層フィルムと、液晶セルとを少なくとも備える液晶パネル。
【請求項20】
請求項19に記載の液晶パネルを含む、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−101409(P2013−101409A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−39519(P2013−39519)
【出願日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【分割の表示】特願2011−22604(P2011−22604)の分割
【原出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】