説明

積層フィルム

本発明は、基材層、易接着層およびハードコート層からなり、基材層上に易接着層が形成され、易接着層上にハードコート層が形成された積層フィルムであって、(1)基材層が、ナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル樹脂からなり、(2)ハードコート層が紫外線吸収機能を有し、表面の鉛筆硬度がH以上であって、(3)該積層フィルムのキセノンアーク試験300時間前後での透過b*値の変化量(Δb*)が2.0未満である積層フィルムである。上記フィルムは、耐光性、耐傷つき性、透明性、寸法安定性、ハードコート層との密着性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、基材層、易接着層およびハードコート層からなる積層フィルムに関する。さらに詳しくは、耐光性、耐傷つき性、透明性、寸法安定性およびハードコート層の密着性に優れた積層フィルムに関する。
【背景技術】
ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有する。このため、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属ラミネート用フィルム、ガラスディスプレイ等の表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として広く用いられている。
ポリエステルフィルムは、近年、特に各種光学用フィルムに多く用いられ、液晶表示装置の部材のプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや反射防止用フィルムのベースフィルム、プラズマディスプレイの電磁波シールドフィルム、有機ELディスプレイのベースフィルム、ディスプレイの防爆用ベースフィルム等の用途に用いられている。このような光学用フィルムに用いられるベースフィルムは優れた透明性と耐光性が要求される。しかしポリエステルフィルムは紫外線によって劣化し、変色、機械強度の低下など物性変化を起こす。特にディスプレイ用途では光劣化による変色はディスプレイのカラーバランスを損なうため、耐光性の悪いフィルムは使用できないという課題があった。
これまで、ポリエステルフィルムの耐光性を向上させる手段としては、ポリエステルフィルム内に紫外線吸収剤を練りこんだもの(特許文献1)やアクリル樹脂中に紫外線吸収剤を混合し、ポリエステルフィルム表面に塗布、乾燥して積層したもの(特許文献2)、ポリエチレンナフタレートフィルムの屈折率や密度を特定の範囲としたもの(特許文献3)、熱可塑性フィルム上にベンゾトリアゾール系モノマー共重合アクリルからなる樹脂層と鉛筆硬度H以上の表面硬度化層の2層を積層したもの(特許文献4)などが知られている。
(特許文献1) 特公昭57−6470号公報
(特許文献2) 特公平4−2101号公報
(特許文献3) 特公昭53−40627号公報
(特許文献4) 特開平9−234839号公報
【発明の開示】
しかし従来のポリエステルフィルムには、次のような欠点があった。すなわち、紫外線吸収剤を練りこんだフィルムは、ポリエステルフィルムの強度伸度劣化に対しては効果があるが、フィルム表面にて劣化が進み、ヘイズや透明性が低下するという欠点があった。
またアクリル樹脂中に紫外線吸収剤を混合し、それをポリエステルフィルム表面に塗布、乾燥して積層したフィルムは、混合した紫外線吸収剤の分散性によってばらつきがあるためディスプレイ用途として要求される耐光性を保てないという欠点がある。
特定の範囲の屈折率や密度を有するポリエチレンナフタレートを使用したフィルムは、若干の効果はあるが、要求を満たす耐光性は得られていない。
熱可塑性フィルム上にベンゾトリアゾール系モノマー共重合アクリル樹脂からなる樹脂層と鉛筆硬度H以上の表面硬度化層の2層を積層したフィルムは、耐傷つき性に優れている。しかし、構成が複雑で、ハードコート層の密着性が悪い場合がある。
基材層に用いるフィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルムということがある)とポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルム(PENフィルム)とを比較すると、PETフィルムは、PENフィルムに比べ耐光性は優れるものの、寸法安定性が充分でない場合がある。従ってPETフィルムは、ディスプレイ等を製造する過程での熱処理により収縮しやすく、寸法安定性に問題がある場合がある。
一方PENフィルムは、PETフィルムに比べ前述のように、寸法安定性に優れ、ディスプレイ用の基材として優れているが、耐光性に劣るという欠点がある。
本発明は、上記課題を解決して、耐光性(耐候性)、耐傷つき性、透明性、寸法安定性およびハードコート層の密着性に優れた積層フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、基材層、易接着層およびハードコート層からなり、基材層上に易接着層が形成され、易接着層上にハードコート層が形成された積層フィルムであって、
(1)基材層が、ナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル樹脂からなり、
(2)ハードコート層が紫外線吸収機能を有し、ハードコート層表面の鉛筆硬度がH以上であって、
(3)該積層フィルムのキセノンアーク試験300時間前後での透過b*値の変化量(Δb*)が2.0未満である、
ことを特徴とする積層フィルムである。
即ち、本発明は、PENフィルムの優れた透明性、寸法安定性を維持しつつ、耐光性についての欠点を特定の紫外線吸収機能を有するハードコート層により改善したことを特徴とする。
また本発明は、基材層とハードコート層との間に易接着層を設けることによりハードコート層の密着性を改善したことを特徴とする。
さらに本発明は、特定の鉛筆強度のハードコート層により耐傷つき性を改善したことを特徴とする。
本発明の積層フィルムは、透過b*値の変化量(Δb*)が2.0未満であることで、ディスプレイへの用途などにおけるカラーバランスの崩れを防ぐことができる。なおこの透過b*値の変化量は、後述の方法により評価される。
【発明を実施するための最良の形態】
<基材層>
本発明において、基材層を構成するポリエステル樹脂は、ナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分として、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。ここで「主たる」とは、構成成分中の少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも95モル%を意味する。
ナフタレンジカルボン酸としては、たとえば2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができ、これらの中で2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
コポリマーである場合、コポリマーを構成する共重合成分としては、分子内に2つのエステル形成性官能基を有する化合物を用いることができる。共重合用のジカルボン酸成分として、例えば、蓚酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられる。またオキシカルボン酸として、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸の如きオキシカルボン酸が挙げられる。
共重合用のグリコール成分として、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコールの如き2価アルコール等が挙げられる。
これらの化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を用いることができる。またこれらの中で好ましくはジカルボン酸成分として、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p−オキシ安息香酸が挙げられる。グリコール成分としてはトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。
また、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってよく、極く少量の例えばグリセリン、ペンタエリスリトール等の如き三官能以上のエステル形成性化合物で実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で共重合したものであってもよい。
基材層のポリエステル樹脂は、従来公知の方法で製造することが出来る。例えばジカルボン酸とグリコールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法がある。また、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとを従来公知のエステル交換触媒を用いて反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。
エステル交換触媒として、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトを含む化合物の一種または二種以上が挙げられる。重合触媒としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンのようなアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウムで代表されるようなゲルマニウム化合物、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解物、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルカリウム、チタントリスアセチルアセトネートのようなチタン化合物を用いることができる。
エステル交換反応を経由して重合を行う場合は、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的でトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸等のリン化合物が通常は添加されるが、リン元素としてのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート中の含有量が20〜100重量ppmであることがポリエステルの熱安定性の点から好ましい。なお、ポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中においてさらに固相重合を施してもよい。
基材層のポリエステル樹脂は、90モル%以上の−O−CHCH−O−CO−Q−CO−(Qはnaphthalene−dilyを表す)で表されるエチレンナフタレンジカルボキシレート単位からなるポリエステルが好ましい。具体的には90モル%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上のエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位からなるポリエステルが好ましい。
ポリエステル樹脂の固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.9dl/gであることがさらに好ましい。固有粘度が低すぎると工程切断が多発することがある。また固有粘度が高すぎると溶融粘度が高いため溶融押出しが困難であるうえ、重合時間が長く不経済であり好ましくない。
また本発明において、基材層を構成するポリエステル樹脂には紫外線吸収剤を添加することが、耐光性向上の点から好ましい。特に、基材層中での紫外線吸収性化合物の含有量は、0.1〜5重量%、さらに0.2〜3重量%であることが、紫外線吸収性化合物の不足によるポリエステルフィルムの耐光性低下、紫外線吸収性化合物過剰によるポリエステル重合度低下に起因する機械的特性の劣化を防止するため好ましい。
そうした紫外線吸収剤としては、公知の紫外線吸収剤、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、環状イミノエステル系化合物などを好ましく例示することができる。これらの中、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、環状イミノエステル系化合物が好ましい。ポリエステルに配合するものとしては、特に環状イミノエステル系化合物が好ましい。
ベンゾフェノン系化合物としては2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が好ましく例示でき、前記ベンゾトリアゾール系化合物としては2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が好ましく例示できる。
また、環状イミノエステル系化合物は下記式(I)または式(II)で表わされる環状イミノエステルから選ばれる少なくとも1種の化合物を、未反応の形態で用いるのが好ましい。かかる環状イミノエステル系化合物は紫外線吸収剤として公知の化合物であり、例えば特開昭59−12952号公報に記載されている。

式(I)中、Xは上記式に表わされたXからの2本の結合手が1位、2位の位置関係にある、2価の芳香族残基である。nは1、2または3である。Rはn価の炭化水素残基で、これはさらにヘテロ原子を含有していてもよい、またはRはn=2のとき直接結合であることができる。
式(II)中、Aは下記式(II)−aで表わされる基であるかまたは下記式(II)−bで表わされる基である。(II)、(II)−aまたは(II)−b中のRおよびRは同一もしくは異なり1価の炭化水素残基である。Xは4価の芳香族炭化水素残基で、これはさらにヘテロ原子を含有していてもよい。

としては、好ましくは例えば1,2−フェニレン、1,2−ナフチレン、2,3−ナフチレン、下記式(a)または(b)で表わされる基を挙げることができる。これらのうち、特に1,2−フェニレンが好ましい。式(a)または式(b)中、Rは−O−、−CO−、−S−、−SO−、−CH−、−(CH)−または−C(CH−である。

について例示した芳香族炭化水素残基は、例えば炭素数1〜10のアルキル例えばメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、デシル等;炭素数6〜12のアリール例えばフェニル、ナフチル等;炭素数5〜12のシクロアルキル例えばシクロペンチル、シクロヘキシル等;炭素数8〜20のアラルキル例えばフェニルエチル等;炭素数1〜10のアルコキシ例えばメトキシ、エトキシ、デシルオキシ等;ニトロ;ハロゲン例えば塩素、臭素等;炭素数2〜10のアシル例えばアセチル、プロポニル、ゼンゾイル、デカノイル等;などの置換基で置換されていてもよい。
はn価(ただし、nは1、2または3である)の炭化水素残基であるか、またはnが2であるときに限り直接結合であることができる。
(Rが1価の炭化水素基の場合)
1価の炭化水素残基(n=1の場合)としては、第一に、例えば炭素数1〜10の未置換脂肪族基、炭素数6〜12の未置換芳香族基、炭素数5〜12の未置換脂環族基が挙げられる。
炭素数1〜10の未置換脂肪族基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、デシル等を、炭素数6〜12の未置換芳香族基としては、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル等を;炭素数5〜12の未置換脂環族基としては、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
また、上記1価の炭化水素残基としては、第二に、例えば下記式(c)〜(f)で表わすことのできる、置換された脂肪族残基または芳香族残基を挙げることができる。

式中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基、フェニレン基またはナフチレン基である。Rは炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基またはナフチル基である。Rは水素原子またはRに定義された基のいずれかである。Rは水素原子またはRに定義された基のいずれかである。
また、上記1価の炭化水素残基としては、第三に、上記未置換の芳香族残基が例えば上記Xを表わす芳香族残基の置換基として例示したと同じ置換基で置換されているものを挙げることができる。それ故、かかる置換基で置換された場合の例としては、例えばトリル、メチルナフチル、ニトロフェニル、ニトロナフチル、クロロフェニル、ベンゾイルフェニイル、アセチルフェニルまたはアセチルナフチル等を挙げることができる。
1価の炭化水素残基としては、上記式(c)、(d)、(e)または(f)で表わされる基、すなわち置換された脂肪族残基または芳香族残基、特にそのうち置換された芳香族残基が好ましい。
(Rが2価の炭化水素基の場合)
2価の炭化水素残基(n=2の場合)としては、第一に、例えば2価の、炭素数2〜10の未置換の脂肪族残基、炭素数6〜12の未置換の芳香族残基、炭素数5〜12の未置換の脂環族残基が挙げられる。
2価の炭素数2〜10の未置換の脂肪族基としては、例えばエチレン、トリメチレン、テトラメチレン、デカメチレン等を、2価の炭素数6〜12の未置換の芳香族残基としては、例えばフェニレン、ナフチレン、P,P’−ビフェニレン等を;2価の炭素数5〜12の未置換の脂環族残基としては、例えばシクロペンチレン、シクロヘキシレン等を挙げることができる。
また、上記2価の炭化水素残基としては、第二に、例えば下記式(g)で表わされる基、または下記式(h)で表わされる置換された脂肪族残基または芳香族残基を挙げることができる。

式中、RはRに定義された基のいずれかである。RはRに定義された基のいずれかであり、そしてR10はRに定義された基のいずれかである。
また、上記2価の炭化水素残基としては、第三に、上記未置換の2価の芳香族残基が、例えば上記Xを表わす芳香族基の置換基として例示したと同じ置換基で置換されているものを挙げることができる。
nが2の場合には、Rとしては、これらのうち直接結合または上記第一〜第三の群の未置換または置換された2価の芳香族炭化水素残基が好ましく、特に2本の結合手が最も離れた位置から出ている第一または第三の群の未置換または置換された芳香族炭化水素残基が好ましく、就中P−フェニレン、P,P’−ビフェニレンまたは2,6−ナフチレンが好ましい。
(Rが3価の炭化水素基の場合)
3価の炭化水素残基(n=3の場合)としては、例えば3価の炭素数6〜12の芳香族残基を挙げることができる。
かかる芳香族残基としては、次に示す4種類の基を挙げることができる。こうした芳香族残基は、上記1価の芳香族残基の置換基として例示したと同じ置換基で置換されていてもよい。

前述のRおよびRは、同一もしくは異なり1価の炭化水素残基であり、Xは4価の芳香族炭化水素残基である。RおよびRとしては、上記式(I)の説明において、n=1の場合のRについて例示したと同じ基を例として挙げることができる。4価の芳香族炭化水素残基としては、次に示す8種類の基を挙げることができる。ここで、Rの定義は式(a)に同じである。こうした4価の芳香族炭化水素残基は、上記式(I)の説明において、Rを表わす1価の芳香族残基の置換基として例示したと同じ置換基で置換されていてもよい。

本発明において用いられる上記式(I)および(II)で表わされる環状イミノエステルの具体例としては、例えば下記の化合物を挙げることができる。
(上記式(I)の化合物 n=1の場合)
2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−または2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(またはm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、N−フェニル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)フタルイミド、N−ベンゾイル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、N−ベンゾイル−N−メチル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、2−(p−(N−メチルカルボニル)フェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン。
(上記式(I)の化合物 n=2の場合)
2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−または1,5−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、N−p−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)フェニル、4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)フタルイミド、N−p−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゾイル、4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン。
(上記式(I)の化合物 n=3の場合)
1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン。
(上記式(II)の化合物)
2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;4,5−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;4,5−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)。
上記例示化合物のうち、上記式(I)の化合物、より好ましくはn=2の場合の上記式(I)の化合物、特に好ましくは下記式(I)−1で表わされる化合物が有利に用いられる。式中、R11は2価の芳香族炭化水素残基である。

式(I)−1の化合物としては、とりわけ2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好ましい。
これら環状イミノエステルの紫外線吸収特性は、例えばその代表的化合物について特開昭59−12952号公報に記載されているので、それを援用する。
本発明において、基材層は不活性粒子を含有しないか、含有しても特性に影響を与えないような小粒径、少量であるのが好ましい。
基材層の厚みは、液晶、ハードコート、タッチパネル、防眩処理、PDP用電磁波シールドフィルム、有機EL、電子ペーパー、太陽電池等、窓貼り用途、車用途の支持体として使用する場合に必要な強度とある程度自由な屈曲性を得るために1〜500μmであることが好ましい、さらに好ましくは12〜350μmで、特に好ましくは50〜250μmである。
<易接着層>
本発明の積層フィルムは、基材層上に易接着層が設けられている。この易接着層は高分子バインダーからなる。易接着層にはさらに不活性粒子、濡れ剤、脂肪族ワックス、添加剤粒子を含有していてもよい。
(高分子バインダー)
高分子バインダーはポリエステル樹脂からなる。高分子バインダーは、水に可溶性または分散性のものが好ましいが、多少の有機溶剤を含有する、水に可溶なものも好ましく用いることができる。
高分子バインダーを構成するポリエステル樹脂として、下記のジカルボン酸成分とジオール成分から得られるポリエステルを用いることができる。
すなわち、ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を例示することができる。高分子バインダーを構成するポリエステル樹脂としては、2種以上のジカルボン酸成分を用いた共重合ポリエステルを用いることが好ましい。ポリエステル樹脂には、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分が、あるいはp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
ジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを例示することができる。
高分子バインダーを構成するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分が、50〜70モル%の2,6−ナフタレンジカルボン酸からなることが好ましい。他のジカルボン酸成分としてはテレフタル酸またはイソフタル酸が好ましい。ジオール成分は、80〜95モル%のエチレングリコールからなることが好ましい。他のジオール成分としてはジエチレングリコール等が好ましい。
よって、高分子バインダーを構成するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として、50〜70モル%の2,6−ナフタレンジカルボン酸および30〜50モル%のテレフタル酸またはイソフタル酸、ジオール成分として80〜95モル%のエチレングリコールおよび5〜20モル%のジエチレングリコールから得られるポリエステルが好ましい。
ポリエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは60〜80℃である。この範囲であれば、優れた接着性と優れた易接着層自身の耐傷性を得ることができる。他方、ガラス転移温度が低くすぎるとフィルム同士でブロッキングが発生しやすくなり、高すぎると塗膜が硬くて脆くなり、耐傷性が悪化して好ましくない。
ポリエステル樹脂の固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.9dl/gであることがさらに好ましい。易接着層に用いるポリエステル樹脂は、基材層ポリエステルと同様な方法で製造することが出来る。
易接着層の厚さは0.01〜0.3μm、好ましくは0.02〜0.25μmの範囲であることが好ましい。厚さが薄過ぎると、接着力が不足し、逆に厚過ぎると、ブロッキングを起こしたり、ヘイズ値が高くなったりする可能性がある。
(不活性粒子)
易接着層には不活性粒子を含有させることが好ましい。不活性粒子は、有機または無機の不活性粒子であり、シリカとチタニアの複合無機粒子、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が例示される。なかでも架橋アクリル樹脂粒子が好ましい。
不活性粒子の平均粒子径は40〜120nmの範囲が好ましい。不活性粒子の平均粒子径が大きすぎると粒子の落脱が発生しやすくなり、小さすぎると十分な滑性、耐傷性が得られない場合がある。易接着層用塗剤中の不活性粒子の含有量は、0.1〜10重量%の範囲が好ましい。少なすぎると十分な滑性、耐傷性が得られず、多すぎると易接着層の凝集力が低くなり接着性が悪化し好ましくない。
(濡れ剤)
易接着層には濡れ剤を含有させることが好ましい。濡れ剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、およびノニオン型界面活性剤が挙げられる。濡れ剤の含有量は1〜10重量%が好ましい。濡れ剤の添加量が少なすぎると十分にポリエステルフィルムへの濡れ性が出せず、塗布剤を弾いてしまう。一方多すぎると易接着層としての性能が低下し好ましくない。
(脂肪族ワックス)
易接着層には脂肪族ワックスを含有させることが好ましい。脂肪族ワックスによりフィルム表面の滑性が向上する。脂肪族ワックスの含有量は好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1重量%〜10重量%である。この含有量が少なすぎるとフィルム表面の滑性が得られないことがあり好ましくない。また多すぎるとポリエステルフィルム基材への密着やハードコートや粘着剤等に対する易接着性が不足する場合があり好ましくない。
脂肪族ワックスの具体例としては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、ロジン変性ワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックスを挙げることができる。就中、ハードコートや粘着剤等に対する易接着性と滑性が良好なことから、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが特に好ましい。これらは環境負荷の低減が可能であることおよび取扱のし易さから水分散体として用いることが好ましい。
(添加剤粒子)
易接着層は、滑性、耐傷性をさらに向上させるために、透明性に影響を与えない程度に他の添加剤粒子を含有してもよい。他の添加剤粒子としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の無機不活性粒子やアクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂等の粒子を挙げることができる。これらのうち、水不溶性の固体物質は、水分散液中で沈降するのを避けるため、比重が3を超えない粒子を選ぶことが好ましい。
本発明で用いられる易接着層は、被膜を形成するために必要に応じて、上記組成物以外の他の樹脂や化合物、例えば帯電防止剤、着色剤、架橋剤、紫外線吸収剤などを添加することができる。
(溶剤)
易接着層成分は、均一な易接着層を形成するために、易接着層成分が溶剤中に溶解または分散された塗剤の状態で基材層上に塗布されることが好ましい。溶剤として、水が挙げられるが、多少の有機溶剤を含有する水を用いてもよい。かかる溶剤は、易接着層が形成された後、製膜工程において除去され、最終易接着層には含まれないことが好ましい。
<製膜方法>
本発明の積層フィルムは以下の方法により、基材層上に易接着層を形成したフィルムを製造した後、易接着層上にハードコート層を形成するとができる。
即ち、基材層を構成するポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとする。その後、未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で縦方向、横方向に倍率2.0〜5.0倍で2軸に延伸する。さらに(Tm−100)〜(Tm−5)℃の温度で1〜100秒間熱固定する。ここで、Tgは、ポリマーのガラス転移温度、Tmはポリマーの融点を表わす。
延伸は一般に用いられる方法例えばロールによる方法やステンターを用いる方法で行うことができる。縦方向、横方向を同時に延伸してもよく、また縦方向、横方向に逐次延伸してもよい。易接着層は同時延伸の場合、2軸延伸フィルム上に塗工する。また易接着層は逐次延伸の場合、一方向に延伸した1軸配向フィルムに、易接着層用塗剤を塗布し、そのままもう一方向に延伸し熱固定することが好ましい。易接着層の塗工方法としてはロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレー法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組み合わせて用いることが出来る。
さらに弛緩処理を行う場合は、加熱処理をフィルムの(X−80)〜X℃の温度において行うことが効果的である。ここでXは熱固定温度のことを表す。弛緩処理の方法としては熱固定後ロールに巻き取るまでの間で、熱固定ゾーンの途中でフィルムの両端部を切り離しフィルムの供給速度に対して引き取り速度を減速させる方法がある。また2つの速度の異なる搬送ロールの間においてIRヒーターで加熱する方法がある。加熱搬送ロール上にフィルムを搬送させ加熱搬送ロール後の搬送ロールの速度を減速させる方法がある。また熱固定後、熱風を吹き出すノズルの上にフィルムを搬送させながら、供給の速度よりも引き取りの速度を減速する方法がある。あるいは製膜機で巻き取った後、加熱搬送ロール上にフィルムを搬送させ搬送ロールの速度を減速する方法がある。あるいは加熱オーブン内やIRヒーターによる加熱ゾーンを搬送させながら加熱ゾーン後のロール速度を加熱ゾーン前のロール速度より減速する方法がある。いずれの方法を用いても良く、供給側の速度に対して引き取り側の速度の減速率を0.1〜10%にして弛緩処理を行うことが好ましい。
<ハードコート層>
本発明では耐光性向上のため、易接着層上に、紫外線吸収性能を有するハードコート層を設けることが必要である。そうしたハードコート層としては、その層を形成する素材自体に紫外線吸収性能を備えた樹脂を用いることができる。
(紫外線吸収性能を有する樹脂)
紫外線吸収性能を有する樹脂としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールを側鎖に有するアクリル系モノマーを他のエチレン系不飽和モノマーと共重合させた紫外線吸収性ポリマーが好ましい。
ベンゾフェノンを側鎖に有するアクリル系モノマーとして、下記式で表されるモノマーが挙げられる。

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Xは、−O−、−OCHCHO−または−OCHCH(CH)O−を表す。)
具体的には、2−ヒドロキシ−4−アクリルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メチル−2−アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メチル−2−メタクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
就中、2−ヒドロキシ−4−アクリルオキシベンゾフェノンまたは2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノンが特に好ましい。
ベンゾトリアゾールを側鎖に有するアクリル系モノマーとして、下記式で表されるモノマーが挙げられる。

(Yは、水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。Rは水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基、Rは炭素数1〜6のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
具体的には、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(アクロイルオキシブチル)フェニル]−5−メチルベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
就中、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールまたは2−[2’−ヒドロキシ−5’−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールが特に好ましい。
他のエチレン系不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のアルキルエステル、メタクリル酸のアルキルエステル、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステルなどが好適に用いられる。
アクリル酸のアルキルエステル、メタルクリル酸のアルキルエステル、アルキルビニルエーテルにおけるアルキル鎖長、およびアルキルビニルエステルにおけるカルボン酸残基の炭素数は、1〜8が好適であり、さらに好ましくは1〜4である。
アクリル酸のアルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどがあり、メタクリル酸のアルキルエステルとしてはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられる。
アルキルビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。アルキルビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリル酸ビニル、酪酸ビニル、クロトン酸ビニルなどが挙げられる。
ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールを側鎖に有するアクリル系モノマーと他のエチレン系不飽和モノマーとの共重合比は、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールを側鎖に有するアクリル系モノマーの比率が10〜70重量%、好ましくは20〜65重量%、他のエチレン系不飽和モノマーの比率が30〜90重量%、好ましくは35〜80重量%である。紫外線吸収機能を有するモノマーの比率が下限に満たない場合、ハードコート層の吸収開始波長λsが基材層のポリエステル樹脂の吸収波長λよりも短くなり、紫外線吸収性能が低下する。一方、紫外線吸収機能を有するモノマーの比率が上限を超える場合、ハードコート層がもろくなり所望の鉛筆硬度が得られない。ハードコート層の吸収開始波長λsは、385〜390nmであることが好ましい。
紫外線吸収性ポリマーは、重量平均分子量が5,000〜100万のものが好ましく、より好ましくは1万〜80万である。
前記ハードコート層を形成するのに使用する塗剤には、光沢を調整するとともに、表面の滑りを付与する目的で二次粒径が20μm以下の不活性微粒子を、樹脂成分100重量部に対して0.3〜3重量部加えることが好ましい。0.3重量部以下では滑り性の向上効果が乏しく、他方、3重量部を超えると得られるハードコート層の鉛筆硬度が低下することがある。
塗剤に加える不活性粒子としては、シリカ、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウムなどの無機粒子の他に、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、メラミン樹脂などの有機ポリマーの粒子が例示できる。
ハードコート層を形成するための塗工方法は、ロールコート、グラビアコート、バーコート、押出しコートなど、塗剤の特性や塗工量に応じて、従来それ自体公知の方法を適宜選択すればよい。ハードコート層の厚みは特に限定されないが、1〜15μmの範囲が好ましい。塗剤中の固形分濃度は30〜70重量%、さらには40〜60重量%が好ましい。
ハードコート層は易接着層上に設けられること以外は特に限定されない。また、ハードコート層上にガスバリア層や導電層などの機能層を含む構成体でも構わない。従って本発明の積層フィルムは、ハードコート層(H)、基材層(S)、易接着層(B)の基本的な構成はH/B/S、H/B/S/B/Hとなる。また、機能層(F)を有する場合は、F/H/B/S、H/B/S/F、F/H/B/S/B/H、H/B/C/B/H/Fとなる。
(吸収波長)
またハードコート層は、基材層を形成するポリエステル樹脂の吸収波長λと、ハードコート層の吸収開始波長λsが、λ≦λs≦400nmの関係を満たすものが好ましい。λsがλより小さいと、耐光性改善への効果が無く好ましくない、またλsが400nmより大きくなると、着色するためディスプレイ用途として使用することができない場合がある。ここでポリエステル樹脂の吸収波長λは、分光光度計で測定した透過率が20%になった時の波長である。またハードコート層の吸収開始波長λsは、分光光度系で測定した透過率が550nmの時の透過率に対して20%低下した時の波長である。
また、基材層が紫外線吸収剤を含有する場合、基材層のポリエステル樹脂の吸収波長λと、基材層に含まれる紫外線吸収剤の吸収開始波長λpsは、λ<λpsであることが好ましい。ここで紫外線吸収剤の吸収開始波長λpsは、分光光度系で測定した透過率が550nmの時の透過率に対して20%低下した時の波長である。
(耐光性)
本発明の積層フィルムは、キセノンアーク試験300時間前後での透過b*値の変化量(Δb*)が2.0未満、好ましくは1.0未満である。透過b*値が上限を超える場合、黄着色するため、ディスプレイ用途として使用することができない場合がある。
(ハードコート層表面の鉛筆硬度)
本発明の積層フィルムは、ハードコート層表面の鉛筆硬度がH以上であることが好ましい、H以下になると傷つき易くなりディスプレイ用途としては好ましくない。より好ましくは2H以上、さらに好ましくは3H以上である。
(透明性)
本発明の積層フィルムは、可視光線波長領域における全光線透過率が85%以上であることが好ましい。全光線透過率が低いと、画面の鮮明度が低下するなど光学用途として好ましくない。より好ましくは87%以上、さらに好ましくは90%以上である。また、ヘイズは1%未満であることが好ましい。ヘイズが高いとディスプレイ用途において視認性を損なうなど光学用途として好ましくない。より好ましくは0.8%未満、さらに好ましくは0.5%未満である。
(寸法安定性)
本発明の積層フィルムは、150℃×30分における熱収縮率が2%未満であることが好ましい。2%以上になると、フィルム上に機能層を積層する際あるいは積層した後に、積層体にひびが入ったり逆にシワが寄ることで、積層体を破壊されるなどして十分な機能を発揮できなくなることがある。より好ましくは1%未満、さらに好ましくは0.5%未満である。また、本発明の積層体は機能層の特性を出すために高温で処理されることもある。そのような場合を考慮すると、熱収縮率は200℃×10分においても2%未満であることが好ましい。より好ましくは1%未満、さらに好ましくは0.5%未満である。
【実施例】
本発明における種々の物性値および特性は以下の如くして測定されたものであり且つ定義される。
(1)フィルム厚み
電子マイクロメータ(アンリツ(株)製K−312A型)を用いて針圧30gにてフィルム厚みを測定した。
(2)ヘイズ、全光線透過率
日本電色工業(株)製Haze Meter、商品名「NDH2000」を使用し、JIS K−7105に従い、50mm×50mmの試料片の全光線透過率Tt(%)と散乱光透過率Td(%)を測定し、ヘイズ((Td/Tt)×100)(%)を算出し、以下の基準で評価した。
全光線透過率
○ 全光線透過率が85%以上・・・透明性良好。
△ 全光線透過率が80%以上85%未満・・・透明性やや不良。
× 全光線透過率が80%未満・・・透明性不良。
ヘイズ
○ ヘイズが1%未満・・・透明性良好。
△ ヘイズが1%以上1.5%未満・・・透明性やや不良。
× ヘイズが1.5%以上・・・透明性不良。
(3)耐光性評価
キセノンアークウェザーメーター((株)東洋精機製作所製 商品名「サンテストCPS」 型番「CPS+」)を使用し、JIS−K−7350−2に準じて、65℃、50RH%の環境下で300時間照射することにより屋外曝露促進試験を行う。処理後、日本電色工業製の色差計(SZ)を使用して、L*a*b*表色系によるところのフィルムの透過b*値を測定し、処理前後の差Δb*を求め、下記の基準で評価した。
◎ Δb*値が1.0未満・・・耐光性極めて良好。
○ Δb*値が1.0以上2.0未満・・・耐光性良好。
△ Δb*値が2.0以上4.0未満・・・耐光性やや不良。
× Δb*値が4.0以上・・・耐光性不良。
(4)ハードコートとの密着性
ポリエステルフィルムの塗布面に厚さ5μmのハードコート層を形成して碁盤目のクロスカット(1mm×1mmのマス目を100個)を施し、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付けた。そして、貼り付けたテープに沿ってハードコート層面とは並行な方向に、急激に引き剥がす作業を、3回繰り返した。そして剥離面を観察し、下記基準で評価した。
○ 剥離面積が20%未満・・・接着力極めて良好。
△ 剥離面積が20%以上40%未満・・・接着力やや不良。
× 剥離面積が40%以上・・・接着力極めて不良。
(5)鉛筆硬度
ハードコート層側の鉛筆硬度はJIS K−5400に基づき各種硬度の鉛筆を90度の角度でフィルム層に押しあて加重1Kgで引掻きを与えたとき、傷が発生した時の鉛筆硬さを測定し、以下の基準にて評価した。
◎ 鉛筆硬度が3H以上・・・耐傷つき性極めて良好。
○ 鉛筆硬度がH以上3H未満・・・耐傷つき性良好。
× 鉛筆硬度がH未満・・・耐傷つき性不良。
(6)寸法安定性
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずにオーブンで熱処理(200℃×10分)を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、下記式にて熱収縮率を算出し、以下の基準にて評価した。
熱収縮率(%)=(熱処理前標点間距離−熱処理後標点間距離)/熱処理前標点間距離×100
○ 熱収縮率が2%未満・・・寸法安定性極めて良好。
△ 熱収縮率が2%以上4%未満・・・寸法安定性普通。
× 熱収縮率が4%以上・・・寸法安定性不良。
(7)吸収波長
ポリエステル樹脂の吸収波長λはダブルビーム型分光光度計(島津製作所(株)製の商品名「UV−3100PC」)により、波長300〜800nm領域で連続的に光線透過率を測定し、光線透過率が20%になった波長を吸収波長λとした。
ハードコート層の吸収開始波長λsはガラス上に膜を形成し上記分光光度計にて300〜800nm領域の光線透過率を測定し、550nmの時の光線透過率に対して20%低下した波長を吸収開始波長とした。
【実施例1】
(基材層用ポリエステル)
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル100部、およびエチレングリコール60部を、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03部を使用し、150℃から238℃に徐々に昇温させながら120分間エステル交換反応を行なった。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、エステル交換反応終了後、リン酸トリメチル(エチレングリコール中で135℃、5時間0.11〜0.16MPaの加圧下で加熱処理した溶液:リン酸トリメチル換算量で0.023部)を添加した。その後反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、27Pa以下の高真空下にて重縮合反応を行い、重合終了後、式(A)で表される紫外線吸収剤を、ポリマー99重量%に対して1重量%添加し、固有粘度が0.61dl/gの実質的に粒子を含有しない、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを、基材層フィルム形成用として得た。

(易接着層用塗剤)
また、ポリエステル85重量部と、不活性粒子5重量部と、濡れ剤10重量部とからなる塗剤をイオン交換水に溶かし、易接着層形成用として用意した。ここで塗剤用に用いたポリエステルは、酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸65モル%/イソフタル酸30モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成(Tg=80℃)される。不活性粒子は架橋アクリル不活性粒子(平均粒径60nm)である。濡れ剤はポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテルである。
(フィルム形成)
上記ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを、170℃で6時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度305℃で溶融し、平均目開きが17μmのステンレス鋼細線フィルターで濾過し、3mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上で押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。このようにして得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より900℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.1倍に延伸した。この縦延伸後のフィルムの片面に前述した易接着層形成用塗剤を乾燥後の易接着層の厚みが0.1μmになるようにロールコーターで塗工した。
続いてテンターに供給し、145℃にて横方向に.3.5倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを240℃の温度で40秒間熱固定し厚み75μmの高透明ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの易接着層側にハードコート層を形成するために剤▲1▼(一方社油脂製工業株式会社製の商品名「ULS−1935LH」(剤▲1▼は、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール30重量%、メタクリル酸メチル系モノマー70重量%をトルエン、酢酸エチルの混合溶剤に溶かし、反応容器中にて70℃まで昇温し、8時間重合を行ったものである。また剤の固形分濃度は30重量%である。)をロールコート法でドライ厚みが5μmになるように塗工し、100℃で2分乾燥した後、23℃で2日間熟成してハードコート層を形成した。
得られたフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。得られたフィルムは、耐光性、耐傷つき性、透明性、寸法安定性、ハードコート層の密着性に優れたフィルムであった。
【実施例2】
基材層を形成するポリマーに紫外線吸収剤が含まれないこと以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。得られたフィルムは、耐光性は実施例1のフィルムに劣るものの、耐傷つき性、透明性、寸法安定性、ハードコート層の密着性に優れたフィルムであった。
<実施例3、4>
基材層を形成するポリマーに紫外線吸収剤が含まれないこと、ハードコート剤を表1に示す紫外線吸収モノマー含有率の剤に変更したこと(剤▲2▼、剤▲3▼)以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。得られたフィルムは、耐光性は実施例1のフィルムに劣るものの、耐傷つき性、透明性、寸法安定性、ハードコート層の密着性に優れたフィルムであった。
<比較例1>
(基材層用ポリエステル)
メチルテレフタレート96部、エチレングリコール58部、酢酸マンガン0.038部および三酸化アンチモン0.041部をそれぞれ反応器に仕込み、攪拌下内温が240℃になるまでメタノールを留出せしめながらエステル交換反応を行い、該エステル交換反応が終了したのちトリメチルホスフェート0.097部を添加した。引き続いて、反応生成物を昇温し、最終的に高真空下280℃の条件で重縮合を行って固有粘度([η])0.64のポリエチレンテレフタレートのチップを得た。
(易接着層用塗剤)
実施例1で使用した易接着層用塗剤を用いた。
(ハードコート層用塗剤)
実施例1で使用した塗剤を用いた。
(フィルム形成)
次に、このポリエチレンテレフタレートのチップを170℃で3時間乾燥したのち、二軸押出機に供給し、280℃で溶融混練し、急冷固化して、基材層フィルム形成用のマスターチップを得た。
このポリエチレンテレフタレートのペレットを160℃で3時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度295℃で溶融し、20℃に保持した冷却ドラム上で急冷固化せしめ未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを95℃で縦方向に3.5倍に延伸し、次いで実施例1で使用した易接着層用塗剤を乾燥後の厚みが0.1μmになるように塗布し、110℃で横方向に3.8倍に延伸したのち、230℃で熱処理し、厚みが75μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたポリエステルフィルム上に実施例1と同様にハードコート層を形成し積層ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。得られたフィルムは、耐光性、耐傷つき性、透明性、ハードコート層の密着性に優れたフィルムであったが、寸法安定性は実施例1のフィルムに比べ劣るフィルムであった。
<比較例2>
基材層フィルムを形成するポリマーに紫外線吸収剤が含まれないこと以外は実施例1と同様にして、まずは基材層と易接着層を備えたフィルムを得た。そのフィルム上に、紫外線吸収機能の無いアクリル変性シリカ粒子含有のアクリルハードコート(JSR(株)製の商品名「Z7501」、剤▲4▼、溶剤:メチルエチルケトン、固形分50%)をロールコート法でドライ厚みが5μmになるように塗工し、乾燥した後、電子線を175kVおよび10Mradの条件で照射してハードコート層を形成した。
得られたフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。得られたフィルムは、耐傷つき性、透明性、寸法安定性、ハードコート層の密着性に優れたフィルムであったが、耐光性が非常に悪いフィルムであった。
<比較例3>
基材層を形成するポリマーに滑剤として真球状シリカ(平均粒径0.4μm、屈折率1.44)を0.25重量%添加し、易接着層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、まずは基材層フィルムを得た。そのフィルム上に比較例2と同様にハードコート層を形成し積層フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。得られたフィルムは、耐傷つき性、寸法安定性、に優れたフィルムであったが、透明性に劣り、耐光性、ハードコート層の密着性が非常に悪いフィルムであった。
<比較例4>
基材層フィルムを形成するポリマーに紫外線吸収剤が含まれないこと、ハードコート剤を表1に示す紫外線吸収モノマー含有率の剤に変更したこと(剤▲5▼)以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。得られたフィルムは、耐傷つき性、透明性、寸法安定性、ハードコート層の密着性に優れたフィルムであったが、λs<λであるため耐光性が非常に悪いフィルムであった。
<比較例5>
比較例1と同様にして、まずは基材層と易接着層を備えたフィルムを得た。そのフィルム上に比較例2と同様のハードコート層を形成し積層フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。得られたフィルムは、耐傷つき性、透明性、ハードコート層の密着性に優れたフィルムであったが、耐光性が非常に悪く、寸法安定性に劣るフィルムであった。
<比較例6>
基材層フィルムを形成するポリマーに紫外線吸収剤が含まれないこと、ハードコート剤を表1に示す紫外線吸収モノマー含有率の剤に変更したこと(剤▲6▼)以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。得られたフィルムは、耐光性、透明性、寸法安定性、ハードコート層の密着性に優れたフィルムであったが、耐傷つき性が非常に悪いフィルムであった。

表中のPENは、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、PETはポリエチレンテレフタレートを表す。
【発明の効果】
本発明の積層フィルムは、透明性に優れ、かつ以下の優れた性質を有する。即ち、本発明の積層フィルムは、ハードコート層が紫外線吸収機能を有しΔb*値が所定値未満であり耐光性に優れる。また、ハードコート層表面の鉛筆硬度がH以上であるので耐傷つき性に優れる。また、基材層にナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル樹脂を用いるので寸法安定性に優れる。さらに、基材層とハードコート層との間に易接着層を配置しているため、ハードコート層の密着性に優れる。
【産業上の利用可能性】
本発明の積層フィルムは、耐光性、耐傷つき性、透明性、寸法安定性およびハードコート層の密着性に優れるので、液晶表示装置の部材のプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや反射防止用フィルムのベースフィルム、プラズマディスプレイの電磁波シールドフィルム、有機ELディスプレイのベースフィルム、ディスプレイの防爆用ベースフィルムなどの各種光学用フィルムとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、易接着層およびハードコート層からなり、基材層上に易接着層が形成され、易接着層上にハードコート層が形成された積層フィルムであって、
(1)基材層が、ナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル樹脂からなり、
(2)ハードコート層が紫外線吸収機能を有し、かつハードコート層表面の鉛筆硬度がH以上であって、
(3)該積層フィルムのキセノンアーク試験300時間前後での透過b*値の変化量(Δb*)が2.0未満である、
ことを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
基材層のポリエステル樹脂の吸収波長λと、ハードコート層の吸収開始波長λsが、λ≦λs≦400nmの関係式を満たすことを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
200℃×10分における熱収縮率が2%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
可視光線波長領域における全光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
ヘイズが1%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
基材層のポリエステル樹脂が紫外線吸収剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
基材層のポリエステル樹脂が、90モル%以上のエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位からなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項8】
易接着層が、ガラス転移点温度が40〜100℃のポリエステル樹脂からなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項9】
易接着層が、ジカルボン酸成分として、50〜70モル%の2,6−ナフタレンジカルボン酸および30〜50モル%のテレフタル酸またはイソフタル酸、ジオール成分として80〜95モル%のエチレングリコールおよび5〜20モル%のジエチレングリコールを用いて得られるポリエステル樹脂からなる請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項10】
易接着層が不活性粒子を含有する請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項11】
ハードコート層が、ベンゾフェノンまたはベンゾトリアゾールを側鎖に有するアクリル系モノマーと他のエチレン系不飽和モノマーとの共重合体からなる請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項12】
ベンゾフェノンを側鎖に有するアクリル系モノマーが、2−ヒドロキシ−4−アクリルオキシベンゾフェノンまたは2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノンである請求項11に記載の積層フィルム。
【請求項13】
ベンゾトリアゾールを側鎖に有するアクリル系モノマーが、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールまたは2−[2’−ヒドロキシ−5’−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールである請求項11に記載の積層フィルム。
【請求項14】
他のエチレン系不飽和モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のアルキルエステルおよびメタクリル酸のアルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーである請求項11に記載の積層フィルム。
【請求項15】
ハードコート層が、ベンゾフェノンまたはベンゾトリアゾールを側鎖に有するアクリル系モノマー10〜70重量%と、他のエチレン系不飽和モノマー30〜90重量%とを重合させた共重合体からなる請求項11に記載の積層フィルム。

【国際公開番号】WO2004/065120
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508092(P2005−508092)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000439
【国際出願日】平成16年1月20日(2004.1.20)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】