説明

積層ホース

【課題】 薬液透過防止性、層間接着性、低温耐衝撃性、耐薬品性、及び環境応力負荷耐性に優れた積層ホースを提供する。
【解決手段】 (A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層、(B)下記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有する、エチレン含有量5〜55モル%の変性エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる(b)層、及び(C)アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(c)層を有する、少なくとも3層以上からなることを特徴とする積層ホース。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリアミド(ポリアミド11、12等)からなる層、特定の重合単位を有する変性エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる層、及び特定の官能基を有する含フッ素系重合体からなる層よりなる積層ホース、特に層間接着性、薬液透過防止性、低温耐衝撃性、耐薬品性、及び環境応力負荷耐性に優れる積層ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車配管用ホースにおいては、古くは道路の凍結防止剤による発錆の問題や、地球温暖化防止、省エネルギー化の要請を受けて、その主要素材は、金属から、防錆性に優れ軽量な、樹脂への代替が進みつつある。通常、配管用ホースとして使用される樹脂は、ポリアミド系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂等が挙げられるが、これらを使用した単層ホースの場合、耐熱性、耐薬品性等が不十分なことから、適用可能な範囲が限定されていた。
【0003】
また、自動車配管用ホースは、ガソリンの消費節約、高性能化の観点から、メタノール、エタノール等の沸点の低いアルコール類、あるいはメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)等のエーテル類をブレンドした含酸素ガソリン等が移送される。さらに、環境汚染防止の観点から、配管用ホース隔壁を通じての揮発性炭化水素等の拡散による大気中への漏洩防止を含めた厳しい排ガス規制が実施されている。かかる厳しい規制に対して、従来から使用されている、ポリアミド系樹脂、特に、強度、靭性、耐薬品性、柔軟性に優れるポリアミド11又はポリアミド12を単独で使用した単層ホースは、上記の薬液に対する透過防止性は十分でなく、特に含アルコールガソリン透過防止性に対する改良が求められている。
【0004】
この問題を解決する方法として、薬液透過防止性の良好な樹脂、例えばエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)が配置された積層ホースが提案されてきた(例えば、特許文献1等参照。)。
【0005】
特に、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)は、薬液透過防止性、特に含エタノールガソリンに対する透過防止性に非常に優れている。例えば、ポリアミド12よりなる最外層、変性ポリオレフィンよりなる接着層、ポリアミド6よりなる外層、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)よりなる中間層、ポリアミド6よりなる最内層から構成された燃料配管が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、該配管においても、最内層としてポリアミド6を用いた場合、ガソリンが酸化されて生成するサワーガソリンに対する耐性(耐薬品性)が劣る。さらに、燃料配管において、配管内を循環する燃料の内部摩擦あるいは管壁との摩擦によって発生した静電気が蓄積し、薬液に引火する場合があり、これを防止する方策が求められている。これを解決する方法として、ポリアミド12よりなる最外層、変性ポリオレフィンよりなる接着層、ポリアミド6よりなる外層、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)よりなる中間層、導電性ポリアミド6樹脂組成物よりなる最内層、又は、ポリアミド12よりなる最外層、変性ポリオレフィンよりなる接着層、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)よりなる中間層、変性ポリオレフィンよりなる接着層、導電性ポリアミド12樹脂組成物よりなる最内層から構成された燃料配管が提案されている(特許文献3参照)。該配管においても、最内層として導電性ポリアミド6樹脂組成物を使用した場合、前記導電化されていない燃料配管と比較して、サワーガソリンに対する耐性は劣り、最内層として導電性ポリアミド12樹脂組成物を使用した場合、導電性ポリアミド6樹脂組成物と比較して、サワーガソリンに対する耐性の改良効果は認められるものの、その耐性は満足いくものではない。
【0006】
一方、自動車配管用ホースにおいて、とりわけ燃料に直接接する内層用材料としては、燃料中に存在するエタノールやメタノール等の腐食性薬液に対する耐性及びこれらに対する透過防止性に優れる樹脂を使用することが求められている。この点、内層材料としては、耐熱性、耐薬品性、薬液透過防止性に優れるフッ素系樹脂が最も好ましいものの一つと考えられる。
【0007】
特に、フッ素系樹脂は、その長所を最大限に生かし、短所を最小とするため、フッ素系樹脂と他の異種材料との接着、積層化等の検討が種々行なわれている。しかしながら、フッ素系樹脂は本来接着性に乏しく、他の異種材料と直接接着させることは困難であり、充分な接着強度は得られない。また、ある程度の接着強度が得られる場合でも、異種材料の種類により接着強度がばらつきやすく、接着強度が実用的に不充分であることが多かった。
こうした積層ホースは、加工中や使用中に、層間剥離が生じないよう、強固な層間接着強度が必要である。接着強度を高める手段としては、予めフッ素系樹脂ホースを成形しておき、表面処理を行った後に異種材料を被覆する方法や接着性樹脂を用いる共押出成形法等が挙げられる。特に接着性樹脂を用いる共押出成形法は、表面処理工程が不要なため、低コストな方法と言える。さらに、接着性樹脂を使用せず、フッ素系樹脂と異種材料とを直接接着する方法はさらにコスト面、管理面において有利な方法である。
【0008】
将来においては、環境汚染防止の観点から、益々厳しい法規制が課せられ、配管用ホース隔壁から透過して蒸散する燃料を極限まで抑制することが望まれるが、上記フッ素系樹脂を使用した配管用ホースにおいても、該隔壁から透過して蒸散する燃料を極限まで抑制することは困難である。これを克服する手段として、内層にフッ素系樹脂が配置され、これに対して外側にエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物が配置された層とを有する燃料移送用ホースが提案されている(特許文献4参照)。本技術による燃料移送用ホースは、薬液透過防止性に非常に優れている。しかしながら、該燃料移送用ホースにおいて、フッ素系樹脂からなる層と、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる層間に介在させる接着性樹脂として、変性ポリオレフィン樹脂が配置されることが提案されているが、その層間接着性は十分でなく、さらなる改良が望まれるところである。さらに、これら燃料移送用ホースはレイアウト上の制約や衝突時の変位吸収等のため、一般に曲げ応力を加えた状態で配管される場合が多く、該燃料移送用ホースにおいては、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる層内にクレーズと呼ばれる微小なクラックが発生し、薬液透過防止性が大きく損なわれるという問題を有しており、このような環境応力負荷への耐性を有する積層ホースの開発が求められるところである。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5554425号明細書
【特許文献2】特開平3−177683号公報
【特許文献3】特開2002−160314号公報
【特許文献4】特開平5−247478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前記問題点を解決し、薬液透過防止性、層間接着性、低温耐衝撃性、耐薬品性、及び環境応力負荷耐性に優れた積層ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記問題点を解決するために、鋭意検討した結果、脂肪族ポリアミド(ポリアミド11、12等)からなる層、特定の重合単位を有する変性エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる層、及び特定の官能基を有する含フッ素系重合体からなる層よりなる積層ホースが、層間接着性と薬液透過防止性を両立し、さらに低温耐衝撃性、耐薬品性、環境応力負荷耐性等の諸特性に優れることを見出した。
【0012】
即ち、本発明は、(A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層、(B)下記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有する、エチレン含有量5〜55モル%の変性エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる(b)層、及び(C)アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(c)層を有する、少なくとも3層以上からなることを特徴とする積層ホース
【0013】
【化1】


(式中、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。R、R、R及びRは同じ基でもよいし、異なっていてもよい。また、RとRは結合していてもよい。また上記のR、R、R及びRは他の基、例えば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子等を有していてもよい。)
を提供することにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の積層ホースは、層間接着性と薬液透過防止性を両立し、低温耐衝撃性、耐薬品性、環境応力負荷耐性等の諸特性に優れる。特に、ホース隔壁から透過して蒸散するアルコール混合炭化水素を極限まで抑制することができ、厳しい環境規制への適合が可能となる。さらに、積層ホースの実使用時に問題となる、ガソリンが酸化されて生成するサワーガソリンに対する耐性(耐薬品性)や曲げ応力等の環境応力負荷耐性に優れる。よって、本発明の積層ホースは、あらゆる環境下においても使用可能であり、かつ信頼性が高く、その利用価値は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において使用される、(A)脂肪族ポリアミドは、主鎖中にアミド結合(−CONH−)を有し、脂肪族ポリアミド構造単位であるラクタム、アミノカルボン酸、又は脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とからなるナイロン塩を原料として、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより得られる。
【0016】
ラクタムとしては、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等、アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
ナイロン塩を構成する脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、1,19−ノナデカンジアミン、1,20−エイコサンジアミン、2/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
ナイロン塩を構成する脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
(A)脂肪族ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンウンデカミド(ポリアミド911)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)等の単独重合体やこれらを形成する原料モノマーを数種用いた共重合体等が挙げられる。
【0020】
これらの中でも、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)やこれらを形成する原料モノマーを数種用いた共重合体等が好ましく、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)が最も好ましい。
【0021】
また、本発明において使用される、(A)脂肪族ポリアミドは、前記の単独重合体の混合物、前記の共重合体の混合物、単独重合体と共重合体の混合物であってもよいし、あるいは他のポリアミド系樹脂又はその他の熱可塑性樹脂との混合物であってもよい。混合物中の(A)脂肪族ポリアミドの含有率は60重量%以上であることが好ましい。
【0022】
他のポリアミド系樹脂としては、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタラミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタラミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)、ポリトリメチルへキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド11I)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド11T(H))、ポリウンデカメチレンナフタラミド(ポリアミド11N)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)やこれらポリアミド原料モノマー及び/又は上記脂肪族ポリアミドの原料モノマーを数種用いた共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
また、混合するその他の熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、カルボキシル基及びその塩、酸無水物基、エポキシ基等の官能基が含有された上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。但し、後述の(B)変性エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物との共押出成形性、溶融安定性の観点から、上記例示の他のポリアミド系樹脂、又は熱可塑性樹脂のうち、好ましくは、融点が240℃以下の樹脂を混合することが好ましい。
【0024】
また、本発明において使用される(A)脂肪族ポリアミドには、可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤としては、ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類、トルエンスルホン酸アルキルアミド類、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類等が挙げられる。
【0025】
ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類としては、ベンゼンスルホン酸プロピルアミド、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、ベンゼンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等が挙げられる。トルエンスルホン酸アルキルアミド類としては、N−エチル−o−又はN−エチル−p−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−o−又はN−エチル−p−トルエンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等が挙げられる。ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類としては、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸エチルデシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸オクチルオクチル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸デシルドデシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸メチル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸ブチル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸デシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸ドデシル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
これらの中でも、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、ベンゼンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等のベンゼンスルホン酸アルキルアミド類、N−エチル−p−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−p−トルエンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等のトルエンスルホン酸アルキルアミド類、p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシル、p−ヒドロキシ安息香酸エチルデシル等のヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類が好ましく、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシルがより好ましい。
【0027】
可塑剤の配合量は、(A)脂肪族ポリアミド成分100重量部に対して、1〜30重量部であることが好ましく、1〜15重量部であることがより好ましい。可塑剤の配合量が30重量部を超えると、積層ホースの低温耐衝撃性が低下する場合がある。
【0028】
また、本発明において使用される(A)脂肪族ポリアミドには、衝撃改良材を添加することが好ましい。衝撃改良材としては、ゴム状重合体が挙げられ、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が500MPa以下であることが好ましい。曲げ弾性率がこの値を超えると、衝撃改良効果が不十分となる場合がある。
【0029】
衝撃改良材としては、(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、アイオノマー重合体、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
上記の(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと炭素数3以上のα−オレフィンを共重合した重合体であり、炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、 4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペンル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,5−ノルボルナジエン等の非共役ジエンのポリエンを共重合してもよい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
上記の(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体であり、α,β−不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これら不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
上記のアイオノマー重合体は、オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンの中和によりイオン化されたものである。オレフィンとしてはエチレンが好ましく用いられ、α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸が好ましく用いられるが、ここに例示したものに限定されるものではなく、不飽和カルボン酸エステル単量体が共重合されていても構わない。また、金属イオンはLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の他、Al、Sn、Sb、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Cd等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
また、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン化合物系重合体ブロックからなるブロック共重合体であり、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックを少なくとも1個と、共役ジエン化合物系重合体ブロックを少なくとも1個有するブロック共重合体が用いられる。また、上記のブロック共重合体では、共役ジエン化合物系重合体ブロックにおける不飽和結合が水素添加されていてもよい。
【0034】
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロックである。その場合の芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,5−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、場合により少量の他の不飽和単量体からなる構造単位を有していてもよい。
【0035】
共役ジエン化合物系重合体ブロックは、1,3−ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン化合物の1種又は2種以上から形成された重合体ブロックであり、水素添加した芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体では、その共役ジエン化合物系重合体ブロックにおける不飽和結合部分の一部又は全部が水素添加により飽和結合になっている。
【0036】
芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体及びその水素添加物の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれら任意の組み合わせのいずれであってもよい。これらの中でも、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体及び/又はその水素添加物として、1個の芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと1個の共役ジエン化合物系重合体ブロックが直鎖状に結合したジブロック共重合体、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック−共役ジエン化合物系重合体ブロック−芳香族ビニル化合物系重合体ブロックの順に3つの重合体ブロックが直鎖状に結合しているトリブロック共重合体、及びそれらの水素添加物の1種又は2種以上が好ましく用いられ、未水添又は水添スチレン/ブタジエンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/(イソプレン/ブタジエン)/スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0037】
また、衝撃改良材として用いられる(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、アイオノマー重合体、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体は、カルボン酸及び/又はその誘導体で変性された重合体が好ましく使用される。このような成分により変性することにより、(A)脂肪族ポリアミドに対して親和性を有する官能基をその分子中に含むこととなる。
【0038】
(A)脂肪族ポリアミドに対して親和性を有する官能基としては、カルボキシル酸基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基等が挙げられる。これらの官能基を含む化合物の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
衝撃改良材の配合量は、(A)脂肪族ポリアミド成分100重量部に対して、1〜35重量部であることが好ましく、5〜25重量部であることがより好ましい。衝撃改良材の配合量が35重量部を超えると、積層ホースの本来の機械的特性が損なわれる場合がある。
【0040】
さらに、本発明において使用される、(A)脂肪族ポリアミドには、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、無機充填材、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤等を添加してもよい。
【0041】
(A)脂肪族ポリアミドの製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0042】
また、(A)脂肪族ポリアミドのJIS K−6920に準拠して測定した相対粘度は、1.5〜5.0であることが好ましく、2.0〜4.5であることがより好ましい。相対粘度が前記の値未満であると、得られる積層ホースの機械的性質が不十分なことがあり、また、前記の値を超えるとと、押出圧力やトルクが高くなりすぎて、積層ホースの製造が困難となることがある。
【0043】
本発明において使用される(B)変性エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物は、下記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有する、エチレン含有量5〜55モル%のエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物である(以下、(B)変性EVOHと称する場合がある。)。
【0044】
【化2】

【0045】
(式中、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。R、R、R及びRは同じ基でもよいし、異なっていてもよい。また、RとRは結合していてもよい。また上記のR、R、R及びRは他の基、例えば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子等を有していてもよい。)
【0046】
より好ましい実施態様では、前記R及びRがともに水素原子である。さらに好ましい実施態様では、前記R及びRがともに水素原子であり、前記R及びRのうち、一方が炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基であって、かつ他方が水素原子である。前記脂肪族炭化水素基がアルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。(B)変性EVOHの薬液透過防止性を特に重視する観点からは、前記R及びRのうち、一方がメチル基又はエチル基であり、他方が水素原子であることがより好ましい。
【0047】
また、(B)変性EVOHの薬液透過防止性の観点からは、前記R及びRのうち、一方が(CHOHで表される置換基(ただし、i=1〜8の整数)であり、他方が水素原子であることも好ましい。(B)変性EVOHの薬液透過防止性を特に重視する場合は、前記の(CHOHで表される置換基において、i=1〜4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0048】
本発明において使用される(B)変性EVOHに含まれる上述の構造単位(I)の量は0.3〜40モル%の範囲内である必要がある。構造単位(I)の量の下限は、0.5モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましく、2モル%以上であることがさらに好ましい。一方、構造単位(I)の量の上限は、35モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、25モル%以下であることがさらに好ましい。(B)変性EVOHに含まれる構造単位(I)の量が上記の範囲内であると、薬液透過防止性、低温耐衝撃性、環境応力負荷耐性を兼ね備えた積層ホースを得ることができる。
【0049】
さらに、(B)変性EVOHのエチレン含有量は5〜55モル%であることが好ましい。(B)変性EVOHが、良好な柔軟性及び耐衝撃性を得る観点からは、(B)変性EVOHのエチレン含有量の下限は、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましく、25モル%以上であることが特に好ましく、31モル%以上であることが最も好ましい。一方、(B)変性EVOHの薬液透過防止性の観点からは、(B)変性EVOHのエチレン含有量の上限は50モル%以下であることがより好ましく、45モル%以下であることがさらに好ましい。エチレン含有量が5モル%未満であると、溶融成形性が悪化する場合があり、55モル%を超えると薬液透過防止性が不足する場合がある。
【0050】
本発明において使用される(B)変性EVOHを構成する、上記構造単位(I)及びエチレン単位以外の構造単位は、主としてビニルアルコール単位である。このビニルアルコール単位は、通常、原料の(b1)EVOHに含まれるビニルアルコール単位のうち、後述の(b2)一価エポキシ化合物と反応しなかったビニルアルコール単位である。また、(b1)EVOHに含まれることがある未ケン化の酢酸ビニル単位は、通常そのまま(B)変性EVOHに含有される。(B)変性EVOHは、これらの構造単位を含有するランダム共重合体である。さらに、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他の構造単位を含むこともできる。
【0051】
(B)変性EVOHのメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は、0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜25g/10分であることがより好ましく、0.5〜20g/10分であることがさらに好ましい。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。
【0052】
上記の(B)変性EVOHを製造する方法は特に限定されない。(b1)エチレン含有量5〜55モル%のエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、(b1)EVOHと称する場合がある。)と(b2)分子量500以下の一価エポキシ化合物(以下、(b2)一価エポキシ化合物と称する場合がある。)とを反応させることにより、(B)変性EVOHを得る方法が好ましい。
【0053】
(b1)EVOHとしては、エチレン/ビニルエステル共重合体をケン化して得られるものが好ましい。EVOHの製造時に用いるビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)も使用できる。また、本発明の目的が阻害されない範囲であれば、他の共単量体として、プロピレン、ブチレン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸又はそのエステル、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物、不飽和スルホン酸又はその塩、アルキルチオール類、N−ビニルピロリドン等のビニルピロリドン等を共重合することもできる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0054】
(b1)EVOHとして、共重合成分としてビニルシラン化合物を共重合したEVOHを用いる場合、共重合量として0.0002〜0.2モル%を含有することが好ましい。かかる範囲でビニルシラン化合物を共重合成分として有することにより、共押出成形を行う際の、基材樹脂と(B)変性EVOHとの溶融粘性の整合性が改善され、共押出成形性が良好となる場合がある。特に、溶融粘度の高い基材樹脂を用いる場合、均質な積層ホースを得ることが容易となる。ビニルシラン系化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好ましい。
【0055】
さらに、(b1)EVOHのエチレン含有量は5〜55モル%であることが好ましい。本発明において使用される(B)変性EVOHが、良好な耐衝撃性を得る観点から、(b1)EVOHのエチレン含有量の下限は、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましく、25モル%以上であることが特に好ましく、31モル%以上であることが最も好ましい。一方、(B)変性EVOHの薬液透過防止性の観点からは、(b1)EVOHのエチレン含有量の上限は、50モル%以下であることがより好ましく、45モル%以下であることがさらに好ましい。エチレン含有量が5モル%未満であると、溶融成形性が悪化する場合があり、55モル%を超えると薬液透過防止性が不足する場合がある。
【0056】
ここで、EVOHがエチレン含有量の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をエチレン含有量とする。
【0057】
また、(b1)EVOHのビニルエステル成分のケン化度は、90%以上であることが好ましい。ビニルエステル成分のケン化度は、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。ケン化度が90%未満であると、薬液透過防止性が低下する場合がある。
【0058】
ここで、EVOHがケン化度の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。なお、EVOHのエチレン含有量及びケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0059】
さらに、(b1)EVOHに、本発明の目的を阻外しない範囲内で、ホウ素化合物を含有することもできる。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等が挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等が挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸が好ましい。
【0060】
(b1)EVOHへの、ホウ素化合物の含有量は、ホウ素元素換算で20〜2000ppmであることが好ましく、50〜1000ppmであることがより好ましい。ホウ素化合物の含有量がこの範囲内であると、加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOHを得ることができる。ホウ素元素濃度が20ppm未満であると、そのような効果が小さくなる場合があり、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
【0061】
また、(b1)EVOHに、リン酸化合物を含有してもよい。これにより樹脂の品質(着色等)を安定させることができる。リン酸化合物としては、特に限定されず、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩としては、第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていてもよいが、第1リン酸塩が好ましい。そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。これらの中でもリン酸2水素ナトリウム及びリン酸2水素カリウムが好ましい。
【0062】
(b1)EVOHへの、リン酸化合物の含有量は、リン酸根換算で200ppm以下でありことが好ましく、5〜100ppmであることがより好ましく、5〜50ppmであることがさらに好ましい。
【0063】
また、後述の通り、本発明において使用される(B)変性EVOHは、好適には(b1)EVOHと分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物との反応を、押出機内で行わせることによって得られるが、その際に、(b1)EVOHは加熱条件下に晒される。この時に、(b1)EVOHが過剰にアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含有していると、得られる(B)変性EVOHに着色が生じる場合がある。また、(B)変性EVOHの粘度低下等の問題が生じ、成形性が低下する場合がある。
【0064】
上記の問題を回避するためには、(b1)EVOHが含有するアルカリ金属塩が金属元素換算値で50ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることがさらに好ましい。また、同様な観点から、(b1)EVOHが含有するアルカリ土類金属塩が金属元素換算値で20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましく、(b1)EVOHにアルカリ土類金属塩が実質的に含まれていないことが特に好ましい。
【0065】
また、本発明の目的を阻外しない範囲内であれば、(b1)EVOHに、熱安定剤、酸化防止剤を配合するもできる。
【0066】
(b1)EVOHの固有粘度は0.06L/g以上であることが好ましい。0.07〜0.2L/gの範囲内であることがより好ましく、0.075〜0.15L/gの範囲内であることがさらに好ましく、0.080〜0.12L/gであることが特に好ましい。(b1)EVOHの固有粘度が0.06L/g未満であると、延伸性、柔軟性及び耐屈曲性が低下する場合がある。また、(b1)EVOHの固有粘度が0.2L/gを越えると、(B)変性EVOHからなる成形物においてゲル・ブツが発生しやすくなる場合がある。
【0067】
また、(b1)EVOHのメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は、0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜25g/10分であることがより好ましく、0.5〜20g/10分であることがさらに好ましい。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。
【0068】
本発明において使用される分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物は、一価のエポキシ化合物であることが必須である。すなわち、分子内にエポキシ基を一つだけ有するエポキシ化合物でなければならない。二価又はそれ以上の、多価のエポキシ化合物を用いた場合は、本発明の効果を奏することができない。ただし、一価エポキシ化合物の製造工程において、ごく微量に多価エポキシ化合物が含まれることがある。しかしながら、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ごく微量の多価エポキシ化合物が含まれる一価のエポキシ化合物を、本発明における分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物として使用することも可能である。
【0069】
分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物は特に限定されない。具体的には、下記式(III)〜(IX)で示される化合物が、好ましくは使用される。
【0070】
【化3】

【0071】
【化4】

【0072】
【化5】

【0073】
【化6】

【0074】
【化7】

【0075】
【化8】

【0076】
【化9】

【0077】
(式中、R、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(アルキル基又はアルケニル基等)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基等)、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基(フェニル基等)を表す。また、i、j、k、l及びmは、1〜8の整数を表す。)
【0078】
上記式(III)で表される分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物としては、エポキシエタン(エチレンオキサイド)、エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、3−メチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、2,3−エポキシペンタン、3−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−2,3−エポキシペンタン、3−エチル−1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、2,3−エポキシヘキサン、3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、3−エチル−1,2−エポキシヘキサン、3−プロピル−1,2−エポキシヘキサン、4−エチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−2,3−エポキシヘキサン、4−エチル−2,3−エポキシヘキサン、2−メチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−1,2−エポキシへプタン、5−メチル−1,2−エポキシへプタン、6−メチル−1,2−エポキシへプタン、3−エチル−1,2−エポキシへプタン、3−プロピル−1,2−エポキシへプタン、3−ブチル−1,2−エポキシへプタン、4−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−プロピル−1,2−エポキシへプタン、5−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−2,3−エポキシへプタン、4−エチル−2,3−エポキシへプタン、4−プロピル−2,3−エポキシへプタン、2−メチル−3,4−エポキシへプタン、5−メチル−3,4−エポキシへプタン、5−エチル−3,4−エポキシへプタン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシへプタン、2−メチル−5−エチル−3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシヘプタン、2,3−エポキシヘプタン、3,4−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、2,3−エポキシオクタン、3,4−エポキシオクタン、4,5−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、2,3−エポキシノナン、3,4−エポキシノナン、4,5−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、2,3−エポキシデカン、3,4−エポキシデカン、4,5−エポキシデカン、5,6−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、2,3−エポキシウンデカン、3,4−エポキシウンデカン、4,5−エポキシウンデカン、5,6−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、2,3−エポキシドデカン、3,4−エポキシドデカン、4,5−エポキシドデカン、5,6−エポキシドデカン、6,7−エポキシドデカン、エポキシエチルベンゼン、1−フェニル−1,2−エポキシプロパン、3−フェニル−1,2−エポキシプロパン、1−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシブタン、4−フェニル−1,2−エポキシブタン、1−フェニル−1,2−エポキシペンタン、3−フェニル−1,2−エポキシペンタン、4−フェニル−1,2−エポキシペンタン、5−フェニル−1,2−エポキシペンタン、1−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、3−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、4−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、5−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、6−フェニル−1,2−エポキシヘキサン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0079】
上記式(IV)で表される分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物としては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−3−ペンチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ヘキシルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ヘプチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−オクチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−フェノキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ベンジルオキシプロパン、1,2−エポキシ−4−メトキシブタン、1,2−エポキシ−4−エトキシブタン、1,2−エポキシ−4−プロポキシブタン、1,2−エポキシ−4−ブトキシブタン、1,2−エポキシ−4−ペンチルオキシブタン、1,2−エポキシ−4−ヘキシルオキシブタン、1,2−エポキシ−4−ヘプチルオキシブタン、1,2−エポキシ−4−フェノキシブタン、1,2−エポキシ−4−ベンジルオキシブタン、1,2−エポキシ−5−メトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−エトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−プロポキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ブトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ペンチルオキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ヘキシルオキシペンタン、1,2−エポキシ−5−フェノキシペンタン、1,2−エポキシ−6−メトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−エトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−プロポキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−ブトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−ヘプチルオキシヘキサン、1,2−エポキシ−7−メトキシへプタン、1,2−エポキシ−7−エトキシへプタン、1,2−エポキシ−7−プロポキシへプタン、1,2−エポキシ−7−ブチルオキシへプタン、1,2−エポキシ−8−メトキシへプタン、1,2−エポキシ−8−エトキシへプタン、1,2−エポキシ−8−ブトキシへプタン、グリシドール、3,4−エポキシ−1−ブタノール、4,5−エポキシ−1−ペンタノール、5,6−エポキシ−1−ヘキサノール、6,7−エポキシ−1−へプタノール、7,8−エポキシ−1−オクタノール、8,9−エポキシ−1−ノナノール、9,10−エポキシ−1−デカノール、10,11−エポキシ−1−ウンデカノール等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0080】
上記式(V)で表される分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物としては、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、プロパンジオールモノグリシジルエーテル、ブタンジオールモノグリシジルエーテル、へプタンジオールモノグリシジルエーテル、ヘキサンジオールモノグリシジルエーテル、へプタンジオールモノグリシジルエーテル、オクタンジオールモノグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0081】
上記式(VI)で表される分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物としては、3−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−プロペン、4−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ブテン、5−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ペンテン、6−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ヘキセン、7−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ヘプテン、8−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−オクテン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0082】
上記式(VII)で表される分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物としては、3,4−エポキシ−2−ブタノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−2−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ペンタノール、1,2−エポキシ−3−ペンタノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘキサノール、4,5−エポキシ−3−ヘキサノール、1,2−エポキシ−3−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−エチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジエチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−4−エチル−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5−メチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5,5−ジメチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−ヘプタノール、4,5−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−4−ヘプタノール、1,2−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−オクタノール、3,4−エポキシ−2−オクタノール、4,5−エポキシ−3−オクタノール、5,6−エポキシ−4−オクタノール、2,3−エポキシ−4−オクタノール、1,2−エポキシ−3−オクタノール、2,3−エポキシ−1−ノナノール、3,4−エポキシ−2−ノナノール、4,5−エポキシ−3−ノナノール、5,6−エポキシ−4−ノナノール、3,4−エポキシ−5−ノナノール、2,3−エポキシ−4−ノナノール、1,2−エポキシ−3−ノナノール、2,3−エポキシ−1−デカノール、3,4−エポキシ−2−デカノール、4,5−エポキシ−3−デカノール、5,6−エポキシ−4−デカノール、6,7−エポキシ−5−デカノール、3,4−エポキシ−5−デカノール、2,3−エポキシ−4−デカノール、1,2−エポキシ−3−デカノール等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0083】
上記式(VIII)で表される分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物としては、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1,2−エポキシシクロノナン、1,2−エポキシシクロデカン、1,2−エポキシシクロウンデカン、1,2−エポキシシクロドデカン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0084】
上記式(IX)で表される分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロペンテン、3,4−エポキシシクロヘキセン、3,4−エポキシシクロヘプテン、3,4−エポキシシクロオクテン、3,4−エポキシシクロノネン、1,2−エポキシシクロデセン、1,2−エポキシシクロウンデセン、1,2−エポキシシクロドデセン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0085】
分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物としては、炭素数が2〜8のエポキシ化合物がより好ましい。また、(b2)一価エポキシ化合物が、上記式(III)又は(IV)で表される化合物であることがより好ましい。(b1)EVOHとの反応性、及び得られる(B)変性EVOHの薬液透過防止性の観点からは、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エポキシプロパン、エポキシエタン及びグリシドールがさらに好ましく、これらの中でもエポキシプロパン及びグリシドールが特に好ましい。
【0086】
上記(b1)EVOHと上記(b2)一価エポキシ化合物とを反応させることにより、(B)変性EVOHが得られる。このときの、((b2)一価エポキシ化合物の配合量は、(b1)EVOH100重量部に対して、1〜50重量部であることが好ましく、2〜40重量部であることがより好ましく、5〜35重量部であることがさらに好ましい。
【0087】
(b1)EVOHと分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物とを反応させることにより、(B)変性EVOHを製造する方法は特に限定されないが、(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物とを溶液で反応させる製造法、及び(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物とを押出機内で反応させる製造法等が好ましい方法として挙げられる。
【0088】
溶液反応による製造法では、(b1)EVOHの溶液に酸触媒あるいはアルカリ触媒存在下で(b2)一価エポキシ化合物を反応させることによって(B)変性EVOHが得られる。また、(b1)EVOH及び(b2)一価エポキシ化合物を反応溶媒に溶解させ、加熱処理を行うことによっても(B)変性EVOHを製造することができる。反応溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等の(b1)EVOHの良溶媒である極性非プロトン性溶媒が好ましい。
【0089】
反応触媒としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、3弗化ホウ素等の酸触媒や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキサイド等のアルカリ触媒が挙げられる。これらの中でも、酸触媒を用いることが好ましい。触媒量としては、(b1)EVOH100重量部に対し、0.0001〜10重量部程度が適当である。反応温度としては室温から150℃の範囲が適当である。
【0090】
(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物とを押出機内で反応させる製造法では、使用する押出機としては特に制限はないが、一軸押出機、二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を使用し、200℃〜300℃程度の温度で(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物とを反応させることが好ましい。二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を用いた場合、スクリュー構成の変更により、反応部の圧力を高めることが容易であり、(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物との反応を効率的に行えるようになる。一軸押出機では2台以上の押出機を連結し、その間の樹脂流路にバルブを配置することにより、反応部の圧力を高めることが可能である。また同様に二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を2台以上連結して製造してもよい。
【0091】
押出機内で反応させる製造法と、溶液反応による製造法を比較した場合、溶液反応の場合は、(b1)EVOHを溶解させる溶媒が必要であり、反応終了後に該溶媒を反応系から回収・除去する必要があり、工程が煩雑なものとなる。また、(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物との反応性を高めるためには、反応系を加熱及び/又は加圧条件下に維持することが好ましいが、溶液反応の場合と比較して、押出機内での反応ではかかる反応系の加熱及び/又は加圧条件の維持が容易であり、その観点からも押出機内での反応のメリットは大きい。
【0092】
さらに、溶液反応によって(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物との反応を行った場合、反応の制御が必ずしも容易ではなく、過剰に反応が進行してしまうことがある。すなわち、(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物との反応の結果、上述の構造単位(I)を有する(B)変性EVOHが得られるが、前記構造単位(I)に含まれる水酸基に、さらに(b2)一価エポキシ化合物が反応することにより、本発明で特定する構造単位とは異なるものが得られる場合がある。
【0093】
具体的には、(b2)一価エポキシ化合物がエチレンオキサイドである場合、上述した過剰な反応の進行により、下記に示す構造単位(II)を含有するEVOHが生じることになる。
【0094】
【化10】



(式中、nは1以上の自然数を表す。)
【0095】
本発明で特定する構造単位(I)とは異なる、上記に示した構造単位(II)を含有する割合が多くなることにより、得られる(B)変性EVOHの薬液透過防止性が低下する場合がある。さらに、押出機内で(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物との反応を行った場合は、このような副反応の発生を効果的に抑制可能である。かかる観点からも、押出機内で(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物との反応を行うことにより、(B)変性EVOHを製造する方法が好ましい。
【0096】
また、本発明で用いられる分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物は、必ずしも沸点の高いものばかりではないため、溶液反応による製造法では、反応系を加熱した場合、系外に(b2)一価エポキシ化合物が揮散することがある。しかしながら、押出機内で(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物とを反応させることにより、(b2)一価エポキシ化合物の系外への揮散を抑制することが可能である。特に、押出機内に(b2)一価エポキシ化合物を添加する際に、加圧下で圧入することにより、(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物との反応性を高め、かつ(b2)一価エポキシ化合物の系外への揮散を顕著に抑制することが可能である。
【0097】
押出機内での反応の際の、(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物の混合方法は特に限定されず、押出機にフィードする前の(b1)EVOHに(b2)一価エポキシ化合物をスプレー等を行う方法や、押出機に(b1)EVOHをフィードし、押出機内で(b2)一価エポキシ化合物と接触させる方法等が挙げられる。この中でも、(b2)一価エポキシ化合物の系外への揮散を抑制できる観点から、押出機に(b1)EVOHをフィードした後、押出機内で(b2)一価エポキシ化合物と接触させる方法が好ましい。また、押出機内への(b2)一価エポキシ化合物の添加位置も任意であるが、(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物との反応性の観点から、溶融した(b1)EVOHに対して(b2)一価エポキシ化合物を添加することが好ましい。
【0098】
好ましくは、(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物との、押出機内での反応による製造法は、(1)(b1)EVOHの溶融工程、(2)(b2)一価エポキシ化合物の添加工程及び(3)ベント等による、未反応の(b2)一価エポキシ化合物の除去工程からなる。反応を円滑に行う観点からは、系内から水分及び酸素を除去することがより好ましい。このため、押出機内へ(b2)一価エポキシ化合物を添加するより前に、ベント等を用いて水分及び酸素を除去してもよい。
【0099】
また、前述の通り、(b2)一価エポキシ化合物の添加工程においては、(b2)一価エポキシ化合物を加圧下で圧入することが好ましい。この際に、この圧力が不十分な場合、反応率が下がり、吐出量が変動する等の問題が発生する。必要な圧力は(b2)一価エポキシ化合物の沸点や押出温度によって大きく異なるが、通常0.5〜30MPaの範囲であることが好ましく、1〜20MPaの範囲であることがより好ましい。
【0100】
本発明において使用される、(B)変性EVOHには、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、カルボン酸及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を、(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物との反応によって(B)変性EVOHが得られた後に添加することもできる。一般に、接着性の改善や着色の抑制等、EVOHの各種物性を改善するために、必要に応じてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、カルボン酸及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が添加されることが多い。しかしながら、上記に示した各種化合物の添加は、前述の通り、押出機による(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物との反応の際に、着色や粘度低下等の原因となる場合がある。このため、(b1)EVOHと(b2)一価エポキシ化合物との反応後に、残存する(b2)一価エポキシ化合物をベントで除去した後、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、カルボン酸及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を、得られた(B)変性EVOHに添加することが好ましい。この添加方法を採用することにより、着色や粘度低下等の問題を生じることなく、(B)変性EVOHが得られる。
【0101】
本発明において使用される(B)変性EVOHには、必要に応じて各種の添加剤を配合することもできる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、あるいは他の熱可塑性樹脂を挙げることができ、これらを本発明の作用効果が阻害されない範囲で配合することができる。
【0102】
具体的には、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等の酸化防止剤、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等の可塑剤、ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、カーボワックス等の帯電防止剤、エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等の滑剤、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等の着色剤、グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウム等の充填剤等が挙げられる。
【0103】
また、本発明において使用される(B)変性EVOHには、溶融安定性等を改善するために、本発明の作用効果が阻害されない程度に、ハイドロタルサイト化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)の1種又は2種以上を(B)変性EVOHに対し本発明の作用効果が阻害されない程度(0.01〜1重量%)添加することもできる。
【0104】
本発明において使用される、(C)含フッ素系重合体は、アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体である(以下、(C)含フッ素系重合体と称する場合がある。)。
(C)含フッ素系重合体は、少なくとも1種の含フッ素単量体から誘導される繰り返し単位を有する重合体(単独重合体又は共重合体)である。熱溶融加工可能な含フッ素系重合体であれば特に限定されるものではない。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体(PFA) 、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0105】
上記例示の(C)含フッ素系重合体の中でも、耐熱性、耐薬品性の面で、テトラフルオロエチレン単位を必須成分とする含フッ素系重合体、成形加工の面では、フッ化ビニリデン単位を必須成分とする含フッ素系重合体が好ましく、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)が好ましい。
【0106】
エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEと称する場合がある。)は、エチレンに基づく重合単位(以下、Eと称する場合がある。)とテトラフルオロエチレンに基づく重合単位(以下、TFEと称する場合がある。)からなり、その重合比(モル比)が80/20〜20/80であることが好ましく、70/30〜30/70であることがより好ましく、60/40〜40/60であることがさらに好ましい。
【0107】
(Eに基づく重合単位)/(TFEに基づく重合単位)のモル比が極端に大きいと、当該ETFEの耐熱性、耐候性、耐薬品性、薬液透過防止性等が低下する場合があり、一方、モル比が極端に小さいと、機械的強度、溶融成形性等が低下する場合がある。この範囲にあると、該ETFEが、耐熱性、耐候性、耐薬品性、薬液透過防止性、機械的強度、溶融成形性等に優れたものとなる。
【0108】
(C)含フッ素系重合体には、上記E、TFEに基づく重合単位に加えて、その本質的な特性を損なわない範囲で他の単量体を1種以上含んでもよい。
他の単量体としては、プロピレン、ブテン等のα−オレフィン類、CH=CX(CFY(ここで、X及びYは独立に水素又はフッ素原子、nは2〜8の整数である。)で表される化合物、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)等の不飽和基に水素原子を有するフルオロオレフィン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)(PBVE)やその他パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等の不飽和基に水素原子を有しないフルオロオレフィン(ただし、TFEを除く。)、メチルビニルエーテル(MVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル(BVE)、イソブチルビニルエーテル(IBVE)、シクロへキシルビニルエーテル(CHVE)等のビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニルのビニルエステル類、アルキル(メタ)アクリレート、(フルオロアルキル)アクリレート、(フルオロアルキル)メタクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0109】
(C)含フッ素系重合体において、前記一般式CH=CX(CFYで表される化合物(以下、FAEという。)を使用することが好ましい。FAEに基づく重合単位の含有量は、全重合単位中において、0.01〜20モル%であることが好ましく、0.1〜15モル%であることがより好ましく、1〜10モル%であることがさらに好ましい。FAEの含有量が前記の値未満であると、耐クラック性が低下する場合や、ストレス下において破壊現象が発生する場合があり、前記の値を超えると、機械的強度が低下する場合がある。
【0110】
FAEは、上記のとおり、一般式CH=CX(CFY(ここで、X、Yはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、nは2〜8の整数である。)で表される化合物である。式中のnが2未満であると含フッ素系重合体の改質(例えば、共重合体の成形時や成形品のクラック発生の抑制)が不十分となる場合があり、一方、式中のnが8を超えると重合反応性の点で不利となる場合がある。
【0111】
FAEとしては、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0112】
これらの中でも、CH=CH(CFYで表される化合物がより好ましく、その場合、式中のnは、n=2〜4であることが、(C)含フッ素系重合体の薬液透過防止性と耐クラック性を両立することからさらに好ましい。
【0113】
フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデンに基づく重合単位と、これと共重合可能な少なくとも1種の含フッ素単量体からなる共重合体である。ここでフッ化ビニリデンに基づく重合単位と共重合可能なその他の単量体としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロイソブチレン、ヘキサフルオロアセトン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、フルオロ(アルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。フッ化ビニリデンに基づく重合単位の量は、全重合単位中において少なくとも30モル%以上であることが好ましい。テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)は、好ましいフッ化ビニリデン共重合体として挙げることができる。
【0114】
本発明において使用される(C)含フッ素系重合体は、重合体を構成する単量体を従来からの重合方法で(共)重合することによって得ることができる。その中でも主としてラジカル重合による方法が用いられる。すなわち重合を開始するには、ラジカル的に進行するものであれば手段は何ら制限されないが、例えば有機、無機ラジカル重合開始剤、熱、光あるいは電離放射線等によって開始される。
【0115】
(C)含フッ素系重合体の製造方法は特に制限はなく、一般に用いられているラジカル重合開始剤を用いる重合方法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合等、公知の方法を採用できる。
また、重合は、一槽ないし多槽式の攪拌型重合装置、管型重合装置を使用して、回分式又は連続式操作とすることができる。
【0116】
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である分解温度が0℃〜100℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましい。具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、 2,2’− アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、 2,2’−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)、 2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、 2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、 4,4’−アゾビス(4−シアノペンテン酸)等のアゾ化合物、過酸化水素、tert− ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の非フッ素系ジアシルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル、tert−ブチルヒドロパーオキサイド等のヒドロパーオキシド、(Z(CFCOO)(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルパーオキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0117】
また、(C)含フッ素系重合体の製造に際しては、分子量調整のために、通常の連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のクロロハイドロカーボンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0118】
重合条件については特に限定されず、重合温度は、0℃〜100℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましい。重合体中のエチレン−エチレン連鎖生成による耐熱性の低下を避けるためには、一般に低温が好ましい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量及び蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、0.1〜10MPaであることが好ましく、0.5〜3MPaであることがより好ましい。重合時間は1〜30時間であることが好ましい。
【0119】
また、(C)含フッ素系重合体の分子量は特に限定されないが、室温で固体の重合体であり、それ自体、熱可塑性樹脂、エラストマー等として使用できるものが好ましい。また、分子量は、重合に用いる単量体の濃度、重合開始剤の濃度、連鎖移動剤の濃度、温度によって制御される。
【0120】
(C)含フッ素系重合体を、前記(A)脂肪族ポリアミド、(B)変性EVOH等と共押出する場合、これらの著しい劣化を伴わない混練温度及び成形温度範囲で、充分な溶融流動性を確保するためには、(C)含フッ素系重合体の融点より50℃高い温度、及び5kg荷重におけるメルトフローレートが、0.5〜200g/10分であることが好ましく、1〜100g/10分であることがより好ましい。
【0121】
また、(C)含フッ素系重合体は、含フッ素単量体及びその他の単量体の種類、組成比等を選ぶ事によって、重合体の融点、ガラス転移点を調節することができる。
(C)含フッ素系重合体の融点は、目的、用途、使用方法により適宜選択されるが、前記(A)脂肪族ポリアミド、(B)変性EVOH等と共押出する場合、当該樹脂の成形温度に近いことが好ましい。そのため、前記含フッ素単量体及びその他の単量体及び後述の官能基含有単量体の割合を適宜調節し、(C)含フッ素系重合体の融点を最適化することが好ましい。特に該含フッ素系重合体の融点が180〜230℃であることが、(B)変性EVOHとの共押出時の熱溶融安定性を考慮すると好ましい。融点が上記の範囲を外れると、積層ホースの連続生産性に劣る場合があり、さらに、(B)変性EVOHとの共押出時の熱溶融安定性を確保するため、該(C)含フッ素系重合体の成形温度を下げると、該含フッ素系重合体からなる層の脈動を誘引し、(B)変性EVOHとの良好な層間接着性に劣る場合がある。ここで、融点とは、示差走査熱量測定装置を用いて、試料を予想される融点以上の温度に加熱し、次に、この試料を1分間あたり10℃の速度で降温し、30℃まで冷却、そのまま約1分間放置したのち1分間あたり10℃の速度で昇温することにより測定される融解曲線のピ−ク値の温度を融点と定義するものとする。
【0122】
本発明において使用される(C)含フッ素系重合体は、アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基を分子構造内に有しており、官能基は、(C)含フッ素系重合体の分子末端又は側鎖又は主鎖のいずれに含有されていても構わない。また、官能基は、(C)含フッ素系重合体中に単独、又は2種類以上のものが併用されていてもよい。その官能基の種類、含有量は、(C)含フッ素系重合体に、積層される相手材の種類、形状、用途、要求される層間接着性、接着方法、官能基導入方法等により適宜決定される。
【0123】
ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、ヒドロキシル基、スルホ基もしくはスルホン酸塩、エポキシ基、シアノ基、カーボネート基、及びカルボン酸ハライド基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。特に、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、ヒドロキシル基、エポキシ基、カーボネート基、及びカルボン酸ハライド基から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0124】
(C)含フッ素系重合体に、反応性を有する官能基を導入する方法としては、(i)(C)含フッ素系重合体の重合時、官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤、連鎖移動剤等により、重合時に(C)含フッ素系重合体の分子末端に官能基を導入する方法、(iii)反応性を有する官能基をグラフト化が可能な官能基とを有する化合物(グラフト化合物)を含フッ素系重合体にグラフトさせる方法等が挙げられる。これらの導入方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。積層ホースにおける層間接着性を考慮した場合、上記(i)、(ii)から製造される(C)含フッ素系重合体が好ましい。(iii)については、特開平7−18035号公報、特開平7−25952号公報、特開平7−25954号公報、特開平7−173230号公報、特開平7−173446号公報、特開平7−173447号公報、特表平10−503236号公報による製造法を参照されたい。以下、(i)含フッ素系重合体の重合時、官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤等により含フッ素系重合体の分子末端に官能基を導入する方法について説明する。
【0125】
(i)(C)含フッ素系重合体の製造時、官能基を有する共重合可能な単量体(以下、官能基含有単量体と略記する場合がある。)を共重合する方法において、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、ヒドロキシル基、スルホ基もしくはスルホン酸塩、エポキシ基、シアノ基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基含有単量体を重合単量体して用いる。官能基含有単量体としては、官能基含有非フッ素単量体、官能基含有含フッ素単量体等が挙げられる。
【0126】
官能基含有非フッ素単量体としては、アクリル酸、ハロゲン化アクリル酸(但し、フッ素は除く)、メタクリル酸、ハロゲン化メタクリル酸(但し、フッ素は除く)、マレイン酸、ハロゲン化マレイン酸(但し、フッ素は除く)、フマル酸、ハロゲン化フマル酸(但し、フッ素は除く)、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸やそのエステル等誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等のカルボキシル基含有単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、ヒドロキシルアルキルビニルエーテル等のヒドロキシル基含有単量体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0127】
前記官能基含有含フッ素単量体の具体例としては、
CF=CFOCFCFCOOH
CF=CFO(CFCOOH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCOOH
CF=CFCFCOOH
CF=CFCFCFCOOH
CF=CFOCFCFCOONH
CF=CFO(CFCOONa
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOONH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCOONa
CF=CFCFCOONH
CF=CFCFCFCOOZn
CF=CFOCFCFCHOH
CF=CFO(CFCHOH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCHOH
CF=CFCFCHOH
CF=CFCFCFCHOH
CF=CFOCFCFSO
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSO
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN
CF=CFCFOCFCFCFCOOH
CF=CFCFOCFCF(CF)COOH
CF=CFCFOCFCFCFCOONH
CF=CFCFOCFCF(CF)COONH
CF=CFCFOCFCFCFCOONa
CF=CFCFOCFCF(CF)COOZn
CF=CFCFOCFCFCFCHOH
CF=CFCFOCFCF(CF)CHOH
CF=CFCFOCFCFCFSO
CF=CFCFOCFCFCFCN
CH=CFCFCFCHCOOH
CH=CFCFCFCOOH
CH=CF(CFCOOH
CH=CF(CFCHCOOH
CH=CFCFOCF(CF)COOH
CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH
CH=CFCFCFCHCOONH
CH=CFCFCFCOONa
CH=CF(CFCHCOOZn
CH=CFCFOCF(CF)COONH
CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COONH
CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOZn
CH=CFCFCFCHCHOH
CH=CFCFCFCHOH
CH=CF(CFCHCHOH
CH=CFCFOCF(CF)CHOH
CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CHOH
CH=CHCFCFCHCOOH
CH=CH(CFCHCHCOOH
CH=CH(CFCHCHCOOH
CH=CH(CFCH2COOH
CH=CH(CFCHCOONH
CH=CH(CFCHCHCOONa
CH=CH(CFCHCOOZn
CH=CHCFCFCHCHOH
CH=CH(CFCHCHCHOH
CH=CH(CFCHCHOH
等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0128】
(C)含フッ素系重合体中の官能基含有単量体の含有率は、全重合単位中、0.05〜20モル%であることが好ましく、0.05〜10モル%であることがより好ましく、0.1〜5モル%であることがさらに好ましい。官能基含有単量体の含有率が0.05モル%未満であると、層間接着性が充分得られにくく、使用環境条件により、層間接着性の低下を招く場合がある。また、20モル%を超えると耐熱性を低下させ、高温での加工時、接着不良や着色や発泡、高温での使用時、分解による剥離や着色・発泡、溶出等が発生する場合がある。また、上記含有量を満たす限りにおいて、官能基が導入された含フッ素系重合体と、官能基が導入されていない含フッ素系重合体の混合物であって構わない。
【0129】
(ii)重合開始剤等により含フッ素系重合体の分子末端に官能基を導入する方法において、官能基は、含フッ素系重合体の分子鎖の片末端又は両末端に導入される。末端に導入される官能基としては、カーボネート基、カルボン酸ハライド基が好ましい。
【0130】
(C)含フッ素系重合体の末端基として導入されるカーボネート基は、一般に−OC(=O)O−の結合を有する基であり、具体的には、−OC(=O)O−R基[Rは水素原子、有機基(例えば、C1〜C20アルキル基、エーテル結合を有するC2〜C20アルキル基等)又はI、II、VII族元素である。]の構造のもので、−OC(=O)OCH、−OC(=O)OCH−OC(=O)OC17、−OC(=O)OCHCHOCHCH等が挙げられる。カルボン酸ハライド基は、具体的には−COY[Yはハロゲン元素]の構造のもので、−COF、−COCl等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0131】
また、重合体の分子末端にカーボネート基を導入するためには、重合開始剤や連鎖移動剤を使用した種々の方法を採用できるが、パーオキサイド、特にパーオキシカーボネートを重合開始剤として用いる方法が、経済性の面、耐熱性、耐薬品性等の品質の面で好ましく採用できる。また、パーオキシカーボネートを用いると、重合温度を低くする事が可能であり、開始反応に副反応を伴わないことから好ましい。
【0132】
重合体の分子末端にカルボン酸ハライド基を導入するためには、種々の方法を採用できるが、例えば、前述のカーボネート基を末端に有する含フッ素系重合体のカーボネート基を加熱させ熱分解(脱炭酸)させることにより得ることができる。
【0133】
パーオキシカーボネートとしては、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−イソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0134】
パーオキシカーボネートの使用量は、目的とする重合体の種類(組成等)、分子量、重合条件、使用する開始剤の種類によって異なるが、重合によって得られる全重合体100重量部に対して、0.05〜20重量部であることが好ましく、に0.1〜10重量部であることがより好ましい。重合体の分子末端のカーボネート基含有量は、重合条件を調整することによって制御できる。重合開始剤の使用量が前記の値を超えると、重合速度の制御が困難となる場合があり、使用量が前記の値未満であると、重合速度が遅くなる場合がある。重合開始剤の添加法は特に限定されず、重合開始時に一括添加してもよいし、重合中に連続添加しても良い。添加方法は、重合開始剤の分解反応性と重合温度により適宜選択される。
【0135】
(C)含フッ素系重合体中の主鎖炭素数10個に対する末端官能基数は、150〜3000個であることが好ましく、200〜2000個であることがより好ましく、300〜1000個であることがさらに好ましい。官能基数が150個未満であると、層間接着性が充分得られにくく、使用環境条件により、層間接着性の低下を招く場合がある。また、3000個を超えると耐熱性を低下させ、高温での加工時、接着不良や着色や発泡、高温での使用時、分解による剥離や着色・発泡、溶出等が発生する場合がある。また、上記官能基数を満たす限りにおいて、官能基が導入された含フッ素系重合体と、官能基が導入されていない含フッ素系重合体の混合物であって構わない。
【0136】
以上のように、本発明において使用される(C)含フッ素系重合体は、アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が導入された含フッ素系重合体である。上述の通り、官能基が導入された(C)含フッ素系重合体は、それ自体、含フッ素系重合体特有の耐熱性、耐水性、低摩擦性、耐薬品性、耐候性、防汚性、薬液透過防止性等の優れた特性を維持することが可能であり、生産性、コストの面で有利である。
さらに、アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に含有されることにより、積層ホースにおいて、層間接着性が不充分又は不可能であった種々の材料に対し、表面処理等特別な処理や接着性樹脂の被覆等を行なわず、直接、他の基材との優れた層間接着性を付与することができる。
【0137】
本発明において使用される(C)含フッ素系重合体は、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素繊維、金属酸化物、あるいはカーボン等の種々の充填剤を配合できる。また、充填剤以外に、顔料、紫外線吸収剤、その他任意の添加剤を混合できる。添加剤以外にまた他のフッ素系樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂、合成ゴム等を配合することもでき、機械特性の改善、耐候性の改善、意匠性の付与、静電防止、成形性改善等が可能となる。
【0138】
本発明に係わる積層ホースは、(A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層、(B)変性エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物((B)変性EVOH)からなる(b)層、(C)アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体((C)含フッ素系重合体)からなる(c)層を有する、少なくとも3層以上から構成される。
【0139】
本発明の積層ホースにおいて、好ましい実施様態としては、(A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層は、積層ホースの最外層に配置される。(A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層が最外層に配置されることにより、耐薬品性、柔軟性に優れた積層ホースを得ることが可能である。
【0140】
本発明の積層ホースにおいて、(B)変性エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる(b)層を含むことは必須であり、(A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層、及び(C)含フッ素系重合体からなる(c)層の間に配置され、(B)変性エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる(b)層と(C)含フッ素系重合体からなる(c)層は直接接着した構成をとることがより好ましい。(B)変性EVOHからなる(b)層が含まれないと積層ホースの薬液透過防止性、特に炭化水素透過防止性が低下する。さらに、該(B)変性EVOHではない、通常の(b1)EVOHを使用すると、薬液透過防止性は優れるものの、積層ホースの低温耐衝撃性や環境応力負荷耐性に劣る。また、(C)含フッ素系重合体からなる(c)層が含まれないと積層ホースの耐薬品性に劣る。また、本発明に規定された(C)含フッ素系重合体を使用することにより、接着層を設ける必要がなく、(B)変性EVOHからなる(b)層との優れた層間接着性を得ることが可能となる。
【0141】
また、本発明の積層ホースにおいて、導電性フィラーを含有させた含フッ素系重合体組成物からなる導電層が、積層ホースの最内層に配置されると、耐薬品性、薬液透過防止性に優れるとともに、燃料配管ホースとして使用された場合、配管内を循環する燃料の内部摩擦あるいは管壁との摩擦によって発生したスパークが燃料に引火することを防止することが可能となる。その際、導電性を有しない含フッ素系重合体からなる層が、前記導電層に対して外側に配置されることにより、低温耐衝撃性、導電性を両立することが可能であり、また経済的にも有利である。さらに、ここでいう、含フッ素系重合体は、本発明において規定した、分子鎖中に官能基を有する(C)含フッ素系重合体も包含し、後述の官能基を有さない含フッ素系重合体も指す。
【0142】
導電性とは、例えば、ガソリンのような引火性の流体が樹脂のような絶縁体に連続的に接触した場合、静電気が蓄積して引火する可能性があるが、この静電気が蓄積しない程度の電気特性を有することを言う。これにより、燃料等の流体の搬送時に発生する静電気による爆発防止が可能となる。
【0143】
導電性フィラーは、樹脂に導電性能を付与するために添加されるすべての充填材が包含され、粒状、フレーク状及び繊維状フィラー等が挙げられる。
【0144】
粒状フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。フレーク状フィラーとしては、アルミフレーク、ニッケルフレーク、ニッケルコートマイカ等が挙げられる。また、繊維状フィラーとしては、炭素繊維、炭素被覆セラミック繊維、カーボンウィスカー、カーボンナノホース、アルミ繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維といった金属繊維等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、カーボンナノチューブ、カーボンブラックがさらに好ましい。
【0145】
カーボンナノチューブは、中空炭素フィブリルと称されるものであり、該フィブリルは、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが該フィブリルの円柱軸の周囲に実質的に同心に配置されている本質的に円柱状のフィブリルである。更に、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2〜20nmであることが好ましい。カーボンナノチューブの外径は、3.5〜70nmであることが好ましく、4〜60nmであることがより好ましい。外径が3.5nm未満であると、樹脂中への分散性に劣る場合があり、外径が70nmを超えると得られる樹脂成形体の導電性が劣る場合がある。カーボンナノチューブのアスペクト比(長さ/外径の比をいう)は、5以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、500以上であることがさらに好ましい。該アスペクト比を満たすことにより、導電性ネットワークを形成しやすく、少量添加で優れた導電性を発現することができる。
【0146】
カーボンブラックは、導電性付与に一般的に使用されているカーボンブラックがすべて包含され、好ましいカーボンブラックとしては、アセチレンガスを不完全燃焼して得られるアセチレンブラックや、原油を原料にファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラック等が挙げられるが、これらに限定されないものではない。これらの中でも、アセチレンブラック、ファーネスブラック(ケッチェンブラック)が特に好適に用いられる。
【0147】
また、カーボンブラックは、その粒子径、表面積、DBP吸油量、灰分等の特性の異なる種々のカーボン粉末が製造されている。該カーボンブラックの特性に制限は無いが、良好な鎖状構造を有し、凝集密度の大きいものが好ましい。カーボンブラックの多量配合は耐衝撃性の面で好ましくなく、より少量で優れた電気伝導度を得る意味から、平均粒径は500nm以下であることが好ましく、5〜100nmであることがより好ましく、10〜70nmであることがさらに好ましく、また表面積(BET法)は10m/g以上であることが好ましく、300m/g以上であることがより好ましく、500〜1500m/gであることがさらに好ましく、更にDBP(ジブチルフタレート)吸油量は50ml/100g以上であることが好ましく、100ml/100g以上であることがより好ましく、300ml/100g以上であることがさらに好ましい。また灰分は0.5重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以下であることがより好ましい。ここでいうDBP吸油量は、ASTM D−2414に定められた方法で測定した値である。また、カーボンブラックは、揮発分含量が1.0重量%未満であることがより好ましい。
これら、導電性フィラーはチタネート系、アルミ系、シラン系等の表面処理剤で表面処理を施されていても良い。また溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
【0148】
導電性フィラーの配合量は、用いる導電性フィラーの種類により異なるため、一概に規定はできないが、導電性と流動性、機械的強度等とのバランスの点から、含フッ素系重合体成分100重量部に対して、一般に3〜30重量部が好ましく選択される。
また、かかる導電性フィラーは、十分な帯電防止性能を得る意味で、溶融押出物の表面固有抵抗値が10 Ω/square以下、特に10Ω/square以下であることが好ましい。但し上記導電性フィラーの配合は強度、流動性の悪化を招きやすい。そのため目標とする導電レベルが得られれば、上記導電性フィラーの配合量はできるだけ少ない方が望ましい。
【0149】
本発明の積層ホースでは、各層の厚さは特に制限されず、各層を構成する重合体の種類、積層ホースにおける全体の層数、用途等に応じて調節し得るが、それぞれの層の厚みは、積層ホースの薬液透過防止性、低温耐衝撃性、柔軟性等の特性を考慮して決定される。一般には、(a)層、(b)層、(c)層の厚さは、積層ホース全体の厚みに対してそれぞれ3〜90%であることが好ましい。薬液透過防止性を考慮して(b)、(c)層の厚みは積層ホース全体の厚みに対して、5〜80%であることがより好ましく、10〜50%であることがさらに好ましい。
【0150】
また、本発明の積層ホースにおける全体の層数は、(A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層、(B)変性EVOHからなる(b)層、(C)含フッ素系重合体からなる(c)層とを含む、少なくとも3層以上である限り、特に限定されない。さらに本発明の積層ホースは、(a)層、(b)層、(c)層の3層以外に、更なる機能を付与、あるいは経済的に有利な積層ホースを得るために、他の熱可塑性樹脂からなる層を1層又は2層以上を有していてもよい。
【0151】
他の熱可塑性樹脂としては、本発明において規定された(A)脂肪族ポリアミド以外の、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタラミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタラミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド11I)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド11T(H))、ポリウンデカメチレンナフタラミド(ポリアミド11N)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)やこれらポリアミド原料モノマーを数種用いた共重合体等が挙げられる。
【0152】
また、本発明において規定された以外の含フッ素系重合体(ここで、本発明において規定された以外とは、アミノ基やヒドロキシル基に対して反応性を有す官能基を含有しない含フッ素系重合体を指す。)として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テトラフルオロエチレン/フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等が挙げられる。
【0153】
さらに、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された、上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブダジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。
【0154】
なお、本発明の積層ホースにおいては、(B)変性EVOHの溶融安定性の観点から、上記例示の熱可塑性樹脂のうち、好ましくは、融点が240℃以下のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリチオエ−テル系樹脂、含フッ素系重合体が使用される。
【0155】
また、熱可塑性樹脂以外の任意の基材、例えば、紙、金属系材料、無延伸、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿、木材等を積層することも可能である。金属系材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、鉛、錫、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルト等の金属や金属化合物及びこれら2種類以上からなるステンレス鋼等の合金鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅等の銅合金、ニッケル合金等の合金類等が挙げられる。
【0156】
本発明の積層ホースの層数は3層以上であるが、ホース製造装置の機構から判断して8層以下、好ましくは3層〜7層である。
【0157】
積層ホース製造法としては、層の数もしくは材料の数に対応する押出機を用いて、溶融押出し、ダイ内あるいは外において同時に積層する方法(共押出法)、あるいは、一旦、単層ホースあるいは、上記の方法により製造された積層ホースを予め製造しておき、外側に順次、必要に応じては接着剤を使用し、樹脂を一体化せしめ積層する方法(コーティング法)が挙げられる。本発明の積層ホースにおいては、各種材料を溶融状態で共押出し、両者を熱融着(溶融接着)して一段階で積層構造のホースを製造する共押出法により製造されることが好ましい。
【0158】
また、得られる積層ホースが複雑な形状である場合や、成形後に加熱曲げ加工を施して成形品とする場合には、成形品の残留歪みを除去するために、上記の積層ホースを形成した後、前記ホースを構成する樹脂の融点のうち最も低い融点未満の温度で、0.01〜10時間熱処理して目的の成形品を得る事も可能である。
【0159】
積層ホースにおいては、波形領域を有するものであってもよい。波形領域とは、波形形状、蛇腹形状、アコーディオン形状、又はコルゲート形状等に形成した領域である。波形領域は、積層ホース全長にわたり有するものだけではなく、途中の適宜の領域に部分的に有するものであってもよい。波形領域は、まず直管状のホースを成形した後に、引き続いてモールド成形し、所定の波形形状等とすることにより容易に形成することができる。かかる波形領域を有することにより、衝撃吸収性を有し、取り付け性が容易となる。さらに、例えば、コネクター等の必要な部品を付加したり、曲げ加工によりL字、U字の形状等にする事が可能である。
【0160】
このように成形した積層ホースの外周の全部又は一部には、石ハネ、他部品との摩耗、耐炎性を考慮して、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)、NBRとポリ塩化ビニルの混合物、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン/プロピレンゴム(EPR)、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、NBRとEPDMの混合物ゴム、塩化ビニル系、オレフィン系、エステル系、アミド系等の熱可塑性エラストマー等から構成するソリッド又はスポンジ状の保護部材(プロテクター)を配設することができる。保護部材は既知の手法によりスポンジ状の多孔体としてもよい。多孔体とすることにより、軽量で断熱性に優れた保護部を形成できる。また、材料コストも低減できる。あるいは、ガラス繊維等を添加してその強度を改善してもよい。保護部材の形状は特に限定されないが、通常は、筒状部材又は積層ホースを受け入れる凹部を有するブロック状部材である。筒状部材の場合は、予め作製した筒状部材に積層ホースを後で挿入したり、あるいは積層ホースの上に筒状部材を被覆押出しして両者を密着して作ることができる。両者を接着させるには、保護部材内面あるいは前記凹面に必要に応じ接着剤を塗布し、これに積層ホースを挿入又は嵌着し、両者を密着することにより、積層ホースと保護部材の一体化された構造体を形成する。また、金属等で補強する事も可能である。
【0161】
積層ホースの外径は、薬液(例えば含アルコールガソリン等の燃料)等の流量を考慮し、肉厚は燃料の透過量が増大せず、また、通常のホースの破壊圧力を維持できる厚さで、かつ、ホースの組み付け作業容易性及び使用時の耐振動性が良好な程度の柔軟性を維持することができる厚さに設計されるが、限定されるものではない。好ましくは、外径は4〜300mm、内径3〜250mm、肉厚は0.5〜25mmである。
【0162】
本発明の積層ホースは、自動車部品、内燃機関用途、電動工具ハウジング類等の機械部品を始め、工業材料、産業資材、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品等各種用途が挙げられる。
【0163】
また、本発明の積層ホースは、薬液透過防止性に優れるため、薬液搬送ホースに好適である。薬液としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール、フェノール系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、二塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼン等のハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、ガソリン、灯油、ディーゼルガソリン、含アルコールガソリン、メチル−t−ブチルエーテル、含酸素ガソリン、含アミンガソリン、サワーガソリン、ひまし油ベースブレーキ液、グリコールエーテル系ブレーキ液、ホウ酸エステル系ブレーキ液、極寒地用ブレーキ液、シリコーン油系ブレーキ液、鉱油系ブレーキ液、パワーステアリングオイル、含硫化水素オイル、ウインドウオッシャ液、エンジン冷却液、尿素溶液、医薬剤、インク、塗料等が挙げられる。本発明の積層ホースは、上記薬液を搬送するホースとして好適であり、具体的には、フィードホース、リターンホース、エバポホース、フューエルフィラーホース、ORVRホース、リザーブホース、ベントホース等の燃料ホース、オイルホース、石油掘削ホース、ブレーキホース、ウインドウオッシャー液用ホース、ラジエーターホース、冷却水、冷媒等用クーラーホース、エアコン冷媒用ホース、ヒーターホース、ロードヒーティングホース、床暖房ホース、インフラ供給用ホース、消火器及び消火設備用ホース、医療用冷却機材用ホース、インク、塗料散布ホース、その他薬液ホースが挙げられる。特に、燃料ホースとして好適である。
【実施例】
【0164】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における分析及び物性の測定方法、及び実施例及び比較例に用いた材料を示す。
【0165】
EVOHの特性は、以下の方法で測定した。
<(b1)EVOHの特性値>
[エチレン含有量及びケン化度]
重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒とした1H−NMR(核磁気共鳴)測定(日本電子(株)製、JNM−GX−500型)により得られたスペクトルから算出した。
【0166】
[固有粘度]
試料とする乾燥ペレット0.20gを精秤し、これを含水フェノール(水/フェノール=15/85:重量比)40mlに60℃にて3〜4時間加熱溶解させ、温度30℃にて、オストワルド型粘度計にて測定し(t=90秒)、下式により固有粘度[η]を求めた。
[η]=(2×(ηsp−lnηrel))1/2/C (L/g)
ηsp= t/ t−1
ηrel= t/ t
C :EVOH濃度(g/L)
:ブランク(含水フェノール)が粘度計を通過する時間t :サンプルを溶解させた含水フェノール溶液が粘度計を通過する時間
【0167】
[アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の含有量の定量]
試料とする乾燥済みペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液に50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、アルカリ金属イオンあるいはアルカリ土類金属イオン含有量を得た。カラムは、(株)横川電機製ICS−C25を使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸水溶液と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸水溶液の混合液とした。なお、定量に際しては各種金属の塩酸塩水溶液(例えば、塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液及び塩化カルシウム水溶液)で作製した検量線を用いた。こうして得られたアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンの量から、乾燥ペレット中のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の量を金属元素換算の値で得た。
【0168】
[酢酸の含有量の定量]
試料とする乾燥ペレット20gをイオン交換水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。抽出液をフェノールフタレインを指示薬として、1/50規定のNaOHで中和滴定し、酢酸の含有量を定量した。
【0169】
[リン酸化合物の定量]
試料とする乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸イオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製ICS−A23を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際してはリン酸二水素ナトリウム水溶液で作成した検量線を用いた。こうして得られたリン酸イオンの量から、リン酸化合物の含有量をリン酸根換算で得た。
【0170】
<(B)変性EVOHの構造単位含有量>
[変性EVOHのトリフルオロアセチル化及びNMR測定]
製造した(B)変性EVOHを粒子径0.2mm以下に粉砕後、この粉末1gを100mlナスフラスコに入れ、塩化メチレン20g及び無水トリフルオロ酢酸10gを添加し、室温で攪拌した。攪拌開始から1時間後、ポリマーは完全に溶解した。ポリマーが完全に溶解してからさらに1時間攪拌した後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られたトリフルオロアセチル化された(B)変性EVOHを2g/Lの濃度で重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))に溶解し、テトラメチルシランを内部標準として500MHz1H-NMRを測定した。得られたNMR測定チャート中のピークを帰属することにより、(B)変性EVOH中に含有されているエチレン含有量及び前記構造単位(I)の含有量を算出した。
【0171】
また、含フッ素系重合体の特性は、以下の方法で測定した。
[含フッ素系重合体の組成]
溶融NMR分析、フッ素含有量分析により測定した。
【0172】
[含フッ素系重合体中の末端カーボネート基数]
含フッ素系重合体中の末端カーボネート基数は、赤外吸収スペクトル分析により、カーボネート基(−OC(=O)O−)のカルボニル基が帰属するピークが1809cm−1の吸収波長に現われ、吸収ピークの吸光度を測定し、次式によって含フッ素系重合体中の主鎖炭素数10個に対するカーボネート基の個数を算出した。
[含フッ素系重合体中の主鎖炭素数10個に対するカーボネート基の個数]=500AW/εdf
A:カーボネート基(−OC(=O)O−)のピークの吸光度
ε:カーボネート基(−OC(=O)O−)のモル吸光度係数[cm−1・mol−1]。モデル化合物よりε=170とした。
W:モノマー組成から計算される組成平均分子量
d:フィルムの密度[g/cm
f:フィルムの厚さ[mm]
【0173】
また、積層ホースの各物性は、以下の方法で測定した。
[低温耐衝撃性]
SAE J−2260 7.5に記載の方法で評価した。
【0174】
[耐薬品性、耐サワーガソリン性]
SAE J−2260 7.8に記載の方法で耐サワーガソリンテストを実施した。テスト後のホースの低温耐衝撃性をSAE J−2260 7.5により評価し、試験本数10本に対して、破断本数が0本の場合、耐サワーガソリン性(耐薬品性)に優れていると判断した。
【0175】
[薬液(含アルコールガソリン)透過防止性]
200mmにカットしたホースの片端を密栓し、内部にFuelC(イソオクタン/トルエン=50/50体積比)とエタノールを90/10体積比に混合した含アルコールガソリンを入れ、残りの端部も密栓した。その後、全体の重量を測定し、次いで試験ホースを60℃のオーブンに入れ、一日毎に重量変化を測定した。一日当たりの重量変化を、ホース内層表面積で除して薬液透過係数(g/m・day)を算出した。
【0176】
[層間接着性]
200mmにカットしたホースをさらに縦方向に半分にカットし、テストピースを作成した。テンシロン万能試験機を用い、50mm/minの引張速度にて180°剥離試験を実施した。S−Sカーブの極大点から剥離強度を読み取り、層間接着性を評価した。
【0177】
[環境応力負荷耐性]
200mmにカットしたホースをR50の状態に曲げ加工した。該ホースを、120℃、相対湿度80%のオーブンに入れ、200時間処理した。取り出し後の該ホース内の、断面を観察し、クラックの有無を確認した。
【0178】
[実施例及び比較例で用いた材料]
(A)脂肪族ポリアミド
(A−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造
(a−1)ポリアミド12(宇部興産(株)製、UBESTA3030U、相対粘度2.27)に、衝撃改良材として無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体(JSR(株)製、JSR T7712SP)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給する一方、該二軸溶融混練機のシリンダーの途中から、可塑剤として、ベンゼンスルホン酸ブチルアミドを定量ポンプにより注入し、シリンダー温度180〜260℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド12樹脂85重量%、衝撃改良材10重量%、可塑剤5重量%よりなるポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド樹脂組成物を(A−1)という)。
【0179】
(A−2)導電性ポリアミド12樹脂組成物の製造
(A−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造において、(a−1)ポリアミド12を(a−2)ポリアミド12(宇部興産(株)製、UBESTA3020U、相対粘度1.86)に変更し、導電性フィラーとしてカーボンブラック(アクゾノーベル(株)製、ケッチェンブラックEC600JD)を用い、可塑剤を用いない以外は(A−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造と同様の方法にて、ポリアミド12樹脂73重量%、衝撃改良材20重量%、導電性フィラー7重量%よりなる導電性ポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド樹脂組成物を(A−2)という)。
【0180】
(A−3)ポリアミド6樹脂組成物の製造
ポリアミド6(宇部興産(株)製、UBE Nylon1024B 相対粘度3.50)に、衝撃改良材として無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体(JSR(株)製、JSR T7712SP)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給する一方、該二軸溶融混練機のシリンダーの途中から、可塑剤として、ベンゼンスルホン酸ブチルアミドを定量ポンプにより注入し、シリンダー温度230〜270℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド6樹脂85重量%、衝撃改良材10重量%、可塑剤5重量%よりなるポリアミド6樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド樹脂組成物を(A−3)という)。
【0181】
(B)変性EVOH
(B−1)変性EVOHの製造
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.6%、固有粘度0.0882L/gのエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)からなる含水ペレット(含水率:130%(ドライベース))100重量部を、酢酸0.1g/L、リン酸二水素カリウム0.044g/Lを含有する水溶液370重量部に、25℃で6時間浸漬・攪拌した。得られたペレットを105℃で20時間乾燥し、乾燥EVOHペレットを得た(以下、このEVOHを(b1)EVOHという)。(b1)EVOHペレットのカリウム含有量は8ppm(金属元素換算)、酢酸含有量は53ppm、リン酸化合物含有量は20ppm(リン酸根換算値)であり、アルカリ土類金属塩含有量は0ppmであった。また、MFRは8g/10分(190℃、2160g荷重下)であった。
【0182】
二軸溶融混練機(東芝機械(株)製、型式:TEM−35BS)を使用し、シリンダー温度200〜240℃に設定し、スクリュー回転数400rpmで運転した。フィード口から上記(b1)EVOHを11kg/hの割合でフィードし、溶融した後、ベントから水及び酸素を除去し、シリンダーの途中の液圧入口から、分子量500以下の(b2)一価エポキシ化合物として、(b2−1)1,2−エポキシブタンを2.5kg/hの割合でフィードした(フィード時の圧力:6MPa)。その後、ベントから未反応の1,2−エポキシブタンを除去し、変性EVOHのペレットを得た(以下、この変性EVOHを(B−1)という)。得られた(B−1)変性EVOHのMFRは、2.5g/10分(190℃、2160g荷重下)、融点は141℃であった。また、上記のトリフルオロアセチル化及びNMR測定により、(B−1)変性EVOH中のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は4.8モル%であった。
【0183】
(B−2)変性EVOHの製造
(B−1)変性EVOHの製造において、(b1)EVOHのフィード量を16kg/hとし、(b2−1)1,2−エポキシブタンのフィード量を1.2kg/hにした以外は、(B−1)変性EVOHの製造と同様な方法にて、変性EVOHのペレットを得た(以下、この変性EVOHを(B−2)という)。得られた(B−2)変性EVOHのMFRは、3.0g/10分(190℃、2160g荷重下)、融点は155℃であった。また、上記のトリフルオロアセチル化及びNMR測定により、(B−2)変性EVOH中のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は3.0モル%であった。
【0184】
(B−3)変性EVOHの製造
(B−1)変性EVOHの製造において、(b1)EVOHのフィード量を16kg/hとし、(b2−1)1,2−エポキシブタンを(b2−2)エポキシプロパンに変え、フィード量を2.4kg/hにした以外は、(B−1)変性EVOHの製造と同様な方法にて、変性EVOHのペレットを得た(以下、この変性EVOHを(B−3)という)。得られた(B−3)変性EVOHのMFRは、2.8g/10分(190℃、2160g荷重下)、融点は135℃であった。また、上記のトリフルオロアセチル化及びNMR測定により、(B−3)変性EVOH中のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は5.0モル%であった。
【0185】
(B−4)変性EVOHの製造
(B−1)変性EVOHの製造において、(b1)EVOHのフィード量を15kg/hとし、(b2−1)1,2−エポキシブタンを(b2−3)グリシドールに変え、フィード量を2.5kg/hにした以外は、(B−1)変性EVOHの製造と同様な方法にて、変性EVOHのペレットを得た(以下、この変性EVOHを(B−4)という)。得られた(B−4)変性EVOHのMFRは、1.8g/10分(190℃、2160g荷重下)、融点は135℃であった。また、上記のトリフルオロアセチル化及びNMR測定により、(B−4)変性EVOH中のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は5.0モル%であった。
【0186】
(B−5)変性EVOHの製造
(B−1)変性EVOHの製造において、(b1)EVOHのフィード量を15kg/hとし、(b2−1)1,2−エポキシブタンを(b2−4)ビスフェノールAグリシジルエーテルに変え、フィード量を0.12kg/hにした以外は、(B−1)変性EVOHの製造と同様な方法にて、変性EVOHのペレットを得た(以下、この変性EVOHを(B−5)という)。得られた(B−5)変性EVOHのMFRは、2.5g/10分(190℃、2160g荷重下)、融点は182℃であった。
【0187】
(C)含フッ素系重合体
(C−1)含フッ素系重合体の製造
内容積が94リットルの攪拌機付きオートクレーブを脱気し、イオン交換水の19.7kg、ペルフルオロペンチルジフルオロメタンの77.1kg、CH=CH(CFFの427g、テトラフルオロエチレン(TFE)3.36kg、エチレン(E)127gを圧入し、オートクレーブ内を66℃に昇温した。このとき圧力は0.65MPaであった。重合開始剤としてジイソプロピルペルオキシジカーボネートの72gを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるようにTFE/E=60/40のモル比のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して6モル%に相当する量のCH=CH(CFFを連続的に仕込んだ。重合開始の5.6時間後、モノマー混合ガスが11.5kg仕込まれた時点で、オートクレーブ内温を室温まで冷却するとともに重合層内の圧力を常圧までパージした。得られたスラリ状の含フッ素系重合体を、水100kgを仕込んだ300Lの造粒槽に投入し、攪拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を135℃で3時間乾燥することにより、含フッ素系重合体の造粒物12.1kgが得られた。
含フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/CH=CH(CFFに基づく重合単位のモル比で57.2/37.0/5.8であり、含フッ素系重合体の重合開始剤に由来するカーボネート末端基の数は359個であった。また、融点は205℃であった。
この造粒物を押出機を用いて、250℃、滞留時間2分で溶融し、含フッ素系重合体のペレットを得た(以下、この含フッ素系重合体を(C−1)という。)。
【0188】
(C−2)導電性含フッ素系重合体の製造
(C−1)含フッ素系重合体100重量部、及びカーボンブラック(電気化学(株)製)13重量部をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機(東芝機械(株)製、型式:TEM−48S)に供給し、シリンダー温度240〜270℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、吐出したストランドを水冷し、ペレタイザーでストランドを切断し、水分除去のために120℃の乾燥機で10時間乾燥し、導電性含フッ素系重合体のペレットを得た。(以下、この導電性含フッ素系重合体を(C−2)という。)。
【0189】
(C−3)含フッ素系重合体の製造
内容積が94リットルの攪拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン71.3kg、連鎖移動剤である1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン20.4kg、CH=CH(CFF562gを仕込み、当該重合槽内を66℃に昇温し、テトラフルオロエチレン(TFE)/エチレン(E)(モル比:89/11)のガスで1.5MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレートの0.7%−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の1Lを仕込み重合を開始させた。
重合中圧力を一定になるようにTFE/E(モル比:59.5/40.5)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して3.3モル%に相当する量のCH=CH(CFFを1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの1%溶液で連続的に仕込んだ。重合開始9.9時間後、モノマー混合ガス7.28kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温までこ降温するとともに常圧までパージした。得られたスラリ状の含フッ素系重合体を、水77kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、撹拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で15時間乾燥することにより、7.0kgの含フッ素系重合体の造粒物が得られた。
当該含フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/CH=CH(CFFのモル比で57.6/38.7/3.7であった。また、融点は232℃であった。
この造粒物を押出機を用いて、260℃、滞留時間2分で溶融し、含フッ素系重合体のペレットを得た(以下、この含フッ素系重合体を(C−3)という。)。
【0190】
(C−4)導電性含フッ素系重合体の製造
(C−3)含フッ素系重合体100重量部、及びカーボンブラック(電気化学(株)製)13重量部をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機(東芝機械(株)製、型式:TEM−48SS)に供給し、シリンダー温度240〜300℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、吐出したストランドを水冷し、ペレタイザーでストランドを切断し、水分除去のために120℃の乾燥機で10時間乾燥し、導電性含フッ素系重合体のペレットを得た(以下、この導電性含フッ素系重合体を(C−4)という。)。
【0191】
(D)接着性樹脂
(D−1)マレイン酸変性ポリプロピレン 三井化学(株)製 Admer QF500
(D−2)ポリアミド6/12共重合体 宇部興産(株)製 UBE Nylon 7034U
(D−3)エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体 日本ポリオレフィン(株)製 レクスパーRA3150
【0192】
実施例1
上記に示す(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)、(B)変性EVOH(B−1)、(C)含フッ素系重合体(C−1)、(D)接着性樹脂(D−1)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)4層ホース成形機にて、(A)を押出温度240℃、(B)を押出温度200℃、(C)を押出温度240℃、(D)を押出温度200℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)からなる(a)層(最外層)、(D)接着性樹脂(D−1)からなる(d)層(外層)、(B)変性EVOH(B−1)からなる(b)層(中間層)、(C)含フッ素系重合体(C−1)からなる(c)層(最内層)としたときの、層構成が(a)/(d)/(b)/(c)=0.60/0.10/0.15/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0193】
実施例2
実施例1において、(B)変性EVOH(B−1)を(B−2)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0194】
実施例3
実施例1において、(B)変性EVOH(B−1)を(B−3)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0195】
実施例4
実施例1において、(B)変性EVOH(B−1)を(B−4)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0196】
実施例5
実施例1において、(C)含フッ素系重合体(C−1)を導電性含フッ素系重合体(C−2)に変え、(C)を押出温度250℃にて溶融させた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層ホースの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
【0197】
実施例6
実施例1において、(D)接着性樹脂(D−1)を(D−2)に変え、(D)を押出温度220℃にて溶融させた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0198】
実施例7
上記に示す(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)、(B)変性EVOH(B−1)、(C)含フッ素系重合体(C−1)、(C−3)、(D)接着性樹脂(D−1)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)5層ホース成形機にて、(A)を押出温度240℃、(B)を押出温度220℃、(C)を押出温度250℃、(D)を押出温度200℃にて別々に溶融させにて、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)からなる(a)層(最外層)、(D)接着性樹脂(D−1)からなる層(d)層(外層)、(B)変性EVOH(B−1)からなる(b)層(中間層)、(C)含フッ素系重合体(C−1)からなる(c)層(内層)、(C)含フッ素系重合体(C−3)からなる(c’)層(最内層)としたときの、層構成が(a)/(d)/(b)/(c)/(c’)=0.60/0.10/0.15/0.05/0.10mmで内径6mm、外径8mmの積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0199】
実施例8
実施例7において、最内層に配置された(C)含フッ素系重合体(C−3)を導電性含フッ素系重合体(C−4)に変え、(C)を押出温度260℃にて溶融させた以外は、実施例7と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層ホースの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
【0200】
実施例9
上記に示す(A)ポリアミド6樹脂組成物(A−3)、(B)変性EVOH(B−1)、(C)含フッ素系重合体(C−1)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)3層ホース成形機にて、(A)を押出温度240℃、(B)を押出温度200℃、(C)を押出温度240℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミド6樹脂組成物(A−3)からなる(a)層(最外層)、(B)変性EVOH(B−1)からなる(b)層(中間層)、(C)含フッ素系重合体(C−1)からなる(c)層(最内層)としたときの、層構成が(a)/(b)/(c)=0.70/0.15/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0201】
比較例1
実施例1において、(B)変性EVOH(B−1)、(C)含フッ素系重合体(C−1)、(D)接着性樹脂(D−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成のホースを得た。当該ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0202】
比較例2
実施例1において、(C)含フッ素系重合体(C−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成のホースを得た。当該ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0203】
比較例3
実施例1において、(B)変性EVOH(B−1)、(D)接着性樹脂(D−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成のホースを得た。当該ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0204】
比較例4
実施例1において、(B)変性EVOH(B−1)を(b1)EVOHに変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成のホースを得た。当該ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0205】
比較例5
実施例1において、(B)変性EVOH(B−1)を(B−5)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成のホースを得た。当該ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0206】
比較例6
実施例1において、(C)含フッ素系重合体(C−1)を(C−3)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0207】
比較例7
実施例1において、(C)含フッ素系重合体(C−1)を(C−4)に変え、(C)を押出温度260℃にて溶融させた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層ホースの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
【0208】
比較例8
上記に示す(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)、(b1)EVOH、(C)含フッ素系重合体(C−3)、(D)接着性樹脂(D−1)、(D−3)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)5層ホース成形機にて、(A)を押出温度250℃、(B)を押出温度220℃、(C)を押出温度250℃、(D)を押出温度200℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)からなる(a)層(最外層)、(D)接着性樹脂(D−1)からなる(d)層(外層)、(b1)EVOHからなる(b)層(中間層)、(D)接着性樹脂(D−3)からなる(d’)層(内層)、(C)含フッ素系重合体(C−3)からなる(c)層(最内層)としたときの、層構成が(a)/(d)/(b)/(d’)/(c)=0.50/0.10/0.15/0.10/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0209】
比較例9
上記に示す(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)、ポリアミド6樹脂組成物(A−3)、(b1)EVOH、(D)接着性樹脂(D−2)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)4層ホース成形機にて、(A)を押出温度250℃、(B)を押出温度220℃、(D)を押出温度230℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)からなる(a)層(最外層)、(D)接着性樹脂(D−2)からなる(d)層(外層)、(b1)EVOHからなる(b)層(中間層)、(A)ポリアミド6樹脂組成物(A−3)からなる(a’)層(最内層)としたときの、層構成が(a)/(d)/(b)/(a’)=0.40/0.10/0.15/0.35mmで内径6mm、外径8mmの積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0210】
比較例10
比較例9において、(b1)EVOHを(B)変性EVOH(B−1)に変えた以外は、比較例9と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。
【0211】
比較例11
上記に示す(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)、導電性ポリアミド12樹脂組成物(A−2)、(B)変性EVOH(B−1)、(D)接着性樹脂(D−2)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)5層ホース成形機にて、(A)を押出温度250℃、(B)を押出温度220℃、(D)を押出温度230℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミド12樹脂組成物(A−1)からなる(a)層(最外層)、(D)接着性樹脂(D−2)からなる(d)層(外層、内層)、(B)変性EVOH(B−1)からなる(b)層(中間層)、(A)導電性ポリアミド12樹脂組成物(A−2)からなる(a’)層(最内層)としたときの、層構成が(a)/(d)/(b)/(d)/(a’)=0.50/0.10/0.15/0.10/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層ホースの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
【0212】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層、(B)下記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有する、エチレン含有量5〜55モル%の変性エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる(b)層、及び(C)アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(c)層を有する、少なくとも3層以上からなることを特徴とする積層ホース。
【化1】


(式中、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。R、R、R及びRは同じ基でもよいし、異なっていてもよい。また、RとRは結合していてもよい。また上記のR、R、R及びRは他の基、例えば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子等を有していてもよい。)
【請求項2】
前記(A)脂肪族ポリアミドが、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)よりなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の積層ホース。
【請求項3】
前記(B)変性エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物が、エチレン含有量20〜45モル%、ケン化度90モル%以上の(b1)エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物と(b2)一価エポキシ化合物を溶融混合することにより製造されることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の積層ホース。
【請求項4】
前記(C)アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体において、該含フッ素系重合体の融点が180〜230℃であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層ホース。
【請求項5】
前記(A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層が、最外層に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の積層ホース。
【請求項6】
前記(B)変性エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる(b)層が、前記(A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層と(C)アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子中に導入された含フッ素系重合体からなる(c)層の間に配置され、(b)層と(c)層が直接接着していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の積層ホース。
【請求項7】
前記積層ホースにおける最内層に、導電性フィラーを含有させた含フッ素系重合体組成物からなる導電層が配置されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の積層ホース。
【請求項8】
前記積層ホースが、共押出成形により製造されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の積層ホース。
【請求項9】
燃料ホースとして使用されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の積層ホース。
【請求項10】
積層ホースが、少なくとも波形領域を有するものであることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の積層ホース。


【公開番号】特開2006−29574(P2006−29574A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307339(P2004−307339)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】